「欧州の国債増発」
まず、5月下旬に2009年中の476億ユーロの国債発行を閣議決定したばかりのドイツは、2010年に861億ユーロ(約11兆円)の新規発行を決めた。メルケル政権は。景気後退に伴う税収の大幅減と景気対策での歳出増加により、2010~11年の国債発行額は年間で700億~800億ユーロ台に増えると見ている。また、フランスのサルコジ大統領は歳入不足を補うために09年中に国債を追加発行すると表明した。イギリスも2009年度の国債発行額は前年度を上回る。英独仏とも国債発行額は第2次大戦後の過去最高となる見込みとなる。
ちなみに、日本の財務省資料に日米欧州主要国の国債発行総額の2008年度と2009年度の対比がある。日本については2008年度の138.0兆円から2009年度の149.2兆円と2008年度当初に比べて2009年度は18.1%増となっている。
これに対して米国は2008年度の0.76兆ドルから2009年度の1.9兆ドルと153%増となっている。欧州ではイギリスが2008年度の1465億ポンドから2009年度の2200億ポンドと175%増、ドイツは2008年度の2130億ユーロから2009年度の3460億ユーロと62.4%増となる。前年度比では英米の増加率が突出している。
現在のところ日本も含めて、増発された国債は無難に消化されている。各国中央銀行による金融緩和策や、景気の先行き不透明感によるリスク回避の動きなどが投資家の資金を国債へと向かわせている。しかし、債券市場にとり好環境がこのまま継続することも考えづらい。景気はいずれ回復基調となろうが、いったん増発された国債残高は高水準のまま維持されるため、いずれ需給への懸念が大きな足枷となる可能性は否定できない。