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債券先物の建玉が映し出す国債の流動性低下

 大阪取引所に上場している長期国債先物(以下、債券先物)は3月限、6月限、9月限、12月限があり、9月の限月の取引最終日は9月12日となった。なぜこのような限月といったシステムにしたのかといえば、金融先物の元祖と言うべき江戸時代の大坂堂島での米の先物がそのようなシステムとなっていたからである。それはさておき債券先物は中心限月に売買が集中しており、取引最終日までに中心限月が今回で言えば9月限から12月限に移行する。

 実際の中心限月移行の認定はナイトセッション含めた約定日の期先出来高が期近の出来高を逆転したその翌営業日であるが、それもさておいて現場では売買高が逆転した瞬間に中心限月が移行したと認定される。過去再逆転したケースは私の記憶の上ではたぶんなかったはずである。

 今回実質的に中心限月が9月限から12月限に移行したのは9月9日であった。この日新しく中心限月となった12月限の建玉に異変が起きていた。中心限月が交代したばかりは当然ながら建玉はそれほど多くない。それでも限月間スプレッド取引を利用した、いわゆるロールオーバーによって9月限の建玉が12月限に移行されるため、ある程度の建玉が存在する。ところが9月9日の債券先物の建玉がわずか5兆円台しかなかったのである。

 過去の手元のデータで実質的な中心限月のあった日の建玉を確認してみた(手元の数字は速報ベースなので確報ペースと多少誤差がある)。すると2012年末のいわゆるアベノミクスの登場から2013年4月の異次元緩和も登場時あたりは8兆円規模あり、その後それが10兆円近くまで増加していた。ところが、今年3月あたりからその建玉が減少し始め、今回の5兆円台にまで低下してしまったのである。

 これは当然ながら債券先物を取引している参加者が減ったことを意味しよう。特に今年3月から顕著になったということは今年1月に決定し2月から施行された日銀のマイナス金利による影響が大きかったとみて間違いはないのではなかろうか。これは日銀のマイナス金利政策の導入により、国債市場の流動性が落ち込んでいたことを示す。

 21日に公表される日銀の総括的な検証では、この債券市場の流動性の低下も意識されたものになると予想される。そのための手段として国債のイールドカーブのスティープニングが意識された可能性がある。しかし、足元金利についてはマイナス金利を深掘りすることも予想されており、これにより中期債の利回りが低下している。する債券先物は残存7年の国債に連動する。このため多少イールドカーブがスティープ化しようとも中期ゾーンに引っ張られる格好で7年ゾーンは上昇しづらくなる。

 もし国債市場の流動性を向上させたいのであれば、10年債利回りは当然ながら、7年ゾーンあたりまでの利回りをプラスに引き上げる必要もあるのではなかろうか。そうでなければ国債の流動性に大きな役割を果たしている債券先物市場の流動性が今後さらに低下してしまう懸念もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-09-16 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

日銀が国債のイールドカーブをスティープ化させたい理由とは

 9月14日の日経新聞の一面トップ(ちなみに13版)に「マイナス金利 深掘り軸に」という記事が掲載された。この記事によると「国債買入では長短の金利差を広げるように促すことを検討する」ともある。

 そもそものリフレ政策の導入となった2013年4月の量的・質的緩和政策そのものに対して私自身、懸念を示していたことで、べき論から言えばいろいろと指摘したいところではある。いずれにしてもその懸念は的中し、日銀はある意味、追い込まれた格好となった。その状況をどのような手段で打破するのかが、今回の総括的な検証の目的となっていたと推測される。しかし、日銀にとって新たな緩和手段を見いだすだけでなく、それとともにもうひとつ解決すべき大きな課題があったと思われる。

 今年1月の金融政策決定会合では、年初からの世界的なリスク回避による動きに対するものとして、日銀はそれまで総裁自ら否定していたマイナス金利政策の導入を決定した。マイナス金利政策は総裁が追加緩和手段を執行部に検討するよう指示した結果出てきたものであった。企画を中心とした執行部は金融機関になるべく収益悪化を招かぬよう3段階の「階層構造」を採用した。ところがこの日銀のマイナス金利政策の導入により、日銀が予想をもしなかった事態が発生した。

 2月9日に10年国債の利回りがマイナスとなり、それ以降、プラス金利が付いている超長期債の利回りも異常に押しつぶされる格好となったのである。日銀はこれをマイナス金利政策の効果としていたが、足元金利だけでなく金利全体がこのように異様に押しつぶされる事態に対し金融界からは批判の声が出ていた。

 その批判的な声を決定づけたのが、4月に三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長の発言であった。銀行にとってマイナス金利政策は「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べていた。さらに三菱東京UFJ銀行は、国債市場特別参加者の資格を国に返上したが、これも日銀のマイナス金利を含めた国債政策による影響との見方もできた。

 日銀は銀行の銀行であるとともに、その金融政策は金融市場を通じて行われるものであり、つまり金融機関を通じて政策は行われることになる。その金融機関との関係が悪化する事態は避けなければならない。黒田総裁は「マイナス金利は金融機関の収益に悪影響与えていない」という主張をしていたが、この発言はむしろ金融機関との関係を悪化させたのではなかろうか。

 日銀、この場合はその原因のマイナス金利政策を講じた企画を中心とした執行部としては、総括的な検証で行うべきことは追加緩和余地を探ることとともに、この金融界からの批判を緩和させて金融機関との関係改善を図ることであったのではないと推測される。

 足元金利のマイナス部分を深掘りさせても長短金利の利ざやを拡げれば、金融機関にとっては収益拡大が見込める。生保や年金などにとって超長期債の利回り上昇は運用利回りの向上となるため、歓迎されよう。さらにマイナス金利で落ち込んでしまった国債の流動性の回復も望める。
 
 このあたりを意識して21日に公表される日銀の総括的な検証では「国債買入では長短の金利差を広げるように促すことを検討する」可能性があるのではないかと予想されるのである。かなり無理矢理な理由付けとなるが、イールドカーブがスティープ化すれば人々のインフレ予想が引き上げられたという見方とすることもできる。

 ただし、マイナス金利の深掘りそのものは銀行などの収益悪化を招く可能性がある。これに対してはマクロ加算分を増やすなり、階層を増やすとか、銀行にとってのセーフティーネットを増やして極力悪影響が出ないよう工夫してくるのではと予想される。今度のマイナス金利の深掘りがあるとして、それは当然ながら国債のイールドカーブのフラット化は目的とはならない。前回のマイナス金利政策とは意味合いも異なり、実より名を取る政策になるのではないかと予想される。

 今回は批判の多かったサプライズも避けるとみられるため、櫻井審議委員のインタビューや黒田総裁、中曽副総裁の講演などを通じて総括のヒントを示唆していた。その結論としては、善し悪しはさておき、イールドカーブのスティープ化であろうと予想せざるを得なかった。

 ただし、注意すべきは日銀は長期金利はコントロールできないということが前提にあることである。市場はオーバーシュートすることもあり、カーブも操作できるとの思い込みは新たなリスクを招く懸念があることも注意しなければならない。

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by nihonkokusai | 2016-09-15 09:49 | 日銀 | Comments(0)

ブレイナードFRB理事のスタンスはブレず、それでも9月の米利上げの可能性はある

 FRBのブレイナード理事は12日のシカゴでの講演で「米経済は成長力が鈍化しており、金融引き締めは慎重さが求められる」と述べた。利上げの是非は「数か月先までのデータをみて判断したい」として、次回会合での決断は時期尚早との見方を示した(日経電子版)。

 13日から1週間は金融政策の情報発信を控えるいわゆる「ブラックアウト期間」に入ることで、このブレイナード理事の発言内容が注目されていた。いわゆるハト派であり、これまでもFRBの利上げについては慎重な発言を繰り返していた。そのブレイナード理事が、早期利上げを示唆するようなことになると9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性が一気に高まるとの見方もあったが、ブレイナード理事のスタンスはブレてはいなかった。

 イエレン議長、フッシャー副議長、さらにニューヨーク連銀のダドリー総裁はそれぞれ補完しあうかたちで、早期利上げの可能性を織り込ませようとしていた。それに対して今回のブレイナード理事が早期利上げに対して慎重姿勢をあらためて示し、またそれに先だってタルーロ理事もやはり慎重な姿勢をみせていた。

 タルーロ理事はインタビューで「私の見解では、講じる措置の内容にかかわらず、現時点で最も望ましいのはインフレ率の上昇が続き、目標に近い水準を維持するという実際の証拠を目にすることだ」と指摘した(ブルームバーグ)。

 ブレイナード理事の発言を受けて、市場では20、21日のFOMCでの利上げ予測は大きく低下した。しかし、利上げの可能性は依然として高いと個人的には見ている。ブレイナード理事は昨年12月のFOMCで利上げを決定した2週間前に「利上げには慎重を期し、実施するときにはゆっくりとしたペースで進めるべき」と発言しており、そのスタンスにブレはない。

 ブレイナード理事は民主党の大統領候補のクリントン氏にも近いとされており、クリントン氏が大統領となった際には財務長官の候補の一人ともされている。FRBの建物内では意図的なものがあったのかどうかはわからないが、ブレイナード理事の部屋はイエレン議長の部屋の隣だそうである。それだけの権力を持っているのではとの見方があり、だからこそ今回のブレイナード理事の講演内容が注目された面もあった。

 クリントン候補が大統領に選出されると、さらにブレイナード理事の存在感を強めることとなり、12月のFOMCでの追加利上げは9月に比べると不安定要素が多くやりづらくなることも予想される。

 共和党のトランプ候補は12日のインタビューでFRBがオバマ政権の意向に沿って政策金利を低く維持しているなどと述べ、FRBを批判したそうである。もしトランプ氏が大統領になった場合に、あらためてFRBに対する圧力を強めることも予想される。

 FRBの正常化路線はまだ道半ばであるが、年内少なくともあと一回の利上げを行いたいのであれば、そのタイミングとしては12月よりも9月20、21日の方がやりやすい。また物価が上がりにくい環境となっていることもあり、慎重になればなるほど先々で利上げがしにくくなることも予想される。正常化路線としてのFRBの利上げは、まさに今でしょうということになるのではないかと私は思っている。

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by nihonkokusai | 2016-09-14 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

ひと足先にドイツの長期金利がマイナスからプラスに

 先週8日のECB理事会では金融政策の現状維持を決定した。ドラギ総裁は会合後の会見で、資産買入れ策の期限延長について議論しなかったと説明した。市場では来年3月までの資産買入の時期を延長するのではとの期待が一部にあった。ドラギ総裁は資産買入れの円滑な実施を確実にするための選択肢を検討するよう指示したとも発言しており、これの意味するところは、ECBの国債買入についても限界が見えており、何かしら買入対象の変更等を行わなければ期間延長も難しくなっているのではとの見方もできる。

 そこにボストン連銀のローゼングレン総裁が利上げを長く待ち過ぎれば米経済が過熱する恐れがあるとの指摘したことで、9月のFOMCでの利上げ観測が再燃した。また、ブレイナード理事が12日に講演することが8日にFRBから発表された。利上げ慎重派とみられるブレイナード理事が利上げを示唆することで利上げに向けた地均しをしてくるのではないかとの観測も強まった。

 これらを受けて9日の欧米の国債は大きく下落した。米10年債利回りは1.67%と前日の1.60%から上昇し、英国の10年債利回りも0.86%と前日の0.76%から上昇した。そしてドイツの10年債利回りはプラス0.01%とプラスに浮上した。6月23日の英国でのEU離脱を問う国民投票の結果が出る以前の水準を回復した格好となった。

 今回の欧米の長期金利上昇の背景には、ECBの追加緩和に対する限界説やFRBの早期利上げ観測の再燃なども大きな要因であった。それだけではなく日本の国債利回りの上昇も影響していたと思われる。日本の超長期債を中心とした利回り上昇の背景には、日銀の総括的な検証への思惑もあったとみられる。

 このように日米欧の中央銀行のスタンスがあらためて国債市場で材料視されるようになり、異常に低下し過ぎていた日欧米の長期金利が水準訂正を行っているように思われる。

 ECBについてはすでにこれ以上のマイナス金利の深掘りはしないことをすでに表明しており、追加緩和手段として市場が期待していたのが、資産買入の時期を延長するという手段であった。しかしそれは日銀の国債買入以上に困難さを増していたとみられ、何かしら買入対象の変更等を行わなければならないことを示す結果となった。日銀もECBも認めたくはないであろうが、これ以上の金融緩和策に限界があることを示すものとなった。

 そこに正常化を進めたFRBがやや遅れていた利上げをこのタイミングで行うのではないかとの観測が強まった。というよりも6月、7月にできなかった利上げは9月も無理、去年もそうではなかったかといった市場の見方に対して、あらためてFRBが9月の利上げに向けた地均しをしてきたとの認識が強まった。今年は特に11月の大統領選挙を控えている以上、利上げをする意向であれば12月よりも9月の方が可能性は本来高いはずである。昨年9月のFRBの利上げ見送りは中国経済の減速をきっかけにした世界的な株価の急落などを踏まえ慎重になっていた可能性はあるが、いまのところ新興国の株式市場はそれほどの動揺も見せてはいない。

 日銀が21日の金融政策決定会合後に公表されるであろう総括的な検証については、金融緩和の時間軸をどのようにして延長させるのかが大きなテーマになると考えられる。そのためには市場との対話が必要となり、金融機関の収益面も意識したものとなることが予想される。結果としてそれはイールドカーブのスティープ化を促すことになるのと見方となっているものと思われる。

 9日にロイターは「日銀、中短期金利重視の緩和強化検討へ 具体策も議論」と報じている。日銀は金融機関の収益減や生保・年金の運用難など副作用の要因になっているイールドカーブのフラット化の修正策を検討するとしており、これを受けて9日の夕方から12日にかけて日本国債のイールドカーブは大きくスティープニング圧力を強めた格好となっている。ただし、日本の10年債利回りはまだプラスには転じていない。

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by nihonkokusai | 2016-09-13 09:52 | 債券市場 | Comments(0)

日銀の総括的な検証が世界の国債市場を動揺させたきっかけに

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合では総括的な検証の結果が公表される。日銀としては2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することの「ベネフィット」は大変大きいとしており(黒田総裁)、その旗を降ろすことは考えられず、量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないというのが引き続き建前としてある。

 そのための戦術策も練ってくる可能性があるが、それよりも戦略そのものを練り直すことが大きな主題となるのではなかろうか。9月5日のきさらぎ会での黒田総裁の講演「金融緩和政策の「総括的な検証」」においては「ベネフィット」と「コスト」との表現が使われている。これまでは「ベネフィット」ばかりが強調されていたが、今回は「コスト」との表現が使われていた。

 「マイナス金利が金融機関の収益に与える影響が相対的に大きい」とのコメントに加え、黒田総裁はマイナス金利が「経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意する必要があります。」と指摘している。

 ただし、マイナス金利政策の撤回などは考えられず、その代わりに日銀が取る手段のひとつに結果として国債のイールドカーブのスティープ化を促す可能性が存在すると市場参加者は読んだようである。マイナス金利政策決定後の国債のイールドカーブの急低下は日銀の想定以上であったことで、ここに修正を加えマイナス金利政策などによるコストを軽減させることが検証のひとつの目的となっている可能性があると。

 イールドカーブのスティープ化は利ざやを大きくすることで銀行の収益を改善させる。10年債利回りあたりまで利回りがプラスとなれば国債を使った運用も一息つける。長期、超長期債に投資家の売買が戻り、少しでも国債の流動性を回復させうる。日銀がこのようなことを目的としているのであれば、金融政策だけで物価目標達成は可能との認識から、そこには金融機関を含めて民間の活力をもり立てる必要があることで、債券市場の流動性を含めて認識をあらためつつあるように思われる。

 注意すべきことは日銀は今回、イールドカーブも自在に探れるかのような認識を示していたことである。日銀の金融政策で債券市場が自在にコントロールされているわけではなく、あくまで市場参加者の相場観と日銀の政策の方向性が合っていたということでしかないとの見方もできよう。ここに乖離が生じると債券市場が波乱含みの様相となるリスクも当然存在する。

 すでに日本のイールドカーブは9月に入りスティープ化が進んでいる。これにより10年債利回りはマイナス0.010%をつけ、ゼロ%まであと少しというところまで利回りが回復した。そんな状況下、ここにきて今度は欧州の国債利回りが上昇し、日本よりも一足先にドイツの10年債利回りが9日にプラスに回復していた。

 8日のECB理事会では金融政策の現状維持を決定。ドラギ総裁は会合後の会見で、資産買入れ策の期限延長について議論しなかったと説明した。市場では来年3月までの資産買入の時期を延長するのではとの期待が一部にあった。ドラギ総裁は資産買入れの円滑な実施を確実にするための選択肢を検討するよう指示したとも発言しており、これの意味するところは、ECBの国債買入についても限界が見えており、何かしら買入対象の変更等を行わなければ期間延長も難しくなっているのではとの見方もできる。

 これを受けてドイツなど欧州の国債が売られていたところに、9日にボストン連銀のローゼングレン総裁が利上げを長く待ち過ぎれば米経済が過熱する恐れがあるとの指摘したことで、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性が意識されて欧米市場に動揺が走った。9日のニューヨーク株式市場でダウ平均は大きく下落し394ドル安となった。リスク回避の動きが強まったのであれば通常、国債は買われるが、今回は欧米の国債が大きく売られたことで市場が動揺した格好となった。

 FRBの利上げについてはイエレン議長やフッシャー副議長などの発言内容からは正常化路線は継続しており、それで年内利上げの可能性が高いと読むなら12月ではなく9月の可能性の方が高いとみるべきではなかろうか。今月発表の経済指標が意識されて9月にもし利上げしをなかったならば、12月はその間の経済指標がすべて予想以上にでもならない限り余計無理なものとなる。11月の大統領選挙結果次第では政治圧力を受ける懸念もある。これはトランプ氏でもクリントン氏でも同様であり、12日にはそのクリントン氏に近いとされるブレイナードFRB理事の講演がある。ブレイナード理事は利上げ慎重派であるが、その発言次第では市場がさらに利上げを織り込みにくる可能性もある。ただし、その市場の動揺が大きすぎる懸念もあり、このあたりどうバランスを取ってくるのかにも注目したい。

 ここにきての日本と欧米の国債市場が動意を見せてきた背景には、日銀の総括的な検証に対する思惑による進み過ぎたイールドカーブの修正があった。それは結局日銀の追加緩和に対する限界も示すことになり、それはECBも同様であることが意識された。FRBの正常化路線に変更はないはずが、市場は早期利上げに懐疑的な見方をしていただけに、日欧の長期金利の上昇もあって、米債利回りも上昇圧力を強める格好となった。

 リーマン・ショック、欧州の信用不安などにより異常なまでに押し下げられていた日米欧の長期金利が、ここにきて流れが変わろうとしている。その大きなきっかけとなった要因として、日銀の総括的な検証への思惑があったことも確かではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-09-11 09:57 | 国債 | Comments(0)

ヘリコプターマネーの悲劇

 日銀の黒田総裁は5日の講演で、「例えば国債の引き受けや財政ファイナンスのように、「法律的にできない」あるいは「やるべきではない」という意味での限界は存在します。」といわゆるヘリコプターマネーについて明確に否定している。

 また8日のECB理事会では、ヘリコプターマネーや、スイス国立銀行と日本銀行に続いて株式を買い入れる可能性について、25人の理事が意見交換しなかったことを明らかにした。

 そもそもヘリコプターマネーと言う言葉を俎上に載せること事態がおかしいと言わざるを得ない。日本史ばかりでなく世界史を見ても、ヘリコプターマネーの悲劇は過去何度も引き起こされている。

 9日の日経新聞の経済教室「財政・金融政策の行方(下)破綻回避、魔法のつえなし」では慶應義塾大学の櫻川昌哉教授は18世紀初頭のジョン・ローを引き合いに出して、ブルボン王家の財政危機に自らの貨幣理論を売り込みフランス財政を壊滅的な状態に陥れたことを指摘している。

 またジョン・ロー以来「貨幣を刷ればいいんだよ」「国債の元本は支払わなくていいんだよ」と時の権力者にささやく経済顧問がしばしば現れ、権力者もまた錬金術師の甘言にひっかかってきたとの櫻川教授の指摘もあった。

 7月のバーナンキ前FRB議長も巻き込んでの日本におけるヘリマネ騒動は権力者にささやく顧問が仕掛けていたのではなかろうか。さすがにその騒動もここにきて下火になったが、当然と言えば当然ではある。それでは櫻川教授が例に出したジョン・ローが行った政策とはどのようなものであったのか。

 スコットランド人のジョン・ローは、フランス王立銀行の設立に寄与し、1717年にフランス領ルイジアナミシシッピー金鉱開発を目的としたミシシッピ会社を設立する。その後、フランスの東インド会社や中国会社を併合し、造幣局そして中央銀行の王立銀行までも傘下に収めた。

 新会社はルイ14世が生み出した総額15億ルーブルもの政府債務をすべて肩代わりする。新株発行の払込については国債を額面の2割で引き取ると発表し、払込については4回の分割払とし最初の1回だけ現金、残りの3回は手形とした。これらのプロジェクがミシシッピ計画と呼ばれた。 国債そのものや手形で新株が購入され、1720年に政府の全負債はこの会社に移り、フランス国債の保有者はこの会社の株主となった。政府は多額の債務返済を一時的に免れ、債務免除されたような状況になる。

 さらに王立銀行の株式払い込み手形を貨幣として機能させ、金貨が紙幣へと置き換えられた。ミシシッピ会社の株が値上がりすると紙幣を増発され、これにより資産バブルが発生、未曾有の投機ブームが起こる。当初500ルーブル以下であった株価は1719年後半には2万ルーブルを上回るまでに上昇した。ところが1720年に入り投資家が売却益を得ようと売りが殺到したことから株価は急落した。さらに払込手形という紙幣を金に替えようと王立銀行に人が殺到した結果、ローは払込手形の金との互換性を失効させる宣言をし、ミシシッピ計画は破綻し、フランス財政を壊滅的な状態に陥れたのである。このミシシッピ計画の破綻はフランス大革命のひとつのきっかけになったとされている。

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by nihonkokusai | 2016-09-10 11:26 | 日銀 | Comments(0)

7月以降、日本国債が売られた背景

 10年国債の利回りのチャートをみると今年に入ってから、利回りの低下傾向を強めていた。これは原油価格の下落とその背景となっていた中国などの新興国の景気減速への懸念が背景にあった。ところが7月初めあたりがボトムとなり、利回りは上昇トレンド入りしている(価格は下落)。

 7月初めまでの日本国債の買いの背景にはいくつか理由があった。そのひとつに6月23日の英国の国民投票で予想外のEU離脱が決まったことによるリスク回避の動きがあった。ドイツや英国の10年債利回りが過去最低を更新し、日本国債もリスク回避の風を受けて買い進まれ、利回りが低下していった。

 7月6日には20年国債の利回りがマイナス0.005%をつけてついにマイナスとなった。20年までの国債利回りがマイナスとなったことで、ここで超長期債を売却した投資家もいたようで、ここからの利回り低下は考えられないとの見方も強まっていたようである。

 20年債の利回りは結果としてここでボトムアウトした。10年債利回りもやや遅れて7月8日にマイナス0.300%をつけたところでボトムアウトしている。いったん戻り売りが入るが、10年債利回りはその後再びマイナス0.3%に接近することになる。ここで材料視されたのが、いわゆるヘリコプターマネーであった。しかし、7月29日の日銀の金融政策決定会合では、当然ながらヘリマネの導入など決定するはずもなく、追加緩和はETFの買入増額などに止まった。

 ヘリコプターマネーについては9月5日の黒田総裁の講演のなかでも、「例えば国債の引き受けや財政ファイナンスのように、「法律的にできない」あるいは「やるべきではない」という意味での限界は存在します。」と明確に否定している。ヘリマネを期待するのは勝手であるが、日銀主導でそれが決められることは絶対にありえない。

 ヘリマネ期待の後退も加わって、日本国債は再び調整局面を迎える。特に超長期への売り圧力が強まった。20年債利回りは9月に入り0.4%台まで回復した。この背景にあったのも日銀の金融政策に対する市場の見方の変化となっていたようである。

 それが顕在化したのが、9月2日の櫻井審議委員のロイターとの単独インタビューと9月5日の黒田日銀総裁の共同通信主催のきさらぎ会の講演となっていた。日銀は国債のイールドカーブのスティープ化を意識するようになっていたのである。

 10年債利回りは9月5日と6日にマイナス0.010%まで上昇しゼロ%に接近した。9月7日に大手投資家からとみられる買いが超長期債に入ったとの観測もあって、いったん超長期債への売り圧力も後退しつつある。

 しかし、20、21日の日銀の金融政策決定会合とFOMCの開催を控えて、これで利回り上昇が終わったとも考えづらい。FOMCでは利上げの可能性は依然高いとみている。日銀の総括的な検証では追加緩和への期待感を強めさせることよりも、市場との対話を図ることを優先してくると考えており、その意味でイールドカーブのスティープ化を意識したような対策が打ち出される可能性が高いと思われる。10年債利回りがプラスに転じることも十分ありうる。

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by nihonkokusai | 2016-09-09 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

ポケモノミクスからマリオノミクスへ

 9月7日のアップルのスペシャルイベントでの期待は当然ながらiPhone7であった。ところがそのイベントに意外な人物が登場した。任天堂の宮本茂氏である。任天堂のiOS機向けアプリとして「スーパーマリオラン」が発表されたのである。念のためこれは日本国内向けのイベントではない。世界から注目を帯びていた新型iPhoneの発表の場であった。

 8月21日深夜(日本時間22日午前)のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式に現れたのも安倍首相が分したマリオであった。閉会式のなかで2020年の東京五輪への引き継ぎ式が行われた。そこでのプレゼンテーションの映像は非常に洗練されたものであった。日本国歌そのものをアレンジしてしまったところから驚かされたが、その映像技術とともに、コンテンツの内容も日本を代表するキャラクターがこれでもかと詰め込まれ、その最後に登場したのが安倍マリオと称された安倍首相によるマリオであった。

 これも当然ながら世界の人々が見ていた。中国・杭州で9月4、5日に開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議でも安倍マリオが話題となり、各国首脳らから「非常に高いパフォーマンス」と評価する声が寄せられたそうである。さらには世界銀行のキム総裁からは「親子の会話のきっかけになった」と謝意が示される場面もあったそうである。

 そしてその前にもうひとつ世界を揺るがすような大きな出来事があったことを忘れてはいけない。ポケモンGOの登場である。ダウンロード数などすでにギネスに登録されるなど、世界各国で社会現象化した。ポケモンがこれほど世界の人々に愛されていたことに気付かされる現象とも言えた。これは経済的な効果も期待されたことで、アベノミクスならぬポケモノミクスとも呼ばれた。

 アベノミクスと呼ばれた経済政策の柱は、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」であった。このうち「大胆な金融政策」が最も効果があったとされているが、9月20、21日の総括的な検証でその修正が加えられようとしている。その効果そのものに対して疑問を持つものも多く、金融機関の収益への影響ばかりでなく、債券市場の機能を低下させるなどの副作用も出ている。機動的な財政政策もこれまでの自民党の財政政策とは何ら変わることはなかった。実は最も期待されていたはずのものが成長戦略であった。しかし、それは飛ばない矢とも比喩されていた。

 日本における成長戦力とは何か。これはリオデジャネイロの閉会式で安倍首相が自ら強く感じ取ったものではなかったろうか。日本の誇る映像技術、ロボット技術なとどともに一番目立っていたのがドラえもんやハローキティ、キャプテン翼、パックマンなどのキャラクター達であった。これらのキャラクター達の人気は国内に止まることなく、ワールドワイドのものであることを日本人に知らしめたのではなかろうか。

 そこにポケモンGOの世界的な社会現象化、さらには現在のハイテク技術のシンボル的な存在である新型iPhoneの発表の場でのマリオの登場も、それだけキャラクターが世界の人々に愛されているからこそのものとなる。

 日本にとってこのキャラクターたち、つまりはハードではなくソフトの部分をもっと効果的に使えないのであろうか。つまりポケモノミクスやマリオノミクスである。成長戦略はむろんバードの面の日本技術の強さを向上させることも重要だが、せっかく世界の人々に愛されているこれだけのキャラクターを生かして、日本そのものをアピールしていくことも重要ではなかろうか。そのキャラクターを生み出す産業もしっかりと育成していくことも大切である。

 これから2020年の東京オリンピックの開会式の演出なども練られることであろうが、それを通して日本の成長戦略として必要なものも再点検することが重要ではないかと思う。日銀が大量に国債を買っても世界は変わらないが、日本で生まれた大量のキャラクター達をうまく使えば、日本の将来に対する展望も開ける可能性がある。こちらのほうが余程、健全な政策であると思う。

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by nihonkokusai | 2016-09-08 19:41 | アベノミクス | Comments(0)

日銀の総括的な検証と可能性のある追加緩和の選択肢

 日銀の黒田総裁は5日のきさらぎ会の講演で次のような発言をしていた。

 「今の枠組みの中だけで考えても、「量」・「質」・「金利」の各次元での拡大は、まだ十分可能だと考えていますし、それ以外のアイデアも議論の俎上からはずすべきではありません。」

 市場ではこれを受けて追加緩和の可能性も意識していたようだが、それでは総括的な検証を受けたあとの日銀の追加緩和手段としてはどのような選択肢があるであろうか。

 量の側面からは単純に買い入れる国債の量を増やす手段がある。ただし、国債買入がいずれ困難になる可能性を日銀が意識しているとすれば、それは難しい。さらにイールドカーブの形状も意識するとなれば、国債の量については現状維持か、ややターゲットを拡げることでいかにも量を増やしたように見せるような工夫があるかもしれない。

 質の面からは7月の決定会合でETFの買入の増額を決定したが、株式市場へのインパクトが強いこともあり、ETFの買入増額は当面はないとみる。財投債(国債の財投債ではない)や社債などの買入等の可能性はないことはないが、こちらは発行量は少なくインパクトは薄い上、やはりイールドカーブは寝かしたくはないであろうことがネックともなる。

 金利の面からは、イールドカーブのスティープ化を意識した上で、金融機関の収益に悪影響を及ぼさないかたち(マクロ加算分を増やすことやマイナス金利適用分の一部除外等)でのマイナス金利の深掘りの可能性はある。

 そして四次元目の政策としては、まさに四次元だけに時間軸を意識した政策の可能性もありうる。今回の検証では物価目標達成時期について「2年以内」という部分は看板から下ろすことが予想され、そのかわりに2%の物価目標の達成が見通せるまで、少なくともあと2年程度は現在の緩和策を継続するといった新たな時間軸を設定してくる可能性もある。

 そして先日、浜田宏一内閣官房参与が「米国が量的緩和の出口に向かうのをちゅうちょすれば、日本は財務省の為替介入や日銀の外債購入によって投機的な為替投資家により真剣に対抗すべきだ」と述べたことで(ブルームバーグ)、米国債の購入としいう手段も市場では意識された。

 しかし、これについて浜田氏本人が以前言っていたように、リーガルには許されていると述べながらも問題は相手であり、つまりは米国政府の意向が重視される。それよりも、もし投機的な為替の動きに対処するのであれば、その管轄は日銀ではないため、円安誘導のため日銀が米国債を購入することはできない。できるとすれば量的緩和策の一環として国内金融機関の保有する米国債を買い入れるといった格好となろうが、これも結局は為替政策であろうと米国サイドからかなりの批判が来ることは目に見えている。米大統領選挙も控えていることもあり、日銀による米国債の買入は現実的ではない。

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by nihonkokusai | 2016-09-08 09:56 | 日銀 | Comments(0)

日銀の総括的な検証の目的は、市場との対話の回復か(期待を込めて)

 9月5日の黒田日銀総裁の共同通信主催のきさらぎ会の講演は、時期的にそろそろ総括的な検証の大筋がまとまっているタイミングとみられることで、多少なりそれについても触れてくるかなと思われたが、タイトルそのものが「金融緩和政策の「総括的な検証」 ─ 考え方とアプローチ ─」となっていた。

 9月2日の櫻井真審議委員のロイターとの単独インタビューは、総括的な検証を取りまとめている執行部の意見が色濃く反映されていると思われたので、それと今回の黒田総裁の講演内容を照らし合わせると、ある程度の総括的な検証の概要が垣間見ることができそうである。

 現行のマネタリーベース目標を含めた量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないというのがそもそもの前提にあり、ここは曲げることはしないようである。

 物価目標が達成できなかったことに対して黒田総裁は、原油価格の下落、消費税率の引き上げ後の個人消費を中心とする需要の弱さ、新興国経済の減速やそのもとでの国際金融市場の不安定な動きなど外部要因を指摘した。これについてはいろいろと指摘したいことはある。それはさておいて、物価目標の未達成について緩和の努力が足りなかったとの結論とはなってはいないようである。

 今回の検証のポイントとなりそうなのが、黒田総裁の講演のなかでは「マイナス金利の効果と影響」という部分となろうか。櫻井委員はインタビューでこんな発言をしていた。

 「イールドカーブの形状をどう変えていくかも、可能性としては政策の選択肢に入る。検証作業の中でいろいろな議論が出てくるだろう。イールドカーブが予想を超えて下がったのは事実である。それによって効果はあったが、いろいろなコストも出てきた。それも踏まえて今後の政策の組み合わせを考えていきたい」(ロイター)

 日銀の金融政策では本来、長期金利は動かせないというのが日銀の解釈であったはずだが、いつの間にかコントロール可能なような発言であった。黒田総裁からも同様の発言があった。

 「日本銀行がイールドカーブ全体に影響を与えることができることを示唆しています。」

 もし日銀がイールドカーブのスティープ化を今回の検証のハイライトとしているのであれば、確かに功を奏している格好となっている。しかし、債券市場がいつまでも素直に日銀の政策に従うと認識しているとすればそれは大いなる勘違いに繋がる懸念も存在する。

 とはいえ今のところ日銀の思惑と債券市場参加者の思惑の方向性は一致している。日銀とすれば評判の悪かったマイナス金利政策のコストを解消させる手っ取り早い政策がイールドカーブのスティープ化であり、市場参加者も10年債あたりまでの利回りのプラス回復はその運用から考えても望ましいものとなる。

 今回の検証の胆はこの国債のイールドカーブのスティープニングにあるとみている。黒田総裁は講演の最後のまとめで次のような発言をしている。

 「金融政策で意識すべきは「限界」ではなく、どのような公共政策においても考慮すべき「ベネフィット」と「コスト」の比較です。」

 櫻井委員もやはりコストという表現を使っている。つまりこれまでは異次元緩和の効果ばかり強調し、その弊害や副作用については見て見ぬふりをしていたが、今回の検証ではこのコストにも焦点を当てている。これにより乖離していた市場参加者との距離を狭め、より現実的な政策に方向転換しようとの意図も伺える。

 市場は総括的な検証を受けての追加緩和手段や追加緩和時期に注目しているが、今回の総括の目的は追加緩和手段を増やしたり、無理矢理でも三次元の追加緩和の実施を可能にさせることよりも、市場と向き合う姿勢を示すことにあるのではなかろうか。日銀もここにきて市場との対話の欠如がコストとして認識してきたのではないかと思われる。やや期待を込めて、今回の日銀の総括的な検証の目的は市場との対話の回復ではないかと予想したい。

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by nihonkokusai | 2016-09-07 10:03 | 日銀 | Comments(0)
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