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再び発行が増えている個人向け劣後債購入にあたっての注意点

 2009年に発行された銀行が発行した劣後債は、8年満期が多く、つまりそれは3年後に繰り上げ償還される可能性が高いことで、今年に入り、その借り換え目的とみられる個人向け劣後債の発行が増加している。

 劣後債とは、劣後特約のついた社債のことである。劣後特約とは社債に付けられた特約条項のことである。その特約条項の内容は通常、劣後債を発行した企業が倒産した場合、劣後特約のついた社債の返済は一般債権者への支払いが全て完了した後に行うという内容となっている。デフォルト時の元利金の支払い順位が一般債務よりも低くなっており、もし発行した企業が経営破たんした場合には、株式と同じく紙切れ同然になるリスクがある。劣後債のリスクは、一般に普通社債と株式の間くらいとの認識のようであるが、その分、普通社債よりも利率は高く設定されている債券である。

 劣後債の発行体をみると金融機関が比較的多い。金融機関は法律で一定以上の自己資本比率の維持を義務付けられている。劣後債は、会計上は負債に分類されるものの、銀行経営の健全性を維持するための国際ルールであるBIS規制では、自己資本の補完的項目(Tier2)への算入が一定限度まで認められている。このため、株主の権利を希薄化させずに、金融機関は自己資本を高められるというメリットがあり、金融機関は劣後債を発行しているのである。

 金融機関の発行する劣後債には、満期前に繰上償還される「期限前償還(コーラブル)条項」が付いているものが多い。劣後債の期限前償還条項とは、発行体が債券の繰上償還をするかどうかは決めることができるもので、いつ償還となるか事前には確定していない。しかし、劣後債を自己資本とみなすルールには、劣後債の償還まであと5年以上残っていなければならない、というルールが存在する。残存期間が5年を切ると年率20%で累積的に減価しなければならないのである。このため、実際には残存5年のタイミングで繰上償還となるケースが大半となっている。劣後債は、BIS規制において自己資本に算入可能であるため、金融機関には残存5年のタイミングで繰上償還し、再度劣後調達を行うインセンティブが働くのである。

 ただし、絶対にコールがかかるというわけではない。これまで大手金融機関が発行した劣後債で、繰上償還が見送られた事例は少ない。しかし、発行体の財務内容が大幅に悪化し繰上償還するだけの余裕がなかったり、金利の上昇などにより再調達コストが大幅に上昇した場合などでは、期限前償還が見送られる可能性があることにも注意が必要である。  ちなみに、現在発行されている個人向けの劣後債はバーゼル3には非対応のものがほとんどである。バーゼル3とは、バーゼル3とは、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制のことであり、バーゼル2(新BIS規制)をさらに規制強化したものであり、2012年から2019年にかけて段階的に適用されていくとされている。

 バーゼル3では劣後債を自己資本に算入するには、実質破綻に陥った際、元本の返済免除か普通株に転換することを条件としているバーゼル3対応としては以前、野村ホールディングスが発行した劣後債があるが、同社が仮に実質経営破綻した場合は投資家に元本を返済しなくてよい条件付きとなっている。バーゼル3に非対応であれば、倒産前の公的資金注入により救済される可能性がわずかに残る。

 個人投資家にとって劣後債を買い付ける際には、上記の劣後債そのものの性質とともに、買付金額の大きさ、そのタイミングの難しさ、さらに途中売却の難しさも意識する必要がある。

 金融機関の発行する劣後債の最低単位は100万円とか250万円、1000万円と通常の個人向け債券よりも大きくなっている(ちなみに個人向け国債は1万円単位で購入が可能)。さらに利率が比較的高いことなどもあって人気化しているものなどは、なかなか入手が難しく、ある程度取引やつきあいのある証券会社などからの情報が得られないと購入そのものも難しいケースも多い。

 さらに、劣後債は売りたい時に必ず売れるとは限らず、その流動性の低さに注意が必要である。個人向け国債は途中売却の際に財務省が買い取るが、劣後債は発行する銀行側が買い戻す義務はない。ただし、販売した証券会社が買い取ることは考えられるが、流動性がない分、購入価格よりもかなり安い値段で買い取ることも考えられるため、できる限り途中売却は避け、基本的には購入したら償還(そのほとんどは残存5年目で途中償還される見込み)まで持ちきることを前提に購入する必要がある。

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# by nihonkokusai | 2012-10-09 11:04 | 債券市場

ドルマークの由来、そして円と元のマークは同じだった

 先日、あるテレビ番組の製作スタッフから突然の電話があり、ドルマークの由来を教えてほしいという。その担当者はいろいろと調べてスペイン領アメリカにおいて使われていたスペインのペソに由来するのではとの話であった。たしかにネットで調べて見るとウィキペディアなどては諸説あり、そのひとつにスペイン領メキシコ・ペソの記号として使われていたものが由来ひとつと記されている。また当時のペソは、ピアストル、(英語圏では)ダラーとも呼ばれていた。

 これについては自分で書いた本(「金融」のことがスラスラわかる本―歴史に学ぶ金融の基本)にこのように記していた。

 「312年にローマのコンスタンティヌス大帝が発行したソリドス金貨は長い期間に渡り高い純度を維持し、その後11世紀末まで東地中海世界の標準貨幣として使われた。ノミスマとも称されたソリドス金貨は中世のドルとも呼ばれているように当時の基軸通貨となっていたのである。中世フランスや南米などで使われた通貨ソル(Sol)、中世イタリアで使われたソルド(soldo)、中世スペインで使われたスエルド(sueldo)などはこのソリドス由来するとされ、ドルのマークが$であるのも、ソリドス(Solidu)にあやかろうとしたものとも言われている。」

 残念ながらもらった電話では、すぐにこのことを伝えられず、曖昧な返事となってしまったが、この場を借りてこのような説があることを伝えておきたい。

 ちなみに円マーク(¥)については、英語で「en」ではなく「yen」と綴られることとなった円を、ドルの習慣に合わせてその頭文字Yに二重線を入れたものが円マークの由来であるとする説が一般的であるとか。中国では本来の通貨単位である「圓」を「元」に代替したが、記号は日本の円記号と同じ¥である。 いずれこれについてもめなければ良いのだが。


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# by nihonkokusai | 2012-10-07 13:13 | 金融

前原大臣は金融政策決定会合に出席して何ができるのか

 前原誠司経済財政相は就任早々、日銀の金融政策決定会合に出席する方針を固め、10月5日に政府代表として出席した。前原誠司国家戦略相・経済財政担当相は10月2日の記者会見で、日銀について「(物価上昇率1%の目標を)実現するための努力をしっかりと政府からお願いしていく」と積極的な金融緩和を求めた。「(努力が)足りない時には政策決定会合に私も出られる立場になる」と述べ、普段出席する内閣府副大臣だけでなく自らも決定会合に出る可能性を示唆し、実際に5日の会合に出席したのである。先日のコラムでも指摘したが、大臣自ら決定会合に出席したのは、2003年4月に竹中平蔵経済財政担当大臣が出席して以来となった。

 日銀法第十九条によると、財務大臣又は内閣府設置法第十九条第二項に規定する経済財政政策担当大臣(経済財政政策担当大臣が置かれていないときは、内閣総理大臣。次項において「経済財政政策担当大臣」という。)は、必要に応じ、金融調節事項を議事とする会議に出席して意見を述べ、又はそれぞれの指名するその職員を当該会議に出席させて意見を述べさせることができる、とある。

 さらに2項として、「金融調節事項を議事とする会議に出席した財務大臣又はその指名する財務省の職員及び経済財政政策担当大臣又はその指名する内閣府の職員は、当該会議において、金融調節事項に関する議案を提出し、又は当該会議で議事とされた金融調節事項についての委員会の議決を次回の金融調節事項を議事とする会議まで延期することを求めることができる。」とある。

 日銀の金融政策決定会合には、政府の代表が2人出席している。この2人とは財務大臣または経済財政政策担当大臣、あるいはそれぞれの指名する職員となっている。ただし、大臣が直接参加するのは極めてまれである。これは日銀法上、政府代表は議決権がなく、あくまでオブザーバー的な存在となっているためである。ただし、政府からの出席者は、決定会合において、経済情勢や政府の政策運営、金融政策運営などに関する意見を述べることができる。

 政府からの出席者は議決権はないものの、提案された議案について、議決を次回の会合まで延期することを求めることができる。これが議決延期請求権である。これは2000年8月のゼロ金利解除の際に行使されている。このときは大臣は出席していないが、これについて全権を委託されていたとされる宮沢蔵相の最終判断により、過去に例のない議決延期請求権が行使された。

 日銀法第十九条3項では、前項の規定による議決の延期の求めがあったときは、委員会は、議事の議決の例により、その求めについての採否を決定しなければならない、とある。実際に2000年8月の決定会合では、同条第3項に基づいて採決した結果、議決の延期の求める請求を反対多数で否決した。

 政府からの出席者は、また自ら議案を提出することができる。つまり前原大臣が自ら追加緩和なり、たとえば持論の外債購入についての議案を提出することは可能である。ただし、仮にそうする場合があったとしても、あくまで政府代表としての立場である以上、単独というよりも財務大臣の了解を得ることも前提条件になろう。

 そもそも仮に政府が議決延期請求権を行使しようが、自ら追加緩和策の議案を提出しようが、議決権のある政策委員会で否決されればそれでお仕舞いである。もちろんそれを行ったという事実は、決定会合後に明らかにされ(それ以前に明らかになったならばそれはリークがあったことになる)、それなりにマーケットなどにインパクトを与えることになるかもしれない。

 しかし、そこに至る過程等含め、会合での発言内容は議事要旨である程度明らかにされ。議事録では発言者とともに発言内容もそのまま記録される。このようなことを考えれば、あまり迂闊な発言はできなくなる。大臣ともなれば、安易な発言は当然差し控えることも予想され、まして持論による単独議案の提出などはかなり困難となる。つまり、いくら大臣自ら出席しようが、日銀の決定会合での政策決定そのものにそれほど大きな影響を与えることは考えづらいのである。日銀としてそれなりのプレッシャーも感じるかもしれないが、あくまで政府代表は決定会合ではオブザーバーでしかない。

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# by nihonkokusai | 2012-10-06 09:10 | 日銀

南アフリカ国債が世界国債インデックスに組み入れられたことによる影響

 年金の運用機関などは、その多くが「インデックス運用」を採用している。インデックス運用とは、ある一定の組み入れ基準にもとづいて構成されている債券ポートフォリオの運用成績に連動するよう、自らのポートフォリオを管理する手法である。TOPIX(東証株価指数)などの株価指数に連動することを目標とするインデックスファンドと運用方針は同じである。

 いくつかの証券会社や金融機関が、こうした債券のインデックスを開発しているが、国内債に関して大半の年金が採用しているのは、野村證券が開発した「NOMURA-BPI」である。年金はこれを参考に月末もしくは月初に国内債の入れ替えをすることが多い。

 海外の年金もまた多くがインデックス運用を採用しているが、そこでよく利用されているのが、シティグループ世界国債インデックス(Citigroup World Government Bond Index=WGBI)である。WGBIは、世界主要国の国債の総合投資利回りを各市場の時価総額で加重平均し、指数化したものである。債券で運用されるファンドのベンチマーク(評価基準)になっている。日本においても、シティグループ世界国債インデックスのうち日本を除いた指数が、公的年金や企業年金、投資信託などで幅広く利用されている。

 今年5月に、南アフリカの国債が「シティグループ世界国債インデックス」の組入要件を満たした」との発表があった。このインデックスの組入要件としては、市場の時価総額が500億米ドル、400億ユーロ、5兆円をそれぞれ上回る(市場規模基準)、S&P社でA-、あるいはムーディーズ社でA3以上の格付を保有すること(信用格付け基準)、さらに市場参入障壁がないこととなっている(シティグループのサイトより)。

 ちなみにシティグループ世界国債インデックスに組み入れられているアジアの国は日本とシンガポール、マレーシアだけである。韓国については組入要件はほぼ満たしているものの、資本規制等の市場参入の障壁がネックとなって組み入れられていない。

シティグループ世界国債インデックス http://index.citigroupglobalmarkets.jp/free_pdf/bond/info.pdf http://index.citigroupglobalmarkets.jp/free_pdf/bond/IX34.pdf

 南アフリカの国債が継続して組入要件を維持した場合、2012年10月より同インデックスに採用される予定となっていたが、実際に10月1日より「シティグループ世界国債インデックス」に、新たに南アフリカ国債が組み入れられた。

 インデックスに国債が採用される国は、南アフリカのほか22か国あり、WGBIを参考にするファンドの運用資産総額は推定で2兆ドルに上るとされる。シティグループは、WGBIへの組み入れが決まった南アフリカ国債は12種類で、これらの時価総額は938億2000万ドル、WGBIの0.45%に相当するようである(10月1日のロイターより)。

 インデックス運用を行っている投資家による南アフリカ国債への買いは9月末あたりまでにほぼ終了していたようで、南アフリカ国債の利回りは9月末に過去最低に近い水準にまで低下していた。また、南アフリカの通貨ランドが思惑的な動きもあってか、10月1日に買われるなど、多少影響はあったようである。ただし、南アフリカ国債の組み入れがある程度行われてしまうと、それ以降の需要は限られる点にも注意しておきたい。また、

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# by nihonkokusai | 2012-10-05 09:06 | 国債

前原経済財政担当相は日銀の決定会合に出席か

 日経新聞によると、前原誠司国家戦略相・経済財政担当相は2日の記者会見で、日銀について「(物価上昇率1%の目標を)実現するための努力をしっかりと政府からお願いしていく」と積極的な金融緩和を求めた。「(努力が)足りない時には政策決定会合に私も出られる立場になる」と述べ、普段出席する内閣府副大臣だけでなく自らも決定会合に出る可能性を示唆したそうである。ちなみに今日から明日にかけて、その金融政策決定会合が開催されるが、今回出席するかどうかは定かではない(追加、これについては4日に日経が、「前原誠司経済財政相は日銀の金融政策決定会合に出席する方針を固めた。4日始まった決定会合2日目の5日に政府代表として出席する。」と報じた)

 日銀の金融政策決定会合には、政府の代表が2人出席している。この2人とは財務大臣または経済財政政策担当大臣、あるいはそれぞれの指名する職員となっている。ただし、大臣が直接参加するのは極めてまれである。これは日銀法上、政府代表は議決権がなく、あくまでオブザーバー的な存在となっているためである。ただし、政府からの出席者は、決定会合において、経済情勢や政府の政策運営、金融政策運営などに関する意見を述べることができる。 

 政府からの出席者は議決権はないものの、提案された議案について、議決を次回の会合まで延期することを求めることができる。これが議決延期請求権である。これは2000年8月のゼロ金利解除の際に行使されているが、このときも大臣は出席していない。しかし、これについて全権を委託されていたとされる宮沢蔵相の最終判断により、過去に例のない議決延期請求権が行使された。過去に例のないというのは、この議決延期請求権はブンデスバンクの方式を取り入れたものの、そのブンデスバンクでは一時も行使されなかったためである。その後、金融政策はECBに委ねられたため、今後もドイツでの議決延期請求権行使はありえなくなった。

 過去において大臣が決定会合に出席したのを調べてみたところ、新日銀法が改正され初めての会合(1998年4月)で、松永光蔵相と尾身幸次経企庁長官が出席した。ただしこれは初回の金融政策決定会合という記念の意味も込めての出席とみられる。同年6月に尾身幸次経済企画庁長官、7月に松永光大蔵大臣がそれぞれ出席した。そして1999年2月と3月に堺屋太一経済企画庁長官、2001年6月~11月、2002年3月・5月・7月・12月、2003年4月に竹中平蔵経済財政担当大臣が出席している。これ以降、特に副大臣が設置されてからは副大臣の出席が目立つことになる。

 堺屋氏や竹中氏は前原氏同様に、日銀に対して批判的な立場であったこともあり、今回の前原氏と同様の意気込みで参加していたともみられる。ただし、それによって金融政策に影響がどの程度あったのかは不透明ながら、この間に議決延期請求権が行使されるようなこともなかった。

 経済財政政策担当の大臣も参加できる以上、前原氏が決定会合に参加するのは全く問題はない。むしろ大臣が直接金融決定の現場に参加することは、良い経験ともなるのではないかと思われる。日銀の外債購入についても財務相や官房長官がやんわりと否定しているように、特に為替に影響を与える以上は管轄が日銀にはなく、これは決定会合に出て日銀に何とかしろと言える筋合いのものでもない。このあたり含めて、とにかく一度決定会合に出てお互いの意見を聞くことも大事なのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2012-10-04 08:07 | 日銀
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