「債券先物の流動性低下の要因」
この要因として債券先物の流動性を供給していたとされるCTAやヘッジファンドなど海外勢が、大幅な損失を受けて円債先物からも手を引いたのが要因ではないかと指摘された。特にヘッジファンドは物価連動国債の価格下落などで大きな痛手を受け、またスワップ市場などからも撤退したところも多かったとみられ、これにより債券先物の建て玉も落としてきた可能性も指摘された。
ところが、東証が発表している「投資部門別 国債先物売買状況」を見てみると、どうやら一概に海外投資家だけが減少したわけでないことが伺える。 東証では月間ベースと年間ベースの国債先物売買状況を発表しているが、この月間ベースを元にして、2008年4月~9月と2008年10月から2009年3月と2008年度の前期と後期に分けて、集計をしてみた。
債券先物は生損保や事業法人等による売買もあるものの、そのほとんどが「証券会社」と「銀行」、そして「海外投資家」で占められている。このため、この3つの部門で比較した結果は以下の通り。
2008年度前期について証券会社は4,290,172億円(シェア37.6%)、銀行は2,319,763億円(20.3%)、海外投資家は4,687,138億円(41.1%)、そして合計が11,401,357億円となった。
2008年度後期について証券会社は2,401,466億円(シェア40.0%)、銀行は1,232,506億円(20.5%)、海外投資家は2,320,496億円(38.7%)、そして合計が6,000,582億円となった。
前期と後期の国債先物の売買高は合計で約1140兆円と約600兆円となり、ほぼ半分近くとなっており、建て玉が約半分近くに減少したことと整合性がある。 その減少の要因を投資部門で見てみると、金額はそれぞれの部門で大きく減少しているが、売買シェアを見てもわかるようにシェアそのものに大きな変化はなかったことがわかる。
つまり、債券先物の流動性低下の要因は海外投資家の撤退といった要因などとともに、国内の銀行や証券会社による売買高の減少によるものであった。リーマン・ショック以降の金融経済危機の影響で、海外投資家だけでなく、国内勢を含めての銀行、証券のリスク許容度も大きく減少し、その結果として債券先物全体の流動性が低下したと思われるまた、金融危機の影響などから債券先物と現物との連動性が薄れたことも、参加者減少の要因と指摘する声もあった。