「量的緩和政策と信用緩和政策」
FRB(米国連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行)、そしてBOJ(日本銀行)ともにすでに政策金利は大幅に引き下げている。事実上の「ゼロ金利クラブ」が形成されているが、実はそれぞれ現実には完全なゼロ金利としていない点も共通である。
これに対し水野審議委員は、日本におけるゼロ金利政策や量的緩和政策の経験から、政策金利をゼロにしてしまうと短期金融市場の機能を失うという副作用について指摘している。欧米の中央銀行は今回の政策対応に関して、かなり日銀の政策を研究・分析していたことは間違いないと思われる。
非伝統的な金融政策としては政策金利の大幅な引き下げに加え、潤沢な流動性供給を通じた金融市場の安定維持と、クレジット市場などの機能回復を促す措置も挙げられる。
また非伝統的な金融政策の分類について、水野委員はバランスシートにおけるリスクと超過準備の取り扱いに基づく概念的な分類を挙げている。そのひとつが、バランスシート上にクレジット・リスクのある金融資産を計上すると同時に、超過準備は全て吸収するという「信用緩和政策(Credit Easing Policy)」である。また、バランスシート上にクレジット・リスクのない国債等の安全な金融資産を計上し、超過準備を供給することを「量的緩和政策(Quantitative Easing Policy)」と分けている。
これによれば、BOEはこれまで買い入れた資産の大半が国債であり・リスクを限定的にしか取っていないため「量的緩和政策」としているが、ECBとFRBは「信用緩和政策」であると主張している。ただし、この分類から言えば、特にFRBは3月に米国債の買い入れを発表したことで、「量的緩和政策」と「信用緩和政策」のハイブリッド型の非伝統的金融政策にシフトしたと考えられると水野委員は指摘している。
日銀については、必要なところに必要な資金を供給しており、結果としてはこの分類からはハイブリッド型と言えるが、積極的に超過準備を供給しているわけではないことで、かなり信用緩和政策に近いものといえよう。