「債券先物スタートして今年で四半世紀」
この四半世紀の間に金融市場を取り巻く環境は一変した。デリバティブ市場は拡大し、金融市場での資金の運用手段は多様化し複雑化した。それが1998年のリーマン・ショックを生んだ要因のひとつとなったものの、すでにデリバティブ取引は必要不可欠なものであるため、規制などが加わりながらもデリバティブ市場は発達し続けるであろう。
また、この四半世紀の間でコンピューター化が進み、それがデリバティブ市場の発達にも繋がっている。私が債券先物のディーラーになった当時は東証との直通電話で注文を伝えていた。その電話機はダイヤル式の黒電話であった。そして、その注文は実栄証券の担当者を通じて伝えられ、東証の担当者がそれを黒板に集計しそれにより価格が決定された。つまり完全に人の手を介在しての取引であった。
しかし、1988年4月30日からはコンピューターを介在したシステム売買が開始された。値段が付くスピードは向上したものの、東証の端末のキーボードとディスプレーを前に人が直接介在しない取引に対して一抹の寂しさも感じたことも確かであった。
この25年間の間、債券先物にはシステムばかりでなくいろいろな変更点があった。http://www.tse.or.jp/rules/jgbf/history/index.html しかし、長期国債先物の基本的な仕組みは維持されており、1985年10月19日の初値102円をつけてから現在に至るまで値動きは継続し、この債券先物は日本の債券市場の動向を示す指標的な役割を演じている。
この25年間の債券先物の値動きを見てみると、1998年末の運用部ショック以降は130円から140円の間を中心としたレンジ相場が続いている。これはデフレや景気の低迷といった要因とともに財務省の国債管理政策の進展なども影響したものと思われる。
この間の国債残高が大幅に増加してきていることも確かである。過去に幾度となく海外ヘッジファンドなどが日本の財政悪化を理由に債券先物をショートしても、結局は踏まされるといったことが繰り返されていた。
しかし、国債残高が増加すればいずれ国内資金で賄えなくなろうであることも確かであろう。このまま長期金利が低位安定し、債券先物の価格も高値安定が継続すると予想することの方がむしろ難しいのではなかろうか。
いずれ国債にはその下落リスクが大きく意識されることが出てこよう。その際に債券先物は大きなうねりを見せ始めるのではなかろうか。債券先物が登場した背景には、日本国債へのヘッジ機能という側面が大きい。いずれかのタイミングでこのヘッジ機能が試されることになるのではなかろうか。その意味でも、債券先物の値動きをチェックすることは債券市場関係者ばかりでなく多くの人にも重要になるのではなかろうか。