牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

正常化に舵を取る欧米の中央銀行とそれが出来ない日銀

15日に開催された米国の金融政策を決めるFOMCでは、追加利上げを賛成多数で決定した。政策金利であるフェデラル・ファンド金利の誘導目標を年0.50~0.75%から0.75~1.00%に引き上げた。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が金利据え置きを主張して反対票を投じた。イエレン議長は「利上げが遅れればリスクになる」と強調し、ドットチャートによる年内利上げの見通しは今回含めて3回という数字が示された。市場では年4回の可能性もあるのではと懸念していたことで、この結果をみてむしろ安堵した。

昨日のイングランド銀行のMPCでは、賛成多数で金融政策の現状維持を決定したが、フォーブス委員が利上げを主張して反対票を投じた。他のメンバーも早期の景気支援策縮小が正当化される可能性を示唆し、イングランド銀行の次の選択肢は利上げとなる可能性が出てきた。ちなみにフォーブス委員は6月に退任する予定となっている。

9日のECB理事会後の会見でドラギ総裁は、ユーロ圏にはデフレリスクはもはや見られないとの認識を示した。デフレリスクへの対応として一段の行動を必要とする切迫性がもはや存在しないことを主に示唆しているとも述べ、デフレ脱却宣言とも取れる発言となった。

16日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の維持を決定した。景気の総括判断も据え置かれた。黒田総裁は会見で、米国の利上げは国内金利の引き上げに直接的な影響はないとの認識を示した。

FRBの利上げペースは2015年、2016年の年一回から今年はすでに複数回の利上げの可能性が高くなっている。正常化に向けて慎重なスタンスからここにきてペースを早めた格好である。それだけ経済環境が好転していることになるとともに、世界的なリスクの後退も当然影響しているとみられる。

いわゆるリーマン・ショックに代表される米国の金融機関を中心に発生した世界的な金融経済危機、その後、ギリシャを発端とした欧州でのユーロ危機は、とりあえず収束した。しかし、なかなかリスクへの警戒を緩めることはできなかった。

それでもいち早く正常化路線を歩んだFRBがそのペースを速めつつある。EU離脱という選択をした英国も混乱は一時的となり、むしろポンド安で物価は上昇し、株価も上昇した。イングランド銀行も中立姿勢に戻しつつあり、正常化にむけたタイミングを計っている。日銀と同様に緩和政策に前傾姿勢をとっていたECBも、ここにきてやっと中立姿勢に戻そうとしつつある。そのなかにあって日銀だけがいつまでも非常時の体制を維持し、かなり無理な緩和策を継続し、緩和に前向きな姿勢を崩そうとしていない。

中央銀行の金融政策で物価を能動的に動かすことはかなり困難であることは、日銀の異次元緩和の進み方と物価の動向を重ねれば明らかで、それならば今度は財政でというような妙な意見まで出ている。それほど無理を重ねて物価を上げようとする前に、なぜ日本の物価は上がりづらいのか。日銀が目標としている消費者物価をあらためて分析する必要もあるのではなかろうか。といってもこれは日銀が実は一番良くわかっている問題でもあり釈迦に説法か。日銀自体、大量に長い期間の国債を買うことで物価が上がるというロジックは通用しないことはわかっていたはずである。

ここにきての欧米の物価上昇も中央銀行の金融緩和が効いているというよりも、世界的なリスクの後退により景気そのものが回復し、心配された新興国経済も思いの外しっかりしていること、そこに原油価格の上昇も影響して生じたものと言えよう。

世界的な潜在リスクは当然、いつも存在する。しかし、現実のリスクそのものは金融市場を見る限り後退しているなかで、中央銀行の金融政策だけが異次元のまま非常時の対応が続けられることに違和感はないのか。違和感だけで済めば良いが、それがいずれマーケットの歪みを生む懸念もありうるのではないか。日銀にはリスクを警戒するあまり、自ら別なリスクを高めているようにも見えてしまう。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-19 11:52 | 中央銀行 | Comments(0)

ポピュリズムの流れは加速せず、ユーロのリスクは後退か

15日のオランダの議会下院の選挙では、ルッテ首相が率いる中道右派の与党「自由民主党」が8議席減らすものの32議席を獲得し、第1党の座を維持することが確実になったようである。ウィルダース氏が率いる極右政党の「自由党」は、7議席増やして19議席を獲得する見通しで、当初予想されていた倍増には至らない模様である(NHKニュースより)。

英国は昨年6月23日に行われた国民投票でEU離脱を選択した。このブレグジットが「大衆迎合主義」と訳されるポピュリズムの流れと言えるのかはさておき、自国優先主義、アンチグローバルという流れのひとつの象徴的な出来事と言えた。

昨年11月8日に投票が行われた米大統領選挙でのトランプ氏の勝利がその流れを加速させることとなる。トランプ氏はアメリカ第一主義、反イスラムを掲げ、中東とアフリカの6か国の人の入国を制限する大統領令を出している。この大統領令については、3月16日にハワイ州にある連邦地方裁判所が全米で執行の停止を命じる仮処分の決定を出した。

自国優先主義は欧州では反EUとなり、反イスラムは反移民ともなり、これらを極右政党が掲げ、ポピュリズムと呼ばれた。この流れがユーロ圏にどれだけ及ぶのかが、今回のオランダの総選挙の焦点ともなった。ポピュリズムの流れが加速するようなことになると今後のフランス大統領選挙やドイツ連邦議会選挙にも影響を及ぼす可能性があった。

市場ではポピュリズムの流れが加速することで、ユーロというシステムがいずれ維持できなくなるのではとの懸念を抱き、これがリスク要因となった。ところがオランダ総選挙の結果を見る限り、ポピュリズムの流れはあるものの、政権をひっくり返しEU離脱の可能性を探るといった展開にまで発展するような勢いではなかった。オランダの場合は、仮に極右政党の「自由党」が第一党となっても連立を組む相手がおらず、ウィルダース氏が首相になることはないとの見方が強かったことも確かではあるが。

今回のオランダの選挙の結果を受けて、フランスのエロー外相は、「極右台頭の流れを止めたオランダの人たちを祝福する」とツイートしたそうである(NHK)。

フランスの大統領選挙ではウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げている極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の動向が注目されている。オランダ総選挙の結果がルペン氏を勢いづかせることは、どうやらなさそうである。英国の国民投票や米国大統領選挙で見られたような、事前の予想が覆されるといったことも今回のオランダの選挙では起きなかった。リスクは完全になくなったわけではないが、ポピュリズムの勢いが懸念されたほどのものではないとなれば、ユーロに対する警戒は後退しよう。これはECBにとっては金融政策の前向きの姿勢を修正しやすくなるものと思われる。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-17 09:18 | 国際情勢 | Comments(0)

透明性を高めることでスムーズな国債買入減額を可能にさせた日銀

日銀は2月末に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」から、国債買入の日程を示した。市場の注目度の高い1年超5年以下の中期ゾーン(1年超3年以下、3年超5年以下)と5年超10年以下の長期ゾーン、そして10年超の超長期ゾーン(10年超25年以下、25年超)の3つのゾーンの買入オファー日を事前に公表することとした。

これまでは国債買入についてはそれぞれのゾーンの回数だけを示していた。このため、いつどのゾーンの買入がオファーされるのかは、市場参加者が過去のオファーの例などを参考に予想するほかなかった。日銀の金融政策決定会合の日と利付国債入札日は入らないとか、同じゾーンを2日続けてオファーはないといったことが暗黙の了解とされ、それを除いた日でゾーン毎の日程を予想していたのである。

昨年12月末の「当面の長期国債等の買入れの運営について」で予想回数に幅を持たせたあたりから、市場参加者は何かしら日銀の意図があるのではないかと疑心暗鬼になった。中期ゾーンが6回程度から5~7回程度に、長期ゾーンが6回程度から5~7回程度に、超長期ゾーンが5回程度から4~6回程度とされたのである。「程度」という言葉があるため、特に大きな変更ではないとの見方もあったが、これはやはり目的があったことが後でわかる。

それがわかったのが1月25日の日銀の国債買入であった。この日の市場参加者の予想は超長期ゾーンに加えて中期ゾーンも含まれていた。もちろん市場の事前予想通りに日銀が買入を行うわけではなく、多少ずれることはままある。しかし、ここにカレンダーの問題があった。

中期ゾーンは1月はすでに4回の買入が実施されていた。12月には6回実施されており、1月も当然6回あると市場参加者は読んでいた。26日以降のカレンダーをみると27日に中期ゾーンを含めた買入が予想されているが、もう一日が見つからない状態となってしまったのである。

26日には流動性供給入札、30日には2年国債入札、30~31日は日銀の金融政策決定会合が予定されていたことであと1日が見つからない。結局、1月の中期ゾーンは1回分スキップされたのである。市場参加者は12月末に公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の意図が読めず、いきなり中期ゾーンを1回分スキップ、つまり減額されたことで、ややパニック状態に陥った。2月2日には長期金利上昇抑制のため、指し値オペが実施されている。

日銀にとり、来年度の国債発行額の減額等もあって国債買入の減額は避けられない。しかし、それを表立って示すことも、テーパリングと認識される懸念があってできない。そこで「当面の長期国債等の買入れの運営について」でそれとなく示唆したことでスキップという手段を取ったとみられる。しかし、市場参加者は減額の必要性は認めていても、闇討ちのような手段にむしろ驚いてしまったのである。

このため日銀は国債買入の日程を公表するとともに、市場参加者には長短金利操作の目標があるため長期ゾーンはさておき、中期ゾーンや超長期ゾーンの減額の可能性も1回あたりのオファー金額の調整などで日銀は意識させようとした。

少なくとも今後はスキップという手段を講じることはなく、一回当たりの多少の減額は需給を読みながらとの解釈も可能なことで、市場はこの形式での減額については特に動揺することはなかった。これにより日銀は4月以降の国債発行額も意識しながらの微調整を行うことが可能となったのである。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-16 09:53 | 日銀 | Comments(0)

オランダ総選挙、決定会合、FOMC、G20等々、今週のイベントの注目点

今週は14~15日にFOMC、15日にはオランダの下院議員選挙が予定され、米政府債務の法定上限の適用は停止期限を迎える。15~16日に日銀金融政策決定会合とイングランド銀行のMPCが開催される。16日にトランプ大統領が2018会計年度の予算教書を議会に提出する。17日からはドイツで主要20か国財務相・中央銀行総裁会議が開催される。14日に予定されていた米独首脳会談は雪の影響で17日に延期された。英国のメイ首相は今週中にもEU離脱通告を行う予定とされている。

14日~15日にFOMCでの注目は利上げの有無ではなくなっている。10日に発表された2月の雇用統計も利上げを後押しするものとなり、利上げ決定は確実視されている。むしろ利上げ見送りの方がサプライズとなろう。今回のFOMCでは会合後に議長会見が予定されている。公表文の内容とドットチャート、イエレン議長の会見内容などから、年内あと何回の利上げがあるのかを市場は探りにくると思われる。

15日のオランダ総選挙については、最新の世論調査で反移民や反EUを唱えるウィルダース党首率いる自由党(PVV)が支持率を急速に低下させており、ルッテ首相率いる自由民主党と拮抗していると伝えられている。仮にPVVが第1党になっても、ウィルダース党首が首相になる可能性は、連立を組む相手が見当たらないため、低いこともあり、結果次第ではあるものの波乱要因とはならないかもしれない。ただし、PVVが勢いづくようなことになると来月からのフランス大統領選挙の行方に影響を与える可能性はある。

15日に米政府債務の法定上限の適用は停止されている期限が来ることで、米議会は新たな債務上限の設定か、期限の延長を承認する必要がある。ムニューシン財務長官は議会に対し連邦債務の上限を「可能な限り早期に」引き上げるよう要請している。

15~16日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は現状維持となろう。コアCPIがプラスに転じたこともあり、物価の見通しの表現に変化が出てくるかもしれない。黒田総裁の会見ではマイナス金利の弊害、長期金利の目標の想定レンジ等に関しての質問が出てくることも予想される。

15~16日のイングランド銀行のMPCについては、注目度が低いようであるが、FRBに続いて、EU離脱の影響正常化に向けて舵を取る可能性が高いとみられ、こちらの動向も注意が必要か。

16日にトランプ大統領が2018会計年度の予算教書を議会に提出する。すでにトランプ大統領は国防費を増加させる一方、非国防費を削減する方針を示している。財政運営を巡って与党・共和党内の意見が分裂する可能性も指摘されており、こちらの動向も注意したい。

17日からはドイツで主要20か国財務相・中央銀行総裁会議(G20)が開催される。声明の草案で、これまで盛り込まれてきた保護主義や競争的な通貨切り下げに「断固として反対する」との文言が削除されていると伝えられた。トランプ政権の誕生で議長国ドイツが「合意ライン」を模索しているとの見方も浮上しているようである。

その米国のトランプ大統領とドイツのメルケル首相が17日に会談を行う。会談では、難民・移民の受け入れの問題や対ロシア政策などが主な議題になる見通しと伝えられている。表立っての対立の姿勢を見せず、大人の対応を行うものと予想されるが、世界への影響力が大きな二人の初会談だけに、こちらも注意して見ておく必要がある。

英国のメイ首相は今週中にもEU離脱通告を行う予定とされている。EU側は英国の離脱通告を受けて、英国を除く加盟27か国による首脳会議を招集する予定となっている。また、スコットランド自治政府のスタージョン首相は13日、英国からのスコットランド独立の是非を問う新たな住民投票の実施を目指す方針を明らかにした。英国のEU離脱決定の影響が今後、どのような影響をもたらすのかも注意しておく必要があろう。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-15 09:41 | 国際情勢 | Comments(0)

免震化工事を実施中の日本銀行本店本館の豆知識

 国の重要文化財に指定されている日本銀行本店本館は1896年2月に竣工した。日銀の開業当初の店舗は永代橋のたもとにあったそうであるが、手狭なうえ都心からやや遠かったこともあり、開業の翌年に店舗の移転が決定されたそうである。


 日銀の設立に際して、創設者でもある松方正義はフランス蔵相レオン・セーからモデルとしては比較的設立が新しいベルギー国民銀行が良いのではないかといった助言を得ていた。このため、ベルギー国民銀行がモデルにされたが、建物そのものもベルギー国民銀行を参考にしたとされている。ちなみに、本館建物を上空からみると円の形に見えるが、当時の「円」は「圓」を使っていたことで偶然である。


 日本近代建築界の先駆者であり、東京駅も手掛けた建築家の辰野金吾が設計し、建設事務主任となっている。監督は安田財閥の祖である安田善治郎である。さらに建設事務主任となったのが、あの高橋是清であった。


 高橋是清は、森有礼の友人で農商務省次官の前田正名が持ち込んだペルーの銀山開発の話に乗って、農商務省を辞して鉱山経営のためにペルーに赴くものの、騙されて無一文になってしまった。さすがに責任を感じていた前田は高橋に第三代日銀総裁の川田小一郎を紹介し、高橋は日銀に入行することとなる。まずは現場からとの高橋の意向もあって建設事務主任となったのである。ちなみに、辰野金吾は唐津の洋学校での高橋是清の教え子でもあった。


 日銀本店工事では高橋是清の力が存分に生かされ、大幅に遅れていた工事はほぼ予定通りに進捗した。この実績が高く評価され、高橋は入行の翌年には全国二番目の支店となった日銀西部支店の初代支店長となり、横浜正金銀行本店支配人となっている。その後、日銀総裁となり大蔵大臣、さらには首相にもなっている。


 日銀本館の建設にあたり、1891年に発生した濃尾地震の教訓から、高橋是清の指示で建物上部を軽量化し耐震性を高めた。このため、1923年の関東大震災でも建物そのものへの被害は限定的だったようである。しかし、火災により創業以来の貴重な資料とともに、2階の廊下の両側にあった総裁の肖像画もすべて焼失した(現在展示している肖像画はその後再製されたもの)。


 日銀本店本館の建物は1974年に国の重要文化財に指定された。


 関東大震災にも耐えた本館であるが、その後、復旧工事や改修工事も行っている。しかし、東日本大震災を契機に首都直下型地震等による被害想定が切り上げられたことを踏まえ、更なる耐震安全性の確保を図るため、2016年10月から免震化工事が行われている。


 日銀本館の建物は、鉄筋や鉄骨を使うことなく、外壁の石と内側の煉瓦をともに積み上げて出来ており、この建物が分厚く強固なコンクリートのまな板の上に載っている。今回の免震化工事では、その板の下を掘り下げ、そこにできたスペースに免震装置を設置するという異例の方法をとっている。工事の終了は2019年の夏頃を予定している。(以上、日銀サイトや拙著の原稿などから一部引用)


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-14 09:54 | 日銀 | Comments(0)

米国の利上げで注意すべきこと

FRBのイエレン議長などから利上げに向けた前向きの姿勢が示され、3月14日、15日に開催されるFOMCで追加利上げが決定される可能性が強まっている。10日に発表された2月の米雇用統計でも非農業雇用者数が前月比23.5万増と予想を上回ったことも後押し材料になろう。2015年と2016年のFRBによる利上げはそれぞれ12月のFOMCでの1回に止まった。しかし、もし今年は3月に利上げが決定されるとなれば、年複数回の利上げが視野に入る。

3月3日の講演でイエレン議長は、「われわれは支援策の一部の縮小を過度に長期間待てば、将来のある時点で急速な利上げが必要となり、金融市場を混乱させ、米経済をリセッションに陥らせる恐れがある公算を認識している」と語った。経済見通しに修正を加える予想外のイベントがない場合、「金融緩和の度合い」を弱めるスピードは2015年や2016年のような緩慢なものにはならないであろうともコメントしている。

この発言からも年複数回の利上げが意識されていることが伺える。それでは2015年と2016年に1回しかできなかったものが、仮に今年は複数回できるとしたら何が変わったのであろうか。

雇用を中心に米経済が予想以上のペースで回復し、物価もFRBの目標に近くなっていることが挙げられよう。正常化を進め、経済環境に適した政策金利の水準まで引き上げたいとの意向があろう。意外に米長期金利の上昇が慎重となっていることも、利上げを進めやすくなっている面があるかもしれない。

トランプ大統領の登場も影響しているとみられる。しかし、トランプ大統領の経済政策はまだ具体性に乏しいため、その予防策を打つにしてはやや気が早い。ただし、FRB理事や2018年のイエレン議長やフィッシャー副議長の任期なども影響している可能性はある。トランプ政権の意向も不透明なだけに、早めに手を打とうとしていることも考えられる。

そして、3月のオランダ総選挙、4月と5月のフランス大統領選挙を前に利上げを行いたいとの意向があった可能性もある。ポピュリズム政党の躍進を受けて、ユーロ崩壊の可能性などが意識され、市場が動揺するようことになると、再び緩和政策が必要となる可能性がある。そのための糊代を作っておきたいとの意向が働いている可能性もある。ただこれについても、ある意味予防的な動きともみられるため、リスク要因としてまったく影響はないとは言えないが、それほど利上げを急ぐ理由にはならないように思われる。

いずれにしてもFRBの今後の利上げに注意すべきことは、年複数回の利上げを意識しているのか、意識しているとして2015年や2016年のように慎重とならざるを得ない状況に陥ることはないのか。利上げによる長期金利の上昇はどの程度まで容認しているのか、バランスシートの縮小はどのタイミングで行おうとしているのか、あたりとなるとみられる。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-12 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)

大胆な金融緩和にブレーキをかけ始めたECB

ECBは9日の理事会で、主要金利と資産買い入れ策を据え置きを決定した。これは予想通りであり、市場へのインパクトも限定的かとみられていたが、市場はドラギ総裁の会見内容などから、ECBのスタンスの微妙な変化を感じ取ったようである。

ドラギ総裁は理事会後の会見で、ECBは今回の声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言を削除したと表明した。削除理由について「デフレリスクに促された一段の措置の導入に向けた緊急性がもはや存在しないことを示唆するために削除された」と説明した(ロイター)。

さらにドラギ総裁はデフレリスクはおおむね無くなったと言えるとし、市場ベースのインフレ期待は目に見えて高まったと指摘した。また、景気に対するリスクバランスの改善を指摘したほか、利下げを示唆する言及を削除するかどうか協議したことも明らかにした。

この発言を受けて9日の欧州市場ではユーロが買われ、欧州の国債は軒並み売られた。ドイツの10年債利回りは0.42%と前日の0.36%から上昇し、フランスの10年債利回りも1.07%と前日の1.01%から上昇した。オランダやスペイン、イタリア、ポルトガルの国債も売られた。

ECBの追加緩和に対する前傾姿勢に変化がみられ、大胆な緩和政策にややブレーキを掛けた格好となった。日本でリーマン・ショックやギリシャ・ショックと呼ばれた世界的な金融経済危機のための大胆な緩和策は、そろそろ打ち止めとなる。ただし、来週のオランダでの総選挙、フランス大統領選などでポピュリズム政党の躍進の可能性もあり、英国のEU離脱もあってあらたなユーロ危機が訪れる懸念は残る。このためすぐに方向転換はできないものの、大きな危機は去り、物価も上昇しつつあり、循環的な景気回復の勢いが増している可能性もあるなかでの大胆な緩和策が異質に見えてきている。

これは日本も同様である。ただし、日銀は量を求める政策に限界があることもあり、結果として行き着いた先が、長短金利操作付き量的・質的緩和となった。これは全部ありの政策に見えるが、量は目標から外しており、フレキシブルに変更可能な金利を操作目標に戻したことで、すでに大胆な緩和策には結果としてブレーキが掛かった状態となっている。ただし、これを日銀は表だって認めようとはしていない。このあたり黒田総裁は会見等で、少しトーンの変化を示しても良いのではなかろうか。頑なに長期金利の目標値を引き上げることは考えていないのではなく、状況に応じて検討するとしておいた方が、柔軟な対応も可能になるのではなかろうか。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-11 15:10 | 中央銀行 | Comments(0)

美味しい話は怪しい、日銀による国債の直接引受が禁じられている理由

日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり日銀による国債の直接引受を禁じている。

中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。これは過去の歴史の教訓によるものである。

中央銀行による国債引受は麻薬に例えられる。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づく。

中央銀行による国債引受が禁じられているのは日本だけではない。米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。

日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それは金融緩和手段のひとつとなる。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまう。

戦前、高橋是清蔵相による高橋財政と呼ばれた政策で、日銀による国債引受を行った際には、そのリスクも当然把握していたと思われる。しかし、いったん甘い汁を吸ってしまった政府、というよりも特に軍事費の拡大を望んでいた軍部は、この打ち出の小槌を離そうとしなかった。それにより、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となった。このため、戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのである。

ただし、金融緩和を目的とすれば日銀はいくらでも国債を買えてしまい、結果として政府の財政を助けることになる可能性がある。このため、日銀の大胆な金融緩和政策による大量の国債買入の際に、政府と日銀がこれは財政ファイナンスではなく、デフレ脱却のための金融緩和であると強調しているのである。

実際に日本政府は国債が発行しづらいような状況にはないことは確かである。さらに政府も財政再建に向けた姿勢を維持することにより、財政ファイナンスではないと認識されることにもなる。

麻生財務相は9日午後の参院財政金融委員会で、金融政策よりも財政が物価の水準を決めるとのシムズ理論については、「ヘリコプター・マネー」と指摘。「美味しい話は怪しいと思わなければいけない」とし、投資家のジョージ・ソロス氏が薦めに来たが「無責任なあなた方と異なり、私は1億2000万人の国民に責任がある」として拒否したことを明らかにした。その上で「私が大臣の間、内閣にいる間、ヘリマネ、シムズ理論は採用しない」と言い切った。(ロイター)。

ヘリコプター・マネーは財政ファイナンスということであり、この発言は当然のことではあるが、ある意味心強い発言である。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-10 09:44 | 国債 | Comments(2)

美味しい話は怪しい、日銀による国債の直接引受が禁じられている理由

日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり日銀による国債の直接引受を禁じている。

中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。これは過去の歴史の教訓によるものである。

中央銀行による国債引受は麻薬に例えられる。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づく。

中央銀行による国債引受が禁じられているのは日本だけではない。米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。

日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それは金融緩和手段のひとつとなる。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまう。

戦前、高橋是清蔵相による高橋財政と呼ばれた政策で、日銀による国債引受を行った際には、そのリスクも当然把握していたと思われる。しかし、いったん甘い汁を吸ってしまった政府、というよりも特に軍事費の拡大を望んでいた軍部は、この打ち出の小槌を離そうとしなかった。それにより、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となった。このため、戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのである。

ただし、金融緩和を目的とすれば日銀はいくらでも国債を買えてしまい、結果として政府の財政を助けることになる可能性がある。このため、日銀の大胆な金融緩和政策による大量の国債買入の際に、政府と日銀がこれは財政ファイナンスではなく、デフレ脱却のための金融緩和であると強調しているのである。

実際に日本政府は国債が発行しづらいような状況にはないことは確かである。さらに政府も財政再建に向けた姿勢を維持することにより、財政ファイナンスではないと認識されることにもなる。

麻生財務相は9日午後の参院財政金融委員会で、金融政策よりも財政が物価の水準を決めるとのシムズ理論については、「ヘリコプター・マネー」と指摘。「美味しい話は怪しいと思わなければいけない」とし、投資家のジョージ・ソロス氏が薦めに来たが「無責任なあなた方と異なり、私は1億2000万人の国民に責任がある」として拒否したことを明らかにした。その上で「私が大臣の間、内閣にいる間、ヘリマネ、シムズ理論は採用しない」と言い切った。(ロイター)。

ヘリコプター・マネーは財政ファイナンスということであり、この発言は当然のことではあるが、ある意味心強い発言である。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-10 09:44 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債の発行額が9年ぶりの高い水準となった理由

財務省は6日に3月15日発行分の個人向け国債の応募額を発表した。3月の個人向け国債の発行予定額は9315億円となり、2月の5727億円から大きく増加した。

3月発行分がわかったことで、2016年度の個人向け国債の発行予定額が算出できる。2016年度の個人向け国債の発行予定額は3種類合計で4兆5556億円となり、2015年の2兆1367億円から倍増し、2007年度の4兆6617億円以来、9年ぶりの高い水準となった。

2008年度以降、低迷し続けていた個人向け国債の発行額が何故、2016年度は大きく増加したのか。個人向け国債の発行額が低迷していた最大の理由が利率の低さにあった。利率の低い状態は2016年度も続いたが、日銀が2016年1月にマイナス金利政策を導入したあたりから状況が変わってきた。

さすがに預貯金金利はマイナスになることはなかったものの0.01%程度に低下したままとなっていた。周りの金利が下がったことで、個人向け国債の最低保証金利の0.05%が相対的に魅力的なものとなったのである。これが個人向け国債発行額増加の最大の理由となろう。

さらに今年3月の発行分の募集は2月であり、ボーナス月でもなんでもないときに大きく増加した理由については、販売する金融機関の事情もあったようである。

個人向け国債は金融機関を通じて販売される。米国では米財務省から直接購入できるが、日本では日銀に個人が口座を持てない等の理由もあって財務省ダイレクトといったものはない。このため証券会社やゆうちょ銀行を含む銀行などが販売している。その際に販売額に応じて、財務省は金融機関に募集発行事務取扱手数料を支払っている。それが2017年4月発行分(3月募集分)から下記のように引き下げられる。

固定3年額面100円あたり40銭が20銭に

固定5年額面100円あたり50銭が30銭に

変動10年額面100円あたり50銭が40銭に

このため金融機関は、個人向け国債が人気化しているタイミングで、しかも手数料が高いうちに積極的に大量に販売しようと、現金を贈呈するといったキャンペーンを強化したものとみられる(キャンペーンの原資は上記手数料となる)。

個人向け国債の販売額の増加は一時的なものとなるのか。それはこの手数料よりも、金利の動向にかかっていると思われる。日銀による長短金利付き量的・質的緩和政策を受け、特に10年変動タイプに影響する10年債利回りは当面、ゼロ%近辺に押さえ込まれることになる。預貯金金利も0.01%近辺のまま推移するとなれば、個人向け国債の最低保障利回りの0.05%の見直し等がない限りは、相対的な優位さは継続する。

しかし、本当に日銀は長短金利を現在の水準のまま、いつまでも押さえ込めるのかという疑問もある。米国はまもなく追加利上げを決定するとみられ、日本の物価もプラスに転じている。金利を取り巻く環境が変わると金利が動き出し、個人向け国債の優位性が薄れる可能性もないとは言えない。それでも安全性が高く、1年という売却できない期間はあれど元本が保証されるなど、個人向け国債は魅力的な金融商品であることに代わりはない。


[PR]
# by nihonkokusai | 2017-03-09 10:08 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー