「不可解なムーディーズの日本国債の格上げ」
つまり、円建ての日本国債の格付けをAa3から1段階引き上げ、上から3番目のAa2としたのである。ムーディーズの日本国債の格付変更は昨年6月に1からAa3に1段階引き上げて以来となる。Aa2となったことで日米欧の主要7か国では単独の最下位からイタリアに並ぶこととなった。
今回の格上げ理由について、ムーディーズは家計の貯蓄率が高く、国債の買い手が多いこと。金融危機による金融機関の損失が欧米に比べ小さく、財政への影響が限られること。2007―08年の大量償還を順調に乗り越えるなど、国債管理政策が適正に実行されていることなどを挙げた(日経新聞)。
1998年11月以来の日本国債の格下げ理由も良くわからなかったが、今回の格上げ理由も良くわからない。家計の貯蓄率が高く、国債の買い手が多いことはすでに1998年以降全く状況に変わりはない。金融危機による金融機関の損失が欧米に比べ小さく、財政への影響が限られることというのはリーマン・ショックで日本国債の格付を引き下げていたはずではないはず。2007―08年の大量償還を順調に乗り越えるなど、国債管理政策が適正に実行されていることに関しては特に1998年の運用部ショック以降、適正に実行されてきていることは確かであるが。
今回、ムーディーズは外貨建て債務格付けをAaaから引き下げ、両者をAa2に統一すると発表しており、他の国では自国通貨建と外貨建ての格付が別々というのは例がなくそれを統一したのも今回の自国通貨建の格上げの要因のようであるが。それはあくまで技術的なものであろう。
今年7月からは2009年度補正予算にともない17兆円規模の国債が増発される。市場ではさすがに過去に例のない規模の増発だけに警戒感も強い。国債需給悪化が予想されるため、日本政府にムーディーズが配慮したのではとの見方があるが、かつて意見書を送りつけた日本の財務省にムーディーズが今になって配慮するとはむしろ考えづらい。
それよりも今頃になって自国通貨建てと外貨建てを統一したことは、何かしらの別な背景があったとしてもおかしくはない。自国通貨建ては結果としては格上げとなることで、つまり背景にはムーディーズが自国の米国債の格下げをしたくないため、日本国債と米国債の格付格差を縮めたのではないかとも疑われてもおかしくはない。