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米雇用統計受けても米9月利上げの見方は維持

 9月2日に発表された8月の米雇用統計では、非農業雇用者数は15.1万人増と予想の18万人程度を下回った。過去3カ月の平均は23.2万人増となる。8月の失業率は4.9%で前月と変わらず、平均時給の伸び率は前年比で2.4%増、7月は2.7%増となった。

 これを受けて米国市場でのとらえ方はまちまちとなっていた。非農業雇用者数の数字が市場予想を下回り、失業率は低下せずに横ばい、賃金の伸びは鈍化したことで、これは9月20、21日のFOMCの利上げを見送る理由となりうるため、利上げは先送りされるとの見方がある。

 しかしこの見方に対しては異を唱えたい。そもそもここにきてのFRBの施行部の発言からは利上げに向けてかなり前向きの発言をしていた。それにも関わらず本心は利上げはしたくないとの見方に対してはかなり懐疑的である。むろんこれで利上げ慎重派の、ブレイナード理事、タルーロ理事が利上げに向けて異を唱える可能性はあるかもしれないが、全体の勢力分布から言えば少数派となる。ただし、仮に11月の大統領選挙でクリントン氏が大統領に選出されると財務長官候補ともされているブレイナード理事の発言力が大きくなる可能性はある。

 イエレン議長が想定していたであろう正常化への道筋はまだ道半ばである。しかし、追加利上げに関しては、英国のEU離脱というイベントショックがあったことで6月、7月は見送らざるを得なかったとの見方ができる。市場での利上げ観測が急速に後退してしまったことを危惧し、執行部のイエレン議長、フッシャー副議長、ダドリー総裁がお互いカバーし合うようにして、市場に早期利上げの可能性をあらためて織り込ませようとしていた。

 9月の利上げを執行部が想定しているとすれば、今回の8月の単独の雇用統計の数字だけで、そのスケジュールを変更してくることは考えづらい。仮に極端に数字が低かった際には、その要因を掴むまで利上げは先送りされる可能性もなくはないが、過去3カ月の平均が20万人を超えている今回の数字程度では揺るがないとみている。

 6月と7月のFOMCでの利上げの見送り、先送りの要因はイベントリスクといえるものであった。これはたとえば2000年7月17日の金融政策決定会合でゼロ金利政策を解除しようしとした日銀が7月12日に大手デパートのそごうが民事再生法を申請したことで解除が見送られたことに類似している。日銀は8月11日の決定会合においてゼロ金利政策を解除している。FRBの正常化への道筋に変化がない限りは、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性は高いとみている。

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by nihonkokusai | 2016-09-06 09:46 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀サーベイが示した日本の国債市場の機能不全とそのための対応策

 日銀は9月1日に「債券市場サーベイ」を公表した。これは国債売買オペ対象先のうち、調査協力を得られた先(39社)へのアンケート調査である。回答期間は2016年8月8日~8月17日となっている。

 債券市場の機能度という質問に対しては、DIとしての数字となっているが、前回調査(5月)に比べて「高い」との回答が5からゼロとなっている。「さほど高くない」が56から54、「低い」が38から46に。なぜか機能度の「高い」と答えていた向きが前回まであったものの、ここにきてついにゼロになった。

 次にビッド・アスク・スプレッドについて回答があった。ビッドとアスクというのは、取引する際の買い値(ビッド)と売り値(アスク)のことである。たとえば20年債を買いたいときに業者に売値を尋ねたら0.350%という提示があり、それでは売りたいのだけれど買値はと尋ねたら0.360%という提示かせなされたとすればスプレッドは0.01%となる。通常、カレントと呼ばれるもののビッド・アスク・スプレッドは最低取引単位の0.005%(5糸とも言う)となっていておかしくはないが、流動性が低下するとこのスプレッドが拡大する。

 ビッド・アスク・スプレッドについての回答は「タイトである(狭い)」との答えが前回の15ポイントから10ポイントに低下、「さほどタイトでは」ないが56から51に、「ワイドである」が28から38となっており、スプレッドが拡がり流動性がますます低下している様子がうかがえる。

 市場参加者の注文量に関して、板の厚み等を念頭においての回答は、「多い」が前回も今回もゼロ、「さほど多くない」が前回の56から44に、「少ない」が44から56に増加している。板ということで、これは日本相互証券などのブローカーの画面上の板、もしくは大阪取引所の長期国債先物の板の様子が想定されていると思われる。

 取引頻度の変化については「増加した」との割合がやや増加したものの(3から5)、「さほど増加していない」も増えている(54から77)。取引ロット(1回あたりの取引金額)の変化に関しても、「増加した」が5から0に、「さほど増加していない」が59から74となっている。

 国債の取引量の減少傾向に関しては、たとえば8月19日の日銀が公表した「国債市場の流動性指標」のなかでの、「現物国債のディーラー間取引高」や「ディーラーの対顧客取引高」のグラフが低下傾向を示していることからも明らかである。

 もちろんこの背景には、日銀の異次元緩和による大胆な国債の買い入れとマイナス金利政策が大きく影響していることも間違いない。いわゆる流動玉というか浮動玉の減少は、いずれ日銀の国債買入において、金融機関保有の国債の引きはがしに限界がくるであろうことも意味している。

 この結果がはたして9月20、21日の金融政策決定会合で示される「総括的な検証」にどのように生かせられるのか。国債の流動性が低下していることは明白であり、何らかの対応策が講じられる可能性がある。そのひとつの可能性として国債のイールドカーブのスティープ化がある。短い金利を低いままとし(もしくは更に深掘りし)、長期そして超長期の国債の利回りを上昇させることである。長いところの国債買入ペースを落とすことで日銀の国債買入の限界時期を少しでも先送りすることは可能となる。さらに10年債利回りあたりがマイナスからプラスに転じることになれば、そこにあらためて投資家需要も見えてくることになり、国債市場の流動性が回復する期待も出てこよう。

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by nihonkokusai | 2016-09-04 09:47 | 債券市場 | Comments(0)

債券市場は情報が命

 8月27日に17,18年ぶりとなる屋形船での牛熊友の会を開催させていただいた。いわゆるオフ会である。金融市場関係者を中心に80名を超える方達に集まっていただいた。1998年の屋形船にも参加いただいたベテラン勢に加え、比較的若い人達も加わり、年代もそこそこ幅広い層の会となった。

 屋形船ということで途中、レインボーブリッジやスカイツリー近くで停船し、夜景を楽しめるのだが、この夜景を見る間も惜しんで話し込んでいる市場参加者が多数いた。もちろん飲み会の席であり久しぶりに再会し近況報告等している方もいたとみられるが、参加していた方々によると債券市場についての熱い議論があちらこちらで行われていたそうである。

 債券市場に限らず金融市場での戦いはまさに情報戦となる。ただし、情報を単に掴むだけでなく、その背景にあるものを含めて認識しないと、なかなか相場を読み切れないところがある。以前であれば、その中心にあったのが投資家の情報となっていた。今回の屋形船にもセルサイドだけでなくバイサイドの方も多数参加されていた。ただし、いまは債券市場の主要投資家が偏っている。現在の債券市場を動かしているのは日銀と海外投資家が中心となっている。

 特に日銀については9月の金融政策決定会合で総括的な検証が発表され、それを受けての追加緩和手段の変化なども市場参加者の大きな関心となっている。その日銀の動向なども車座になって議論されていたものと思われる。

 ちょうどジャクソンホールでカンザスシティ連銀主催のシンポジウムが開催されていたタイミングでもあり、FRBの利上げの行方などについても議論が交わされていたものと思われる。

 債券市場はこのように社内ではなく社外の人との交流というか、情報の共有が非常に大切なものとなる。これは金融機関等同士だけでなく、たとえば日銀と本来の意味での市場との対話などにも必要なものとなるのではなかろうか。市場は人と人によって形成されている以上は、その人との繋がりは重要である。

 今回の屋形船がそういった一助となってくれればと思っている。そこにベテラン勢と若手との世代間の交流も加わってくれるとなおうれしい。若い世代は金利がある世界をあまり体験していないはずであり、金利があった時の債券市場の話をベテランから聞くだけでも参考にしてもらえるのではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2016-09-03 09:32 | 債券市場 | Comments(0)

日銀による総括的な検証の目的のひとつは長期金利の上昇か

 8月下旬あたりから債券市場はやや異変が起きていた。債券先物や10年債利回りなどが比較的しっかりしていたにも関わらず、超長期債が毎日のように売られていたのである。

 なぜ日本の超長期債が大きく売られていたのか。これはFRBの早期利上げ観測や為替の動きとかとはそれほど関連性はないと思われる。もしそれで動くとすれば、債券先物あたりの方が敏感に動いておかしくはない。とにかく超長期債が本来であれば、国内投資家の買いが入ってもおかしくはない月末月初にも関わらず売られていたのは何故なのか。

 そのひとつの理由とされたのが日銀の総括的な検証であった。量の部分ではレンジを設けるなどして柔軟性を持たせるとともに、買い入れる年限の国債を少し短期化するのではないかとの思惑が出ていたようである。

 ただし、日銀の総括の中身についてはジャクソンホールの黒田総裁の講演などからは、その内容のヒントはなかなか見いだせなかった。先日の布野審議委員の講演でもそうである。しかし、突然のように出てきた2日の櫻井真審議委員のロイターの単独インタビューは、どうやらそれを示唆する内容ではないかと思われる。

 そもそも櫻井氏は今年4月に日銀審議委員に就任したばかりで、メディアのインタビューに応じるのは今回が初めてだそうである。その櫻井委員から出たコメントが意外なものであったのである。

 櫻井委員はインタビューで、現行のマネタリーベース目標を含めた量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないと述べていた。これは黒田総裁や布野委員も同様の発言をしており、これが前提とはなる。

 これに加えて櫻井委員はこんな発言をしていた。

「イールドカーブの形状をどう変えていくかも、可能性としては政策の選択肢に入る。検証作業の中でいろいろな議論が出てくるだろう。イールドカーブが予想を超えて下がったのは事実である。それによって効果はあったが、いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」(ロイター)

 たしかに日銀は特にマイナス金利政策の導入により、予想以上に国債利回りが低下していたことは認めており、これはむしろ成果のひとつとしていた。ところが、これはむしろ行き過ぎであり、これを検証するとともに、利回り曲線の形状を変化させる、つまりこの場合は一部の国債利回りを引き上げることが総括により出てきた解答のひとつと見る事ができるのではなかろうか。

 櫻井委員の略歴はいろいろと問題となっていたが、少なくとも債券村の住人ではない。金利に関してどれだけの専門性を持っているのは未知数ながら、今回の発言はそのタイミングからみても櫻井委員の独自の見解とは思えない。むしろこれまでほとんど発言をしておらず、市場からみてもいろいろと未知数の審議委員を通じて、検証を行っている人達の意見を表面化させたとの見方もできるのではなかろうか。「それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」とは検証をしている人からの発言にしか思えないのだが。

 そうなるといろいろと整合性がとれる。なぜここにきて超長期の金利が上昇したのか。それはこの日銀の意図がそれとなく市場に伝わっていたからとの見方もできよう。さらにそれではなぜ日銀が長い金利を上昇させたいのか。正確には低下し過ぎた金利を修正したいのか、その目的も自ずと浮かび上がる。

 日銀のマイナス金利政策で不評となっていたのは何か。ひとつは利ざやの縮小による金融機関への収益への悪影響である。これを解消する手っ取り早い手段はイールドカーブのスティープ化となる。つまり超長期の金利を上げることである程度解消される可能性がある。

 足元の金利、つまり短いところののマイナス化についてはそのまま放置するか、もしくはいろいろとセーフティーネットをつけた上でのマイナスの深掘りをすることでイールドをさらに立たせることも想定しているのかもしれない。

 さらに国債利回りのマイナスにより資産運用に大きな支障が出ていた。MMFの償還などがその大きな事例となっていたが、それも多少なり解消させることも意図していている可能性がある。少なくとも10年債利回りあたりがプラスに転じれば、多少なりそれは緩和されることも予想される。

 どうやら日銀は総括的な検証り結果を踏まえ、国債利回りのスティープニングを目論んでおり、それを察して超長期国債を中心に利回りが上昇してきたと結論づけることはできまいか。10年債利回りのプラス化も時間の問題なのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-09-02 17:03 | 日銀 | Comments(0)

日銀の布野審議委員の講演に意外感

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合で公表される予定の総括的な検証のヒントを求めて、例えばジャクソンホールでの黒田総裁の講演内容などを確認してみたが、いまのところ何がしかのヒントが明示されているわけではなさそうである。

 少なくとも総括の前提条件として、日銀の追加緩和への前のめり姿勢が維持されるであろうことは想像に難くない。また物価目標の変更もないとみられる。こちらは政府との共同声明が存在しているため、政府との交渉が不可欠となるためである。

 今回の総括的な検証にあたっては政府というか首相官邸との擦り合わせがあるのかどうかは疑問である。今年1月のマイナス金利政策の導入の際に政府出席者は一時中断の申し出を行っている。形式だけのものとの見方もあるが、擦り合わせは行われていなかったとの見方もできよう。

 もし検証のヒントが出されるとすれば、当然ながら執行部が真っ先に報告するであろう黒田日銀総裁から出ることになると考えられる。そうであれば9月5日のきさらぎ会での総裁講演が大きなヒントとなりうる。総裁、副総裁あたりを含めての総括検討後に審議委員にも報告が行くとみられ、ある程度その了承の目処が立った後、20日の決定会合を迎えることになると予想される。

 その審議委員の一人、布野審議委員の講演が8月31日に新潟であった。総括へのヒントはないであろうと思い、個人的にはさほど関心はなかった。ところが要旨の内容はなかなか興味深いものであった。

 布野委員の講演のニュースにおけるヘッドラインには、「日本銀行は、今後ともプラス2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、「量」・「質」・「金利」の3つの次元の緩和手段をすべて動員して、しっかりと金融緩和を推進していきたいと思います。」との部分に焦点が当てられていた。今年1月の会合を含めて賛成票を投じてきた布野委員であったため、金融政策に対しての公式コメントはこうならざるを得ない。だから私は関心がなかったのだが、そのあとに面白いものがあった。

 「次に、私なりに、より長期的な視点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。」

 ここからはまさに「私なり」の意見となる。布野委員は果たしてどのような見方をしているのかはこの部分を探ることでどうやら確認ができそうである。日本経済に対して布野委員は比較的楽観的な見方をしていた。

 「実は、日本にはアジアという世界で最も急成長をしている市場が背後に控えています。この成長を取り込むことが出来れば、需要サイドでの人口減少による需要不足の問題を薄めることが十分可能です。」

 「欧米に比べて日本はまだまだ余裕のある人の使い方をしているのも事実ですので、生産性の「伸びしろ」が十分残っているとも言えます。」

 まさにトヨタ出身の布野委員ならではの見方であるが、ここに無理矢理物価目標を達成しなければならないとの理屈とは距離を置いている。

 「将来のために、どう取り組むべきかですが、現在の政府、日本銀行による大胆な経済対策と緩和的な金融環境の下にあって、民間部門としてはこのチャンスを活用して積極的に構造改革を推し進めるべきではないでしょうか」

 あたりまえの発言に見えるが、今の黒田日銀の発想とは異なるものとなる。日銀が大胆な金融緩和をすれば、それによって景気は良くなり、物価も上がるというのが黒田日銀のリフレ政策の胆である。ところが布野委員のこの発言は黒田以前の日銀の金融政策の考え方そのものである。

 「以上のような課題への取り組みには企業の努力がまず重要です。一方、日本銀行としても、緩和的な金融環境を最大限に活かして貰えるように、「貸出支援基金」を設けて、低利かつ長めの資金供給を行っています。」

 日銀の金融政策が主で企業が従という発想ではなく、日銀はあくまで環境作りをしての側面支援という位置づけとなる。

 これを見ても明らかなのは、布野委員はリフレ派の考え方ではなく、本来の日銀の金融政策に近い考えを持っているように思われる。これは黒田総裁、岩田副総裁、原田審議委員、櫻井審議委員の考え方とは一線を画すことになる。政井委員も決してリフレ政策に賛同していることは考えづらい。

 今回の総括においてさらにリフレ色を強めるようなことがあり、出口を遠ざけるようなことになると、果たして木内委員、佐藤委員、布野委員、政井委員がどのような反応を示してくるのか。数の上からみても決して日銀はリフレ派が優位ということはない。むしろリフレ政策の修正をどう図っていくのかも、政策委員にとっての大きな課題となる以上、今回の総括は意外に一筋縄ではいかないかもしれない(やや期待も込めて)。


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by nihonkokusai | 2016-09-02 09:44 | 日銀 | Comments(0)

FRBの追加利上げは2007年の日銀の追加利上げも参考に

 FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言から、年内の利上げ観測が高まりつつある。9月の可能性についてもやっと市場は意識し始めた。それでもまだ利上げはないと見ている向きも多い。金融政策の正常化は如何に難しいことなのかが、これからもわかる。

 金融政策の正常化としては日銀に先例がある。2006年3月の量的緩和政策の解除と同年7月のゼロ金利政策の解除、そして2007年2月の追加利上げの決定である。

 FRBはこの正常化に向けてかなり慎重に事を運んできた。2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、当時のバーナンキ議長は、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べた。これをきっかけに米国の株式や債券が大きく下落し、これは「バーナンキ・ショック」と呼ばれた。これでFRBがさらに慎重になった可能性もあるが、それでも正常化路線を進めるため、この年の12月のFOMCでテーパリングの開始が決定された。

 テーパリングが終了したのが2014年10月となった。次のゼロ金利解除まではさらに時間を要し、利上げが決定されたのは2015年12月である。このあたりの時間の置き方を見ても、日銀の量的緩和とゼロ金利の解除に比べてかなり慎重となっていたことがわかる。これもあって次の利上げは少なくとも半年程度の時間を置くであろうとみられたが、結局は半年以上経っても次の利上げは見送られていた。しかし、正常化路線は放棄されていたわけではなく、あくまでタイミングを見計らっていたことも確かであろう。

 日銀が2007年2月に追加利上げを決定した際に、執行部の一人であった岩田副総裁が反対票を投じていた。総裁と副総裁の票が割れることはイングランド銀行はさておき、日銀で起きたのはこれが最初で最後であった。

 8月のワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの記事に使われた写真で印象的であったのが、イエレン議長を挟んでダドリー総裁とフィッシャー副議長が揃って談笑している姿であった。

 これは2007年2月の追加利上げで執行部が一枚岩となれなかったことの反省を生かして、FRBの執行部が利上げに向けて一枚岩であることを象徴したいがための写真であったとするのは考えすぎかもしれない。しかし、FRBの執行部の方向性は同じであることを強調していることも確かである。それを各連銀総裁もフォローしている。ただし、もうひとりのキーパーソンとなっているブレイナード理事からのコメントはいまのところあまり表に出ていない。

 あくまでFRBは足元の経済指標を確認して利上げを検討するというスタンスではあるが、少なくとも利上げが前提にあることも確かで、9月2日に発表される米8月の雇用統計がよほど悪化することがなければ、執行部を中心に9月のFOMCでの利上げ決定にむけて歩を進めると思われる。しかし問題はその次かもしれない。日銀は2007年2月が追加利上げの最後となってしまった。2007年8月にパリバ・ショック、そして2008年9月にはリーマン・ショックが起きている。

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by nihonkokusai | 2016-09-01 10:02 | 中央銀行 | Comments(0)
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