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国債の歴史からみた日銀の長期金利コントロールの意味

 日本の国債市場が本格的に稼働したのは、それほど昔のことではない。1979年頃まで、預金金利などは厳しく規制されてきており、国債の金利を含めて市場水準よりかなり低いレベルに置かれていた。これにより企業の設備投資が促され、いわゆる高度成長の原動力となっていた。銀行も保護され、いわゆる護送船団方式と呼ばれるシステムが作られていた。

 1970年代に発行された国債は、銀行や証券会社などで構成された引受シンジケート団と大蔵省資金運用部が引き受けていた。シ団が引き受けた国債で市中消化されるのはごく一部で、ほとんどがシ団メンバーの金融機関にそのまま保有された。シ団の引き受けた国債の市場売却は、事実上自粛されていた。ただし実際のところ、銀行が保有する国債の大半は、日銀の買い切りオペで吸い上げられていた。

 ところが1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートすることになる。日銀の買入で吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたためである。特例国債の市場売却について各金融機関の自主的な判断に委ねられた。引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することになった。建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始された。

 1979年のロクイチ国債の暴落を受けて、金融機関の保有国債の評価法が従来の低下法から原価法または低価法の選択性となった。また、ロクイチ国債の暴落は大蔵省の国債管理政策にも大きな影響を与えることになる。

 1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。債券のディーリング業務とは既発債を売買する業務であり、それまでは証券会社にしか認められていなかった。国債を大量に保有している都銀などの銀行が、国債市場に本格的に登場することで公社債の売買高は急増した。ただし、銀行は商品勘定保有国債であっても、翌月までの売却自粛期間が設けられており、この売買自粛が完全に廃止されたのは1987年9月である。

 1985年10月に東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。長期国債先物取引が開始されたのである。債券先物取引においては、東京証券取引所会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。

 金融機関のフルディーリングの開始や債券先物の登場もあって、国債は活発に売買されるようになり、一時的ながら当時の指標銘柄である10年利付国債(68回債)の利回りが、代表的な短期金利のひとつであった手形レートを下回り、長短金利の逆転現象が生じた。また、1987年5月に指標銘柄の89回債は10年債でありながら、当時の代表的な短期金利であった公定歩合の2.5%に接近した。ここが債券のディーリング相場のピークとなったが、これ以降はディーリングそのものはは影を潜め、本来の投資家主体の相場が形成されるようになっていった。

 国債残高が年々積み上がったものの、タイミング良く銀行、生保、年金など国内の民間金融機関には、日本国債を買い入れる余地が拡がっていた。日本国債への海外からの投資額はそれほど多くはなくても、国内で大量の国債が消化が可能となっていたのである。

 1998年に国債を大量に引き受けていた大蔵省資金運用部の引き受け比率の低下などをきっかけに運用部ショックと呼ばれた国債価格の急落(長期金利の急上昇)が起きた。しかし、実際には資金運用部分の国債を買い入れる余地を民間金融機関は有していた。日銀のゼロ金利政策や財務省の国債管理政策の強化とともに、需給面の不安の後退もあって運用部ショックは一時的なものとなった。

 その後も需給面での不安はないにも関わらず、2013年4月から日銀は無理矢理、国債を大量に買い入れることとなった。これによって国債の需給バランスは変化した。さらに2016年9月のイールドカーブコントロールの導入により、日銀は今度は長期金利をコントロールしようとしている。これはまさに先祖返りともいうべきものでもあろう。

 日本の国債市場にはそれほど長い歴史があるわけではない。しかし、こつこつとながら日本の国債市場は拡大していった。しかし、その国債を日銀が年間発行額に匹敵する金額を買い入れて、残高の4割も保有するというのは、ある意味、国債市場の機能を損ねていることは間違いない。だから長期金利をコントロールできるとするのであれば、それは国債市場の機能をむしろ蔑ろにしているとも言えるものではなかろうか。

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# by nihonkokusai | 2017-01-06 10:01 | 国債 | Comments(0)

トランプ相場の背景にあるポスト・グローバル危機

 金融市場、金融相場の世界では、ある言葉が流れの変化を象徴することが多い。昨年の米国大統領選挙の結果を受けての「トランプ相場」とか「トランプラリー」と呼ばれるものもそのひとつである。

 日本でも「アベノミクス」と呼ばれた用語が相場に限らず、日本全体に何か大きな変化をもたらせたかのように受け止められている。それより少し前の「欧州の信用不安」や「リーマン・ショック」も同様に百年に一度と呼ばれた世界の金融経済危機を象徴する用語となっていた。

 ただし、注意すべきはこれらの用語が一人歩きしてしまい、あたかもトランプ氏や安倍首相の登場が、金融市場の流れを突然変えてしまったかのような見方をしてしまうことである。

 「リーマン・ショック」という用語は英語にはない。いわゆる和製英語である。英語では「the financial crisis」とか呼んでいるようである。これは2007年のサブプライム住宅ローン問題がきっかけとなり、ある種のバブル崩壊が発生した上に、金融商品のリスクの行方が広範囲に拡大していたことで、金融バブルの崩壊とも言えた。その象徴的な出来事のひとつが、リーマン・ブラザーズの破綻であった。

 「アベノミクス」についても、安倍首相のリフレ政策への発言は、あくまでひとつのきっかけにすぎない。「リーマン・ショック」のあとの「欧州の信用不安」の拡大で、かつてないほどのリスク回避の動きが極まり、それが解消されつつあったタイミングで出てきたのがアベノミクスである。そのため急激な円安株高が起きたが、リフレ政策で物価目標は達成されていない点だけをみても、物価を上げるはずのアベノミクスは成功したわけではなく、タイミングの問題とも言えた。

 アベノミクスと呼ばれた現象の背景にあったのが、世界の金融市場を揺るがした大きな危機からの脱却であり、それを象徴するのが米FRBの正常化に向けた動きとなった。しかし、日銀はアベノミクスに引っ張られ、ますます深みにはまり、ECBも異常な緩和を続けている。これは流れを読み切れていなかったともいえるのではなかろうか。物価の低迷は金融政策が足りなかったからというわけではない。原油価格の持ち直しで、それも次第に解消されつつある。

 そんなタイミングで出てきたのがトランプ相場である。2016年12月のFRBによる二度目の利上げは遅かったぐらいではあるが、2016年に入っての中国など新興国経済への懸念と原油安によるリスク回避の動きなどが、米再利上げを躊躇させた。しかし、このリスク回避の動きの大きな要因はそのFRBの利上げであり、過剰流動性の後退と原油安が新興国に与える影響が危惧されたと言える。しかし、原油価格は底を打ち、新興国経済もそれほど悪化することはなかった。

 さらに予想外ともいえる国民投票による英国のEU離脱決定も、世界の金融市場を揺るがしかねないとされた。しかし、これもギリシャ危機に比べると市場は比較的冷静であった。ドイツ銀行やイタリアの銀行の問題も懸念されたが、すでにこのような危機に対してはブラックスワンとはなっておらず、危機を防ぐための手段も講じられていたことや、過去の経験も生きたことで、これらによるリスク回避の動きも一時的なものとなっていた。

 もちろん今年、2017年にも新たな危機が生じる可能性はある。その火種もある。しかし、2007年から2012年あたりにかけての金融経済危機を乗り越え、ポスト金融経済危機の時代に移りつつあるとの見方もできよう。それがここにきてのトランプ相場と呼ばれる世界的な株高、長期金利上昇の背景にあるとも言えるのではなかろうか。象徴的な言葉に惑わされることなく、背景にある流れについても認識しておくことも重要だと思われる。

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# by nihonkokusai | 2017-01-05 09:43 | アベノミクス | Comments(0)

個人向け国債を購入の際には日銀の動向にも御注意を

 来年度の国債発行計画をみると、個人向け国債については今年度の発行額が増加したことで、来年度は約3兆円の発行予定となっている。今年度当初に比べ1兆円の増加となる。今年度の個人向け国債の発行額は12月現在で2.4兆円程度となっており、3月までに発行される今年度分は三次補正後に3兆1500億円と見積もっている。ここにきての発行額の推移からみて3か月で7千億円程度の発行額は可能との見積もりであろう。

 しかし、この発行額が果たして維持されるのか、それとも予想以上に発行されるのか、それは日銀の金融政策次第という面もある。

 なぜ今年度の個人向け国債発行額が当初の見込みから上振れたのか。その大きな要因として、0.05%という最低保証利回りがある。個人向け国債には0.05%という最低保証利回りがついており、この0.05%がいつの間にか銀行などの預金金利を上回ったことで、利回りとして魅力化したのである。

 金融機関にとっても個人向け国債の販売はそこそこの収益源となる。財務省は12月6日に個人向け国債の募集発行事務取扱手数料の見直しを行い、来年3月募集(4月発行)分より引き下げられるものの、固定3年で額面100円あたり20銭(これまで40銭)、固定5年で額面100円あたり30銭(これまで50銭)、変動10年で額面100円あたり40銭(これまで50銭)となっている。もちろんこれは購入者負担ではなく、販売額に応じて金融機関に財務省が支払う手数料である。

 手数料が引き下げられても10年変動では40銭ある。発行額も一番多いのは10年変動である。そしてこの10年変動は通常の10年国債の利回りが上昇すると利率も引き上げられる仕組みとなっている。

 10年変動を購入した場合には今後の長期金利の動向を注意しなくてはならないが、それを押さえつけているのが日銀の長短金利操作、つまりイールドカーブコントロールである。しかし、ここにきてのトランプ相場により米国の長期金利は上昇し、日本の国債利回りもわずかではあるが上昇している。それでも10年債利回りを日銀はゼロ%近辺に抑えるとしている。日銀による長期金利の目標値の引き上げがあるかどうかが、今後個人向け国債の10年変動の利率が引き上げられるかどうかの焦点ともなる(最低の0.05%は保証)。

 短期金利についてもいずれはマイナス金利が解除されることも予想され、そうなると固定3年・5年の利率が最低の0.05%から引き上げられる可能性もなくはないが、これもやはり日銀次第となる。もちろんそうなると銀行預金金利も上昇することが予想されるが、利率としては国債の方が高めに設置される可能性が高い。

 日銀はいまのところ利上げなどもってのほか、といった対応をしている。それでも海外金利や為替、株価、原油価格、物価などの動向次第では、長短金利の目標値を引き上げてくる可能性も絶対ないとは言い切れない。しかしいまのところ、いまの日銀のスタンスでは、その確率は極めて低いことも確かである。それでも日銀の変わり身の早さをみても(補完措置→マイナス金利→長期金利)、ないとは言えないような気もしなくもない。本年もよろしくお願いいたします。

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# by nihonkokusai | 2017-01-01 09:26 | 国債 | Comments(0)

無理を重ねた日銀は神風に助けられるのか

 2016年12月19、20日に開催された日銀の金融政策決定会合の主な意見では、金融政策運営に関して次のようなコメントが紹介されていた。

 「ポジティブなショックがあるとき、金利をゼロ%で固定すれば金融政策は自動増幅機能がある。2%を超えて物価が上がることを容認するオーバーシュート型コミットメントの意味は、物価が上がっていないときには人々に認識されないが、実際に上がっていくときには、認識されるようになる。9月に決定した政策の意味が次第に広く理解され、効果が強まると期待される。また、実際に10年物国債の金利をゼロに抑えるオペレーションが必要である。今が、2%の「物価安定の目標」を達成する好機である。」

 これはひとりの政策委員のコメントではあるものの、この発言は日銀が今年、金融政策で右往左往したものの結果オーライといった結論を述べているかのように思われる。今回はやや辛口コメントになってしまうが、これまでの日銀の政策に批判を加えてみたい。

 日銀が今年1月に決定したのが「マイナス金利付き量的・質的緩和」であった。昨年12月に「補完措置」によって国債の買入範囲を拡げ、国債買入増額を可能にしようとした。今年に入ってのリスクオフの動きに慌てて、追加緩和を講じることにした結果が、何故か下準備していた量を諦めて、金利に戻して、スイスなどの事例を参考にマイナス金利政策の決定となった。

 これは日銀内部でも意外感もあったようである。しかし、このマイナス金利政策は急激な国債利回りの低下を招くなどしたことで、金融機関の運用に悪影響を与え、日銀のお膝元でもある金融機関からの批判が強まった。

 この批判に対処すべく、検証とするには遅きに失した感もあるものの「総括的な検証」を前面に押し出して、マイナス金利政策の修正をそっと行った。それが9月に決定した長短金利操作付き量的・質的緩和であった。

 今の日銀は意地でも緩和に対する前向きの姿勢を表面上は崩したくはない。本来ならマイナス金利政策そのものを止めるべきであり、結果として量が物価を上げることができなかった以上は、異常な国債買入も再考するなりするのが本筋であろう。しかし、それもできないことで生み出されたのが、長期金利の操作をさらに付け加えることとなった。なんてことはない長期金利をマイナスからプラスとし、イールドカーブをスティープ化させて、金融機関からの批判を少しでもかわすことが目的となった。ついでに国債の買い入れも減額出来る仕組みとした。

 本来できないとした金融政策によるに長期金利のコントロールについては、特にマイナス金利政策で予想以上に効果を発揮したとの認識が元になったとみられ、これだけ日銀の国債市場での依存度が高いと、もしかすると可能かもしれないと考えたのではなかろうか。

 もともとアベノミクスそのものは金融政策の効果というより、安倍首相や黒田総裁の金融市場に対してのアナウンスメント効果による円安や株高を招いたとの見方もできる。しかし、それで円安となって、消費増税の駆け込み需要等で一時的に物価が上がっても、日銀の買い入れる量が作用していない以上、原油価格の下落などによってあっさりと物価は前年比マイナスとなってしまった。

 ところがそこにトランプラリーという神風が吹いた。これは2016年初のリスクオフの動きが英国のEU離脱でピークアウトしたところに、原油価格の上昇の動きも出ていたところに米大統領選挙でのトランプ氏の勝利がリスクオフの反動を起こすきっかけとなった。これは2012年11月のアベノミクスの登場のタイミングとも似通っている。

 日本の国債市場はとりあえず非常に素直に日銀の買入の調節等を見ながらの金利形成をしており、トランプラリーをきっかけとした米長期金利の上昇を受けて、日米金利差が拡がっての円安の動きも出ている。ただし、トランプラリーによるドル高の影響もあるため、一概に日米金利差だけで円安となっているわけではない。

 ということで最初の日銀の某政策委員のコメントに戻る。ここで解説されているのは日本の長期金利を抑えておけば、トランプラリーのような事が起きると円安を通じて、物価にも働きかけるとの認識となっている。こればいわば結果論であることは、今年1年の日銀の金融政策の変遷を追いかけるだけでもわかる。

 日銀はたしかに2013年4月の量的・質的緩和でも長期金利を含めた金利低下を促すことも目的としていた。しかし、それよりもマネタリーベースを増やすことによる効果を期待していたはずである。それがいつの間にか量から金利にすり替えられ、それも短期金利から長期金利の操作に変えてきた。

 長期金利を押さえ込めば、金利上昇圧力の強まりそうな材料が出てくる際には効果が倍増するとの認識であろうが、仮にこのまま物価も上がってきた際に、いつまでも長期金利を押さえ込むこともできないはずである。

 消費者物価指数(除く生鮮)が2%をつけても安定的に推移するので続けるというのがオーバーシュート型コミットメントではあるが、そんな状況になったのであれば、長期金利をゼロ近辺に押さえ込むことは不可能となる。

 日銀は無限に国債買入は可能なのでできるとのご意見もあるかもしれないが、そんな状況に追い込まれると財政ファイナンスとの認識がより強まる懸念がある。もちろん日銀は長期金利の操作目標を変えてくることもありうる。しかし、それは利上げとなってしまうが、それをいまの日銀が許すであろうか。ただし、利上げのようだが利上げではなく調整であるとして長期金利の目標値をそっと引き上げてくるやもしれない。

 足元の物価は少し前の日銀の物価目標であった消費者物価の「総合」ではプラス0.5%となっている。いまの目標のコアCPIはマイナス0.4%とマイナスのままではあるが、このコア指数も2月あたりにはプラスに転じるとの予想となっている。ガソリンの値上がりも続くなど、米国の動向など次第では日本の物価も上昇に転じてくることが予想される。それは別に日銀が国債を大量に買ったためでもなく、長期金利を抑えた円安効果もないわけではないが、原油価格を含めた他の要因の影響が大きい。

 物価が低迷している間は、日銀の抱えるリスクはあまり見えてこないが、いったん物価が上がりだし、それら応じた長期金利形成ができないとなれば、いずれ債券市場に貯まったマグマが吹き出すことも予想される。日銀と市場参加者が対峙するようなこともありうるか。来年はそんな場面を迎えることもあるのではないかと予感させる。

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# by nihonkokusai | 2016-12-31 09:40 | 日銀 | Comments(0)

日銀が国債買入額を元に戻した理由

 12月19、20日に開催された日銀金融政策決定会合の主な意見が公表された。このなかの金融政策運営に関する意見に次のようなものがあった。

 「現行の政策枠組みのもとでは、金融政策決定会合における決定と、調節運営との間の連携が非常に重要である。調節運営にあたっては、金融市場調節方針の範囲内において、一定の裁量の活用が望ましい一方、金融市場調節方針の決定にあたっては、調節運営などを通じて得た市場参加者の見方や市場動向を従来以上に考慮していく必要がある。」

 日銀は28日の国債買入において対象となった残存10年超25年以下と25年超オファー額を、それぞれ前回から100億円減額した。この減額は超長期債の利回りが急低下してしまったため、それを戻すためコントロールしようとしたものではない。それほど超長期の利回りは大きくは動いていなかった。

 それではどうしてこのタイミングで減額をしてきたのであろうか。ひとつの要因として日銀は公には認めないと思うが、国債の買い入れ額は増やしたくはない、むしろ減らしたいとの意向があったためとみられる。

 ただし、上記の主な意見にもあったように「金融政策決定会合における決定と、調節運営との間の連携」も絡んでいた可能性がある。日銀は月末に「当面の長期国債等の買入れの運営について」を公表しているが、この数字を変化させたくなかったのではないかとの見方もできる。金融政策を決めるのはあくまで決定会合における政策委員であり、それに基づいて調節運営を実行部隊が行う。しかし実行部隊が勝手にイールドカーブの居所を決めるというわけにはいかない。買入の調節の数字は途中はさておき、最終的なものは修正はしづらい。それが今回、買入額を元の数字に戻した背景にあるのではなかろうか。

 28日の債券市場では、この減額を受けて超長期債の利回りが大きく上昇した。しかし、債券市場のベンチマークともいえる債券先物は上昇し、10年債利回りは低下した。これを見る限り、今回の減額による市場のショックはほとんどなかったと言える。超長期債のある程度の利回り上昇は投資家目線でみると投資対象としてむしろ喜ばしいことになる。

 こうみると日銀はいまのところ市場動向をみながら、うまくコントロールしているようにみえる。しかし、今後も同様にコントロールできるかといえば、いずれ無理が来ることが予想される。主な意見では下記のような発言もあった。

 「資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを段階的に低下させていくことで買入れの持続性と市場の安定性を高めるべきである。長短金利操作によって、為替・株式市場のボラティリティは大きく高まった。また、「指値オペ」の実施を早期に余儀なくされたことは、長短金利操作の難しさを裏付けた。国債買入れを伴わない「指値オペ」は、実効性が低い。超長期国債の買入れ増額措置は、長短金利操作のもとでは国債買入れのペースが高まるリスクが相応に高いという当初からの自身の懸念を裏付けるものである。」

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# by nihonkokusai | 2016-12-30 09:47 | 日銀 | Comments(0)

日銀が目標CPIを総合からコアに変えたことで興味深い事態に

 2016年11月の消費者物価指数が27日に公表されたが、この数字がなかなか面白いことになっている。

 11月の消費者物価指数の「総合」は前年同月比でプラス0.5%、「生鮮食品を除く総合(コア)」で同マイナス0.4%、「食料及びエネルギーを除く総合(コアコア)」で同プラス0.1%となった。参考までに27日に日銀が発表した基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)によると、消費者物価指数の「除く生鮮食品・エネルギー(新コアコア)」は11月がプラス0.2%と、10月のプラス0.3%からプラス幅が縮小していた。

 コア指数の低迷は11月は前年比でみてまだ原油価格が下落していたこともあり、その影響でガソリン代や電気代が下がっていたことや、携帯電話・スマートフォンの値下がりが影響したようである。為替でみても1年前に比べると円高となっており、その影響も出ていたものとみられる。

 ただし、注意すべきは11月の消費者物価指数の「総合」の方で、こちらはプラス0.5%と10月の前年比プラス0.1%、9月のマイナス0.5%から大きく改善しているのである。

 何を言っているのか、物価指数はコアもしくは日銀のコアコアをみるべきであり、変動の激しい生鮮食料品を加えた総合では、その新鮮野菜の値上がりの影響が大きいため、こちらはあくまで参考程度ではないか、との声もあるかもしれない。

 ところが日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮」ではなく「総合」であったのである。これは2014年8月の決定会合議事要旨でも「物価安定の目標は、消費者物価の総合指数で定義している」との記述があった。ただし、展望レポートの予想物価については基調的な物価の動きを比較的よく表している「除く生鮮食品」指数を用いているとの指摘があった。

 ところがである。2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀は何気なくこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。

 黒田総裁は決定会合後の会見で、「次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。」と述べていたのである。何故、このタイミングで変更していたのか。

 もともと展望レポートでコアを使っていたのであれば、物価目標もコアが適切であろうと思われていた。それを意識して目標値の変更であったのかもしれないが、ここでもし変えていなければ、日銀が目標とする物価が大きく違ってくることになる。9月に変えなければ目標物価は総合のプラス0.5%となる、しかし変えたことでマイナス0.4%となってしまうことになる。

 総合のままであれば2%に向けて上昇しつつあるという解釈ともなろう。日銀の大量の国債買入やイールドカーブ操作で「野菜」の値段が上がったわけではないが、効果を発揮したと解釈するかもしれない。我々消費者としても野菜やガソリン価格の上昇で、実感としては物価は上がっているとの認識も強いのではなかろうか。

 ところが日銀は目標の物価をコアに修正したことで、いまだマイナス0.4%と水面下にいることになる。これはこれで日銀の金融政策が当初予定した効果を発揮していないとの解釈ともなるが、長期金利もこれで簡単には跳ね上がることもないということにもなるのか。

 ただし、今後はコアを含めて物価の基調は上昇していくことが予想される。トランプラリーによるドル円の回復等による影響が来年1月以降に出てくる。その際に日銀は物価上昇に応じた長期金利の上昇も封じ込めるのか。それとも長期金利の目標を引き上げて、いわゆる利上げを決定してくるのか、このあたりも今後の注目点となる。

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# by nihonkokusai | 2016-12-29 09:58 | 日銀 | Comments(0)

菅官房長官と黒田日銀総裁による円安政策とは何か

 27日の日経新聞の一面に、気になる記事というかコメントがあった。これは菅官房長官とのインタビューのなかで、為替に関して、円安となっているのは私たちが為替の危機管理をちゃんとやっているからだ、との発言である。具体的な対応については、「そこは色々と。私たちへの意識は強く、中途半端な決断ではない」と官房長官は発言していたのである。

 これはアベノミクスの元締めとも言える人物からの発言だけに、「色々と」とは何をしたのかはたいへん気になる。菅官房長官など官邸関係者が見ているのはドル円と日経平均が主だとみられる。官邸がたとえば為替に絡んで米国政府やFRBに直接働きかけをしたとは思えない。米大統領選挙についても結果が出てから慌てて首相がトランプ氏に会いに行ったぐらいで、事前に何か準備がされていたとは思えない。

 官邸による危機管理、中途半端な決断ではないものとはいったい何であろうか。トランプラリーが起きる前の円高の要因は、中国をはじめとする新興国経済の減速への懸念によるリスク回避の動きによるものであった。その後、英国のEU離脱などによってさらにリスク回避の動きを強めたが、これらは日本政府がどうのこうのできる問題ではない。

 トランプ氏の大統領選の勝利をきっかけとした円安ドル高も、日本が牽引したわけでは当然ない。リスク回避の反動のきっかけにトランプ氏の登場がなったわけでもあり、素直な市場の動きとも取れる。

 それでも「中途半端な決断ではない」ものとしては、ひとつ該当しそうなものがある。日銀が9月に決定した長短金利操作付き量的・質的緩和である。11月の消費者物価指数はコア指数で前年比マイナス0.4%となったが、日銀がいくら異次元緩和をしようとも物価は結果として目標には全く達していない。アベノミクスの主役であった金融政策は目標達成には何ら効果を及ぼさなかったこととなるが、それに危惧したのは日銀だけでなく、官房長官も同様であろうか。

 今年9月の日銀の総括と長短金利操作付き量的・質的緩和の決定に関しては、これまでの経緯からみても菅官房長官がまったく関与していなかったとは思いづらい。特にアベノミクスについては当初から物価そのものよりも、為替というか円安と株高が意識されていたはずである。特に長短金利操作付き量的・質的緩和についても、重点が量から金利に移行するため、リフレ派の意向を汲んでいるとみられる菅官房長官にとっては「中途半端な決断」ではなかったのかもしれない。ところがこれがトランプラリーの結果、功を奏する格好となった。

 黒田日銀総裁は12月26日の講演において、海外経済の好転が明確になっていくにしたがって、日本の長期金利にも上昇圧力がかかってきているものの、10年物金利は「ゼロ%程度」で安定的に推移しており、このことは「イールドカーブ・コントロール」が所期の効果を発揮していることを示しているとしている。これにより、グローバル経済の回復のモメンタムを、わが国経済にとってより大きな「推進力」に増幅していくことが可能になるとしている。

 何ということはない。直接触れていないが、日米の長期金利の較差の広がりにより円安効果を生み出すことを指摘しているとみられる。この見方を菅官房長官は共有しているのではないかと思われるのである。

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# by nihonkokusai | 2016-12-28 09:59 | アベノミクス | Comments(0)

フィンテックで我々の生活の何が変わるのか

 フィンテック(Fintec)とは、金融(Finance)と技術(Technogy)を組み合わせた米国発の造語である。かなり漠然としたものであり、一過性のブームかともみられていたが、日銀は今年4月に決済機構局内に「FinTechセンター」を設立しており、かなり真剣に取り組んでいるようである。日銀のFinTechセンターは、伝統的な金融業にとどまらない幅広い企業や学界などとの間で、建設的かつイントラクティブなコミュニケーションを取るための媒介的な組織との位置づけのようである。

 もともと金融とコンピュータは相性が良い事で知られている。我が国初の商用コンピュータを導入したのが東京証券取引所であり、それに応じて証券会社などもシステム化を進めた。銀行なども急速にシステム化を進め、ネットワークとしては1973年4月に全国銀行データ通信システムが発足し、日銀も金融の基幹インフラとも言うべき日銀ネットを1988年に稼働している。

 このような大型で費用も掛かるシステムに対して、我々個人の職場や生活のなかにもコンピュータが入ってきた。当初のパソコンはゲーム機のようなものであったのが、仕事の効率化と大型システムの端末として普及し、特にマイクロソフトのOSとインテルのチップが革命的な普及をもたらせた。職場や家庭のデスクにはいつのまにかパソコンが置かれるのが普通の時代となった。

 個人保有のパソコンの普及もあったが、携帯電話の普及のほうが早かったように思う。そこに登場したのがインターネットと接続された携帯電話、つまりスマートフォンの登場となる。日本のiモードは残念ながらガラパゴス化してしまったが、デザイン性やトップのカリスマ性も手伝って登場したiPhoneが革命を起こした。今回のフィンテックにはこのスマートフォンの普及も影響した面もあろう。スマートフォンを利用したペイパルなどの決済機能などがそれにあたる。

 さらに資産運用・資産管理というノウハウの面での利用なども指摘されている。家計簿のシステムやAIを利用した資産運用などである。ただし、これはそれほど画期的なものとは言えないように思われる。資産運用はもともと運用側の条件等によって機械的に行う側面もある。また相場の先行きを予測することについては、職人芸のような側面があるとともに、AIを使っても的確に予測するのは困難である。仮にすごいAIを開発して常勝が可能となれば、皆そのシステムに乗っかることになる。すると負ける人がいないので勝ち分もなくなり、それはつまりそんな儲かるシステムはできないことになる。

 大型コンピュータの登場が世界を変えた。パソコンも同様であり、スマホも同様である。そこにソフトも絡み、基幹ソフトだけでなく、ワープロ、表計算などのソフトが仕事を効率化させた。検索ソフトが波及してグーグルなどが生まれ、FACEBOOKやツイッター、さらには小売りのシステムを変えかねないアマゾンなども出てきた。果たしてフィンテックと呼ばれるものから、このような企業が出てくることがあるのか。仮想通貨などもフィンテックの一部かもしれないが、その代表格ともいうべきビットコインには肝心の信頼性の問題が存在する。ブロックチェーンを使っての仮想通貨は国内大手銀行もはじめるようだが、こちらもどれだけ波及しうるか未知数である。

 個人的にはフィンテックはWeb2.0のような漠然としたものではないかとみていて、距離を置いていた。その見方にあまり変化はないものの、海外送金などについてはフィンテックの技術で今後様変わりしてくることも予想される。我々にとって大きな変化とはならずとも、意外なところで便利さが増したり、余計な負担を軽減させてくれる技術となるのかもしれない。

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# by nihonkokusai | 2016-12-27 10:10 | 金融 | Comments(0)

来年度の国債の発行計画をみながら国債発行の仕組みを知ろう

 12月22日に政府は来年度予算案を閣議決定しました。2017年度予算案は一般会計の総額で97兆4547億円程度と、2016年度の当初予算を7329億円程度上回り、過去最大となります。どこまで増えていくのでしょうね。このタイミングで来年度の国債発行計画も公表されます。

 来年度の予算案での新規国債(建設国債と赤字国債)の発行額は34兆3698億円となります。今年度当初予算からは622億円の減額となり、三次補正後では4兆6648億円の減額となります。歳入全体に占める国債の割合、つまり公債依存度は35.3%程度と今年度当初の35.6%から低下します。なぜ予算の総額は増えているのに新規国債の発行額は減少するのでしょうか。このカラクリの背景には、円売り・ドル買い介入で得た資産を管理する外国為替資金特別会計の運用益2.5兆円を全額一般会計の歳入に繰り入れたことがあります。

 来年度の国債総発行額は153兆9633億円となり、これは今年度当初からは8兆2395億円の減額、三次補正後でみると15兆8365億円の減額となります。こちらの減額の理由は借換債が今年度当初から3兆354億円減額され、財投債が4兆5000億円減額されることなどによります。ただし、借換債の発行額の減少は一時的なもので今後は再び増加はしてくる予定です。

 国債総発行額の153兆9633億円のうち、入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は141兆2000億円となります。今年度当初に比べると5兆8000億円の減額です。発行総額とカレンダーベースの差額は個人向け国債発行や日銀乗り換え分となります。

 個人向け国債については0.05%という最低保証金利が功を奏して人気化し、今年度の発行額が増加したことで、来年度は3兆円の発行予定となっています。今年度当初に比べ1兆円の増加です。

 また来年度の日銀乗り換えは3兆円と今年度の8兆円から5兆円の減額となっています。日銀乗り換えとは、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるというものです。

 来年度の前倒債の発行限度額は56兆円(今年度の48兆円から大幅増額)となり、前倒債はかなり積み上がっています。前倒債というのは、借換債の弾力的な発行などを可能にするため、会計年度を越えて発行される借換債のことです。このように限度額が決められていますが、その範囲内で金融情勢などに応じた発行が可能となっており、すでに48兆円以上の国債が前もって発行されていることになります。これはいわば何かあっときのバッファーともいうべきもので、何かの事情で国債入札ができなくなった際にもこの範囲内で調整が利くことになります。

 カレンダーベースの年限別の国債発行額をみてると、40年債が今年度当初の4000億円6回から、来年度は5000億円6回と増額されます。30年債は8000億円が12回と変わらず。20年債は今年度の1.1兆円12回から1.0兆円12回に減額、10年債は2.4兆円が12回から2.3兆円12回に減額され、5年債は今年度の2.4兆円12回が2.2兆円12回に減額され、2年債は2.3兆円12回から2.2兆円12回に減額されます。1年物短期国債も都合1.2兆円減額となります。10年物物価連動国債は4000億円の減額、流動性供給入札は1.2兆円増額となります。

 これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの国債市場の参加者からの意見を組み入れた格好です。そもそも借換債と財投債が今年度から大きく減額されたこともあり、5.8兆円の減額が可能となりました。40年債の増額は流動性を意識したもので、流動性供給入札も同様です。20年、10年、5年、2年、1年で減額し、中期ゾーンは海外需要が2年債などより比較的少なく、マイナス金利で国内需要も少ないとみられる5年債が大きく減額されました。物価連動国債はそもそものニーズが少なく減額されました。ちなみに10年国債の減額は19年ぶりとなります。その間、ずっと増え続けていたのです。

 中長期債が減額されたことなどで、平均償還年限は9年5か月に延びました。これはなるべく利回りの低いうちにより長い期間の国債を発行しておいたほうが、利回り負担の軽減に繋がりますね。

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# by nihonkokusai | 2016-12-23 11:50 | 国債 | Comments(0)

日銀の長期金利操作目標の引き上げはありうるのか

 12月20日の日銀の金融政策決定会合では、賛成多数で金融政策の現状維持を決定した。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、資産買入れ方針ともに7対2での賛成多数となったが、いずれも木内委員と佐藤委員が反対した。

 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に反対した理由として、佐藤委員は、短期政策金利をマイナス0.1%、10年金利の目標をゼロ%程度とすることは期間10年までの金利をマイナス圏で固定することにつながりかねず、金融仲介機能に悪影響を及ぼすとして反対した。木内委員は、国債市場や金融仲介機能の安定の観点から、短期政策金利はプラス0.1%が妥当であり、長期金利操作目標は国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあるとして反対した(以上、金融政策決定会合の公表文より引用)。

 黒田総裁は20日の会見で、金利目標は「毎回の決定会合で議論される」との原則を述べつつ、「2%目標への距離はまだ遠く、具体的に議論するのは時期尚早」と発言した。トランプ相場による円安を背景に来年1月に物価見通しを引き上げる可能性も示唆した(ロイター)。

 意外に思われるかもしれないが、すでに日銀の金融政策の方向性は緩和のさらなる深入り方向ではない。9月に決定した長短金利操作付き量的質的緩和は、マイナス金利への金融機関からの批判等を受けて決定したものである。マイナス金利の深掘りは避けた上、超長期の金利上昇を促すという政策であり、この時点で日銀は総裁が何と言おうと、金融政策に関しては依然として緩和状態にあるものの、方向性としては中立の立場に転じたことになる。ここに円安株高、米金利高をともなったトランプ相場が加わって、長期金利目標の引き上げについては「時期尚早」という表現になった。

 さらに今回の会見で黒田総裁は、長期金利目標を「ゼロ%程度」ではなく、「0.1%」や「1%」と言い間違いをしていた。もちろんあまり細かいミスをつつく必要はなく、私も同じ立場なら言い間違いをした可能性がある。それはそれで0.1%とか1%が意識されていた裏返しとも言えよう。憶測とはなってしまうが、10年金利の目標をゼロ%程度という程度はマイナス0.1%からプラス0.1%という市場の認識は案外妥当性のあるものではなかろうか。

 金利目標は「毎回の決定会合で議論される」ものであり、それがたとえば10年金利の目標を実勢の長期金利の動向を睨んで、0.5%とか1.0%に引き上げることも予想される。ただしそれが意味することは「利上げ」であるということで、これは完全に日銀が方向転換をした上、FRBと同様の正常化に向けて一歩進めたと市場では捉えられる可能性がある。そうなると外為市場では円高となる懸念があり、日銀としては利上げと捉えられかねない10年金利の目標の上方修正は、よほど物価の上昇でもない限りは難しいことも確かである。

 それでも市場での長期金利上昇圧力を受けて、日銀が長期金利の目標値を引き上げざるを得ない、もしくは程度の範疇を拡げるようなことをしてくる可能性がある。この水準で長期金利が抑えられれば、日米の長期金利の格差が拡大し円安ドル高圧力となる。日銀の国債買入を利用しての長期金利操作は当面は可能かもしれない。それでも海外の長期金利の動向や足元の物価景気動向など次第では日本の長期金利にさらなる上昇圧力が加わる可能性がある。それを果たしてテクニカルな国債買入(指し値オペ)等で抑えられるのか。そのあたりの市場と日銀の駆け引きが今後行われる可能性がある。

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# by nihonkokusai | 2016-12-22 10:05 | 日銀 | Comments(0)
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