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国債の流動性がここにきてさらに落ち込む

 国債の流動性がここにきてさらに落ち込んでいる。7月28日の債券先物の日中値幅(ナイトセッションを除く)はわずか4銭しかなかった。10年国債のカレント物と呼ばれる直近発行された銘柄が一日の動きがひとつのレートもしくは、0.005%の動きに止まることが普通になってきてしまった。金利が凍結しつつある。

 この要因としては日銀の金融政策にある。日銀による長短金利操作は、本来であれば市場によって形成される長期金利を日銀が金融政策によって操作しようとするものである。

 足元金利をマイナスに低下させた上に、長期国債を大量に日銀が購入することよって確かに長期金利のコントロールは可能であるように見えた。現実に日銀は市場に国債買入額の増減、さらには指し値オペという強力な手段によって長期金利を一定レンジに押さえ込もうとしている。

 7月はじめにECBの緩和バイアス解除を意識し、欧米の長期金利がやや動意を示した。この海外での金利上昇を受けて7月7日の日本の10年債利回りは0.105%に上昇した。今年2月3日に日銀は指し値オペを実施したが、その水準が10年債利回りの0.110%となっており、その水準に接近した。

 7月7日に日銀は5年超10年以下の国債買入額をそれまでの4500億円から5000億円に増額した。同時に固定利回り方式での残存期間5年超10年以下の国債買入もオファーした。「指し値オペ」である。10年利付国債347回の買入利回りは0.110%となった。日銀としては0.110%が絶対防衛ラインということをあらためて示した。これにより日銀の長期金利の誘導目標値はマイナス0.1%からプラス0.1%であろうことが再確認された。

 しかし、ここにきて日本の消費者物価指数も前年比でプラス0.4%あたりとなっていることや、欧米の中央銀行の正常化に向けた動きによって長期金利は低下しづらくなっている。このため、それ以降の日本の長期金利が0.050%から0.100%の間での降着相場となってしまった。

 欧米の長期金利は物価の上昇圧力の鈍さもあり、思ったほどの上昇とはなっていない。これもあり、日本の長期金利もこの水準で均衡が保たれることになった。しかし、このような環境がこの先、永遠に続くわけではない。

 この均衡が崩れた際、特に金利上昇圧力が掛かった際に、日銀はどのような対処をするのか。指し値オペを何度も使うようなことも考えづらい。さらに債券市場は流動性が低下している分、大きな衝撃に対しての抵抗力が失われているようにも見える。債券市場ではこのような潜在リスクが次第次第に増加しつつある。


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# by nihonkokusai | 2017-08-05 11:30 | 債券市場 | Comments(0)

1万円札廃止論に異議あり

 8月1日に日本経済新聞に掲載された「日本は1万円札を廃止せよ」という記事が注目された。これはハーバード大教授のケネス・ロゴフ氏の提言を記事にしたものである。

 この記事によると「現金決済が主流の日本では荒唐無稽と思われがちだが、ユーロ圏だけでなく、カナダやスウェーデン、シンガポールも高額紙幣の廃止を決めた。日本にはまず1万円札と5千円札を廃止することを提案したい」とロゴフ氏は語った。

 何故、高額紙幣を廃止すべきなのか。その理由についてロゴフ氏は以下のように語っている。

 「高額紙幣を廃止して現金取引を電子決済などに置き換えれば、銀行口座などからマネーのやりとりを捕捉できるようになり、脱税の機会は大きく減る」

 2016年8月にインドのモディ首相がテレビ演説で、高額紙幣の1000ルピー(約1600円)札と500ルピー(約800円)札を演説の約4時間後から無効にすると突然発表した。これはインド国内でテロ行為を行っている過激派グループが、紙幣を大量に偽造し活動資金に充てているためとした。また市民の間でも、脱税目的の現金決済が行われていると説明していた。

 日本では高額紙幣の流通量が多いことは確かである。しかし、その理由として偽造紙幣が大量に出回っているわけではなく(むしろ逆)、脱税目的でアタッシュケースに詰めて現金をどこかに大量に隠している人が多いとも思えない。

 ただし、昔、政治家が大量の割引金融債(無記名)の券面を大量に隠していたことが発覚したように、脱税目的での現金保有の可能性はありうる。しかし、脱税目的の保有が普通にあるというのであれば、日本の国税庁は全く仕事をしていないのか、ということにもなりかねない。

 このあたりについて野村総合研究所の研究員のひとりが「日本での高額紙幣廃止論」というタイトルのレポートを出していた。これによると日本の1万円札を中心とした現金保有の理由を下記としていた。

・現金決済を好む国民性があること

・1990年代末には銀行不安を背景に銀行預金から現金へと資金をシフトさせ、その後もその現金が手元で保有される傾向が続いてきた

・長期化する低金利のもとで銀行預金を保有するインセンティブが低下したこと

・他国と比べて治安が良いため、現金を持ち運ぶことの不安が比較的小さいこと

・どのような地域でも現金が不足する事態が生じにくいこと

・紙幣のクリーン度が高いことなど

 現金決済を好む国民性についてはクレジットカード利用率が米国などに比べて低いことなどからも確かであるが、それ以上に日本では現金が持ちやすく、使いやすいということが大きな理由になっているのではなかろうか。この研究員が指摘するように治安の良さも影響していよう。さらに偽札の流通が他国紙幣に比べて少ないことも挙げられよう。

 この研究員による理由のなかで、あれっと思ったのが、「どのような地域でも現金が不足する事態が生じにくいこと」、「紙幣のクリーン度が高いこと」というものであった。これは当然そうではあるが、理由としては気がつきにくい。これは我々にとっては当たり前に思っているためである。これが当たり前になっているのは、この1万円札を発行している日銀の努力があってのものである。日銀のよる現金取引のインフラが整備されているからこそ、日本では現金が使いやすくなっている側面がある。

 ちなみにこのレポートを書いた野村総合研究所の研究員は木内登英氏であった。先日、日本銀行審議委員を退任したばかりの木内氏である。名前をみて、このレポートの内容もなるほどと思った次第である。


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# by nihonkokusai | 2017-08-04 09:48 | 日銀 | Comments(0)

約3京9000兆円の金融商品に関わる指標、LIBORの消滅問題

 英国金融管理庁(FCA)のベイリー最高経営責任者(CEO)は7月27日、ロンドン市内で講演し、短期金利の国際指標であるところのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を2021年末に廃止する方針を明らかにした。

 LIBORとは「London InterBank Offered Rate」の略で、一般的には民間組織の英国銀行協会(British Bankers Association)が複数の銀行の金利を平均値化して、ロンドン時間午前11時に毎日発表するBBA LIBORのことを指している。金融自由化の流れの一環として、1986年に現行方式がスタートした。

 米ドルだけでなく英ポンド、日本円、ユーロ、豪ドル、ニュージーランドドル、スイスフラン、カナダドル、デンマーククローネの9通貨について発表され、歴史もあり短期金利の重要な指標となっている。

 LIBORは、英国の住宅ローンや預金金利などに直接影響する金利であるともに、国際的な融資などにおける国際金融取引の基準金利として、またスワップ金利などデリバティブ商品の基準金利としても利用されている。世界で350兆ドル(約3京9000兆円)余りの金融商品のグローバルな指標金利として利用されてきた。

 そのような重要な指標が何故、廃止されるのかといえば、LIBORをめぐっては、2012年に欧米主要金融機関が金利を不正操作していた問題が発覚したためである。

 そもそもの発端は2008年4月にウォールストリート・ジャーナルが、LIBORがもはや信頼できないかもしれないとの懸念を銀行家やトレーダーが抱いていると報道したことによる。これを受け、英国銀行協会(BBA)が調査に乗り出した。  英米当局は1年以上にわたる捜査で、バークレイズが2005~2009年に虚偽申告を繰り返し、経済の実態とかけ離れてLIBORを上げ下げしたと結論づけた。この調査では、バークレイズのトレーダーがLIBOR担当者に「1か月物と3か月物の数値をできる限り高くしてほしい」と頼んだメールも見つかったようだが、それとは反対に銀行協会に申告する数字が他行よりも高いことを経営陣が嫌がり、実態に比べて低い数字を出したケースもあったようである。これはサブプライム問題等からリーマン・ショックにいたる間、金融機関への懸念が極度に高まり、銀行数字が高いのは経営不安の裏返しだと市場に解釈されるのを恐れたためとみられる。

 2016年7月にロンドンの刑事法院の陪審は、詐欺罪に問われたバークレイズの元トレーダーら3被告に有罪の評決を下した。

 今後、5年間の間にLIBORは段階的に廃止される予定で、新たな取引の基準となる別の指標金利を見いだす必要がある。金融機関などではシステムそのものへの修正も余儀なくされることが予想される。いまのところ大きな混乱は出ていないものの、今後の動向には注意が必要となろう。


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# by nihonkokusai | 2017-08-03 09:56 | 金融 | Comments(0)

日銀の物価目標はなぜ柔軟性を失ってしまったのか

 7月19、20日の金融政策決定会合が佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員にとっては最後の会合となった。「金融政策決定会合における主な意見」から佐藤委員と木内委員の発言とみられるものを確認してみたい。

 「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するという方針は、政策の自由度を制約しており、先行き の金融政策の正常化を困難にする。2%の「物価安定の目標」の達成は、中長期の目標と明確に位置付けるべきである」

 2012年12月16日の衆院選挙の結果を受けて、安倍自民党総裁が政権を担うことになったが、早速、安倍総裁は政権公約にも掲げていた「大胆な金融緩和」に関して動きを示した。もちろん金融緩和を行うのは政府ではなく日銀であり、「日銀と政策協定を結んで2%の物価上昇目標を果たしていく」と安倍総裁は表明した。さらに日銀が物価上昇率目標(インフレターゲット)の設定を見送れば、日銀法改正に踏み切る考えを明らかにした。

 日銀はすでに2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより、実質的なインフレ目標策を導入していた。これは同年1月にFRBが物価に対して特定の長期的な目標を置きPCEデフレーターの2%に置いたことで、日銀も同様の目標値を設定したとみられる。しかし、これに対し安倍首相は1%ではなく2%とさせ、しかも曖昧さを除去させようとした。FRBの目標値はあくまで長期的な目標であり柔軟であるものの、それでは甘いというのが安倍首相というかそのバックにいたリフレ派の主張である。

 2013年1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった(日銀法改正までちらつかせて)「物価安定の目標」を導入することを決定した。物価安定の目標については物価安定の目途を修正し、目途(Goal)を目標(Target)とした上で、その目標を消費者物価指数の前年比上昇率で2%とした。これは欧米中銀のようなフレキシブルなインフレーション・ターゲティングではなかった。政府と日銀の共同声明まで出して、日銀に対し厳格な物価目標を押しつけた格好となった。

 佐藤委員と木内委員が就任したのはこれらのあとの2013年7月であった。その後の4年間をみて、「2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成するという方針」そのものを疑問視し、政策の自由度を取り戻すべきとしたのは当然のことである。

 しかし、安倍政権が要求している以上、安倍政権が物価目標に対する認識を変えるか、安倍政権そのものがなくならない限りは、現在のような身動きとれない日銀の金融政策が今後も続くことになる。主な意見では次のような発言もあった、これも佐藤委員か木内委員のものであろう。

 「物価目標の達成時期の先送りを繰り返すことは、日本銀行の物価見通しの信認にかかわる。「できるだけ早期に」実現するスタンスを残しつつ、物価の安定が経済・金融の安定を含む包括的な概念であることを踏まえ、「物価安定の目標」を中長期的かつ柔軟な目標と位置付けることが適当である。」


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# by nihonkokusai | 2017-08-02 09:45 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価目標はなぜ柔軟性を失ってしまったのか

 7月19、20日の金融政策決定会合が佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員にとっては最後の会合となった。「金融政策決定会合における主な意見」から佐藤委員と木内委員の発言とみられるものを確認してみたい。

 「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するという方針は、政策の自由度を制約しており、先行き の金融政策の正常化を困難にする。2%の「物価安定の目標」の達成は、中長期の目標と明確に位置付けるべきである」

 2012年12月16日の衆院選挙の結果を受けて、安倍自民党総裁が政権を担うことになったが、早速、安倍総裁は政権公約にも掲げていた「大胆な金融緩和」に関して動きを示した。もちろん金融緩和を行うのは政府ではなく日銀であり、「日銀と政策協定を結んで2%の物価上昇目標を果たしていく」と安倍総裁は表明した。さらに日銀が物価上昇率目標(インフレターゲット)の設定を見送れば、日銀法改正に踏み切る考えを明らかにした。

 日銀はすでに2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより、実質的なインフレ目標策を導入していた。これは同年1月にFRBが物価に対して特定の長期的な目標を置きPCEデフレーターの2%に置いたことで、日銀も同様の目標値を設定したとみられる。しかし、これに対し安倍首相は1%ではなく2%とさせ、しかも曖昧さを除去させようとした。FRBの目標値はあくまで長期的な目標であり柔軟であるものの、それでは甘いというのが安倍首相というかそのバックにいたリフレ派の主張である。

 2013年1月22日の金融政策決定会合で、日銀は政府からの要請のあった(日銀法改正までちらつかせて)「物価安定の目標」を導入することを決定した。物価安定の目標については物価安定の目途を修正し、目途(Goal)を目標(Target)とした上で、その目標を消費者物価指数の前年比上昇率で2%とした。これは欧米中銀のようなフレキシブルなインフレーション・ターゲティングではなかった。政府と日銀の共同声明まで出して、日銀に対し厳格な物価目標を押しつけた格好となった。

 佐藤委員と木内委員が就任したのはこれらのあとの2013年7月であった。その後の4年間をみて、「2%の物価安定の目標をできるだけ早期に達成するという方針」そのものを疑問視し、政策の自由度を取り戻すべきとしたのは当然のことである。

 しかし、安倍政権が要求している以上、安倍政権が物価目標に対する認識を変えるか、安倍政権そのものがなくならない限りは、現在のような身動きとれない日銀の金融政策が今後も続くことになる。主な意見では次のような発言もあった、これも佐藤委員か木内委員のものであろう。

 「物価目標の達成時期の先送りを繰り返すことは、日本銀行の物価見通しの信認にかかわる。「できるだけ早期に」実現するスタンスを残しつつ、物価の安定が経済・金融の安定を含む包括的な概念であることを踏まえ、「物価安定の目標」を中長期的かつ柔軟な目標と位置付けることが適当である。」


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# by nihonkokusai | 2017-08-02 09:45 | 日銀 | Comments(0)

金融緩和で雇用が回復という理屈はおかしい

 7月19、20日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見が28日に公表された。このなかから気になったところをピックアップしてみた。

 「現在の金融政策を続けていけば、失業率がさらに低下し、需給ギャップのプラス幅が拡大するもとで、物価は経験則に沿って上昇していく。需給ギャップと物価の関係には半年ほどのラグがあるので、需給ギャップの値が変わらなくても、物価は上がっていく。現実の物価が上昇すれば、予想物価上昇率が高まり、それがさらに現実の物価を上昇させるメカニズムも存在する。」

 現在の金融政策が失業率を低下させているという前提であるが、緩和環境が雇用の改善に対して影響がないとまでは言わないまでも、金融政策によって雇用が改善しているわけではない。そもそも日銀の金融政策の目的には雇用はうたっておらず(FRBは目標に含む)、物価の安定が目的のはずであり、金融政策により物価目標を達成することで雇用の改善も図られるというものがシナリオではなかったのか。物価が上がらず雇用だけが回復するというのであれば、その要因としては金融政策以外の要因が大きいとみるのが妥当ではなかろうか。

 物価の経験則も意味がわからない。需給ギャップと物価の関係には半年ほどのラグがあるというのも、元々は金融緩和と物価のギャップのはずであり、すでに異常な緩和を続けて4年経つが、どれだけラグがあるというのであろうか。

 「物価が弱めの動きとなっている主因は、2014年の消費税率引き上げ後の消費の回復が弱いために、企業が、人手不足により人件費が増加する中でも、価格を引き上げることができずにいることである。2%の「物価安定の目標」の達成のためには、消費拡大により需給ギャップを改善し、企業の価格設定行動を強気化していく必要がある。」

 消費の低迷を単純に2014年の消費税率引き上げによるものと決めつけるべきではないし、その影響がここまで継続するとみるのもおかしい。消費の伸びの鈍化も消費増税以外の要因によるものとみるのが普通ではなかろうか。そもそも消費増税で金融緩和の効果が削がれ、物価上昇も消費回復も阻害されたものの、雇用については金融緩和によって、まれにみる回復を遂げているとの認識は明らかにおかしい。

 「「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」には、時間はかかるものの、需給ギャップを確実に改善し、消費も拡大させるメカニズムが組み込まれている。2%の「物価安定の目標」が持続的に達成されるまで、この政策を続けるべきである。」

 すでに4年という月日が流れており、時間が掛かりすぎと言うより、異次元緩和にはそのようなメカニズムが組み込まれていないと見た方が素直ではなかろうか。あくまで非伝統的手段を含む異常ともいえる金融緩和は、物価対策などではなく、世界的な金融経済危機に対する市場の不安除去機能が重視されていたものであった。それを危機が後退するような時期にはじめてしまった日銀の異次元緩和は、むしろ金融緩和による直接的な効果に対し疑問を抱かせるものとなってしまっているようにもみえる。



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# by nihonkokusai | 2017-08-01 09:33 | 日銀 | Comments(1)

日銀の金融政策では反対意見に耳を傾けることも必要では

 「一人の委員は、2%の「物価安定の目標」は金融政策の自由度を奪っていると指摘したうえで、これを中長期の目標へと柔軟化しつつ、金融政策の正常化に向けた道筋として、将来の政策金利引き上げに関わる経済条件を示していくことが適当であると述べた」

 これは 6月15、16日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨に記述されていたものである。その内容からみて、金融政策決定会合において長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、資産買入れ方針と両方で反対票を投じていた佐藤健裕委員、もしくは木内登英委員による発言とみられる。

 木内委員は今年2月の山梨での公演で以下のように述べていたことで、上記の発言は木内委員のものではなかろうか。

 「2%の「物価安定の目標」は中長期的に目指す目標とし、2%の「物価安定の目標」と整合的な強い経済の実現を政府や企業とともに目指すための一種の象徴として位置付けることが良いと私は考えています。」

 7月1日にカナダ銀行が7年ぶりの利上げを決定し、正常化に向けて舵を切ったFRBに追随した最初の中央銀行となった。さらにイングランド銀行やECB、スウェーデン中銀(リクスバンク)などが緩和バイアスを解除し、利上げもしくはテーパリングを模索しようとしている。

 しかし、英国など除いて総じて物価指数は2%に届いていない。これは正常化を進めている米国も含まれる、それにも関わらず何故、正常化に踏み出すのか。

 ECBのメルシュECB専務理事は「状況が正常化する中で、非伝統的政策が引き続き必要になる可能性は低い」と発言していた。百年に一度とされる世界の危機的状況は後退してきており、過剰とも言える金融緩和策を修正する必要があり、金利もファンダメンタルに即した水準に戻る必要性がある。このために正常化を進めようとしている。そのためには物価目標に固執せず柔軟な対応が必要との認識ではなかろうか。

 しかし、日銀は2%の物価目標に固執するあまり、欧米の中央銀行のような柔軟な対応が取りづらくなっているようにも思われる。木内委員の意見はあくまで少数派の意見ではあるものの、その意見にも耳を傾けることも必要ではなかろうか。

 その木内委員と佐藤委員は7月23日に審議委員の任期を終えた。あらたに片岡剛士氏と鈴木人司氏が審議委員に就任した。

 日銀の金融政策決定会合では必ずしも全員一致で決定する必要はなく、むしろ反対意見も重要なものとなり、その反対意見が今後の金融政策の道筋を作ることもありうる。このあたりも是非、政策委員の方々には考慮願いたいと思う。


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# by nihonkokusai | 2017-07-31 10:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきでは

 7月28日に発表された6月の全国消費者物価指数は総合で前年比プラス0.4%、生鮮食料品を除く総合(コア)で前年比プラス0.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)で前年比ゼロ%となった。これは3つとも5月の数字と同じとなった。

 電気代の上昇幅が拡大したほか、都市ガス代がプラスに転じたものの、ガソリンなどの上昇幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅は0.01ポイント縮小。生鮮食品を除く食料により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大し、家庭用耐久財により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大していた。

 先行指標となる東京都区部の7月のCPIは総合が前年比プラス0.1%、コアが前年比プラス0.2%、コアコアは前年比マイナス0.1%となっていた。

 日銀の物価目標であるところの全国コアCPIの前年比は今年1月にプラスに転じたあと、プラス圏を維持しているが、目標値の2%にはまだかなり距離があり、日銀も前回の展望レポートで物価目標の達成時期を2019年度頃に先送りしている。

 その日銀はコアCPIや日銀版コアコアCPIなど値動きの大きな品目を除去した指数の方が、日本経済の潜在的な供給力に対する需要の過不足を示し、景気の良し悪しを反映するとされる需給ギャップの動きと連動する度合いが大きいとしていた(日銀のレポートより)。

 しかし、コアコアをみると6月の全国の指数でゼロ%、7月の東京都区部はマイナスとなっており、日銀の物価目標からはさらに遠ざかることになる。

 しかもこの数字は2013年4月に量的・質的緩和政策を決定し、その後、マネタリーベースは増加し続けているだけでなく、マイナス金利政策や長期金利操作まで加えた結果である。日銀の金融政策が物価の押し上げには寄与していないことは、これをみても明らかであろう。

 原油価格の下落や消費増税による影響で上昇が抑制されているとの見方もおかしい。ここにきての物価上昇はその原油価格の下落が止まり反発してきたことが影響している。前回の消費増税は2014年4月であり、それによる直接的な影響は1年後になくなる。間接的な影響が仮に残っていたとしても、それは具体的に立証できるものではない。むしろここにきての景気の底堅さなどからは、すでに消費増税による物価への影響はほとんど無視できるものとなっているのではなかろうか。

 日本の物価が上がらないのは何故か。それは日銀の金融緩和が物足りなかったわけではないことをこの4年で日銀は明らかにした格好となった。それであれば、非常時の対応とすべき異次元緩和の修正をそろそろ加えてもおかしくはないのではなかろうか。市場による過剰反応が恐いこととは理解できなくもないが、異常な政策が潜在的な副作用を高めていることも確かで、それが債券市場の機能不全等に現れている。日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきではないかと思う。


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# by nihonkokusai | 2017-07-30 12:41 | 日銀 | Comments(0)

結果としてFRBは市場をうまくコントロール、イエレン議長続投期待も

 7月26日のFOMCでは、全員一致で金融政策の現状維持を決めた。6月のFOMCで利上げを決定した際に金利据え置きを主張して反対票を投じたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も、今回の現状維持には賛成した格好となった。

 この現状維持は市場参加者の予想通り。問題は今後予定されるバランスシートの縮小開始のタイミングと年内あと一回とされる利上げの時期、もしくはその有無となった。

 4兆5000億ドル規模の保有証券の縮小について声明文では、前回の「年内に着手する」としていたものが、「比較的早く開始する」に修正されていた。これにより次回9月のFOMCにおいてバランスシート縮小を決定し、10月にも開始されると見込まれる。

 手段としては、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなる。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。

 そしてもうひとつの注目材料となったのが、年内あと一回の利上げの有無となった。何事もなければ9月のFOMCでバランスシート縮小を決定し、やはり議長会見の予定される12月のFOMCで利上げを決定するというのが大方の予想となっている。

 これに対し今回のFOMCの声明文では、足元の物価水準に関して、前回の「inflation is running somewhat below the Fed's 2% target」という表現から「inflation is running below the Fed's 2% target」という表現に変わった。これをみて、市場では12月の利上げ観測に不透明感が出たとして米長期金利が低下し、ドルが下落した。

 7月11日に半期に一度行われる米下院金融委員会の公聴会で、FRBのイエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘した。ここ数か月の物価指標が著しく低水準にとどまっていることはFRBも認識しており、それが今回の声明文の表現修正となったとみられる。しかし、それは一時的要因が物価上昇を抑制しているとの認識に変わりはない。

 今後の物価見通しの部分に関しては今回の声明文では表現は変えていない。ここから読み取れるのは、FRBの予想通りに一時的要因が物価上昇を抑制していることが明らかになれば、予定通りに12月に利上げを決定するということになる。しかし、予想に反して物価の低迷が続いた場合には、利上げが先送りされる可能性は確かに存在する。

 今回の市場での反応は、ハト派的な表現修正とみなした過剰反応との見方もできるが、FRBの正常化に向けた動きは慎重であるとの見方も反映したのかもしれない。それが結果として米国株式市場の主要指数の過去最高値更新を招いたり、米長期金利の上昇を抑制しているのであれば、結果論ではあるがFRBはうまく市場をコントロールしているかにみえる。そうなるとイエレン議長への評価はさらに高まり、続投への期待も高まることも予想される。


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# by nihonkokusai | 2017-07-28 10:00 | 中央銀行 | Comments(0)

ギリシャが3年ぶりに国債発行を再開したことの意味

 ギリシャ政府は25日に3年ぶりに国債発行を再開し、5年債で30億ユーロ(3900億円)の国債を発行した。

 今年の6月には増税や年金の削減などの構造改革が進んだとして、一時中断されていた融資が再開され、ユーロ圏は85億ユーロの追加融資に応じると決めた。さらに今月20日に、債務軽減策の具体化を条件に国際通貨基金(IMF)が融資再開を決めたことで国債発行再開が可能となった。

 今回の5年債の発行利回りは4.625%と2014年4月に発行した5年債の利回り4.950%を下回った。これはECBの緩和政策によりで国債利回りが低下していることも追い風となった。ただし、投資家の申込額は計65億ユーロと3年前の200億ユーロには及ばなかった。

 ギリシャ政府は現行の第三次金融支援が期限切れを迎える来年の8月までに複数回の追加発行を目指す考えも示している。

 このギリシャによる国債再発行の背景には、緊縮財政を政府が進めていることがあり、チプラス首相はさらなる緊縮財政を行うことを約束している。しかし、これに対しては国民の反発も大きいようである。それでも、少なくとも国債発行を再開できるところまで、特に市場の危機感が後退しているということを示すものとなろう。

 ECBのドラギ総裁は20日の理事会後の記者会見で「(声明文の変更などの)議論は秋に行う」と明言した。これは緩和バイアスの解除を検討するのではないかと観測がある。 ドラギ総裁は今年のジャクソンホール会合に3年ぶりに出席するが、ここで何かしらの政策変更の示唆があるに違いないとの観測を市場は抱いている。そこに「議論は秋に行う」と示した以上、緩和バイアスの解除に向けたスケジュールは存在している可能性がある。

 ECBのメルシュECB専務理事は「状況が正常化する中で、非伝統的政策が引き続き必要になる可能性は低い」と発言していた。ECBの緩和バイアスの解除そのものの理由はまさにここにある。状況が正常化していることを示す象徴的なものとして、このギリシャによる国債発行の再開があげられよう。


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# by nihonkokusai | 2017-07-27 10:07 | 国債 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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