「BRICsによる米国債市場への影響力」
現在、注目されてきているのは、BRICs諸国が保有する米国債の残高である。2009年3月現在の米国債国別保有残高によれば、中国が7679億ドル、ロシア1384億ドル、ブラジル1266億ドル、インド382億ドルと、BRICs4か国合計では1兆711億ドルの米国債を保有している。
これに対して、日本は6867億ドル、イギリス1282億ドル、フランス271億ドル、イタリア166億ドルとこの4か国では8586億ドルしか保有していない。
6月10日に米10年債利回りは4%に接近したが、米債が売られた要因のひとつはロシアによる米国債の売却懸念であった。ロシア中央銀行のウリュカエフ副総裁は、保有する米国債を売却し、ドル資産での運用比率を引き下げる方針を示したためである。それとともに、IMFの発行する債券については100億ドル引き受けることも示した。 さらにブラジルの財務相もロシアと同様に準備金の一部をIMF債の購入に充てる方針を示し、これも米国債売却への思惑に繋がった。
ただし、中国は、ドルが今後も世界経済において支配的な役割を維持するとの見方も示しており、その後、ロシアのクドリン財務相が、近い将来にロシアの外貨準備の投資比率を大幅に変更する計画はないと発言したことで、BRICs諸国による米国債売却の懸念はひとまず収まった。
また、世界第2位の米国債保有国である日本の与謝野財務・金融・経済財政相はブルームバーグとの単独インタビューにおいて「米国債に対する我々の信頼は全く揺るがない」と発言したと報じられたことも、米国債需給への不安感をやや後退させた。
しかし、米国債の大量発行は今後も継続され、米国債の約半分を保有している海外投資家の動向がますます注目される。この中にあって巨額の米国債を保有するようになったBRICs諸国の動向が、今後も米国債市場に大きな影響を与えると思われる。