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「国債発行額が税収を上回る異常事態」

 20日の日経新聞の一面に藤井財務相とのインタビュー記事が掲載され、この中で藤井財務相は2009年度における6兆円超の税収の落ち込みを国債の追加発行で補う考えを示した。

 これにより今年度の新規国債発行額は補正後の44兆円から、初めて50兆円台に拡大する見通しとなった。国債の発行額が税収を上回るのは、戦後混乱期の1946年度以来となる。

 1947年以降は国債発行をせずに歳入を全額、税収や日本銀行納付金などの税外収入で賄えた均衡予算主義をとっていたが、昭和40年不況の影響などにより1966年1月に国債発行が再開された。それ以降、新規国債の発行額が税収を上回るのは初めてのケースとなる。

 政府による今年度の補正予算の見直しで捻出した約3兆円は、税収の下振れの穴埋めには転用せず、福祉などの来年度予算の財源として使うことも藤井財務相は明らかにした。これは今年度の予算は基本的に前政権の責任、来年度予算から現政権の責任であることを明確にしたものとみられる。

 今年度の二次補正予算にともない約6兆円規模の国債が増発される可能性が高まった。さらに今年度の国債発行については、別途2.6兆円規模の年限振り替えが必要となる。

 今年度の個人向け国債の販売額は当初計画を1兆円近く下回り、新型窓口販売分も当初予定の1.8兆円を大きく下回ることが予想されることから、今後の状況次第では2兆円近くが市中消化に振り返られる可能性がある。加えて、当初発行を予定していた物価連動国債(3千億円)、変動利付国債(3千億円)については発行が見送られる見通しとなり、この6千億円分も他の国債に振り返られることとなる。このため今年度国債発行予定額の中で、都合2.6兆円規模で国債の他年限の振り替えも今後実施される

 今年度の6兆円規模の税収不足見込み、個人向け販売の低迷による振り替え等はある程度織り込み済みでもあり、これによる債券市場への影響は限定的かと思う。

 そうは言うものの収入(税収)よりも借金(国債発行額)が多いというのは、やはり異常な事態と言わざるを得ない。さらに、来年度予算編成の行方が不透明であるため、先行きの国債需給への懸念が完全に払拭されたわけではない。

 来年度予算については、一般会計の概算要求が95兆円程度と過去最大規模に膨らんだ。藤井財務相はこれを92兆円以下に抑える考えを表明した。

 歳出面の内容を見ると、民主党が衆院選マニフェストで掲げた公約実現のために必要な約7.1兆円の支出が上乗せされた結果一般歳出は50兆円を大幅に超える規模が予想される。地方交付税が17兆円程度、国債の償還などに充てる国債費が22兆円程度見込まれる。

 歳入面からみると、税収は40兆円割れとなると見込まれる。民主党の公約にある暫定税率の廃止にともなう2兆円程度の分は、地球環境温暖化対策税への振り替えの可能性を藤井財務相は示した。その分の減額は回避されるものの、いずれにしても税収総額は40兆円割れとなる可能性が高い。

 そして、今年度の補正予算の見直しで捻出した約3兆円分も福祉等に充てることで来年度予算の財源となる。「その他収入」については財務省の平成21年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算では8.2兆円程度を見込んでいたが、特別会計の埋蔵金や公益法人の内部留保の取り崩しなどにより、2009年度当初予算の約9兆円よりも積み増す意向も財務相は示した。

 最終的な歳出総額などが明らかにならないと必要となる国債発行額の想定も難しい。来年度の国債発行額に対しては、藤井財務相は今年度の国債発行額(補正後44兆円)よりも減らすとしている。総額そのものを92兆円以下に減額し、今年度の補正予算の見直しで捻出した約3兆円分が財源に組み込まれ、税収の減少要因とみられていた暫定税率の廃止にともなう分の税収は地球環境温暖化対策税への振り替えとなれば、新規国債の発行額を44兆円以下に抑えることも可能ではなかろうか。

 しかし、来年度の国債発行計画では、今年度の国債発行総額の149兆2044億円(一次補正後)、カレンダーベースでの発行額の130兆2000億円(同)を大きく上回ってくることはほぼ確実である。
by nihonkokusai | 2009-10-20 11:15 | 国債
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