「ECBによるカバードボンドの買い入れ」
まず、金融機関への資金の貸付期間を半年から1年に延長する。そして、ユーロ圏の金融機関が発行するカバードボンドと呼ばれるユーロ建て債券を買い入れることも発表した。詳細は6月4日の次回理事会後に公表される。
参考までに、カバードボンド(covered bond)とは「担保付き債券」のことであり、欧州で発達した資産担保証券である。銀行が発行して投資家に売却しても、銀行のバランスシートからオフバランス化されず、発行銀行が担保証券の原資産であるローン回収義務を負う。オンバランスとなるが資産の裏づけがあるため高格付けが得られる。政府や地方公共団体向けの債権をバックにしたものと、住宅ローンなどを担保にしたものがあり、欧州諸国を中心に急速に拡大した。
日経新聞では、ECBによるカバードボンドの買い入れについて、「量的緩和策」と報じていたが、トリシェ総裁はこの政策の「意図は、市場の回復、特に非常に打撃を受けている市場だ。スプレッドや流動性、債券を含む市場の存続を狙いとしている。われわれは量的緩和を開始しているわけではまったくない」(ロイター)と述べ、「量的緩和」ではなく「信用緩和」であることを主張していた。
ECBは日銀や米FRB、英イングランド銀行と異なり、国を跨いだ特殊な中央銀行である。仮に国債を買い入れるにしても、どの国の国債をどの程度の比率で買い入れるのか、その調整だけでもかなりの労力が求められ、ある意味現実的ではない、これは社債についても同様の問題があり、日銀のように国債や社債の買い入れには簡単には踏み込みづらいこともある。
トリシェ総裁は会見で「証券全般の中で、カバードボンドは金融危機の打撃を特に受け、他の証券よりも打撃が大きいセクターのひとつと理事会は考えている」とし、「他の(資産)買い入れについては原則としていかなる決定もしていない」とも発言し(以上ロイターより)、BOEやFRBの量的緩和策とは異なる面を強調している。
7日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)も開催され、すでに量的緩和策を導入している量的緩和の実施時期を3か月から6か月に延長し、国債や社債の買取額を1250億ポンドと当初計画から500億ポンド増額させた。