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中央銀行による国債大量買いの時代は終焉

 いわゆるリーマン・ショックとギリシャ・ショックと呼ばれた百年に一度のショックが続けておきたことによる世界的な金融経済危機は後退した。リーマン・ショックとはあくまでリーマンの破綻によるショックが大きかったことで象徴的なものとなっているが、米国のサブプライム問題と複雑化した金融商品が原因となっていた。住宅バブルや金余りによる金融資産バブルが崩壊し、欧米の金融機関を直撃したことによる金融不安である。

 ギリシャ・ショックもギリシャの財政に対する懸念が発端ながら、財政に不安を抱えた国をユーロ圏に止められるのかといった問題から、欧州の信用不安が強まり、ギリシャやポルトガル、イタリアなどの国債が急落し、これによって金融経済リスクを強めた。

 これらの金融経済危機に対する財政面からの救済措置には限界もあった。金融危機は金融市場を通じて顕在化していたこともあり、市場参加者の不安を除去する必要もあった。そこで動いたのが中央銀行となる。政策金利の低下余地は限られたことで、日米欧の中央銀行が採用したのが、非伝統的な金融政策となった。その手段として取られたのがマイナス金利政策や、以前に日銀が世界の中央銀行で初めて実施した量的緩和政策であった。

 米国のFRBやイングランド銀行はこの量的緩和を主眼に置いた。ECBは市場の正常化という目的のもとに国債の買入を行った。日銀も国債の買入を増額させていったが、このリスクに対しては長期国債の買入などには手をつけなかった。それでも長期金利は低位で推移していた。

 日米欧の非伝統的な金融緩和策、特にECBの政策が功を奏して、市場はリスク回避の動きを後退させつつあったのが、日本でアベノミクスと呼ばれたものが登場したタイミングとなった。特段、世界的なリスクが強まっていたわけでなく、むしろリスクが後退していたところに、日銀が異次元の金融緩和を行ったことになる。アベノミクスの登場で円安株高が進んだが、あくまでそんなタイミングだからこその動きであり、巻き戻しの動きが一巡すれば落ち着いてしまうことも当然といえる。

 大きなリスクが後退したことで、今度は非常時の金融緩和から正常に戻る動きは当然といえる。英国のEU離脱や新興国の経済への不安等もあり、さらに正常化はつまり金融引き締めにも映ることで市場への影響も警戒され、なかなか踏み出せなかった。日銀はなぜか一層の金融緩和をせざるを得ない状況に追い込まれていった。

 しかし、中央銀行が大量に国債を買い続けるにも限界があり、いつまでも緊急時の対応を続けるわけにもいかない。いち早くそこから脱してきたのは雇用がしっかりしていた米国である。それでもテーパリングとその後の利上げはかなり慎重に行った。ここにきてやっと資産の縮小に手を付けることが予想される。

 ECBも10月にも資産買入の縮小を検討するとみられる。イングランド銀行は新たな国債買入は行っておらず、まずは利上げを視野に入れている。日銀は物価目標を達成するとしてしまったため、出口政策は取れないながらも、政策目標を量から金利に置き換えた上で、国債の買入額を縮小しつつある。

 中央銀行による国債大量買いの時代は終焉しつつある。これは物価が上がってきているからではなく、あくまで大きな危機が去ったからであることを認識する必要があろう。


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by nihonkokusai | 2017-09-15 09:58 | 中央銀行 | Comments(0)

欧米の長期金利は再度上昇か

 ここにきて欧米の長期金利が再び動意を見せつつある。日本の長期金利は日銀の金融政策に抑え込まれているとはいえ、欧米の長期金利の動向に多少なり影響を受けることから、この欧米の長期金利の動向も注意しておく必要がある。

 日米欧の長期金利の推移をみてみると、7月7日あたりをピークに低下基調となっていた。この7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施された。つまり日銀が国債利回りの上昇を抑制させたことがひとつのきっかけと言える。

 ただし、日銀の指し値オペで米国債が買われることはない。米国債が買われて利回りが低下したのは、7月11日の米下院金融委員会の公聴会で、FRBのイエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘したように、米国の物価の低迷が背景にあろう。今月のFOMCでバランスシート縮小を決定する可能性を市場はかなり織り込んでいるが、年内追加利上げに関しては不透明感を強めている。

 ECBも正常化に向けた動きはかなり慎重となっており、ドイツの10年債利回りも7月14日あたりから低下基調となっていた。

 足元の物価が低迷し、FRBやECBの物価目標を下回っていたことで、それぞれ正常化に向けた動きが慎重になるのではとの思惑も働いた。そこに北朝鮮の核実験やミサイル発射により、地政学的リスクが意識され、米国では大型ハリケーンの被害なども警戒され、リスク回避の動きが出た。このため、7月に2.3%台となっていた米長期金利は2.0%近くまで低下したのである。

 ところが9日の建国記念日を迎えた北朝鮮がミサイル発射などの挑発行為に出なかった事や、フロリダ州を直撃したハリケーン被害が警戒されたほど大きくないとの観測から、リスク回避の巻き戻しの動きが強まった。13日の米長期金利は2.20%近辺に戻してきている。ドイツの長期金利も7月の0.6%近辺から8日に0.3%近辺に低下後、12日には0.4%近辺に上昇した。英国の長期金利も7月に1.3%台まで上昇していたのが、9月7日に1%割れとなった。その後12日には1.1%台に上昇していた。

 12日に英国立統計局が発表した8月の英CPIは前年同月比2.9%の上昇と5年超ぶりの水準となり、イングランド銀行の利上げ観測が再燃したことも英国の長期金利の反発要因となっていた。

 北朝鮮リスクは完全に後退したわけではないが、少なくとも米国との軍事衝突という最悪の事態は回避されるであろうとの見方が強まった。今後は9月19、20日のFOMCを控え、再び中央銀行の金融政策の行方が注目材料となることも予想される。

 ここにきてのマインド変化にはECBの動向も影響している。9月7日のECB政策理事会では、金融政策の現状維持を決定したが、市場が注目していたのは、量的緩和縮小に関するドラギ総裁の会見内容となっていた。ドラギ総裁は「決定事項は多く、複雑で、向こう数週間、もしくは数か月で現実化する可能性のあるリスクを考慮するため、特定の期日の指定を巡り慎重さが出ている。大方、こうした決定の多くは10月になされる」と発言していた(ロイター)。

 この発言について市場は、ドラギ総裁は量的緩和縮小に関してかなり慎重と捉えた。しかしその後、7日のECB理事会では資産買い入れ縮小とすることで幅広い合意に達したとあらためて報じられた。量的緩和縮小に関してはすでに話し合いが行われ、10月のECB理事会で決定されるであろうことが再認識された。悲観的なマインドが強まっているときとそうでないときでは、同じ発言でも市場のとらえ方が異なることがある。ECBの動向は当初、長期金利の低下要因にみえたが、その後は上昇要因として意識されたように思われる。

 問題は米国となる。今月のFOMCでは資産縮小に向けた決定がなされると予想され、正常化に向けた動きが一段と進むことになる。ただし、12月のFOMCでの追加利上げが可能なのかは依然不透明であり、フィッシャー副議長の辞任も少なからず影響を与えよう。どの程度までの物価水準を容認するのか、9月のFOMCは議長会見も予定されていることで、イエレン議長の会見内容も今後の日米欧の長期金利の動向に影響を与えてこよう。


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by nihonkokusai | 2017-09-14 10:08 | 債券市場 | Comments(0)

長期金利を下げると本当に我々に恩恵があるのか

 現在、日銀が行っている長短金利操作付き量的・質的緩和という政策の目的は、大量の国債等の資産買入を維持させ、さらに短期金利だけでなく長期金利にも働きかけて金利を押さえ込むことになる。これによって金融緩和効果を発揮させようとするものである。

 とは言え、現実にこの「長短金利操作付き量的・質的緩和」が本当はどのような政策であるのかを理解することは難しいのではないかと思う。もちろん一見すると、とにかく緩和効果のありそうなものを詰め込んだパッケージに見える。しかし、これは想定通りに事が運ばなかったことによる修正に次ぐ修正の結果といえる。

 アベノミクスによって、日銀にリフレ政策が押しつけられ、その結果出てきたのが、2013年4月の量的・質的緩和政策である。金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに変更した上で、期間の長い国債を含めて資産を金融機関などから大量に買い入れることで市場にインパクトを与え、その資金を市場に流入させることによって金融機関のポートフォリオのリバランス等を狙ったものとなる。

 国債などの資産買入によって国債が買われて長期金利が低下し、ETF等の買入で株価の下支え要因となる。日銀の金融政策は直接、物価等に働きかけるものではない。中央銀行の金融政策はあくまで市場を通じて物価や経済に働きかけるものとなる。

 人々のインフレ予想に働きかけることも大きな目的としているが、人々が果たしてどれだけ日銀の金融政策を理解し、それで予想を変えうるのか。日銀が動けば我々の物価に対する予想が本当に変化するのか。日銀がインフレターゲットを行っているからといって商品価格を値上げする必要はないと言っていた消費関連大手の経営者の発言もあったが、それが本音であろう。

 日本の長期金利は確かに日銀の異次元緩和で下がった。しかし、物価はいっこうに上がらず、量的・質的緩和を拡大しても効果はなく、そこで打った手段がマイナス金利政策となったが、これが評判が悪かった。

 金利をなくしたりマイナスにしていったい誰が喜ぶのか。実体経済が悪くてどうしようもない事態に対する緊急時の政策ならまだしも、日本の景気はそれほど悪くない。物価もむしろゼロ%近辺で安定している。それにも関わらず金利をマイナスにまでする必要はあったのか。

 これで助けられているのは巨額の債務を抱えた政府である。だから予算編成も大盤振る舞いできる。それは我々の将来に対する不安感を多少なり後退させうるが時間稼ぎにしか過ぎない。そしてそれがどれだけの経済政策になるのか。日銀が無理に抑えず、多少なり金利がつけば我々の利息収入が増え、それにより消費を上向くことも予想される。つまりそれは我々の犠牲の上になりたっている政策ともいえる。

 日本の長期金利を抑えることで日米金利差が拡大し、それが円安を招き、株価にも影響を与えるとの意見もあるかもしれない。しかし、為替は日米金利差だけで動くものではない。また、昔に比べて円安による日本への経済効果そのものも縮小しており、本当に日本の長期金利をここまで押さえ込む必要があるのか。このあたりそろそろ再検証する必要もあるではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-09-13 09:53 | 債券市場 | Comments(0)

FRBのフィッシャー副議長が辞める理由

 FRBは6日、フィッシャー副議長が辞表を提出したと発表した。「個人的な理由」という。FRB理事からも退くそうで、完全にFRBの職を辞することになる。

 スタンレー・フィッシャー氏は、米国とイスラエルの両国籍を持ち、前職はイスラエル銀行の総裁だった。バーナンキFRB議長やドラギECB総裁などを教えた大学教授だけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行などで実務も経験している。指名した当時のオバマ大統領は、世界で最も優秀で経験豊かな経済政策の専門家のひとりとして広く認められていると語ったが、それに嘘偽りはないであろう。

 バーナンキ元FRB議長やドラギECB総裁が一目置く存在であるフィッシャー氏の存在は、イエレン次期議長を補佐するだけの立場には止まらなかったと思われる。

 FRBの舵取りはイエレン氏とフィッシャー氏が二人三脚で行ってきたとみられ、特に正常化の道筋をつけたのもフィッシャー副議長の働きが大きかったと予想される。そのフィッシャー氏が何故、任期を残してこのタイミングで退任するのであろうか。ちなみに任期は副議長としては2018年6月12日まで、理事としては2020年1月末となっていた。

 フィッシャー副議長は8月に英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューに応じ、米国政府が銀行規制の緩和に取り組んでいることについて「危険であり、極めて近視眼的だ」と述べていた。

 FRBではタルーロ理事が今年4月に2022年1月まで5年の任期を残して途中辞任した。金融危機後に銀行規制担当の副議長を設置することが決定したもののオバマ政権は与野党対立のあおりで同ポストの任命を見送っていた。このため実質的にタルーロ氏が理事ポストのままで金融規制担当を担ってきた。ところがトランプ政権となり、同氏に対し共和党から反発も広がっていた。このため早期辞任となってしまったのである。

 トランプ政権は7月10日にFRB副議長に元財務次官のランダル・クオールズ氏を指名すると正式発表した。クオールズ氏は2005~2006年のブッシュ政権下で国内金融担当の財務次官を務め、金融規制に精通しているとされる。しかし、タルーロ理事の辞任からもわかるように、クオールズ氏が就任すれば規制緩和へ路線転向を図ることになる。

 フッシャー氏とクオールズ氏が金融規制に関して意見の食い違いが生じることが予想された。しかし、それ以前にフィッシャー氏としてはトランプ政権による銀行規制の緩和そのものに反対であり、結果としてタルーロ理事と同様の早期辞任というかたち取らざるを得なくなったものとみられる。

 フッシャー氏が辞任となれば、まだクオールズ氏が議会の承認待ち状態となっていることもあり、7名の理事のうち空席が4名という事態となる。イエレン議長にとっても強力な支持者を失うことになる。FRBの部屋はイエレン議長のとなりとされるブレイナード理事は正常化に向けた特に利上げに関しては極めて慎重である。ニューヨーク連銀のダドリー総裁もイエレン議長を支えてきた人物であるが、それでもフィッシャー氏の抜けた穴は大きすぎる。さらにはトランプ政権との対応に今後いっそう苦慮しかねない。イエレン議長が続投する可能性はこれでむしろ薄れた可能性もあるのではないか。


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by nihonkokusai | 2017-09-12 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

長期金利のマイナス化の背景

9月1日の債券市場では後場に入り債券先物が一段高となり、引けにかけて10年国債のカレント(直近発行された銘柄)である347回債がマイナス0.005%をつけた。10年国債のカレント物の利回りを日本では長期金利と呼んでおり、昨年11月16日以来の長期金利のマイナス化となった。

 何故、日本の長期金利が再びマイナスとなったのであろうか。日銀がさらなる金融緩和を行うような兆しはない。むしろ国債買入をここにきて少しずつ減額していたぐらいである。それでは何が日本の長期金利を押し下げたのか。ここには2つの要因が絡んでいると私はみている。

 日本の10年債利回りの推移をみると、7月7日に日銀が指し値オペを実施したあたりから、低下基調となっていた。この7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施された。つまり日銀が国債利回りの上昇を抑制させたことがひとつのきっかけとなっていた。

 7月7日に日銀は指し値オペとともに国債買入で5年超10年を5000億円に増額し、7月12日には3年超5年以下を3300億円に300億円増額していた。その後の利回りの低下もあり、5年超10年以下は8月25日に300億円減額したことで今年1月27日前の水準の4100億円まで戻していた。また、9月1日には3年超5年以下を300億円減らして3000億円と7月7日以前の水準に戻している。

 日銀が買入額を減らすことは債券の需給面ではマイナス要因(債券の売り要因、利回りの上昇要因)となる。それにも関わらず、なぜここにきて長期金利はさらに低下基調を強めているのか。それには日銀が7月7日に長期金利の上昇に指し値オペでストップをかけたタイミングで、米国の長期金利も低下基調となっていたためとみられる。

 日銀の指し値オペによって、米国債が買われることはない。米国債が買われて利回りが低下したのは、7月11日の米下院金融委員会の公聴会で、FRBのイエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘したように、米国の物価の低迷が背景にある。9月のFOMCでバランスシート縮小を決定する可能性を市場はかなり織り込んでいるが、年内追加利上げに関しては不透明感を強めている。ECBも正常化に向けた動きはかなり慎重となっており、ドイツの10年債利回りも7月14日あたりから低下基調となっていた。

 このように米国の物価の低迷が米国債の利回りを低下させ、それによって日本の長期金利もマイナスに低下した。しかし、長い期間の国債利回りの低下は資金運用にとってもあまり好ましいものではないため、ここからのマイナス金利の深掘りは考えにくいことも確かである。



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by nihonkokusai | 2017-09-11 09:50 | 債券市場 | Comments(0)

量的緩和政策の縮小にも慎重なECB

 9月7日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定したが、市場が注目していたのは、量的緩和縮小に関するドラギ総裁の会見内容となっていた。

 7日の欧州市場では株式市場は上昇し、ユーロ圏の国債もイタリアやポルトガルなどを中心に買い進まれた。外為市場ではユーロがドルに対して買われユーロドルは1.2ドルを超えてきた。この動きをどう説明したら良いのか、ドラギ総裁の発言内容などから追ってみたい。

 欧州の株式市場はユーロ高などよりも、ECBが2017年の成長率見通しを2.2%と、6月時点の1.9%から上方修正したことを素直に好感したようである。

 ユーロ圏の国債が大きく買われたのは、量的緩和政策の縮小に着手することに関してのドラギ総裁の会見での発言によるものとみられる。結論としては2018年以降の資産買い入れの縮小について予備的な議論を始めたものの、これに関しての発言は極めて慎重となっていた。

 ドラギ総裁は「決定事項は多く、複雑で、向こう数週間、もしくは数か月で現実化する可能性のあるリスクを考慮するため、特定の期日の指定を巡り慎重さが出ている。大方、こうした決定の多くは10月になされる」と発言していた(ロイター)。

 10月に量的緩和政策の縮小に関して議論がスタートされることは市場はかなり織り込んでいたが、積極的に量的緩和縮小に向かって動いているというよりも、極めて緩和的な環境を維持することが重視されている。このあたりFRBの正常化に向けた動きに比べて、かなり慎重になっている。これを受けてユーロ圏の国債が買い進まれたということになろうか。

 ユーロに関してドラギ総裁は、このところの為替相場のボラティリティーは不透明性の要因となっている、といったようにユーロを巡る懸念を繰り返し表明したものの、何かしらの対策を打つことは表明しなかった。そして予定通り10月にも量的緩和政策の縮小に関して議論がスタートするであろうとの見方が、ユーロ買いを誘ったのではないかとみられる。

 量的緩和政策の縮小に関しては正常化に向けた意味合いよりも、ECBにとっては日銀と同様に大規模な買入継続に対する限界が見えてきたことや、各国の財政規律を緩めてしまうとの懸念などがその大きな要因となっている可能性がある。

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by nihonkokusai | 2017-09-09 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

ハリケーンが米国の債務上限問題を進展させる結果に

 米国のトランプ大統領と議会指導部はハリケーン「ハービー」の被害救済法案に、12月15日までの債務上限引き上げと政府運営資金の確保を抱き合わせることで合意したと伝えられた。

 テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらした。テキサス州のアボット知事は今回の被災地域は2005年の「カトリーナ」襲来時よりも大きいと述べていた(NEWSWEEK)。

 このハリケーンの被害救済が米国の政治に思わぬ影響を与えることとなった。今回のハリケーンの被害を受けて、トランプ政権は145.5億ドルの補正予算を議会に要請することとなり、うち78.5億ドルを2018年度の暫定予算に組み入れる方針と伝えられた。

 トランプ大統領は8月22日のアリゾナ州フェニックスで開かれた支持者の集会で、政府を閉鎖しなければならなくても壁を建設すると述べた。これにより政府閉鎖への懸念が強まった。もうひとつの問題がここに絡む。債務上限問題である。財務省は9月29日までに議会が債務上限を引き上げを要望している。いずれの法案も上院を通すには民主党の一部が支持しなければ可決できない。ここに民主党が反対するメキシコ国境の壁建設の予算を強引に求めると、かなりこじれ、政府機関の閉鎖やデフォルトが現実味を帯びてきたのである。

 しかし、ハリケーン「ハービー」による緊急事態に対処するため、ここで議会が動き、トランプ大統領も強行な発言を控えてきた。被害対策の補正予算を通すため、それぞれ妥協の必要が出てきたといえる。ここで主義主張を振りかざしては、国民からの批判がより強まることも予想されるためである。

 その結果が12月15日までの債務上限引き上げと政府運営資金の確保を抱き合わせることでの合意である。ただし、これは野党である民主党指導部が明らかにしたものである。

 共和党指導部と民主党指導部との会合で、共和党の指導部は18か月の債務上限引き上げを要請し、6か月引き上げ案も可能性として挙げた。しかし、民主党のペロシ下院院内総務、シューマー上院院内総務の両氏は6か月引き上げ案を拒否し、債務上限3か月の引き上げ案を出していた。

 ムニューシン財務長官ら共和党メンバー全員が、より長期間の債務上限引き上げを支持したが、トランプ大統領は結果として野党・民主党の債務上限3か月の引き上げ案を受け入れた格好となったのである。

 ちなみに上院(定数100)での可決には60の賛成票が必要となるが、上院の共和党議席は52で、民主党の一部が支持しなければ可決できない。

 共和党のライアン下院議長は民主党案に強く反発していたようだが、補正予算を早期に通すためには、民主党案を飲まざるを得なかったことも確かであろうが、これでまたトランプ大統領と共和党の議会首脳部との間に溝が拡がった可能性もある。しかし、市場で懸念されていた政府機関閉鎖の懸念とデフォルトの懸念がひとまず後退したことも確かである。


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by nihonkokusai | 2017-09-08 10:06 | 国際情勢 | Comments(0)

FRBの年内利上げに黄色信号

 FRBのブレイナード理事は5日のニューヨークでの講演で、「物価上昇率が(2%の)目標達成に向けて軌道に乗っていると確信が持てるまで、追加利上げには慎重になるべきだ」と発言した。

 これを受けてFRBによる年内の利上げ観測が後退し、地政学的リスクやハリケーンのイルマが勢力を強めていることも意識され、5日に米債は買い進まれて、10年債利回りは2.06%と1日の2.16%から大きく低下した。

 格付け会社ムーディーズは米国がデフォルトに陥れば最上級の格付けを下げると表明したことも、リスク回避要因となっていた。米国債の格下げ観測で米債が買われるというのも興味深い。実際に2011年8月6日にS&Pが米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げた際に米国債は売られるのではなくリスク回避の動きから買い進まれていた。

 それはさておき、ブレイナード理事は市場を動揺させるほどのサプライズなものではない。7月10日にもブレイナード理事は、バランスシート縮小について早期に進めることを支持した上で、追加利上げについては慎重な姿勢を示していた。

 元々ブレイナード理事はハト派とされ、利上げには慎重な姿勢を示すとみられていたことで違和感はない。ただし、このタイミングでの同じような発言が市場に多少なりインパクトを与えたのは、イエレン議長のこれまでの発言内容と足元物価の動向が影響していた。

 イエレン議長は、ここ数か月の物価指標が著しく低水準にとどまっていることは、FRBも確認しているものの、それは一時的要因が物価昇を抑制しているとの認識であった。ところが、米商務省が8月31日発表した7月の個人消費支出(PCE)統計によると、FRBが利上げ判断で重視するPCEデフレーターは前年同月比1.4%上昇にとどまり、目標の2%に届いていなかった。

 市場ではここにきての物価の低迷が一時的なものではないかもしれないとの見方も強めている。ジャクソンホールの講演でイエレン議長が金融政策に触れなかったことも、利上げについては慎重になっていたためではないかとの見方もできなくはない。

 9月のFOMCでのバランスシート縮小の決定については、むしろない方がサプライズとなっている。しかし、12月の利上げについてはFRB内部でも、また市場の観測でもかなり不透明感が強まっていることは事実なのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-09-07 09:58 | 中央銀行 | Comments(0)

金融市場との対話が何故必要なのか

 市場との対話というのは、たとえば財務省や日銀などがその政策を実施するにあたって市場参加者の意向も配慮するということになろうか。

 日本で金利が自由化されたのはそれほど大昔のことではない。国債が市場で積極的に売買されて国債の利回りが市場で決定されるようになったこともそれほど昔ではない。

 1985年に金利が市場の実勢で決められる大口定期預金が導入され、また金融機関によるフルディーリング開始されたのが1985年であり、このあたりから金利が市場で決定されるようになった。1994年に民間銀行の金利は完全に自由化される。

 財務省や日銀が市場との対話を本格化させるきっかけとなったのが1998年だと思われる。この年に改正日本銀行法が施行され、金融政策決定会合が始まった。これまでの日銀の金融政策の透明性は高くなかったのが、改正日銀法により独立性を強めるとともに、透明性も強め、それはつまり市場と直接向き合うようになった。政策金利も公定歩合(日銀貸出の基準金利)から市場で決定される無担保コール翌日物金利に変わった。

 1998年には大蔵省資金運用部の国債運用に関する報道をきっかけとした運用部ショックと呼ばれた国債急落が起きた。これをきっかけに当時の大蔵省は市場の対話を重視しながらの国債管理政策を進めることになる。その結果のひとつとして日本版プライマリーディーラー制度などが作られた。

 日銀も金融政策に関しては市場と直接向き合う必要がある。そもそも現在の金融政策は金融調整によって市場で形成される金利に働きかけて、経済や物価動向に影響を与えようとするものである。

 ところがアベノミクスによる政策によって状況が大きく変わった。まさに先祖返りとも言うべき状況となってしまっているのである。国債の大量発行などもあって金利は自由化された。ところが日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和政策は日銀が国債を年間発行額分も買い込んで、さらにその長期金利も操作しようとするものであり、ここに市場の思惑等は入り込めなくなってしまっている。こうなると市場との対話は当然失われてしまうリスクが存在する。

 別に政府が大量に発行する国債をすべて日銀が購入するとなれば、市場などいらないということにもなる。しかし、このパターンは歴史上数々の悲劇を生んできたものであり、日本でも財政法で本来禁じられている中央銀行による国債引受となんら変わらないものとなる。現在のやり方がこのまま永久に続けられるとは思えない。

 市場もいずれ日銀も出口を模索することで、いまの財政ファイナンスに近い状況は解消されるはずと認識し、国債に対する信認は維持されている。しかし、本当に出口からすんなり出られるのかは、日銀と市場との対話に掛かっている。これに失敗することになると国債価格の急変という事態も招きかねない。もし出口から出られないとなれば、今度は国債への信認そのものが失われかねない。いずれこの市場との対話が大きなキーになることも予想されるのである。


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by nihonkokusai | 2017-09-06 09:21 | 債券市場 | Comments(0)

日本の長期金利が再びマイナスに

 9月1日の債券市場では、後場に入り先物が一段高となり、引けにかけて10年国債のカレント(直近発行された銘柄)である347回債がマイナス0.005%をつけ、昨年11月16日以来の長期金利のマイナス化となった。

 日本の長期金利は慣例で、10年国債のなかで最近発行されたカレント物の利回り(単利)を差している。実は10年国債のなかでもカレント以外のものはすでに利回りがマイナスとなっていたことで、カレントのマイナス化は時間の問題となっていた。

 日本の10年債利回りは7月7日に日銀が指し値オペを実施したあたりから、低下基調となっている。ちなみに7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施されている。

 7月7日には指し値オペとともに国債買入で5年超10年を5000億円に増額し、7月12日には3年超5年以下を3300億円に300億円増額していた。その後の利回りの低下もあり、5年超10年以下は8月25日に300億円減額したことで今年1月27日前の水準の4100億円まで戻していた。また、9月1日には3年超5年以下を300億円減らして3000億円と7月7日以前の水準に戻している。

 これらの国債買入の減額は売り要因とはならず、むしろ国債は買い進まれている。それだけ地合が好転しているということであるが、その背景には米国の長期金利の低下がある。

 日銀が指し値オペを実施した7月7日あたりを天井として、米国の長期金利も低下基調となっていたのである。もちろん米国債が日銀のオペレーションの影響を直接受けて買われたわけではなく、物価上昇が抑制されていることもあり、FRBの正常化の動きがかなり慎重になるのではといった思惑もあろう。この米長期金利の低下もあって日本の国債利回りも低下基調となり、日本の長期金利も再びマイナスとなったといえる。

 しかし、日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和の背景には、マイナス金利政策への金融界からの批判等があったことで、イールドカーブを立てることが目的としてあったはずである。そもそも20年債利回りまでマイナスとなってしまい運用難となっていたことが長期金利操作の要因となっていた。つまり市場としては、ここからさらなる10年債利回りのマイナス化は受け入れづらいはずであり、日銀としてもあまりマイナスが深掘りされたくはないのではなかろうか。

 とはいえ外部環境次第ではさらに10年債利回りが低下してしまう可能性はある。4日の債券市場では北朝鮮の核実験によるリスク回避の動きも手伝って、10年債利回りはマイナス0.010%をつけている。なぜ北朝鮮と地理的に近い日本の国債が、北朝鮮の地政学的リスクが意識されて買われるのかといえば、安全資産とされるものへの資金シフトの動きが連想されたためといえる。


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by nihonkokusai | 2017-09-05 10:06 | 債券市場 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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