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株高なのに円高の理由

 11月22日の東京株式市場は前日の米国株式市場で久しぶりに主要3指数が史上最高値を更新したことなどから、買いが先行し日経平均は一時22600円台後半まで上昇した。ここにきて、利益確定売りなどに押されていた東京株式市場であったが、米株の回復なども手伝い日経平均は再び23000円も視野に入ってきそうである。

 これに対して外為市場ではドル円の上値が重くなっている。上値が重いというより、ドル円はダウントレンド入りしているようにも思われる。ドル円は11月6日に114円70銭台まで上昇していたが、そこから下落基調となり、11月17日には一時111円台を付けていた。22日のドル円も戻りが鈍く、112円台前半での推移となっていた。

 日経平均とドル円が常にリンクしていねわけではないが、リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される世界的な金融経済危機が生じた際には、リスク回避の動きから日経平均は下落し、ドル円も下落(円高)となっていた。ところがこの危機の後退時に登場したアベノミクスをきっかけに、リスク回避の反動が一気に生じ、今度は日経平均は急反発し、ドル円も上昇(円安)となった。

 その後も比較的、日経平均とドル円はリスクオンやリスクオフに絡んだ材料に同様の反応を示していた。しかし、ここにきてあらためて日経平均とドル円の動きに連動性がみられなくなっている。

 このひとつの要因として米長期金利の動きが影響しているように思われる。米国の10年債利回りは10月26日に2.46%あたりまで上昇後、上値が重くなり、ここにきて2.3%台主体での推移となっている。12月のFOMCでの利上げの可能性は市場でも意識されており、それを織り込んでの動きでもある。

 この米長期金利がそれほど上昇していない背景としては、FRBの正常化が慎重に進められている面もあろうが、米国の物価がさほど上昇していない面が大きい。原油先物などをみるとWTIは50ドル台に乗せるなどしているものの、10月の米消費者物価のコア指数は前年比1.8%増となっている。FRBの物価目標はPCEデフレータであるが、このコア指数も2012年半ばあたりからFRBの目標である2%を下回り続けている。

 つまりは米国の物価が思うほど前年比で上昇しておらず、その結果、米長期金利の上昇が抑制され、それによってドル円の上値が抑えられ、株式市場の動きと乖離を見せているように思われるのである。


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by nihonkokusai | 2017-11-23 08:52 | 金融 | Comments(0)

FRBのイエレン議長は理事ポストも辞すると発表

 FRBのイエレン議長は20日、パウエル次期議長が就任した時点で、理事ポストも退任すると表明した(日経新聞電子版)

 トランプ大統領は11月2日に来年2月に任期満了を向かえるイエレンFRB議長の後任に、FRBのパウエル理事を指名した。これによりイエレン議長の再任はなくなった。イエレン氏は来年2月に議長職は失うが、これでイエレン氏がFRBを去るとは限られなかった。イエレン氏はFRBの理事としての任期が残されていたためである。

 FRB議長の任期は4年だが、FOMCで投票権を持つ理事職は任期が14年と長い。中央銀行の独立性を保つためとして、理事には長い任期が与えられている。イエレン氏は2010年にサンフランシスコ連邦準備銀行総裁からFRB副議長に就任した。このため、理事としては2024年まで任期が残っていた。

 このため、イエレン氏は議長職の任期が切れても理事としてFRBに残る可能性があったが、今回あらためて、トランプ大統領への書簡で、パウエル次期議長が正式に就任するのにあわせて理事職も退任する意向を伝えたのである。

 FRBはトランプ氏が指名した金融監督担当のクオールズ副議長がすでに就任しているが、フッシャー氏が10月に副議長職を辞しており、7席ある理事ポストのうち、現時点で既に3つが空席となっている。イエレン氏の退任により、これが4つとなる。

 さらにニューヨーク連銀のダドリー総裁も2018年半ばまでに退任する予定と伝えられている。FOMCの投票権のあるメンバーは理事会からの7名の理事全員と地区連銀から5名の連銀総裁で12名によって構成されている。連銀総裁の参加者のうち1名はニューヨーク連銀総裁が常任となり、残りの4名はその他の地区連銀総裁が1年交替で務める。決定された金融政策に基づいて金融政策を実行するのがニューヨーク連銀であるように、ニューヨーク連銀総裁も立場上は副議長クラスとなっている。

 つまりダドリー総裁も辞任するとなれば、FOMCの投票権を持つメンバーがもうひとつ減ることになる。FRB理事は大統領が任命し、上院の承認を受ける必要がある。これに対してニューヨ-クの総裁はニューヨーク連銀理事会が後任指名のための委員会を設置し候補者を指名するようである。

 いずれにしても今後、FOMCの投票権を持つメンバーにトランプ大統領が指名するとみられる4名の理事と、同じく投票権をもつニューヨーク連銀総裁も入れ替わる可能性が高い。これにより、FOMCの今後の勢力図にどのような変化が起きるのかも注意する必要がある。


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by nihonkokusai | 2017-11-22 09:45 | Comments(0)

10月の債券売買、都銀が大きく買い越しに

 11月20日に発表された10月の公社債投資家別売買高によると、都銀は1兆2339億円の買い越しとなった。9月に都銀は1兆1532億円の売り越しとなっており、決算を意識した動きとみられる。都銀は9月に中期債を9050億円売り越していたが、10月には中期債を1兆5060億円買い越していた。

 海外投資家は10月に8963億円買い越しとなっていた。9月は2兆4042億円と久々に大きく買い越していたが、10月の買い越し額は7月以来の1兆円割れとなった。海外投資家は長期債を3366億円、中期債を4360億円買い越していた。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -12339(2421、1054、-15060)

地方銀行 -4913(-440、-1258、-1342)

信託銀行 -946(-828、-3162、3866)

農林系金融機関 -4457(-2640、177、0)

第二地銀協加盟行 -1350(-560、-391、0)

信用金庫 -3802(-884、-619、20)

その他金融機関 -743(531、-241、4)

生保・損保 -4103(-2059、-10、-285)

投資信託 -1174(-222、6、-935)

官公庁共済組合 -226(-143、2、0)

事業法人 -750(-59、-4、2)

その他法人 -587(-164、-5、431)

外国人 -8963(496、-3366、-4360)

個人 237(0、22、3)

その他 4230(3274、-394、5094)

債券ディーラー 186(81、-8、209)

 10月の全体の国債売買高は183兆円程度となり、9月の201兆円程度から減少していた。全体の中期ゾーンの売買高は10月は51兆円程度となり、50兆円台を維持させているが、このうちの海外投資家は26兆円程度となり、9月の30兆円程度からは減少した。

 10月の債券相場は9月の下降トレンドがいったん収まり、債券先物で150円台前半主体のもみ合い相場となっていた。このなかで都銀などは決算を意識した売買を行っていたとみられ、相場そのものは膠着相場となっていたが、それなりに出来高も維持していた。


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by nihonkokusai | 2017-11-21 09:14 | 債券市場 | Comments(0)

マネーの膨張は何を招くのか

 日経新聞が11月14日から連載をはじめた「モネータ 女神の警告」という特集が面白い。14日の「第一部 異次元緩和の領域」ではいくつか興味深い指摘があった。

 そのひとつが、カンボジアでの通貨の流通のうち85%がドルであるとの指摘である。カンボジアの自国通貨のリエルは15%であるが、これは主に少額貨幣のセントが使えない分の代用になっているようである。カンボジアの地価は急騰し、バブルの様相を呈しており、FRBの出口戦略次第ではカンボジア経済に大きな影響を与えかねない状況になっている。

 もうひとつの興味深い指摘が、アップルの保有する1500億ドルもの社債である。保有社債そのものではなく、1500億ドルの余資を抱えている点に注意したい。余資は積み上がる一方となっている。これはもちろんアップルの業績好調による面が大きいものの、重厚長大産業のように巨額の設備投資が必要ないデジタル産業であることも大きい。米国経済を支えているのが、いわゆるハイテク産業であり、このような余資が積み上がりやすい環境となっている。

 さらに世界銀行の統計を基に2016年の通貨供給量が87.9調ドルと日本円で約1京円に膨らんでいる点も指摘している。2000年代半ばまでは、この世界全体のマネーの増加と世界全体のGDPがほぼ同じ規模で膨らんできた。ところが、リーマン危機後の日米欧の中銀による金融緩和策によって、マネーだけが膨らみ続けGDPを大きく上回る状況となってきた。

 特集のタイトルにあった「モネータ」とは英語のマネーの語源となったラテン語だそうだが、そのマネーには3つの機能がある。価値の保存機能、交換機能(決済機能)、価値の尺度機能である。

 日本など先進国では長寿社会となり老後に不安を抱えた個人とともに、企業なども余資を蓄えている。これはマネーの保存機能を重視していると言えよう。金利は極めて低い状態となっているが、積極的な投資というよりも価値の保存が優先されているように思われる。

 カンボジアなどではマネーの交換機能を重視するあまり、他国通貨への依存度を深め、それは自国内で調整が利かないリスクを孕むことになる。

 マネーの価値尺度という機能面では、これだけのマネーの流通量がありながら、その価値を維持し続けている。つまりインフレが抑制されている。

 日本の物価の低迷の要因を含めて、1990年あたりからマネーを巡る外部環境が大きく変化した。このあたりを認識しておかないと、いまの置かれた状況が読めなくなる。さらに今後、マネーの膨張にブレーキが掛かかることが予想され、その際に何が起きるのかも想定しておく必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2017-11-20 09:36 | インフレ・デフレ | Comments(0)

アベノミクス再考の必要性

 2016年の伊勢志摩サミット後に安倍首相は、今年4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げを延期すると表明した。

 伊勢志摩サミットで議長の安倍首相は機動的な財政戦略や構造改革を提案し、リーマン・ショックを引き合いに出して世界経済の危機(クライシス)に懸念を示したが、危機の度合いの表現をめぐって疑問も出たことから調整もあった。欧州の首脳らがかなり困惑したとも伝えられている。

 景況認識は民間エコノミストどころか霞が関内でも共有されていなかったと、11月17日の日経新聞の大機小機でもコメントがあった。

 何故に安倍首相は今年4月の消費税の10%の引き上げは先送りしたのか。現実にリーマン・ショック級の世界経済の危機など起きてはおらず、むしろ長きにわたり景気回復基調は継続し、株価はバブル崩壊後の高値を更新している。

 安倍首相が消費増税を2度に渡り先送りされた背景には、いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の主張が影響していたとされる。アベノミクスの柱が異常な金融緩和策となっていたり、日銀の政策委員人事などをみて明らかである。さらに日銀の異次元緩和によって物価目標達成ができなかったことも2014年4月の消費増税を主犯としているくらいであった。

 しかし、世界的な物価の低迷そのものが日本の消費増税による影響によるわけはない。また、リーマン級の危機どころか、順調に世界経済が回復している。世界経済の回復そのものは、日本の消費増税を延期したり、日銀の異次元緩和によるものではない。株価の上昇など、多少の過剰流動性は生み出しているのかもしれないが、少なくとも日銀の異常な緩和が物価への刺激というバイパスを通じずに直接、雇用の回復に影響を与えているとの見方もおかしい。

 17日の日経新聞の大機小機では次のようなコメントがあった。

 「中央銀行の役割は「パーティーが盛況なときにカクテル入りのパンチボウルを片付けだす」ことにたとえられるが、今の日銀は相変わらず酒を出し続けているどころか、もういいといっている客にまだどうぞと杯を押しつけているようにさえ見える。」

 これがどのような副作用を招きかねないのか。日銀も総裁がその副作用に言及するようになってきた。首相官邸もこのあたりを十分意識しておく必要があり、日銀総裁人事などでもこの点に注意すべきではないかと思われる。



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by nihonkokusai | 2017-11-19 10:21 | Comments(0)

日銀総裁が金利を下げすぎることによる副作用にも言及

 日銀の黒田総裁は13日の『「量的・質的金融緩和」と経済理論』と題するスイス・チューリッヒ大学における講演は、これまでの発言内容と比較して、やや様変わりとなってきたようにも思われた。それを示すものとして、「量的・質的金融緩和」の成果に加え、副作用についても言及していた点である。

 「最適なイールドカーブの把握」との部分では下記の説明があった。

 「金利の年限によって金利低下の効果が異なることも、最適なイールドカーブを考えるうえで考慮すべき一つのポイントです。経済や物価への影響という点では、一般的に、短期から中期の金利低下による効果が大きいと考えられます。企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためです。」

 だからこそ、2013年4月の量的・質的緩和政策の導入まで、日銀による国債の買入は超短期ゾーンが主体であったはずである。また、短い国債の買入により、償還がすぐ来ることで全体の規模の調整が比較的しやすいメリットがある。つまり出口政策を容易比にさせる。2006年の3月の量的緩和策の解除にも、当座預金残高の削減はかなり短期間で可能とされていた。

 「一方、より長めの金利については、保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連があると考えられます。このため、長期・超長期金利の過度な低下は、これらの運用利回りに対する不安感などを惹起し、マインド面を通じて経済に影響を及ぼす可能性に留意する必要があります。」

 この点をあらためて総裁が指摘した意味は大きい。そのために導入したのが2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和による、イールドカーブコントロール「YCC」であった。このYCCの目的はイールドカーブをスティープ化させることであった。それによってある程度「運用利回りに対する不安感」などを後退させることができる。

 「このほか、金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています。これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートとは米プリンストン大学のブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である(ロイターの記事より引用)。リバーサル・レートを引き合いに出して黒田総裁は、金利を下げすぎることによる副作用について、あらためて言及している。これなども今回の総裁発言のなかではあまり過去にはみられないものであった。

 今後、日銀がマイナス金利政策や長い期間の国債の大量買入を主体としている現在の大規模緩和策から調整を図ってくると期待したいところではあるが、市場への影響等を考慮するとそう簡単に修正できるものではない。しかし、それでも結果としてステルステーパリングを行うなど、これまでのかなり緩和に対する前傾守勢を修正しつつあることも確かなのかもしれない。また、これは追加緩和を主張している向きに対する牽制との見方もある。


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by nihonkokusai | 2017-11-17 10:08 | 日銀 | Comments(0)

災害時の金融機関などのパックアップ体制

先日、映画シンゴジラでゴジラが東京駅周辺の建物を破壊し、大手町や日本橋などに避難勧告が出された際の金融市場への影響を想定してみた。この際に日本取引所グループの取引所取引専門部会報告書なども参考にさせていただいたが、日銀をはじめ金融機関も災害時における対応は進めており、それをネットで公開されている資料からあらためて確認してみたい。

 「日本銀行の業務継続体制の整備状況とその評価」とのファイルが日銀のサイトにアップされている。ここで「日本銀行は、災害対策基本法等の関連法令等において、災害時等にも業務を継続すること等を求められている」とある。脚注には下記の説明があった。

 「日本銀行は、災害対策基本法(昭和37年施行)、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)(平成16年施行)などにおいて「指定公共機関」とされており、業務にかかる防災計画を作成し、災害発生時には同計画を実施すること等が求められている。また、首都直下地震対策大綱(平成17年)では、「首都中枢機関(経済中枢)」として位置付けられており、重要な金融・決済機能の当日中の復旧等が求められている。」

 「日本銀行では、重要な経営資源が損なわれる場合に備えて、被災想定に応じた業務継続体制を整備している。具体的には、本店(東京都中央区)、システムセンター(東京都府中市)、役職員といった経営資源が機能不全になったケースに応じて、場合分けしている。そのうえで、大阪に所在するシステム・バックアップセンター、本店の代替業務拠点、大阪支店、業務継続要員などを活用することにより、業務継続を図る体制としている。」

 日銀本店が機能不全となった際には、大阪で代替業務を行うようである。

 日本取引所グループのBCPフォーラム(取引所取引専門部会報告書)によると、こちらも業務オフィスが利用不能になった場合、関東近郊に代替オフィスを確保しているようである。

 それでは民間金融機関はどのような準備をしているのか。これについては日銀による「業務継続体制の整備状況に関するアンケート(2014年9月)調査結果」という資料があった。

 このなかでバックアップオフィスに関する部分を確認してみると「全体の8割強の先が、被災時の重要業務遂行のためのバックアップオフィスを保有しており、保有しているバックアップオフィスの数は「3か所以上」、「1か所」とする先が3割程度、「2か所」の先が2割台半ばとなった」

 「バックアップオフィスで行う主な重要業務としては、「決済関連業務」を挙げる先が最も多く、「資金繰り業務」、「為替業務」等がこれに続く」ともあった。

 これらを見る限り、ゴジラによる首都圏中央部の災害が発生しても、バックアップ体制が機能するであろうと予想される。ただし、システムのバックアップと代替オフィスが準備されていても、問題は「人」であるかと思う。こちらはさすがに完全なバックアップ体制は構築できないため、非常時の課題となる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-11-16 09:43 | 金融 | Comments(0)

ウルグアイで法定デジタル通貨の運用が開始

 11月13日付け日経新聞によると、南米ウルグアイの中央銀行はブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した「法定デジタル通貨」の試験運用を開始したそうである。携帯電話のネットワークを通じ、店舗での支払いや個人間送金が可能になる。

 ブロックチェーン技術を活用した電子通貨といえば価格が乱高下しているビットコインなどがあるが、法定デジタル通貨は民間ではなく中銀など当局が発行するものである。紙幣や硬貨は法定通貨と呼ばれるが、これに対し紙幣や硬貨を使わず、主にネット上でやりとりビットコインなどは「仮想通貨」と呼ばれている。そして中央銀行が発行する仮想通貨は「法定デジタル通貨」と呼ばれている。

 法定デジタル通貨はスウェーデン中銀による「eクローナ」構想、中国人民銀行による「法定数字貨幣」の計画、オランダ「DNBcoin」の開発、カナダの「CAD-coin」など世界各国で研究が進むなか、実用化はウルグアイが初めてとされる。

 日経新聞によると、1万人を対象に、通貨ペソと同価値の法定デジタル通貨「eペソ」2000万ペソ(約7800万円)分を発行。利用希望者は専用サイトで登録し、携帯電話番号で管理するそうである。

「法定デジタル通貨」はどのような利点があるのか。これについては2016年11月に日銀が出していた「中央銀行発行デジタル通貨について」という日銀ビューに記載があった。

日銀ビュー「中央銀行発行デジタル通貨について」

 中央銀行がデジタル通貨を発行することのメリットとして主張される内容のひとつは、「紙の銀行券のハンドリング・コストや保管コストがますます強く意識されるようになっている中、中央銀行が最新の情報技術を活用してデジタル通貨を発行することは、ユーザーの利便性に資するとの主張である」

 ウルグアイが世界に先駆けて法定デジタル通貨の発行に踏み切った背景には、デジタル化による紙幣の維持コスト削減という目的があった。脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)の防止にも役立つとの指摘もある。

 「中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、紙のコスト故に銀行券が仮想通貨に凌駕されるといった事態を避けることができるとの主張」

 これについては特に金融政策の有効性を確保できるとの主張である。ただし、金融政策の有効性とは何かという課題も現在の異次元緩和を継続させている日銀は抱えているようにも思われるが。

 「さらに、中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、仮想通貨との競争を受けたシェア低下による通貨発行益(シニョレッジ)減少を防ぐことができるとの議論がある。」

 日銀は具体的に「法定デジタル通貨」の発行について言及はしていないものの、研究はしているとみられる。他国に比べて紙の通貨への信認が非常に厚い日本ではあるが、「法定」デジタル通貨であれば、それが開始されると一気に普及する可能性は秘めているのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-11-15 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)

シンゴジラのヤシオリ作戦による金融への影響を想定してみた

 11月12日の地上波で初放映されたシンゴジラは大きな反響を呼んだようである。平均視聴率は15.2%と高かったようだが、それよりもネットでの反響が大きかった。すでに映画館などで見た人も多かったはずだが、ツイッターで地上波実況を共有するなどして、ネットも使って視聴者が同時にテレビでのシンゴジラを楽しむという新たな楽しみ方も注目されよう。

 このシンゴジラは日本の首都を直撃した大きな災害に対してどのように政府が対処するのかという面についても、妙にリアリティーがあった。首相官邸地下にある危機管理センターや、立川にある緊急災害対策本部など、実際にある施設の使用が想定された。

 シンゴジラの中での金融に絡んだコメントは限られていた。ただし、証券取引所で株価が急落し、急激な円安が進行するとともに、日本国債が暴落しているというコメントが会話にあった。

 ゴジラの都心に向けた襲撃進路をみると、最終的な対策が取られたのが東京駅であり、その周辺も大きな被害を受けた格好となった。かろうじて東京証券取引所や日本銀行の建物への直接的な被害は免れた格好となっていた。

 しかし、あれだけの大規模作戦(ヤシオリ作戦)が敢行されたとなれば、東京証券取引所や日銀、メガバンクの本店やプライマリーディーラーの本社なども避難対象となっていると想定される。それで果たして金融そのものにどのような影響を与えるのかもシミュレートしておく必要があるのかもしれない。

 有事の際の東京証券取引所などの取引については、「取引所取引専門部会」が4月に報告書を出していた。有事の際にはバックアップ体制に速やかに切り替えることで、清算・決済機能についてはおおむね2時間以内、約定機能についてはリスクとなる事象が発現してからおおむね24時間以内に復旧・再開させることを目標とする体制を構築するよう報告がなされていた。

 参考、「BCPフォーラム取引所取引専門部会 第二次報告書」http://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/crisis-management/bcp-forum/tvdivq0000007c9r-att/1-1.pdf

 日銀についても非常時の対応は検討されていると思われ、バックアップ機能は当然想定されているとみられる。少なくとも金融インフラの基幹ともいえる日銀ネットは機能することが予想される。それでも日銀本店が使えないとなれば、それなりに金融取引に支障が出る可能性はあるかもしれない。大手町にあるメガバンクの本店機能も一時的に喪失するとみられ、こちらもシステム的にはバックアップはあるとしても、人的な作業面等である程度、金融取引に支障が出る可能性はある。

 国債を主体とした債券の取引についてはどうであろうか。国債の入札については日銀ネットが機能していたとしても、プライマリーディーラーの本店なども東京駅周辺にあるため、ある程度の期間は中止せざるをえないではなかろうか。ただし、国債の休債分については、前倒し発行枠などあるため、ある程度の期間であれば休債は可能とみられる。

 国債の取引そのものについても、売買だけでなく決済にも支障が出ることが予想される。日本証券クリアリング機構も東京証券取引所内にある。このため国債の取引は一時的に中止せざるを得ないかもしれない。それでも上記の取引所取引専門部会の報告書にあるように、停止期間がそれほど長期にわたることがないとなれば、市場の混乱も一時的なものとなろう。


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by nihonkokusai | 2017-11-14 09:56 | 金融 | Comments(0)

トランプ大統領がパウエル理事をFRB議長に指名した理由

 米国のトランプ大統領は11月2日に来年2月に任期満了を向かえるイエレンFRB議長の後任に、FRBのパウエル理事を指名した。

 トランプ大統領は5人の候補に絞り込んだとされ、その候補にパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、テイラー米スタンフォード大教授、コーン国家経済会議(NEC)委員長、そして現職のイエレン議長がいた。

 トランプ大統領は米国経済の回復や株価上昇の功労者とも言うべきイエレン議長の再任も考慮に入れていたようである。イエレン議長の前任のバーナンキ氏やその前のグリーンスパン氏は再任されており、イエレン議長の再任の可能性は十分にあった。

 しかし、ここにいくつかの壁が存在していたものとみられる。そのひとつが議会での承認の可能性である。イエレン議長は民主党政権下で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるなどリベラル色が強いとされている。それでなくても議会との衝突も多いトランプ大統領だけに、ここで議会ともめてしまうことは避けたいところであろう。

 そのあたりも考慮してか、ムニューシン財務長官が強くパウエル理事を推していたようである。トランプ大統領は最終的にムニューシン財務長官のアドバイスを受け入れた格好となった。

 イエレン議長とムニューシン財務長官は結構な頻度で会っており、特に反目し合っていたとは思えない。イエレン議長とパウエル理事の考え方も似ている。パウエル理事はイエレン議長の政策に対して表立って異を唱えることなく、むしろイエレン議長を支える立場にあった。ムニューシン財務長官は金融政策への考え方といったものではなく、政治上の理由なども配慮して大統領にアドバイスしたのではなかろうか。

 パウエル理事は歴代のFRB議長と違ってエコノミストではない。しかし、必ずしもFRB議長がエコノミストである必要はなく、すでに5年間、FRB理事を務めており、むしろその実務経験が役立つ可能性も高いのではなかろうか。

 パウエル理事がFRB議長となっても現在のFRBの正常化に向けた路線は継承されよう。むしろ問題となるのは、理事の空席かもしれない。副議長は2人体制となり、クォールズ氏が指名され、上院で承認された。しかし、フィッシャー副議長の辞任によりもうひとつが空席となっている。

 パウエル理事が議長に昇格し、イエレン議長が来年2月で退任するとなれば、理事の空席が増えることで、大きな入れ替わりも想定される。また、ニューヨーク連銀のダドリー総裁も2018年半ばで退任すると発表しており、体制が大きく変わることになりそうである。


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by nihonkokusai | 2017-11-13 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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