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パンダ債とは何か

 日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意した(NHK)。

 パンダ債とは何か。この不思議な名前の債券のことはわかりづらい面があるかもしれない。

 日本政府や日本の企業が日本で発行する債券は国内債とも呼ばれるが、これに対して日本企業などが海外で発行する債券や、海外の政府や企業などが日本国内で発行する債券を「外債」と呼んでいる。たとえば、最初に発行された日本国債は鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債で、これはロンドンで発行した外債である。現在、日本国債は国内で消化可能となっているため、外貨建ての発行はされていない。

 外債には海外の政府や政府系機関、地方公共団体や国際機関、また民間企業が日本国内で発行する債券もある。国際機関や外国の政府、法人が日本国内で発行する円貨建の債券は「円建て外債」と呼ばれるが、なぜか通称があり、「サムライ債」とも呼ばれる。

 海外の発行体が外貨建てで、しかも日本国内で発行するという「外貨建て外債」という債券もある。債券市場関係者はこれを「ショーグン債」と呼んでいる。

 このように外債には呼称が付けられることがあり、オーストラリア市場において非居住者によって起債される豪ドル建債券はカンガルー債、英国内で非居住者によって起債されるポンド建て債券はブルドッグ債と称されている。この流れで非居住者が中国で人民元建て発行される債券のことを「パンダ債」と呼んでいる。

 今回、パンダ債の発行についてはみずほ銀行が中国人民銀行から発行の認可を得たと発表した。日本企業としては初めてとなる。発行額は5億人民元、年限は3年を予定しているそうである。三菱東京UFJ銀行も中国当局に申請中とのこと。

 パンダ債の発行により、日本企業の元の調達手段が広がることになり、中国事業の拡大に追い風となる(日経新聞)。また、この動きは領土問題でぎくしゃくしていた日中関係が改善に向かいつつあることを示すものともみられる。

 中国はこのところ中国政府はヨーロッパ連合やロシアなどにもパンダ債の発行を相次いで認めており、金融市場の国際化を進めていることを内外にアピールする狙いがあるともされている(NHK)。


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# by nihonkokusai | 2017-12-26 09:04 | 債券市場 | Comments(0)

11月の公社債売買、「その他」が大量売り越しに

 12月20日に発表された11月の公社債投資家別売買高によると、都銀は6266億円の売り越しとなっていた。10月の1兆2339億円の買い越しから再び売り越しに転じた。10月に都銀は超長期債を買い越していたものの、中長期債は売り越していた。

 海外投資家は11月に1兆8565億円の買い越しとなった。10月の買越額は8963億円と1兆円割れとなっていたが、11月は再び大きく買い越していた。海外投資家は中期債主体に長期、超長期債ともに買い越していた。

 気になるのは「その他」の2兆5746億円の売り越しか。中期と超長期をそれぞれ1兆円以上売り越している。「その他」は主に政府関係機関であり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命も含まれており、金額からみて、ゆうちょ銀行による売り越しとみられる。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 6266(-3164、1179、8604)

地方銀行 3462(-212、2698、330)

信託銀行 -2433(-1794、1797、-1829)

農林系金融機関 -1676(-896、207、20)

第二地銀協加盟行 320(290、180、0)

信用金庫 -7(514、609、0)

その他金融機関 2053(1522、1436、143)

生保・損保 -2255(-2093、277、127)

投資信託 -906(-372、-52、-116)

官公庁共済組合 327(37、110、80)

事業法人 -221(-8、-2、1)

その他法人 -456(16、-16、70)

外国人 -18565(-4201、-1544、-11347)

個人 215(1、42、2)

その他 25746(10155、3395、15595)

債券ディーラー -577(-343、9737、11886)

 11月の全体の国債売買高は203兆円程度となり、10月は183兆円程度と200兆円を割り込んでいたが再び200兆円台を回復した。

 債券相場は9月の下降トレンドが終了し、10月がもみ合いとなっていたが、11月上旬に先物は151円台を一時回復するなど買い戻された。現物は中長期債主体に買い進まれた。その後は10年債利回りのゼロ%も意識されて高値警戒も出たことで、150円台後半での膠着相場となった。


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# by nihonkokusai | 2017-12-25 09:25 | 債券市場 | Comments(0)

景気に応じた金融政策に修正すべきではなかろうか

 12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となり、5四半期(1年3か月)連続の改善となった。2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。

 大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである。それでも物価の上昇圧力は弱く、原油価格の上昇などでどうにか日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比でプラス0.8%となっている。

 日銀短観から景気動向をみると、景気は回復基調にあることは疑いのない事実である。ただし、これは欧米などの海外の景気回復が大きく寄与している。つまりリーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な経済金融危機が収束した結果として、世界的に景気が回復したといえよう。

 世界的な経済金融危機に対して、特に金融市場の不安を後退させるために、日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和策が講じられた。世界的な経済金融危機の後退には、これが寄与したことも確かである。しかし、その後景気が回復し、米国の株価指数が過去最高値を更新するなどしており、これを見る限り、危機対応としての中央銀行による過剰な緩和策の必要性はなくなりつつある。

 このため米国のFRBは正常化路線を進め、今年も3回目の利上げを行ってきた。イングランド銀行も今年11月に10年ぶりの利上げを決定した。ECBも慎重にQEの縮小を進めようとしている。これら対して日銀はステルステーパリングは進めつつあるものの、物価目標に縛られて方向転換そのものはかなり困難となっている。

 中央銀行の金融政策の方向転換は特に金融市場に大きな影響を与えかねない。金融引き締めと捉えられると株価が下落する懸念もある。だからといって異次元緩和を続ける必要もないはずである。マイナス金利政策は金融機関に対して負の影響を与えるなどしており、むしろマイナス金利政策をやめたほうが株価にプラスになる可能性もある。実態経済に即した金融政策に修正しないと、今後、柔軟な金融政策を取ることが難しくなる懸念もある。そろそろこのあたりを考慮すべきタイミングに来ているのではなかろうかと思う。


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# by nihonkokusai | 2017-12-24 14:14 | 日銀 | Comments(0)

欧米の国債の動向に注意せよ

 12月20日に米上下両院が税制改革法案を可決し、成立が確実となった。これを受けて19日の米国債券市場で、米10年債利回りは一時2.47%をつけて10月につけた水準に接近した。ここはひとつの節目といえる。20日には2.5%台をつけてこの節目を抜けてきた。今年3月につけた2.6%が次の節目となる。

 FRBは今月のFOMCでも利上げを決定したが、米国債の利回りはほとんど上昇する兆しをみせていなかった。しかし、ここにきて再び動意を示してきた背景にはいくつかの要因が絡んでいる。

 19日の米債下落の要因としては、税制改革法案が可決・成立したとなれば、それによる経済効果を期待してのものとの見方もある。しかし、現実にはあまりその効果は期待ではないとの見方も強い。むしろ、減税分の負担が意識されたのではなかろうか。それは結局、米国債の増発によってカバーされる可能性が強く、米国債の需給面が意識された。

 それともうひとつ大きな要因があった。それは19日から20日にかけて、同日に欧州の国債利回りも米国債同様に大きく上昇していたことである。むろん、ドイツや英国の国債は米国債との連動性は高いものの、欧州の国債下落の背景は米国債以外のところにあったことも注意すべきかと思われる。

 欧州の国債下落の背景のひとつは、ドイツ政府の来年の債券発行予定額は1470億ユーロとなり、特に30年債が増発される事を嫌気したものであった。しかし、ドイツなど中核国だけでなくイタリアなど周辺国の国債利回りの上昇が大きくなっていたのは、別の理由があった。それはECB関係者の発言によるものであった。

 11月22日にECBのクーレ理事(フランス出身)は、インフレが回復軌道に戻ると政策担当者らがより楽観的になる状況で、来年は債券購入よりも金利を重視する方向で金融政策のガイダンスを修正することになりそうだと語った(ブルームバーグ)。

 ドイツなどに比べてより中立的でドラギ総裁に近いとされたクーレ理事のこの発言により、ECBがより正常化を意識し始めていることが明らかになった。ここに他の委員からの発言が加わったのである。

 スロバキア中銀のマクチ総裁は「現在、議論は資産の購入から、将来的な金利の上げ下げへとシフトしている」と話した。エストニア中銀のハンソン総裁も「金利を含めた金融政策のさまざまな面について注意をしてもらうよう市場と対話することが、今後数か月で考えていくべきことだろう」と指摘した(ロイター)。

 ドイツ連銀のワイトマン総裁はこれまで、ECBは量的緩和について完全な終了時期を明示すべきだとの従来の見解を繰り返してきた、これは主流派ではないとの見方も強かったが、マクチ総裁、ハンソン総裁、そしてクーレ理事の発言内容からみると、来年9月まで延長した資産買入についての再延長は考えておらず、来年は利上げを視野に入れてそのタイミングを計ることが意識され始めていることが伺える。今回の欧州の国債が売られた背景は、ECBが利上げも意識しつつあることを察知してのものではなかろうか。

 米国債と欧州の国債はタイミングを同じくして売られたが、それぞれ売られた要因は異なっていた。しかし、米国債とドイツ、英国の国債の連動性が高いことも確かであり、今後はそれぞれの要因が相まって、さらに利回りが上昇してくる可能性がある。むろん、今後の物価動向も意識する必要もある。ただし、これまでおとなしかった分、年末で流動性が低下している面もあり、変動幅が大きくなる可能性がある。


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# by nihonkokusai | 2017-12-21 09:39 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は効果の見えないマイナス金利政策を見直すべき

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。GPIFの預金は現在みずほフィナンシャルグループ傘下の資産管理サービス信託銀行(TCSB)が預かっており、資産管理サービス信託銀行におけるGPIFの預金は2017年9月末時点で預金は10兆円以上となり、1年前より7兆円増えた(12月18日付け日経新聞より)。

 2016年1月に導入が決まった日銀のマイナス金利政策により、準備預金の法定額を超過した一部に、年0.1%のマイナス金利が適用される。信託銀行全体でマイナス金利を適用される預金は約7兆円程度あるようだが、その多くをTCSBが占めているようである。

 これまで年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はあったようだが、ついに超大手の機関投資家ともいえるGPIFも負担せざるを得なくなったということになる。

 日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど利回りが大きく低下した。MMFやMRFの資金の導入先であるところの債券の利回りも軒並みマイナスとなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、さらに運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。同年3月の金融政策決定会合では、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)と呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。

 日銀は2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、これによって長期金利つまり10年債利回りをゼロ%を少し上回るプラスに引き上げた格好ながら、中期ゾーン以下の国債利回りはいまだにマイナスとなっている。

 いったいマイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明というか、そもそも物価目標は達成される見込みもない。マイナス金利政策が直接、物価上昇に働きかけることを証明できるものはない。そうであるのであれば、金融機関の収益を圧迫するだけともなるマイナス金利政策は早晩、見直す必要があるのではなかろうか。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるかもしれないが、それでやめられないというのもおかしいし、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。そろそろ、マイナス金利政策の修正を提案する日銀の政策委員が出てきてもおかしくはないのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-12-20 09:28 | 日銀 | Comments(0)

ECBとイングランド銀行は現状維持、追加利上げの可能性は

 欧州中央銀行(ECB)は12月14日の政策理事会で、主要政策金利を0.00%、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。また、来年1月から毎月の資産買入額を現在の600億ユーロから300億ユーロに減額し、少なくとも来年の9月末まで継続すると改めて表明した。

 経済見通しでは、向こう3年間の経済成長予想を上方修正したのに対し、2020年の平均インフレ率の予想は1.7%とした。ECBが目指す目標は2%近くとしており、これには届かない。ちなみにドラギ総裁の任期は2019年10月末となっており、物価予測からみるとドラギ総裁の任期中の利上げは困難かとの見方もできなくもない。

 ただし、すでに正常化路線を進み、数度の利上げを実施しているFRBであるが、こちらも物価目標には届いておらず、2%に届かないからといって利上げの障害になるわけではないと思われる。

 同日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)も開催されていた。こちらも全会一致で政策金利を現行の0.5%に据え置くことを決め、資産の買い入れ枠も現行水準を維持した。イングランド銀行は11月に約10年ぶりの利上げに踏み切っており、その利上げによる影響を見定めたいとして、今回は現状維持となったものとみられる。

 MPCでは景気の展開が予想通りであれば今後数年に「緩やかな追加利上げ」が恐らく必要になるとの見解を重ねて示しており、追加利上げが視野に入っていることを示した。これに対して市場はイングランド銀行の追加利上げはかなり慎重であり、2018年の利上げは困難との見方も出ている。しかし、英国のEU離脱問題が英国の経済や物価に大きな悪影響を与えるなどしない限りは、イングランド銀行は正常化に向けた歩みを継続させてくるとみている。つまり2018年の追加利上げの可能性は高いと思われる。


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# by nihonkokusai | 2017-12-19 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀のイールドカーブ・コントロールの目的と問題点

 日銀の黒田総裁は12月7日のきさらぎ会での講演で、日銀のイールドカーブ・コントロールについて説明をしていた。

 「かつてのような国債買入れ額を固定する方式では、経済・物価動向や国債市場の状況等に応じて金利の押し下げ度合いに過不足が生じ、結果的に、日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブを実現することができない可能性がありました」

 日銀の金融政策がどのようにして経済や物価に影響を与えて行くのか。それは日銀の金融調節によって行われる。政策金利の短期金利を上げ下げすることで、長期金利にも影響を与え、市場を経由して経済物価動向に影響を与えようとしている。しかし、政策金利がゼロ%となってしまうと、資産買入の量を目標にするなり、政策金利をマイナスとするといった選択となる。

 日銀は買い入れる資産の量を大胆に増やす政策を取った。しかし、量にも限界はある。このため取った政策がマイナス金利政策であり、長期金利そのものをコントロールしてしまおうとするイールドカーブ・コントロールであった。

 本来の長期金利は市場で形成されるものであり、コントロールは難しいものとみられていた。それに対して黒田総裁は「わが国のイールドカーブは、この1年間、金融市場調節方針と整合的な形で、円滑に形成されています」と成果を強調している。

 それでは適切なイールドカーブとは何か。総裁は「それぞれの年限に対応する予想物価上昇率や自然利子率の状況を分析したうえで、全体として、金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状を探し出していくことが必要となります」としている。また「適切なイールドカーブの形成にあたっては、貸出・社債金利への波及、経済への影響、金融仲介機能への影響などを踏まえて判断するということです」とも述べている。

 日銀のイールドカーブ・コントロールは、歴史的にみても過去に例のない金融政策と言える。そのため「金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状」とか「適切なイールドカーブの形成」が本当に可能であるのか。適切なイールドカーブ形成を市場に委ねるのではなく、中央銀行が本当に操作することが可能なのか。

 景気拡大は続くものの、物価は低位安定していることで、イールドカーブ・コントロールはしやすい面がある。しかし、この安定しているファンダメンタルズが変化し、国債の需給バランスが崩れるような場面が訪れた際にどのように対処が可能なのか。いずれイールドカーブ・コントロール政策が試される場面が出てくる可能性もあろう。


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# by nihonkokusai | 2017-12-18 09:33 | 日銀 | Comments(0)

日銀短観は改善続く

 12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となった。5四半期(1年3か月)連続の改善となる。

 先行きについてはプラス19と伸び悩む予想となっているが、9月調査での3か月先の見通しも足元のプラス22からブラス19に落ち込む見通しとなっていた。企業の先行き見通しは外部要因などに不透明材料もあり、慎重となっているが、景気の拡大基調は維持される可能性は十分ありうる。

 2017年度の事業計画の前提となる想定為替レート(ドル円)は大企業・製造業で110円18銭と、実勢レートより円高ドル安となっている。ちなみに9月時点での想定為替レートは109円29銭となっていた。

 製造業の中堅企業は足元DIがプラス19、先行きプラス14。中小企業が足元プラス15、先行きプラス11となっていた。

 非製造業については大企業が足元DIがプラス23、先行きプラス20。中堅企業は足元DIがプラス20、先行きプラス14。中小企業が足元プラス9、先行きプラス5。

 人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた雇用人員判断DIは大企業・全産業がマイナス19となり、前回のマイナス18から低下した。これは1992年3月のマイナス24以来のマイナス幅となり、先行きもマイナス20となっている。人手不足が継続していることを示している。

 2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。

 大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである(日経QUICKニュースより)。

 日銀短観は総じてしっかり。海外経済の回復を背景に、輸出が引き続き堅調に推移し、設備投資も好調となっている。先行きについては、北朝鮮問題、英国のEU離脱問題、米政権の先行き不透明感等々の懸念材料はあるものの、いまのところ景気に悪影響を及ぼすようなものとはなっていない。雇用の改善も継続しており、欧米の景気動向も物価上昇は伴わないものの、回復基調が継続している。

 この日銀短観を見る限り、日本の経済実態は非常に好調としか見えないのであるが、日銀の金融政策をみると、何故か非常時の異次元緩和が続いている。こちらの方が異常に見えてしまうのだが。


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# by nihonkokusai | 2017-12-16 12:06 | 景気物価動向 | Comments(0)

紙幣はどのようにして誕生したのか

 中国の唐の時代の後期には、茶・塩・絹などの遠距離取引が盛んになるなど商業の発達に伴い銭貨の搬送を回避する手段として「飛銭」と呼ばれた送金手形制度が発生した。高額商品の売買には銭貨の「開元通宝」などでは量がかさんでしまう上、途中での盗賊などによる盗難の危険もあった。このため、長安や洛陽などの大都市と地方都市や特産品の産地などを結んで、当初は民間の富商と地方の商人との間によって「飛銭」という送金手形制度が開始された。

 これはたいへん便利なものであるとともに、手数料収入に目を付けた節度使(地方の軍司令官)や三司(財政のトップ)などもこれを模倣した。飛銭を利用する際に使われた証明書(預り証)が、宋代になると交子・会子・交鈔・交引などと呼ばれ、証明書それ自体が現金の代わりとして取引の支払に用いられるようになった。特に四川地方で発行された交子は世界史上初の紙幣とされている。

 紙幣はたいへん便利なものであったことで、その需要が増え、それに目をつけた政府は軍事費に当てるための財源として交子を乱発し、その価値を失ってしまった。政府に発行をまかせると紙片を乱発しかねないのは歴史が証明している。その後、新たな紙幣を発行するものの、やはり信用を落としてしまい、最終的には銅銭が復活することになった。

 しかし、なぜ中国で世界最初の紙幣が誕生したのであろうか。貨幣の材料となる貴金属などの産出が限られていたこともあるが、宋や元の時代の国家権力が強かったことも要因であろう。それとともに遠隔地との交易など商業の発達がそれを促したものといえよう。忘れてならないのは、紙そのものが中国で発明されたものであり、さらに印刷術も発達していたことが、紙幣の発行を可能にしたといえる。マルコ・ポーロの「東方見聞録」には、元で通貨ではなく紙幣で買い物をする様子を見て驚く場面が登場する。

 日本における現存する最古の紙幣は、1610年に伊勢の山田において、支払いを約束する預り証の形式をとって発行された山田羽書(はがき)とされる。

 伊勢神宮に仕える有力商人が、高い信用力と宗教的権威を背景に、釣銭などの煩わしさを少なくするために発行された紙幣であり、額面金額も銀1匁以下の小額となっていた。形や文様が統一されたことで、不特定多数の人々に交換手段として利用が可能なように作られており「紙幣」として利用されたのである。

 世界で最古の紙幣は10世紀に四川地方で発行された交子とされるが、日本はこれに次いで世界で二番目に古く紙幣を発行していたことになる。

 その後、私札は伊勢国、大和国、摂津国など近畿地方を中心に、有力商人がその「信用力」を元に発行し、室町時代末期から江戸時代初期にかけて約60年の間、流通した。

 こうした私札に目をつけた各藩が発行したのが「藩札」と呼ばれる紙幣である。藩札の最初は1630年に始まった備後の福山版のものと言われているが現物は残っておらず、現存するものとしては1661年の福井藩の札が最古のものとなっている。

 私札も藩札も江戸時代後期まで、ほとんど銀立の額面で発行されていたが、これは西日本では銀が経済の主流であったことが要因である。

 紙幣については乱脈な発行によるインフレへの懸念とともに、偽札の問題が生じる。世界で最初に紙幣を発行した中国では、偽札防止のため細かな文字や文様などを組み合わせ簡単には真似のできない工夫がされていたが、日本の藩札も同様に色刷りや透かしなどが実用化されていた。1856年に浜松藩が出した銀札にはオランダ語を入れるなどの工夫も行っていたのである。


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# by nihonkokusai | 2017-12-14 09:36 | Comments(0)

ビットコインと比較された大陸紙幣とは何か

 グリーンスパン元FRB議長は6日の米テレビ番組で仮想通貨ビットコインについて、独立戦争時の「大陸紙幣」を例に、元々無価値なものでも、人々が転売可能だと信じれば新たに価値を持ち交換が始まると解説した(日経新聞電子版)。

 仮想通貨ビットコインは日本時間の12月11日午前8時より、米国のシカゴ・オプション取引所(CBOE)でビットコイン先物取引がスタートした。18日にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)もビットコイン先物を上場する予定となっている。

 ビットコインについては、12日の日経新聞一面でも取りあげられており、10~11月は世界全体の取引の4割を日本円が占めているという記事が出ていた。個人の大手投機家なども動いているようではあるが、比較的若い世代が投機目的で利用しているようである。

 このように特に日本での注目度が高いが、欧米の中央銀行関係者などからもビットコインに対するコメントも出ており、グリーンスパン元FRB議長もたぶん質問に答える格好で、「大陸紙幣」を例に解説したものと思われる。ここで注目したかったのは、この「大陸紙幣」である。

 大陸紙幣について「お札と切手の博物館」のサイトに解説があった。それによると、「西洋では、当初、民間銀行がお札を発行していましたが、アメリカ大陸では、1690年から植民地政府がお札を発行するようになり、アメリカ独立戦争(1775年~1783年)が始まると、13植民地が結集した大陸会議が「大陸紙幣」を発行します」とあった。

 アメリカがイギリスの植民地だったころは当然ながら、独自の貨幣はなく、イギリスやスペインの貨幣を使用していた。アメリカがイギリスに対して独立戦争を始めたときには、膨大な軍費をまかなうため紙幣を発行せざるをえなくなり、その結果、発行されたのが「Continental (大陸紙幣)」と呼ばれた紙幣であった。

 「お札と切手の博物館」のサイトによると。「大陸紙幣は、名刺ほどの大きさで、ぼろ布を原料に雲母などをすき込んだ紙に、凸版印刷が施されています。・・・裏面の葉の模様は、ベンジャミン・フランクリンが発明した偽造防止法で、自然の葉脈の複雑さを利用したものです。」

 一応、紙幣の様相は整えてあったようではあり、独立戦争時の事実上唯一の通貨になったものの多発され、戦争が終わるころにはその価値は紙切れ同然となった。全く値打ちがないことを「1コンチネンタル(大陸紙幣)ほどの値打ちもない(not worth a continental)」と表現されたとも言われているほどである。

 グリーンスパン元FRB議長は、ビットコインも大陸紙幣と同様の結末を迎えるのではないかと予想しての今回の発言であったかと思われる。しかし、大陸紙幣は植民地政府が発行したものであり、ビットコインは民間が発行したものという大きな違いもある。ただし、いずれにしても紙幣はそれに対する信任が失われると無価値となりうる。それには乱発も大きな要因になりうることも示している。


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# by nihonkokusai | 2017-12-13 09:55 | 金融の歴史 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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