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日銀の正常化が困難を極める原因のひとつがアベノミクス

米国の中央銀行にあたるFRBは正常化に向けた歩みを着々と進め、カナダの中央銀行も利上げが視野に入りつつある。イングランド銀行では利上げ推進派が3名に増え、こちらもいずれかのタイミングで利上げを決定する可能性が出てきた。ちなみにイングランド銀行は議長である総裁が少数派となることもあるなど、空気など読まずに本当に意味での多数決で金融政策が決定されることがありうる。ECBもひとまず追加緩和に傾斜する姿勢を中立に戻している。

日銀も表向きは物価目標が達成できないことで強力な緩和を推し進めるという姿勢は維持しているものの、政策目標を量から金利に戻したことでステルステーパリングを行うなど、実際には少しブレーキを掛けている。

それでも欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取りつつある中、このままだと日銀だけが取り残されることも予想される。そのためか、ここにきて日銀の出口戦略に対する関心も高くなってきている。しかし、日銀は物価目標達成のためにリフレ政策を取ってしまったことで、自ら退路を塞ぎ、正常化に向けて舵を取るには多くの障壁を作ってしまった。

リーマン・ショックに代表される米国の金融機関の経営危機が世界的なリスクを増大させ、そのあとギリシャの財政問題がユーロというシステムの危機を迎え、それぞれ百年に一度という世界の金融経済危機を迎えた。それに対処するには最終的に中央銀行の金融政策に依存せざるを得なかった。

当時のFRBのバーナンキ議長やECBのドラギ総裁なども、日銀が試していた量的緩和政策などの非伝統政策に追い込まれたというより、壮大な実験を自ら試したかったこともあったのかもしれない。そう簡単にオペなどで売れないであろう長い期間の国債の買い入れ等を主体とした非伝統的手段を打ち出した。それらが結果的に市場の不安感を後退させて、百年に一度のリスクは沈静化していった。

そのようなタイミングで出来たのが、世界的なリスクに対応するため、ではなく長く続くデフレ脱却を掲げたアベノミクスである。デフレは日銀の金融政策の踏み込みの甘さが原因として、リフレ派の主張を取り入れたのがアベノミクスであった。

危機対応ではなくデフレ対応の大胆な金融緩和を柱としたアベノミクスは、そのタイミングがたまたま世界的な金融危機の後退期にあたり、それが急激な円高の巻き戻しを呼び、急速な株高を誘発した。円安効果と世界的なリスクの後退、原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要なども加わり、一時的に物価も上昇しコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した。しかし1年後の円安効果が剥落するなどして、CPIは再びゼロ近傍となってしまった。

あのタイミングで日銀が嫌っていたはずのリフレ政策を時の政権が強制的に打ち出したことで、円安などによる一時的な物価上昇は起きたが、それは日銀が長い期間の国債を大量に購入した結果によるものではなかった。ヘッジファンドなどの仕掛けによるポジション調整が円高トレンドを変えさせた影響が大きかった。だから物価上昇が長続きしなかった。

日銀の異次元緩和で物価目標達成が可能という前提に問題があったことを証明するのに4年以上の歳月が必要となった。しかし、それは当然日銀も現政権も認めることはしないであろう。実はそれが日銀が正常化を困難とする大きな足かせとなってしまっているのである。


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by nihonkokusai | 2017-06-20 10:00 | 日銀 | Comments(0)

カナダ銀行(中央銀行)も利上げを模索

カナダの中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)のウィルキンス上級副総裁は6月12日のマニトバ州ウィニペグでの講演で、国内の景気回復が各地域やセクターに広がっていると強調し、政策当局者に「勇気づけられる理由」を与えていると述べたそうである。経済が勢いを増しつつある中、利上げの準備が整っていると、これまでで最も強い調子で示唆した。また、ポロズ総裁も13日、CBCラジオに対し、利下げは経済をショックから守るという役割を果たしたとの認識を示し、「足元の経済は勢いを強めつつあり、それも特定の分野ではなく幅広い経済でそうした状況と見受けられる」と述べていた(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

カナダ銀行は今年1月18日に「利下げ」を検討したことが明らかになっていた。1月20日にトランプ氏が次期米国大統領に就任したが、これによる影響なども考慮していた可能性がある。しかし4月にカナダ銀行が政策金利を据え置いた際、ポロズ総裁は記者会見で、今回は「利下げ」は議題に上らなかったと明言しており、ハト派的なトーンは後退し、「中立的な立場」であることを明らかにしていた。5月24日の会合でも金融政策の据え置きを発表し、カナダ銀行は2015年7月以来、約2年間、政策金利を0.5%に据え置いている。

今回のウィルキンス副総裁やポロズ総裁の発言からは、利下げによる効果が発揮されて、国内の景気回復が顕著となりつつあるなか、今後は中立的なスタンスからの変更を検討する可能性が示された。もしカナダ銀行の「利上げ」となれば2010年以来となる。ウィルキンス副総裁はトロント住宅市場のバブルを巡る懸念は一蹴したそうだが、このあたりの懸念も背景にあるのかもしれない。

今後のカナダ銀行の金融政策を決める会合の予定は、6月はなく、7月12日、9月6日、10月25日、12月6日となっている。市場ではウィルキンス副総裁らの発言を受けて10月の会合で利上げを決定するのではとの見方が強まっているようであるが、そこまで待たずに決定する可能性もありそうである。

ちなみに現在のイングランド銀行のカーニー総裁は、元カナダ銀行の総裁である。そのイングランド銀行がFRBに続いて正常化に向けて舵を切るかとみていたが、EU離脱決定の影響もあり、ひとまず先送りされ、古巣のカナダ銀行が先に利上げを行う可能性が出てきた。ただし、15日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、フォーブス委員だけでなくマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。カナダ銀行とイングランド銀行の利上げ合戦の行方は、意外に良い勝負となるやもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-06-19 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行で利上げ派が3人に増加した理由とは

6月15日の欧米の国債は珍しく揃って下落していた。これは前日14日に発表された5月の米消費者物価指数が予想に反して前月から0.1%低下となり、今後のFRBの利上げペースについてやや懐疑的な見方となり、米10年債利回りが大きく低下した反動とも言えたが、別の要因も絡んでいた。

14日にはFOMCが開催されて予想通りの追加利上げが決定された。年内はさらに1回、2018年中にも3回の利上げを見込む政策シナリオは維持した。4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明した。さらにイエレン議長は最近のインフレ指標低下は一時的な事柄が要因と指摘していた。それにも関わらず、この日に米債が大きく買い進まれたのは、市場参加者は今後の利上げペースに疑心暗鬼になっていたためとみられる。

そこにまた別途材料が現れた。イングランド銀行である。15日のイングランド銀行の金融政策委員会では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。ただし、これについては今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていたのである。

1~3月期の英国の実質GDP成長率は前期比0.2%増と低調となっていただけでなく、EU離脱そのものも不透明要因となっている。メイ首相が賭けに出た総選挙では、メイ首相の保守党が議席数を減らし過半数割れとなり、さらに不透明感が増している。そのような状況下、イングランド銀行が利上げを行うことはかなり困難とみられていた。

ただし、この不透明感の強まりはポンド安を招き、ポンド安の影響もあって英国の5月の消費者物価指数は前年同月比2.9%もの上昇、英中銀の物価目標の2%を大幅に上回っていた。今回のMPCでの利上げ派はこの物価を意識したものであろう。

これにより、今後イングランド銀行が利上げを決定する可能性が多少なり出てきた。これを受けて15日にはポンドが買われ、英国債が下落した。フランスの国債入札がやや低調となっていたことも材料視された。8日のECB理事会の政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正したことも意識されたことで、ユーロ圏の国債も売り込まれ、それが15日の米国債の売りに繋がった面もあった。

すでにカーニー総裁の古巣であるカナダ銀行も、副総裁から利上げを示唆するような発言が出ていた。欧米の中央銀行ではFRBが先んじて正常化を開始し、それにカナダ銀行、さらにはイングランド銀行が追随してくる可能性が出てきた。方向性までは変えなかったものの、ECBも緩和に傾斜していた姿勢を中立に戻している。日銀はいつでも追加緩和は可能と主張するが、すでにステルステーパリングを行っており、追加緩和といってもマイナス金利の深掘りなど現実的に困難でもある。実質的に日銀も中立スタンスにいるようにみえる。

そもそも現在、非伝統的な金融政策とか、異次元緩和が必要とされるほどの危機的状況にいるわけではない。中央銀行の正常化への歩みは当然といえば当然ながら、あまりに金融緩和に傾きすぎて、なおかつ市場の反応を過度に気にするあまり、出口政策はなかなか難しい。英国を除き物価が目標を下回っていることも、正常化を納得させずらくしている。しかし、いずれにしても日銀以外は新たなリスクが発生するようなことがない限りは、正常化に向けた歩みをはじめる準備をしていることも確かではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-06-17 10:23 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBは予定通りの利上げペースが可能なのか、市場はやや懐疑的に

13日、14日に開催されたFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。投票メンバー9人のうち8人の賛成多数での決定となり、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。

今後の利上げペースは、年内さらに1回を見込み、今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。2018年も3回、2019年も3回程度の追加利上げを見込み、政策金利を長期の中立金利見通しである3%に達成させるという利上げシナリオを維持した。

4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明し、その手段も示した。こちらも予想通り、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなる。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。

これまでのイエレン議長などの発言から、これらの動きはほぼ予想されていたものとなった。ところがこの日の米10年債利回りは一時2.10%と前日の2.21%から大きく低下していたのである。これは噂が売って事実で買う、といった動きではなかったように思われる。

米債が買われたきっかけは、この日発表された5月の消費者物価指数(CPI)であった。CPIの総合指数は前月比0.1%の低下となり、予想外の低下となった。前年同月比では1.9%上昇となり、前月の2.2%の上昇から上昇幅は縮小した。

食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇と予想を下回り、前年同月比では1.7%上昇と、2015年5月以来の低い伸びとなっていた。

日銀の物価目標はコアCPIであるが、FRBの物価目標はPCEデフレーターの総合指数である。しかし、物価をみる上ではCPIも当然意識せざるを得ない。

イエレン議長はFOMC後の会見で、最近のインフレ指標の低下は一時的な事柄が要因と指摘していたが、市場では日銀ほどではないにしろ、物価目標達成はなかなか難しいと読んでいるようである。ちなみにFRBは2018年には2%に達すると予測している。

FRBにとっては正常化に向けて、米長期金利が過剰反応して急騰するよりも、落ち着いた動きの方がやりやすい面もある。しかし、今回の米長期金利が2.6%あたりを目先天井として上がりづらい状況となっているなか、昨日は2.1%と直近の下限程度に低下したという事実の背景には、当局者と市場参加者の物価や今後の利上げペースに対する見方に乖離が生じているようにも伺える。

これがどのように修正されるのか。個人的にはひとまず政策金利は2%程度までの上昇に止め、保有証券縮小計画については淡々と実行することで、正常化はいったん終了させる。その後は物価、経済動向を睨んでの中立的なスタンスに望んでも良いような気もするが、どうしても政策金利は3%という長期の中立金利見通しにまで引き上げる必要性をFRBは意識しているのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-06-16 10:03 | 中央銀行 | Comments(0)

債券先物中心限月が9月限に交代、この債券先物の仕組みについて

 6月12日に債券先物9月限の売買高が6月限の売買高を上回ったことで実質的な中心限月の移行となった。ただし、取引所での中心限月の交代は、正式にはイブニング・前場・後場のオークション取引(つまり立会外取引除く)の出来高が逆転した翌営業日から中心限月の定義が変わる。つまり13日となる。この13日が債券先物6月限の取引最終日となっていた。


 今回はこの債券先物の仕組みについて確認してみたい。債券先物の受渡日は3月、6月、9月、12月の20日(休業日にあたるときは順次繰り下げ)と決められており、この取引期限を限月(げんげつ)と呼んでいる。限月の取引最終日は各限月20日の6日前となっている(休業日は除外する)。


 取引限月が3か月刻みである理由として、当時の債券現先取引などの利用期間がおおむね3か月となっていたことや、日本の国債の利払いが半年ごとであったこと、さらに世界的に金融先物の限月は3か月刻みが標準となっていたことなどが挙げらている。


 ただし、この世界的に3か月刻みとなっていたのは、現在の金融デリバティブの原型となっている堂島の米の先物取引、つまり帳合米商が影響していたのではないかとも思われる。帳合米商では1年を春夏冬の三期にわけてそれぞれ4月28日、10月9日、12月24日を精算日としていた。


 受渡日の近い先物限月のことを期近物、もしくは当限(とうぎり)と呼ぶ。また、受渡日が期近物よりも遠いものは期先物と呼んでいる。そして、出来高が最も多い限月を中心限月と呼ぶ。日本の債券先物については、海外の債券取引などに比べて、取引最終日近くまで最も取引期間の短い期近物が中心限月となり、売買がこれに集中しているという特性がある。


 債券先物の売買の最低単位は1億円(ミニは10分の1)、呼値の単位(価格の最小単位)は額面金額100円につき1銭として裸相場で行う。裸相場とは、経過利子を含まない債券価格のことを示す。このように債券先物は債券であるにもかかわらず、現物債のように利回りで売買されるのではなく、常に価格で売買されていることが特徴となっている。これは債券先物の標準物が、常に利率と残存年数(10年)が同じになるように作られ、価格と利回りが常に一致するためであり、そのため価格の連続性が保たれている。


 債券先物では取引を集中させるため、額面100円、利率6%、残存期間10年の仮想国債を「標準物」としている。決済期日が各限月の20日と固定されているので、売買した日が異なっても残存年数は常に10年であるこの標準物の国債は、現実には存在しない架空の債券である。標準物を取引対象にすることで、対象銘柄を変更する必要がないし、個別銘柄の属性を意識することがない。価格の連続性が維持されることになる。



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by nihonkokusai | 2017-06-15 09:55 | 債券市場 | Comments(0)

FRBの正常化のゴールは政策金利の3%としているが、それは可能なのか

FRBのイエレン議長は今年1月18日の講演で、米雇用の回復とインフレ基調の継続を受け、「2019年末まで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を年2、3回のペースで引き上げる」との見通しをFRB内でおおむね共有していると述べていた。政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくとの見方も示した。

今年3回の利上げと、2018年と2019年も0.25%刻みでそれぞれ3回ずつ引き上げるとすれば2019年末までには3%に届く計算となる。ちなみに6月13、14日でのFOMCで政策金利は0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げられる見込みとなっている。

FRBの物価目標はPCEの物価指数(PCEデフレーター)の総合指数の2%としているが、今年4月のPCEのデフレーターは前年同月比1.7%の上昇となっており、FRBの目標には届いていない。それでもFRBの年内3回程度とする利上げに意向は変えていない。

米国の経済指標は、6月2日に発表された米雇用統計の非農業雇用者数が予想を下回ったが、失業率は4.3%に低下するなど、ややまだら模様となってはいる、しかし総じてしっかりしており、それが米国株式市場にも反映されて、ここにきてS&P500やダウ平均、ナスダックは過去最高値を更新していた。

ハト派の代表格であるはずのブレイナード理事も5月25日に世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示し、「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明した。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた。

トランプ政権の誕生や欧州での選挙などがリスク要因となり、米利上げペースを遅らせる懸念はあったが、いまのところはそのリスクは顕在化していない。欧州ではオランダの総選挙、フランスの大統領選挙でもポピュリズムの台頭は抑えられた。今後、ドイツ、イタリアでの選挙も予定されているが、ユーロというシステムは維持されていくものとみられる。中東や北朝鮮などの地政学的リスクも残るが、こちらも金融市場を混乱させるほどの影響を与えうる可能性はいまのところ小さい。

もちろんこれまで百年に一度とされた金融危機が立て続けに起きるなどしており、油断は禁物ではある。しかし、むしろその歴史的なリスクの後退が、FRBの正常化を可能にさせているともいえる。それでも本当に政策金利を3%にまで引き上げられるのかといえば、低位安定している米長期金利の動きをみても容易ではないようにみえる。個人的にはせいぜい2%あたりが限度かなと思うのであるが。



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by nihonkokusai | 2017-06-12 09:29 | Comments(0)

FRBの正常化のゴールは政策金利の3%としているが、それは可能なのか

FRBのイエレン議長は今年1月18日の講演で、米雇用の回復とインフレ基調の継続を受け、「2019年末まで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を年2、3回のペースで引き上げる」との見通しをFRB内でおおむね共有していると述べていた。政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくとの見方も示した。

今年3回の利上げと、2018年と2019年も0.25%刻みでそれぞれ3回ずつ引き上げるとすれば2019年末までには3%に届く計算となる。ちなみに6月13、14日でのFOMCで政策金利は0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げられる見込みとなっている。

FRBの物価目標はPCEの物価指数(PCEデフレーター)の総合指数の2%としているが、今年4月のPCEのデフレーターは前年同月比1.7%の上昇となっており、FRBの目標には届いていない。それでもFRBの年内3回程度とする利上げに意向は変えていない。

米国の経済指標は、6月2日に発表された米雇用統計の非農業雇用者数が予想を下回ったが、失業率は4.3%に低下するなど、ややまだら模様となってはいる、しかし総じてしっかりしており、それが米国株式市場にも反映されて、ここにきてS&P500やダウ平均、ナスダックは過去最高値を更新していた。

ハト派の代表格であるはずのブレイナード理事も5月25日に世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示し、「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明した。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた。

トランプ政権の誕生や欧州での選挙などがリスク要因となり、米利上げペースを遅らせる懸念はあったが、いまのところはそのリスクは顕在化していない。欧州ではオランダの総選挙、フランスの大統領選挙でもポピュリズムの台頭は抑えられた。今後、ドイツ、イタリアでの選挙も予定されているが、ユーロというシステムは維持されていくものとみられる。中東や北朝鮮などの地政学的リスクも残るが、こちらも金融市場を混乱させるほどの影響を与えうる可能性はいまのところ小さい。

もちろんこれまで百年に一度とされた金融危機が立て続けに起きるなどしており、油断は禁物ではある。しかし、むしろその歴史的なリスクの後退が、FRBの正常化を可能にさせているともいえる。それでも本当に政策金利を3%にまで引き上げられるのかといえば、低位安定している米長期金利の動きをみても容易ではないようにみえる。個人的にはせいぜい2%あたりが限度かなと思うのであるが。



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by nihonkokusai | 2017-06-12 09:29 | Comments(0)

8日の一時的な円高と日本国債の急速な下落の仕掛け人

凍り付いていた債券市場が8日に突然氷解した。同じにドル円も急落し、一時109円30銭台をつけた。いったい何があったのか。

その兆候は中短期債にあった。膠着相場のなかにあって中短期ゾーンの国債がじりじりと売られていた。昨年11月17日に日銀は中期ゾーン主体の急激な金利上昇を抑制するため、初の指し値オペを実施した。その水準が2年利付国債370回の買入利回りでマイナス0.090%、5年利付国債129回の買入利回りはマイナス0.040%であった。

日銀にとっては中短期債の目安として、超過準備の一部にかかる付利のマイナス0.1%がある。長短金利操作付き量的・質的緩和の政策金利は短期でマイナス0.1%、長期でゼロ%程度となる。このため中期ゾーンでのマイナス0.1%以上の利回りに上昇してきたことで、昨年11月17日に指し値オペを実施してきたといえる。

今回も中期債はその水準に接近していた。この背景には中短期債への需要が後退したことがあげられよう。マイナス金利でも買える投資家は限られるというか実質、日銀と海外投資家となる。そのうち日銀は今年度の国債発行額の減少に合わせて買入額を減額した。さらに海外投資家にとってベーシススワップにおけるプレミアムの縮小で妙味が薄れてきた。

ベーシススワップにおけるプレミアムが存在していたのは、国内投資家による外債への需要があった。日銀のマイナス金利政策もあり、国内での利回り追求が難しくなり地銀などを中心に外債投資を増加させていた。円をドルに替える必要があり、その需要の強さがプレミアムを発生させ、外銀などがそのプレミアムの範囲内で多少のマイナス金利でもお釣りがくる日本国債での運用を行っていた。また単純にこのプレミアムによって日本国債投資を行っていた海外投資家も存在していたとみられる。

ところが、昨年12月あたりから国内投資家は外債を売り越すようになった。金融庁が外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に米国債の価格下落が経営に与える影響などの立ち入り検査を実施することなども影響した可能性があるが、いずれにしてもプレミアム分が剥げ落ちた分、日本国債の中短期債への投資妙味が後退した。

6月8日には5年国債の入札が予定されていた。日銀の絶対防衛ラインとみられるマイナス0.1%に接近していたこともあり、これはかなり警戒されていた。8日の前場に2年債利回りはマイナス0.100%、5年債利回りはマイナス0.080%にそれぞれ上昇していた。この日は3か月物TDBの入札もあったが、こちらもマイナス0.1%を上回る結果となっていた。ただし、この日の5年債入札は大手銀行系証券などが積極的に応札したこともあり、順調な結果となった。

このようなタイミングで8日の13時半過ぎあたりから、債券先物とドル円に仕掛け的な売りが入ったのである。ドル円は110円あたりから109円30銭台に下落、債券先物は高値から40銭下落した。40銭というのは以前では普通に動いた値幅ではあったが、ここにきて膠着感が強まっていただけに大きな動きに見えた。債券先物が日中40銭も動いたのは、2月3日に59銭動いて以来となる。しかもここにきての債券先物の日中出来高は1兆円から2兆円台で推移していた。ところが8日の債券先物の日中出来高は限月間スプレッド取引の分を差し引いても5兆円程度あり、なんらかの仕掛け的な動きとみることができる。

また、現物債は10年債も0.075%まで利回りが上昇したが、40年債は1%台に、30年債は0.8%台に利回り上昇するなど超長期ゾーンの下落幅が大きかった。超長期債の商いは中期債などに比べて、さほど多くはないこともあり、これまでも海外投資家が仕掛ける際は超長期債を使うことも多いように思われ、仕掛け的な動きの可能性があった。

同じようなタイミングでドル円も下落し、下げ幅は限られたものの日経平均も下落した。この仕掛け的な売りのきっかけとして、「日銀、出口論は「時期尚早」から「説明重視」に」とのブルームバーグの記事や、日経新聞の「金融庁が地銀の債券保有に新規制」との報道も指摘された。ただし、海外で大きなイベントを控えているなか、国内投資家がポジションを大きく減少させなければいけないほどインパクトのある記事の内容ではなかったように思われる。

むしろここにきての日本の債券市場の中短期債の軟調な地合と5年債入札、さらに海外での英国の総選挙、ECB理事会、コミー前FBI長官の議会証言などを控えて、国内投資家が動きづらいところに、仕掛け的な動きでロスカットなどを誘った可能性がある。

ドル円は8日の段階で110円台を回復し、英国の総選挙、ECB理事会、コミー前FBI長官の議会証言などでは特にサプライズもなく、9日の東京株式市場でも日経平均は2万円台を回復している。

しかし、債券については中短期債の地合悪化は続くとみられる。昨年11月のトランプ相場による急激な金利上昇ではなく、今回はあくまで緩やかな金利上昇に止まっており、9日の日銀の国債買入でも特に増額等の処置はとられていない。中短期債はマイナス0.1%以上の金利ならば、銀行などのニーズも出てくることで自動ブレーキが掛かることへの期待もあるが、いずれにしても海外投資家などの動向見ながら、債券は神経質な展開が継続すると予想される。


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by nihonkokusai | 2017-06-11 10:14 | 債券市場 | Comments(0)

国内投資家は4月の大量の外債の売り越しから、5月は大量の買い越しに転じていた

少し前のデータとなってしまうが、5月11日に公表された4月の対外対内証券投資売買契約の状況によると、居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となってた。

ただし、このデータでは具体的にどの国の債券を売ったのなかまでは把握できなかった。それが6月8日に公表された国際収支の付表で確認することができた。参考までにこの国際収支の付表がアップされるサイトは下記となっており、そのなかで今年4月分の速報値の「付表3」の「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認できる。

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

これによると4月に国内投資家は米国のソブリン債(中長期)を3兆6642億円売り越していた。ソブリン債とは主に国債のことを示すため、米国債を大量に売却していたのである。また、ドイツのソブリン債(中長期)も6319億円売り越していた。

昨年12月からの売り越しの内訳を「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認してみると12月は米債を2兆3894億円、フランスの債券を1483億円売り越していた。1月は米債を1兆6298億円、フランス国債を1894億円売り越し、2月は米債を1326億円、フランス国債を1兆5180億円売り越し。3月は米債は1兆398億円の買い越しとなっていたが、フランス国債を9428億円売り越していた。

4月のフランスのソブリン債(中長期)については1971億円の売り越しに止まっていたため、4月の外債の売り越しの要因はフランス大統領選挙などを睨んだリスク回避とかではなかったようである。

地銀などは日銀のマイナス金利政策の影響で日本国債で利回りが稼げず、外債投資を増加させていた。しかし、金融庁は外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に米国債の価格下落が経営に与える影響などの立ち入り検査を実施することになり、特に4月に地銀などが保有する米国やドイツの国債のポジションをいったん大きく削減させていた可能性もあった。

ところが、6月8日に公表された5月の対外対内証券投資売買契約の状況をみると、今度は 3兆1074億円の買い越しとなっていた。米国債利回りは5月11日あたりに2.4%台に上昇後、直近では2.1%台にまで低下している。これは日本の投資家の買いも背景にあった可能性が出てきた。4月は単純に利益確定売りであった可能性も否定はできない。また、それまでかなり売り越してしまった分、資金の運用先に困っている状況に変わりはなく、米債の利回りなどをみて押し目買いを入れてきた可能性もある。

「5月の対外対内証券投資売買契約の状況」財務省

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/itn_transactions_in_securities/month.pdf


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by nihonkokusai | 2017-06-09 09:43 | 債券市場 | Comments(0)

中期国債利回りが日銀の絶対防衛ライン?に接近中

ここにきて債券市場は膠着感をさらに強めているが、その膠着相場のなかにあって中期ゾーンの国債がじりじりと売られている。債券先物は150円台後半でしっかりしているように、総じて債券相場は堅調ななか中期債、特に2年債が売られている。

5月当初はマイナス0.200%台となっていた2年国債の利回りは本日一時マイナス0.100%まで売られた。また5年債利回りも5月当初はマイナス0.160%あたりだったのが、本日入札を控えていることもあり、マイナス0.080%とマイナス0.1%を割り込んでいる。債券は利回りと価格が反対に動く事に加え、マイナス金利となっていることで、ややっこしいが、マイナス金利幅が縮小していることは利回りが上昇していることになり、利回りが上昇しているということは価格は下落していることになる。

2年債のマイナス0.100%という水準は昨年11月16日につけたマイナス0.095%以来の水準となる。その翌日の11月17日に日銀は初の指し値オペを実施した。しかもその対象に2年債と5年債が入っていた。日銀の指し値オペとは金利上昇を抑制するために行われる。つまりそのような水準までここにきて2年債と5年債利回りは上昇してきたといえる。なぜ昨年11月17日に日銀は指し値オペを実施したのかを振り返ってみたい。

日銀は2016年11月17日に初の国債の指し値オペをオファーした。この目的は何かと問われれば、トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇の抑制となる。

日経QUICKニュース社の取材に答えた日銀の金融市場局の担当者は、指し値オペの実施を初めて通知したことについて「短中期の金利の急速な上昇を踏まえたもの」とした。

黒田日銀総裁は17日午前の参院財政金融委員会で、米金利の上昇につれて日本の金利に上昇圧力がかかる中、長短金利を操作目標としたイールドカーブ・コントロール政策の下では、日本の金利上昇を容認することはないと語った(ロイター)。

日銀が17日は20年国債の入札日であるにも関わらず、異例の国債買入、しかも初の国債の指し値オペをオファーした背景には16日の債券相場の動きがあった。10年債利回りは16日の引け後にプラス0.035%まで上昇し、2年債利回りはマイナス0.095%、5年債利回りはマイナス0.040%に上昇したのである。

日銀によるオペの指し値が、2年利付国債370回の買入利回りでマイナス0.090%、5年利付国債129回の買入利回りはマイナス0.040%とまさに16日に売り込まれた水準近辺であった。

17日の初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識されることとなる。2年債利回りでマイナス0.090%、5年債入利回りでマイナス0.040%の指し値オペの水準もしくは、日銀の超過準備の一部に掛かるマイナス金利、つまり付利のマイナス0.1%がある意味、日銀の防衛ラインともいえる。

ここにきての中期債の利回りの上昇は、海外投資家からのニーズの低下で需給そのものが緩んできたためともいえる。その背景には地銀などが海外の国債投資を抑制しつつあることで、ドルの調達ニーズの後退なども影響している可能性がある。つまり外的要因よりも需給に絡んでの利回り上昇といえる。

昨年11月の指し値オペは利回りの水準というよりも、日銀関係者の発言などから上昇ピッチの速さを意識していた可能性もある。今回のような緩やかな利回り上昇であれば、日銀は無理やり押さえ込むようなことをしてくるのかどうかは疑問である。ただし、一応防衛ラインともいえるマイナス0.1%に近づいたことで指し値オペの警戒とともに、付利の水準を下回ると押し目買いも入るとみられ、いったん利回り上昇にブレーキが掛かることが予想される。


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by nihonkokusai | 2017-06-08 10:13 | 債券市場 | Comments(0)
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