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2017年の債券相場を振り返る

 2017年の債券相場を一言で表すと、「動かない」ということになりそうである。債券先物の中心限月(除くナイトセッション)でみると、年内の高値は9月8日につけた151円51銭、年内の安値は2月3日につけた149円28銭。つまり年内の債券先物の値幅は2円23銭しかなく過去最少値幅を更新した。

 また、現物の10年債利回りもマイナス0.015%から0.150%の間の動きとなって、こちらも過去最低の値幅となっていた。

 何故、動かないといえば、日銀のイールドカーブコントロールが効いているとしか言いようがない。日銀が2016年9月に決定した長短金利操作付き量的・質的金融緩和によって、金融政策のターゲットが量から金利に戻り、長期金利そのものもターゲットとなった。ターゲットはゼロ%としているものの、これまでの指し値オペなどの状況からみて、マイナス0.10%あたりからプラス0.1%あたりに置いていると推測され。10年債利回りはほぼその水準に収まっている。

 日銀により10年債利回りが抑えられたのが2月3日であり、10年債利回りが0.150%まで上昇した際に、0.110%水準での指し値オペが実施され、これによって長期金利の上値が抑えられた。また、9月には10年債利回りが一時マイナスとなったが、これは日銀というよりも市場が10年債利回りのマイナス化を高値警戒といったかたちで嫌ったような格好となった。

 FRBは3月、6月、12月のFOMCで追加利上げを決定した。しかし、物価がFRBの想定する水準に届いていないこともあり、米10年債利回りの上昇は限られた。3月に2.6%近辺に上昇したあと、9月に2%近くまで低下し、その後2.5%あたりまで戻した。

 今年はオランダの議会下院選挙やフランス大統領選などもあり、政治リスクも気にされていたが、大きなリスク要因とはならなかった。英国のEU離脱についてもいまのところそれほど大きなリスク要因とはされていない。むしろ北朝鮮や中東の地政学的リスクが意識されたが、こちらも大きく材料視されることはなかった。

 米国株式市場は上昇を続け、3指数は過去最高値を更新し続けた。日本でも雇用を主体とした景気回復もあって、日経平均は23000円近くまで上昇した。物価も前年比で1%近くまで上昇しているが、いまのところ日銀は動く姿勢をみせておらず、長期金利は日銀のターゲットのなかで推移している状況となった。


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by nihonkokusai | 2017-12-31 12:23 | 債券市場 | Comments(0)

韓国の利上げを指摘した日銀の政策委員の意図とは

 12月20、21日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見が28日に公表された。このなかで「金融政策運営に関する意見」をピックアップしてみて行きたい。

 「現在の金融緩和政策のもとで、企業や家計の支出活動を支える金融環境は、きわめて緩和した状態にある。」

 これについては異論はない。

 「当面の金融政策運営については、これまでの方針を維持し、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、現在の政策枠組みのもとで、強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが適当である。」

 このときの決定会合でも金融政策は現状維持となったが、それについての説明といえる。

 「息長く経済の好循環を支えて「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。」

 現状維持派の意見が続く。ただし、「息長く経済の好循環」を何故、非常時の対応の拡大版ともいえる異次元の緩和政策で支えねばならないのかはわからない。

 「2%の「物価安定の目標」達成にまだ距離がある現在は、金融政策は現状維持が妥当である。」

 つまりまだ出口の議論は早いぞということであろうか。

 「物価上昇の勢いが増す状況には距離があることから、腰を据えて、きわめて緩和的な金融環境を維持すべく、金融政策を運営していくことが必要であると判断している。」

 こちらも同様。

 「2%の「物価安定の目標」を実現するためには、適合的期待による予想物価上昇率の引き上げに時間がかかる可能性があることを踏まえ、強力な金融緩和を息長く続けることが重要である。」

 あれほどの緩和策を打ち出したにもかかわらず、適合的期待による予想物価上昇率の引き上げに時間がかかり過ぎていることについては、どのように説明するのであろうか。

 「今後、2%に向けて物価が上昇し、経済の中長期的な成長力が高まるもとでは、金融緩和政策の効果は強まることになる。そうした環境変化や政策の副作用も考慮しながら政策運営にあたることが必要である。」

 「政策の副作用」という言葉が出てきた。

 「海外の状況をみて「量的・質的金融緩和」の出口を求める議論が盛んである。しかし、直近の韓国の政策金利引き上げの背景を考えた場合、物価は 1.5%程度でアンカーされているといえ、実質GDPは平均3%以上で成長している。さらに、家計の債務残高はGDPの90%にもなっている。韓国の状況と比べても、日本の金融政策の転換は時期尚早である。」

 なぜ、突然、韓国を事例に持ってきたのであろうか。この発言は原田委員からのものとみられるが、日本の金融政策の転換は時期尚早であることを示すのに、韓国の事例を持ち出してくる必要があるのかががわからない。

 「先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整の要否を検討することが必要になる可能性もあるのではないか。」

 内容からみて銀行出身の鈴木委員あたりからの発言か。今後、金利水準の調整の要否を検討してくるのかどうか。副作用についての発言とともに、金利水準の微調整についての意見が出てきたことはかなり興味深い。

 「消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると 、2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当である。」

 片岡委員の発言であろう。10年以上の国債金利を幅広く引き下げれば、物価目標が達成できる仕組みについて具体的に説明してほしい、気がする。

 「ETFをはじめ各種リスク資産の買入れについては、株価や企業収益などが大きく改善していることや、今後も堅調に推移すると見込まれることを踏まえると、政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討すべきである。」

 こちらでも「副作用」という表現が出ている。トヨタ出身の布野委員の意見のようにもみえる。ETFの買入に対しても調整する必要はあると思う。これについては市場との対話を重視すればできないことではないと思う。

 「現在の金融緩和政策は、企業の新陳代謝や規制改革によって労働生産性が高まる過程で増大する失業を吸収しうる経済環境を整えることで、労働生産性引き上げにも貢献する。」

 物価はどこに行ってしまったのか。労働生産性引き上げが物価にも影響するということなのであろうが、そもそも現在の金融緩和政策、つまり国債をたくさん買っているような政策がどのように雇用に働きかけているのか。まったく影響はないとは言わないまでも、あくまで金融政策は後方支援的なものではないのかと思うのだが。


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by nihonkokusai | 2017-12-29 09:30 | Comments(0)

片岡委員の意見への反論に垣間見える日銀の本音?

 日銀は26日に10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨を公表した。色々と指摘したいところはあるが、特に興味深かったのが、下記のある委員の意見に対する反論である。

 この「ある委員」とはこの会合において、「イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げる観点から、15年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した」片岡委員である。

 「ある委員は、より長期の金利を引き下げる観点から、10年物国債金利に代えて、15 年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。」

 片岡委員はその前の会合で、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は、2019年度頃に2%の物価上昇率を達成するには不十分であるとして、金融政策の現状維持に反対したが、対案として新たな議案は出していなかった。そもそも対案が必要なのかどうかはさておき、10月30、31日の会合では具体案を出してきたものの、それに対して複数人から反撃を受けた格好となった。

 「この委員の意見に対して、何人かの委員は、15年物国債金利を引き下げた場合の経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでないと指摘した。」

 何人かの委員が何人なのかは具体的ではないが、3、4人程度とみて良いか。ここには少なくとも片岡氏と同様にリフレ派とされる岩田副総裁、原田委員や櫻井委員ではない可能性が高い。そのあとにもう一人の委員が下記の発言をしている。

 「この点について、別のある委員は、15年物金利のような超長期ゾーンの引き下げは、保険や年金の運用利回りの低下などを通じ、国民のマインド面に影響を及ぼすことが懸念されると付け加えた。」

 これは発言内容からみて鈴木委員の発言ではないかと思われる。そうなると何人かの委員には審議委員だけでなく、黒田総裁もしくは中曽副総裁が含まれている可能性もありうるか。

 片岡委員はこれもあってか、次の12月の決定会合では下記のように意見を修正している。

 「2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。」

 10月30、31日の会合での片岡委員の意見に対して複数人が反論してきたのは、何かしらの逆鱗に触れた可能性もありうるか。

 10月30、31日の会合では実は下記のような発言もあった。

 「大方の委員は、現在の金融市場調節方針のもと、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが適切であり、現時点で追加緩和を行うべきではないとの認識を共有した。」

 あえて「追加緩和を行うべきではない」との強い表現としたのは何故か。ここに日銀としての本音が隠れているように思われる。これは片岡委員の追加緩和の提案に対する複数人からの反論にも現れたということではなかろうか。

 現在の日銀はよほどの事態が発生しない限りは追加緩和を講じることは想定していないと思われる。これは物価目標の達成の有無に関わらずである。それは現在の強力な緩和策であれば、それで十分効果が出てくるとの認識によるものと思われる。

 ただし、現実には上記反対者の言葉を借りると、異次元緩和を講じた場合の「経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでない」ことも確かではなかろうかと思う。それでも、これからさらなる深みにはまることは避け、量の調整も可能な現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を継続させざるを得ないのではなかろうかと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-12-28 10:05 | 日銀 | Comments(0)

今後の物価上昇シナリオもありうるか

 12月26日に発表された11月の全国消費者物価指数は総合指数が前年比プラス0.6%と10月のプラス0.2%からプラス幅を拡大させた。日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合は前年比プラス0.9%と10月の0.8%から小幅拡大させた。生鮮食品及びエネルギーを除く総合も前年比プラス0.3%と10月のプラス0.2%から拡大させた。

 ガソリン価格の前年比値上げ幅が拡大したほか、食品や外国パック旅行費などが指数を押し上げた格好となった。電気代やガス代、携帯電話料金は押し下げ要因となっていた。

 物価はじりじりと前年比プラス幅を拡大させているものの、日銀の物価目標の2%にはまだ距離があり、これによって日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和政策が調整されることはないというのが一般的な見方になろうか。

 26日には10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨の発表もあったが、このなかで以下の記述があった。

 「一人の委員は、資本および労働市場の双方において過大な供給余力が残存していると見込まれるほか、2019年の消費税率の引き上げを踏まえ、現時点で追加緩和策を講じ、「物価安定の目標」の早期達成への確度を高めるべきであると主張した。」

 上記の発言は片岡審議委員によるものと思われるが、ここで注意したいのは追加緩和についてではなく、「2019年の消費税率の引き上げ」の部分である。

 前回の消費税の引き上げは2014年4月であったが、消費者物価指数(除く生鮮)は2013年4月の日銀の量的・質的緩和政策の導入時の前年比マイナス0.3%から、消費増税の引き上げが実施された2014年4月にはプラス1.5%にまで上昇した。

 しかし、2014年4月以降の消費者物価指数(除く生鮮)の前年比はプラス幅を縮小させ、2015年2月にはゼロ%となっていた。

 これは一見、日銀の異次元緩和が効果を発揮して物価を前年比1.5%まで押し上げたが、消費増税によって個人消費が低迷し、人々の予想物価も低下し、その結果物価はゼロ%を下回ってしまった、かに見えなくもない。そうであれば、片岡委員の発言に意味はありそうにみえるが、本当にそうであろうか。

 そもそも2013年4月の日銀による異次元緩和導入時から消費増税時までの物価の上昇は、急激な円安、それによる株高と株高による地合の改善、そもそもの円高株安の大規模な調整の背景にあった世界的規模のリスクの後退、それによる欧米の景気の回復、さらには消費増税前の駆け込み需要と便乗値上げ等によって説明ができるのではなかろうか。

 消費増税後の物価の低迷は原油価格の下落も大きな要因となった。消費増税が実施された2014年4月に100ドル程度で推移していた原油先物(WTI)は2015年入り50ドルを割り込んでいた。消費者物価指数は原油価格に大きな影響を受けているのは言うまでもない。

 前置きが長くなってしまったが、結果として何が言いたいのかといえば、2019年10月の消費税の引き上げに向けて今後、物価が上昇していく可能性があるという点である。片岡委員は消費増税後の事を心配しているのかもしれないが、その前に消費者物価指数は日銀の物価目標に再び接近する可能性もある。

 これには原油価格が上昇気味に推移し、日米の金利差なども意識しての円安ドル高なども想定し、そこに今回も駆け込み需要や便乗値上げが絡むといった想定も必要となる。むろん、これも日銀の異次元緩和の影響によるものではなく、外部要因によるものではあるが、そんなシナリオも描けるのではなかろうか。これで日銀が出口に向かうのかはさておくが。


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by nihonkokusai | 2017-12-27 10:39 | 景気物価動向 | Comments(0)

パンダ債とは何か

 日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意した(NHK)。

 パンダ債とは何か。この不思議な名前の債券のことはわかりづらい面があるかもしれない。

 日本政府や日本の企業が日本で発行する債券は国内債とも呼ばれるが、これに対して日本企業などが海外で発行する債券や、海外の政府や企業などが日本国内で発行する債券を「外債」と呼んでいる。たとえば、最初に発行された日本国債は鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債で、これはロンドンで発行した外債である。現在、日本国債は国内で消化可能となっているため、外貨建ての発行はされていない。

 外債には海外の政府や政府系機関、地方公共団体や国際機関、また民間企業が日本国内で発行する債券もある。国際機関や外国の政府、法人が日本国内で発行する円貨建の債券は「円建て外債」と呼ばれるが、なぜか通称があり、「サムライ債」とも呼ばれる。

 海外の発行体が外貨建てで、しかも日本国内で発行するという「外貨建て外債」という債券もある。債券市場関係者はこれを「ショーグン債」と呼んでいる。

 このように外債には呼称が付けられることがあり、オーストラリア市場において非居住者によって起債される豪ドル建債券はカンガルー債、英国内で非居住者によって起債されるポンド建て債券はブルドッグ債と称されている。この流れで非居住者が中国で人民元建て発行される債券のことを「パンダ債」と呼んでいる。

 今回、パンダ債の発行についてはみずほ銀行が中国人民銀行から発行の認可を得たと発表した。日本企業としては初めてとなる。発行額は5億人民元、年限は3年を予定しているそうである。三菱東京UFJ銀行も中国当局に申請中とのこと。

 パンダ債の発行により、日本企業の元の調達手段が広がることになり、中国事業の拡大に追い風となる(日経新聞)。また、この動きは領土問題でぎくしゃくしていた日中関係が改善に向かいつつあることを示すものともみられる。

 中国はこのところ中国政府はヨーロッパ連合やロシアなどにもパンダ債の発行を相次いで認めており、金融市場の国際化を進めていることを内外にアピールする狙いがあるともされている(NHK)。


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by nihonkokusai | 2017-12-26 09:04 | 債券市場 | Comments(0)

11月の公社債売買、「その他」が大量売り越しに

 12月20日に発表された11月の公社債投資家別売買高によると、都銀は6266億円の売り越しとなっていた。10月の1兆2339億円の買い越しから再び売り越しに転じた。10月に都銀は超長期債を買い越していたものの、中長期債は売り越していた。

 海外投資家は11月に1兆8565億円の買い越しとなった。10月の買越額は8963億円と1兆円割れとなっていたが、11月は再び大きく買い越していた。海外投資家は中期債主体に長期、超長期債ともに買い越していた。

 気になるのは「その他」の2兆5746億円の売り越しか。中期と超長期をそれぞれ1兆円以上売り越している。「その他」は主に政府関係機関であり、ゆうちょ銀行やかんぽ生命も含まれており、金額からみて、ゆうちょ銀行による売り越しとみられる。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 6266(-3164、1179、8604)

地方銀行 3462(-212、2698、330)

信託銀行 -2433(-1794、1797、-1829)

農林系金融機関 -1676(-896、207、20)

第二地銀協加盟行 320(290、180、0)

信用金庫 -7(514、609、0)

その他金融機関 2053(1522、1436、143)

生保・損保 -2255(-2093、277、127)

投資信託 -906(-372、-52、-116)

官公庁共済組合 327(37、110、80)

事業法人 -221(-8、-2、1)

その他法人 -456(16、-16、70)

外国人 -18565(-4201、-1544、-11347)

個人 215(1、42、2)

その他 25746(10155、3395、15595)

債券ディーラー -577(-343、9737、11886)

 11月の全体の国債売買高は203兆円程度となり、10月は183兆円程度と200兆円を割り込んでいたが再び200兆円台を回復した。

 債券相場は9月の下降トレンドが終了し、10月がもみ合いとなっていたが、11月上旬に先物は151円台を一時回復するなど買い戻された。現物は中長期債主体に買い進まれた。その後は10年債利回りのゼロ%も意識されて高値警戒も出たことで、150円台後半での膠着相場となった。


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by nihonkokusai | 2017-12-25 09:25 | 債券市場 | Comments(0)

景気に応じた金融政策に修正すべきではなかろうか

 12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となり、5四半期(1年3か月)連続の改善となった。2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。

 大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである。それでも物価の上昇圧力は弱く、原油価格の上昇などでどうにか日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比でプラス0.8%となっている。

 日銀短観から景気動向をみると、景気は回復基調にあることは疑いのない事実である。ただし、これは欧米などの海外の景気回復が大きく寄与している。つまりリーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な経済金融危機が収束した結果として、世界的に景気が回復したといえよう。

 世界的な経済金融危機に対して、特に金融市場の不安を後退させるために、日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和策が講じられた。世界的な経済金融危機の後退には、これが寄与したことも確かである。しかし、その後景気が回復し、米国の株価指数が過去最高値を更新するなどしており、これを見る限り、危機対応としての中央銀行による過剰な緩和策の必要性はなくなりつつある。

 このため米国のFRBは正常化路線を進め、今年も3回目の利上げを行ってきた。イングランド銀行も今年11月に10年ぶりの利上げを決定した。ECBも慎重にQEの縮小を進めようとしている。これら対して日銀はステルステーパリングは進めつつあるものの、物価目標に縛られて方向転換そのものはかなり困難となっている。

 中央銀行の金融政策の方向転換は特に金融市場に大きな影響を与えかねない。金融引き締めと捉えられると株価が下落する懸念もある。だからといって異次元緩和を続ける必要もないはずである。マイナス金利政策は金融機関に対して負の影響を与えるなどしており、むしろマイナス金利政策をやめたほうが株価にプラスになる可能性もある。実態経済に即した金融政策に修正しないと、今後、柔軟な金融政策を取ることが難しくなる懸念もある。そろそろこのあたりを考慮すべきタイミングに来ているのではなかろうかと思う。


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by nihonkokusai | 2017-12-24 14:14 | 日銀 | Comments(0)

欧米の国債の動向に注意せよ

 12月20日に米上下両院が税制改革法案を可決し、成立が確実となった。これを受けて19日の米国債券市場で、米10年債利回りは一時2.47%をつけて10月につけた水準に接近した。ここはひとつの節目といえる。20日には2.5%台をつけてこの節目を抜けてきた。今年3月につけた2.6%が次の節目となる。

 FRBは今月のFOMCでも利上げを決定したが、米国債の利回りはほとんど上昇する兆しをみせていなかった。しかし、ここにきて再び動意を示してきた背景にはいくつかの要因が絡んでいる。

 19日の米債下落の要因としては、税制改革法案が可決・成立したとなれば、それによる経済効果を期待してのものとの見方もある。しかし、現実にはあまりその効果は期待ではないとの見方も強い。むしろ、減税分の負担が意識されたのではなかろうか。それは結局、米国債の増発によってカバーされる可能性が強く、米国債の需給面が意識された。

 それともうひとつ大きな要因があった。それは19日から20日にかけて、同日に欧州の国債利回りも米国債同様に大きく上昇していたことである。むろん、ドイツや英国の国債は米国債との連動性は高いものの、欧州の国債下落の背景は米国債以外のところにあったことも注意すべきかと思われる。

 欧州の国債下落の背景のひとつは、ドイツ政府の来年の債券発行予定額は1470億ユーロとなり、特に30年債が増発される事を嫌気したものであった。しかし、ドイツなど中核国だけでなくイタリアなど周辺国の国債利回りの上昇が大きくなっていたのは、別の理由があった。それはECB関係者の発言によるものであった。

 11月22日にECBのクーレ理事(フランス出身)は、インフレが回復軌道に戻ると政策担当者らがより楽観的になる状況で、来年は債券購入よりも金利を重視する方向で金融政策のガイダンスを修正することになりそうだと語った(ブルームバーグ)。

 ドイツなどに比べてより中立的でドラギ総裁に近いとされたクーレ理事のこの発言により、ECBがより正常化を意識し始めていることが明らかになった。ここに他の委員からの発言が加わったのである。

 スロバキア中銀のマクチ総裁は「現在、議論は資産の購入から、将来的な金利の上げ下げへとシフトしている」と話した。エストニア中銀のハンソン総裁も「金利を含めた金融政策のさまざまな面について注意をしてもらうよう市場と対話することが、今後数か月で考えていくべきことだろう」と指摘した(ロイター)。

 ドイツ連銀のワイトマン総裁はこれまで、ECBは量的緩和について完全な終了時期を明示すべきだとの従来の見解を繰り返してきた、これは主流派ではないとの見方も強かったが、マクチ総裁、ハンソン総裁、そしてクーレ理事の発言内容からみると、来年9月まで延長した資産買入についての再延長は考えておらず、来年は利上げを視野に入れてそのタイミングを計ることが意識され始めていることが伺える。今回の欧州の国債が売られた背景は、ECBが利上げも意識しつつあることを察知してのものではなかろうか。

 米国債と欧州の国債はタイミングを同じくして売られたが、それぞれ売られた要因は異なっていた。しかし、米国債とドイツ、英国の国債の連動性が高いことも確かであり、今後はそれぞれの要因が相まって、さらに利回りが上昇してくる可能性がある。むろん、今後の物価動向も意識する必要もある。ただし、これまでおとなしかった分、年末で流動性が低下している面もあり、変動幅が大きくなる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-12-21 09:39 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は効果の見えないマイナス金利政策を見直すべき

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。GPIFの預金は現在みずほフィナンシャルグループ傘下の資産管理サービス信託銀行(TCSB)が預かっており、資産管理サービス信託銀行におけるGPIFの預金は2017年9月末時点で預金は10兆円以上となり、1年前より7兆円増えた(12月18日付け日経新聞より)。

 2016年1月に導入が決まった日銀のマイナス金利政策により、準備預金の法定額を超過した一部に、年0.1%のマイナス金利が適用される。信託銀行全体でマイナス金利を適用される預金は約7兆円程度あるようだが、その多くをTCSBが占めているようである。

 これまで年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はあったようだが、ついに超大手の機関投資家ともいえるGPIFも負担せざるを得なくなったということになる。

 日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど利回りが大きく低下した。MMFやMRFの資金の導入先であるところの債券の利回りも軒並みマイナスとなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、さらに運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。同年3月の金融政策決定会合では、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)と呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。

 日銀は2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、これによって長期金利つまり10年債利回りをゼロ%を少し上回るプラスに引き上げた格好ながら、中期ゾーン以下の国債利回りはいまだにマイナスとなっている。

 いったいマイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明というか、そもそも物価目標は達成される見込みもない。マイナス金利政策が直接、物価上昇に働きかけることを証明できるものはない。そうであるのであれば、金融機関の収益を圧迫するだけともなるマイナス金利政策は早晩、見直す必要があるのではなかろうか。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるかもしれないが、それでやめられないというのもおかしいし、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。そろそろ、マイナス金利政策の修正を提案する日銀の政策委員が出てきてもおかしくはないのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-20 09:28 | 日銀 | Comments(0)

ECBとイングランド銀行は現状維持、追加利上げの可能性は

 欧州中央銀行(ECB)は12月14日の政策理事会で、主要政策金利を0.00%、中銀預金金利はマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。また、来年1月から毎月の資産買入額を現在の600億ユーロから300億ユーロに減額し、少なくとも来年の9月末まで継続すると改めて表明した。

 経済見通しでは、向こう3年間の経済成長予想を上方修正したのに対し、2020年の平均インフレ率の予想は1.7%とした。ECBが目指す目標は2%近くとしており、これには届かない。ちなみにドラギ総裁の任期は2019年10月末となっており、物価予測からみるとドラギ総裁の任期中の利上げは困難かとの見方もできなくもない。

 ただし、すでに正常化路線を進み、数度の利上げを実施しているFRBであるが、こちらも物価目標には届いておらず、2%に届かないからといって利上げの障害になるわけではないと思われる。

 同日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)も開催されていた。こちらも全会一致で政策金利を現行の0.5%に据え置くことを決め、資産の買い入れ枠も現行水準を維持した。イングランド銀行は11月に約10年ぶりの利上げに踏み切っており、その利上げによる影響を見定めたいとして、今回は現状維持となったものとみられる。

 MPCでは景気の展開が予想通りであれば今後数年に「緩やかな追加利上げ」が恐らく必要になるとの見解を重ねて示しており、追加利上げが視野に入っていることを示した。これに対して市場はイングランド銀行の追加利上げはかなり慎重であり、2018年の利上げは困難との見方も出ている。しかし、英国のEU離脱問題が英国の経済や物価に大きな悪影響を与えるなどしない限りは、イングランド銀行は正常化に向けた歩みを継続させてくるとみている。つまり2018年の追加利上げの可能性は高いと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-12-19 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)
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