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「日銀頼みのデフレ対応のリスク」

 3月1日の衆院財務金融委員会において、菅直人副総理兼財務相は自民党の山本幸三氏の質問に答え、目指すべき物価上昇率の水準について、「(コアCPIの)プラス1%、ないし、もう少し高めの目標でいっても良いのではないかという認識を持っている」と語った(以下、ブルームバーグ記事より)。

 いつまでに目標を達成すべきかを問われ、「欲を言えば(昨年11月に)デフレ宣言をして、今年いっぱいくらいには何とかプラスに移行してもらいたいと感じている」と述べたそうである。

 また「日銀においても、やり方についてはそれぞれ独立した判断があるのは当然だが、より努力をお願いしたいと言うのが率直な気持ちだ」とも述べた。

 政府としても努力を一層していきたいとしているものの、1年以内に簡単にデフレを解消する手段などあるのであろうか。

 これに対して、亀井金融相は「金融政策だけでデフレを解消できるかと言うと、私は無理だと思う」と言明した。また、「政府が財政出動を含めて需給ギャップを解消していく努力をしなければ、日銀の責任だけで解決できる問題ではない」と語った。さらに。インフレ目標の導入について「数値目標を設けたところで、数字通りに経済、物価は動いてくれない」と述べており、これらについては日銀の白川総裁も同様の発言をしており、ある意味正論ともいえよう。

 ただし、亀井金融相は「日銀も政府が大胆な財政出動をしていくときに協力できる点がある」と指摘し、国債について「日銀が市中から買い入れていくだけでなく、直接国債を引き受けて財源を作るということをやったら良いと思う」と述べた。

 菅財務相の発言も暗に日銀にデフレ対策を押し付けているように感じられるが、亀井金融相の発言はデフレに対する認識は正しいかもしれないが、その対策として財政法で禁じられている日銀による国債の直接引き受けを要請するというのは、いかがなものであろうか。

 1998年末に債券市場では国債の急落があり、これは運用部ショックと呼ばれた。この長期金利の上昇への米国金融当局からの危惧が伝わると、当時の日本の政府関係者からは日銀の国債引受を要請する声が上がったこともあった。

 ただし、政府の発行した国債を日銀が直接引き受けるのは、財政法の第五条にもあるように禁じられている。「すべて公債の発行については日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」とある。これは戦前の日銀の国債引受が戦費調達等により財政支出の無制限な膨張につながり戦後のハイパーインフレを導いたことが教訓となっている。ニ・ニ六事件では日銀の国債引受を実行しながら、それに歯止を掛けようとした高橋是清蔵相が暗殺された。日銀による国債の直接引き受けはまさに「禁じ手」なのである。

 ひとたび禁じ手を使ってしまえば、それは歯止が利かなくなるのは必然である。特にこれだけの債務を抱えている以上、この打ち出の小槌を振り回し、国債は乱発され、その挙句、国債は信用力を失うとともに、ハイパーインフレを招くであろう。だからこそ財政法で禁じられているのである。日銀頼みのデフレ対応は大きな危険性を抱えることになってしまう可能性がある。
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by nihonkokusai | 2010-03-02 10:06 | Comments(0)
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