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欧米の長期金利が低下基調になった要因

 24日にドイツの2年国債利回りはマイナス0.95%を付けて過去最低を記録した。この背景としてはECBによる国債買入がある。ECBが中銀預金金利を下回る利回りの国債を一段と買い入れるのではないかとの観測もあった。


 ドイツ国債の利回り低下は、フランス大統領選挙などの行方を睨んだリスク回避の動きとの見方もできる。ただし、一時売られていたフランス国債もここにきて買われており、利回りが低下している。これはルペン・リスクをフランスの債券市場がどう捉えるかによって反応が異なる面もある。フランスのリスクとしてはフランス国債は売りかもしれないが、安全資産としてフランス国債が買われる側面もあろう。


 ドイツの2年債ではなく10年債の利回りの推移を見てみると1月26日に0.48%あたりまで上昇したが、それ以降は低下基調となっており、2月24日には0.18%に低下している。英国の10年債利回りも同様に1月26日に1.5%台をつけたあと低下しており、2月24日に1.07%まで低下していた。この利回り低下の背景には米国債の利回りの低下がある。ドイツや英国の国債利回りの動きは米国債の動きに連動することが多く、ドイツの国債利回りの低下の背景には米国債の利回りの低下も大きく影響していたとみられる。


 その米10年債利回りは12月半ばに2.6%近くまで上昇したあとは上昇ピッチにブレーキが掛かり、24日の米10年債利回りは2.3%あたりまで低下した。


 米国株式市場の代表的な指標であるダウ平均は25日も上昇し、1987年以来およそ30年ぶりに12日続けて過去最高値を更新した。この上昇の要因としては減税などのトランプ新政権の経済政策への期待があり、いわゆるトランプラリーと呼ばれる動きとなっている。


 米国大統領選挙前は1.8%近辺となっていた米10年債利回りは、トランプ氏の政策による景気や物価の影響も意識されてあっさりと2%台に乗せてきた。しかし、株価よりも早い12月半ばという時期にピークアウトしてしまった。12月半ばでピークアウトしたということは、米債はトランプラリーよりも、12月14日のFOMCでの利上げを意識していたとも言えそうである。


 それ以降の米10年債利回りの低迷は、イエレン議長などが追加利上げに前向きな姿勢を示しても、2017年の利上げもかなり慎重になるのではとの思惑が背景にありそうである。さらに3月のオランダの総選挙、4月と5月のフランスの大統領選挙を睨んでのリスク回避の動きが少なからずあったことも確かであろう。


 トランプ政権の経済政策に対する過剰な期待が債券市場では少し剥がれてきていることも、米10年債利回りが抑えられている要因とも言えるのではなかろうか。米10年債利回りの低迷がドイツの10年債利回りも抑制し、これらが米2年債利回りの過去最低更新の背景のひとつにあるとみられる。それでもなぜドイツの2年債利回りが過去最低を更新するまで買い進まれているのかはやや不明な部分もある。


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by nihonkokusai | 2017-02-28 09:43 | 債券市場 | Comments(0)

日銀がいずれ国債買入を減額することが必要となる理由

 23日の山梨での木内登英審議委員の講演で、「国債買入れの安定性・持続性強化に向けた提案」がされていた。木内審議委員は毎回の金融政策決定会合において。金融市場調節の操作目標を資産買入れ額としたうえで、資産買入れ方針に関して、長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどを内容とする議案を提出している。その理由に絡めて提案の説明があった。


 「日本銀行は、量的・質的金融緩和のもとで大規模な国債買入れを続けており、日本銀行の国債保有比率は既に国債発行残高の4割程度に達しています。一方、国内金融機関は、様々な理由から、国債を保有する必要があります。例えば、銀行は、担保需要や金融規制対応から、一定規模の国債を保有する必要があるほか、年金は、適切なポートフォリオの構築という観点から、運用資産の一定比率は安全性の高い国債で保有する必要があります。また、生保は、生命保険商品という非常に長期の負債を持つことから、ALM(資産・負債の総合管理)や会計要件充足のため、超長期国債を中心に、相当額の国債を保有する必要があります。」


 国債とは国の借金であるとともに、金融市場にとってはなくてはならない金融商品である。安全資産であり満期まで持てば元本が返ってくる。株式や為替の影響を受ける外債投資ではどうしても元本を割り込むリスクが存在する。このため国債には安全資産として、もしくは日銀担保などとしての一定のニーズが存在している。


 「日本銀行が発行済みの国債を全て保有することができる訳ではなく、現在の買入れペースを続けていけば、国債買入れが困難な状態に近づくことは必至であると私は考えています。」


 国債の残存は1000兆円もあるので、数字上からはまだ600兆円も日銀は買うことができる。足らなければ国がバンバン国債を発行すれば問題ないとの意見もある。しかし、それは金融機関の保有している国債を引きはがすこととなる。また、むやみやたらに国債を発行してしまうと国債の信用力が低下しかねない。このため、日銀がこのまま大量の国債買入を続けるには無理があると私も思う。


 「また、国債買入れの困難度が増すにつれて、先行きの金融政策に対する不確実性の高まりや国債市場の流動性の過度の低下などから、金利が大きく変動しやすくなり、金融市場や実体経済に深刻な影響を及ぼす惧れがあります。」

 世界的な危機が存在しリスクが高まり、国債へのニーズが強まり、金利は低い状態が続く限りは、量と金利の両方を操作できても、その環境が変われば無理が出てくることになる。海外要因や物価要因などから金利に上昇圧力が加わった際などには、量と金利の両方を追い求める日銀の現在の政策の矛盾が浮き出る。


 木内委員の主張する45兆円という数字で良いのかどうかはわからないが、この数字そのものを取り除いてしまった方が良いと思う。しかし、こういった提案は日銀の審議委員のなかでも木内委員からしか出されていない。ほかの委員も現在の規模で国債買入が続けることがいずれ困難になると理解はしていると思うが、それにブレーキが掛けられないこともいまの日銀の現状なのである。


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by nihonkokusai | 2017-02-27 09:25 | 日銀 | Comments(0)

日本と中国の米国債保有額の差が縮小」

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES)によると、最新の数字となる昨年12月分で、日本はトップの座を維持していたものの、中国との差が縮小していた。中国は昨年4月あたりから保有する米国債を減少させていたが、12月は久しぶりに増加に転じた。これに対して日本は11月から米国債保有額を減少させた。この結果、日本と中国の保有額の差は11月が593億ドルとなっていたのが、12月は324億ドルに減少した。


上位10か国の12月の数字は次の通り、単位10億ドル、()内は11月分
日本(Japan) 1090.8(1108.6)
中国(China, Mainland) 1058.4(1049.3)
アイルランド(Ireland) 288.2(275.2)
ケイマン諸島(Cayman Islands) 263.5(260.6)
ブラジル(Brazil) 259.2(258.3)
スイス(Switzerland)  229.3(229.5)
ルクセンブルグ(Luxembourg ) 223.4(221.0)
英国(United Kingdom) 217.1(212.0)
香港(Hong Kong ) 191.4(185.5)
台湾(Taiwan) 189.3(183.1)


 米国債の利回りの推移を見てみると、12月15日に米10年債利回りは一時2.64%まで上昇した。この背景にはFRBによる利上げと2017年の追加利上げ観測があった。12月14日のFOMCでは全会一致で政策金利を年0.25~0.50%から0.50~0.75%に引き上げている。また、FOMCメンバー17人の利上げ見通しは2017年に3回と前回9月の2回から増えた。これを受けて米10年債利回りは2.6%台に上昇したが、ここがいったんピークとなった。


 その後の米10年債利回りは2.5%台に乗せても押し返される格好となっている。米国株式市場ではトランプ政権の経済政策への期待もあり、12月末にかけてダウ平均は2万ドルに接近した。しかし、米長期金利の上昇は抑制された格好となっていた。ここには日本からの米国債の売却分を中国がカバーするような格好となっていたこともその背景にあった可能性がある。



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by nihonkokusai | 2017-02-25 10:03 | 国債 | Comments(0)

日銀のイールドカーブ・コントロールはここがおかしい

 日銀の木内審議委員は23日の山梨県での講演のなかで、イールドカーブ・コントロールのプラスの側面として、「金融市場調節の操作目標を長短金利に変更したことによって、国債買入れペースが変動しうる状態となったことから、この先、国債買入れペースが縮小して、国債買入れの持続性が高められる可能性」を指摘している。しかし、現実には80兆円というメドの数値を残しており、国債買入れペースを縮小させることは容易でないことを日銀は1月の国債の買い入れ調整で身をもって知った格好となった。


 日銀は1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンをスキップし、その結果、中期ゾーンの国債買入は12月の6回から5回に減り、8200億円減額されることになった。これを受けて市場は動揺を示し、それを沈めるため25日の5年超10年以下の金額を4500億円と400億円増額させた。


 しかし、これで市場の動揺は収まらず、日銀の意図も見えないことで、2月2日の10年国債入札日に10年債利回りは0.115%まで上昇した。これは0.1%台を容認しているのかを試したとも言える。そして3日の日銀の買入では超長期は入らず、5年超10年以下も400億円の増額にとどめたことで、ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められた。これを受けて10年債利回りは0.150%まで上昇した。


 これに動揺したのが今度は日銀となった。日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に新「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。これにより日銀は7239億円もの国債を買うこととなり、さらに5年超10年以下の増額分も維持せざるを得なくなり、その結果、買入ペースは縮小どころではなくなってしまった。


 木内委員は今回の講演で、イールドカーブ・コントロールのリスクとして下記の指摘をしたが、まさに1月末から2月上旬にかけてのドタバタはこのリスクが顕在化したこととなる。


 「イールドカーブ・コントロールのもとで、先行き、国債買入れペースが国債買入れの持続性を高めるのに十分なペースで低下していくかは不確実であり、逆に国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあると考えています。」


 日銀の現在の政策である長短金利操作付き量的・質的緩和の問題点は量を完全に引っ込めることなく、金利を政策目標に据えたことである。まさに「二兎を追う者は二兎をも得ず」となり、木内委員も「一般に、量と金利は一体的に決まるものであるため、両方に明示的な目標を設定しつつ安定的な金融調節を行うことは難しいと私は考えています」とコメントしている。


 このリスクについては「国債市場に外的なショックが生じる場合に顕現化しやすく、昨年11月以降の米国長期金利上昇に伴うわが国長期金利への押し上げ圧力が長期金利操作への最初の試練になっていると私は考えています」ともコメントしている。


 このリスクへの対応としてか、日銀は国債買い入れ日の事前予告を検討していると伝えられたが、そういう問題でもなかろう。そもそも国債の買い入れを減額したいのであれば、それをはっきり伝え、80兆円というメドもなくすべきである。また長期金利の目標についてもかなりレンジがあることを示すべきで、指し値オペの乱用を防ぐことも必要になろう。市場参加者も国債買入の維持の上でも減額は必要と認識しているはずである。それが言えないところに現在の日銀の金融政策上の矛盾がある。


 そもそも日銀の金融政策で長期金利がコントロールできるのか、それをして良いのかという問題も存在する。木内委員も講演で下記の指摘をしていたが、その通りだと思う。


 「長期金利を一定の水準にコントロールすることは、金利の変動を通じた経済の自動安定化装置機能を損ねてしまうことになり、長期金利をコントロールしない場合と比べて経済の振幅を増幅し、経済を不安定化させてしまう可能性が考えられます」


 しかし、木内委員も指摘しているが、長期金利の目標水準の変更は現実には容易でない。「目標水準を頻繁に見直すと、目標に対する信認の低下を招き、市場を不安定化させてしまうリスク」を木内委員は指摘しているが、それよりも異次元緩和を続けないと為替市場や株式市場が動揺してしまうという恐怖心の方が日銀には強いように思える。



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by nihonkokusai | 2017-02-24 09:58 | 日銀 | Comments(0)

3月のオランダの総選挙の行方にも注意

 4月23日と5月7日に実施されるフランス大統領選挙の行方が注目されているが、そのフランスの大統領選挙の行方も左右しかねないのが3月15日に実施されるオランダの総選挙となる。


 昨年の米国大統領選のトランプ氏勝利の余勢を駆って、オランダでは移民受け入れ反対や反欧州連合(EU)を掲げている右翼・自由党(PVV)が勢いづいている。


 へールト・ウィルダース氏が率いる右翼・自由党(PVV)は現在、下院(定数150)で第5位の12議席を持つが、最新世論調査によれば30議席前後を獲得し、第1党になると予想されている。


 PVVが第1党になっても、ウィルダース氏が首相になる可能性はいまのところ低い。PVVが実際に30議席以上を獲得したとしても半数以上(76議席)には満たない。このため連立政権が必要となるが、PVVを追う自由民主党やキリスト教民主勢力、労働党、グリーン・レフトといった既成政党は、PVVと連立政権を組むことはないと表明している。


 これに対しウィルダース党首はインタビューで、「PVVが有権者の支持を得て本当に大きな躍進を遂げる場合」、彼らは自分と協力せざるを得ないだろうと発言していた(ブルームバーグ)。


 しかし、ウィルダース党首の極端な反移民などに対する過激な発言等もあって、連立を組んでも良いとする党が現れる可能性は少ない。ただし、PVVの勝ち方次第では、全くないとも言い切れないのかもしれない。


 そのウィルダース党首は総選挙で勝った際に特別立法を行い、勧告的な意味合いを持つ国民投票を実施するとも発言していた。その国民投票はオランダのEUからの離脱を問うものである。連立政権が組めない際にはそれは可能ではないものの、この発言も完全には無視できるものではない。


 現実にはウィルダース氏が率いるPVVが第一党となっても連立政権は組めず、オランダの政局が混沌とし、それが不安定要素となる可能性がある。また、ウィルダース氏が率いるPVVが総選挙で躍進を見せると、今度はフランスの大統領選挙でウィルダース氏と同様にユーロ圏離脱などを掲げているルペン氏が勢いづく可能性もあり、いまのところこちらの方が市場では懸念されているように思われる。



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by nihonkokusai | 2017-02-23 09:49 | 国際情勢 | Comments(0)

市場を動揺させかねないフランス大統領選挙の行方はここに注意

ここにきてフランスの大統領選挙を巡る思惑で、欧米の金融市場でリスク回避の動きが出たり、フランス国債が売られるなどしている。今後、東京市場を含めて世界の金融市場に影響を与える可能性のある今年のフランスの大統領選挙についてあらためて確認しておきたい。

フランス第5共和政の第10回大統領選挙は2017年4月23日(日)と5月7日(日)に実施される。第1回投票の前日に18歳以上で、民事上・政治上の権利を享有する、すべてのフランス国籍者が投票できる。つまりフランス国民による直接投票によって大統領が決まる。

選挙日程が2回予定されているのは、第1回目の投票で全体の過半数の票を取った候補が出ない際に、投票率の上位2名によって決選投票が行われるためである。1965年以降、第1回投票で大統領に決まった候補者はなく、今回もこれまでの世論調査などからも決選投票は不可避とみられている。

今回の大統領選挙が最も注目されているのが、極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首である。ルペン党首はユーロ圏離脱や欧州連合(EU)離脱の国民投票実施を掲げている。英国のEU離脱や米国でのトランプ大統領の登場の流れがフランスでも強まるとなれば、このルペン党首が勢いづくことになる。

Ifopの最新の世論調査によると支持率トップはルペン氏の26%、これをマクロン、フィヨン両氏が約18.5%で並んで追っており、4位はアモン氏の14%、5位メランション氏11.5%となっている(ブルームバーグ)。

このようにルペン党首が支持率トップではあるが、もし決選投票となれば反ルペン派が勢いを増して、ルペン党首の大統領の就任はないとの見立てとなっている。その見立てがやや怪しくなってきたため、ここにきて市場が揺れている。

与党・社会党など左派陣営のブノワ・アモン氏と共産主義の支持を集める急進左派のジャン・ルク・メランション氏が、協力の可能性をめぐり協議していることを明らかになった。左派系2人が手を組めば決選投票に進む可能性も出てくる。マクロン氏と共和党など中道・右派陣営の統一候補フィヨン元首相が第1回投票で敗北するのではないかとの観測が出ていた。ところがその後、左派候補2人が目指した共闘の取り組みは決裂したと伝えられている。

現職のオランド大統領は国民からの支持率が極めて低く、これまでのパターンからは通常、2期目を目指すところ早々に再選を諦めており、オランド大統領の代わりとして出馬したのがブノワ・アモン氏である。

そして左派からは中道・無党派のマクロン前経済相が出馬を予定している。フランス大統領に最も近いとされていたのがこのマクロン前経済相である。

右派統一候補のフィヨン氏は最大野党・共和党に属しサルコジ政権で首相を務めた人物である。

左派の2人が組まない限り、5月7日の決選投票に進むのはルペン氏、マクロン氏、フィヨン氏のうちの2人、いまの勢いであればルペン氏とどちらかということになる。

オピニオンウェイの調査によると、もし決選投票がマクロン対ルペンとなった際は58%対42%でマクロン氏、もしフィヨン対ルペンとなった場合には56%対44%となると見込まれているそうである(ロイター)。

ちなみに2002年の大統領選挙の際には1回目の投票で現職のシラク大統領に次いで、極右政党・国民戦線(FN)のジャンマリ・ルペン党首(マリーヌ・ルペン氏の父親)が2位で決選投票に進んでいた。決選投票では1回目の選挙で敗れた左派の社会党候補の支持者も、ルペン氏を当選させないために、ライバルであった保守系政党のシラク氏支持に回り、シラク氏が大差で勝利していたということもあった。

市場ではルペン氏が大統領選挙で勝つことはないだろうとの予想が大勢を占めているようだが、この予想が米国大統領選挙の際のように覆されることとなれば、フランスのユーロ離脱の可能性まで出てくることとなり、市場には大きなインパクトを与えることになる。


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by nihonkokusai | 2017-02-22 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀のイールドカーブコントロールが難しい理由」

 日銀の中曽副総裁は2月10日の高知県での講演後の記者会見で、イールドカーブコントロールに関して次のような発言をしていた。


 「いわゆる長短金利操作付き量的・質的金融緩和のもとでは、金融市場調節方針において、短期政策金利と10年物金利の操作目標を定めた上で、金融市場調節方針と整合的な形でイールドカーブが形成されるように国債買入れを運営しています。」


 日銀の現在の操作目標は短期の政策金利と10年物の金利となっている。この2つの金利を起点として適切なイールドカーブを形成することで2%の物価目標を達成するというのが長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の目的となる。


 「国債買入れの金額とかタイミングとか回数は、国債の需給環境や市場動向を踏まえて実務的に決定されるものです。日本銀行のオペレーションデスクは、こうした実務的な能力を十分に有していると私は思っています。」


 操作目標を決めるのは金融政策決定会合においてであるが、その操作目標の金利を適切に誘導し、日々のイールドカーブの修正を行っているのが、中曽副総裁の言うところのオペレーションデスクとなる。国債の需給環境や海外を含めた市場動向次第では、日銀の許容範囲を超えた金利の上げ下げが起きることが予想され、それをオペレーションデスクは国債の買い入れ金額の増減、もしくは指し値オペを使うことによって調節する。


 日銀はこれまでコントロールできない、もしくは市場に任せるべきとしていたはずの長期金利をコントロールするという新たな実験を行っている。国債市場での日銀に対する依存度の高まりにより、日銀の国債買入の細かな増減でも影響を与えられるとの認識が背景にあろう。ただし、ここで問題となるのは日銀は国債の買い入れ額そのものの調節も同時に行おうとしているように見えることであり、このため市場と日銀の間での意志の疎通に支障が出ていると考えられるのである。


 国債買入額の縮小等を含めて政策スタンスを示すのは金融政策決定会合である。その決定会合ですでに量から金利に操作目標を戻し、マネタリーベースの目標値を取り下げた。しかし国債の買入については80兆円という数字をメドとして残している。その80兆円が数字として残ったことで、今後の国債買入の持続性に問題が生じることを市場は(日銀も?)警戒しており、それが日銀のコントロールをより難しくさせている要因だと思われる。



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by nihonkokusai | 2017-02-20 09:43 | 日銀 | Comments(0)

FRBの利上げとバランスシート縮小の行方

FRBのイエレン議長は14日、上院銀行委員会における半期に一度の証言で、緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないと指摘し、利上げを遅らせれば後手に回り、結果的に速いペースでの利上げを余儀なくされると指摘した。今後数か月に、どのようにバランスシートを縮小していくかについて協議することも明らかにした。ただし、政策金利を十分引き上げるのが先決で、バランスシートの縮小に取りかかるのはそれ以後だとの発言もあった。

フィッシャー副議長は16日、ブルームバーグテレビのインタビューで、この時期に想定していた状況と現状は一致している、つまりインフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定だと発言し、この二つが実現すれば、ほぼ想定していた通りの軌道に乗ることになるだろうと述べた。

ニューヨーク連銀のダドリー総裁は15日、米経済がトレンドを上回るペースで成長し続け、予想通りに財政政策が景気を刺激すれば、FRBは今後数か月に利上げするとの見通しを示した。

ここにきてFRBの中心人物の3人が相次いで金融政策について発言があった。3人ともに共通しているのは、インフレ率が2%に近づき、労働市場は力強さを増し続けるという想定通りの状況となりつつあるなか、利上げについては前向きの姿勢であるということである。

市場参加者にとって目先の問題となるのは、3月のFOMCでの利上げの可能性の有無である。2015年、2016年とも年一回ペースの利上げに止まっており、3月の利上げを予想する向きは少ない。ところがイエレン議長やフッシャー議長の利上げに前向きな発言を受けて、一時早期利上げの可能性が意識され、3月利上げ観測が強まった。しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁による「今後数か月」との表現などもあり、3月の利上げ観測は後退した。

FOMCでの金融政策の変更は、7名の理事と5名の地区連邦銀行総裁の合計12名による多数決で決められる(現在は理事2名欠員で、理事5名と連銀総裁5名の10名)。しかし、その流れを決めているのは執行部とされるイエレン議長とフィッシャー副議長、そしてこちらも副議長待遇のダドリー総裁とみられる。

その意味では前向きのイエレン議長の発言に対して、ダドリー総裁が少しブレーキを掛けたようにもみられ、少なくとも3月の可能性より6月の可能性のほうが確かに高いのかもしれない。

利上げ時期も注目されるが、それとともにバランスシートの縮小についてはかなり慎重になっていることも個人的には気掛かりである。2006年の日銀は量的緩和を解除してからゼロ金利政策を解除した。これに対してFRBはまずはテーパリングを行ってから、ゼロ金利解除を行い、膨らんだバランスシートの縮小は後回しとした。

これは米国債券市場にも配慮してものではあろうが、償還分を乗り換えない程度の縮小であれば、米国債券市場に大きな影響を与えるとも思われない。大きなバランスシートがあれば物価を押し上げるわけではないことは日銀も証明した格好となっており、なぜ縮小についてこれほど慎重になっているのかが個人的には疑問である。


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by nihonkokusai | 2017-02-18 10:27 | 中央銀行 | Comments(0)

バブルの様相強めつつある米国株式市場

 ここにきて米国株式市場では、ダウ工業株30種平均、ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数がそろって過去最高値を更新している。ダウ平均は2万ドルが節目となっていたが、そこを抜けたこともあり、上昇圧力が強まったようにみえる。


 この米国株式市場の上昇にはいくつか背景がある。そのひとつを象徴するのがゴールドマン・サックスの上場来高値更新であろうか。ゴールドマン・サックスなど金融株の上昇の要因にFRBの利上げ観測がある。イエレン議長は14、15日の議会証言で利上げに前向きの姿勢を示した。


 15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。前年比では2.5%の上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となるなど物価も利上げを後押しする要因となる。


 ゴールドマン・サックスの上場来高値更新の要因としては、トランプ政権の閣僚に何人もの人材を送り込んだこともあるのではなかろうか。そのトランプ政権下で金融規制の緩和が進む事への期待や減税などの期待も株価上昇の要因となっている。


 トランプ氏はIT企業とはやや距離を置いているようだが、アップルも上場来高値を更新している。新型iPhoneへの期待やトランプ政権が米企業が国外の資金を国内へ持ち帰る際にかかる税金の引き下げを提案しているとの報道なども材料視されているようだが、米景気の好調さも米国を代表する企業の株価を押し上げているのではなかろうか。


 しかし、絶好調に見える米国株式市場の上昇に対し、利上げがその根拠のひとつとなっているにも関わらず、米長期金利やドルの上昇が鈍いことが気になる。米長期金利は2.5%台に乗せる場面はあっても押し返されている。ドル円も115円近辺に上昇しても押し返されて113円台に下落するなどしている。


 こうなるとほとんど調整らしき調整もなく上昇してきている米株の動きの方が妙に見えてくる。米長期金利やドルの動きを見てそろそろ米株も注意しなければならないとしても、ここでショート(空売り)を仕掛けるのもリスクがある。もうはまだなりで相場上昇が続くことも当然予想される。これはこれで日本のバブル時のような様相にも近いように見えてくる。いずれにしても、ここからの米株の動向は注意してみておく必要がありそうである。



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by nihonkokusai | 2017-02-17 10:00 | 投資 | Comments(0)

利上げに前向きなイエレン議長

 FRBのイエレン議長は14日、米上院銀行委員会で証言し、「追加利上げの条件は、雇用と物価が想定通りに改善するかどうかだが、今後数回の会合で判断するつもりだ」と主張した。緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないとも指摘。利上げするに当たってトランプ政権による財政刺激策の計画を待つ必要はないと指摘した。


 FOMCの今後のスケジュールは下記の通り。
3月14、15日(イエレン議長の会見有り)、5月2、3日(議長会見なし)
6月13、14日(イエレン議長の会見有り)、7月25、26日(議長会見なし)
9月19、20日(イエレン議長の会見有り)、10月31日、11月1日(議長会見なし)
12月12、13日(イエレン議長の会見有り)


 FRBは毎年3、6、9、12月にFOMCメンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しており、政策金利の見通しは「ドット・チャート」と呼ばれている。これは今後の政策金利の予定を示すものではなく、あくまでFOMCメンバーの予想の集合体にすぎない。実際に2016年の利上げは年4回とドット・チャートで予想されていたが、現実には12月の1回だけであった。


 2017年のドット・チャートでの予想は年3回となっているが、これでFRBが3回利上げをしてくる予定だということではない。現実の利上げはかなり慎重に行ってくることが予想され、市場を取り巻く環境など次第の面がある。昨年は年末まで利上げを見送ったのは、年初からの新興国経済減速などによるリスクオフの動きや、英国のEU離脱などが影響していた。


 今年に関していえば、いまのところ利上げを躊躇させるようなリスク要因が表面化しているわけではない。トランプ政権の経済政策の行方が不透明材料ながら、これは景気や物価にはプラスに作用する可能性もあり、むしろFRBにとっては利上げを急ぐ要因ともなりかねない。また、15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。市場予想を上回り、2013年2月以来最大の伸び。1月の総合は前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっている。FRBの物価目標はCPIではないものの、物価が予想以上にしっかりしているとなれば、早期の利上げという可能性も排除はできない。


 しかし、それでも慎重姿勢に変わりはないとみられる。このため、多くても年2回程度の利上げを想定している可能性があるのではなかろうか。3月のFOMCでの利上げの可能性は排除していないようだが、市場の予想は3月よりも6月となっているようである。6月に追加利上げを行って様子を見た上で12月に再利上げの判断をするのではないかと、今回のイエレン議長の発言からは予想される。


 それでも今後、何が起きるのか予想することは難しい。オランダを皮切りにフランスやドイツの選挙次第では、ユーロというシステム崩壊の危機が訪れる可能性もある。ギリシャも引き続きリスク要因となる。中国やロシアの動きなども気になるところ。物価をみる上では原油価格の動向も注意する必要があろう。



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by nihonkokusai | 2017-02-16 09:18 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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