「長期金利、日米欧で上昇」
特に昨年末に一時2%近くまで低下していた米国の長期金利は先週末、3.45%に上昇した。ドイツの長期金利も3.46%と、こちらもじわりじわりと上昇し、そして英国の長期金利も同様で、先週末は3.7%近辺に上昇している。日本の長期金利の上昇は欧米ほどではないものの、年末の1.2%割れから直近では1.5%近くにまで上昇した。
この日米欧の長期金利の上昇の背景としては、リーマン・ショックによる世界的な金融・経済ショックが緩和してきたことがある。特に金融不安に関しては、日米欧の中央銀行の積極的な施策によってさすがに収まりつつある。日本でもやや格付の低い社債が発行され順調に消化されるなど、クレジット市場も機能を回復しつつあることも確か。
さらに、先週、日銀が景気の現状判断を小幅に上方修正しており、加えて、政府も5月の月例経済報告において、景気の基調判断を2006年2月以来3年3カ月ぶりに上方修正した。
このように日本では景気の底打ちの可能性も出てきており、それは欧米についても同様である。景気の先行きについては、まだまだ警戒する必要はあるものの、過度に悲観的な見方をすることにもリスクが出てきており、これが株式市場への買戻し圧力となって、東京株式市場も堅調地合となっている。この景気回復への期待が日米欧の長期金利の上昇のひとつの要因となっている。
そして、日本も米国もそして英国も積極的な財政政策を実施し、国債発行額が大幅に増加してきており、それが、S&Pによる英国債の格付け見通しの変更へのつながり、米国債の格下げ懸念へと繋がった。ただし、日本国債については何故かムーディーズが格上げしていた。これは米国債の格下げを避けるためではないかとの見方もあったが、米国債の動向はさすがに世界の金融市場への影響も大きい。このように財政拡大による国債需給への懸念が、日米欧の長期金利上昇のもうひとつの背景となっている。
日本国債などと異なり、米国債のうち市場で売買可能なもの(市場性国債)の残高のうち6割が海外投資家が保有しており、特に最大保有国の中国の動向次第では、先行き米国債の需給への懸念が強まりかねず、米国債市場が動揺すると世界の金融市場にも影響を与えかねない。今後は特に米国の長期金利の動向に注意が必要となりそうである。