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聞き捨てならない国債に対する安倍首相発言

3月7日の日経新聞の日本国債という特集記事のなかで、次のような安倍首相の発言が紹介されていた。

「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ。国債は実質的には日銀が全部引き受けている。いまはマイナス金利だし、実質的に借金は増えない」

この発言は昨年秋、複数の与党議員を前に首相が漏らしていたものだそうである。また次のような首相発言も記事のなかで紹介されていた。

「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」

日銀にインフレターゲットを押しつけ、その結果として異次元緩和政策という、日銀が大胆に国債を中心とした資産を買い入れる政策を打ち出した。これは日本の財政を支援するためではなく、物価目標を達成するために決定されたものである。物価は一時的に上昇しても再びマイナスに落ち込んだ。日銀は量を拡大し、それでもダメなのでマイナス金利政策まで導入することになる。マイナス金利もダメなら長期金利も操作するとして、すべてくっつけた長短金利操作付き量的・質的緩和政策を決定した。すでに何が何だかわからないような政策となってしまったが、壮大な実験の結果、結論としていえることは金融政策そのもので物価は動かせないというものであった。

金融政策でダメなら財政政策でということになったのか、今度はヘリコプターマネーとかクリストファー・シムズ教授の理論を持ち出してきた。

シムズ氏は都内の講演で「ゼロ金利制約の下で金融政策が効きにくいときには財政拡張がその代わりになる」と提言したそうであるが、そもそも「ゼロ金利制約の下で金融政策が効きにくい」ということを証明させるために日銀に異次元緩和をさせたというのであろうか。

「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ」という首相の発言だが、デフレ脱却と国債償還を結びつけることの意味がわからない。もし国債の信用を落としたいのであれば、償還をやめるなり、日銀に本当の意味で国債直接引き受けをさせるなり、日銀保有の国債は政府債務と相殺したりしてみれば良い。

なぜそれをしてはいけないかといえば、あたりまえだが国債の信認を維持させるためである。その信認を崩せばインフレ圧力は確かに強まろう。しかし、ほどよい信認低下などできるわけがない。いったん日本国債の信用が低下すれば、ユーロ危機の際のギリシャの国債のように誰も日本国債を買わなくなってしまう。巨額の国債をすべて日銀が引き受けるとなれば、インフレ圧力が強まろうが、その前に日本国債の価格が急落し、東京株式市場や円の急落も免れない。日本は大きすぎてIMFでも救えず、その負担は国民に降りかかることになる。そんな実験をすべきだと言うのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-03-08 09:42 | 国債 | Comments(1)

日銀の利上げの可能性、意外にハードルは低い?

 FRBのイエレン議長はシカゴで行った講演で「今月のFOMCで、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って引き続き進展しているかどうか検証する」とし、引き続き進展していれば「FF金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた(ロイター)。


 FRBの金融政策の調節目標は金利に戻しており、その金利とはフェデラルファンド(FF)金利である。つまりイエレン議長のこの発言は、今月14、15日に開かれるFOMCで追加利上げが決定されることを示唆したものである。


 3日に総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%の上昇となった。プラスとなったのは2015年12月以来、13か月ぶりとなる。日銀の物価目標であるコアCPIの前年比がプラスに転じても、まだ目標の2%にはほど遠い。日銀はこれが2%になるまで現在の長短金利操作付き量的・質的緩和政策を続けると言っている。


 こういった状況のなかにあって日銀の佐藤審議委員は下記のような発言をしている。


 「(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)は毎回の会合において次回会合までの操作目標水準を都度決定する柔軟な仕組みである。その下で、長期金利操作についてはその時々の経済・物価・金融情勢やそれらの変化のモメンタムを勘案しながら、最適なイールドカーブの形状を政策委員会で判断している。」


 「仮に経済・物価情勢が望ましい方向に変化し、また市場がそれに応じて、ないしはそれを先取りして変化しているという認識に政策委員会が至れば、市場の動きを追認する形で操作目標水準を柔軟に調整していくことが適当と思う。」


 念のため、この意見は日銀の政策委員の総意ではなく、あくまで佐藤委員個人の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する認識とみられる。しかし、現実に足元物価が上昇基調に転じ、米国の追加利上げにより米長期金利が上がるなど情勢が変化すれば日本の長期金利にも上昇圧力が加わる可能性は出てくる。


 いまのところ3月のFOMCでの利上げ観測が強まっても、米長期金利は2.5%がひとつの壁となっている。しかし、いずれ3%を目指して再度上昇する可能性もありうる。


 佐藤委員は次のような発言もしている。


 「長期金利操作に関する政策実務上のプラクティスが必ずしも確立しているとは言い切れない現状では、操作のタイミングや幅などは、無論、政策委員会の判断事項ではあるが、操作に先立っては市場との入念な対話によりサプライズを避けるなどの周到な配慮も必要と私は考える。 」


 この場合の操作とは長期金利を含めた目標金利の調節、つまり利上げとなる。日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和という「柔軟な」政策に移行したことで、実は利上げのハードルを低めたようにも思われ、それは佐藤委員も認識しているとみられる。


 むろん黒田総裁などは長期金利の操作目標の引き上げなど、まったく考えていないとの認識であろう。しかし、経済・物価情勢が望ましい方向に変化してきた際にはいずれフレキシブルな対応が市場から求められる可能性がありうる。そのタイミングは意外に早期に出てくる可能性がある。



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# by nihonkokusai | 2017-03-07 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入の行方、市場との対話がより重要に

 2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。今回からオペ通告日を事前に発表することとなり、1年超5年以下の中期ゾーンは6回、5年超10年以下の長期ゾーンも6回。そして10年超の超長期ゾーンは5回となる。1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。


 こちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。


 日銀は今年1月の国債買入で中期ゾーンを一回分スキップした。これをきっかけに債券市場は動揺した。日銀は国債買入を減額しようとしており、ある程度の長期金利の上昇は容認するのではないかとの観測が出た。日銀は長期ゾーンの買入を一回程度400億円増額し、金利上昇は抑制しようとしたが、市場の動揺は収まらず、その結果、2月3日に10年債利回りが0.150%まで上昇し、日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「指し値オペ」をオファーした。これで市場の動揺は収まるが、日銀は2月10日の国債買入で超長期ゾーンを100億円ずつ増額し、超長期債の利回り上昇も抑えようとした。


 日銀が何故、1月に中期ゾーンの買入を一回スキップしたのか。これは4月以降の来年度の国債発行額の削減を見据えたものであったと想像される。しかし、これはテーパリングと認識されると円高や株安、さらには長期金利の上昇を招く恐れもある。国債買入の減額はいずれ必要になろうが、2月の債券市場の動揺で結果として増額となってしまったことになる。


 いまの日銀の金融政策である長短金利操作付き量的・質的緩和政策では、量を残した上で長期金利の目標値を設定している。これはリスク回避の動きやデフレ圧力が強まる際には機能したかもしれないが、景気や物価がしっかりするなど正常な状況となり、海外要因や物価動向などによる金利に上昇圧力が加わると長期金利を押さえ込むことも難しくなる。その結果、大量の国債をさらに買い入れなければならない懸念も生じる。


 4月以降の国債需給はよりタイト化することが予想されるため、このままのペースで日銀が国債買入を継続できるのかという疑問も生じよう。今後は物価の上昇も予想される。このため長期金利の目標値に対して幅を持たすなり、国債買入を減額しても市場に動揺を起こさせないようにするためのより一層の市場との対話も必要になってくるのではないかと予想される。



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# by nihonkokusai | 2017-03-06 09:20 | 日銀 | Comments(0)

日本の消費者物価指数(除く生鮮)がプラスに転じ、金利は上がるのか

 3月3日に総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%の上昇となった。プラスとなったのは2015年12月以来、13か月ぶりとなる。総合は前年同月比プラス0.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)は同プラス0.2%となった。

 ガソリンの前年同月比がプラスに転じたほか、灯油、電気代などの下落幅が縮小するなど、エネルギー価格の回復が押し上げた格好となった。今後はコアCPIで前年比プラス0.5%あたりまでの上昇が予想されている。

 EU統計局が2日に発表した2月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年同月比2.0%の上昇となり、4年ぶりの高水準を記録した。2%をやや下回る水準というECBの中期目標も上回ったことになる(ロイター)。こちらもエネルギー価格の上昇が寄与している。

 米国の1月の消費者物価指数もガソリン価格の上昇などを受けて、総合CPIは前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっていた。FRBの物価目標となっているPCEデフレーターの前年同月比の伸び率は1.9%と前月から0.3ポイント高まった。

 FRBはこの物価上昇も背景に今月14、15日のFOMCでの利上げを検討するとみられている。また、ECBにとっては今月のオランダの総選挙や4、5月のフランス大統領選挙という不透明要因を抱えているものの、物価面から見る限り、「超」がつく金融緩和政策の縮小も検討する必要も出てこよう。

 そして日銀であるが、目標とするコアCPIがプラスに転じたとはいえ、まだ前年比プラス0.1%に過ぎない。今後もプラス0.5%あたりまでの上昇予想はあっても、2%の目標達成にはほど遠い状況にある。このため現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を継続していくことが予想される。

 しかし、米国が正常化に向けて政策を進め、欧州も政治が落ち着けばいずれ超緩和策からの出口を探る必要が出てくる。イングランド銀行も近いうちに利上げに踏み切るべきという意見が、MPCメンバーから出ている。欧米ではこれにより長期金利についても再び上昇圧力が加わる可能性もある。

 日本でも物価がプラスに転じたこともあり、これによりより長いところの金利にもじわりじわりと上昇圧力が加わることも予想される。果たして短い金利のマイナスをいつまで続けられるのか、長期金利の目標をゼロ%のまま維持することができるのか。今後はこのコントロールがより困難になってくることも予想されるのである。


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# by nihonkokusai | 2017-03-04 07:22 | 景気物価動向 | Comments(0)

トランプ大統領に必要だったのは信用力だったのか

3月1日に米国のトランプ大統領は就任後初めて議会上下両院の合同会議で今後1年間の施政方針を示す演説を行った。市場ではどのような内容の経済政策が打ち出されるのかを見極めようとしていたのかと思っていたがどうやらそうではなかったようである。

この演説でトランプ大統領は、外交・安全保障について、「戦争を防ぎ、もし必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。国防費の大幅な増額を求める」と述べていた(NHK)。

また、30年ぶりとなる「歴史的な税制改革」や「1兆ドルのインフラ投資」への協力を議会に訴えた。ただし政権発足から1か月たっても政策の細部を詰める体制が整わず、具体策はいまだみえていない(日経新聞電子版)。

市場が期待した具体的な減税等の具体策は示されなかった、にも関わらずこの日の米国株式市場でダウ平均は303ドルも上昇し、21000ドル台に初めて乗せてきた。ナスダックも78ポイントの上昇となり、S&P500種株価指数も上げて、三指数ともに過去最高値を更新した。ドルも上昇しドル円は114円台に乗せてきた。

米株の上昇の背景としては、3月のFOMCでの利上げ観測の強まりによる米金利の上昇もあった。利上げに伴う利ざや改善の期待から大手銀行の株が買われたのである。米金利の上昇によりドルが買われた側面もある。

しかし、それ以上に影響したとされるのが、トランプ大統領の演説となった。その演説の内容というより、大統領の演説ながら「大統領らしい」演説となっていたことが好感されたようである。過激な発言やツイートを繰り返していたトランプ大統領がちゃんとした演説ができるではないかと、米国大統領がどうやら信用力をこれで取り戻したらしい。期待されていたのは政策ではなく、大統領らしさ、冷静さであったようである。

トランプ政権では上院での閣僚承認も遅れており、各省の次官など政治任用ポストもほとんどが空席のままとなっている。今回の議会の演説はこうした人事の遅れを少しでも取り戻すために、両院議員に理解を求める意図があったのかもしれない。少しでもトランプ大統領への懸念を払拭させることが演説の目的であったとすれば、市場の動きを見る限り奏功したといえる。ひとまずトランプ大統領に必要だったのは信用力であったようである。

トランプ大統領が経済政策を急がずとも、米国景気は緩やかなペースで拡大している(ベージュブック)。FRBも3月のFOMCでの利上げに向けて体制を整えつつあるぐらいに、足元の景気や物価は好調さを持続しているともいえる。これもトランプ大統領にとってはフォローとなっていよう。



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# by nihonkokusai | 2017-03-03 09:21 | 国際情勢 | Comments(0)

3月のFOMCでの利上げがほぼ確定的に、背景にはトランプ大統領による影響も

イエレン議長は2月14日の上院銀行委員会における半期に一度の証言で、緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないと指摘し、利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされると指摘した。

フィッシャー副議長は16日、ブルームバーグテレビのインタビューで、この時期に想定していた状況と現状は一致している、つまりインフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定だと発言し、この二つが実現すれば、ほぼ想定していた通りの軌道に乗ることになるだろうと述べた。

2月22日に公表された1月31~2月1日のFOMC議事要旨では、多くのメンバーが雇用とインフレをめぐる指標が予想通りに推移すれば「比較的早期に」利上げを実施することが適切になる可能性があるとの認識を示していた。

しかし、昨年も利上げに前向きな姿勢を示しながらも結果として利上げは年末の一回に止まったこともあり、市場では早期利上げの可能性は少ないとの読みとなっていた。

2月27日にはダラス連銀のカプラン総裁が、近い将来に利上げする必要があるだろうとの認識を示し、3月の可能性を示唆。

28日にはサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も、3月のFOMC会合では利上げを「真剣に協議」すると見込まれると語った。

そしてニューヨーク連銀のダドリー総裁も28日にCNNテレビのインタビューで、追加利上げについて「金融政策を引き締める根拠はより説得力を増している」と語ったことで、市場では急速に3月の利上げを意識し始めた。

たたみかけるように3月の利上げの可能性を関係者が指摘し、ハト派とみられるニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言もあって市場はここにきて急速に早期利上げを織り込みにきた。

28日のフェデラルファンド金利先物市場が織り込む3月の米利上げの確率は70%余りとなっていた。この数値は無視できず、3月14、15日に開かれるFOMCで利上げが決定される可能性は極めて高くなってきたと見ざるを得ない。

昨年と一昨年はそれぞれ12月のFOMCで一回利上げを決定した。しかし、今年は早くも3月のFOMCで利上げを決定するとしたらその根拠は何か。物価をみると上昇圧力は強まりつつある。雇用も好調さを持続している。だからといってこれまでの慎重姿勢を崩す理由とはならない。

ここにはやはりトランプ大統領就任による影響が大きいのかもしれない。ただし、それはトランプ政権による経済政策への期待といったものよりも、トランプ氏の影響力がFRBに及ぶ前に利上げを急ぐ必要があった可能性がある。FRB理事の人事に加え、来年はイエレン議長とフッシャー副議長も任期が来る。この人事は大統領が握っている。そのトランプ大統領もいまのところは利上げについては容認しているようにもみられ、タイミングとしても早めに利上げしておきたいという意向が働いたのではなかろうか。

そしてFOMCメンバーのなかでも最もハト派的とされているブレイナード理事は3月1日に、世界経済の回復と堅調な米国経済は、FRBによる利上げが「早期に」適切となることを意味するとの見解を示した(ロイター)。これにより、余程のアクシデントか14日までに発表される米経済指標が予想外の悪化を示すようなことがなければ、3月14、15日に開かれるFOMCでの利上げ決定は確定的となったと見ざるを得ない。


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# by nihonkokusai | 2017-03-02 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀が国債買い入れ日の事前公表をはじめた理由

日銀は主にその月の最終営業日に「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表している。2月28日の夕方に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」には、これまで回数だけだったものから、具体的な国債の買い入れ日も表記された。

日銀のサイトにある「国債買入れ」

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_f/index.htm/

この日銀の国債買入を巡って、国債を中心に売買している債券市場参加者が、調節を行っている日銀の意図が読めず、1月から2月にかけて市場は動揺し、その結果、日銀も動揺することになった。それが今回の日程発表の要因となっていた。この間に何かあったのかを確認したい。

そもそもの発端は昨年12月30日に発表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」での変更点にあった。11月30日に発表したものでは「オファーの回数」が1年超5年以下であれば11月30日分は「6回程度」となっていたものが、12月30日分では「5~7回程度」と変更されていた。5年超10年以下も「6回程度」から「5~7回程度」に、10年超は「5回程度」が「4~6回程度」となっていた。

いったいこれは何のための変更なのか。それがわかったのが1月25日の日銀の国債の買い入れにおいてであった。25日の日銀の国債買入の市場参加者の予想は、残存10年超25年以下と残存期間25年超に加えて「1年超3年以下」、「3年超5年以下」も含まれていた。1年超3年以下と3年超5年以下は一応セットとなっており、1月は25日までに4回の買入が実施されていた。昨年12月には6回実施されており、1月も当然6回あると市場参加者は読んでいた。ところが25日に「1年超3年以下」、「3年超5年以下」がオファーされなかったことで、27日に1年超3年以下、3年超5年以下の買入あっても、もう一日がみつからない状態となってしまったのである。

これが月初めや月半ばであれば、調整が利くかもしれないが、1月も押し迫っている上に26日には流動性供給入札、30日には2年国債入札、30~31日は日銀の金融政策決定会合が予定されていたことで、市場参加者が、えっとなったのである。現実に1月の「1年超5年以下」の国債買入は1回分スキップされた。

日銀はこのスキップを意識していたため、「オファーの回数」の表現を変更したとも言える。来年度の国債発行額は中期ゾーンを含めて減額される。日銀にとっては巨額の国債買入を継続するのは次第に困難になることが予想され、そのため事前に手を打ったとの見方もできよう。ただし、市場の動揺を抑えるためか「5年超10年以下」について日銀は27日に4500億円と400億円増額させてきた。

ところが1月31日に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、5年超10年以下の2月初回分では4100億円と元に戻されていた。これから伺えることは5年超10年以下の400億円の増額は中期ゾーンを1回スキップしたことによる一時的な金利上昇(もしくはその懸念)に対応するものであったといえる。

長期ゾーンの増額が一時的なものであることがわかり、市場は日銀のイールドカーブコントロールによる長期金利の居所を改めて探りに来た。2月2日に10年債利回りは上限とみられた0.1%を越えてきた。長期金利が0.1%という節目を越えたことで、日銀がどのような対応を行うのかが焦点となった。3日の10時10分の日銀による国債買入のオファーでは残存期間5年超10年以下の買入金額が4500億円となった。つまり5年超10年以下を4500億円に戻してきたのである。

それでもこの日の国債は急落した。これは5年超10年以下のところの増額が前回と同様の400億円にとどまったこと(最大5300億円まで可能)、さらに金利を抑えたいのであれば、ここは普通に超長期ゾーンをオファーすべきところ、それがなかった。これによりある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められ、債券先物が大きく売られ、10年債利回りは0.150%まで上昇したのである。

日銀はもしかすると400億円程度の増額で長期金利の上昇にブレーキを掛けられると信じていたのかもしれない(状況を考えるとそれはかなり債券市場の地合の読み方を間違えたともいえる)。日銀が読み間違えていたのであれば、10年債利回りの0.15%までの上昇は想定以上のピッチとなる上、ここで歯止めを掛けておかないと、0.2%あたりまで簡単に上昇するリスクが生ずる。

そこで日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。11月17日に初めて実施された指し値オペは実勢利回りが指し値よりも低下したため応札額がゼロとなり、いわば空砲であった。しかし、今回の国債買入は、対象が残存期間5年超10年以下の固定利回較差は0.006%(前日の引け値対比)となり、10年利付国債345回でみた買入利回りは0.110%となった。前場の10年債利回りの引け水準が0.140%近辺となっていたので、今度は空砲ではなく実弾となった。これにより7239億円の買入を行った

さらに2月10日の国債買入では10年超25年以下の買入金額をそれまでの1900億円から2000億円に、25年超を1100億円から1200億円に増額している。そして2月は1年超5年以下の国債買入の回数を6回に戻した。日銀は国債買入の削減を意図していたとみられるが、むしろ指し値オペを含めて増額せざるを得ない状況となってしまったのである。

2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。1月から2月にかけてのドタバタで少しでも不透明感を払拭させるため、今回からオペ通告日を事前に発表することになったとみられる。1年超5年以下の中期ゾーンは6回(1日、10日、15日、21日、29日、31日)、5年超10年以下の長期ゾーンも6回(3日、8日、13日、21日、29日、31日)。そして10年超の超長期ゾーンは5回(3日、8日、10日、15日、23日)となっていた。

1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。

そしてこちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。ただし、1回あたりの上限については微妙な修正をしている。中期ゾーンの上限を下げた反面、長期と超長期はゾーンそのものを微妙に修正している。

市場に動揺を与えないためには国債買入額は結果として増額のままにせざるを得ない面はあるものの、4月以降の国債発行額そのものが減少することを考えるとむしろ減額する必要が出てくる。このため初回の金額については提示しなかった可能性もある。

実際に3月1日の日銀の国債買入オファーでは、1年超3年以下を3200億円(前回4000億円)、3年超5年以下を4000億円(前回4200億円)と減額してオファーしている。日銀は回数ではなく金額で修正してきた。


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# by nihonkokusai | 2017-03-01 09:56 | 日銀 | Comments(0)

欧米の長期金利が低下基調になった要因

 24日にドイツの2年国債利回りはマイナス0.95%を付けて過去最低を記録した。この背景としてはECBによる国債買入がある。ECBが中銀預金金利を下回る利回りの国債を一段と買い入れるのではないかとの観測もあった。


 ドイツ国債の利回り低下は、フランス大統領選挙などの行方を睨んだリスク回避の動きとの見方もできる。ただし、一時売られていたフランス国債もここにきて買われており、利回りが低下している。これはルペン・リスクをフランスの債券市場がどう捉えるかによって反応が異なる面もある。フランスのリスクとしてはフランス国債は売りかもしれないが、安全資産としてフランス国債が買われる側面もあろう。


 ドイツの2年債ではなく10年債の利回りの推移を見てみると1月26日に0.48%あたりまで上昇したが、それ以降は低下基調となっており、2月24日には0.18%に低下している。英国の10年債利回りも同様に1月26日に1.5%台をつけたあと低下しており、2月24日に1.07%まで低下していた。この利回り低下の背景には米国債の利回りの低下がある。ドイツや英国の国債利回りの動きは米国債の動きに連動することが多く、ドイツの国債利回りの低下の背景には米国債の利回りの低下も大きく影響していたとみられる。


 その米10年債利回りは12月半ばに2.6%近くまで上昇したあとは上昇ピッチにブレーキが掛かり、24日の米10年債利回りは2.3%あたりまで低下した。


 米国株式市場の代表的な指標であるダウ平均は25日も上昇し、1987年以来およそ30年ぶりに12日続けて過去最高値を更新した。この上昇の要因としては減税などのトランプ新政権の経済政策への期待があり、いわゆるトランプラリーと呼ばれる動きとなっている。


 米国大統領選挙前は1.8%近辺となっていた米10年債利回りは、トランプ氏の政策による景気や物価の影響も意識されてあっさりと2%台に乗せてきた。しかし、株価よりも早い12月半ばという時期にピークアウトしてしまった。12月半ばでピークアウトしたということは、米債はトランプラリーよりも、12月14日のFOMCでの利上げを意識していたとも言えそうである。


 それ以降の米10年債利回りの低迷は、イエレン議長などが追加利上げに前向きな姿勢を示しても、2017年の利上げもかなり慎重になるのではとの思惑が背景にありそうである。さらに3月のオランダの総選挙、4月と5月のフランスの大統領選挙を睨んでのリスク回避の動きが少なからずあったことも確かであろう。


 トランプ政権の経済政策に対する過剰な期待が債券市場では少し剥がれてきていることも、米10年債利回りが抑えられている要因とも言えるのではなかろうか。米10年債利回りの低迷がドイツの10年債利回りも抑制し、これらが米2年債利回りの過去最低更新の背景のひとつにあるとみられる。それでもなぜドイツの2年債利回りが過去最低を更新するまで買い進まれているのかはやや不明な部分もある。


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# by nihonkokusai | 2017-02-28 09:43 | 債券市場 | Comments(0)

日銀がいずれ国債買入を減額することが必要となる理由

 23日の山梨での木内登英審議委員の講演で、「国債買入れの安定性・持続性強化に向けた提案」がされていた。木内審議委員は毎回の金融政策決定会合において。金融市場調節の操作目標を資産買入れ額としたうえで、資産買入れ方針に関して、長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどを内容とする議案を提出している。その理由に絡めて提案の説明があった。


 「日本銀行は、量的・質的金融緩和のもとで大規模な国債買入れを続けており、日本銀行の国債保有比率は既に国債発行残高の4割程度に達しています。一方、国内金融機関は、様々な理由から、国債を保有する必要があります。例えば、銀行は、担保需要や金融規制対応から、一定規模の国債を保有する必要があるほか、年金は、適切なポートフォリオの構築という観点から、運用資産の一定比率は安全性の高い国債で保有する必要があります。また、生保は、生命保険商品という非常に長期の負債を持つことから、ALM(資産・負債の総合管理)や会計要件充足のため、超長期国債を中心に、相当額の国債を保有する必要があります。」


 国債とは国の借金であるとともに、金融市場にとってはなくてはならない金融商品である。安全資産であり満期まで持てば元本が返ってくる。株式や為替の影響を受ける外債投資ではどうしても元本を割り込むリスクが存在する。このため国債には安全資産として、もしくは日銀担保などとしての一定のニーズが存在している。


 「日本銀行が発行済みの国債を全て保有することができる訳ではなく、現在の買入れペースを続けていけば、国債買入れが困難な状態に近づくことは必至であると私は考えています。」


 国債の残存は1000兆円もあるので、数字上からはまだ600兆円も日銀は買うことができる。足らなければ国がバンバン国債を発行すれば問題ないとの意見もある。しかし、それは金融機関の保有している国債を引きはがすこととなる。また、むやみやたらに国債を発行してしまうと国債の信用力が低下しかねない。このため、日銀がこのまま大量の国債買入を続けるには無理があると私も思う。


 「また、国債買入れの困難度が増すにつれて、先行きの金融政策に対する不確実性の高まりや国債市場の流動性の過度の低下などから、金利が大きく変動しやすくなり、金融市場や実体経済に深刻な影響を及ぼす惧れがあります。」

 世界的な危機が存在しリスクが高まり、国債へのニーズが強まり、金利は低い状態が続く限りは、量と金利の両方を操作できても、その環境が変われば無理が出てくることになる。海外要因や物価要因などから金利に上昇圧力が加わった際などには、量と金利の両方を追い求める日銀の現在の政策の矛盾が浮き出る。


 木内委員の主張する45兆円という数字で良いのかどうかはわからないが、この数字そのものを取り除いてしまった方が良いと思う。しかし、こういった提案は日銀の審議委員のなかでも木内委員からしか出されていない。ほかの委員も現在の規模で国債買入が続けることがいずれ困難になると理解はしていると思うが、それにブレーキが掛けられないこともいまの日銀の現状なのである。


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# by nihonkokusai | 2017-02-27 09:25 | 日銀 | Comments(0)

日本と中国の米国債保有額の差が縮小」

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、最新の数字となる昨年12月分で、日本はトップの座を維持していたものの、中国との差が縮小していた。中国は昨年4月あたりから保有する米国債を減少させていたが、12月は久しぶりに増加に転じた。これに対して日本は11月から米国債保有額を減少させた。この結果、日本と中国の保有額の差は11月が593億ドルとなっていたのが、12月は324億ドルに減少した。


上位10か国の12月の数字は次の通り、単位10億ドル、()内は11月分
日本(Japan) 1090.8(1108.6)
中国(China, Mainland) 1058.4(1049.3)
アイルランド(Ireland) 288.2(275.2)
ケイマン諸島(Cayman Islands) 263.5(260.6)
ブラジル(Brazil) 259.2(258.3)
スイス(Switzerland)  229.3(229.5)
ルクセンブルグ(Luxembourg ) 223.4(221.0)
英国(United Kingdom) 217.1(212.0)
香港(Hong Kong ) 191.4(185.5)
台湾(Taiwan) 189.3(183.1)


 米国債の利回りの推移を見てみると、12月15日に米10年債利回りは一時2.64%まで上昇した。この背景にはFRBによる利上げと2017年の追加利上げ観測があった。12月14日のFOMCでは全会一致で政策金利を年0.25~0.50%から0.50~0.75%に引き上げている。また、FOMCメンバー17人の利上げ見通しは2017年に3回と前回9月の2回から増えた。これを受けて米10年債利回りは2.6%台に上昇したが、ここがいったんピークとなった。


 その後の米10年債利回りは2.5%台に乗せても押し返される格好となっている。米国株式市場ではトランプ政権の経済政策への期待もあり、12月末にかけてダウ平均は2万ドルに接近した。しかし、米長期金利の上昇は抑制された格好となっていた。ここには日本からの米国債の売却分を中国がカバーするような格好となっていたこともその背景にあった可能性がある。



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# by nihonkokusai | 2017-02-25 10:03 | 国債 | Comments(0)
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