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「白川日銀総裁会見より」

 日銀のサイトにアップされた5月21日の白川日銀総裁の会見内容から、特に一部欧州諸国における財政問題に関わる部分を見てみたい。

 白川総裁は、日本の経済・物価情勢におけるリスク要因として、新興国・資源国経済の強まりなどの上振れ要因とともに、国際金融面での動きなどの下振れリスクを挙げている。一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響には注意する必要があるとした。

 一部欧州諸国において財政再建と経済改革に取り組んでいく必要があるが、その過程で金融市場の緊張がさらに高まるような場合に、様々なルートを通じて欧州経済さらには世界経済を下振れさせるリスクがあり、この点には十分な注意が必要であるとしている。

 ただし、現在の世界経済を牽引している新興国・資源国経済は、内需を中心に国際機関や民間の予測を上回る力強い成長を続けており、米国経済も輸出が増加し個人消費も増加する中で緩やかに回復していることで、現時点では欧州経済の不確実性の高まりが日本経済に与える影響は限定的であると指摘している。

 ギリシャの問題がポルトガル・スペインをはじめ近隣諸国に波及し、そのための対応によりドイツなどに負担がかかるなどしたことで、ユーロというシステムそのものへの危惧も出てきている。このため、問題解決に向けては関連諸国が協力し、該当諸国の信認回復に向けて努力を払う必要が不可欠となろう。

 白川総裁は、今回の欧州金融市場の不安定化の背景には、欧州一部の国における財政の持続可能性・再建可能性に対する市場の信認低下や、これらの国の競争力の低下という大きな問題がある。欧州諸国の経済・財政改革が着実に成果を上げ市場の信認を確保していくことは、時間のかかるプロセスであり、その過程で国際金融市場や世界経済にどのような影響が及んでいくのかといった点は、注意深く点検していくことが重要だと考えているとも発言している。

 一国の財政に対して信認が失墜してしまうと、それを回復するのは容易ではない。総裁もコメントしたように信認回復には時間もかかり、その間、金融市場や経済実態に影響を与えうる点を指摘している。たとえば、日本国債への信認がすぐに失墜するようなことは考えづらいが、日本でも財政再建に向けての姿勢を維持させていかない限り、ギリシャの二の舞になる可能性はありうる。

 さらに白川総裁は、ECBが実施している「証券市場プログラム」に関し、この措置の狙いと性格についてのECBの説明を取り上げている。

 第1に欧州の債券市場における異例な(dysfunctional)市場環境に鑑み導入するものであり、民間、公的双方の債券市場の機能不全を是正するという明確な目的が定められている。

 第2に、この措置によって供給される資金は別のオペレーションによって吸収をすることで、トリシェ総裁の発言にもあったように量的緩和ではない。

 第3に、これらの結果、当該措置は、金融政策運営方針の変更を意味するものではない。

 白川総裁は、この措置は機能不全に陥った債券市場の是正策だと受止めているとしている。次に、こうした措置にも拘わらず金融市場がなお不安定であることに関し、今回の欧州一部国の問題は、現象としては資金繰りあるいは国債金利の上昇というかたちで現れてきているが、その背後にあるのは、財政バランスが維持可能ではないのではないか、さらに、当該国の競争力が十分ではなく、経済の構造改革が必要であるという認識があるのではないかと指摘した。

 そして、EUあるいはユーロ加盟国の様々な公的措置は、「当面の時間を買う措置」だと思うとし、時間を買っている間に、基本的な問題に対して当該国が取り組んでいくことが必要で、今その部分を市場は見ているのだと理解しているとしている。

 総裁の言う「当面の時間を買う措置」という表現は言い当てていると思われる。あくまで根本的な解決には、一部欧州諸国の財政への信認の再構築であり、時間もかかるし、かなり努力も必要である。これは日本にとっても決して他山の石ではない。
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by nihonkokusai | 2010-05-25 10:27 | Comments(0)
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