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「日銀の新貸出制度」

 4月30日の金融政策決定会合で、白川総裁は成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。

 これを受けて5月20日から21日にかけての金融政策決定会合では、新たな貸し出し制度の大枠を固め、6月の決定会合で細かい内容を決めるとみられる。

 成長が期待できるという対象分野としては、環境・エネルギーや観光、新しい研究開発などが含まれるようである。これらに取り組む企業向けに貸す銀行に、日銀は今 年夏から、半年から1年という期間を対象に年0.1%という低利で貸し出す制度を構築する。

 日銀が特定の分野に貸し出すことを条件にした制度をつくるのは極めて異例と言える。確かにギリシャの財政危機を発端とした欧州市場での混乱は、円高・株安を誘発し日本経済にも影響を与えそうだが、国内景気は底堅く回復基調に変わりはない。

 それにも関わらずこのような制度をあらたに作る背景には、政府の意向をかなり意識している可能性がある。実際にこの制度は政府による成長戦略とも歩調を合わせた格好となっている。

 日銀はすでに、昨年末に国債などを担保とした期間3か月程度の期間10兆円規模の新型オペ導入した。さらに、今年3月にはその規模を20兆円に拡大している。しかし、新たに検討される貸し出し期間は半年から1年の方向で検討するとしており、対象は特定されるがより長い期間向けの貸し出しとなる。

 この制度を利用することにより、銀行の調達する金利が低くなり、成長分野に投資する企業に貸し出す際の金利が他の分野向けの融資より低くなる可能性はある。

 ただし、どの程度の資金需要があるのかは未知数である。この制度によるデフレ解消に向けての効果についても、限定的なものとなるのではなかろうか。成長が期待できる企業が資金調達に苦労していることは考えづらい。むしろ資金繰りに苦慮しているのはあまり成長が期待できない分野での中小企業が主体でははなかろうかと思う。このため、この制度による金融市場の影響は限定的なものとなりそうである。

 また、対象先に制限があることで、銀行が日銀の新制度により借り入れた資金が、特定された企業に融資されているのかをチェックする必要がある。このため制度開始まではそれなりに時間がかかる可能性もある。
by nihonkokusai | 2010-05-18 14:45 | 日銀
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