「日本の財政リスクの声は果たして今回も狼少年となるのか」
「いま世界は資金量に対し需要が少ないとして、国債を消化できなくなることは考えにくい」との認識を示したが、「ただ、やがて景気が回復して民間資金需要が出てきて、資金需要が全体として増えていくと、公的部門の資金繰りに若干の問題が出てくる可能性がある」とも指摘している。
「そのときには国債価格が下落、長期金利は上昇するおそれがある」と懸念を示し、「そのときに景気が良くなっていればいいが、景気が悪い中での長期金利の上昇になると、打つ手が限られる、とも発言した」(ロイター)
国債需給への懸念は、確かに、今そこにある危機ではない。私も「現在は日銀の超低金利政策やデフレ圧力の強まり、景気悪化による設備投資の減少などによる貸し出しなどの伸び悩みなどから、国債へと資金は向かいやすくなっている。しかし、国債にとっての好環境がこのまま半永久的に維持されることはありえない」(11月4日の「国債暴落のリスク」より)とも指摘した。
財政再建に向けては早めに手を打たなければ、武藤氏の言うところのも公的部門の資金繰りに『若干』の問題が出てくる可能性がある。国債投資家懇談会の吉野座長も 「国内の投資家は国債を大量に吸収し『たらふく食べた』たと思い始めている。今後も大量発行が続くと需要と供給の観点で考えれば金利は上昇する」と警戒している。
これまでも海外投資家を中心に、日本の財政リスクを意識しての仕掛け的な動きが何度かあった。しかし、そのたびに日本国債の需給の良さがその売りを跳ね返してきていた。今回もまた日本の財政リスクの声は狼少年となるのか。少なくとも臨界点が徐々に迫ってきていることは確かなはずであり、狼は決して幻ではないことは確かであろう。