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ワールドカップの優勝国予想と物価予想の違い

 日本銀行ワーキングペーパーシリーズと題されたレポートが日銀のサイトにアップされている。このなかに6月5日にアップされた、『「分からない」という回答から分かること?』とタイトルされたレポートがアップされた。面白い着目点である。

 このレポートの趣旨としては、『短観の「物価見通し」における「分からない」という回答の中から、真の意味では「分かる」と推察される回答を機械学習の手法を用いて識別する』というものである。

 『一般に、アンケート調査における「分からない」という回答には、次のふたつのケースがある。ひとつは、「分かる」と「分からない」との間の線引きが明確な場合である。たとえば、「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。』

 『もうひとつのケースは、「分かる」と「分からない」との間の線引きがいくらか曖昧な場合である。たとえば、「2018年のワールドカップの優勝国はどこになると思いますか?」という質問に対する「分からない」という回答がこれにあたる。後者のケースでは、「分からない」という回答と「ブラジル」という回答を異なる回答とみなすかどうかは、議論の余地がある。』

 ワールドカップの優勝国予想については選択肢が32しかない。世界ランキングも発表されている。まったくサッカーに興味がない人であれば「分からない」と答えるかもしれないが、ドイツやブラジルと答える人が多いであろうことは容易に想像しうる。

 これに対して「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに対して、「分からない」という回答をする人が多いであろう。

 それでは短観の「物価見通し」については、上記の事例のどちらか該当するであろうか。短観とは企業に調査票を送って答えてもらうものであり、基本的に企業経営者が答えているはずのものである。それでは企業経営者にとって、物価の予想は「ワールドカップの優勝国予想」のような容易なものなのか、それとも「量子コンピュータの仕組み」のようなものなのであろうか。

 短観では「自社の販売価格」も聞いている。こちらについては当然ながら企業も予想を立てる必要がある。そうでなければ年度の計画、もしくは長期計画などが立てられない。この「自社の販売価格」の予想を参考にして「物価見通し」も回答するということは考えられる。

 しかし、自社の販売価格はあくまで物価のほんの一部にすぎず、それで物価全体を見通すことは難しい。企業経営者であっても、物価はワールドカップの優勝国予想のように比較的容易に見通せるもの ではないはずである。

 日本の消費者物価指数はどのような構成要素となっているのかをご存じであろうか。かなり専門的な人でなければ、それは答えられないはずである。たとえば、日本の消費者物価指数には帰属家賃が大きく影響しているとされるが、それについて的確に答えられる人も少ないのではなかろうか。

 このように消費者物価指数の仕組みについては、ワールドカップの優勝国予想のごとく容易に答えられるものではない。これは「量子コンピュータの仕組みを知っていますか?」という問いに近いものであると思う。

 それでは日銀が大胆に国債やETFなどを買えば、どのようにして消費者物価は上がるのか。これについてもその経路を具体的に説明することは困難となる。金融市場の資金量が増加すれば、単純に物価が上がるものではないことは、この5年間で日銀が証明してきた。

 日銀の黒田総裁は20日にポルトガルのシントラで開かれた欧州中央銀行(ECB)のパネルディスカッションで、3%の賃上げを求める政府の要請はかなり適切だと指摘したが、この背景には、日銀の物価目標の達成に向けては、現状よりはるかに高い年3%ペースでの賃金引き上げが必要との認識を示した。

 日銀はやることをやったので、あとは企業経営者の努力次第ということになのであろうか。企業経営者にとり、何故賃金を抑制しているのかは一番わかっているはずである。企業経営者にとってはワールドカップの優勝国予想のように、賃金をなかなか引き上げられない理由を説明することができるであろう。しかし、日銀の異次元緩和によって物価目標達成させるため、結果として賃金を引き上げなければならないのかについては疑問を呈するのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-06-22 10:08 | 日銀 | Comments(0)

アマゾンが日本の物価を引き下げている?

 日銀は6月5日に「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」というレビューをサイトにアップした。

 日本に限らず、欧米の物価もなかなか上昇してこない。米国は消費者物価指数などがやっと2%台に乗せてきたものの、イエレン前FRB議長は物価の低迷について、これを「謎」と称した。その理由のひとつにIT化による影響が考えられる。特にアマゾンを中心としたインターネット通販が物価の押し下げ要因になっている可能性がある。

 日銀のレビューでも次のような指摘がある。

 「アマゾンなどのインターネット通販の急速な拡大が、スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっているという声が多く聞かれるようになってきている。」

 実店舗を持たず人件費も節約可能なインターネット通販での価格は、確かに実店舗の表示価格に比べて安いことが多い。以前には特に家電商品でみられ、ネットで調べた価格を店頭の商品購入の際に提示して、価格の引き下げ交渉をするといった光景も見られた。

 しかし、アマゾンなどのネット販売の拡大は、家電だけでなく広範囲の商品についても価格の引き下げを可能にしつつある。アマゾンではプライム会員などを主体に送料も無料化するなどしており、種類豊富な選択肢があり、実店舗より安い価格の商品が、家に直接届く仕組みになっている。

 それではこのアマゾンなどのインターネット通販の拡大がどのような経路で物価に影響を与えているのか。日銀のレビューは下記のように解説している。

 「わが国の消費者物価指数(CPI)においては、原則としてインターネット販売価格は価格調査の対象となっていない。このため、インターネット販売価格の変動自体がCPIに直接影響を与えるわけではない。」

 「しかし、インターネット通販の拡大を受けて競争環境が変化すれば、既存の小売企業の一部が対抗措置としての値下げを行うことで、結果的にCPIで計測される物価が下押しされる可能性はある。」

 家電では昔、ヤマダ電機の価格がひとつのベンチマークとなっていたと言われたことがあった。現在ではアマゾンの価格がひとつのベンチマークとなっているとしてもおかしくはない。結果としてそれが物価の下押し要因となっている可能性は否定できない。これは日本国内だけでなくグローバルで起きていることでもある。



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# by nihonkokusai | 2018-06-21 09:46 | 景気物価動向 | Comments(0)

4月のロシアによる米国債の保有高が前月から半減したのは政治目的なのか

 米国の財務省が先日公表した米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、4月にロシアが保有している米国債を大量に売却し、保有額が半減していた。ちなみに中国による米国債の保有額については小幅な減少に止まっていた。

「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」

http://ticdata.treasury.gov/Publish/mfh.txt

 これによると4月の国別の米国債保有高のトップは引き続き中国。4月時点の中国の米国債保有額は1兆1819億ドルとなり、3月の1兆1877億ドルから58億ドル減少していた。

 今年1月に中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたが、その後中国当局が米国債購入の縮小または停止を検討しているとの報道は否定した。3月に中国の駐米大使が米国債の購入減額について「あらゆる選択肢を検討している」と含みを持たせた。つまり、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段を講じる可能性を示した。

 中国による米国債の保有高は今年1月は昨年12月に比べて減少していたが、2月と3月は「増加に転じ」昨年12月の水準に戻した。4月にやや減少させていたものの、報復措置として米国債の購入を減額するなどの手段は講じられてはいない

 中国の3月末の外貨準備高は前月比90億ドル増の3兆1430億ドルと再び増加に転じていた。しかし、4月は再び減少し3兆1200億ドルとなっていたことで、4月の中国による米国債保有高の減少はこれで説明がつきそう。

 今回も2位となっていた日本による3月の米国債保有額は1兆312億ドルと2月の1兆435億ドルから123億ドルの減少となっていた。

 さて問題のロシアによる米国債保有高であるが、4月は487億ドルと3月の961億ドルから474億ドルの減少となっていた。日経QUICKニュース(NQN)によると、「米国がロシアのアルミ大手ルサールへの経済制裁を打ち出すなど、2016年の米大統領選への介入疑惑やシリア問題を巡り米ロ関係が急速に悪化した時期と重なる」とされる。

 しかし、政治的な配慮によってロシアによる米国債保有高を減少させたとなると、さらに米国とロシアの関係悪化に火が付きかねない。日経QUICKニュース(NQN)の記事でも指摘されていたが、ロシア政府がルーブル買い・ドル売りの原資確保を目的に主に米債で運用する外貨準備の一部を取り崩したとみるのが現実的か。

単位、10億ドル、()内は前年比増減

トップ10

中国(China, Mainland)1181.9、-5.8

日本(Japan)1031.2、-12.3

アイルランド(Ireland)300.4、-17.5

ブラジル(Brazil)294.1、+8.1

英国(United Kingdom)262.7、-1.0

スイス(Switzerland)242.2、-3.2

ルクセンブルク(Luxembourg)213.9、-7.7

香港(Hong Kong)194.0、-2.2

ケイマン諸島(Cayman Islands)180.7、-15.2

台湾(Taiwan)168.1、-2.0

22位

ロシア(Russia)48.7、-47.4


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# by nihonkokusai | 2018-06-20 09:51 | 国債 | Comments(0)

欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか

 6月13日の米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場で予想されていた通り政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。これは8人のメンバー全員一致で決定した。ちなみに次回からはFRB副議長に指名されているクラリダ氏と、同理事に指名されているボウマン氏が加わり、メンバーは10人となる。13日に発表された会合参加者による金融政策見通しによると、あと年2回の利上げを見込むことになっていた。これにより今年の利上げ回数は、これまて見通しの3回から計4回となる。議長会見が予定されている9月と12月のFOMCにおいて利上げが決定される可能性が強まった。議長会見については来年からは8回のFOMCすべてで行われることも発表された。

 欧州中央銀行(ECB)ECBも正常化のステップを歩み始めた。14日にECBは金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。月300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止する。主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。資産保有額は維持することも発表しており、国債の償還分についてはその分は買い入れることになる。正常化に向けての慎重姿勢はイタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。

 そして日銀は15日の金融政策決定会合において、長短金利操作付き量的・質的金融緩和策の維持を決定した。欧米の中央銀行が出口に向けて慎重ながらも舵を取るなか、日銀は非常時の政策とも言える異次元緩和策を継続している。

 ただし、現実には国債の買入規模を縮小しているなど出口戦略も意識しているかにみえるが、いまだに買入れペースの保有残高の増加額年間約80兆円と言う数字を残している。また長期金利の誘導目標もゼロ%程度としており、平時とも言える状況になっているにも関わらず、非常時のような対応を続けていると言わざるを得ない。

 何故、日銀は柔軟な対応を取れないのか。欧米の中央銀行が出口に向かうなか、日銀だけが出口に向かえないのは何故なのか。これは、日銀が大胆な緩和策を取れば物価のグローバルスタンダードとした物価の前年比2%の上昇は、いとも簡単に達成しうるとしたリフレ派と呼ばれる人達の意見を政府が日銀に押し込んだことが要因といえる。しかし、そのような考え方が間違っていたことはこの5年間の日銀の対応と物価の動きを重ねればわかるはず。

 日銀が目標として掲げてしまった2%の物価目標そのものが日本経済にとって適切なのか。黒田総裁は15日の会見で7月末に公表する新たな「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」に向け、物価について議論を深めていくと明言した。元々日銀は日本の物価についての適正な水準はゼロ近傍、もしくは前年比1%あたりを想定していたはずである。1%あたりとすれば、目標としている物価、つまり消費者物価指数(除く生鮮食料品)であれば、今年に入り一時1%台に乗せていた。つまり、物価目標の2%に達成していないものの、出口戦略に舵を取ったECBのように慎重ながらも日銀も出口戦略を採り得たはずである。しかし、日銀は2%を絶対目標のごとくしてしまって柔軟さをなくしてしまった。これにより頑なな姿勢を変えられずにいる。このあたり、7月の展望レポートに向けて、日本の経済実態に即した物価水準にあらためる、もしくはもう少し柔軟な姿勢に変化させることが必要ではないかと思われる。


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# by nihonkokusai | 2018-06-19 09:47 | 日銀 | Comments(0)

北朝鮮リスクの後退により、市場のリスク選好ムードが強まるか

 6月12日の歴史的な米朝首脳会談を経て、政治面からみるとアジアのパワーバランスに大きな変化をもたらす可能性が出てきた。北朝鮮と中国、ロシアのこれまでのややベールに閉ざされていた関係に、韓国と米国も加わることによって、あらためて北朝鮮のベールが剥がされる可能性がある。ここに日本がどのような形で北朝鮮との関係を構築するのか、拉致問題という課題を抱えながら、日本政府にも大きな課題が与えられることになる。

 金融市場ではリスク回避の巻き戻しというか、リスク選好型の動きが強まることが予想される。北朝鮮リスクが金融市場を萎縮させるほど影響していたわけではないものの、北朝鮮によるミサイル試射や核開発によって地政学的リスクが市場でもそれなりに織り込まれていたことも確かである。その巻き戻しも起きてこよう。さらに今後、北朝鮮がアジア経済にどのような影響を与えるのかというあらたな見方も必要となってくる。

 いまさらながら米国と北朝鮮は冷戦状態にあったことを今回の日米首脳会談は気付かせてくれた。その状態が緩和されるとなれば、アジアは政治バランスだけでなく、経済バランスにも影響を与える可能性がありうる。米国と北朝鮮の緊張緩和により、北朝鮮への経済制裁も緩んでくることが予想される。北朝鮮と米国などとの貿易関係がどのようになっていくのかも不透明ながら、ネガティブな見方よりもポジティブな見方も今後、必要になってくるのではなかろうか。

 そこに日本がどのようなかたちで関与しうるのか。霧に隠れていたマーケットが出てくる可能性もある。むろん北朝鮮の経済実態はかなり悪化しているとの見方もあることで、経済格差といった問題も露見するかもしれない。

 これらは日本経済にも大きな影響与えかねず、それは金融市場にも当然ながら影響を与えることになる。株式市場がこれをポジティブに捉えれば、日経平均が3万円の大台に向けて上昇するきっかけとなる可能性もある。

 金融市場でリスク選好ムードが強まり、FRBが着々と正常化を進め、ECBも正常化に向けた舵を切るとなれば、日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の行方にも微妙ながらも影響を与える可能性がある。むろん物価そのものが目標に向けて上昇しない限り、日銀にとっては現在の緩和策の修正は難しいのかもしれないが、リスク選考ムードの強まりによる為替や株の動向如何では、その修正も可能となるかもしれない。



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# by nihonkokusai | 2018-06-18 09:55 | 国際情勢 | Comments(0)

欧州中央銀行(ECB)は年内の資産買入停止を決定、利上げについては慎重姿勢を示し市場に配慮

 6月14日に欧州中央銀行(ECB)は、金融政策を決める政策理事会において、資産を大量に買い入れる量的緩和政策を年内に終了することを決めた。

 ECBの債券買入額は今年1月からそれまでの月600億ユーロから300億ユーロに減額し、債券買入は少なくとも今年9月末まで継続するとしていた。300億ユーロの買入は9月まで続け、10月から12月にかけては月間の資産買入額を150億ユーロに減らし、買入そのものは12月で停止することになる。

 年内の資産買入については、フランス中銀総裁などが量的緩和策を年内に終了させる公算が大きいことが示唆されていた。ECBのプラート専務理事も14日のECB理事会において、資産買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べていた。ただし、年末までまだ期間もあり、今回の会合でそれが正式に発表されるのかどうかが、ひとつの焦点となっていた。

 市場はECBによる年内の資産買入停止をかなり織り込んできていたこともあり、ECBはこのタイミングで決定したとみられる。さらに次のステップとなり利上げの時期についての示唆があるのかどうかも、注目点となっていた。

 これについてECBは、現在の超低金利が「少なくとも2019年夏までは現在の水準にとどまる」とした。つまり主要政策金利となるリファイナンス金利は、少なくとも来年の夏まではゼロ%のままとし、利上げはそれ以降になることを示した。

 ECBはFRBとは異なり、正常化に向けた動きは極めて慎重である。このため、量的緩和政策の年内終了という正常化に向けたステップによる市場へ影響を軽減させるため、次のステップとなる利上げに向けては期間を置くこととし慎重姿勢を示した。さらに資産保有額は維持することも発表しており、これは国債の償還分についてはその分は買い入れることとなる。こういった正常化に向けての慎重姿勢は、イタリアの政治リスクや物価が目標を達成していないことも理由となろうが、市場に配慮していることも確かである。


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# by nihonkokusai | 2018-06-16 11:34 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の国債市場が静かな悲鳴を上げている、日銀の国債買入減額もこれへの配慮か

 6月13日の日本の債券市場では、国債のベンチマークとも言える10年国債の直近に発行された銘柄(市場ではカレント物と呼称している)が、日本相互証券(BB)で取引が成立しなかった。

 日本の国債を中心とする債券の売買は、主に相対取引で行われている。その多くは業者と呼ばれる証券会社などと投資家が直接相対で取引する。これについては外部から、つまり当事者以外には見えない。売買高などは証券業協会などに報告されることで、月次での売買高はのちほどわかっても、リアルタイムではわからない。

 ただし、証券会社などの業者は自らのポジション調整等のために日本相互証券などを通じて業者間で売買を行っている。それは日本相互証券の端末を持つ業者ならばリアルタイムで把握できる。13日の10年国債カレントの出合いがなかったというのは、日本相互証券での取引のことである。

 このため実際には業者と投資家の間で取引があった可能性はある。しかし、業者のポジション調整の場として、もしくは思惑的な理由からポジションを保有する目的でも使われる日本相互証券で、現物債のベンチマークといえる10年債カレントが出合わないというのは、それだけ流動性が枯渇していると見ざるを得ない。

 もちろん6月13日に初めて10年債カレントが日本相互証券で出合わなかったわけではない。6月11日には10年債だけでなく、2年債と5年債のカレントまでもが出合いがなかった。こちらは極めて異例と言える。

 日銀は6月14日に3年超5年以下の国債買入を前回6日の3300億円から3000億円に減額した。1月31日に日銀は3年超5年以下を3000億円から3300億円に300億円増額していた。これは欧米の長期金利上昇を背景に日本の10年債利回りが0.1%に接近したことに加え、1月9日に超長期ゾーンを減額した際の影響を打ち消す意味もあった可能性もあり、シグナル効果を意図したようなオペレーションとなった。

 今回はこのタイミングで再び3000億円に戻した。国債の利回りがここにきて特に低下していたわけではない。13日にFRBは利上げを決定し、米長期金利に上昇圧力が掛かりやすいタイミングでもあった。もちろん米長期金利が上昇すればドル円も上昇する可能性があり、円安圧力が強まることも予想され、外為市場への影響を軽減できるというタイミングも意識されたのかもしれない。

 しかし、それ以上に国債の流動性も意識された可能性がある。現物債市場は、ほぼ日銀により独占されてしまっているような状況にあり、それが国債の流動性を枯渇させている。それを多少なり緩和させるための減額とも言えなくもない。ただし、300億円減額したからといって今の状況が大きく変わるわけでもない。


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# by nihonkokusai | 2018-06-15 09:21 | 債券市場 | Comments(0)

米国の物価動向とFRBの利上げペース

 米労働省が12日に発表した5月の米消費者物価指数は前月比0.2%上昇した。前年同月比では2.8%の上昇となりガソリンなどエネルギー価格の上昇が全体を押し上げた。また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.2%、前年同月比で2.2%の上昇となった(日経新聞電子版の記事より)。

 米消費者物価指数は総合では、2012年2月に前年比プラス2.9%となって以来の大きな上昇となった。今年に入ってからは1月が前年比プラス2.1%、2月が同2.2%、3月が同2.4%、4月が同2.5%、5月が同2.8%となっていた。ここにきての前年比が大きく上昇したのは、原油価格の上昇に依るところが大きいとみられる。原油価格の指標となっているWTIは昨年末の60ドル近辺から、5月には70ドル台を回復していた。

 また、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数も今年に入ってからは1月が前年比プラス1.8%、2月が同1.8%、3月が同2.1%、4月が同2.1%、5月が同2.2%となっていた。3月移行は2%台が定着している。この指数はエネルギーを除いているものの、原油を使った製品等などによって原油価格の上昇の影響も受けているとみられる。また、米国の景気そのものの拡大も寄与しているものとみられる。

 FFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置いているが、それは消費者物価指数ではなくPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としている。PCEデフレータも3月と4月は前年比2.0%となっている。PCEコアデフレータは3月が前年比1.9%、4月が同1.8%と2%には届いていないが、2%近辺にある。

 これをみてもFRBとしてもほぼ物価は目標値に近い位置におり、物価が利上げペースを阻害することはないとみられ、昨日のFOMCでも政策金利を年1.50~1.75%から1.75~2.00%に引き上げた。今年はあと2回の利上げとの見通しとなった。ただし、物価の上昇は緩やかなものであり、FRBとしても物価上昇を抑制する意味での利上げではなく、正常化を進めるためのものである以上、ここからの利上げの回数にも限度はあるとみられる。


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# by nihonkokusai | 2018-06-14 09:57 | 中央銀行 | Comments(0)

歴史的な米朝首脳会談の前に、市場では円安などリスク選好の動きが進んだ理由

 6月12日に米朝首脳会談が予定通りに実施された。まさに歴史的な日となるものと思われる。12日の東京市場ではドル円は110円台に上昇し、日経平均株価は一時23000円台を回復した。

 米朝首脳会談が実現されたことにより、朝鮮半島の非核化、さらには休戦状態にある朝鮮戦争の終結が実現する可能性が出てきた。これは北朝鮮を巡る地政学的リスクの後退とも捉えることができることで、いわゆる金融市場でのリスク回避の巻き戻しの動きが出ていたとしてもおかしくはない。

 ただし、11日にすでに欧米市場ではリスク回避の巻き戻しの動きが起きていた。これは米朝首脳会談に先回りして動いたというよりも、イタリアの政治情勢の行方に焦点が当てられていたといえそうである。

 それを端的に示していたのが、欧州の国債の動きであった。欧州の債券市場では、イタリアの国債が買い戻され、イタリアの10年債利回りは2.82%と先週末の3.11%から大きく低下していた。周辺国の国債も連れ高となったが、中核国の国債は総じて売られ、ドイツの10年債利回りは0.49%と先週末の0.44%から上昇し、フランスやオランダの国債も売られていた。昨日の欧州株式市場は、イタリア株など主体に買われて反発しており、この動きはまさにリスク回避の巻き戻しといえる。

 外為市場でもリスク回避の巻き戻しの動きから、円がドルやユーロに対して売られ、ドル円が110円台を回復し、ユーロ円は12日の東京時間に130円台を一時回復していた。

 この動きのきっかけとなったのは、イタリアのトリア経済・財務相が9日掲載の現地紙のインタビューで、同国が単一通貨ユーロを離脱する可能性を明確に否定したことによるものであった(日経新聞電子版の記事より)。

 イタリアでは5月にポピュリズム政党の「五つ星運動」と反移民を掲げる「同盟」が連立政権樹立に向けた政策で合意したものの、2党が選んだユーロ懐疑派の経済・財務相候補の起用をマッタレッラ大統領が拒否し、ポピュリスト2党の指導者は組閣を断念。五つ星のディマイオ党首はムーディーズの格下げが組閣を妨害したと批判し、大統領を弾劾する提案を検討していると指摘している。「同盟」のサルビーニ書記長は謀略の存在をほのめかし、再選挙を呼び掛けた。これがイタリア・ショックを引き起こし、欧州主体にリスク回避の動きを強めた。

 その後、イタリアの五つ星運動は政権樹立の争点となっていた経済相の人選でも妥協点を探り、ユーロ懐疑派のサボナ氏擁立を断念する構えを示し、あらためて新政権樹立を模索する動きを示した。五つ星運動と同盟は連立政権樹立で合意し、経済・財務相のポストに経済学教授のジョバンニ・トリア氏を起用することで、ジュセッペ・コンテ氏が首相に再指名された。これによりイタリア・リスクはいったん後退した。しかし、新政権がユーロ離脱に動く懸念はその後も存在した。

 それを今回、焦点ともなっていたイタリアの経済・財務相が明確に否定したことで、市場はひとまず安堵した格好となったのである。

 そして、今回の米朝首脳会談の行方を市場はどのように判断するのかであるが。それは今後の金融市場の動向に影響を与えるものとみられる。円高や株安となるリスクオフというよりも、素直に円安や株高要因となるリスクオンの動きを強めるのではないかと予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-06-13 10:21 | 国際情勢 | Comments(0)

イタリア・ショック前の4月に日本の投資家はスペインやイタリアの債券を買い越しに

 8日に財務省は4月の国際収支状況(速報)を発表した。この中で、財務省のサイトにアップされた付表3にある対外・対内証券投資のうちの対内証券投資(地域別内訳)から日本の投資家がどのような海外資産を購入していたのかを確認してみたい。

「国際収支状況」財務省 http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

 対外証券投資で日本国内の投資家は、4月に海外の中長期債をネットで2兆2888億円買い越しとなっていた。これを地域別内訳で確認してみたい。

 米債については7026億円の買い越し、ドイツ債については6722億円の売り越し、フランス債を2980億円の買い越し、オランダ債を3060億円の買い越しとなっていた。そして、イタリア債を1691億円の買い越し、スペイン債を3499億円の買い越しとなっていたのである。

 昨年10月以降、日本の投資家はドルヘッジコストの高騰を嫌気して、欧州債へのシフトを進めてきたとされる(ロイター)。日本の投資家がユーロを介して欧州の国債などを購入すると一定の利回りが確保できたためとも言える。特にイタリアやスペインなど周辺国の国債利回りは、ドイツなど中核国の国債の利回りに比べて高い。

 米債は6か月連続での売り越しとなっていたこともあり、ひとまず利回り上昇が落ち着いたところで押し目買いを入れてきたとみられる。ドイツについては2月以降の利回り低下がいったん落ち着いていたことで、利益確定売りか。

 スペイン債については、利回り低下が落ち着いたとみられる状況で押し目買いを入れてきたとみられる。また、イタリア債も同様か。

 しかし、その後、イタリアやスペインでは政治リスクが強まり、イタリア国債が急落したのはご承知の通り。スペイン国債も同様に下落し、これにより国内投資家は多少ながら影響を受けた可能性がある。

 念のため1月以降の日本の投資家によるイタリア債とスペイン債への投資動向を確認すると下記のとおりとなる。(単位、億円)

スペイン債、1月+829、2月+519、3月+2821

イタリア債、1月+443、2月+51、3月-665


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# by nihonkokusai | 2018-06-12 10:14 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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