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日本国債の基準値が決定される仕組み

 国債を売買するにあたっての基準値は日本証券業協会が発表しているもの以外に、日本相互証券が発表しているものがある。また、プライマリー・ディーラーなどはそれぞれ独自の基準値を出している。

 そもそもこういった基準値はどのように決定されているのであろうか。債券の売買は店頭取引(つまり相対)で行われている以上、個々の売買がどのレートで行われているのかはわからない(当然、守秘義務も発生する)。

 このため日本証券業協会や日本相互証券は業者(主に証券会社)に聞き取り調査をすることで、その基準値(気配)を掴んでいる。それは主に15時現在の国債の利回りや価格となる。日本相互証券などが発表している気配表に基づいて、国債のポジションを抱えている金融機関は保有評価額を算出することになる。

 それでは業者はどのようにその日のトレード(売買)の際のレートを決定しているのであろうか。まず参考にするのは、前営業日の基準値となる。前営業日から当日の朝にかけて、海外市場動向などを元におおよその相場の居所を探る。そして、債券先物の寄り付きの位置などを見て、ある程度の相場の強弱を探るとともに、当日の財務省による国債入札や日銀による国債買入といったものも考慮し、投資家の需要などを元にしてイールドカーブの状況を推測する。それに基づいて、前日の基準値からどの程度利回りが乖離しているのかを探ることとなる。

 その上で、ディーラーなりの相場観に基づいて投資家との売買を行う。そして、投資家の売買により生じたポジションの調整などのため、日本相互証券などで売り買いを行う。もちろん日本相互証券での売買はディーラーの相場観による単純売買も行われている。この日本相互証券の端末は多くの証券会社や銀行にあり、そこで出合った利回りは外部から見ることができ、今度はそれが参考データとなる。

 日本相互証券ではカレント物と呼ばれる直近入札された2年、5年、10年、20年、30年債の売買が頻繁に行われることで、今度はその水準も参考にして、投資家との売買を行うことになるのである。

 また債券相場のおおよその流れは債券先物が参考になる。現物債に比べて常に価格が変動しており、その動向をチェックすることにより、相場の流れを掴み、現物債の売買の参考にされるのである。

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# by nihonkokusai | 2017-04-09 09:02 | 国債 | Comments(0)

FRBの情報漏洩問題、中央銀行の情報漏洩は何故起きるのか

リッチモンド連銀のラッカー総裁は4日、2012年の機密情報漏洩事件に関わったとして、即日辞任すると発表した。

ラッカー総裁は声明で2012年10月2日に調査会社メドレー・グローバル・アドバイザーズのアナリストと話した際、その後のFRB内の会合で話し合われる予定の政策選択肢についてアナリストが詳細な情報を握っていることが分かったとした。だがアナリストとの会話でコメントを拒否しなかったため、その情報を確認もしくは事実と承認しているかのような印象を与えた可能性があると述べた(WSJ)。

問題となったのはメドレー・グローバル・アドバイザーズの2012年10月の顧客向けリポートで、FRB内部の政策協議に関して市場を動かしかねない情報が含まれていたとされる。この問題を巡り下院共和党や連邦当局が調査を行っていた(WSJ)。

メドレー・グローバル・アドバイザーの有料レポートはメドレー・レポートと呼ばれ、真偽のほどはとにかくも金融に関する特ダネが掲載されることがあり、それが市場を動かすということがあった。最近ではあまり聞かなくなったものの、私が債券ティーラーの現役時代はこのレポートの記事がよく話題となっていた。

2012年10月当時の自分で書いたものを確認してみたが、メドレー・レポートに触れたものはなかった。しかし、それを探しているときに面白いものを見つけた。2012年10月31日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和が決定されていたが、それについては私は下記のような事を書いていた。

「日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。事前に資産買入等基金の10兆円程度プラスリスク資産の増額は報じられていた。今回は政府による経済対策と歩調を合わせた格好となっており、この報道は日銀関係者というよりも政府関係者から漏れた可能性が高いと思われる。」

憶測で書くなと言われそうではあるが、この際には決定会合の内容が事前に漏れていたことは確かであった。これはこの会合に限らずで、以前には決定会合の最中に決定内容が速報といった格好で報じられることもあった。かなり大昔となるが、日銀短観そのものが1週間前に漏洩して債券ディーラー間で回し読みされていたということもあったそうである。

中央銀行の金融政策、大昔では公定歩合の上げ下げとかは報道関係者にとり、そのスクープを抜くことが大きな勲章のようなものになっていたとされている。これもあってか、やや金融政策に関する事前報道が加熱していた時期もあった。ところが、こと日銀に関しては黒田総裁が就任してからは、そういったことがほとんどなくなった。だからこそ黒田日銀の追加緩和がサプライズと称されたのである。黒田総裁の異次元緩和そのものについては個人的には批判的ながらも、この情報漏洩を完全に遮断している姿勢に対しては評価している。

ただし、中央銀行が作為的に金融政策の情報を流すケースもあることにも注意する必要がある。いまのFRBがまさにそうである。年内複数回の利上げをするぞと関係者がコメントしている。これは当然ながら情報漏洩ではない。特に金融緩和ではなく、その反対方向に向かう際にはそれを市場に浸透させ、市場の動揺を押さえ込む必要があるためである。


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# by nihonkokusai | 2017-04-06 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

マーケットの新たなリスク要因、米・中・北朝鮮に英・露

米国のトランプ大統領は3月24日に「オバマケア見直し法案」の下院本会議での採決を見送り、同法案を撤回した。また、トランプ大統領が指名した連邦最高裁判事候補者の上院における承認を巡り不透明感も強まっている。さらに複数の州がトランプ政権の省エネ規制適用見合わせを違法として法的措置も辞さない構えを表明するなど、トランプ氏には逆風が吹いており、ロシアとの疑惑などもあり、トランプ政権の政策運営能力を疑問視する声も出始めている。

これに対してトランプ大統領は外交面で北朝鮮に対する強硬姿勢を示すことで、国民の目を背けさせているとの見方もある。トランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル開発を巡り、中国が協力しなければ単独行動も辞さない構えを示した。4月6、7日に南部フロリダ州の別荘で開催されるトランプ氏と習近平・中国国家主席の首脳会談を控え、警戒感が強まっている。中国としては北朝鮮問題は取り扱いの難しい問題であるが、米国の単独行動を許すとも思えず、米中首脳会談での北朝鮮問題をどのように取り扱うか、通商・為替政策を含めて注意する必要がある。米中首脳会談を睨んでか、北朝鮮は5日に弾道ミサイルを発射するという挑発行為に出た

3月29日、英国のメイ首相はEU基本条約(リスボン条約)50条を発動し、EUに対して離脱を正式に通知したが、さっそく問題が生じている。イベリア半島南端にある英領ジブラルタルを巡っての問題である。スペイン継承戦争後、1713年のユトレヒト条約でジブラルタルは英国の領土となったが、ジブラルタルでは周辺のスペイン人住民約1万人が働いており、毎日境界を通って通勤しているとされる。スペインのダスティス外相は、英領ジブラルタルについて、英国がEUを離脱した後も「境界を閉じるつもりはない」と表明したが、いずれこれが火種になるのではとの懸念も出ている。

そして4月3日にロシア第2の都市であるサンクトペテルブルクの地下鉄で爆発が発生し、多くの死傷者が出た。この日はプーチン大統領がベラルーシのルカシェンコ大統領との会談のためにサンクトペテルブルクに滞在中だったそうだが、ロシア連邦捜査委員会はテロの疑いがあるとして刑事捜査を開始したとされる。

4月3日の欧米市場では、米国やドイツ、英国の国債が買い進まれた。つまり長期金利が低下したわけだが、この動きはリスク回避の動きのようにも見えた。3月の米国の自動車販売台数が予想を下回り、米国で長く続いた販売好調局面が勢いを失いつつある可能性も意識されたようだが、地政学的リスク等を含めたリスクに市場が再び敏感になりつつあるのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2017-04-05 09:06 | 国際情勢 | Comments(0)

FRBが物価目標としているPCEデフレーターが4年10か月ぶりに2%の目標越え

31日に発表された2月の個人消費支出(PCE)で、PCEデフレーターは前年同月比2.1%の上昇となり、上昇率はFRBの目標である2%を4年10か月ぶりに上回った。ただし、エネルギー・食品を除くコア指数は1.8%上昇となり、前月と変わらずとなった。

ここであらためてFRBが物価目標としているはPCEデフレーターとは何かを確認してみたい。

2012年1月25日のFOMCの終了後に発表された「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の総合指数の2%とした。 

米商務省が発表している個人所得(Personal income)、個人消費支出(Personal consumption expenditures)、PCEデフレーター(Personal Consumption Expenditure Deflator)は米国の経済指標の中にあって、注目されるもののひとつである。

これは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得のこととなる。この個人所得は消費動向を決定付ける大きな要因ともみられている。賃金給与・賃貸・利子配当等といった所得の構成項目や、可処分所得・貯蓄率なども同時に発表される。

個人消費支出(PCE)とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものであり、米国のGDPの7割を占める個人消費の動向は米経済にも大きな影響を与えることで注目されている。特に名目個人消費支出の前月比などが注目される。

名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレーターと呼ばれるものであり、これも同時に発表される。PCEデフレーター変化率がプラスであれば物価上昇、マイナスであれば物価下落と捉える。

特に価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレーター」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためとされている。

しかし、FRBが目標とするのはコア指数ではなく総合指数である。これは足下物価動向を見るにはコア指数が良いが、長期的に見ると総合指数が適切と判断したものとされている。ただし、過去の事例をみるとFRBはコアPCEデフレーターが2%を越えてくると段階的に利上げを行っていた。

参考までに日銀も2013年1月に2%の物価目標の導入を決定したが、この場合の物価目標は全国消費者物価指数の総合指数の前年同月比であった。ところが2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、この目標とする物価を総合から生鮮食料品を除くコア指数に置き換えている。


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# by nihonkokusai | 2017-04-04 09:47 | 景気物価動向 | Comments(0)

2017年度の日本国債の発行市場はどうなっているのか

2017年度の国債発行計画は、昨年12月22日の政府による来年度予算案の閣議決定のタイミングで発表されているが、あらためて確認しておきたい。

2017年度の予算案での新規国債(建設国債と赤字国債)の発行額は34兆3698億円となり、2016年度当初予算からは622億円の減額、三次補正後では4兆6648億円の減額となる。

2017年度の国債総発行額は153兆9633億円となり、これは2016年度当初からは8兆2395億円の減額、三次補正後でみると15兆8365億円もの減額となる。減額の理由は借換債が2016年度当初から3兆354億円減額され、財投債が4兆5000億円減額されるためである。

2017年度の国債総発行額の153兆9633億円のうち入札等で発行される、いわゆるカレンダーベースの国債発行額は141兆2000億円となる。2016年度当初に比べると5兆8000億円の減額となる。2017年度の前倒債の発行限度額は56兆円(今年度の48兆円から大幅増額)となり、この分は今後の国債発行の調節を可能とするバッファーとなる。

カレンダーベースの年限別の国債発行額をみてると、40年債が2016年度当初の4000億円6回から、来年度は5000億円6回と増額される。30年債は8000億円が12回と変わらず。20年債は2016年度の1.1兆円12回から1.0兆円12回に減額、10年債は2.4兆円が12回から2.3兆円12回に減額され、5年債は今年度の2.4兆円12回が2.2兆円12回に減額され、2年債は2.3兆円12回から2.2兆円12回に減額される。1年物短期国債も都合1.2兆円減額となる。10年物物価連動国債は4000億円の減額、流動性供給入札は1.2兆円増額となる。

このように短期債から20年債に至るまで減額され、一部の増額もあり、差し引き全体では5.8兆円の減額となる。日銀の国債買入においては、減額されるゾーンを主体に減額の方向で調整を行っている。

3月22日に財務省で開催された国債市場特別参加者会合では、2017年度の国債発行に際して、リオープン方式について財務省から説明があった。10年債については2015年度から、新発債の表面利率と入札日における市場実勢の乖離がおおむね30bps以内の場合に、リオープンによる発行としているが、それが継続される。

20年債・30年債・40年債のリオープン方式及び40年債の入札方式については2016度と同様に20年債・30年債は年間4銘柄とし、40年債は年間1銘柄で利回りダッチ方式の入札とする方向のようである。

また、国債市場特別参加者の応札責任を発行予定額の5%以上に引き上げることや、第1非価格競争入札の発行限度額を現行の発行予定額の10%から同20%に拡大する案も出された。これは7月以降に発行される国債の入札分から適用される予定である。


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# by nihonkokusai | 2017-04-03 14:40 | 国債 | Comments(0)

日銀のステルス・テーパリングとそれを忖度(そんたく)する市場

今年の流行語大賞に選ばれるであろう言葉に「忖度(そんたく)」がある。森友学園の問題で国有地売買において忖度があったのか、なかったのか、国会の与野党の議論でも飛びかっていた用語である。

忖度とは、他人の気持をおしはかることと言う意味がある。森友学園の問題では、上司などの意向を推し量るといった意味合いで使われているとみられる。相手から直接言及されたり指示されたりされなくとも、相手が何をしたいのかを推量し、それに応ずるというのが忖度の意味ではないかと思われる。

その意味では国債買入に対する日銀の姿勢についても、市場はまさに忖度しているとも言えるのではなかろうか。

日銀は昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和政策を導入した。操作目標を「量」から再び「金利」に戻し、フレームワークの変更を行った。これによりマネタリーベースの目標値はなくしたが、なぜか長期国債の買い入れに対する量については数字を残した。

国債の買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとするとし、80兆円という数字を残したのである。

しかし、現実には80兆円を維持するのは困難になりつつある。そのために、2015年12月に補完措置を導入し買入可能な国債の金額を増加させた。しかし、それでも2016年度は年間国債発行額に相当する金額を購入せざるを得ない。2017年度の国債発行額は2016年度に比べ、カレンダーベースで差し引き5.8兆円の減額となることもあり、現在の規模のままでの国債買入は金融機関保有の国債引き剥がしともなり、次第に困難になっていくことが予想される。

この80兆円に関してはあまり意味はなくなりつつあり、減額可能な中期ゾーンなどを中心に一回あたりの買入額を修正する格好ですでに減額を行っている。これはステルステーパリングとも呼ぶ人もいる。

米国のFRBは非伝統的な金融緩和手段としての量的緩和に際し、毎月の国債等の買入額そのものを目標値としていた。このため正常化の過程においてはその金額を減少させるという、テーパリングという作業が必要となった。

これに対して2013年3月に決定した日銀の量的・質的緩和政策では、年間ベースでのマネタリーベースや国債買入額を目標水準としておき、それを達成するための毎月の国債買入額は特に数値目標化はされなかった。さらに昨年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和の導入により、80兆円という数字も目標数字とはならず、あくまで長期金利をゼロ%に抑えるための目安(めやす)的なものとなっている。

このため日銀が結果として毎月の国債買入額を減らしたとしても、現実にはこれはFRBのテーパリングとは違う意味合いとなる。しかし、現実には国債の買い入れ額は減らさざるを得ないし、80兆円という数字も形骸化しつつある。そのあたりの日銀の姿勢について、大胆な緩和政策を継続しているように見せているが、現状はちょっと違うということについて、市場参加者はまさに「忖度」していると言えるのではなかろうか。

大胆な金融緩和を維持しているようで、現実にはブレーキが掛かっている。それでも長期金利は日銀の意向も意識して、ゼロ%近辺に維持させざるを得ない。果たしてこんな状況がいつまで継続可能なのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-04-01 12:14 | 日銀 | Comments(0)

強力な緩和政策のブレーキにも苦慮するECB

3月9日のECB理事会で、主要金利と資産買い入れ策を据え置きを決定した。これは予想通りであり、市場へのインパクトも限定的かとみられていたが、市場はドラギ総裁の会見内容などから、ECBのスタンスの微妙な変化を感じ取った。

ドラギ総裁は理事会後の会見で、ECBは今回の声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言を削除したと表明した。削除理由について「デフレリスクに促された一段の措置の導入に向けた緊急性がもはや存在しないことを示唆するために削除された」と説明した。

さらにドラギ総裁はデフレリスクはおおむね無くなったと言えるとし、市場ベースのインフレ期待は目に見えて高まったと指摘した。また、景気に対するリスクバランスの改善を指摘したほか、利下げを示唆する言及を削除するかどうか協議したことも明らかにした。この発言等を受けて9日の欧州市場ではユーロが買われ、欧州の国債は売られた。

3月17日にECB理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁が、ECBは下限金利である中銀預金金利を主要政策金利であるリファイナンス金利より先に引き上げる可能性があるとの認識を示した。これを受けて市場ではECBの利上げも意識した。

ところが市場でECBが金融引き締めを視野に入れ始めたとの思惑が広がっていることを受けて、政策メッセージの変更に消極姿勢を強めていると関係筋6人が明らかにしたそうである。理事会の事情に詳しい関係筋の1人は「われわれはテールリスクの低減を伝えたかったが、市場は出口への一歩だと受け取った」とし、「ECBは拡大解釈された」と話した(ロイター)。

ドラギ総裁の会見は強力な緩和政策を打ち切って出口を探るとまでは解釈はできないが、緩和に前傾姿勢であったものを物価の上昇などを背景に少しブレーキを掛けたものともいえる。その意味ではたしかに利上げまで想定していたものではなかったのかもしれない。

ECB内にはかなり慎重な関係者もおり、金融緩和策の終了はかなり先だと投資家を安心させたい考えを持つ人もいることは確かである。

ECB内では、ドイツなど早期に金融緩和策の解除が必要とするメンバーと、強力な金融緩和が引き続き必要とするメンバーが再び火花を散らせているとの見方がある。

ドイツ出身のラウテンシュレーガー専務理事は27日に、ECBが政策スタンスの変更について協議するのは時期尚早としながらも、異例の金融刺激からの最終的な出口に向け備える必要があるとの認識を示した。

ワイトマン独連銀総裁はユーロ圏では拡張的な金融政策がなお適切との認識を示した上で、拡張的なスタンスが後退することを望むとも発言している。また、ECB理事会は、非常に緩和的な政策の出口政策をゆっくりと検討し始め、発信を幾分均衡の取れたものにすべきと考える人もいるかもしれないと語っていた。

これに対して、ドラギ総裁に近いとされるプラート専務理事からは、ユーロ圏はなお著しい金融刺激が必要との発言があった。タカ派的なドイツやオーストリアなどのグループと、ハト派的なグループがECBの強力な緩和姿勢の今後について、再び火花を散らしはじめているのかもしれない。

注目すべきはドラギ総裁の意志とも言える。ECB理事会後の会見はどうみてもハト派に組みしているようにも見える。ワイトマン独連銀総裁の「発信を幾分均衡の取れたものにすべきと考える人」とはドラギ総裁を示しているのではないとも思えてしまう。

ただし、マーケットは先を読んで動くことで、今回のECB内にはかなり慎重な関係者もいることを示したことで、特にイタリアやスペイン、ポルトガルなどの長期金利が予想以上に上昇してしまうリスクを先に摘んでおこうとしたのかもしれない。

いずれにしても正常化というのはECBにとってもなかなか困難なものであるのも確かで、表だってのブレーキも踏めない日銀はどうするのだろうと思わざるを得ない。


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# by nihonkokusai | 2017-03-31 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBのフィッシャー副議長の発言で市場のセンチメントが変化

FRBのフィッシャー副議長は28日に米経済専門局CNBCのインタビューにおいて、FOMC参加者の予測中央値で示された今年あと2回の利上げは「おおむね適切なようだ」と述べ、「それは私自身の予測でもある」と語った(ブルームバーグ)。

この発言を受けて、28日の米国市場ではFRBの年内複数回の利上げが再認識され、ドルが買われ、米長期金利が上昇した。米金利上昇を好感して銀行株が買われ、ダウ平均は150ドル高と9日ぶりの反発となった。3月の米消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことや、iPhoneの新モデルへの期待からアップル株が上場来高値を更新するなどしたことも要因ながら、米国市場のセンチメントがフィッシャー副議長の発言によってやや変わったことも確かではなかろうか。

スタンレー・フィッシャー氏については以前にも紹介したが、米国とイスラエルの両国籍を持ち、2013年6月まではイスラエル銀行の総裁だった。バーナンキ前FRB議長やドラギECB総裁などを教えた大学教授であっただけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行などで実務も経験している。オバマ大統領(当時)は、世界で最も優秀で経験豊かな経済政策の専門家のひとりとして広く認められていると語ったが、それに嘘偽りはないであろう。

現在のFRBの金融政策の方向性はイエレン議長とともにフィッシャー副議長が中心となって決定していると思われる。もちろん金融政策の決定は委員会制度を取っており、合議制ではあるが、舵を握っているのはこの2人が中心とみられる。

フィッシャー氏の副議長としての任期は2018年6月まで満了となる。その前にイエレン議長の任期は2018年2月となっている。トランプ大統領はイエレン議長の再任はないと言っており、トランプ氏が任期満了時にも大統領の席にいるのであれば、イエレン議長とそれを支えたフィッシャー副議長の再任はないとみられる。

ただし、理事としての任期は14年となっており、理事としてFRBに残る可能性はゼロではない。しかし、こういった例は過去に一度しかなく、特段残らなければならない理由がない限りはフィッシャー氏は74歳という高齢でもあり、可能性は低いとみられる。

フィッシャー副議長の発言によって、今年はあと2回の利上げが予想されるが、問題はそのタイミングとなろう。今後FOMCの日程は以下の通り。

May 2-3 (Tuesday-Wednesday)

June 13-14 (Tuesday-Wednesday)

July 25-26 (Tuesday-Wednesday)

September 19-20 (Tuesday-Wednesday)

October 31-November 1 (Tuesday-Wednesday)

December 12-13 (Tuesday-Wednesday)

6月、9月、12月のFOMC後に議長会見が予定されている。これまでの3回の利上げ(2015年12月、2016年12月、2017年3月)はいずれも議長会見が予定されているFOMCで決定されている。このため、6月、9月、12月のうちのいずれか2回がターゲットとなろう。4、5月のフランス大統領選挙の結果を受けてユーロに対するリスクが高まらなければ、6月のFOMCでの利上げの可能性も意外に高いのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2017-03-30 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)

金融政策運営に関する意見の興味深い箇所

27日に日銀が公表した3月15、16日開催の金融政策決定会合における主な意見は、よくよく読むとなかなか面白い箇所があった。このなかの金融政策運営に関する意見を確認してみたい。

「世界経済が好転するもとで、わが国の景気回復の足取りもよりしっかりしたものになってきているが、2%の「物価安定の目標」にはなお距離がある。こうした状況では、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切である。」

これが現在の日銀の金融政策の基本的なスタンスとなっている。我が国の景気がしっかりし、日銀が異次元緩和を行って、何故2%の物価安定の目標にはなお距離があるのか、ここが物価目標達成に向けた最大の問題点となろう。そこを解き明かさないと強力な金融緩和を推進していくことで本当に良いのかどうかは結論できないはずである。

「経済の好循環は緩やかで、「物価安定の目標」達成は道半ばである現況下においては、経済の好循環の後押しに資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。」

ここでは「経済の好循環の後押しに資するべく」との表現が気になる。実はこれが当たり前の金融政策の見方だったはずなのだが、黒田日銀のスタンスは能動的に金融政策で物価を動かすというものであり、これは昔の日銀の香りが漂う発言となる。

「物価安定の目標達成に向けて、経済を自律的な成長軌道に乗せることが重要である。海外経済を巡る不確実性も踏まえると、拙速に行動すべきではなく、現行の枠組みのもとで粘り強く金融緩和に取り組むことが肝要である。」

拙速にどんな行動を起こせというのであろうか。これはもしや昨年のマイナス金利政策などの反省を込めて、ということになるのであろうか。

「オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く達成するために、現時点で最適な政策枠組みである。」

最適というよりもいろいろと矛盾した政策であることは昨日、このコラムにて指摘させていただいた。

「現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮しており、またオペレーション上も特段の問題をきたしていないことから、早急に枠組みを変更する必要性は認められない。」

早急に枠組みを変更する必要性はさておき、日銀の現場の担当者は今年に入り、オペレーションではかなり苦労したであろうことが伺える。また、どの物価を見れば、現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮していると言えるのであろうか(物価だけが中央銀行の金融政策の目標ではないが、掲げた目標はあくまで物価であったはずである)。

「金融市場局が国債買入れオペ実施日の公表などの工夫も講じながら機動的なオペ運営に努めたことから、イールドカーブは、引き続き金融市場調節方針に沿った形で推移している。」

国債買入れオペ実施日の公表などの工夫は確かにマーケットの動揺を抑えた。市場との対話がやっとスムーズになってきた印象はあるが、それでも期末に向けた対応などやや唐突な面もあり課題は残ろう。

「海外金利の上昇から、金融政策の転換を求める声があるが、日本の金融政策はあくまでも日本の景気と物価を考えて行うべきである。米国や欧州の物価上昇率は2%近傍となっているが、日本はいまだ0%近辺である。日本の金融政策の転換が必要となるまでには相当に時間がかかる。」

米国の金利上昇と日本の足元物価の回復は、日本の長期金利の上昇要因となりうる。果たして長期金利をいつまでゼロ%近辺に抑えることが可能なのかを市場は懸念している。日銀の政策変更を求めているわけではないが、実勢に見合った長期金利が形成出来ない状態が何かしらのリスク要因となったりはしないか。そもそも長期金利の目標引き上げは単なる調節ではなく利上げに見えてしまう点にも長短金利操作の難しさがある。

「本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。」

まさにその通りかと思うが、なにぶん政策に矛盾した面があり(量と金利の併存、大胆な緩和で物価が動かない等々)、日銀の情報発信は注意したとしても、市場は悩んでしまう面もある。

「2月に国債買入れ額が大幅に膨らんだことは、長期金利に目標を設定すると大幅な国債買入れを余儀なくされ得るという 、イールドカーブ・コントロールの弱点が顕現化したものだ。」

木内委員の発言とみられるが、その通りとしか言いようがない。

「10年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は若干スティープであるべきと思う。先行きの不確実性への備えもあり、買入れは極力減らしておくことが望ましい。なお、先行きの外貨調達環境を考えると短国利回りは4月以降もさほど上昇しない可能性があり、一段の買入れ減額の余地がある。」

こちらは佐藤委員の発言か。こちらもほぼ同意であるが、先行きの外貨調達環境をどのように設定しているのであろうか。

「見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。」

これもその通りとしか言いようがないが、今のうちから議論しておく必要があるというのは少なくとも政策委員ベースでの議論はこれまで行っていないということになる。もちろん執行部ベースではシミュレーションはしていようが(しているはずだが)、表だっては出口に向けた動きを見せられず、政策委員間での議論はこれまで本当になかったようである。

 「イールドカーブ・コントロールのもとで、市場の金利や期待をコントロールするのは難しい一方、国債買入れオペは、むしろ市場の期待に影響され、買入れ額の調整等の面で柔軟性を失っていくリスクがある。このため、資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを秩序だって段階的に下げていくことが、政策の持続性と市場の安定性を高める。」

これは発言内容から、資産買入れ額を減額して操作目標とする枠組みを提案していた木内委員の発言と思われる(同一人物の発言が複数回載っていることはありうる)。これが素直なやり方のひとつであると思うが、金融緩和の後退は認めたくない現在の日銀が、この政策を取り入れることは、余程のことが起きない限りはたぶんない。


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# by nihonkokusai | 2017-03-29 09:40 | 日銀 | Comments(0)

矛盾だらけの日銀の異次元緩和政策

FRBが今年は年内複数回の利上げを見込み、イングランド銀行も英国のEU離脱というショックがあったものの今後の方向性としては利上げが視野に入り、ECBはデフレ脱却を表明し緩和に傾倒していた姿勢にブレーキを掛け始めた。

欧米の物価は2%近傍となり、物価目標という意味合いからも世界的なリスク発生による異常な緩和政策からの出口を探る方向に舵を切るなか、日銀だけが異常な金融緩和政策からの脱却の道筋が描けずにいる。

この要因としては、安倍首相の登場で日銀法改正までちらつかせながらリフレ的な政策を日銀に要求し、欧州の信用不安が後退しつつあるタイミングで、日銀がそれを行わざるを得なくなったことにある。しかもインフレターゲット政策として2%の物価目標を掲げ、それを金融政策で達成しようとしたことに無理があった。

日本の消費者物価がなぜ2%にならないのか。それは日銀の緩和が足りなかったわけではないことを理解するのに4年以上の時間をかけた壮大な実験を行ってしまったのが日銀である。しかも、その間に異次元緩和の拡大やらマイナス金利政策まで導入してしまった。量的緩和とマイナス金利という相反する政策が矛盾を来たし、その結果、今度はそこに長期金利まで操作対象にするという、なんでもござれの政策を実施している。シン・ゴジラは第四形態となってより強力な存在となったが、日銀の金融緩和の第四形態(QQE、QQE拡大、マイナス金利、長短金利操作付き)は無理に増築に増築を重ねた巨大で歪な構造物となりつつある。

ただし、日銀は出口政策にまったく目を向けていないわけではない。金利を下げることが金融緩和であるが、マイナス金利政策によって金融機関の運用に支障を来してしまった。このため長短金利操作という手段を導入したが、これは長い期間の金利を「上げる」政策となっていた(イールドカーブのスティープ化)。

また、国債の買い入れはいくらでもできると豪語しながら、現実には年間の国債発行額のほぼ全額を買わざるを得ない状況となってしまっている。来年度の国債発行額の減額もあり、日銀の国債買入は減額せざるを得ない。それが1月の日銀の国債買入のスキップであったが、市場との阿吽の呼吸ができずに市場を混乱させた。しかし、国債の日程を事前公表するなどして、市場にそれとなくステルステーパリングを認識させた。80兆円という買入の数字はすでに目標ではないし、現実にはそれを下回る国債買入となることが予想される。目標でなければテーパリングという表現はあてはまらないかもしれないが、現実には国債の需給を睨んだステルス的なテーパリングを行っているのが現状である。

日銀は表面上は緩和姿勢を維持させているように見せながら、これ以上の金利低下や国債買入の増額を模索しているというよりも、いかにして長期金利を現在の政策金利に抑え込めるのか、いかにして国債買入の減少をうまく実施させていくのかが、いまの日銀の課題になっているように思われる。

27日に公表された3月15、16日開催の金融政策決定会合における主な意見では、「本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。」との意見があった。この日銀の意図とは何なのか。本当のところの意図が言いたくても言えないところから市場の誤解を招くといったリスクもあるのではなかろうか。



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# by nihonkokusai | 2017-03-28 09:29 | 日銀 | Comments(0)
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