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<   2016年 10月 ( 25 )   > この月の画像一覧

金融緩和依存から脱しつつある金融市場

 日銀は10月31日、11月1日に金融政策決定会合を開く。この会合では展望レポートも出されるが、ここで日銀の物価目標の達成時期が、これまでの「2017年度中」から2018年度以降に先送りされる見込みとなっている。それで追加緩和をする気配はなく、黒田総裁は21日の衆院財務金融委員会で、追加緩和には慎重な姿勢を示した。

 日銀は9月の会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策に変更し、操作目標を「量」から再び「金利」に戻し、フレームワークの変更を行った。昨年12月の補完措置、今年1月のマイナス金利政策の導入、そして今回の枠組み変更の意味するところは緩和措置の限界を示すものである。このため余程の事態が発生しない限りは、追加緩和は実施してこないとみている。

 11月1日、2日にはFOMCが開催される。米大統領選挙前ともなり、この会合での利上げの可能性は薄いとみられる。しかし、ここにきての米経済指標は経済の改善を示すものも多くなっており、市場は年内利上げ観測を強めている。このため12月のFOMCでの利上げ決定の可能性が強まっている。

 2日から3日にかけてはイングランド銀行のMPCが開催される。EU離脱の影響も意識されて追加緩和への期待もあったが、ポンド安などによる物価上昇も意識されていることで追加緩和観測は急速に後退しており、今回は現状維持が予想される。

 ECBは12月の理事会で、量的緩和の時期を延長するなどの対策が講じられる可能性がある。ただし、こちらもマイナス金利の深掘りの可能性はなくなりつつあり、量についても日銀同様に限界が意識されており、いずれ何らかのかたちでテーパリングを検討せざるを得なくなったとみている。

 原油価格の上昇もあり、物価はこれまでに比べ上がりやすい環境となっている。これはFRBにとっての利上げに向けた要因ともなる上に、日銀とECBにとっての環境改善ともなる。物価が少しでも上昇基調を見せると、少なくとも金融市場から追加緩和圧力にさらされることはなくなる。さらに技術的なものとしてテーパリングを行ったとしても、市場への影響は限定的となる可能性がある。

 もちろん原油価格がこのまま上がり続けるという保証はない。しかし、市場は以前に比べると中央銀行の金融政策を最大の材料として動くことがなくなりつつある。金融政策ですべての物事がうまく行くわけではないことを、さすがに理解してきたのかもしれない。米大統領選もクリントン候補の勝利となれば、こちらも大きなリスクは後退する。市場はよほどのテールリスクが発生、つまりブラックスワンが出てこない限りにおいては、次第に金融緩和依存体質から脱しつつあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-30 16:19 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の岩田副総裁の進化発言と黒田総裁の本意

 10月27日の参院財政金融委員会に日銀の黒田総裁と岩田副総裁が呼ばれた。ここでのやりとりがなかなか面白い。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決定した。総括的な検証の結果、フレームワークを変更し、政策の軸足を「量」から「金利」に転換したのである。それまで岩田副総裁は量を増やすことにより、物価上昇を促せるとの説明をしてきたが、この点に関して質問が出た。

 これについて岩田副総裁は、長期金利の操作目標の実現には多額の国債買い入れが不可欠であり、量の面を重視していることに変わりはないとの見解を示した(ロイター)。

 長期金利を金融政策で操作できるのであろうかという前提はさておき、日銀は新ためて次元の違う金融政策を導入したわけではあるが、長期金利操作の前提に「多額の国債買い入れが不可欠」なのかどうかは疑問である。むろん長期金利をファンダメンタルズと乖離しても押さえつけるには量が必要かもしれないが、物価が前年比マイナスとなっているなかで、多額の国債買い入れが不可欠とは考えづらい。

 岩田副総裁はこれまで量の効果を強調してきたが、長期金利操作の実現可能性とともに「私の考えも進化してきた」と語った。「進化」というよりも、説き伏せられた感もある。日銀は軸足を金利に戻さざるを得なくなったが、量があった上でのものということを前提に話しを進めたことにより、いわゆる原田審議委員などを含めたリフレ派も今回の政策に賛成した格好となった。しかし、それが進化であるのかどうか。

 27日の参院財政金融委員会で黒田総裁は、長期金利を現行ゼロ%程度としている操作目標の水準に維持するために国債を売る必要が出てくるとは思っていないと語った(ロイター)。日銀が保有国債を売る必要が出てくるという場面は、長期金利がさらに低下してしまうことであるが、それに対して売りオペで対処することは当然ながら考えづらい。そもそもそれほど金利が低下する前提条件が見当たらない。長期金利のマイナス0.3%はさすがにオーバーシュートであったことは市場参加者も認識していると思われる。

 黒田総裁は直ちに長短金利の操作目標を変えることはないとの認識を示したそうだが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の背景には、低下し過ぎた金利の調整(イールドカーブのフラット化)があったわけであり、外部環境に大きな変化でもない限り、金融機関から批判も強まった長短金利の深掘りはむしろ避けたいはずである。黒田総裁は「超長期の金利がもう少し上がってもおかしくない」と語ったようで、これがある意味本音部分であると思われる。

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by nihonkokusai | 2016-10-29 10:10 | 日銀 | Comments(0)

欧米の金利上昇とそれによる日本国債への影響

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 欧米市場の地合いが明らかに変わりつつある。米国市場では発表される経済指標が予想を上回るものも多くなり、12月のFOMCでの利上げ観測が高まっている。市場の7割程度が利上げをすると予想してくると、政策変更の可能性が高まるとも言われているが、その数字に近づいている。11月の米大統領選が近づいているが、クリントン候補が優位となっていることで、いわゆるトランプショックに備える必要性も後退しつつある。

 米長期金利は27日に1.87%まで上昇してきた。12月に利上げが実施されるとの見込みがさらに強まれば、米長期金利は2%台をつけてくることも十分予想される。

 欧州の長期金利も上昇している。これは米利上げ観測とそれによる米長期金利の上昇に影響されている側面もあるが、イングランド銀行のカーニー総裁の発言も影響している。ポンド安による物価への影響を無視できなくなり、イングランド銀行の追加緩和観測が後退し、場合によると出口を探る方向に向きを帰る可能性も出てきた。27日に発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなり、これも英国債の利回りの上昇要因となった。

 英国の長期金利も8月につけた0.5%あたりから上昇しており、27日に1.25%をつけている。英国のEU離脱による金融市場の混乱もあって英国債は一時、相関の強かった米国債とは違った動きをしていたが、再び米国債と似たような動きとなりつつある。

 ECBのドラギ総裁も追加緩和一辺倒の姿勢に変化が見られるようになってきた。ECBは日銀の金融政策についてかなり研究しているとされるが、今年に入ってから、ころころと変わる日銀の政策の原因やその効果等も認識しているとすれば、そのような結果が出たとしても不思議ではない。

 ドイツの10年債利回りも一時のマイナスからプラス0.17%まで上昇してきた。

 この欧米の金利上昇の背景には、市場の物価への見方の変化もある。そのひとつの要因が原油価格の動向である。OPECの減産合意などを受けてWTIは50ドルを突破して52ドル台まで上昇した。ただし、ここにきてOPECの足並みが揃うのかとの疑念も生じ、WTIは目先ダブルトップを形成し、戻り売りが出やすい状況にある。果たしてこのまま原油価格が上昇し続けることができるのかはいまのところ不透明であるものの、再び30ドル台に戻るようなことも考えづらい。

 英国のEU離脱による経済や金融市場の混乱は一時的なものとなり、米国大統領選挙も波乱要因とならず、英国を中心にデフレへの懸念もいったん後退しつつある。すでに異常な金融政策を続ける理由もなくなってきており、それがカーニー総裁だけでなくドラギ総裁の発言からもにじみ出てきている。

 実は日銀もすでに積極的な緩和姿勢からは変化してきている。正確には変化せざるをえなかったわけではあるが、それでもECBやイングランド銀行に先んじて、金融緩和の深掘りに躊躇し始めた。ただし、その結果としてイールドカーブコントロールという不可思議な政策が取られることになり、日本の国債市場の流動性はさらに低下した。このため日本の長期金利はいかにも誘導されているかに見える。しかし、外部環境が変化の度合いを増してきた際に、果たして日本の長期金利がおとなしいままとなるのかどうか。本当の意味での日銀のイールドカーブコントロールがこれから試される。

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by nihonkokusai | 2016-10-28 09:56 | 国債 | Comments(0)

ECBやイングランド銀行は追加緩和に躊躇か

 ECBのドラギ総裁は25日のベルリンでの講演で、「時間とともに厄介な副作用が蓄積する可能性があり、金利をこのような低い水準に極めて長い期間維持せずに済むことをもちろん望む」と述べた。さらに「異例の金融支援がなくても物価安定が持続可能な形で達成できれば、緩和措置を解除する」とも述べていた。(ロイター)。

 ドラギ総裁は金融緩和政策の正当性を主張した上で、上記のような発言を行っていた。これはドイツの銀行を中心とする低金利による業績圧迫への不満にも配慮する姿勢を示した格好ともいえるが、追加緩和一辺倒の政策が微妙に変化しつつあることをうかがわせる。

 10月のECB理事会ではQEの期間延長もテーパリングも議題に乗らなかったとされ、市場では米大統領選挙を含めたイベントを確認したのち12月の理事会で、QEの期間延長を決定するとの見方が強まった。

 ただし、この際にドラギ総裁は「QEをテーパリングすることなく、唐突に停止することはない」と発言している。QEの期間延長についても買入国債が不足してくることも予想され、何らかの技術的な配慮(補完措置?)がある可能性もあるが、その間に買い入れる国債の額を徐々に減らし、つまりテーパリングを決定してくる可能性もありうる。ECBも量的緩和のフローからストックの面を市場に意識させれば出口政策ではないとの主張も可能となるかもしれない。

 そしてイングランド銀行のカーニー総裁も25日に英上院委員会で証言し、「金融政策委員会がインフレのオーバーシュートを静観するにも限界がある」とし、11月3日の金融政策会合では、最近のポンド安を「間違いなく」考慮すると述べた(ロイター)。市場では英国のEU離脱の影響もあり、追加緩和への期待もあったようだが、この発言で追加緩和観測は後退した。

 メイ英国首相が低金利など金融緩和策には「悪い副作用がある」と批判したことについては、首相は金融政策運営の変更を提案したわけではないと考えていると、カーニー総裁は述べていた。英国政府も大胆な金融緩和を行ってきた中央銀行から距離を置こうとしているかに思えるが、これは日本や米国なども同様か。

 ただし、カーニー総裁は政治的な圧力よりも素直に通貨安に伴う物価の上昇を意識していることも明らかであり、物価の動向次第では緩和策から引締策に転じてくる可能性もある。もともとイングランド銀行は英国のEU離脱がなければ、FRBに続いて出口政策を模索していたはずである。

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by nihonkokusai | 2016-10-27 09:47 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の枠組み変更で追加緩和はむしろ困難に

 25日に毎日新聞は、日銀が31日から2日間開く金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送る方向となったと伝えている。物価上昇率の見通しは下方修正する方針だが、9月の前回会合で導入した新たな政策の効果を見極める必要があるとの意見が優勢となっているそうである。

 21日に日銀の黒田総裁は衆院財務金融委員会に出席し、物価目標の達成時期が後ずれする可能性を示唆した一方、追加緩和には慎重な姿勢を示した。

 31日から11月1日にかけて開かれる金融政策決定会合では、「経済・物価情勢の展望」、いわゆる「展望レポート」も発表される。ここで物価目標の達成時期について現在の「2017年度中」を2018年度以降に先送りするとみられている。先送りするのであれば、追加緩和をするのではとの思惑が海外投資家などを中心に一部に出ていたようである。

 その期待が裏切られ、ほとんど動きのなかった債券先物が21日から24日にかけて下落した。下落したと言っても先物で20銭程度なので、誤差範疇ではある。それでも久しぶりに動いたことも確かであり、24日は現物債の中期債が売られて、超長期債はしっかりしていた。中期債の売りは、追加緩和期待で買っていた海外投資家が一部売ってきたとの見方もあった。

 ただし、日銀は9月にフレームワークを大きく変更してしまったことで、むしろ追加緩和には動きづらくなったとの見方もできることに注意すべきである。一部の海外投資家などはさておき、国内の市場関係者の多くは日銀はそう簡単に追加緩和はできなくなったとの認識が強くなっているのではなかろうか。

 なぜ日銀は9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策に変更し、操作目標を「量」から再び「金利」に戻したのか。

 昨年12月に日銀は補完措置を決定したが、これは国債買入の量の限界を示すものとなった。このことは1月の決定会合でマイナス金利を導入したことからも明らかである。量から替えてマイナス金利の深掘りを追加緩和手段にしようとした。ところがマイナス金利の弊害が出て、金融機関からの批判も相次ぎ、その深掘りも困難となってきたのである。

 9月の総括的な検証など待たずとも、量の拡大が物価の上昇に寄与してこなかったことは明らかな上、マイナス金利による国債のイールドカーブの急速なフラット化は、資金運用にも悪影響を与えることとなった。量も動かせず、マイナス金利の深掘りも困難となり、金融機関からの批判に対処するために、捻り出された手段がイールドカーブコントロールとなったとみられる。

 物価がいっこうに上がらない限り、日銀は退路を閉ざされていることもあり、前向きの姿勢を示さざるを得ないため「オーバーシュート型コミットメント」を持ってきた。目標を多少引き上げようが、そもそも物価が金融政策で動いていない以上は、あまり意味はない。これで追加緩和の可能性が強まったとは受け取れない。

 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は追加緩和の余地を拡げたわけでもなく、むしろ量と金利の限界を示すものとなり、これはつまり余程のことがない限り、日銀が追加緩和を行うことが困難となった見ざるを得ない。そしてもし仮に追加緩和として長短金利をさらに深掘りしても、それがもたらすプラス効果は何でも良いから「追加緩和をした」との事実からの一時的な円安・株高程度ではなかろうか。実態経済には負の効果のほうが大きくなる懸念すらある。

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by nihonkokusai | 2016-10-26 09:44 | 日銀 | Comments(0)

中国が日本国債の保有高を増加させている背景とは

 中国による日本国債への投資が大きく増加している。23日付けの日経新聞によると、中国から日本国内への証券投資は今年1月から最新データの8月までで8兆9000億円の買い越しとなった(財務省の対内証券投資より)。増加しているのは満期までの期間が1年以下と短い国庫短期証券などの国債が中心となっているようである。

 これに対して「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」によると、中国の米国債保有高は年初に比べ8月の保有高は530万ドル減少しており、中国は米国債の保有高を減少させて日本国債の保有高を大きく増加させた格好となっている。

 金利の動きからみて、特段に日本国債が有利になっていたわけではなく、短期ゾーンではマイナス金利が続いていた。米債も利回りが7月まで低下傾向にあり、むしろ米国債を保有していたほうが有利であったはずである。

 日経新聞では中国には人民元の国際化に向け、ドルの一極集中を弱めたいとの考えがあるとの指摘があり、今回の米国債から日本国債へのシフトはそのような思惑が働いていた可能性がある。

 FRBはいずれ利上げするであろうとの読みや日銀は緩和政策を続けざるを得ないとの読みもあったかもしれない。しかし、日本国債は短期債主体に購入していることから、金利の先行きを睨んだものというよりも、ポートフォリオのリバランス、さらには単純に利益を追求していた可能性もある。

 日本国債の10年以下の国債の金利はマイナスとなっているが、海外投資家は中短期債主体に積極的に購入している。これはドルを円に替えるだけで一定のプレミアムが得られるためであり、多少のマイナス金利であっても利益が出る。これを短期債で行えば、期間によるリスクも低いことで一定の利益も確定できる。これを使って、中国の外貨準備を運用する中国人民銀行が結果としてポートフォリオのリバランスを狙っていた可能性もある。

 米国債から日本国債へのシフトについて、何かしら政治的な意図があるのかまではわからないが、結果として中国はドル集中、米国債集中型から一部を円、日本国債の保有増となっている。ちなみに8月の米国債保有高は中国が依然としてトップながらも1兆1851億ドルと日本の1兆1440億ドルに近づいている。いずれ逆転する可能性もあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-25 09:39 | 国債 | Comments(0)

イエレン議長による「高圧経済」発言の意図とは

 FRBのイエレン議長は10月14日の講演で、経済危機による損失の修復を図るには「高圧経済(high-pressure economy)」政策が唯一の方策となり得る、との考えを示した。力強い総需要と労働市場のひっ迫を伴う高圧経済が一時的に続くことで、経済損失を埋め合わせるための様々な手段が見い出せると語ったそうである(ロイター)。

 中央銀行の金融緩和策を継続させることで、強い需要と雇用の改善により、景気のさらなる改善を図るのが、ハイプレッシャーエコノミーということになろう。ただし、これを続けることによりインフレへの懸念が強まることも確かである。

 これについてフィッシャー副議長は17日に、失業率を押し下げ続ける戦略の追求には限界があると指摘し、「高圧経済」のリスクを警告した。フィッシャー副議長は「われわれの誤りがインフレ率によってはっきりするまで続けるべきだと主張すれば、変更は手遅れになろう」と指摘した(ブルームバーグ)。

 FRBは9月のFOMCで金融政策は賛成多数で現状維持とし、利上げを先送りした。事前にイエレン議長、フィッシャー副議長、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁からは早期利上げを示唆するような発言もあったが、発表された経済指標が予想を下回るなどしたことで市場での利上げ観測は強まらなかった。結果としては市場の予想通りに、利上げは見送られた格好となった。

 ところがその後発表された経済指標は景気の改善を示すものも出ており、少なくとも年内の利上げの可能性はありうるとして、市場では12月のFOMCでの利上げ観測が強まりはじめた。その矢先に今回のイエレン議長の発言があった。

 イエレン議長の「高圧経済」発言の背景として、12月の利上げ観測を後退させる意図があったのではとの見方も出ていたようである。しかし、これはむしろ9月に利上げをしなかったことの理由を説明したとの見方もできるのではなかろうか。利上げの先送りで景気の圧力鍋をさらに沸騰させても、そう簡単にはインフレとはならない。むしろ雇用環境もさらに改善させることも可能との認識を伝えたかったのかもしれない。

 しかし、市場はこれで12月の利上げも困難かと取ってしまったことで、あらためてフッシャー副議長が「高圧経済」のリスクを警告することで、12月の利上げの可能性を維持させようとしたのかもしれない。

 いずれにしても突然出てきた「高圧経済」という用語を使った背景には、何かしらのFRBの意図が隠されているように思われる。それが12月のFOMCでの金融政策の変更の可能性を意識したものなのかどうか。今後のイエレン議長やフィッシャー副議長の発言内容にも注意したい。

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by nihonkokusai | 2016-10-23 11:11 | 中央銀行 | Comments(0)

9月の国債売買高は一時的に回復

 10月20日に日本証券業協会は9月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

9月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -1139(536、-1823、231)
地方銀行 4960(279、3693、1330)
信託銀行 -2730(-5501、1528、2917)
農林系金融機関 -3488(-2067、355、50)
第二地銀協加盟行 1354(745、361、210)
信用金庫 284(47、973、-174)
その他金融機関 1200(-140、770、937)
生保・損保 -3297(-2915、900、72)
投資信託 -1741(-566、959、-1474)
官公庁共済組合 -20(-97、0、62)
事業法人 -626(-71、1、0)
その他法人 -423(-188、202、-6)
外国人 -27674(-3320、-4283、-19310)
個人 767(4、37、6)
その他 11292(12552、-4253、7667)
債券ディーラー -862(81、117、-965)

 9月の国債を中心とした債券売買を見るにあたって注意すべきことは、9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において総括的な検証を行い、何かしらのフレームワークの変更があるとの見方が強まっているなかでの売買であったことである。

 海外投資家の売買高が今年3月以来の高い水準となっていたのは、マイナス金利の深掘りを含めた何らかの追加緩和の可能性も意識してのものと思われる。その海外投資家は中期債を中心に2兆7674億円の買い越しとなった。海外投資家の買い越しは27か月連続となる。

 日銀は21日に総括的な検証の結果を発表するとともに、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。今回の場合は、イールドカーブをフラット化させるのではなくスティープ化させようとのものとなった。

 イールドカーブのスティープ化に寄与したとみられる投資家を探してみると、超長期債を大きく売り越していたのは「その他」となっていた。「その他」にはゆうちょ銀行やかんぽ生命、年金積立金管理運用(GPIF)などが含まれている。

 都銀は1139億円の買い越し。長期債主体に買い越しとなったが、9月21日に10年債利回りが一時プラスに転じる場面があったが、長期債が売られた場面で押し目買いを入れてきたとみられる。

 国債の投資家別売買高(一覧)での全体合計の国債売買高でみてみると、9月は216兆335億円となっており、8月の189兆9590億円から大きく増加した。日銀のフレームワーク変更の思惑によるイールドカーブのスティープ化を受けて、売買高が一時的に回復したとみられる。

 都銀の国債売買高は8月は1兆7326億円と、データがある2004年4月からでは過去最低水準となっていた。しかし、9月は3兆6046億円と回復した。ただし、10兆円を超える月が普通にあった状態から比べれば決して多い数字ではない。

 問題は9月21日の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の決定以降の国債の売買高となろう。日銀のイールドカーブコントロールが奏功しているというより、投資家は国債売買そのものを手控え、売買高は大きく減少している。それを象徴するのが10月19日の債券市場であった。債券先物は2014年8月18日以来となる日中値幅4銭、そして10年債カレントのこの日、2015年9月24日以来の出合いなしとなっていた。10月の公社債の売買高は大きく減少するであろうと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-10-22 11:34 | 国債 | Comments(0)

サウジアラビアの海外での巨額の国債発行の理由

 サウジアラビアは国際金融資本市場で初の国債発行を行い、175億ドルを調達した。ドル建てで5年債が55億ドル、10年債も55億ドル、30年債が65億ドルの3本建て。5年債が米国債に対してプラス135ベーシスポイント(約2.6%)、10年債がプラス165bp(約3.4%)、30年債が210bp(約4.6%)となる。

 今回の起債は新興国で最大だったアルゼンチンの165億ドルを上回った。格付け会社のフィッチ・レーティングスの格付けは最高から4番目の「AA-」となっていたが、発行額の3倍以上の600億ドルを超える投資家の引き合いがあったとされる。大型起債ではあったがサウジアラビアというネームも好感された上に、比較的利回りも高いことで日本の投資家を含めて需要があったのではないかと推測される。

 サウジアラビアがこれほど巨額の国債を発行しなければならないのは、当然ながら原油安が影響した。歳入の大半を原油に頼るサウジは原油安の影響から、2016年予算で3262億リヤル(約9兆円)の財政赤字に陥る見込みとされている。

 今回の国債発行で調達した資金は財政赤字を穴埋めするだけでなく、ムハンマド副皇太子が主導する「脱石油」改革の柱として成長分野にも投じるとされる(日経新聞)。

 サウジはすでに国内では国債を発行しており、財政赤字には銀行からの借り入れ、外貨準備の取り崩しでしのいでいたものの、国内金融機関の資金では限界があり、今回の海外での巨額の国債発行となったものとみられる。日欧米の長期金利が低位で推移していたことも手伝っての需要も意識されていたのではないかと思われる。

 原油先物市場では19日に一時WTIが52ドル台をつけるなど、ここにきて上昇基調となっている。この背景には予想外のOPECの減産合意があったが、サウジアラビアが減産に同意したのは、少しでも原油価格を上昇させて今回の起債を成功させようとの意図もあったとされる(日経新聞)。

 WTIの日足などをみると原油価格は底打ちし、下方トレンドが終了し反発局面となっている。このまま上昇トレンドを形成するのか。それともレンジ相場となるのか。OPECは決して一枚岩ではなく、イランとサウジの対立も解消されたわけではないことを考えれば、レンジ相場となる可能性が高いのではなかろうか。

 国際政治のなかでオイルマネーをもとに大きな影響力を持っていた中東ではあるが、原油価格の下落がこの状況を大きく変えつつある。原油価格の下落は、世界的な物価の押し下げ要因ともなっている。今回のサウジによる国際市場での大型起債は、あらためて世界的な資金の流れの変化も意識されるものとなろう。

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by nihonkokusai | 2016-10-21 09:43 | 国債 | Comments(0)

そもそも金融政策で為替や物価を動かせるのか

 18日に発表された今年9月の英国の消費者物価指数は前年同月比1.0%の上昇となった。伸び率は8月の0.6%を上回り、2014年11月以来の高い水準となった。コア指数は前年比プラス1.5%となり、これも2年ぶりの高水準。英政府統計局はポンド安が消費者物価に大きく作用した明らかな兆候はみられないが、生産者物価に影響していると指摘したそうである。

 しかし、この物価の上昇は英国のEU離脱に伴うポンド安が影響したであろうことも確かではなかろうか。さらに原油価格の反発による影響もあったものとみられる。ここで注意したいのは、8月4日のイングランド銀行による包括緩和がどれだけ影響していたかとの点である。

 8月4日のイングランド銀行の金融政策委員会(Monetary Policy Committee; MPC)では、年0.5%と過去最低の水準となっている政策金利をさらに引き下げて年0.25%とするとともに、英国債を対象とする資産買入プログラムの規模を600億ポンド増額し4350億ポンドとし、さらに100億ポンド規模の投資適格級社債購入プログラムを決定した。利下げの効果を強固なものとするための金融機関向け低利融資制度を含めてパッケージされた、いわゆる包括緩和政策を決定した。

 金融政策と通貨安、そして通貨安による物価への波及効果については、日本にも事例がある。いわゆるアベノミクスである。これは日銀の金融政策が円安を招き、物価にも波及したとの見方もできなくはないが、円安は自民党が政権を奪え返すとの見方の強まりのなかでの安倍自民党総裁の輪転機発言がきっかけとなっている。

 大胆な金融緩和効果よりも、欧州信用不安によるリスク回避の反動が、ヘッジファンドの仕掛け的な動きにともなって急激な円安が起き、その円安で一時的な物価上昇が起きたといえる。この間、原油価格が高止まりしていたことも物価を押し上げた要因となっていた。さらに消費増税前の駆け込み需要も影響した。金融政策というよりも、円安と原油高などが物価を押し上げていたと言えよう。

 これは今回の英国も同様であろう。イングランド銀行の金融緩和でポンドが売られたというよりも、ポンド安の主因は英国のEU離脱であることは明らかである。

 18日には米国の9月の消費者物価指数も発表された。前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比は1.5%の上昇と、2014年10月以来の上昇率になった。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.1%上昇、前年比では2.2%の上昇となっている。

 言うまでもなくFRBはすでに昨年12月に利上げを行っている。米国の物価上昇の背景にあるのはFRBの金融政策ではない。たしかにFRBのバランスシートは高水準に維持されており、追加利上げは行っていない。緩和的な環境が物価を押し上げたとする説明には無理がある。むしろ原油価格の反発による影響が大きかったとみるべきではなかろうか。

 金融政策がどの程度、通貨安に影響し、それが物価にどう波及してくるのかについては、具体的な検証も必要ではなかろうか。むしろ物価に対しては、いまのファンダメンタル等の外部環境と政策金利がほぼゼロ近辺となっているという状況下では、金融政策の効果よりも、通貨安や原油価格の動向に影響を受けやすいとの見方もできるのではなかろうか。さらに通貨安は、果たして中央銀行の金融政策でもたらすことが可能なのかという点についても疑問が残る。このあたり良い事例を日銀が残してくれたようにも思われる。

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by nihonkokusai | 2016-10-20 09:50 | 中央銀行 | Comments(0)
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