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債券市場の機能をさらに低下させたきっかけとは

 債券市場の機能低下は今年に入り顕著に現れている。今年に入り、日本相互証券で10年債の直近発行された国債(カレント物)が出合わなかった日が3月13日、5月28日、同31日、6月11日、同13日、7月4日とすでに6回あった。これまでの年間の最多回数2回であり、これをすでに上回っている。2年債と5年債のカレントに至っては、出合わない日が普通になりつつある。

 債券先物もここにきての値幅は5銭前後が多く、10銭を超える日がほとんどなくなってきている。なぜ債券市場はこのように急激に機能が低下してしまったのであろうか。

 その背景には日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和政策がある。日銀が年間の新規国債の発行額を国債買入でほぼ吸い上げ、流動玉が枯渇している。さらに長期金利コントロールによって、10年債利回りがほぼゼロに抑え込まれ、動く余地がほとんどなくなってきている。

 5月から始まったT+1と呼ばれる国債の約定日から決済日までの間が1営業日に短縮されたことも影響している。国債の入札日の翌営業日には日銀が新発債をオペで買いにくる。利払い月も10年債などはT+1となり、期間リスクが後退し、債券先物はヘッジ機能も失いつつある。

 しかし、その債券先物も今年の3月2日には60銭も動いていた。正確に言うと日中、高値から60銭下落した。10年債利回りでも0.040%から0.080%に上昇するなど波乱含みの展開となっていたが、この日の債券先物の急変が、それ以降の債券市場の動きを鈍くさせたとは言えまいか。

 3月2日の債券下落のきっかけとなったのが、日銀の黒田総裁は衆院の所信聴取である。「2019年度ごろ出口を検討していること間違いない」と発言したことが伝わり、これを受けて債券先物は一気に下落した。ただし、これは想定通りに物価が上昇していればの話であった。ところが「金融緩和や引き締めは、無限に続くわけではない」との発言もその前にあったこともあり、海外ヘッジファンドなどが仕掛け売りを入れたか、「黒田」、「出口」という単語にコンピュータ使った自動取引、いわゆるHFTが反応したのではないかともされた。

 いずれにしても海外投資家が債券先物で仕掛け的な動きを見せた可能性は高い。結局はこのショートも買い戻せざるを得なかった。これを機会に海外投資家による仕掛け的な動きは影を潜めた。まったく参入していないわけではないかもしれないが、海外の短期筋が日本の債券先物からいったん手を引いた感もあり、それ以降、相場がさらに膠着し、現物債の売買も低迷ししてまったように思える。


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# by nihonkokusai | 2018-07-23 09:27 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ大統領がFRBの利上げを牽制?

 米国のトランプ大統領は19日、CNBCテレビのインタビューで、中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が進める利上げ方針に「必ずしも同意しない。感心しない」と発言、追加引き上げをけん制した(時事通信)。

 「我々の通貨は上昇している。それは我々を不利な状況に置いている」として、利上げ継続を背景にしたドル高の動きに不満を表明した(日経新聞電子版)。

 米国の景気拡大が継続していること背景にFRBは漸進的な利上げを行っているが、米国の景気拡大を利上げが裏付けているともみえるため、FRBに対して利上げを抑制させるような動きをトランプ大統領が取っていないのとみていたが、そうではないようである。

 たしかに今回のトランプ大統領の発言は、これまでになかったわけではない。利上げは好きではない、ドル安が好ましいと言った発言はこれまでにもみられた。しかし、自ら選んだパウエル議長率いるFRBの利上げに対し、これほどあからさまな表現をしたのは珍しい。

 トランプ大統領は「一般市民だったら言ったであろうことを言ったまで。大統領としては言うべきではないといさめる人もいるだろうが、少しも気にしない」とも発言したそうである(日経新聞電子版)。

 これまで大統領がなぜ金融政策に言及するのを控えていたのかといえば、政治が中央銀行の金融政策に絡むとあまりろくな事がなかったためである。政治家は国民の支持を得たいがために、金融引き締めを嫌い金融緩和を求める。

 過去にもジョンソン政権がウィリアム・マクチェスニーFRB議長に、ニクソン政権がアーサー・バーンズFRB議長に、それぞれ金融緩和政策の採用を迫ったことが1970年代のインフレの要因だとされている(WSJ)。

 ただし、今回のトランプ大統領のFRBの利上げ牽制発言がどれだけ本気で、それが果たしてFRBの政策に影響を与えるのかという点はなかなか微妙なところとなる。

 CNBCによると、ホワイトハウスは同社に対して「大統領は当然、FRBの独立性を尊重している」との見解を示すとともに、「(インタビューでも)FRBの政策決定には干渉しないと話している」と強調した(日経新聞電子版)。

 ちなみにある国の中央銀行は、時の政権から金融政策への牽制どころか、2%の物価目標を迫られた上に、アコードなるものを締結し、大胆な国債買入を主体とした異次元緩和を行っているようである。これでインフレが起きたわけではないものの、禁断の地に踏み込み、大きな歪みを起こしていることは間違いない。


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# by nihonkokusai | 2018-07-22 09:18 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀は長期金利操作目標の柔軟化を検討と報じられ、ドル円と債券先物が下落

  時事通信は20日夜に「日銀、長期金利目標の柔軟化検討=一定程度の上昇容認-7月末会合で議論」とのタイトルの記事を報じた。

 「日銀が、大規模な金融緩和策で「0%程度」としている長期金利の誘導目標の柔軟化を検討することが20日、分かった。一定程度の金利上昇を容認する。」(時事通信)

 また、ロイターも20日夜に「日銀が金融緩和の持続性向上策を議論へ、長期金利目標の柔軟化など=関係筋」とのタイトルの記事を報じた。

 この記事によると、「日銀は30、31日の金融政策決定会合で、鈍い物価動向を踏まえ、物価2%目標の実現に向けて金融緩和策の持続可能性を高める方策の検討に入った。金融緩和政策の長期化が避けられない情勢の中、金融仲介機能や市場機能の低下など副作用の強まりに配慮し、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和における長期金利目標やETF(上場投資信託)など資産買い入れ手法の柔軟化などが選択肢になるもようだ。」(ロイター)。

 私も13日に「日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい」とヤフーニュースにアップしたのだが、日銀は期待に応えてくれそうである。

 この記事のなかで、「7月の決定会合で物価が上がらない要因を再点検し、このまま異次元緩和を続けて行くことによる副作用についても検討し、副作用を軽減しつつも大胆な緩和を継続するための政策について検討してくる可能性がある。」と指摘したが、この見方は間違ってはいなかったようである。

 また、「ここにきて日銀の国債買入の減額などに為替市場が過剰反応してこなくなるなど、微調整イコール円高との認識が後退してきている状況も修正を行いやすくしているのではなかろうか。」とも指摘したが、20日の夜にドル円は112円台半ばから111円台半ばに下落していた。この要因としては、トランプ大統領によるドル高牽制発言が影響との見方もあるが、上記の時事やロイターの記事による影響もあったものとみられる。それでもこの程度の影響でいまのところ収まっているとの見方もできる。ただし、23日の東京時間での動きにも注意する必要がある。

 そして、ここにきて毎日数銭しか動いていなかった債券先物が20日のナイトセッションで久しぶりに大きく動いた。ナイトセッションの寄付は150円97銭、高値150円98銭、安値150円41銭、引け値150円49銭となっていた。値幅57銭ということで、ナイトセッションどころかザラ場中でも、これだけ動いたのは今年3月2日の60銭値幅以来となる。このときは黒田日銀総裁の出口発言に過剰反応していた。

 一定程度の金利上昇を容認するとなれば、債券先物のある程度の調整は入るはずであり、10年債利回り、つまりの日本の長期金利にも上昇圧力がかかる。ただし、まだ検討するかも、という段階でもあるため、0.11%以上に上昇した際には日銀は指し値オペを実施してくる可能性がある。

 いずれにしても「8月には何らかの調整を日銀が行ってくる可能性がある。国債やETFなどの買入額の柔軟化、そして長期金利コントロールの柔軟化などが候補となるのではないかと思われる。金融機関の収益など考慮するとマイナス金利政策をまず止めるべきと思われるが、これについてはややハードルは高いのではなかろうか。いずれにしても日銀の英断を期待したいところである。」(下記13日の記事より)

「日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい」


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# by nihonkokusai | 2018-07-22 09:14 | 日銀 | Comments(0)

米国の中間選挙の行方が金融市場にも影響か

 米国では今年11月6日に中間選挙が実施される。米国議会選では435の下院全議席と上院33議席(総議席は100)が改選される。米国の下院議員の任期は2年、上院議員の任期は6年となっている。上院議員は2年ごとに3分の1が改選されることから、大統領任期4年の2年目に選挙が行われ、これが中間選挙と呼ばれている。

 与党・共和党が上下両院で過半数を維持できるかがひとつの焦点となっている。上院は共和51、民主49(無所属含む)で拮抗している。もし中間選挙で与党・共和党が敗れるようなことになるとトランプ政権の今後の政策運営にも影響を与えることとなる。

 つまりこの中間選挙によってトランプ政権のこれまでの政策の是非が国民に問われる。トランプ大統領にとって初めての全米規模の信任投票ということになり、次の大統領選挙にも影響を与えよう。

 このためトランプ政権は公約を果たすために、税制を改革し、中国を中心に貿易戦争を仕掛けるなどしている。これが米国株式市場を揺るがす事でトランプ・ショックとも呼ばれた。ただし、これにより米国株式市場の地合いが大きく悪化するようなことはなく、トレンドはしっかりしている。

 中間選挙で注目すべきは拮抗している上院の行方か。トランプ米大統領の支持率が就任初期の水準まで回復したという調査結果も出ているそうだが、いまのところはトランプ大統領の貿易面での強攻策、ロシア、中国そして北朝鮮との外交政策についても、大きなミスは犯していないとの認識を米国民は持っているのかもしれない。

 いずれにしてもこの中間選挙の結果は金融市場も大いに注目せざるをえない。上院で共和党が過半数を割り込むことになると、事態は大きく変わってくる。米国株式市場や為替市場でのドルの地合いがこれによって変化する可能性もある。もちろんトランプ政権がこの選挙で確固たる信任を得たとしても、トランプ・リスクは残るわけではあるのだが。


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# by nihonkokusai | 2018-07-20 10:07 | 国際情勢 | Comments(0)

日経平均は年初水準を回復、調整は終了か

 7月18日にドル円は113円台を回復し、年初の水準を回復させた。東京株式市場では日経平均が23000円に接近している。前日のニューヨーク株式市場では、ナスダックが過去最高値を更新。欧州市場ではイタリアの国債が買い進まれている。

 これらの動きからは総じてリスク回避の巻き戻しのようにみえるが、相場の地合そのものが良い状況があらためて確認されたもの見ている。

 日経平均株価のこれまでの最高値は1989年12月末大納会につけた38915円となる。ここがピークとなり、いわゆるバブル崩壊が始まる。そのバブル崩壊後の安値が、2009年3月10日の7054円となった。38915円から7054円下落の半値戻しが、22984円となる。つまり日経平均で抜けそうで抜けなかったのは23000円というよりも、この半値戻しの水準と言えた。

 今年1月に日経平均はこの23000円を抜けて24000円台まで上昇したが、そこでいったんピークアウトしてしまった。1月24日にムニューシン米財務長官はスイスのダボスで開かれている世界経済フォーラムで、明らかに弱いドルは我々にとって良い、と述べた。このあたりをきっかけにドル円は下落し、日経平均も調整局面入りした。

 2月5日にダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって引け値の前日比でも過去最大の下げ幅を記録した。米国株式市場では今年に入ってからもキャタピラーやボーイング、スリーエムなどに加えて、FAANGを中心としたハイテク株が買い進まれ、ダウ平均、ナスダックともに過去最高値を更新し続けていた。これはゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていたが、その反動売りが入り、これも日経平均を押し下げる要因となった。

 その後、いわゆるトランプリスクが顕在化し、米中の貿易摩擦拡大懸念が生じた。イタリアの政局への懸念などもあって、リスク回避の動きからなかなか日経平均は戻り切れず、23000円が上値の壁となっていた。

 これに対してドル円は3月につけた104円台が底となり、じりじりと回復基調となっていた。米中の貿易摩擦拡大懸念はなくなったわけではないものの、それよりも地合の良さが表面化しつつある。いずれ再びトランプリスクが顕在化する恐れはあるものの、ひとまず調整局面はまもなく終了してくる可能性がありそうである。

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# by nihonkokusai | 2018-07-19 09:28 | 金融 | Comments(0)

株やドル円、原油価格などの先行きを値動きから占ってみた

 今後の金融市場の動きをファンダメンタルズやイベントリスクなどをいったん無視して、純粋に価格の動きだけ、つまりチャートから占ってみたい。

 日本の株式市場について日経平均の最近の動きを確認してみると、今年1月に24000円台に乗せたあと3月に20000万円近くまで下落し、そこがいったん底となった。5月に23000円台を回復してから、再び22000円割れとなったところで切り返し、再度23000円に接近した。その後再度売られ、21500円をいったん割れ込んで、ここにきて下げ止まりつつある。日足チャートでみると23000円のところでダブルトップを形成したようにみえたが、ここにきての相場上昇でそれが崩れる可能性が出てきた。これにより日経平均は再度23000円を試し、ここを抜けてくる可能性がある。

 それをフォローしそうなのが、ドル円の動きか。ドル円は今年初めの113円台から、3月にかけて下落基調となり、104円台まで下落した。その後は上昇トレンドを形成し、7月18日には113円台に上昇している。今年初めの水準に戻ってきたことで、ひとまず115円を試しにくる可能性がある。これは日経平均の押し上げ要因となりうる。

 更に米株も日経平均のフォローとなりうる。ここにきてナスダックが切り返しており、再び過去最高値を更新してきた。米中の貿易摩擦拡大の懸念等はあるものの、ナスダックはチャートからみて地合そのものは悪くはない。S&P500もあらためて1月末につけた高値を取りに行く可能性がある。これに対してダウがなかなか抜け切れない格好となっている。

 米長期金利の動向をみてみると、ひとます低下基調トレンドから2.8%台での足踏み状態となりつつある。今後、戻りを試し、2.9%あたりをつけてくる可能性はある。2.9%台に乗せると物価動向など次第では3%が再び見えてくるが、こちらもなかなか抜けきれない。

 物価の押し上げ要因となりそうなのが、原油価格の動向となる。WTIは一時75ドル台に上昇した。トランプ大統領は原油価格の引き下げを望んでいるようだが、サウジアラビアなどはWTIで80ドル台への上昇を見込んでいるとされる。ただし、75ドルを付けてからは、いったん達成感も出たのか売りに押されて、70ドルを割り込んできている。これで上昇トレンドが終了とみるのは、まだ早計か。ただし、今回の調整はやや長引くかもしれない。

 世界的な景気拡大が続くとの前提に立つと、いずれWTIが80ドルを突破し、それが米長期金利の上昇を促し、米長期金利の上昇によって日米の長期金利差が拡大し、ドル円も上昇してくると言うシナリオもありうるか。

 日米金利差については、米国の長期金利の動向次第となる。日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和政策が続く限りは、日本の長期金利はゼロ%近辺に抑えられる。ただし、債券市場の機能低下などの副作用が見え始めており、何かしらの金融政策の微調整は今後ある可能性も。ただし、それでも日本の長期金利の上昇は限られよう。


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# by nihonkokusai | 2018-07-18 09:52 | 金融 | Comments(0)

円安が進行する不思議

 ドル円は今年初めの113円台から、3月にかけて下落基調となり、104円台まで下落した。その後は上昇トレンドを形成し、7月13日には112円台後半に上昇している。今年初めの水準に戻るのは時間の問題となってきた。

 ドルがほぼ全面高となり、これはドルが貿易戦争の恩恵を受けるとの見方によるものとされているが、円はドルだけでなくユーロやポンドに対しても下落していることで、円が売られているとの見方もできる。

 ドル円については日米の長期金利スプレッドが動く要因のひとつとなっているが、日米の長期金利のスプレッドは日本がほぼゼロ%に張り付いているので、米長期金利次第となる。こちらは戻りが鈍く、2.8%台で推移が続いており、日米金利差がドル円の押し上げ要因とはなっていない。

 12日に発表された6月の米消費者物価指数は前月比0.1%上昇、前年比で2.9%上昇となった。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.2%、前年比で2.3%上昇。総合の前年比では2012年2月以来の伸びとなった。物価も為替に影響を与えるが、通常は長期金利の動向を通じてのものとなる。12日の米10年債利回りはこのCPIが事前予想を下回ったとして、むしろ低下していた。

 FRBの正常化について、今年の利上げは4回との見方が強まっており、これもドルの押し上げ要因となるが、やはり長期金利が上がっていないことで、FRBの利上げそのものがドル円の上昇の主要因とは判断しづらい。

 以前では日銀の金融調節に外為市場は敏感になっていたが、ここにきて日銀による国債買入の減額もほとんど材料視していない。ただし、7月の決定会合での物価が上がらないことに対する点検を受けて、8月以降、何かしらの調整を行うのではとの観測も一部に出ている。これはドル円にとっては下落要因、つまり円高要因となるはずである。しかし、これもある程度、織り込んだ上での円安の動きとなっているのか。

 ドル円は実需的な動きとの見方もある。また、トランプ政権の強引なやり方は、まさにアメリカンファーストの象徴となり、それはつまり外為市場でのドルファーストということになるのであろうか、

 それでは円の下落をどう見たら良いのか。アベノミクスの効果が出ての円安との見方は、ここにきての日銀の動きからもそうではないと見ざるを得ない。円安は安倍政権にとって好都合なのかもしれないが、果たして日本経済にとってもそうなのであろうか。

 日経平均や円債の動向を見る限りは、日本売りになっているわけではない。あくまで相対的にドルが高く、円が安い状態となっている。いまのところこの理由の説明は難しい。このままドル円のトレンドが継続するとなれば、115円が見えてくる。


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# by nihonkokusai | 2018-07-17 09:58 | 為替 | Comments(0)

日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい

 日銀の雨宮副総裁は以前、朝日新聞のインタビューで「物価上昇率2%」について、「簡単に機械的に達成することは難しくなっている」と認め、7月の金融政策決定会合で要因を再点検する方針を示した。

 「もう一度物価が上がりにくい理由、物価観の形成の仕方などを点検する。物価動向について何が起きているのかをきちんと詰める」とも語っていた。

 その結果次第では簡単には物価目標は達成できず、このままの状態では半永久的に異次元緩和を続けざるを得ない状況に陥る可能性もあるのではなかろうか。そうなると懸念さけるのが、異次元緩和による副作用となる。

 副作用のひとつが国債市場への影響となる。すでに債券先物は日中、数銭しか動かず、現物債もカレント物と呼ばれる直近発行された国債までもが日本相互証券で出合わない日が何日も出てきている。相場が動かなければ、債券市場関係者はファンダメンタルなどに応じた金利の調整といった経験を積めないばかりか、人材も流出しつつある。また膨大な国債を抱えていてもそれによるリスクへの意識がかなり薄れてきていると言わざるを得ない。国債利回りの上昇に耐えうる市場でなくなってきている。

 雨宮副総裁は「副作用が緩和のメリットをひっくり返す大きさにはなっていない」としつつ、「(副作用が)知らないうちにたまっていることもあるので、注意深く見ていく必要がある」と指摘していた。その副作用としては金融機関の体力を奪っていることもある。

 6月14、15日に開催された金融政策決定会合における主な意見で、ある委員から「金融機関では、保有有価証券の評価損益の悪化に加え、低収益店舗の減損リスクも生じてきている。」との意見が出ていた。

 国際決済銀行(BIS)の関連組織は5日公表した報告書の中で、低金利の長期化が銀行収益の下押しなどを通じ「金融システムの脆弱性の原因になりうる」と警鐘を鳴らした(日経新聞)。これは日本に限ったことではないものの、異次元緩和による日本の金融機関への影響も危惧すべきものとなる。

 時事通信は「日銀は大規模な金融緩和が長期化する中、金融機関の収益悪化や国債取引の低迷など緩和がもたらす副作用の軽減に向け本格検討に入る。」と伝えている。

 「今月末の金融政策決定会合でまとめる経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、物価見通しを下方修正する見込み。現在の大規模緩和策を抜け出す「出口」が見えない中、政策委員の一部でも、副作用への警戒感が広がっており、会合では突っ込んだ議論となりそうだ。」(時事)。

 この時事通信の記事は気になるところ。7月の決定会合で物価が上がらない要因を再点検し、このまま異次元緩和を続けて行くことによる副作用についても検討し、副作用を軽減しつつも大胆な緩和を継続するための政策について検討してくる可能性がある。

 ここにきて日銀の国債買入の減額などに為替市場が過剰反応してこなくなるなど、微調整イコール円高との認識が後退してきている状況も修正を行いやすくしているのではなかろうか。

 これにより、8月には何らかの調整を日銀が行ってくる可能性がある。国債やETFなどの買入額の柔軟化、そして長期金利コントロールの柔軟化などが候補となるのではないかと思われる。金融機関の収益など考慮するとマイナス金利政策をまず止めるべきと思われるが、これについてはややハードルは高いのではなかろうか。いずれにしても日銀の英断を期待したいところである。


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# by nihonkokusai | 2018-07-13 10:10 | 日銀 | Comments(0)

国内投資家は5月に米国債主体に外債を売り越しに

 9日に財務省は5月の国際収支状況(速報)を発表した。この中で、財務省のサイトにアップされた付表3にある対外・対内証券投資のうちの対内証券投資(地域別内訳)から日本の投資家がどのような海外資産を購入していたのかを確認してみたい。

「国際収支状況」財務省 http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

 対外証券投資で日本国内の投資家は、海外の中長期債をネットで1兆4543億円の売り越しとなっていた。売り越しは2月以来となる。ちなみに4月は2兆2888億円買い越しとなっていた。これを地域別内訳で確認してみたい。

 米債については2兆710億円の売り越しとなり、4月の7026億円の買い越しから売り越しに。ドイツ債については7121億円の売り越し、4月も6722億円の売り越しとなっていた。フランス債は1571億円の売り超し、4月は2980億円の買い越し、オランダ債は1329億円の買い越し、4月は3060億円の買い越しとなっていた。そして、イタリア債は854億円の売り越し、4月は1691億円の買い越し。スペイン債を387億円の買い越し、4月は3499億円の買い越しとなっていた。英国債は3971億円の買い越し、4月は196億円の買い越し。

 昨年10月以降、日本の投資家はドルヘッジコストの高騰を嫌気して、欧州債へのシフトを進めてきたとされる(ロイター)。日本の投資家がユーロを介して欧州の国債などを購入すると一定の利回りが確保できたためとも言える。特にイタリアやスペインなど周辺国の国債利回りは、ドイツなど中核国の国債の利回りに比べて高い。

 5月にはイタリアの政情不安が意識され、リスク回避の動きを強めた。米国債やドイツ国債などが買い進まれたことで、利益確定売りを国内投資家が行っていたものとみられる。

 6月の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、居住者が外債(中長期債)を1兆591億円買い越していた。6月に入り米債はいったん売られていたことで、そのタイミングで国内投資家は押し目買いを入れてきた可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2018-07-12 10:05 | 債券市場 | Comments(0)

英国の外相辞任でも英国市場は動揺せず

 サッカーのワールドカップロシア大会のベスト4には、フランスとベルギー、クロアチアとイングランドが進出し、準決勝は10日(日本時間11日)と11日(同12日)に行われる。イングランドは1990年のイタリア大会以来7大会ぶりの4強入りとなったが、準々決勝の試合会場には、英国の閣僚や英国王室メンバーの姿はなかった。

 これは英国南西部のソールズベリーでの元ロシア人スパイの毒殺未遂事件を受け、ワールドカップへの閣僚などのボイコットを決めたためである。しかし、イングランドが準決勝まで進んだことで、ボイコットを決めたメイ首相への風当たりも強まっている。

 もともとメイ首相はあまりサッカーには関心はなかったともされているが、政治的にもメイ首相はいま英国を離れるわけにはいかないような状況に追い込まれている。

 メイ首相が欧州連合(EU)離脱を巡って、EUとの関係を重視する穏健離脱の方針を打ち出したことに反発し、強硬派とされ、EUとの交渉の責任者であるデービスEU離脱担当相が8日に辞任した。9日にはやはり強硬派とされるジョンソン外相が辞任した。

 これを受けて外為市場ではポンドがドルに対して下落した。しかし、その下落も落ち着き、いまのところ英国発の金融市場でのリスクオフといった動きにはなってはいない。それどころかロンドン株式市場では、ポンド安を「好感」し、代表的な株価指数であるFTSE100種は続伸となっていた。ただし、英国債は買われ、10年債利回りは1.25%と先週末の1.27%から低下しており、多少はリスクオフの動きが出ていた可能性もある。

 確かに外相辞任により、英国のEU離脱の先行きが不透明になるものの、いまのところ離脱支持派の議員らはメイ首相に退陣を迫るようなことはなく、首相に対する不信任投票の動きも出ていない。

 現実として英国はメイ首相の穏健路線を取らざるを得ないと思われ、むしろ閣僚から強硬派の二人が辞任したことで、穏健路線を進めるきっかけになる可能性はある。ジョンソン外相の後任に指名されたジェレミー・ハント保健・社会福祉相は、元々はEU残留派だった。

 ただ、メイ首相にとってロシアとの関係悪化がなければ、ワールドカップの貴賓席に座り、イングランドチームの躍進を自らの追い風にできるチャンスもあったはず。もしこのままイングランドが決勝に進むようなことがあれば、国民の支持を得るためとして、ボイコットの方針を覆す必要が出てくるかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-07-11 09:54 | 国際情勢 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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