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基金による国債買入で再び未達が発生。今後の対応は

 日銀が6月1日に実施した基金による国債買入において5月16日以来の未達が生じた。日銀は残存期間1年以上2年以下、および2年超3年以下を対象にした国債の買入をオファーしたが、2本とも応札額が買入予定額に届かない未達となった。残存1年以上2年以下は、買入予定額5000億円に対して応札・落札額が3594億円、残存2年超3年以下は買入予定額2000億円に対して応札・落札額が964億円にとどまった。

 7月30日に実施された2年国債(利率0.1%)の入札では、最低落札価格100円00銭5厘(0.097%)、平均落札価格100円00銭6厘(0.096%)となり、落札利回りは2005年6月の入札以来の0.1%割れとなった。応札倍率も11.83倍とやはり2005年6月の入札(268.48倍)以来の二桁台となるなど、かなりの需要がみられた。

 公社債投資家別売買高をみると、外国人は昨年10月以降、10兆円を超える短期債の買い越しが継続している。

 7月5日に開催されたECB政策理事会では、政策金利であるリファイナンス金利を0.25%下げて、1999年のユーロ導入以来の過去最低水準となる0.75%とすることを決定し、さらに民間銀行がECBに預金を預け入れる際の預金ファシリティ金利も0.25%引き下げられゼロ%とした。このため、預金ファシリティに預けられた資金が、日本の短期債に流れ込んでいるとの見方もある。しかし、これについては為替リスクが伴う上、今朝の日経新聞にもあったように、預金ファシリティに滞留していた資金は、利子はつかないが安全な当座預金に向かったと思われ、日本の短期債への影響はなかったのではないかと思われる。

 ただし、すでにドイツなどの2年債利回りはマイナスとなっており、安全資産としてドイツなどの中短期債を購入していた投資家が、その一部を買わせリスクを負っても日本の中期債に振り向けてきている可能性はありうる。

 もちろんその前に、短期国債を主体に大口の買い手となっている日銀の存在も、中短期債の需給に逼迫感を強めさせている事も確かで、ここに海外投資家の買いが追い打ちをかけた結果での未達現象であるとも言える。

 日銀は7月12日の決定会合で、固定金利方式・共通担保資金供給オペ等で未達となるケースが多く出てきたことから、固定金利方式・共通担保資金供給オペを5兆円減額し、その分短国買入を5兆円増額し、さらに短国買入の入札下限金利の0.1%を撤廃した。その後、7月18日には、通常の長期国債買い入れ(輪番オペ)の残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃していた。

 それぞれ、日銀が目標どおりの国債を買い入れて資金を供給しやすくするための措置であるが、それでも今回のように残存1年以上の国債買入で未達が発生したことで、1年を越す期間の国債買入の下限金利0.1%の撤廃観測も出ていたようである。

 国債買入の下限金利の撤廃は、金融政策とは異なる技術的なものであり、これを金融政策決定会合で決める必要はなく、7月18日のようにいつ事務的に発表されようが問題はない。7月12日の基金の国債買入の下限金利の0.1%等も金融政策の変更とは異なるものであった。ただし、実際に日銀が残存1年を越す国債買入の下限金利を撤廃するかどうかは、不透明であるが、今後札割れが度重なれば、その思惑は強まるとみられる。


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# by nihonkokusai | 2012-08-02 09:41 | 日銀

議事録にみる日銀が国債買い入れオペ対象を拡大した理由

 日銀は31日に金融政策決定会合議事録等(2002年1月~6月開催分)を公表した。

 2002年1月に日銀は国債買い入れオペ(輪番オペ)の対象を、それまでの発行後1年以内のもの(1年ルール)から、発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大しているが、2002年1月15、16日の金融政策決定会合議事録から、その理由を探ってみたい。まず当時の和田企画参事官からの説明があり、その部分を見てみたい。

 「国債買入オペについては、実質的な中央銀行による国債引受との見方を排除するために、国債売買基本要領において、買入対象から、発行後1年以内のものを除いている。・・・この1年ルールは昭和42年の国債買入開始時から導入しているが、最近、国債の発行市場・流通市場は格段に整備されてきている。また、この1年ルールの存在に加え、先物割安銘柄を除外しているため、長期ゾーンの買入対象は事実上残存8~9年の銘柄のみであり、中短期ゾーンに比べて著しく対象銘柄が少ないといったマイナスの影響が生じている」

 これについて解説すると、日銀は資金供給手段のひとつとして国債の買入を1967年2月から始めているが、買入対象については国債の日銀引受との見方を避けるため、買入対象から、発行後1年以内のものを除くという「1年ルール」を設けた。さらに債券先物のチーペースト(現渡し可能な再割安銘柄でこの価格が先物に連動、通常残存7年の10年債)を買い入れて流通玉を減少させてしまうと、先物の踏み上げが生じるリスクがあるため、それも除いての買入を行っていた。

 国債市場が整備され、活発な取引が行われている中で、1年ルールがあると特に10年債の対象銘柄が少なくなっていたことで、その拡大を図ることが大きな目的であった。

 「新たなルールとして、発行年限別の直近発行2銘柄を除くものにしたいと考えている」(和田企画参事官)とあるが、なぜ直近発行2銘柄を除くにしたいのかという理由としては、「取引が活発でペンチマークを形成している発行直後の銘柄を、対象銘柄から除けば、ベンチマーク銘柄について市場での価格形成を歪める惧れはないと考えられる」としている。つまり、なるべく対象銘柄を拡大したいが、カレント物とも呼ばれる直近発行銘柄への影響を考慮するとともに、直近発行2銘柄を除くということで国債引受との見方も排除することも意識されたものとみられる。

 「新ルールに移行した場合、買入対象銘柄の市中発行残高は、金額ベースだが現状比3割強の増加となる」(和田企画参事官)

 これに関する政策委員の反応は、中原伸之審議委員が、「国債の購入がやりやすくなって機動的なると思う」とコメントしている。田谷委員、三木委員なども賛成し、実際の採決でも全員一致で賛成としている。

 このように日銀が国債買い入れオペ対象を拡大したのは対象銘柄を増やすことが目的であり、日銀執行部が事前に用意した内容で意外にあっさりと決められていた。政策委員などから、日銀による国債の直接引受に近づくといったような懸念は示されていなかった。銘柄は拡大されても、国債の買入と直接引受では明確な違いがあるとの認識によるものであろうか。

 米国でもFRBは資金供給手段の手段として米国債の買い切りを直近発行銘柄を除くという条件付きで行っている。さらに日銀はすでにTB(現在はTDB)の買い切りなど行っており実際に1年というルールが必要かとの問題もあり、1年ルールの撤廃を求める声も強かったことなども、1年ルール撤廃の要因であったとみられる。

 ちなみに、国債売買基本要領では「発行後1年以内のもののうち発行年限別の直近発行2銘柄を除く」と、「発行後1年以内のもののうち」との表現が残っているのは、当時すでにすでに発行が停止されていた4年国債や6年国債の2銘柄が恒久的に対象から外れることになるため、1年以内という文言が残されたそうである。

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# by nihonkokusai | 2012-08-01 09:46 | 日銀

相場で何か違和感を感じたときには

 違和感を感じるか感じないかは、ある程度の経験や知識が必要となる場合もあるが、直感的に何かおかしいと感じる場合もある。相場の世界においても、この違和感を感じた際には、何がおかしいのかを早めに確認することも重要である。

 ロンドン・オリンピックの開会式でインド選手団の入場の際に、インド選手のユニフォームを着用せず1人だけ赤色の上着と青色のパンツという出で立ちで行進していた女性がいたことに気が付いたであろうか。この女性はインドの選手やコーチ等ではなく、ショーの出演メンバーが紛れ込んでいたそうで、セキュリティの甘さなどが指摘された。

 この女性は特に関係者に止められる様子もなく堂々と行進していた。しかし、大会関係者は早めに気づいて対処すべき問題であったはずである。一般人が紛れ込むことはありえないとの自信からか、そのようなチェックが行われなかったのであろうか。ただし、全世界の何億人もの人はその女性への違和感は感じていたはずである。

 相場の世界でも、このような違和感を感じたときには何かしらの対処が必要となる。何かおかしいと感じたときには、その理由を確認するとともに、仮にそれにより相場が変動する可能性を感じたならば、できうる限りの対処を行うことも必要であろう。

 2003年6月の国債相場は自分でもいろいろと反省すべきことがあった。これは自分の書いたものでもその痕跡が残っている。

 2003年6月4日のコラムでは、「現在10年国債の利回りは0.5%にまで低下している。これはもちろん歴史的な低利回りである。この国債相場に対して懸念する声も強い。また国債の価格の上昇による売買益などは無視して、国債が急落したらどれだけ損失が発生するのかといった見方しかできないようにすら思える記事なども見受けられる。1%金利が上昇したら銀行保有の国債はどれだけ損失が発生するのか計算するのは簡単である。しかし、それ以前に1%金利が上昇するという根拠を述べてほしい。」と書いていた(債券ディーリングルーム、2003年6月4日の「若き知」より) 。

 ちなみに債券相場がピークアウトするのは、これからわずか1週間後である。しかも、それからしっかり1%程度長期金利は上昇することになる。見事な相場観(?)としか言いようがない。

 ところが6月9日にはこんなことを書いていた。「災害も警戒している時には起きることなく、忘れたころに起きる。相場の格言に「まだはもうなり、もうはまだなり」というのがある。もうこんなに買われているなら下がるはず。ところがいっこうに下がらない。・・・最近の株価の戻りは一時的なものと見ている人が多い。米国株に追随しているだけとの見方も強い。・・・経済指標も決して景気の回復を示すものはない。ないが株が下げなくなったのは何故なのか。誰か無理に買っているわけでもないようである。」と株の反発に対して、一種の違和感らしきものを感じていた様子があった。

 「大きな流れが変わりつつある兆候と言えなくもない。その動きはたぶん目に見えないものであろう。しかし、株価がその兆候を捕らえているとしたらどうなるのか。今回も結果として株は一時的な反発に留まるかもしれない。だが、このようなちょっとした兆候みたいなものは常に気をつけなければならない。」(債券ディーリングルーム、2003年6月9日の「若き知」より)

 どうやらこのあとのVARショックと呼ばれる国債価格の急落に対しては、ピークアウトする近くまで妙な強気でいたものの、寸前になり株価の動向がちょっと変だとして警戒心を強めていた。これは寸前になって予感が当たったとかを自慢したいものではなく( ?)、このような違和感を元にしての兆候の変化をかぎ取ることも、リスク回避には必要ではないかと思った次第である。

 そういえば、1998年末の運用部ショック(国債価格の急落)の際にも、日経新聞に出た小さな囲み記事に違和感らしきものを感じていた市場参加者も多かったはずであり、これがひとつの発端となった。当時の資金運用部が国債市場でどのような存在であり、そこの国債運用に変化が出るということは何を意味するのか。その結果はのちに国債価格の急落という運用部ショックとして現れた。

 今回の欧州の信用不安によるドイツやフランス、さらに英国やスイス、そして米国の長期金利の低下は、国債のバブル相場となっていることは確かではなかろうか。これについては「買われる理由があるため買われている」のであろうが、過去最低の利回りの更新が続く様子は、2003年6月までの日本国債の動きに近いものがある。

 いずれこの大きな反動がくるであろうが、それが何をきっかけにくるのかはなかなか予想しづらい。この兆候が、たとえば株価の動向などから読み取れることができるのかもしれないが、これもわからない。

 しかし、相場の動きに何か違和感を感じたら、それはしっかりチェックしておく必要がある。もし今回のオリンピック開会式でのインド選手団に紛れていたのがテロリストであったとしたら、たいへんな事態となる。この場合、主催者による迅速な対応があれば、大きなリスクの芽を、とりあえず押さえ込むことも可能となる。同様に相場変動の兆しを何かしらの動きで感じた際には、取り得ることが可能な範囲での対処する必要があり、それにより少しでもリスクを軽減、もしくはそれに乗じて利益を得ることも可能となる。


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# by nihonkokusai | 2012-07-31 10:01 | 債券市場

先物取引の重要性と課題

 日銀の白川総裁は、Futures Industry Association(先物業協会)が主催したコンファランスにおいて「先物取引市場と業界の課題」というテーマで講演を行ったが、この邦訳が日銀のサイトにアップされており、今回はこの内容について見てみることにする。

 先物取引は商品だけでなく金融の世界でも歴史はあるが、一般にはあまり知られていない。個人的にも債券先物が取引されるまではほとんど関心はなかった。しかし、現在では金融のデリバティブの世界では中心的に存在ともなっており、たとえば債券市場の動向を見るにあたって長期国債先物(債券先物、JGB先物とも呼ばれる)は、ペンチマークのような存在となっている。

 先物取引といえばシカゴでの取引が有名であるが、そのシカゴが参考にしたのが、18世紀初頭、大阪の堂島では始まった米の先物取引である。この時代すでに証拠金や差金決済といった仕組みがあり、限月などの仕組みも出来ていたのである。白川総裁も先物取引所と呼べる組織が、世界でおそらく最も早く日本で設立されたとしている。

 「洗練された市場が自律的に発展したという事実は、条件さえ整えば、日本において先物取引が繁栄し得るのではないかとの期待が全くの的外れでなはいことを示唆している。」と白川総裁は指摘しているが、現実に債券市場での長期国債先物取引を見る限り、十分活用されていることは確かである。また、日経平均先物も個人を含めて活発な取引が行われている。

 ところがこの先物市場を含めての取引が危機を迎える場面があった。「金融危機の頂点、とくに2008 年の後半においては、欧米を中心に金融市場はほとんど機能を停止した」(白川総裁)状況にあり、カウンターリスクが強まり、CDS取引を含む店頭(OTC)デリバティブ市場において、問題が先鋭化していた際、問題への対応を検討するにあたり、「店頭デリバティブ市場については、比較的問題が少なかった先物市場の経験が広く参照された」とある。

 ここで注意しておくべきは、「先物取引」と呼ばれる取引は、大阪堂島、シカゴのCME、CBTで発達したことでもおわかりのように「取引所取引」である。債券先物は東証、日経平均先物は大証で売買されている。つまり相対で行う店頭取引ではない。外為市場では先渡し取引を先物取引と称することもあるが、厳密な意味では先物取引ではなく、外国為替証拠金取引についても厳密には先物取引ではない。

 改革を進めるにあたり「店頭デリバティブ市場は、先物市場に一層近づくことになる。標準化になじまない商品についても、証拠金の受払いや取引の報告という、先物市場で有効性が確認されている義務が課されることになっている」(白川総裁)とされ、店頭デリバティブは、歴史のある先物取引が参考にされ、今後同じような形式の取引になっていくことが予想されている。

 また、白川総裁は、「先物市場は、取引所とそれに関連した清算を行う仕組みという、すぐに活用できるモデルを示しているが、そのモデル自体に改良の余地が残されている。」とも述べている。この清算を行う仕組みに関しては、下記のような事例も総裁は指摘している。

 「リーマン・ブラザーズの破綻によっても日本では大きな混乱は発生せず、その結果国境を越えた影響は最小限に止まったが、日本国債清算機関(JBGCC)における危機管理の手順に改善の余地があることも明らかになった。・・・リーマン・ブラザーズの法的な倒産手続が始まり、同社が日本国債清算機関に対し国債と資金を引き渡すことができないと判明したところから、必要な国債と資金を手当てできるまでの間、日本国債清算機関は多大な労力を費やした。それは綱渡りであった。」

 この事例研究はかなり重要なものであろう。何かしら大きなアクシデントが生じた際の対応はこのような清算機関にも当然求められるものとなる。しかし、「清算機関は、その利用者が破綻した時でも健全性を維持しなければならないが、これを実現するのは容易ではない」(白川総裁)。

 国債取引に関するリスク軽減への取り組みとして、総裁は日本国債の決済期間の短縮も指摘している。今年4月以降、日本国債の取引は、それまでの T+3 決済からT+2 決済に短縮され、未決済残高が削減された。さらに決済期間を T+1決済まで短縮するための検討も開始されている。

 金融という大きなインフラが構築されているが、その中にあって国債の取引が円滑に行われているのは、実は多くの仕組みに支えられている。特にあまり目立たないが決済や清算機能であり。これが円滑に働いていなければ、市場そのものは成り立たないことにもなる。

 ちなみに資金の決済は最終的に日銀の口座が使われることになろうが、白川総裁は「日本銀行は、証券取引所や東京金融取引所を含むさまざまな金融市場インフラ運営者との間で、長きにわたり建設的な関係を構築してきた。同時に、中央銀行に口座を保有しているからといって、緊急時に中央銀行から自動的に資金供給を受けられるとは限らない点も強調したい。」とも釘を刺している。


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# by nihonkokusai | 2012-07-30 13:30 | 債券市場

日銀のこれから課題

 日銀は世界の中央銀行の先駆けとなる格好で、1999年2月にゼロ金利政策を導入し、政策金利をほぼゼロ近辺に引き下げた。このゼロ金利政策は2000年8月に解除されたが、その後、日本のデフレ圧力はさらに強まることとなり、2001年3月からは量的緩和政策を導入した。これは政策金利がこれ以上引き下げられないことから、政策目標を日銀の当座預金の残高にするという、過去に例のない政策を打ち出した。これは政策金利を上げ下げする伝統的な手段に対し、非伝統的手段と呼ばれた。

 デフレは日本独自のものであり、よもや欧米の中央銀行が同様の手段を取ることになろうとは、誰も考えてはいなかったのではなかろうか。

 日銀の量的緩和政策は結局、2006年3月まで続くこととなる。7月にはゼロ金利政策も解除され、2007年1月に政策金利は0.5%まで引き上げられた。しかし、日銀の政策金利の引き上げはここまでとなった。

 2007年あたりから、米国のアメリカの住宅価格の下落をきっかけに、サブプライム問題が発生し、それが2008年のリーマン・ショックを引き起こし、世界の金融経済に大きな衝撃を与えることとなった。日銀は再び利下げを行ったが、そののりしろはわずかに0.5%しかなく、オペの増額などで緩和効果を計った。

 それに対して、欧米の中央銀行は非伝統的手段を講ずることとなり、2009年3月にFRBはのちにQE1と呼ばれる量的緩和策を導入し国債等を買い入れることとなった。イングランド銀行も量的緩和策として国債の買入を決定したのである。

しかし、2010年にはいると今度はギリシャを発端とする欧州の信用不安が強まり、これが世界の金融市場を揺るがすこととなった。これに対して2010年5月にECBは市場機能の正常化を目的として、国債の流通市場に介入することを発表した。1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めとなる。

 2010年10月に今度は日銀が、実質的なゼロ金利政策、時間軸の明確化、さらに国債を含めた資産買入等の基金創立を検討するという包括的な金融緩和策の実施を決定した。  そして、2012年1月にFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くことを決定し、日銀も2月に中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。

 これはFRB、日銀ともに正式にはインフレ目標の導入と認めてはいないが、これまでインフレ目標の採用は行ってこなかった主要中銀がついに実質的なインフレ目標を導入したと認識されたのである。

 欧州の信用不安はギリシャを発端として、アイルランド、ポルトガル、そしてスペインに拡大してきた。いずれイタリアにも及ぶ可能性もあるなど、対策は幾度も講じられるが問題解決には至らず、むしろ問題は拡大し長期化する恐れもある。

 このような状況下、日本はさておき、欧米諸国も財政への懸念もあることで、財政政策には頼れず、このため自ずと対策は中央銀行頼みの状況が強まっている。

 安全資産として外為市場では円が買われたことで、円高抑制に向けた対策も日銀に求められ、さらに消費税増税による景気への影響も懸念されるため、この対策も日銀に委ねられた格好となった。

 基金の増額はどうしても国債中心に成らざるを得ないものの、日銀にとり財政ファイナンスとも意識されかねないため、国債の買入増加も慎重とならざるを得ない。

 しかし、このように日銀の慎重姿勢に対する批判も、与野党の一部から出ており、それが日銀法改正の動きにも繋がっている。しかし、この日銀法改正は日銀の独立性を損ないかねない。日本のこのような政治的な圧力は、世界の金融の歴史の流れに完全に逆行するような格好となっている。

 日欧米の中央銀行は、すでに非伝統的手段を取らざるを得ないが、さらなる緩和については限界もある。しかし、対策は中央銀行に期待され、期待を裏切られると批判される。特にその傾向が日本で顕著であり、これは日銀の政策委員の人事にまで影響を与えつつあり、日銀審議委員もやっとここにきてフルメンバーが揃った。さらに2013年には日銀の総裁、副総裁の後任人事も注目されている。今後の日銀総裁の後任人事や日銀法改正などの状況次第では日銀の信認そのものが試される可能性もある。それが日本の金融経済に大きな影響を与えかねない。このため、これからの日銀の動きに対しても注意して見て行く必要があろう。


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# by nihonkokusai | 2012-07-30 09:48 | 日銀
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