「IMFによる出口に向けての7原則」
1、タイミングを検討するにあたっては十分すぎるほどの配慮をすべき。
2、財政強化を最優先課題とすべき。金融政策は正常化が必要になった場合により柔軟な調整が可能。
3、財政の出口戦略は明確な時間軸の範囲内で公的債務を良識的な水準に削減するという目標をもって、透明、包括的で明快な情報伝達がされるべき。
4、プライマリーバランスの強化を財政調整の重要なけん引役とすべき。まずは危機対応の財政出動を一時的な措置にとどめること。
5、非伝統的な金融政策は、伝統的な金融政策を引き締める前に解除する必要はない。
6、財政的政策支援解除の時期と方法は、経済状況、金融市場の安定性、市場原理に基づくメカニズムによって決定すべき。
7、出口政策に一貫性をもたせることが、すべての国の結果を良くする。政策協調の欠如は悪影響の波及を生む可能性がある。
(一部省略箇所あり)
先週末のG20の閉幕後の記者会見では、議長国である英国のダーリング財務相が、世界経済の回復が確実になるまで景気刺激策を継続することで合意した、と述べた。しかし、その英国や米国、そして日本の長期金利がここにきて上昇基調となっている。その背景には、各国の財政悪化への懸念があると思われる。 IMFは危機対応の財政出動を一時的な措置にとどめ、プライマリーバランスの強化を財政調整の重要なけん引役とすべきと言うが、解除のタイミングを検討するにあたっては十分すぎるほどの配慮をすべきと、相反する指摘をしている。その矛盾に対して金融市場が反応しているとも言える。
そして、金融政策に対しては財政強化を優先させることで、その出口は後回しにすべきとも読み取れる。しかも、非伝統的な金融政策は、伝統的な金融政策を引き締める前に解除する必要はないとの指摘も腑に落ちない。緊急時の対応としての非伝統的な金融政策であったはずであり、その解除が優先されることはある意味当然のことであろう。 FRBは国債の買い入れを中止し、日銀はCPや社債の買い入れを年末で終了することとし、トリシェECB総裁も1年物資金供給オペを延長しない考えを示唆している。
今回の「IMFによる出口に向けての7原則」は、言いたいことは良くわかるが、それではどのように財政規律と財政政策のバランスを取れば良いのかなどが不透明である。また金融政策に重点を置き過ぎることによる悪影響などへの言及もない。具体的な原則というよりも、表面だけのスローガンのように見えてしまう。