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米国の利上げで注意すべきこと

FRBのイエレン議長などから利上げに向けた前向きの姿勢が示され、3月14日、15日に開催されるFOMCで追加利上げが決定される可能性が強まっている。10日に発表された2月の米雇用統計でも非農業雇用者数が前月比23.5万増と予想を上回ったことも後押し材料になろう。2015年と2016年のFRBによる利上げはそれぞれ12月のFOMCでの1回に止まった。しかし、もし今年は3月に利上げが決定されるとなれば、年複数回の利上げが視野に入る。

3月3日の講演でイエレン議長は、「われわれは支援策の一部の縮小を過度に長期間待てば、将来のある時点で急速な利上げが必要となり、金融市場を混乱させ、米経済をリセッションに陥らせる恐れがある公算を認識している」と語った。経済見通しに修正を加える予想外のイベントがない場合、「金融緩和の度合い」を弱めるスピードは2015年や2016年のような緩慢なものにはならないであろうともコメントしている。

この発言からも年複数回の利上げが意識されていることが伺える。それでは2015年と2016年に1回しかできなかったものが、仮に今年は複数回できるとしたら何が変わったのであろうか。

雇用を中心に米経済が予想以上のペースで回復し、物価もFRBの目標に近くなっていることが挙げられよう。正常化を進め、経済環境に適した政策金利の水準まで引き上げたいとの意向があろう。意外に米長期金利の上昇が慎重となっていることも、利上げを進めやすくなっている面があるかもしれない。

トランプ大統領の登場も影響しているとみられる。しかし、トランプ大統領の経済政策はまだ具体性に乏しいため、その予防策を打つにしてはやや気が早い。ただし、FRB理事や2018年のイエレン議長やフィッシャー副議長の任期なども影響している可能性はある。トランプ政権の意向も不透明なだけに、早めに手を打とうとしていることも考えられる。

そして、3月のオランダ総選挙、4月と5月のフランス大統領選挙を前に利上げを行いたいとの意向があった可能性もある。ポピュリズム政党の躍進を受けて、ユーロ崩壊の可能性などが意識され、市場が動揺するようことになると、再び緩和政策が必要となる可能性がある。そのための糊代を作っておきたいとの意向が働いている可能性もある。ただこれについても、ある意味予防的な動きともみられるため、リスク要因としてまったく影響はないとは言えないが、それほど利上げを急ぐ理由にはならないように思われる。

いずれにしてもFRBの今後の利上げに注意すべきことは、年複数回の利上げを意識しているのか、意識しているとして2015年や2016年のように慎重とならざるを得ない状況に陥ることはないのか。利上げによる長期金利の上昇はどの程度まで容認しているのか、バランスシートの縮小はどのタイミングで行おうとしているのか、あたりとなるとみられる。


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by nihonkokusai | 2017-03-12 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)

大胆な金融緩和にブレーキをかけ始めたECB

ECBは9日の理事会で、主要金利と資産買い入れ策を据え置きを決定した。これは予想通りであり、市場へのインパクトも限定的かとみられていたが、市場はドラギ総裁の会見内容などから、ECBのスタンスの微妙な変化を感じ取ったようである。

ドラギ総裁は理事会後の会見で、ECBは今回の声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言を削除したと表明した。削除理由について「デフレリスクに促された一段の措置の導入に向けた緊急性がもはや存在しないことを示唆するために削除された」と説明した(ロイター)。

さらにドラギ総裁はデフレリスクはおおむね無くなったと言えるとし、市場ベースのインフレ期待は目に見えて高まったと指摘した。また、景気に対するリスクバランスの改善を指摘したほか、利下げを示唆する言及を削除するかどうか協議したことも明らかにした。

この発言を受けて9日の欧州市場ではユーロが買われ、欧州の国債は軒並み売られた。ドイツの10年債利回りは0.42%と前日の0.36%から上昇し、フランスの10年債利回りも1.07%と前日の1.01%から上昇した。オランダやスペイン、イタリア、ポルトガルの国債も売られた。

ECBの追加緩和に対する前傾姿勢に変化がみられ、大胆な緩和政策にややブレーキを掛けた格好となった。日本でリーマン・ショックやギリシャ・ショックと呼ばれた世界的な金融経済危機のための大胆な緩和策は、そろそろ打ち止めとなる。ただし、来週のオランダでの総選挙、フランス大統領選などでポピュリズム政党の躍進の可能性もあり、英国のEU離脱もあってあらたなユーロ危機が訪れる懸念は残る。このためすぐに方向転換はできないものの、大きな危機は去り、物価も上昇しつつあり、循環的な景気回復の勢いが増している可能性もあるなかでの大胆な緩和策が異質に見えてきている。

これは日本も同様である。ただし、日銀は量を求める政策に限界があることもあり、結果として行き着いた先が、長短金利操作付き量的・質的緩和となった。これは全部ありの政策に見えるが、量は目標から外しており、フレキシブルに変更可能な金利を操作目標に戻したことで、すでに大胆な緩和策には結果としてブレーキが掛かった状態となっている。ただし、これを日銀は表だって認めようとはしていない。このあたり黒田総裁は会見等で、少しトーンの変化を示しても良いのではなかろうか。頑なに長期金利の目標値を引き上げることは考えていないのではなく、状況に応じて検討するとしておいた方が、柔軟な対応も可能になるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-03-11 15:10 | 中央銀行 | Comments(0)

美味しい話は怪しい、日銀による国債の直接引受が禁じられている理由

日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり日銀による国債の直接引受を禁じている。

中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。これは過去の歴史の教訓によるものである。

中央銀行による国債引受は麻薬に例えられる。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づく。

中央銀行による国債引受が禁じられているのは日本だけではない。米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。

日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それは金融緩和手段のひとつとなる。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまう。

戦前、高橋是清蔵相による高橋財政と呼ばれた政策で、日銀による国債引受を行った際には、そのリスクも当然把握していたと思われる。しかし、いったん甘い汁を吸ってしまった政府、というよりも特に軍事費の拡大を望んでいた軍部は、この打ち出の小槌を離そうとしなかった。それにより、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となった。このため、戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのである。

ただし、金融緩和を目的とすれば日銀はいくらでも国債を買えてしまい、結果として政府の財政を助けることになる可能性がある。このため、日銀の大胆な金融緩和政策による大量の国債買入の際に、政府と日銀がこれは財政ファイナンスではなく、デフレ脱却のための金融緩和であると強調しているのである。

実際に日本政府は国債が発行しづらいような状況にはないことは確かである。さらに政府も財政再建に向けた姿勢を維持することにより、財政ファイナンスではないと認識されることにもなる。

麻生財務相は9日午後の参院財政金融委員会で、金融政策よりも財政が物価の水準を決めるとのシムズ理論については、「ヘリコプター・マネー」と指摘。「美味しい話は怪しいと思わなければいけない」とし、投資家のジョージ・ソロス氏が薦めに来たが「無責任なあなた方と異なり、私は1億2000万人の国民に責任がある」として拒否したことを明らかにした。その上で「私が大臣の間、内閣にいる間、ヘリマネ、シムズ理論は採用しない」と言い切った。(ロイター)。

ヘリコプター・マネーは財政ファイナンスということであり、この発言は当然のことではあるが、ある意味心強い発言である。


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by nihonkokusai | 2017-03-10 09:44 | 国債 | Comments(2)

美味しい話は怪しい、日銀による国債の直接引受が禁じられている理由

日本では財政法という法律で、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないと定められている。つまり日銀による国債の直接引受を禁じている。

中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。これは過去の歴史の教訓によるものである。

中央銀行による国債引受は麻薬に例えられる。いったん踏み入れてしまうと常用することになり、元には戻れず最後に身を滅ぼすことになる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づく。

中央銀行による国債引受が禁じられているのは日本だけではない。米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。また、1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。

日銀が金融政策の手段として民間から国債を買い入れて資金を供給するのであれば、それは金融緩和手段のひとつとなる。ところが財政の穴埋めを目的としてしまうと、日銀がまさに政府の打ち出の小槌となってしまう。

戦前、高橋是清蔵相による高橋財政と呼ばれた政策で、日銀による国債引受を行った際には、そのリスクも当然把握していたと思われる。しかし、いったん甘い汁を吸ってしまった政府、というよりも特に軍事費の拡大を望んでいた軍部は、この打ち出の小槌を離そうとしなかった。それにより、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となった。このため、戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられたのである。

ただし、金融緩和を目的とすれば日銀はいくらでも国債を買えてしまい、結果として政府の財政を助けることになる可能性がある。このため、日銀の大胆な金融緩和政策による大量の国債買入の際に、政府と日銀がこれは財政ファイナンスではなく、デフレ脱却のための金融緩和であると強調しているのである。

実際に日本政府は国債が発行しづらいような状況にはないことは確かである。さらに政府も財政再建に向けた姿勢を維持することにより、財政ファイナンスではないと認識されることにもなる。

麻生財務相は9日午後の参院財政金融委員会で、金融政策よりも財政が物価の水準を決めるとのシムズ理論については、「ヘリコプター・マネー」と指摘。「美味しい話は怪しいと思わなければいけない」とし、投資家のジョージ・ソロス氏が薦めに来たが「無責任なあなた方と異なり、私は1億2000万人の国民に責任がある」として拒否したことを明らかにした。その上で「私が大臣の間、内閣にいる間、ヘリマネ、シムズ理論は採用しない」と言い切った。(ロイター)。

ヘリコプター・マネーは財政ファイナンスということであり、この発言は当然のことではあるが、ある意味心強い発言である。


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by nihonkokusai | 2017-03-10 09:44 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債の発行額が9年ぶりの高い水準となった理由

財務省は6日に3月15日発行分の個人向け国債の応募額を発表した。3月の個人向け国債の発行予定額は9315億円となり、2月の5727億円から大きく増加した。

3月発行分がわかったことで、2016年度の個人向け国債の発行予定額が算出できる。2016年度の個人向け国債の発行予定額は3種類合計で4兆5556億円となり、2015年の2兆1367億円から倍増し、2007年度の4兆6617億円以来、9年ぶりの高い水準となった。

2008年度以降、低迷し続けていた個人向け国債の発行額が何故、2016年度は大きく増加したのか。個人向け国債の発行額が低迷していた最大の理由が利率の低さにあった。利率の低い状態は2016年度も続いたが、日銀が2016年1月にマイナス金利政策を導入したあたりから状況が変わってきた。

さすがに預貯金金利はマイナスになることはなかったものの0.01%程度に低下したままとなっていた。周りの金利が下がったことで、個人向け国債の最低保証金利の0.05%が相対的に魅力的なものとなったのである。これが個人向け国債発行額増加の最大の理由となろう。

さらに今年3月の発行分の募集は2月であり、ボーナス月でもなんでもないときに大きく増加した理由については、販売する金融機関の事情もあったようである。

個人向け国債は金融機関を通じて販売される。米国では米財務省から直接購入できるが、日本では日銀に個人が口座を持てない等の理由もあって財務省ダイレクトといったものはない。このため証券会社やゆうちょ銀行を含む銀行などが販売している。その際に販売額に応じて、財務省は金融機関に募集発行事務取扱手数料を支払っている。それが2017年4月発行分(3月募集分)から下記のように引き下げられる。

固定3年額面100円あたり40銭が20銭に

固定5年額面100円あたり50銭が30銭に

変動10年額面100円あたり50銭が40銭に

このため金融機関は、個人向け国債が人気化しているタイミングで、しかも手数料が高いうちに積極的に大量に販売しようと、現金を贈呈するといったキャンペーンを強化したものとみられる(キャンペーンの原資は上記手数料となる)。

個人向け国債の販売額の増加は一時的なものとなるのか。それはこの手数料よりも、金利の動向にかかっていると思われる。日銀による長短金利付き量的・質的緩和政策を受け、特に10年変動タイプに影響する10年債利回りは当面、ゼロ%近辺に押さえ込まれることになる。預貯金金利も0.01%近辺のまま推移するとなれば、個人向け国債の最低保障利回りの0.05%の見直し等がない限りは、相対的な優位さは継続する。

しかし、本当に日銀は長短金利を現在の水準のまま、いつまでも押さえ込めるのかという疑問もある。米国はまもなく追加利上げを決定するとみられ、日本の物価もプラスに転じている。金利を取り巻く環境が変わると金利が動き出し、個人向け国債の優位性が薄れる可能性もないとは言えない。それでも安全性が高く、1年という売却できない期間はあれど元本が保証されるなど、個人向け国債は魅力的な金融商品であることに代わりはない。


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by nihonkokusai | 2017-03-09 10:08 | Comments(0)

聞き捨てならない国債に対する安倍首相発言

3月7日の日経新聞の日本国債という特集記事のなかで、次のような安倍首相の発言が紹介されていた。

「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ。国債は実質的には日銀が全部引き受けている。いまはマイナス金利だし、実質的に借金は増えない」

この発言は昨年秋、複数の与党議員を前に首相が漏らしていたものだそうである。また次のような首相発言も記事のなかで紹介されていた。

「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」

日銀にインフレターゲットを押しつけ、その結果として異次元緩和政策という、日銀が大胆に国債を中心とした資産を買い入れる政策を打ち出した。これは日本の財政を支援するためではなく、物価目標を達成するために決定されたものである。物価は一時的に上昇しても再びマイナスに落ち込んだ。日銀は量を拡大し、それでもダメなのでマイナス金利政策まで導入することになる。マイナス金利もダメなら長期金利も操作するとして、すべてくっつけた長短金利操作付き量的・質的緩和政策を決定した。すでに何が何だかわからないような政策となってしまったが、壮大な実験の結果、結論としていえることは金融政策そのもので物価は動かせないというものであった。

金融政策でダメなら財政政策でということになったのか、今度はヘリコプターマネーとかクリストファー・シムズ教授の理論を持ち出してきた。

シムズ氏は都内の講演で「ゼロ金利制約の下で金融政策が効きにくいときには財政拡張がその代わりになる」と提言したそうであるが、そもそも「ゼロ金利制約の下で金融政策が効きにくい」ということを証明させるために日銀に異次元緩和をさせたというのであろうか。

「デフレ脱却を考えると国債を返し過ぎだ」という首相の発言だが、デフレ脱却と国債償還を結びつけることの意味がわからない。もし国債の信用を落としたいのであれば、償還をやめるなり、日銀に本当の意味で国債直接引き受けをさせるなり、日銀保有の国債は政府債務と相殺したりしてみれば良い。

なぜそれをしてはいけないかといえば、あたりまえだが国債の信認を維持させるためである。その信認を崩せばインフレ圧力は確かに強まろう。しかし、ほどよい信認低下などできるわけがない。いったん日本国債の信用が低下すれば、ユーロ危機の際のギリシャの国債のように誰も日本国債を買わなくなってしまう。巨額の国債をすべて日銀が引き受けるとなれば、インフレ圧力が強まろうが、その前に日本国債の価格が急落し、東京株式市場や円の急落も免れない。日本は大きすぎてIMFでも救えず、その負担は国民に降りかかることになる。そんな実験をすべきだと言うのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-03-08 09:42 | 国債 | Comments(1)

日銀の利上げの可能性、意外にハードルは低い?

 FRBのイエレン議長はシカゴで行った講演で「今月のFOMCで、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って引き続き進展しているかどうか検証する」とし、引き続き進展していれば「FF金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた(ロイター)。


 FRBの金融政策の調節目標は金利に戻しており、その金利とはフェデラルファンド(FF)金利である。つまりイエレン議長のこの発言は、今月14、15日に開かれるFOMCで追加利上げが決定されることを示唆したものである。


 3日に総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%の上昇となった。プラスとなったのは2015年12月以来、13か月ぶりとなる。日銀の物価目標であるコアCPIの前年比がプラスに転じても、まだ目標の2%にはほど遠い。日銀はこれが2%になるまで現在の長短金利操作付き量的・質的緩和政策を続けると言っている。


 こういった状況のなかにあって日銀の佐藤審議委員は下記のような発言をしている。


 「(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)は毎回の会合において次回会合までの操作目標水準を都度決定する柔軟な仕組みである。その下で、長期金利操作についてはその時々の経済・物価・金融情勢やそれらの変化のモメンタムを勘案しながら、最適なイールドカーブの形状を政策委員会で判断している。」


 「仮に経済・物価情勢が望ましい方向に変化し、また市場がそれに応じて、ないしはそれを先取りして変化しているという認識に政策委員会が至れば、市場の動きを追認する形で操作目標水準を柔軟に調整していくことが適当と思う。」


 念のため、この意見は日銀の政策委員の総意ではなく、あくまで佐藤委員個人の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する認識とみられる。しかし、現実に足元物価が上昇基調に転じ、米国の追加利上げにより米長期金利が上がるなど情勢が変化すれば日本の長期金利にも上昇圧力が加わる可能性は出てくる。


 いまのところ3月のFOMCでの利上げ観測が強まっても、米長期金利は2.5%がひとつの壁となっている。しかし、いずれ3%を目指して再度上昇する可能性もありうる。


 佐藤委員は次のような発言もしている。


 「長期金利操作に関する政策実務上のプラクティスが必ずしも確立しているとは言い切れない現状では、操作のタイミングや幅などは、無論、政策委員会の判断事項ではあるが、操作に先立っては市場との入念な対話によりサプライズを避けるなどの周到な配慮も必要と私は考える。 」


 この場合の操作とは長期金利を含めた目標金利の調節、つまり利上げとなる。日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和という「柔軟な」政策に移行したことで、実は利上げのハードルを低めたようにも思われ、それは佐藤委員も認識しているとみられる。


 むろん黒田総裁などは長期金利の操作目標の引き上げなど、まったく考えていないとの認識であろう。しかし、経済・物価情勢が望ましい方向に変化してきた際にはいずれフレキシブルな対応が市場から求められる可能性がありうる。そのタイミングは意外に早期に出てくる可能性がある。



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by nihonkokusai | 2017-03-07 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入の行方、市場との対話がより重要に

 2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。今回からオペ通告日を事前に発表することとなり、1年超5年以下の中期ゾーンは6回、5年超10年以下の長期ゾーンも6回。そして10年超の超長期ゾーンは5回となる。1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。


 こちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。


 日銀は今年1月の国債買入で中期ゾーンを一回分スキップした。これをきっかけに債券市場は動揺した。日銀は国債買入を減額しようとしており、ある程度の長期金利の上昇は容認するのではないかとの観測が出た。日銀は長期ゾーンの買入を一回程度400億円増額し、金利上昇は抑制しようとしたが、市場の動揺は収まらず、その結果、2月3日に10年債利回りが0.150%まで上昇し、日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「指し値オペ」をオファーした。これで市場の動揺は収まるが、日銀は2月10日の国債買入で超長期ゾーンを100億円ずつ増額し、超長期債の利回り上昇も抑えようとした。


 日銀が何故、1月に中期ゾーンの買入を一回スキップしたのか。これは4月以降の来年度の国債発行額の削減を見据えたものであったと想像される。しかし、これはテーパリングと認識されると円高や株安、さらには長期金利の上昇を招く恐れもある。国債買入の減額はいずれ必要になろうが、2月の債券市場の動揺で結果として増額となってしまったことになる。


 いまの日銀の金融政策である長短金利操作付き量的・質的緩和政策では、量を残した上で長期金利の目標値を設定している。これはリスク回避の動きやデフレ圧力が強まる際には機能したかもしれないが、景気や物価がしっかりするなど正常な状況となり、海外要因や物価動向などによる金利に上昇圧力が加わると長期金利を押さえ込むことも難しくなる。その結果、大量の国債をさらに買い入れなければならない懸念も生じる。


 4月以降の国債需給はよりタイト化することが予想されるため、このままのペースで日銀が国債買入を継続できるのかという疑問も生じよう。今後は物価の上昇も予想される。このため長期金利の目標値に対して幅を持たすなり、国債買入を減額しても市場に動揺を起こさせないようにするためのより一層の市場との対話も必要になってくるのではないかと予想される。



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by nihonkokusai | 2017-03-06 09:20 | 日銀 | Comments(0)

日本の消費者物価指数(除く生鮮)がプラスに転じ、金利は上がるのか

 3月3日に総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%の上昇となった。プラスとなったのは2015年12月以来、13か月ぶりとなる。総合は前年同月比プラス0.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)は同プラス0.2%となった。

 ガソリンの前年同月比がプラスに転じたほか、灯油、電気代などの下落幅が縮小するなど、エネルギー価格の回復が押し上げた格好となった。今後はコアCPIで前年比プラス0.5%あたりまでの上昇が予想されている。

 EU統計局が2日に発表した2月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年同月比2.0%の上昇となり、4年ぶりの高水準を記録した。2%をやや下回る水準というECBの中期目標も上回ったことになる(ロイター)。こちらもエネルギー価格の上昇が寄与している。

 米国の1月の消費者物価指数もガソリン価格の上昇などを受けて、総合CPIは前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっていた。FRBの物価目標となっているPCEデフレーターの前年同月比の伸び率は1.9%と前月から0.3ポイント高まった。

 FRBはこの物価上昇も背景に今月14、15日のFOMCでの利上げを検討するとみられている。また、ECBにとっては今月のオランダの総選挙や4、5月のフランス大統領選挙という不透明要因を抱えているものの、物価面から見る限り、「超」がつく金融緩和政策の縮小も検討する必要も出てこよう。

 そして日銀であるが、目標とするコアCPIがプラスに転じたとはいえ、まだ前年比プラス0.1%に過ぎない。今後もプラス0.5%あたりまでの上昇予想はあっても、2%の目標達成にはほど遠い状況にある。このため現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を継続していくことが予想される。

 しかし、米国が正常化に向けて政策を進め、欧州も政治が落ち着けばいずれ超緩和策からの出口を探る必要が出てくる。イングランド銀行も近いうちに利上げに踏み切るべきという意見が、MPCメンバーから出ている。欧米ではこれにより長期金利についても再び上昇圧力が加わる可能性もある。

 日本でも物価がプラスに転じたこともあり、これによりより長いところの金利にもじわりじわりと上昇圧力が加わることも予想される。果たして短い金利のマイナスをいつまで続けられるのか、長期金利の目標をゼロ%のまま維持することができるのか。今後はこのコントロールがより困難になってくることも予想されるのである。


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by nihonkokusai | 2017-03-04 07:22 | 景気物価動向 | Comments(0)

トランプ大統領に必要だったのは信用力だったのか

3月1日に米国のトランプ大統領は就任後初めて議会上下両院の合同会議で今後1年間の施政方針を示す演説を行った。市場ではどのような内容の経済政策が打ち出されるのかを見極めようとしていたのかと思っていたがどうやらそうではなかったようである。

この演説でトランプ大統領は、外交・安全保障について、「戦争を防ぎ、もし必要ならば戦い勝利するために十分な装備が必要だ。国防費の大幅な増額を求める」と述べていた(NHK)。

また、30年ぶりとなる「歴史的な税制改革」や「1兆ドルのインフラ投資」への協力を議会に訴えた。ただし政権発足から1か月たっても政策の細部を詰める体制が整わず、具体策はいまだみえていない(日経新聞電子版)。

市場が期待した具体的な減税等の具体策は示されなかった、にも関わらずこの日の米国株式市場でダウ平均は303ドルも上昇し、21000ドル台に初めて乗せてきた。ナスダックも78ポイントの上昇となり、S&P500種株価指数も上げて、三指数ともに過去最高値を更新した。ドルも上昇しドル円は114円台に乗せてきた。

米株の上昇の背景としては、3月のFOMCでの利上げ観測の強まりによる米金利の上昇もあった。利上げに伴う利ざや改善の期待から大手銀行の株が買われたのである。米金利の上昇によりドルが買われた側面もある。

しかし、それ以上に影響したとされるのが、トランプ大統領の演説となった。その演説の内容というより、大統領の演説ながら「大統領らしい」演説となっていたことが好感されたようである。過激な発言やツイートを繰り返していたトランプ大統領がちゃんとした演説ができるではないかと、米国大統領がどうやら信用力をこれで取り戻したらしい。期待されていたのは政策ではなく、大統領らしさ、冷静さであったようである。

トランプ政権では上院での閣僚承認も遅れており、各省の次官など政治任用ポストもほとんどが空席のままとなっている。今回の議会の演説はこうした人事の遅れを少しでも取り戻すために、両院議員に理解を求める意図があったのかもしれない。少しでもトランプ大統領への懸念を払拭させることが演説の目的であったとすれば、市場の動きを見る限り奏功したといえる。ひとまずトランプ大統領に必要だったのは信用力であったようである。

トランプ大統領が経済政策を急がずとも、米国景気は緩やかなペースで拡大している(ベージュブック)。FRBも3月のFOMCでの利上げに向けて体制を整えつつあるぐらいに、足元の景気や物価は好調さを持続しているともいえる。これもトランプ大統領にとってはフォローとなっていよう。



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by nihonkokusai | 2017-03-03 09:21 | 国際情勢 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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