中国人民銀行による預金準備率の引き上げ
適度に緩和的な金融政策は続けるものの、銀行融資の増加ペースが年明けから速まっており、過剰流動性の吸収を強化する必要があると判断したとみられる。
日経新聞によると、市場金利を誘導する先進国型の金融政策が確立していない中国では、行政的な措置を通じて銀行の貸し出し量をコントロールする「窓口指導」が金融政策の重要な位置を占めている。2008年秋の世界的な金融経済ショックを受けて人民銀行は貸し出しの増加を指示する窓口指導を開始し、それが中国経済を下支えする要因ともなった。しかし、融資の増加ペースが勢いづいたことで、今回の預金準備率の引き上げに踏み切ったものとみられる。
準備預金制度とは、銀行に対して受け入れている預金等の一定比率(預金準備率、法定準備率、準備率)以上の金額を無利子で中央銀行に預け入れることを義務づけている制度である。銀行は預金者保護の立場からも常に一定の余裕金を保有し、顧客からの預金引出しに応じられるように備える必要がある。こうした余裕金のことを「準備預金」と呼んでいる。
日本での準備預金制度は1957年に施行された「準備預金制度に関する法律」により、金融政策の手段として導入された。「準備預金制度に関する法律」の目的としては、その第一条に「この法律は、通貨調節手段としての準備預金制度を確立し、わが国の金融制度の整備を図るとともに、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」とある。通貨調節手段という言葉が示すように、これは日銀による金融政策のひとつの柱ともなっていた。
準備率を政策的に変動させることによって、銀行の支払準備を直接的に増減させることにより、銀行の資金の運用などにも変化を与えることで間接的ながら景気や物価にも影響を与えようとする手段として用いられることが目的となっていた。ただし、支払準備を直接的に増減には預金準備率の変更によって行われることとなっていたものの、日本ではほとんど金融政策の手段として用いられることはなかった。
これに対し先進国型の金融政策が確率していない中国では、「金融政策の手段として預金準備率の役割を重視する」(周小川自民銀行総裁)としているのである。