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ギリシャのもしもと、日本のもしも

 6月17日にギリシャで再選挙が実施される。この結果次第では、ギリシャがもしかするとユーロを離脱せざるを得なくなるとの見方もある。ただし、ギリシャ国民そのものはユーロ離脱までは望んでいないことで、何かしらの妥協点を見いだそうと、最悪のケースは先送りされる可能性もある。

 欧米諸国にとり、これ以上のユーロ圏での混乱は避けたいところ。ギリシャを放り出せばいったん問題は解決されるのかもしれないが、一時的にせよ金融不安がユーロ圏を再度襲ってこよう。また、第二のギリシャが出るのではないかとの不安も出てこよう。ユーロというシステムを守ろうとするのであれば、なんとかギリシャをつなぎ止めたままてで、解決策を図ることが必要ではないかと個人的には思っている。

 そして、日本のもしもとは言うまでもなく消費増税の行方である。野田総理が政治生命をかけて取り組んでいるが、引き続き前途多難となる。自民党の協力なしには法案成立は困難であるが、それと等価交換されるもののことを考えると、民主党内での反対意見も強まろう。むしろ民主党内の内なる敵が表面化すると法案成立はかなり困難になる。

 もし野田政権における消費増税法案が否決、もしくは採決が先送りされるような事態となったときに、何が起きるであろうか。政治生命を賭けるとした野田内閣は、小沢元代表が発言したように総辞職に追い込まれる可能性がある。その後継者は果たして、野田氏の意思を継いで消費増税を進められるものなのか。財政健全化に向けた道筋がこれでいったん絶たれる可能性がある。

 消費増税の先送りは今に始まったことではない。国債市場への影響も限定的とみるのは危険である。確かに現在の国債需給を取り巻く環境は悪くはない。しかし、これにはデフレという国内要因というよりも、米国のサブプライム問題からリーマンショックを経て、ギリシャを中心とした欧州の信用問題による、円高圧力と日銀による度重なる金融緩和が大きく影響している。しかし、その根底には日本国債への信認がある。

 つまりこのまま消費増税がまた先送りされ、国債残高は増加し続け、日銀による国債買入も増え続けるような状況が続ければ、どこかのタイミングで国債への信認が問題視されかねない。

 ドルは基軸通貨であり、FRBがいくらでもプリント・マネーして国債を買えるからアメリカは絶対にフォルトしないとグリーンスパン氏が言ったという話がある。また、ドルは暴落しても、米国債は暴落しないとの説もある。

 日本でも同様に、日銀がお札を刷って国債を購入することで、日本国債が暴落するようなことはないとの見方もある。それはそれぞれの国への信認が維持されていれば、一定期間は確かに暴落しないかもしれない。しかし、中央銀行が際限ない紙幣増発を行い続ければ、それほどの時間をおかずにインフレ懸念が強まることは確実となる。いくらインフレターゲットを設けようが、制御はできない。

 そもそも金融引き締めをして、市中の資金を回収しようにも中銀は国債を買い続けざるを得ず、売りオペなどしたらそれでなくても上昇基調にあるはずの長期金利は跳ね上がり、こちらの制御は不可能になる。すでに日銀の国債引受に依存して市中では消化不可能となる金額に国債残高が膨らんでいれば、あらたな買い手など見つかるはずもない。

 このような状況に追い込まれないためには、何をすれば良いのか。政府による財政再建を推し進めることが最低条件として必要になる。もし、今回消費増税が先送りされ、あと10年は消費税の引き上げは困難といった見方が広まったとき、果たして国債の利回りはどのように反応するのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2012-06-11 10:44 | 国債

日本の長期金利の変動要因と今後の予想

 6月4日にQUICK月次調査「債券」5月の調査結果が発表された。これを元に債券市場関係者が今後の金利動向をどのように捉えているのかを確認してみたい。

 総括の中で、前回調査と比較し新発10年国債利回りで見て下方にシフトしたとある。これは5月の債券相場が、ギリシャやスペインへの懸念でリスクオフの動きを強め、ドイツや英国、米国の長期金利が過去最低水準にまで低下し、その影響を受けて日本の債券相場も慎重ながらも上昇基調となったことが背景にある。どうしても先々の見通しは足下の相場環境に大きく影響を受けやすい。

 相場変動要因としては、注目度で見ると「海外金利」が上昇したのは、上記の理由によろう。また、債券価格への影響を表した相場変動要因の指数(50を超えると上昇要因、50を下回ると下落要因)で「為替動向」と「海外金利」の上昇が目立ったのも、欧州の信用不安の拡大による円高等も影響していたものと推測される。

 債券価格への影響を表した主体別の指数では「外国人」と「都銀・信託銀行(投資勘定)」の上昇が目立ったとある。これは5月21日に発表された4月の公社債投資家別売買高(短期証券を除く)において、都銀が債券を過去最大規模で売り越していた半面、海外投資家は1兆3616億円の買越しと3月の売り越しから買越しに転じ、なかでも超長期債を6千億円規模で買越していたことが明らかになったことも影響していたものと考えられる。

 今後1年間、2年間、10年間平均のCPIコア変化率は、それぞれ単純平均で0.11%、0.30%、0.90%となったが、足下は低い状況は続くが、先々はいずれ1%に近づくとの想定となっている。この予想は金利の先行き予想にもある程度、反映されることになる。

 今回はギリシャの再選挙およびユーロ離脱の可能性とその影響についての調査もあった。6月17日の再選挙の結果について、「緊縮財政受け入れを軸とする政権の誕生」との回答が60%、次に「反緊縮財政を軸とする政権の誕生」が20%と続き、「主要な政党による挙国一致内閣の誕生」は16%となった。このあたり自分で予想していたものに近い内容であり、意外と市場参加者も冷静にみているなとの印象を持った。また、ギリシャのユーロ離脱の可能性については20%との回答が最も多かった。可能性は低いとみるものの、ゼロではないとの印象から、この数値が出てきたものと予想される。

 長期金利の予想数値についてもう少し詳しくみてみると、5月調査の1か月後、3か月後、6か月後の予測数値は、最頻値でそれぞれ0.900%、1.000%、1.000%となっていた。最小値はすべて0.700%、最大値は1.100%、1.300%、1.550%とあった。

 現在の債券相場を取り巻く環境をみると長期金利は上昇しにくいが、下げるにも限度があるとの認識と思われる。最小値についてはあくまで月末の数値を意識したもので、月中の最低利回りとの認識ではないと思うが、それでも2003年6月のような0.5%割れを予想している向きはまだ少数派であろうことが伺える。それだけまだVARショックの印象が市場参加者の意識には刻み込まれているものと予想される。

 最大値が上昇傾向にあるのは、ある程度の金利上昇のリスクも意識しておく必要があるためであろう。ただし、これも前回平均に比較してそれぞれ低くなっている(前月調査の最大値1.200%、1.500%、1.600%)。

 債券価格の変動要因としては、4月調査に比較し短期金利/金融政策が36%→15%、景気動向が24%→17%に低下していたのが目立つ。4月27日に追加緩和が実施されたが、5月の決定会合では現状維持となるなど、金融政策への関心度はやや低下している。それに対して、海外金利については24%→48%と大きく上昇している。

 相場の動きをみるにあたり、これらの変動要因の比重がどこに傾いているのかを、ある程度掴んでおかないと相場変動の理由がわからなくなる。債券市場関係者以外がそれを知ようとするのであれば、リアルタイムで債券価格の変動要因が数値で見ることができれば、理解も早いではなかろうかと思うが、現実にはそれはむずかしく、ある程度感覚で捉えざるを得ない。

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# by nihonkokusai | 2012-06-09 09:30 | 債券市場

債券先物の過去最高値と過去最安値

 今回は東証が発行している「TSE Derivatives Market Highlights」から、長期国債先物(債券先物)の過去最安値と過去最高値をつけたときのそれぞれの価格と時期を確認してみたい。

 債券先物の最安値は87円08銭で、これを付けたのは1990年9月27日となっている。拙著「日本国債先物入門 [改訂版] 」の先物の歴史の部分から確認してみたい。

 「1989年5月、加熱する景気に対処するため、日銀は公定歩合を3.25%に引き上げた。さらに10月には3.75%に、12月には4.25%と引き上げ、完全に金融引締策へと転向した。それでも、バブルの勢いは年末まで続き、日経平均は、その年の大納会の大引けで3万8915円を付けた。結局、これが以降、20年以上にわたっての日本株の最高値となる。公定歩合の度重なる引き上げによる短期金利の上昇で、長短金利が逆転してしまい、債券相場はすでに総じて伸び悩みの状態となっていた。」

 「1990年は、債券安・株式安・円安のトリプル安で始まった。米国での金融緩和期待の後退、ソ連情勢の悪化、日銀による公定歩合の再引き上げ観測などが要因であった。実際、日銀は3月20日に1.00%もの大幅な公定歩合の引き上げを実施し、5.25%とした。8月2日、イラク軍がクウェートに侵攻すると原油価格が急騰し、インフレ懸念が一段と高まった。その後、原油価格は下落したものの、物価上昇を気にしてか、日銀は同月30日に公定歩合をさらに0.50%引き上げ、年6.00%とした(第五次公定歩合の引き上げ)。これを受けてJGB先物は急落し、9月27日にはJGB先物市場開設以来の安値となる87円8銭にまで下落した。株価も大きく下落し、10月1日に日経平均株価は2万円を割り込んだ。」

 いわゆるバブルに対処するため、日銀は1989年から1990年にかけて幾度かの公定歩合の引き上げを行い、イラクによるクウェート侵攻により原油価格が急騰した結果、インフレ懸念も強まったことに、利上げも絡んでの債券先物の下落で、上場来の過去最安値をつけたのである。ちなみに、1990年9月末の長期金利は8%台となっていた。

 債券先物の最高値は145円28銭で、これをつけたのは2003年6月11日である。これについても、拙著「日本国債先物入門 [改訂版] 」の先物の歴史の部分から確認してみたい。

 「2003年5月、りそな銀行に対する資本注入で「政府は大手銀行を潰さない」といった意識も強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われた。さらに海外投資家の旺盛な買いに支えられ、日経平均はバブル崩壊後の最安値となった2003年4月の7607.88円で底入れし、上昇に転じた。さらに米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めていく。一方、JGB先物は2003年6月まで1日当たりの値幅が限られながらも、じりじりと史上最高値を更新し続けていた。」

 「JGB先物は限月移行があったため同月10日の145円09銭が中心限月の高値となったが、現物債は11日に30年で0.960%、20年で0.745%、そして10年0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。この相場上昇過程で目立ったのが、メガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いである。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、債券の変動値幅が小さいことで、そのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともない債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出したのである。」

 「日本国債先物入門 [改訂版] 」の記述では「JGB先物は限月移行があったため同月10日の145円09銭が中心限月の高値となったが」とある。11日には実質的に中心限月が6月限から9月限に移行していたが、その11日に6月限は145円28銭をつけていたのである。

 債券先物は先日6月1日のイブニング・セッションで144円21銭まで、4日の前場に144円06銭まで上昇し、過去最高値まであと1円ちょっとまで迫っていた。果たして今回、この債券先物は過去最高値を更新するようなことがあるのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2012-06-08 09:43 | 債券市場

欧州危機への封じ込め作戦に向けて、日銀の決定会合のスケジュール変更も必要では

 昨日あたりからどうも欧米のいわゆる当局者がいろいろと動きを見せ始めている。まず、欧米の中央銀行に何かしら動きが見えてきた。昨日、ECBは政策金利は据え置いた。期間最長3か月のリファイナンスオペでの無制限資金供給を来年1月まで延長することを決定したが、これもある程度、事前に予想されていたことであり、これらは利下げ等を期待した市場を本来であれば失望させるような内容であったが、市場はそのようには取らなかった。むしろドラギ総裁が会見で、行動する準備は整っていると発言し、欧州債務問題に立ち向かう欧州の政治家や当局者の決意を市場は過小評価しているとも述べたことなどが、今後の追加緩和の可能性を示したのではないかと好感された。ただし、金融政策をもって他の機関による政策の欠如を補完することは誤っているとの発言もあり、金融政策への過度な期待にも釘を刺した。

 しかし、市場では今日のイングランド銀行のMPCでも追加緩和期待が出てきた。それとともに米FRBもアトランタ連銀のロックハート総裁とサンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁が講演で、追加緩和に前向きな姿勢を示し、さらにイエレンFRB副議長が欧州問題の米経済への打撃回避に向け、追加緩和が必要になる可能性を示唆するなどしたことで、6月19日、20日のFOMCでの追加緩和期待が出てきた。7日にはバーナンキFRB議長の議会証言が予定されている。ここでも多少、市場の過剰な緩和期待に対しブレーキを掛けながらも緩和を臭わす発言が出てくる可能性がある。その背景には、G20を控えての政治の動きも影響しているのではなかろうか。

 昨日、米国のオバマ大統領はドイツやイタリアの首相と電話会談をしたことが伝えられた。内容は当然ながらスペイン、ギリシャを中心とした欧州問題であったはずである。スペイン銀行救済案は最終段階にあるとのドイツ当局者の発言もあったが、スペインの銀行問題をまず解決に導き、あらたな信用不安の火種にならぬようにとの動きも水面下で活発化しているものとみられる。このような政治上の動きが、欧米の中央銀行にも暗黙のプレッシャーとなっている可能性がある。このため、FRBもはっきりとしたカードは見せないものの、カードを切る姿勢を見せてきたものとみられる。

 もちろんその前の17日にはギリシャの選挙があり、18日、19日にはメキシコでのG20が予定されている。とりあえず、撃てる手は総動員でこの難局を乗り切ろうとの姿勢も垣間見れられる。そうなると問題は日本の姿勢となる。欧州リスクが強まれば、円高圧力が強まるが、為替介入については欧米諸国の理解を得ることはなかなか難しい。G7においても理解を求めていたようだが、単独介入は決して欧州のリスク回避のためとは認識されまい。ここはむしろ日本としても、欧州危機への封じ込め作戦に荷担している姿勢を見せることも重要か。

 日銀はなかなか舵取りのタイミングが難しい。FRBやECBが追加緩和となれば、為替を意識しても日銀も何らかの追加緩和を行わざるを得なくなる。日銀を含め日米欧の中銀が追加緩和となれば、欧州危機への封じ込めのための側面支援との認識も持たれよう。ただし、次回の日銀の金融政策決定会合は14日、15日とギリシャの選挙前のスケジュールとなっている。日銀が先走って動くこともリスクはある。この際、可能であれば決定会合のスケジュールを20日、21日あたりに変更することもひとつの手段ではなかろうか。そうすればギリシャの選挙結果を確認した上で、18日、19日のG20の動向、さらにFRBの動向なども確認しながら、金融政策を決められる。


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# by nihonkokusai | 2012-06-07 14:58 | 日銀

日本国債先物の過去最高の出来高の日と過去最低の日に起きていたこと

 日本の債券先物の記録について、あらためて確認してみたい。その前に拙著「日本国債先物入門 [改訂版] 」がまもなく発売される。日本の債券先物に関する書籍はほとんどないはずで、たいへん貴重な本とも言える。債券先物の仕組みから、その歴史、さらにディーリングで気をつけるべきことなど、債券先物に関する多くの部分を網羅している。よろしければアマゾン等では予約も開始されているので、ご購入いただけるとうれしい。

 という宣伝はさておき、その債券先物の記録について、その数値とともにそれを付けた日の状況を確認してみたい。

 債券先物は通称であり、正式には長期国債先物取引であり、それが上場されているのは東京証券取引所である。この東証では、「TSE Derivatives Market Highlights」という冊子を作成し関係者に配布している。私も直接いただいているが、これは東証のサイトでもその内容を確認できる。

 直近で出されたものは今年1月に作成されたものであるが、この中の「取引記録」を確認してみたい。

 まず長期国債先物の1日最高取引高を記録したのが、2007年6月7日の21兆1110億円である。これは債先(ラージ)の取引単位が1億円のため、21万1110枚との表現もできる。その日の様子を私のサイト「債券ディーリングルーム」の「臨機応変」過去ログから見てみると、「海外投資家による売り、オプションに絡んでの中期売りといった観測もあるが、先物は売り回転が効いている状態ともなり出来高を伴っての急落」とあった。

 債券先物の売買では海外投資家の割合が非常に高い。ちなみに2011年は先物の売買高で37.8%、先物オプションに至っては59.3%の割合を占めている。2007年6月の記録達成には、この海外投資家の動向が大きく影響していたものと思われる(実際には債券先物の手口は公開されておらず、推測せざるを得ないのではあるが)。

 続いて1日の最低取引高をみてみると、わずかに510億円。これを記録したのは1985年10月28日とある。残念ながら「債券ディーリングルーム」の記録は1996年からで、ここには記録がない。そこで「日本国債先物入門 [改訂版] 」の原稿から、これに関するところをご紹介したい。

 「日銀は、1985年10月25日に短期金融市場を操作して「第二の公定歩合」といわれた短期金利の高め誘導を実施した。JGB先物にとってこのタイミングは最悪であった。無理やり短期金利を上げたことで、長期金利にも上昇圧力が加わり、債券が売られる展開となったのだ。JGB先物市場には大量の売り注文が殺到した。そうでなくてもJGB先物は上場したばかりでご祝儀による大量の買いポジションを抱えていた証券会社が多かった。売りが売りを呼ぶ展開となり、2日間値が付かないという大混乱となってしまった。1985年10月24日に101円63銭で引けていたJGB先物は、25日、26日に値が付かず、ストップ安で張り付いたままとなった。28日にようやく96円63銭で寄り付いたものの、その後も下げて、11月14日に安値89円82銭を付けたところで、ようやく底入れした。実に12円近い下げである。」(日本国債先物入門 [改訂版] より)

 長期国債先物が上場したのが1985年10月19日である。その直後にこのような急落があり、10月28日はストップ安が続き、やっと値がついたときの出来高が記録に残ったのである。25日、26日には値が付かなかったので、実際の最低取引量はゼロではあるが、東証のデータはあくまで出来高が記録されていた中での最低記録が掲載されたものと思われる。

 そして債券先物の最高建玉残高の記録は31兆415億円。つけたのは2000年2月8日。このころの債券相場は膠着状態が続いていたことで建玉も膨らんだものと思われる。また、最低建玉残高は1985年12月12日の1兆4585億円。1985年10月の日銀による短期金利の高め誘導が解除されたのが12月18日であり、それまでの債券先物は急落の後遺症もあり、どうやら盛り上がりに欠けていたものと思われる。

 債券先物の過去最高値と過去最安値については、次回ご紹介したい。

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# by nihonkokusai | 2012-06-07 10:18 | 債券市場
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