「金融危機局面において日銀が講じてきた政策」
政策金利については、2007年2月21日に8対1の賛成多数で無担保コール物翌日物誘導目標を0.25%から0.5%に引き上げた。反対したのは岩田副総裁。完貸付の基準貸付利率も8対1で0.75%に引き上げた。
そして、2008年10月31日に無担保コール翌日物金利を今度は0.5%から0.3%に引き下げたが、票決は4対4と可否同数となったため議長が決するという事態となった。また、基準貸付金利も0.25%引き下げられ0.5%に、当座預金に0.1%の金利を付与することを全員一致で決定した。
2008年12月19日には無担保コール翌日物金利誘導目標値を0.2%引き下げ0.1%とすることを7対1で決定した(反対は野田委員)。基準貸付金利も0.5%から0.3%に引き下げ(全員一致)、超過準備への付利は7対1で0.1%に据え置かれた(反対は水野委員)。
こうしてみると、この直近3回の政策金利の変更は反対票も出るなどしており、実際には票決以上に意見が分かれていた可能性もありそうである。
金融市場の安定確保のための措置としては、国債補完供給の拡充、米ドル資金供給オペの導入拡充、国債買現先オペの拡充、補完当座預金制度導入、CP買現先オペ等の対象先への日本政策投資銀行の追加、不動産投資法人債等の適格担保化、政府保証付短期債券の適格担保化、公的部門に対する証書貸付債権の適格担保範囲の拡大などを行なっている。
また長期国債買入れの増額もしており、2008年12月19日に年間16.8兆円ペースに増額、2009年3月18日に年間21.6兆円ペースに増額し、また長期国債買入れ対象も拡大されている。
企業金融円滑化の支援のための措置として、CP買現先オペの積極的活用、資産担保CPの適格担保要件緩和、企業金融支援特別オペの導入・拡充、民間企業債務の適格担保要件緩和、CP等買入れ、社債買入れなどを行なってきた。
金融システム安定のための措置として、取引所市場における売却の停止と金融機関保有株式買入れの再開、金融機関向け劣後特約付貸付を実施している。
100年に一度といわれる金融危機に際し、日銀もこれでもかと施策を次々に打ち出してきたことがわかる。これにより日銀のバランスシートも大きく変化してきている。いずれ出口に向けての戦略も必要になると思うが、