さらに貸し出し増加を支援する無制限の資金供給の枠組み創設の検討を執行部に指示、この新しい貸出枠と既存の成長基盤強化の資金供給を、貸出支援基金と名付けるそうである。
そして、日銀総裁と財務相・経済財政相との連名によるデフレ脱却に向けた取組についてを公表。政府日銀が一体となってデフレ脱却を目指すという、何となくアコードを意識したかのような内容となっていた。
ここで今回の決定会合で気になったことをメモしておきたい。
まず決定会合の内容が事前に流れていたとみられること。事前に資産買入等基金の10兆円程度プラスリスク資産の増額は報じられていた。今回は政府による経済対策と歩調を合わせた格好となっており、この報道は日銀関係者というよりも政府関係者から漏れた可能性が高いと思われる。
今回の決定会合はたいへん時間がかかり、結局、公表文が発表されたのは14時46分となっていた。通常の2日間の会合ではないため、多少時間が掛かることもあるがここまで時間が押すことは珍しい。その理由としては共同文書の作成等に時間が費やされた可能性がある(これについては展望レポートの景気・物価見通しを巡り政策委員内の激論が影響したとの見方も、31日日経)。
その前に貸出支援基金についてであるが、これは既存の成長基盤強化の資金供給の進化バージョンであり、それほど新鮮みのあるものではないが、これを付け加えてきた理由のひとつが、「無制限」という用語を使いたかったからであろうと推測される。ECBやFRBの追加緩和でも、無制限との表現が意識されており、日銀としてもどこかにこの言葉を加えたかったものと思われる。
そして今回の追加緩和の大きなポイントとなりそうなのが、政府と日銀の共同文書である。政府と日銀が一体となってデフレ脱却に向けて最大限の努力を行うとしているが、「一体」となってとの表現がアコードを意識させる。
今後の物価動向については、「デフレ脱却等経済状況検討会議」において定期的に報告するとの表現もある。政治家の一部からはイングランド方式のインフレターゲットを求める声も出ていたが、そのイングランド銀行ではインフレ目標値から1ポイント以上乖離した際に総裁が、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならないとされている。
ただし、「政府は、デフレからの脱却のためには、適切なマクロ経済政策運営に加え、デフレを生みやすい経済構造を変革することが不可欠であると認識している」との表現あたりは、日銀の意向も反映されているように思われる。共同文書が一方的に政府から押しつけられたものというよりも、少しでも効果を出すため日銀も協力せざるを得なかったものとみられ、その意味でもこの文章を加えてきたように思われる。
ちなみに共同文書の大臣の署名は、なぜか前原大臣の方が、城島財務相よりも上になっていたのも気になったところではある。まあ、これについては前原大臣が出席していたということも影響していたのかもしれないが(これに関して実際には、建制順によるものとのご指摘をいただきました。この場合は内閣府、財務省の順となるようです)。
今回の追加緩和については、ほぼ織り込み済みであったものの、プラスアルファを仕掛けてきた。これをどのように評価すべきか。今回の追加緩和には、政府というか民主党も選挙を意識しての動きも感じられる。さらに日銀は今回政府とともに市場、さらに市場の中でも海外の反応を意識しての追加緩和策を決定したように思われる(今日の米国はそれどころではなかったが)。個人的にはこのプラスアルファの部分がかなり気になる。共同文書は単なる文書であり拘束力があるものではないが、これは日銀が今年2月の物価の目途の設定の加え、また一歩踏み込んできたものと受け取りたい。このあたり、市場もあまり無視すべきものではないように思われる。
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