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欧米の中央銀行による金融政策の正常化に向けた動きのひとつの背景

ここにきて欧米の中央銀行のトップから相次いで正常化に向けた動きを進めるような発言が相次いでいる。そのひとつのきっかけがBISの年次報告書にあった。

国際決済銀行(BIS)とは、1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織で、スイスのバーゼルに本部がある。ドイツの第1次大戦賠償支払に関する事務を取り扱っていたことが行名の由来だが、それ以外にも当初から中央銀行間の協力促進のための場を提供しているほか、中央銀行からの預金の受入れ等の銀行業務も行っている(日銀のサイトより引用)。

そのBISによる直近の年次報告書のなかで、金融政策正常化の議論をしていたことが示されている。「インフレ率が上がらなくとも、長期にわたり金利を低過ぎる水準に維持すれば、金融安定とマクロ経済のリスクを将来的に高めかねない。債務は引き続き累積し、金融市場のリスクテークは勢いを増すことになる」と指摘していた。

すでに正常化に向けて歩みをはじめているFRBは利上げとともにバランスシート縮小も進めることが予想されている。保有証券縮小計画については9月のFOMCで決定される可能性が高い。そして年内あと一回の利上げは12月のFOMCで決定されるとの予想になっている。

27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。つまりECBが年内にも理事会で利上げを検討する可能性が出てきた。ただし、いまのところ具体的な日程が示されているわけではない。

イングランド銀行のカーニー総裁も同フォーラムで、中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、金融政策委員会(MPC)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べていた。MPCでフォーブス委員だけが利上げを主張していたが、前回からマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わった。さらにチーフエコノミストのアンディ・ホールデン理事からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識が示された。年内のMPCは8月、9月、11月、12月に予定されている。やはり9月と12月のMPCに特に注意したい。

イングランド銀行にとっては英国のEU離脱による影響も危惧されようが、それによるポンド安と物価高も無視できなくなりつつある。ユーロ圏については金融機関等への問題やギリシャの財政問題等も残るが、少なくとも金融危機のリスクは後退というか沈静化したというのが、共通認識となっているのではなかろうか。

いわゆるBISビューで正常化に向けた議論が行われていた意味は大きいように思われる。6月29日~7月2日の日程でスイスのバーゼルで開かれた国際決済銀行(BIS)国際会議には日銀からは中曽宏副総裁が出席していた。正常化向けた動きに取り残されている日銀が今後、どのような動きをみせてくるのかも注目したい。


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# by nihonkokusai | 2017-07-10 10:04 | Comments(0)

日銀は長期金利の上昇に対し指し値オペで阻止、これは何のため?

7月7日に日本の10年国債利回り(長期金利)は0.105%に上昇した。これを受けて日銀は指し値オペを実施し、これ以上の長期金利の上昇を阻止した。なぜ日本の長期金利が上昇し、それをどうして日銀が押さえ込む必要があったのか。

まずは日本の長期金利上昇の背景から見てみたい。

27日にポルトガルで開催された欧州中央銀行(ECB)の年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。

FRBが正常化に向けた歩みを進めるなか、英国の中央銀行であるイングランド銀行も利上げに向けた討議を進めるとし、カナダ銀行(中央銀行)も利上げの可能性を指摘するなど、欧米の中央銀行が正常化に向けた動きをみせはじめた。そのなかにあって正常化とは距離があるとみられたECBも緩和バイアス解除を意識させる動きを見せ始めたのである。

6日に公表された6月のECB理事会の議事要旨では、必要に応じて資産買い入れを拡大するとの従来の文言について当局者が削除することを協議していたことが明らかになった。これに伴う市場の混乱を強く警戒し、行動を急がない公算が大きいとも指摘してはいたが、ECBの方向性は追加緩和にはないことがはっきり示された。

欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を切りつつあり、これを受けて欧州の国債利回りが上昇し、FRBが利上げを行っても反応の鈍かった米国債利回りも欧州国債の利回り上昇を受けてあらためて上昇しはじめた。

ECB理事会の議事要旨の内容受けて、7月6日のドイツの10年債利回りは0.56%に上昇した。6月22日には0.25%近辺にいたことから、そこから倍以上の利回り上昇となった。フランスの10年債利回り0.91%と6月26日には0.60%近辺にいたがこちらも大きく上昇している。英国の10年債利回りも1.31%と6月20日頃は1%近辺にいたがそこから0.3%程度の上昇となっていた。

この欧州の国債の売りは米国債にも波及し、米10年債利回りは6日に2.36%に上昇した。米10年債利回りも6月26日に2.13%近辺におり、ここから欧州の国債利回りと一緒大きく上昇していた。

この海外での金利上昇を受けて7日の日本の10年債利回りは0.105%に上昇した。これにどう日銀が対処するのかが注目された。

今年2月3日に債券市場では日銀の長期金利コントロールのゼロ%の範囲を探るような動きを見せ、通常の国債買入での増額がなかったことを確認後、10年債利回りは0.150%まで上昇した。これに対し日銀は変則的な時間帯の12時半に(オペタイムは午前は10時10分、午後は通常14時)指し値オペを実施した。その水準が10年債利回りの0.110%となっていた。

7日に10年債利回りは2月3日の指し値オペの水準に接近したことで、日銀は10時10分という通常の時間帯で予定通りに長期と超長期ゾーンのオペをオファーし、その際に5年超10年以下のオファー額をこれまでの4500億円から5000億円に増額した。市場はこの増額はある程度予測していたようである。指し値オペについては見方は可能性は薄いかとの見方が強かった。

ところが日銀は通常のオペと同時に固定利回り方式での残存期間5年超10年以下の国債買入もオファーした。つまり伝家の宝刀といえる「指し値オペ」である。その水準は10年利付国債347回の買入利回りで0.110%となった。つまり2月3日と同水準である。日銀としては0.110%が絶対防衛ラインということを示した格好となった。。

7日の10年債利回りで0.110%はつけていたわけではなく、今回は2月3日のように実弾ではなかった(3日の10年債利回り水準は0.140%近辺となっていた)。通常オペで増額した上にストッパーを入れてきた格好である。ただし、利回り水準がそこまで上がっていなかったため、今回は2月3日のように応札する業者はいなかった。今回はまさに来るなら来い的なオペレーションといえた。

これを受けて10年債利回りはいったん0.085%に低下した。しかし市場も慣れてきたのか、昨年11月や今年2月の指し値オペほどのインパクトはなかった。ただし、外為市場ではこれをみて日銀と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いが意識されて、ドル円は一時114円台をつけていた。

しかし、欧米の中央銀行が緩和バイアス解除に向かうなか、頑なに異次元緩和に固執する日銀の姿のほうが異様にみえる。長期金利をここで止めて、どのようにして物価が上がるというのであろうか。債券市場の機能喪失と引き換えに長期金利コントロール含めた異常な緩和策を進める日銀に対して、疑問を感じる人達も次第に増えつつあるように思われる。

今回日銀が0.110%で指し値オペを入れたのは、2月3日の同水準とすることで長期金利のコントロール範囲の上限は0.110%であることを市場に意識させようとしたものとみられる。むしろここで行動を取らなければ市場は日銀も緩和バイアス解除を意識しているのではと勘ぐってしまうことを恐れた可能性もある。しかし、これはつまり日銀だけが正常化に向けた動きから取り残されることになる。

日銀が物価目標を達成していない以上は当然だ、とのご意見もあるかもしれない。しかし、日銀は異次元緩和で物価そのものを簡単に動かせないことを4年以上掛けて証明してしまった。欧米の物価も目標値に届いていないケースもあれど、2%近くにいることは確かである。ただし、これは欧米の中央銀行の金融政策に負うところというよりも、そもそも欧米の物価は2%近くに収斂しやすく性質がある。それが日本の消費者物価指数では2%ではなくゼロ近傍にある点に大きな違いが存在する。

デフレ脱却云々の前にこういった物価指標の性格も意識しなければならず、少なくとも日銀が長期金利を0.110%に押さえつければ、消費者物価指数が2%に上昇するという理屈はどう成り立つというのであろうか。これにより債券市場の価格発見機能はますます失われ、取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。海外の長期金利の上昇ばかりでなく、3日の日銀短観などをみても本来、ある程度上昇するのが自然に見える長期金利を無理矢理抑えて、日銀はいったい何をしたいのか。あらためて問いたい。


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# by nihonkokusai | 2017-07-08 09:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀 vs 債券市場参加者

日銀で行われた第5回「債券市場参加者会合」の議事要旨が5日、日銀のサイトにアップされた。この中から市場参加者による「債券市場の機能度・流動性についての見方」を見てみたい。

「イールドカーブ・コントロールの導入以降、長期ゾーンを中心にボラティリティが低下し、価格変動に対する安心感が広がっている。」

最初はひとまず日銀の政策の効果について好意的な意見が載せられているが、

「ボラティリティの低下は、一見機能度改善にも見えるが、実際には取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。」

こちらが本音の部分といえよう。取引量の減少も無視できないが、既存の市場参加者の退出は、今後の市場の大きな不安要因となりかねない。

「現在の市場は、日本銀行のコントロールの下で安定しているが、金利水準もボラティリティも極端に低い市場環境の下で、これまでの日本国債のプレーヤーが市場から退出するなど、参加者層が薄くなっている。」

金融市場への直接参加者は金融業界全体からみるとそれほど多くはない。しかもここでは経験が重要な要素となる。日銀の異次元緩和は債券市場の参加者を減らすばかりか、金利が動くという経験もさせなくさせている。このため下記のような意見も出ている。

「中長期的に金利を市場に委ねるとなった際に、市場参加者の厚みが足りないが故にボラティリティが急に上昇することを懸念。参加者層の厚みや多様性も市場機能の一つだと思うので、引き続き留意して欲しい」

今の日銀にとって金融政策の正常化の動きは「他人事」かもしれないが、政権の行方等次第で状況も変わりうる。また、何かのきっかけで金利が大きく動く懸念は現在の日銀のコントロール下であっても存在する。

「良くコントロールされていると思うが、一方で債券市場の価格発見機能は失われている。株価は上昇し、日本経済の状況も良くなっているなかで、長期金利が殆ど反応しないという状況は健全ではない。」

このあたりの歪みも知らず知らずに蓄積されている可能性がある。価格発見機能は失われているのではなく、日銀が力尽くで見せなくさせているだけである。

「現状、市場機能が低下しているとすると、調節運営のなかでもう少し変動幅を許容するようにしないと、実際にマーケットで金利が動き始めた際に市場が対応できないのではないかと危惧している。」

少しでも市場参加者の経験を積み上げることも大事であり、日銀もある程度、長期金利の変動幅を許容したほうが、マーケットの機能は多少なり回復しよう。日銀はマイナス金利を残したいのであれば、長期金利の目標値をもう少しフレキシブルにしてプラス0.5%あたりまで許容するなりすれば、債券市場の機能がある程度改善してくるのではなかろうか。本来市場に委ねていたはずの長期金利である以上、変動幅の許容範囲をある程度大きく持っても問題はないのではなかろうか。それが今日の日銀の国債買入等で試される。


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# by nihonkokusai | 2017-07-07 09:39 | Comments(0)

都議選受けての安倍政権の行方が日銀にも影響か

7月2日の東京都議会選挙の結果は、小池知事の支持勢力が79議席を獲得し圧勝となった。自民党は選挙前の57議席から23議席となり、歴史的な敗北を期した。都知事選の勢いにのって新党を立ち上げ、新人候補を中心に大量の当選者を獲得するというパターンは、今年のフランスの大統領選挙でのマクロン氏の勝利とその後の国民議会(下院)選挙でマクロン大統領の新党「共和国前進」グループが大勝した流れにも通じる。

都議会議員選挙の結果がそのまま国政選挙にも影響するのか。今回の都議選を見る限り、受け皿さえあれば安倍一強と言われた安倍政権を揺るがす可能性があることを示した。現在の自民党政権の強さは、野党の敵失の面も大きく、野党よりもまだましな政権なのでとの認識も強いための支持ではなかろうか。しかし、ここにきてその支持率も低下基調となっており、都議選の結果がその傾向を顕著に示すことになった。

今後は安倍政権の求心力の低下により、じわりじわりと影響が出てくることが予想される。安倍政権の支持率低下が自民党の支持率低下に影響を及ぼすことになれば、自民党内で対策を講じる必要性が意識されるかもしれない。フランスで若手の大統領が出たように、日本でも若い首相の誕生を期待する声も上がるかもしれない。あくまでいまのところは憶測に過ぎないが。

今後の安倍政権の求心力の低下が金融市場にどのような影響を及ぼすのか。安倍首相は都議選の結果を受けて、初心に帰ると発言していた。まさか2012年11月の輪転機発言に戻るわけではないと思うが、新アベノミクスを掲げるのではないかとの期待もあるようである。

すでに日銀は使えそうなあらゆる手段を講じてしまった。ここで政権による意向でさらに強力な金融緩和策を依頼されても、それに答えることは難しい。マイナス金利の深掘りもできなくはないが、期間の長い国債利回りが再びマイナス化してしまうと、以前に増しての金融機関からの反発が予想される。国債をさらに大量に買い入れることも数字上はありうるとしても現実的ではない。それ以前に、あれだけの緩和をしておきながら、物価目標達成がいっこうに見えない原因についてしっかり説明しなければ、追加緩和の必要性を納得させられまい。

それでは金融政策がだめなら財政政策か。国債残高が1000兆円に膨れあがったのは何が要因だったのか。これは特に自民党政権下での度重なる経済政策による影響が大きかったはずであり、社会保障費の抜本改革を進めなかったことによるものではなかったのか。

ここでさらなる財政政策を講じるのであれば、かなり効果的なものを打ち出さなければ、日本の財政悪化による悪影響の方がクローズアップされる懸念がある。いずれにしても新アベノミクスというよりも、当初のアベノミクスが何であり、その効果が具体的にあったのかを立証する必要も出てこよう。

安倍政権の求心力が落ちるとなれば、日銀にとっては突貫工事で作り上げたバベルの塔のような金融政策、「長短金利操作付き量的・質的緩和」を調整するチャンスなのかもしれない。欧米の中央銀行も出口に向けて歩き始めており、日銀も早めにリフレ的な発想を排除し、より現実的な政策に戻し、市場と向き合う必要があるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2017-07-05 09:50 | Comments(2)

FRBの物価目標のPCEデフレータ、5月はプラス1.4%

6月30日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)コアデフレータは、前年比プラス1.4%と5月のブラス1.5%から縮小した。これによる米債への影響は限られた。FRBのイエレン議長がここにきての物価の低迷は一時的との発言も影響していたためとみられる。

FRBの物価目標(正確には目安か)は、市場が注目しているPCEの食料とエネルギーを除いたコアデフレータではなく、総合指数の方である。ただし、こちらも5月分は前年比プラス1.4%となっていた。今年に入ってからの総合とコアのPCEデータは下記の通り(1月から5月分)。

PCE               1.9 2.1 1.8 1.7 1.4

PCE, excluding food and energy 1.8 1.8 1.6 1.5 1.4

米商務省が発表している個人所得(Personal income)、個人消費支出(Personal consumption expenditures)、PCEデフレータ(Personal Consumption Expenditure Deflator)についてもう少し説明を加えてみたい。

これは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得のこととなる。この個人所得は消費動向を決定付ける大きな要因ともみられている。賃金給与・賃貸・利子配当等といった所得の構成項目や、可処分所得・貯蓄率なども同時に発表される。

個人消費支出(PCE)とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものであり、米国のGDPの7割を占める個人消費の動向は米経済にも大きな影響を与えることで注目されている。特に名目個人消費支出の前月比などが注目される。

名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレータと呼ばれるものであり、これも同時に発表される。PCEデフレータ変化率がプラスであれば物価上昇、マイナスであれば物価下落と捉える。

特に価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレータ」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためといわれている。 FRBはコアPCEでみた物価見通しも公表している。

実は日銀の物価目標も当初は消費者物価指数の総合の前年比での2%であったが、展望レポートでの予測は消費者物価指数(除く生鮮)、つまり日本版コア指数で行っていた。2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定、物価目標を総合からコアに置き換えて統一させている。

ということで今後のPCEデフレータがイエレン議長の言うように一時的なものなのかによっては今後の利上げスケジュールに影響を与える可能性もある。ただし、その数値が常に2%を超えていなければ利上げは無理というのではなく、2%近くにいれば利上げの支障とはならないとみられる。


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# by nihonkokusai | 2017-07-04 09:58 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀の政策リスクは出口にあるのではなく出口がないこと

6月30日に発表された5月の日本の消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となった。日銀の物価目標となっている生鮮食料品を除く総合(コア)でも前年比プラス0.4%となっていた。ちなみに生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)と、エネルギーまで除いてしまうと前年比プラスゼロ%となっていた。

日銀は原油先物の下落による物価低下圧力を意識するあまり、基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)として消費者物価指数の「除く生鮮食品・エネルギー(新コアコア)」を独自に算出しているが、原油価格の上昇分が反映されるようなことになると、むしろ原油価格が回復すると、前年比では上昇幅が失われてしまう結果となる。

これをみるまでもなく、日本の消費者物価指数はエネルギー価格に影響を受けやすい。もちろん外為市場の動向の影響も受ける。それらの影響を除いてしまうと結局はゼロ近傍に収斂しやすい性質を持っていると見ざるを得ない。

日銀は1999年にゼロ金利政策、2001年に量的緩和政策、2006年にいったん量的緩和とゼロ金利政策を解除するが、2010年に包括緩和政策、2013年にはこれまでの緩和策は踏み込み不足とばかりに量的・質的緩和、2014年にはその拡大、2016年2月にはマイナス金利政策も加え、9月には長期金利操作も加えて、長短金利操作付き量的・質的緩和政策を打ち出してきた。

その間の消費者物価指数の変遷をみると、途中の上げ下げはあったものの、ほぼコアCPIの前年比はゼロ近傍で推移している。特に2013年の量的・質的緩和導入以降、マネタリーベスや日銀の国債保有額は大きく増え続けているが、それがCPIに影響しているとは考えられない。

物価は上がらなくても雇用環境は改善され、景気も回復基調を続けていることでアベノミクスは成功しているとの意見もある。しかし、アベノミクスの唯一の柱というべき日銀の異次元緩和は物価に影響を与えていない。物価改善ありきでの景気回復ではなかったのか。国民にとっては物価が上がらずに景気や雇用が改善してくれたほうがありがたい。ここには賃金が上がらないという問題も出てこようが、金融政策で賃金がどうにかなるものでもあるまい。

欧米の中央銀行が出口に向かいはじめているなか、日銀は2%の物価目標達成という看板を掲げてしまったことにより、身動きがとれなくなっている。物価目標を達成した際に日銀の財務状態が心配だとの意見もある。しかし、そもそも金融政策で物価は簡単に動かせないことを見事に証明してしまったが、それも認めることは当然できず、とにかく付け加えられるものを付け加えてしまったバベルの塔のような政策を続けて行くしかないということにリスクはあるまいか。日銀の政策リスクは出口にあるのではなく、出口がないことにある。


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# by nihonkokusai | 2017-07-02 10:35 | 日銀 | Comments(0)

日銀がいつになっても物価目標の2%を達成できない理由

今回、日本と米国の消費者物価指数のデータをエクセルに入れそれぞれを比較するグラフを作成してみた。日米ともにコアと呼ばれる指数で比較した。注意すべき点として、日本のコアCPIは値動きの大きな生鮮食料品を除いたものであり、米国のコアCPIは食品とエネルギーを除いたものであるという違いがある。また、日銀とFRBの物価目標は、日銀がコアCPIそのものであるのに対し、FRBはPCEデフレーターであるという違いもある。

ここではあくまで日米の物価の動きのクセのようなものを見るために比較してみたのである。手元のデータが2004年1月以降であったため、もっと長いスパンの分析とはならなかったが、それでも過去13年以上のデータの比較となった。

これにより一目瞭然なのが、米国のコアCPIが2004年から2017年にかけて、途中の上げ下げはあってもいずれ前年比で2%あたりに収斂するというものであった。これに対し日本ではゼロ近傍に収斂していることがわかる。

データを見ると、2004年1月から2017年4月までの日本のコアCPI前年比は最大値でプラス2.4%、最低値でマイナス2.4%、平均は前年比0.0%となっていた。それに対して米国は最大値でプラス2.9%、最低値でプラス0.6%、平均値で1.93%とほぼ2%となっていた。念のため、これは無理矢理数字を揃えたいので2004年以降にしたわけではない。

日銀が政府の意向も汲んで物価目標をCPIの前年比で2%に設定したのが2013年1月であり、同年4月に量的・質的緩和を決定し、2年程度で物価目標を達成するとした。しかし、その目標は達成されずゼロ近傍にいるのは何故なのか。  

それは中央銀行の金融政策に関わらず、原油価格や外為市場などの動向により多少の上げ下げはあっても日本の場合はコアCPIはゼロ近傍に収斂してしまう性質がある。それは米国では2%であった。つまり、そもそも設定目標に無理があったのではなかろうか。2006年に日銀が量的緩和政策の解除にあたって条件としたのが、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるとしていたが、この数字こそ今振り返っても適切であったように思われる。

だからこそ長きにわたるデフレを退治するため日本の物価の水準を無理矢理にでも2%に引き上げて欧米並みにすべきという意見もある。しかし、そもそも日本の消費者物価指数は帰属家賃等もあり、簡単には水準修正は難しいし、一時的に上昇下降してもゼロ近傍に収斂してしまう。それを日銀のマネタリーベースの増加とか長期金利の低下で動かせるものではない。

2008年あたりから2017年にかけては日銀の緩和策が実験場のように矢継ぎ早に打ち出されたが、このグラフを見ても、消費者物価指数が金融政策によって動いたような兆候はない。この間の消費者物価指数の動きは、むしろ原油価格や為替市場の動きによって説明が付きそうである。日銀にとって物価目標の達成はいつになっても見通せないのは、国債の買い入れなどでは物価は簡単に引き上げられない上に、現在のゼロ%近くの低成長下では物価もゼロ近傍に収斂してしまうためであろう。


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# by nihonkokusai | 2017-07-01 12:31 | 日銀 | Comments(0)

欧州中央銀行(ECB)も軸足を金融緩和縮小に修正か、取り残される日銀

27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は「景気回復が続く中、政策スタンスはより緩和的になる。ECBは政策手段のパラメーターを調整することで景気回復に対応することが可能だ。これは政策スタンスを引き締めるためではなく、ほぼ同じに維持することが狙いだ」と語った。

かなり回りくどい発言ながら、「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さが増し、裾野が広がっていることを指し示している。 デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」とも語っており、つまり景気回復が続くと金融緩和の効果がより大きくなるとし、その効果を一定に保つには緩和そのものを調整、つまり緩和策を縮小することを示唆した格好となった。

ドラギ総裁は、インフレ基調が持続的かつ自律的になるためには、かなりの金融緩和が依然必要だとも述べているが、引き締めではなく景気回復に即した緩和策の調整であるならば、それがありうることを示した。

6月8日のECB理事会では政策金利の据え置き、量的緩和プログラムの現状維持を決定した。政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正した。ただし、基調的インフレの指標は引き続き弱い状態にとどまっていると慎重姿勢は維持しており、大規模な刺激策を維持すると表明していた。債券購入プログラムの縮小について話し合われなかったとされている。

この時点で市場は、ECBはひとまず「追加緩和」に向けた前傾姿勢から中立姿勢に戻しただけと判断していた。テーパリングなどの緩和策の縮小にはまだ距離があるのではとの見方も強かった。しかし27日のドラギ総裁の発言から、9月の理事会あたりで緩和策の縮小を検討するのではとの観測が出てきた。

市場はこれに反応し、27日のドイツの10年債利回りは0.37%と前日の0.24%から大きく上昇した。フランスの10年債利回りも0.73%と前日の0.59%から大きく上昇し、英国10年債利回りも1.09%と前日の1.01%から上昇した。欧州の国債安を受けて米国債にも売りが波及し、10年債利回りは2.20%と前日の2.13%から上昇した。

ただし、複数の関係筋からとして、この総裁の発言について、総裁は弱めのインフレ期間への容認を示したものであり、差し迫った政策引き締めを意図していないとの見方を示した(ロイター)。これは急激なユーロ安や欧州の長期金利の上昇をみて、少しブレーキを掛けておこうとの意図も働いたとみられる。

FRBはすでに正常化路線を歩んでいる。27日の講演でイエレン議長は、少なくとも自分が生きているうちに再び金融危機が起きるとは考えていないと語っていたが、これこそFRBの正常化に向けた動きの背景にあろう。いまは非常時ではない。それにも関わらず非常時の対策を続けるのはやはりおかしい。

カナダの中央銀行であるカナダ銀行は利上げを模索しており、ポロズ総裁は次回7月の会合での利上げの可能性に言及した。イングランド銀行でも利上げ派が増えてきていたが、ついにカーニー総裁も今回のECBのフォーラムで中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、MPC(イングランド銀行の金融政策を決める金融政策委員会)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べた。そして、最も緩和に積極的であったECBも慎重ながら大胆な緩和策の調整を準備しはじめた。

日銀もステルステーパリングは国債需給の関係から行っているとはいえ、物価目標にはかなりの距離があり、考え方を大きく変えない限り、異常な建て付けとなってしまった金融緩和策を継続せざるを得ない状況にある。いずれ日銀だけが取り残され、緩和することだけに意義があるような状況に追い込まれるリスクも出てこよう。


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# by nihonkokusai | 2017-06-30 10:05 | Comments(0)

イングランド銀行やカナダ銀行の総裁も利上げ示唆の意味

27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。

ただし複数の関係筋からとして、この総裁の発言について、総裁は弱めのインフレ期間への容認を示したものであり、差し迫った政策引き締めを意図していないとの見方を示した(ロイター)。

市場が予想以上に反応したため、少し火消しに走ったものとみられ、これはドラギ総裁の発言を否定するものではない。

カナダ中銀のポロズ総裁も同フォーラムで、次回7月の会合での利上げの可能性に言及した。すでにウィルキンス上級副総裁は6月12日の講演で利上げの準備が整っていると、これまでで最も強い調子で示唆していた。

さらに今度は、イングランド銀行のカーニー総裁が同フォーラムで、中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、MPCはこの件について向こう数か月以内に討議すると述べた。カーニー総裁は20日にロンドン市内での講演で「今はまだ金融政策の調整を開始するときではない」とし、利上げは時期尚早との認識を示したばかり。

このときのMPCでは、フォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、そこにマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わった。さらにチーフエコノミストのアンディ・ホールデン理事からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識が示された。カーニー総裁による時期尚発言は、利上げ賛同派が増えたことによる市場の動揺を抑えるための火消しかと思われた。しかし、そのカーニー総裁自らもECBの年次政策フォーラムで利上げを示唆した格好となった。

すでにFRBは正常化に向けて利上げを行っている。バランスシートの縮小も年内に着手する予定である。イエレン議長は27日の講演で、少なくとも自分が生きているうちに再び金融危機が起きるとは考えていないと語っていたが、この認識が欧米の中央銀行にも広まりつつあるように思われる。

イングランド銀行にとっては英国のEU離脱による影響も危惧されようが、それによるポンド安と物価高も無視できなくなりつつある。ユーロ圏については金融機関等への問題やギリシャの財政問題等も残るが、少なくとも金融危機のリスクは後退というか沈静化したというのが、共通認識となっているのではなかろうか。

欧米の中央銀行による過去にない大胆な金融緩和の主目的はデフレ脱却ではない。物価目標達成も必要ながら物価そのものは日本とは違い2%に近い、もしくは英国のようにそれを大きく上回っている。

そもそも金融政策がどれだけ物価に影響を与えられるのかという疑問に対しては、特に日銀が壮大な実験を行った結果も出ていよう。少なくとも日本では消費者物価指数の構成要素などの変更がない限り、原油価格や為替動向によって一時的にコアCPIが2%台に跳ね上がってもいずれゼロ近傍に収斂する。これは日銀の金融政策如何によって動いているわけではないことは、CPIの推移と日銀の政策、もしくは原油価格の動向などを重ね合わせると理解できるはずのもので、日銀も本来は十分理解しているはずのものであろう。だから2006年の量的緩和解除の条件はCPIのゼロ%がキーになっていた。

話が少し逸れてしまったが、欧米の中央銀行による非伝統的な金融緩和を含む大胆緩和の背景にあったのものは、百年に一度という金融危機による金融経済の影響を緩和するものあった。しかし、現実には市場の動揺を沈めるという効果を意識していた。

その危機は後退し景気そのものも不透明感が薄れ、株式市場の指数は過去最高値を更新するような中、非常時の対策をいつまでも続けることによる副作用も意識されてきた。このあたりが今回の欧米の中央銀行が、非常時の政策から平時の政策に切り替えようとの動きの背景にあろう。

しかし、日銀は世界的な金融危機が沈静化しているタイミングで政権に押しつけられる格好で異次元緩和を打ち出し、本来金融政策で動かすことが困難であるにも関わらず、2%という物価目標達成を打ち出してしまった手前、引くに引けなくなってしまっている。いずれ日銀だけが蚊帳の外となり、皆帰宅してしまったのに大胆緩和組に居残り続けざるを得なくなることも想定される。


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# by nihonkokusai | 2017-06-30 10:05 | 中央銀行 | Comments(0)

3月末に日銀の日本国債保有シェアは4割に膨れ、銀行の保有額は大きく減少

日銀は6月27日に資金循環統計(1~3月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は3月末時点で約1809兆円ととなった。12月末時点では約1815兆円となっていた(改定値)。

個人の金融資産の内訳は、現金・預金が「前年比」で2.3%増の約932兆円となった。株式等が同7.9%増の約181兆円、投資信託も7.2%増の約99兆円となっていた。

この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。残高トップの日銀の国債保有残高は386兆7756億円、40.0%のシェアとなった。前期比(速報値)からは15兆9503億円の増加。残高2位の保険・年金基金は233兆9974億円(24.2%)、2兆4694億円。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で190兆174億円(19.6%)、13兆5640億円。4位が海外投資家で56兆5684億円(5.8%)、3兆4680億円。5位が公的年金の49兆138億円(5.1%)、2022億円。6位が家計の12兆5263億円(1.3%)、2020億円。その他が38兆7490億円(4.0%)、6兆5862億円となっていた。

2016年12月末(確報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は9兆5669億円減少し、967兆6479億円となった。

12月末(確報値)に比べて大きく増加したのは、国債を買い入れている日銀でシェアは4割となった。今回前期比で増加したのは、ほかに「海外」と「その他」となっていた。

もう少し細かい区分けで見てみると、12月末に比べて大きく減少したのは国内銀行で約8兆円の減少となった。中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行含む)も約5兆円減、企業年金の1兆円減となっていたのに対し、ディーラー・ブローカーは4兆円程度増となっていた。

短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1083兆円となり、日銀が約427兆円で39.5%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約116兆円と短期債を含めると国債全体の10.8%のシェアとなっていた。


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# by nihonkokusai | 2017-06-28 09:54 | 国債 | Comments(0)
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