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日銀の予想通りの追加策と予想外の共同文書

 日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。内容は資産買入等基金の規模を11兆円増額、内訳は長期国債が5兆円、短期国債が5兆円、そしてリスク資産が1兆円程度。リスク資産はETFが5000億円、REITが100億円、社債が3000億円、コマーシャルペーパーが1000億円程度となる。

 さらに貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設の検討を執行部に指示、この新しい貸出枠と既存の成長基盤強化の資金供給を、貸出支援基金と名付けるそうである。

 そして、日銀総裁と財務相・経済財政相との連名によるデフレ脱却に向けた取組についてを公表。政府日銀が一体となってデフレ脱却を目指すという、何となくアコードを意識したかのような内容となっていた。

 ここで今回の決定会合で気になったことをメモしておきたい。

 まず決定会合の内容が事前に流れていたとみられること。事前に資産買入等基金の10兆円程度プラスリスク資産の増額は報じられていた。今回は政府による経済対策と歩調を合わせた格好となっており、この報道は日銀関係者というよりも政府関係者から漏れた可能性が高いと思われる。

 今回の決定会合はたいへん時間がかかり、結局、公表文が発表されたのは14時46分となっていた。通常の2日間の会合ではないため、多少時間が掛かることもあるがここまで時間が押すことは珍しい。その理由としては共同文書の作成等に時間が費やされた可能性がある(これについては展望レポートの景気・物価見通しを巡り政策委員内の激論が影響したとの見方も、31日日経)。

 その前に貸出支援基金についてであるが、これは既存の成長基盤強化の資金供給の進化バージョンであり、それほど新鮮みのあるものではないが、これを付け加えてきた理由のひとつが、「無制限」という用語を使いたかったからであろうと推測される。ECBやFRBの追加緩和でも、無制限との表現が意識されており、日銀としてもどこかにこの言葉を加えたかったものと思われる。

 そして今回の追加緩和の大きなポイントとなりそうなのが、政府と日銀の共同文書である。政府と日銀が一体となってデフレ脱却に向けて最大限の努力を行うとしているが、「一体」となってとの表現がアコードを意識させる。

 今後の物価動向については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告するとの表現もある。政治家の一部からはイングランド方式のインフレターゲットを求める声も出ていたが、そのイングランド銀行ではインフレ目標値から1ポイント以上乖離した際に総裁が、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならないとされている。

 ただし、「政府は、デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠であると認識している」との表現あたりは、日銀の意向も反映されているように思われる。共同文書が一方的に政府から押しつけられたものというよりも、少しでも効果を出すため日銀も協力せざるを得なかったものとみられ、その意味でもこの文章を加えてきたように思われる。

 ちなみに共同文書の大臣の署名は、なぜか前原大臣の方が、城島財務相よりも上になっていたのも気になったところではある。まあ、これについては前原大臣が出席していたということも影響していたのかもしれないが(これに関して実際には、建制順によるものとのご指摘をいただきました。この場合は内閣府、財務省の順となるようです)。

 今回の追加緩和については、ほぼ織り込み済みであったものの、プラスアルファを仕掛けてきた。これをどのように評価すべきか。今回の追加緩和には、政府というか民主党も選挙を意識しての動きも感じられる。さらに日銀は今回政府とともに市場、さらに市場の中でも海外の反応を意識しての追加緩和策を決定したように思われる(今日の米国はそれどころではなかったが)。個人的にはこのプラスアルファの部分がかなり気になる。共同文書は単なる文書であり拘束力があるものではないが、これは日銀が今年2月の物価の目途の設定の加え、また一歩踏み込んできたものと受け取りたい。このあたり、市場もあまり無視すべきものではないように思われる。

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# by nihonkokusai | 2012-10-30 17:49 | 日銀

世界の債券市場が100兆ドルの規模に、ここ10年間で2倍以上に拡大

 英国の独立系シンクタンクのTheCityUKが発表した「BOND MARKETS 2012」によると、世界の債券市場(Includes bonds, notes and money market instruments)の規模が2012年3月現在で100兆ドル近く(99兆8590億ドル)になったようである(元データはBIS)。

 このうち国内債(Domestic)が約7割(70兆1480億ドル)を占め、国際市場で発行された債券(International)が3割(29兆7110億円)を占めている。ちなみに国内債(Domestic)は居住者により自国通貨建てで発行された債券のことであり、国際市場(International)で発行された債券とは、非居住者により発行された債券、もしくは居住者により発行された債券で自国通貨建で非居住者向けに発行された債券、もしくは外貨建ての債券を示す。

 国別の国内債(Domestic)の市場規模を見てみると2012年3月現在、トップは米国で合計26兆3910億ドルとなり、その内訳としては財務省証券(国債)を主体とする公共債が13兆2470億ドル、金融債(MBSなど)9兆7040億ドル、社債3430億ドルとなっている。米国債は財務省証券(国債)と並んでMBSの市場が非常に大きいのも特徴である。

 第2位が日本で合計14兆510億ドル。このうち国債を主体とする公共債が12兆1430億ドル、金融債が1兆470億ドル、社債が8610億ドルとなっている。公共債の規模だけみれば米国と肩を並べている(2011年は日本が米国を抜いていた)。

 3位以下の国は合計と公共債だけで確認すると、3位はフランスで3兆5740億ドル(公共債1兆8740億ドル)、4位が中国3兆4070億ドル(1兆4850億ドル)、5位がイタリアで2兆9730億ドル(2兆560億ドル)、6位がドイツで2兆6210億ドル(1兆8380億ドル)、7位英国1兆8230億ドル(1兆5240億ドル)、8位カナダ1兆6220億ドル(1兆1340億ドル)、9位スペイン1兆5740億ドル(7500億ドル)、その他12兆1120億ドル(6兆5320億ドル)、合計で70兆1480億ドル(42兆5930億ドル)となっている。

 ユーロ圏の国でみると、フランスがトップであるが、公共債だけでみるとイタリアが最も多い。また、財政への懸念も強いスペインは9位となっている。

 国内債(Domestic)と国際市場で発行された債券(International)の割合を見てみると(BISとIMFのデータからTheCityUKが集計)、日本では99%がDomesticとなっているが、英国は32%にすぎない。米国は79%、イタリアが73%、フランスが63%、ドイツが54%となっている。日本の国内債の割合が突出していることがこれからも確認できる。

 このように世界の債券市場規模は年々膨れあがっていることがわかる。残高で2002年が42兆3910億ドルであったものが、2012年は99兆8590億ドルと10年間で2倍以上となっている。リーマン・ショックや欧州の信用不安により、国債を中心とした債券発行量も増加し、債券市場規模はますます拡大してきている。その中にあって欧州の財政不安も国債発行が影響し、その対策としての中央銀行による国債などの債券購入なども、これだけ膨らんでいる債券市場が背景に存在しているということであろう。


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# by nihonkokusai | 2012-10-30 09:31 | 債券市場

騙されないための個人向け債券の基礎知識

 先日の日経新聞によると、東京都新宿区の82歳の男性医師が架空の社債購入を持ちかけられ、現金9360万円をだまし取られていたそうである。2011年4月に男性宅に「株式会社アドバンスエレメント」という架空会社の社債販売の案内パンフレットが届き、その後、関連会社の社員を名乗る男から「その社債は新宿区の個人しか買えない。1千万円で購入すれば1500万円で買い取る人がいる」と持ちかけられたそうである。また、以前には東京都江戸川区の17歳の男子高校生が、架空の社債購入を持ち掛けるなどして2千万円をだまし取るという詐欺事件も発生したが、こにきて未公開株などとともに個人向けの社債を巡る詐欺事件が結構発生している。

 ふたつの事件とも騙されたのは高齢者であり、オレオレ詐欺の社債版のようなものではあるが、特に後者の事件は高校生が犯人であったのに驚かされた。高校生が「社債」という存在そのものを知っていたのかと関心してしまったが、もちろん関心している場合ではない。

 私も一度、「病院債」を買わないかとの電話セールスを受けたことがある。さすがにすぐに危ないと思い電話を切ってしまったが、勉強のため(?)話ぐらい聞いておけば良かったとあとから反省した。このような文章を書くにも良い事例となったはず。この件についてはそういうわけで、具体的な詐欺の方法はわからないが、これは国民生活センターのサイトによると、勧誘時に「医療機関債」のほか「病院債」、「医療債」、「病院への投資」などという言葉が用いられている詐欺のようである。「医療機関債は国債と同じで、元本割れすることのない安全な商品である」「人工透析ができる医療機関にお金を出せば、高い利息が付く」などと、預貯金や国債と同じであるといった、事実と異なる説明や、高利率であることだけを強調するなどの問題勧誘が見受けられるそうである(国民生活センター、http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110825_1.html)。

 このような詐欺被害を未然に防ぐには、少なくとも勝手に送られたパンフレットや、見ず知らずの人からの電話セールスについては詐欺であると思っていた方が良い。

 たしかに一般の人が債券を購入するというのは、それほどポピュラーではない。個人向け国債あたりであれば、テレビなどでも宣伝しており、それなりに認知度が高いかもしれないが、それでも購入経験のある人はそれほど多くはないと思われる。このため今回はこのような詐欺に遭わないためにも、債券について基礎的なものを知ってもらおうと、まとめてみた。

 債券は株式などと同様の有価証券である。株と違うところは、満期がありその間、半年ごとに利子が支払われ、額面金額が償還時に戻ってくるというものである。有価証券なので途中で売却もできるが、それには買い手が必要になる。また預貯金と違うところは、お金を銀行に貸すというか預けるのではなく、証券を買うことで買い付けの価格があり、購入金額と償還金額はかならずしも一致しない。利子については比較的預貯金よりも高めに設定されている。

 債券の中で最も多く発行されているのが国債である。国債には個人向けの国債があり、そのうち個人向け国債(復興国債)は財務省が一定期間過ぎれば買い取ってくれるため流動性リスクや価格変動リスクがない。3年固定、5年固定、10年変動の3タイプある。また、個人向けには新窓販国債という国債もあるが、こちらは利率は個人向け国債よりも高いが、途中売却の際には金融機関を通じ市場で売却し換金するため、価格変動リスクがある点に注意が必要となる。

 地方公共団体が当該地域に居住している個人や営業拠点等がある法人などを対象に発行する債券が、個人向け地方債で、正式には住民参加型市場公募地方債であるが、ミニ公募地方債とも呼ばれている。こちらは国債より比較的利子も高いことや地域貢献も意識されてか人気が高い。ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照してほしい。ただし、地域貢献などと称するミニ公募地方債らしき詐欺まがいの債券もあるため要注意。私も電話勧誘で勧められた病院債(医療機関債)も電話ではそのそのようなうたい文句であった。

 個人向け社債については、とにかく自分が知っている会社の債券であることがまず重要。見ず知らずの会社の社債投資は避けるべきか。もちろん格付け等を確認することも大事だが、国債と同様に安全などとアピールされていたとすればちょっと疑った方が良い。国債並に安全な社債は余程名のしれた大手企業が発行するようなものに限られる。また名の知れた大手企業だから絶対安全というわけでもないところにも注意は必要か。

 社債の中でも銀行の発行する個人向け劣後債については、どちらかといえば富裕層向けのものであり、しっかり証券会社などで説明を聞くことをお勧めする。もちろん他の個人向け債券もしっかりした証券会社で購入するものであれば、詐欺まがいのものはないはずである。劣後債については今回説明は省略する。

 個人向け外貨建て債券、たとえばブラジル、トルコ、ロシア、オーストラリアなどの通貨建ての債券については、高利回りで発行体が国際機関などなので格付けが高く人気となっているものもある。発行体の高格付けが必要条件だが、たぶんこれは満たされているはず。そして利率についても単純に日本の債券より高いからと納得するのではなく、現地の利率などもチェックして比較も必要となる。高利回りはそれだけリスクが高いとみておくことも大事である。そして問題は為替リスクであり、その通貨の動向をほとんどチェックできないような人は手を出すべきでない。まして円安・円高とは何か、そもそも為替は何で動くのかを理解してから望むべきである。私も90歳近い叔父に円高とは何だと聞かれたことがある。どうやら海外通貨建て商品に手を出してしまったようだが、知識なしにお金を投じるべきではない。高利率に惑わされず、その対象通貨が、今後余程のことがない限り下落はないとの自信があるのであれば、購入すべきものである。

 個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。この仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されているものである。しかし、極端に有利な金融商品というものはない。仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたデリバティブにある。そのリスクを完全に理解することは個人には難しい上に、大きな損失を被る危険性があり、それを理解した上であるならば良いが、良くわからなければ手を出すべきではない。

 そしてこれは個人向け国債以外の個人向けの債券に言えることだが、途中売却には注意すべきである。債券なので途中売却は可能だが、売却した時の市場環境次第では買った値段よりも低い値段でしか売れないということも多々ある。販売した証券会社等で買い取ってくれるが、流動性のない小口の債券であるため証券会社の買い取る価格は低くなり、そこには手数料相当分も含まれる。個人向け債券は満期まで持つことが大前提となる。

 また、個人向けの債券はいつでも買えるわけではない。人気のある社債は一瞬で売切れてしまうこともあり、日ごろから情報を仕入れておくことが重要となる。個人向け国債については財務省のサイトで、ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照。個人向け社債や外貨建て債券は各証券会社のサイトや窓口で確認する必要がある。

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# by nihonkokusai | 2012-10-28 12:07 | 投資

来週の市場動向を見る上での注目点

 米国のダウ平均は、ブラックマンデーからちょうど25年目にあたる10月19日に205ドルもの下げとなり、22日には243ドルの下げとなった。これだけの調整が入ると日本株も大きく下落してもおかしくないところではあったが、この間の日経平均は9000円近辺で非常に底堅い動きを見せていた。この底堅さの背景には、外為市場での円安の動きがあった。

 10月11日あたりからじりじりと円安ドル高が進行し、22日に80円台に乗せてきた。ユーロ円も22日に104円台をつけた。ユーロドルの動きを見ると9月の半ばあたりからほぼ横ばいの動きになっていることからもわかるように、今回は円安の動きである。

 この円安の背景にあるのが、日銀による追加緩和期待であるのは明らかながら、その円安の目先の起点となっていたのが10月11日~12日あたりとなっいたこともチェックしておく必要がある。つまりこの時期に東京でIMF・世銀の年次総会が開催されていた。世界の金融関係者が東京に集まっており、日本がそれなりに注目されていた期間である。このタイミングで円安の動きになったのは、IMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響しているかもしれないが、日銀の追加緩和観測だけによるものかどうかも検証しておく必要もあるのではなかろうか。

 円安の背景のひとつには、欧州の信用不安に対する注目度がやや後退したことも挙げられよう。東京でIMF・世銀の年次総会も比較的波乱無く終わったが、欧州の今後を巡って激論が交わされたような気配もない。楽観視するつもりはないが、ここにきてのイタリアやスペインの長期金利の動向を見ても、危機感がかなり後退してきたことが伺える。特にイタリアについては、18日の国債入札で、過去最大規模となる180億ユーロ相当発行していた。1回の発行額としては欧州で過去最大となる。国内の個人投資家含めての需要が強かったことを見ても、かなり不安感が払拭されつつある様子もうかがえる。

 10月30日に日銀は追加緩和を決定するであろうが、よくよく考えると10兆円もの基金を増額して何をしたいのかといえば、本来は長期金利の低下を促すのが目的となるはず。ところが、今回の日銀の追加緩和は結果として長期金利の上昇を促すのが目的であるかのように思われる。つまり、追加緩和により円安株高となれば(材料出尽くしで反対に動く可能性は残るが)、それは債券の売り要因と長期金利の上昇を促す可能性がある。今回はリスク資産の買入等も検討されるとみられるが、基金の増額よりもこちらの方が目的とされる効果は大きいように感じる。

 とにかく来週は10月30日の金融政策決定会合で何が決定され、それにより市場がどのように動きのかがひとつの焦点となる。もちろん30日に発表される展望レポートの中身についてもチェックしておく必要がある。

 そして臨時国会が29日に招集されるようであるが、債券市場にとりもうひとつの注目材料となっている特例公債発行法案の行方も気掛かり材料となる。26日の臨時の国債市場特別参加者会合の内容にも注目したいが、市場参加者も仮に12月の国債入札が休債となれば、先行きへの不安感を強めることも予想される。それ以上に国民生活そのものへの影響もあることで、さすがに自民党も特例公債発行法案については成立させる方向にもっていくのではないかと期待を込めて予想している。法案成立が具体化すれば、これによる先行き不透明感が払拭され、売られていた超長期債に押し目買いが入りそうである。ちなみに11月1日には10年国債入札が予定されているが、投資家需要はそれなりに見込めるとみられる。

 そして、日本株への影響は限定的であったとはいえ、米国株式市場の動向も注意が必要になる。円安効果で出遅れていた日本株が戻してきたとしても、欧米の株式市場が下落傾向となってしまえば、日本株の上値も抑えられる。ここにきての米株安の背景になっている米企業の業績不振は、それでなくても尖閣諸島を巡る日中関係の悪化により自動車関連企業を中心に日本企業の業績にも影響が出ているだけに、無視できないものとなる。そして米国市場動向を見る上で、2日に発表される米雇用統計も注意しておく必要がある。


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# by nihonkokusai | 2012-10-27 08:35 | 債券市場

日銀は10月30日の決定会合で何を決定するのか

 10月30日の日銀による金融政策決定会合において、追加の緩和策が決定されるとの観測が強まっている。今回は、本当に日銀は追加緩和を行うのか、もしその場合には何を行うのかを検証してみたい。

 その前に今回追加緩和期待が強まった背景を確認してみると、ひとつには10月30日に発表される展望レポートにおいて、2014年度の消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比上昇率の見通しがゼロ%台後半となり、目途としている1%には届かないのではないかとの観測があった。また、政府による経済対策に歩調合わせる必要から追加緩和を行うのではないかとの見方もあった。さらにIMFのラガルド専務理事が「日銀はさらなる金融政策に踏み切る準備ができると確信している」と述べたことも影響している可能性もある。

 10月の展望レポートを受けての追加緩和という想定は以前からあった。しかし、それを踏まえて日銀は9月に前倒しで追加緩和を行っていた。これは10月のIMF・世銀総会を意識しての可能性もあると個人的には考えていたが、IMFはさらなる追加緩和を求めるようなコメントを出してきた。

 緩和策を考える前に、10月30日に本当に追加緩和があるかどうかも考えておく必要がある。これについて、これだけ追加緩和観測が流れている中にあって現状維持とするのであれば、1999年9月の決定会合以来になるとの指摘があった。

 1999年9月の決定会合で日銀に対して、米国に協調介入を促すべく、追加の金融緩和策を取るようにとのプレッシャーが政府サイドからかけられていた。マスコミも日銀が追加の金融政策をとることは既成事実であるかのような報道をした。しかし、このプレッシャーを払いのけて、日銀は現状維持を決断。この際には速水総裁(当時)の辞任説も広がっていたのである。

 今回はさすがに現状維持で意地を張るような状況ではない。しかし、30日に追加緩和を決定するとなれば2か月連続となり、極めて異例となることも確かである。23日、24日の米FOMCも現状維持となったこともあり、日銀としては9月に追加緩和を行ったことで、今回追加緩和を行うことは想定はしていなかったのではなかろうか。

 しかし、追加緩和への期待は強まり、外為市場や株式市場ではそれを織り込んでの動きになっている。米株の大幅な下落にもかかわらず、日経平均は9000円近辺で底堅い動きをしていることや、ドル円が80円台をつけたことの要因のひとつは、この日銀の追加緩和観測であったと考えられる。こうなると何もしないという選択肢は取りづらいか。

 それではもし追加緩和を行うとすれば何をしてくるのか。まず想定されるのは、9月と同様に資産買入基金の増額である。9月の増額の対象は短期国債5兆円程度、長期国債5兆円程度であった。今回も5兆もしくは10兆円の増額の可能性がある。今朝の日経新聞によれば10兆円との観測のようである。

 今回は株や為替の動きも意識してリスク資産の増額を行う可能性もある。今年末て購入枠を使い切ることで来年に向けた枠をあらたに設定する可能性がある。9月の決定会合でも一部の委員からリスク性資産の買い入れ増額を求めるような発言があった。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)、社債・CP等の買入をあらたに増額するという選択肢もありうる。

 また日銀による外債購入を求める声も出ている。これについてはいずれにせよ為替操作が目的であることが明らかである以上、そうなれば財務省の所管となろう。また、相手国との交渉も必要となるため、これは中央銀行というより政府の仕事と思われる。そもそも政府が為替介入を行えば結果としてもれなく外債も付いてくるし、介入に必要な資金手当てのために発行するFBは日銀が基金オペで市場から購入している。ただし、相手国との交渉としては、米国との交渉はむずかしそうだが、相手がユーロ圏となると話が違ってくる。日本政府は既に多額のEFSF債を購入済みであり、ESM債についても購入も検討している。ESM債をもし日銀が購入するとなれば米債より抵抗は少ないように思われる。いずれにせよ30日に外債購入を検討するようなことはなさそうである。

 これ以外としては、基金により買い入れる国債の年限延長、もしくは期限を設けないことも考えられる。可能性としてはいずれ3年から5年あたりまでの期限延長はありうるが、期限を無制限にすると輪番オペと変わりがなくなる。ECBのあらたな国債買入も期間を1~3年としている。ドラギ総裁の発言からは財政ファイナンスと意識されないための配慮とみられる。すでに日銀も輪番オペでの日銀券ルールは実質的には守られていないとの見方はあるが、財政ファイナンスと意識されそうなことは極力避けるとみられる。このため、基金により買い入れる国債の年限等については現状維持とするのではなかろうか。

 そしてもうひとつ超過準備への付利撤廃もしくは引き下げという選択肢もある。9月に日銀は国債買入の下限金利を撤廃している。そして日銀の準備預金はすでに40兆円台に積み上がっている。ここで付利を廃止して、この積み上がった準備預金を少しでも運用のための資金として活用されるとの連想が働けば、それなりのアナウンスメント効果もありうるかもしれない。ただし、それを行ってしまうと短期金融市場が量的緩和の際のように機能不全に陥ることも想定される。過去の白川総裁は発言内容からもこの可能性は薄いように思われる。


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# by nihonkokusai | 2012-10-26 09:41 | 日銀
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