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米長期金利上昇をきっかけにダウ平均が記録的な下げとなり、日経平均も急落

 2日の米10年債利回り(以下、米長期金利)は一時2.85%と2014年1月以来の水準に上昇した。このきっかけとなったのは2日に発表された1月の米雇用統計とされる。1月の米雇用統計で非農業雇用者数は20万人増と予想を上回ったことに加え、平均時給も前年比2.9%の上昇と高い伸びとなったことから、FRBの利上げペースの加速観測が強まった。このため米長期金利が上昇ピッチを早め、あっさりと2.8%台に乗せてきたのである。

 米長期金利上昇の背景としては、雇用統計を受けたFRBの利上げの加速観測があったのかもしれないが、長期金利が上昇しやすい地合となっていたことも確かである。米長期金利はチャート上、2.6%台に大きな節目があり、ここを抜けると3%あたりまで節目らしい節目がない。このため、米長期金利が2.6%を大きく上回ったことにより、市場のマインドとしては金利の上昇の可能性を意識せざるを得なくなり、上昇ピッチが加速した。金利の抑制要因には鈍感となり、金利上昇要因に敏感となるという地合に変わってきていたのである。今回の雇用統計に敏感に反応したのもこれが要因とみられる。ただし、いまのところ米国の足元の物価は落ち着いている。

 この米長期金利の上昇に敏感に反応したのが米国株式市場となる。米国の株式市場は調整らしい調整がなくじりじりと上昇し、主要3指数が高値を更新し続けるという状況が続いていた。しかし、1月29日にiPhoneXの減産が報じられたアップルや、キャタピラーなどが大きく下落したことをきっかけに、本格的な調整局面を迎えた。29日のダウ平均は177ドル安、30日は362ドル安となり、31日は72ドル高、1日は37ドル高と切り返すが戻りは鈍く、2日にあらためて665ドル安となった。きっかけは米長期金利の上昇といえるかもしれないが、今回の米株の上昇局面にあってやっと本格的な調整が入ったともいえる。

 5日の米国株式市場ではさらに調整が進んだ。ダウ平均はストップロスなども巻き込み、一時1597ドル安と取引時間中としては過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。ちなみに米長期金利は一時2.88%まで上昇したが、米株の急落でリスク回避の動きとなり、2.70%に低下していた。

 2009年あたりを起点とし、2016年初当たりから上昇ピッチを加速させていたダウ平均であったが、ナスダックの7000ポイント台という節目を抜いてきたことなども意識されてか、利益確定売りなどに押されやすい局面に転じてきたと言える。米長期金利が上昇してきたといってもまだ3%にも達してはおらず、金利上昇が急速に景気を冷やすといったことも考えづらい。また、FRBが年3回としている利上げを4回とする可能性もないとはいえないが、パウエル議長となっても慎重姿勢に大きな変化はないと思われ、物価が予想外に上昇ピッチを早めない限り、利上げ加速はあくまで市場の思惑と見ざるを得ない。

 このため、ここで米株の上昇が止まって、基調が反転するとの見方はいまのところそれほど多くはなく一時的な調整との見方が強い。しかし、チャート上からも今後の動きには注意も必要となる。そして、この米株の大きな調整によって東京株式市場も影響を受けている。そもそも日経平均がここまで上昇してきた背景としては国内景気の拡大傾向もあるが、米国株式市場の上昇を受けての面も大きかった。ちなみに日本の長期金利については、いまのところ日銀にコントロールされて上昇する気配はない。


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# by nihonkokusai | 2018-02-06 09:34 | 債券市場 | Comments(0)

ECBの年内利上げはあるのか

 ECBは1月25日に開いた理事会で主要政策金利を0.00%に、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。ドラギ総裁は理事会後の会見で、「現時点でのデータや予測を踏まえ、今年利上げが実施される確率は極めて低いとみられる。」と発言した。また、「金融政策は引き続き緩和的となり、金利は量的緩和(QE)策終了後も長期間にわたり低水準にとどまる。」とも発言した。

 ECB理事会のメンバーであるクノット・オランダ中銀総裁は28日に、ECBは債券買い入れプログラムをどのように終了するかについてできる限り早く明確にすべきとの見解を表明。債券買入プログラムを「続ける理由は何もない」と述べた。さらにECBのプラート専務理事は29日にブリュッセルでの会合で、ECB理事会が持続的な調整への条件が整ったと判断した場合、ガイダンスに沿ってネットでの資産買い入れが終了する、との見解を示した。ただし、資産買入終了を段階的に行うか一度に実施するか、ECBはまだ決定していないとも指摘していた(ロイター)。

 ECBの債券買入額は今月からこれまでの月600億ユーロから300億ユーロに減額し、少なくとも今年9月末まで継続するとしている。ドラギ総裁は年内の資産買入停止についてはコミットしていないが、債券買入は年内にも停止する可能性が高い。

 昨年12月14日のECB政策委員会の議事要旨では、「金融政策姿勢や、政策方針(フォワードガイダンス)のさまざまな次元に関わる文言について、来る年(2018年)の初めに再検討を加える可能性がある」と指摘したが、1月のECB理事会でのガイダンスの修正はなかった。

 ECBの利上げについては年内に検討することはひとまずなさそうであり、ガイダンスの修正と資産買入の停止方法を模索してくることになりそうである。そして、債券買入停止後にあらためて利上げを検討するというのがシナリオか。

 しかし、果たしてそのような慎重姿勢が貫けるであろうか。キーとなりそうなのは物価となるが、それでも金利を取り巻く環境が今年様変わりしてくる可能性もありうる。日銀の黒田総裁のダボス会議での「ようやく(物価)目標に近い状況にあると思う」との発言や、上記のオランダ中銀総裁の発言をきっかけに、ユーロ圏の国債利回りが上昇してきている。

 29日にドイツの5年債利回りは2015年以来初めてプラスに転じた。米長期金利の上昇ピッチの早さにも影響され、ドイツの10年債利回りも2日に0.76%まで上昇している。ドイツの10年債利回りはチャート上からは0.90%を目指して上昇してくることが予想される。このため、もしかするとユーロ圏の国債利回りの上昇がECBの利上げを促すといった状況となる可能性もまったくないとは言えないかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-02-05 10:12 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀が長期金利上昇を抑制する意味があるのか

 2月1日の米国市場では、FOMCの声明を受けて利上げペースが速まるとの見方が強まったことに加え、国債発行額が増加するとの観測も手伝って、米債は大きく売られた。米10年債利回りは2.79%と前日の2.70%から大きく上昇し、2014年4月4日以来の水準をつけた。また、30年債利回りは昨年5月以来の3%台回復となった。

 米財務省が発表した四半期ペースの国債発行計画によると、2~4月に入札による米国債の発行額を計420億ドル増加させる。これはFRBの資産買い入れプログラム縮小に伴っての国債の入札規模拡大ともなる。この際に、据え置くとみられていた10年債も月10億ドルずつの増額となることで、これも米債の売り要因となっていたようである。

 2日には米雇用統計を受けて米10年債利回りは2.84%まで上昇しており、米10年債利回りのチャートからは3%に向けて順調に上昇しつつあるようにも見える。まだ米10年債利回りが3%に上昇するとの見方は少ないかもしれないが、むしろ通過点となる可能性も出てきた。

 この米10年債利回り、つまり米長期金利の上昇の背景にあるのが、世界的な景気拡大にともなう米景気の拡大である。それも背景に、FRBが進める正常化への動きも今後加速されるとの見方も出てきている。

 FRBのイエレン議長は3日に退任する。そのあとはパウエル理事が引き継ぐ。実務派とされ、エコノミストではないパウエル理事は、実体経済に沿った政策を行うとみられているだけに、これも利上げ加速観測の背景にある。

 この米債安もあって2月2日の日銀の対応が注目された。米債の下落などを受けて、日本の10年債利回りが0.1%に接近していたためである。日銀は10時10分に予定通り国債買入をオファーしたが、この際に5年超10年以下4500億円に増額した。前回29日は4100億円であり、400億円の増額となる。

 それとともに固定利回り方式による国債買入もオファーした。対象は残存期間5年超10年以下で固定利回較差は0.020%となり、この結果、10年利付国債349回の買入利回りは0.110%となる。これは買入金額に制限を設けない買入、つまり「指し値オペ」となる。0.11%というのは昨年2月と7月に実施された水準でもある。

 2日の10年債利回りの上昇は米債安にも関わらず0.095%までとなり、この日銀の指し値オペ等の可能性もあったことで0.1%には買いが控えていた。つまり0.11%どころか0.1%もつけておらず、日銀は空砲というか威嚇射撃を行ったともいえる(実際に応札額はゼロ)。0.110%を上回っていなければ、業者は指し値オペに応ずる必要はない。ただし、日銀としてはここからの長期金利の上昇は容認しないとの姿勢を見せたものとみられる。

 しかし、今回はこれで長期金利の上昇が抑制できるかは疑問である。米国に限らず欧州の国債利回りも上昇している。欧米の物価もいまのところ抑制されているとはいうものの、原油価格は上昇基調となっており、これが物価に反映されてくることも予想される。日本の景気についても10~12月期のGDPが約30年ぶりとなる8期連続のプラス成長予想となるなど、日銀が無理矢理長期金利を押さえ込む必然性が薄れつつある。実体経済に即した金利形成も必要であろう。

 日銀としては2%の物価目標を掲げ、紆余曲折しながら長短金利操作付き量的・質的緩和政策という政策にたどり着いてしまった手前、長期金利の目標水準の引き上げはなかなか容認できない面もあろう。しかし、それを果たして市場が許すのか。そもそも金利という我々の収入を制限してまでそれを行う意味が果たしてあるのか。今後、市場との攻防戦が繰り広げられる可能性もありうる。


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# by nihonkokusai | 2018-02-03 09:54 | 日銀 | Comments(0)

何故日銀は中期ゾーンの国債の買入を増額したのか

 1月31日に日銀による国債買入において、残存3年超5年以下のオファー額を前回26日の3000億円から3300億円に300億円増額した。

 なぜこのタイミングで中期ゾーンの国債の買入を増額したのか。日銀のこのようなオペでの金額の増減に関しては通常、下記のような説明をしている。

「国債買入れオペの金額やタイミングは、金融政策決定会合で決定された調節方針に沿って実務的に決まるものであり、オペの運営が先行きの政策スタンスを示すことはない。」

 このコメントは金融政策決定会合における主な意見(2018年1月22、23日開催分)のなかにあったものであり、たぶん執行部(総裁・副総裁)からの発言とみられる。この発言は下記のようなある委員の意見に対するものであった。

 「2%の「物価安定の目標」まで距離がある現状では、市場で早期に金融緩和の修正期待が高まることは好ましくない。追加緩和やコミットメント強化によって、目標達成に向けた強いスタンスを示す必要がある。超長期国債の買入れ減額が、金融政策の意図せざるシグナル効果を持ち得るのであれば、是正すべきである」

 日銀はイールドカーブコントロールを行う上で、あくまで国債買入の増減によって微調整を行っているというのが建前となっている。しかし、現実には政策目標を量から金利に移したことで、量の面では限界も見えてきたことで、実質的にテーパリングを行っている。これが出口政策の一環として市場で認識されることは問題であると上記の発言者は示唆したと思われる。

 しかし、今回の中期ゾーンの国債買入の増額は、まさにある意味、シグナル効果を意図したかのようなオペレーションともいえた。

 ここにきての欧米の長期金利の上昇を受けて30日に10年債利回りは0.095%をつけて0.1%に接近した。昨年2月に10年債利回りが一時0.150%に上昇した際に、日銀は0.11%で指し値オペを実施した。このため、今回も日銀は長期金利上昇に備えて指し値オペを準備しているのではとの見方も出ていた。

 ところがまだ10年債利回りが0.1%に達する前に日銀は予防的な手段に出たともいえる。ここにきて債券相場は先物主導で動いており、その先物には海外ヘッジファンドなどが売りを仕掛けているとも噂されていた。債券先物は7年債に連動することで、残存3年超5年以下の増額は債券先物を意識したものとの見方もできるかもしれない。

 また2月1日に10年国債の入札が予定されていた。去年の2月2日の10年国債入札が低調な結果となったことも、10年債利回りの上昇を招いた要因となっていた。これもあって今回、10年債入札日前に予防措置の必要性を感じたのかもしれない。

 今後欧米の長期金利が更に上昇し、日本の10年債利回りが0.11%を突破してくることもありうる。このため、指し値オペはそのために温存していたとの見方も可能か。

 今回、10年債利回りが0.11%を上回っても指し値オペは実施せず、多少の長期金利上昇は黙認し長期金利のレンジを拡げ、YCCの微調整を行うのではとの見方もある。いずれそれも必要になるとは思うが、今回は日銀は抑えにかかると見ておいた方が良いのかもしれない。


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# by nihonkokusai | 2018-02-02 09:55 | 日銀 | Comments(0)

12月のコアCPIはプラス0.9%と足踏み状態

 1月26日に発表された12月の全国消費者物価指数は総合が前年比プラス1.0%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合が前年比プラス0.9%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が前年比プラス0.3%となった。

 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、以下コア指数)は11月も前年比プラス0.9%となっており、とりあえず1.0%手前での足踏み状態。引き続きガソリンや灯油などエネルギー価格上昇の影響が押し上げ要因となっている。

 同時に発表された2017年の全国のコア指数は前年比0.5%上昇となり、2年ぶりにプラスとなった。総合も0.5%上昇となり、やはり2年ぶりのプラスとなった。

 原油価格はここにきても上昇基調となっており、WTI先物は一時66ドル台をつけ、2014年12月以来の高値となっている。このトレンドは当面維持されると見込まれる。

 石炭や原油、液化天然ガスの輸入価格が上昇した影響により、電力大手10社と都市ガス大手4社は3月に全社が値上げする。電力・ガス大手の全社が値上げするのは2017年6月以来9か月ぶりとなる。

 このように原油価格の上昇から今後もコアCPIに上昇圧力は加わりそうだが、外為市場ではここにきてやや円高基調となっており、こちらは物価には上昇抑制要因となる。この為替動向次第の面はあるものの、物価の上昇基調は継続するとみている。

 ただし、欧米の物価動向をみてみると、29日に発表されたFRBの物価目標ともいえる12月のPCEデフレーターが前年同月比で1.7%上昇と伸び率が縮小していた。また、30日に発表されたドイツの1月のCPI速報値が前年比1.4%増となり、予想に届かずとなるなど、なかなか物価が上昇しづらい状況にあることも確かのようである。

 さすがに日銀の物価目標水準に一時的にせよ到達するのは並大抵のことではない。景気の拡大が続き、原油価格が上昇してきても物価の上昇は鈍い状況が続いているが、これは日銀の緩和が足りないためではない。

 ちなみに全国消費者物価指数の結果の公表は2018年1月分から1週間早期化されるそうである。全国1月分公表日は2月23日(金曜日)となっている。


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# by nihonkokusai | 2018-02-01 09:27 | 景気物価動向 | Comments(0)

米長期金利上昇の要因となるものを模索か

 先日のスイスのダボス会議のパネル討論会での黒田総裁による「2%のインフレ目標ないし物価安定目標の達成を非常に難しく、時間のかかるものにした要因は数多くあるが、ようやく目標に近い状況にあると思う」と述べたことをきっかけに、買いドル売りが進み、ドル円は一時108円28銭まで下落した。このドル売りで米債も売られ、26日の米10年債利回りは2.66%と前日の2.61%から上昇した。

 そして、今度はECB理事会メンバーであるクノット・オランダ中銀総裁が28日に、債券買い入れプログラムを「続ける理由は何もない」とした上で、ECBは同プログラムをどのように終了するかについてできる限り早く明確にすべきとの見解を示したことをきっかけに、29日にドイツの5年債利回りは2015年以来初めてプラスに転じた。ドイツの10年債利回りも0.69%と26日の0.62%から大きく上昇した。ドイツの10年債利回りはチャート上からは0.90%を目指して上昇してくることが予想される。

 このドイツの国債の下落などから、29日の米債も売られ、米10年債利回りは一時2.72%をつけて、2014年4月29日以来の水準に達している。30日には2.73%を付けている。こちらはチャート上は3%まで節目らしい節目はなく、いずれ3%台に乗せてくるであろうと予想される。

 今回の動きで注目すべきは、米国の国債が日本や欧州の金融政策動向に神経質になって売られていたという面である。相場であるので現実にどの材料に反応したのかは検証が難しい面はあるのだが、それでも日銀やECBの出口戦略の行方に注目が集まっているであろうことは確かである。

 しかし米国債の下落、つまり米長期金利の上昇については、きっかけは何であれ、むしろ世界的な景気拡大、それを背景としての淡々と行われているFRBの正常化の動きがあってのものともいえる。むしろ、物価の上昇が抑制されている面はあったにせよ、米長期金利が3%以内に抑えられていたことの方が不思議であった。むろん米国債は金利面の動きだけでなく、安全資産として買われることもあり、リスク回避による動きなども米長期金利の上昇を抑制していたことも確かである。

 結果として日銀やECBの動向に米国債が神経質になっているように見受けられるが、実際には米長期金利上昇の要因となるものを市場が模索しているという状況のようにも見える。つまり金利の抑制要因には鈍感となり、金利上昇要因に敏感となるという地合に変わってきているとみても良いのではなかろうか。29日にはFRBの物価目標ともいえる12月のPCEデフレーターが前年同月比で1.7%上昇と伸び率が縮小していたにも関わらず、こちらに対する反応は限られていた。


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# by nihonkokusai | 2018-01-31 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

黒田日銀総裁の物価発言で円高が進んだ理由

 以前にも指摘したが、1月15日の日銀支店長会議における黒田総裁の挨拶を前回の昨年10月の挨拶分と比較してみたところ、違いはわずか1か所だけとなっていた。

 「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。」2017年10月の支店長会議挨拶

 「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。」2018年1月の支店長会議挨拶

 つまり消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の居所だけが、ここにきての前年比での上昇を受けて「0%台後半」から「1%程度」にやや上方修正されていたが、これ以外の挨拶分には変更はない。

 消費者物価指数がやっと前年比出の上昇幅を拡大させてくるという日銀にとっては喜ばしい状況に対して、実際の数字だけの変更だけに済ませたのにはいろいろと理由があろう。そのひとつが、ここで物価目標達成の可能性なりを多少でも指摘すると、特に外為市場や米国債券市場などが敏感に反応してしまう点である。

 その事例となってしまったのが、先日のスイスのダボス会議のパネル討論会での黒田総裁の発言となった。黒田総裁は「賃金が上昇しつつある兆候が幾つか見られ、物価については一部で既に上昇し始めている」と英語で発言。「2%のインフレ目標ないし物価安定目標の達成を非常に難しく、時間のかかるものにした要因は数多くあるが、ようやく目標に近い状況にあると思う」と述べた(ブルームバーグ)。

 23日の決定会合後の記者会見で黒田総裁は物価に関して下記のように慎重な発言をしていた。

「わが国では、景気が緩やかに拡大している一方、物価は弱めの動きが続いています。」「物価はまだ2%の「物価安定の目標」にはほど遠い状況にありますので、」

 それでも一応、日銀の物価目標としているコアCPIはここにきてやっと1%が見えるところまで上昇し、今後さらに前年比が拡大していくことも予想される。ただし、これは原油価格の上昇による影響が大きいことも確かである。

 しかし、日銀の物価目標はコアコア等ではなくコアである以上は目標値に接近しつつあるというのが現状である。その現状を国内では口に出せなかったのは、市場への影響とともに、仮に2%を一時的に達成できたとしても一時的なものとなる可能性が大きいからとも言えよう。しかし、海外でつい本音がポロリと出てしまったのか、それによって市場が過剰反応したともいえるのできなかろうか。

 ダボス会議の黒田総裁の発言を受けて、円買いドル売りが進み、ドル円は一時108円28銭まで下落した。その後、日銀報道官が、黒田総裁の発言について、インフレ見通しを修正したわけではないと説明したことを受け、ドルは下げ渋った格好となった(ブルームバーグの記事より)。

 たしかに黒田総裁の発言はインフレ見通しを修正したわけではなく、「予定通り?」に物価目標達成に向けて、やっと上昇しつつあることを示したに過ぎない。それでも市場はやや過剰に反応してしまう点も今後はさらに注意する必要はある。このドル売りで米債も売られていたことで、連鎖反応も起きている。

 ただし、日銀が頑なに慎重な表現に止めるとなれば、それはそれで自らの政策の自由度を縛りかねないことも確かである。ここで求められるのが、為替市場などの市場との対話であろうか。対話がよく進んでいるのか、日本の債券市場はこのような発言に対してはほとんどビクともしていなかったが。


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# by nihonkokusai | 2018-01-30 10:35 | 日銀 | Comments(0)

デジタル通貨に向けたあらたな試み

 25日のNHKニュースによると、通信、銀行、保険、小売り、商社、物流に不動産…。幅広い業種から有力企業19社が集結し、「デジタル通貨」に関する包括的なサービスを手がけることになったそうである。

 25日にデジタル通貨に関するサービスを一元的に手がける新会社「ディーカレット」の設立が発表された。この新会社を仕掛けたのは、日本でインターネットサービスを始めた先駆けとして知られる通信会社のインターネットイニシアティブ(IIJ)。そして、新会社に参加する企業は下記となる(NHKニュースより)。

 IIJ、伊藤忠テクノソリューションズ、QTnet、ケイ・オプティコム。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、大和証券グループ本社、野村ホールディングス。第一生命、日本生命、SOMPOホールディングス、東京海上日動、三井住友海上。伊藤忠商事、JR東日本、ヤマトホールディングス、ビックカメラ、三井不動産、電通の合わせて19社。

 まさに名だたる企業が集合した格好となった。この新会社が目指すのは、デジタル通貨を包括的にカバーするサービスだそうである。

 デジタル通貨といえば、ビットコインに代表される仮想通貨を思い浮かべるかもしれないが、この新会社はある意味ブームとなっている仮想通貨を追いかける会社ではないと思われる。むしろ、想定しているのは中国のスマホ決済の「支付宝(アリペイ)」や「ウィーチャットペイ」、スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済ではなかろうか。

 ビットコインの価格の乱高下をみてもわかるように、仮想通貨は通貨としては流動性リスク、価格変動リスク、そして取引所などを含めての信用リスクがあまりに高すぎることで、通貨としての利用は考えづらい。

 しかし、デジタル通貨を店での支払いに使える決済サービスについては今後、日本でも普及する可能性は十分ある。少額貨幣については日本でもキャッシュレス化は進んでいる。しかし、SuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードなど複数のデジタル通貨が混在していることで、それが普及を妨げている面もある。そういえば今回の19社に小売りが含まれていないのが、やや気掛かり。

 今回のIIJが始めるデジタル通貨がどのようなものであるのか、まだ具体像は見えていないが、これだけのビックネームの企業が参加するとなれば、デジタル通貨というかデジタル決済の基盤が整う可能性がある。ただし、それはあくまでビットコインに代表される仮想通貨などではなく、法定通貨と互換性のあるものでなければならない。デジタル通貨というよりもデジタル決済の利便性を高めれば、アリペイやスウィッシュのような普及が見込めるのではないかと思われる。


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# by nihonkokusai | 2018-01-29 09:12 | 金融 | Comments(0)

日銀のイールドカーブコントロール政策の修正はあるのか

 日銀の中曽副総裁は2017年10月18日の講演で次のような発言をしていた。

 「日本銀行では、均衡金利の概念を拡張して「均衡イールドカーブ」を計測し、過去の緩和局面と比較するなど、様々な角度から理論的・実証的な分析を進めています。なお研究途上の課題も少なくありませんが、こうした分析の成果も活用しながら、先行き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、必要であればイールドカーブの形状についても調整を行っていく方針です。」

 日銀のイールドカーブコントロールは、国債の買入によって調整されている。「より少額の国債買入れによって、同じ金利水準を実現できること」も可能との認識により、結果として国債買入額を減少させている。

 さらに中曽副総裁は「日本銀行は、イールドカーブ全般にわたって、様々な期間別の国債買入れを行ってきたほか、特定の金利水準で無制限に国債を買い入れる「指値オペ」という強力な補完的ツールも備えています。」と指摘している。

 日銀が今後、物価の上昇や景気の拡大、さらには米国の長期金利の上昇などを受けて、何かしらの調整を行うとすれば、このイールドカーブコントロール政策の修正がありうる。

 本来であれば民間金融機関の収益を圧迫するマイナス金利政策を修正すべきと考えているが、日銀として軸足そのものは変えたくはないようである。しかし、中曽副総裁発言からは、経済・物価・金融情勢に応じて、イールドカーブを修正する事は想定しているようである。

 出口政策というのではなく、あくまで調整というかたちで、短期ではなく長期の利回り水準を引き上げてくる可能性がある。もし調整するとすればどのような形式となるのか。

 日銀の10年物国債金利の操作目標は「ゼロ%程度」としているが、これまでのオペレーション等からみて、マイナス0.1%からプラス0.1%あたりとなろう。上限はこれまでの指し値オペからみて0.11%か。もし10年物国債金利の操作目標をやや上方シフトさせるとなれば、10年債利回りが0.11%を超えても指し値オペを入れずに、0.2%あたりで指し値オペを入れてブレーキを掛けるという手段を取ることも考えられる。その前に5年超10年以下の国債買入額そのものを減額し、コントロールする可能性を示すこともありうるか。

 ただし、1月9日の国債買入において、超長期ゾーンの国債買入額を減額した際に債券市場は反応薄であったものの、ドル円が50銭程度下落するなど、他市場がやや過剰反応を示した。このあたりも意識して行わないと、イールドカーブコントロール政策そのものの修正はなかなか難しいものとなる。


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# by nihonkokusai | 2018-01-29 09:08 | 日銀 | Comments(0)

ムニューシン財務長官によるドル安容認発言をトランプ大統領が否定するドタバタ

 米国政府はこれまで為替政策に関しては一般的に発言を控えるか、「強いドルは国益に適う」として、表面上はドル高を歓迎するかのような発言をしていた。この発言は1995年頃に当時のルービン財務長官が言い出したもののようで、それがこれまで主に基軸通貨を有する米国の財務長官の発言として受け継がれてきた。

 ところが24日にムニューシン財務長官は、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)の記者会見で、「明らかにドル安はわれわれにとり良いことだ。貿易や各種機会に関わるからだ」と述べ、ドル安を歓迎する姿勢を示した(ロイター)。

 たしかに、1985年のプラザ合意などを見るまでもなく、米国としては本音を言えばドル安歓迎というところではあろう。この発言を受けて、外為市場ではドルが全面安の展開となった。

 ムニューシン財務長官はこれに加えて「長期的には強いドルは米国経済力を映す。ドルは主たる準備通貨である」とバランスを取る発言もしていた。さらにロス商務長官は、このムニューシン財務長官のドル安容認とも取れる発言について、長年にわたる強いドル政策の転換を表明したわけではないと述べ、火消しに走った格好となった。しかし、市場は今回のムニューシン財務長官による発言はドル安容認と取らざるを得なかった。

 トランプ政権が米国第一主義を取っているとは言っても、「「米国第一は各国と協力しないという意味ではない」(ムニューシン財務長官)。つまり、為替政策に関しては相手国のこともことも考慮する必要がある。これについてロス商務長官は、貿易相手国の不適切な行動が、米国の対応を引き起こしたと主張した。ロス氏は、多くの国は、自由貿易を語っているが、実は非常に保護主義的な行動をとっている、との見方を示した(ロイター)。

 このロス長官の発言もトランプ政権の意向を反映したものと言えた。なかなか言えなかった本音がトランプ大統領も出席するダボス会議で、財務長官や商務長官から出てきたことは注意すべきで、トランプ大統領からも同様の趣旨の発言が出てくることも予想された。

 ところがである。トランプ大統領はダボス会議ではなく、米CMBCテレビのインタビューに答えるかたちで、「米国経済は非常に力強い。絶好調だ。それゆえドルはどんどん強くなるだろう。最終的に私は強いドルを好む」と答えたそうである。その前にこのインタビューでTPP交渉の再検討も示唆していたのである。

 ムニューシン財務長官によるドル安容認発言の真意は、トランプ大統領の露払いとの見方もあり、その可能性は否定できなかった。ルービン時代から続いていた形式だけの表明は止めて、本音を出してきたとも言えるが、これは相手国、つまり日本などにとっては難しい対応を迫られることになる。つまり、円高要因となりうるような行動が取りづらくなる。

 ところが、トランプ大統領は自らの発言でムニューシン財務長官によるドル安容認発言を否定した。ドラギECB総裁がユーロは誰かのコメントのせいで上昇した面もあると発言したり、IMFのラガルド専務理事がムニューシン財務長官に説明を求められたりしたとも伝えられていたが、何らかの力が働いてのトランプ大統領の発言であった可能性もあるが。よくわからない。これがトランプ政権のやり方なのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-01-26 10:28 | 為替 | Comments(0)
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