「足元景気の状況と先行き」
設備投資、住宅投資が引き続きマイナスとなる一方、純輸出、個人消費、公共投資が全体を押し上げたかたちとなっており、外需の持ち直しと経済対策に支えられた 反発との評価をしている。
項目ごとの背景からはまず、実質輸出について10~12月期(前期比-14.6%)、1~3月期(同-28.9%)と2期連続して大幅に減少した後、4~6月期は前期比+12.4%の大幅増となっている。7月も前月比+2.3%と増加を続けている。
この輸出の持ち直しの要因としては、各国で打たれた各種経済対策が奏効し中国をはじめとする東アジアや、米国において、自動車や情報関連といった品目の在庫調整にほぼ目途が立ちつつあねとを指摘している。
公共投資も、公共工事出来高が4~6月期にかけて伸び率を拡大するなど、経済対策の執行に伴って増加を続け、この経済対策効果は個人消費にも現れている。いわゆるエコカー減税等による自動車販売の持ち直しや、エコポイント制度による家電販売の増加が、4~6月期のGDPベースの個人消費をプラスに押し上げた。
しかし、7月の完全失業率は5.7%と過去最悪を記録するなど、雇用・所得環境が厳しさを増している点も指摘している。夏場の天候不順もあって、全国百貨店売上高や全国スーパー売上高などでは大幅な減少が続き、7月の家計調査でも実質消費支出の前月比が減少幅を拡大するなど、個人消費の基調は引き続き弱い。
設備投資も、7月の資本財出荷(除く輸送機械)が前月比-1.3%となるなど、厳しい収益環境や設備過剰感を背景に大幅な減少が続いてる。
住宅投資も引き続き低調で、3月期末の値下げ販売により1~3月期は年率5万戸近い水準まで回復した首都圏新築マンション販売も、その後は再び4万戸程度の低い水準で推移している。
以上のような内外需要を背景に、鉱工業生産は持ち直しの動きを続けています。出荷・在庫バランスについても、資本財や建設財では引き続き在庫調整圧力の強い状態が続いているが、耐久消費財や生産財などでは、順調に調整が進捗していると須田委員はコメントしている。
こういった足元の状況を見て、今後の経済動向に向けて見るべき注意点がいくつか浮かび上がりそうである。まず、輸出については各国で打たれた各種経済対策が大きく影響したとなれば、すでに米国では新車購入支援を中止しており、景気の底打ちが明らかとなりつつある中、政府の支援策は打ち止めとなる公算が高く、それによる効果といったものは今後は期待しにくい。また、公共投資については民主党政権となり、今後は公共工事等は再び低迷する可能性がある。さらに雇用の悪化が続いており、それが個人消費の低迷に繋がっている。このため新築マンション販売の伸びも当面は期待しにくいことも確かであろう。
しかし、世界的に株価が回復基調となるなど、昨年9月15日のリーマン・ショック後にかつてないスピードで一気に落ち込んだ世界経済は、そこから更に落ち込むことは考えづらく、むしろ緩やかながらも回復してくるとみるのが妥当であろう。もちろん回復には時間が掛かり、生産などの水準がリーマン・ショック前にいきなり戻ることは考えづらい。破壊された機体を、壊れた箇所をひとつずつ直しながら元の機体に戻そうとしている当初段階にあると言える。雇用などについての修復はどうしても後回しにならざるを得ない。たとえ今後政府による支援がなくなっても、それによる落ち込みは一時的なものとなるのではなかろうか。