「10年国債は300回に」
1985年から銀行のフルディーリングや債券先物のスタートにより、債券はディーリング相場を向かえ、その売買の中心となったのが10年国債であった。1985年5月に指標銘柄という売買の中心銘柄が登場した。これは直近で発行量が多くディーリング銘柄として耐えうるものが自然とマーケットで選ばれたのである。最初に登場したのが68回債である。
1986年1月に78回債に移り、11月からは伝説ともなった89回債が指標銘柄として登場した。私が債券ディーラーとなったのが1986年10月であり、ほぼ89回債の登場とともにディーラー活動を本格化していった。その後の指標銘柄は105回、111回、119回、129回、145回、157回、164回、174回、182回、そして最後が203回となり、204回以降は直近入札された10年国債が常に指標銘柄として取り扱われ、現在に至っている。
考えてみれば、私は途中1年間、企画室に異動していた時期と、3か月のニューヨーク滞在、そして1か月の入院以外は1986年10月以降、つまり78回から300回まで10年国債を見てきたことになる。
このまま500回、1000回といずれ数えてゆくのであろうか。その際には果たして国債の残存額はどうなっているのか。やや気になるところでもある。なにはともあれ、10年国債も300回というひとつの節目を迎えたことも確かである。