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5分では読めない総括緩和

 まずは今回のコラムのタイトルの解説をしたい。日銀は「5分で読めるマイナス金利」という文章をサイト内で公表している。そのタイトルの一部をお借りして、総括緩和という新たな造語を加えてみた。これは9月の決定会合の総括とともに追加緩和を模索するであろうということを予想して、その総括の内容と追加緩和の手段を5分程度で考えて(先を読んで)みようとの無謀な試みである(以下の推測はあくまで個人の見解である)。

 最初に総括の内容を予測するにあたり、その条件となるものをいくつか整理してみたい。この総括という言葉は7月29日の金融政策決定会合の公表文に下記のような形で出ていた。

 「なお、本日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。」

 この総括に関して黒田総裁は会合後の会見で、「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行うということです。」とコメントしている。更に会見では下記のような発言もあった。

 「政策の逐次投入が望ましくないと言った意味は、その時々で必要にして十分なことを行わずに、情勢の悪化に引っ張られて次々に逐次的にやっていくやり方は適切ではないということです。その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行うということが、逐次投入を避け、金融政策の効果を最大限発揮させることになると思っています。」

 「端的にいえば、金融緩和の効果が経済全体としては相当効果が出ているとはいえ物価については道半ば、という状況等をよく総括して分析・検証するということが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという観点から非常に重要だと思いますので、そういったことを行う、これは政策委員会の総意です。」

 発言の内容の矛盾点等についての指摘は今回は止めておく。あくまで総括の予測をする上でこれらの発言内容を吟味したい。ポイントは日銀は物価目標達成に向けての姿勢は維持しており、後退するような内容とはならないこと。逐次投入については「その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行う」のであればこれを容認する。その結果としてなのか、7月の決定会合の公表文のタイトルが白川総裁時代の逐次投入時につけられていたタイトル「金融緩和の強化について」になっている。

 さらに岩田副総裁が8月4日の講演で総括に関わるコメントをしていたのが下記となる。

 「世界に例をみない大規模な金融緩和にもかかわらず、残念ながら2%の「物価安定の目標」は未だ達成できていません。こうした認識に基づいて、政策効果の波及メカニズムやそれを阻害した諸要因などについて、検証したいと思います。また、1月に導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、マイナス金利と国債買入の組み合わせによって、金利引き下げにきわめて大きな効果を発揮しています。同時に、金融機関や金融市場にも様々な影響を与えています。こうした政策のメカニズムや、実体経済・金融面に対する効果や影響についても点検したいと考えています。」

 ここにいくつかヒントが隠されているように思われる。この講演の内容にはいわゆる企画関係の執行部も目を通しているというか、このあたりの文面に大きく関わっていることが予想されるため、これは総括を指示された側の人達が文章に関わっている可能性が高い。

 つまり総括のひとつのテーマは大胆な緩和で経済・物価は日銀の想定どおりの回復を見せているが、物価目標は達成されていない。総括ではその理由をピックアップすることとなる。この答えは上記の黒田総裁や岩田副総裁の発言でも触れられており、総括ではそれを数字を含めてもう少し具体的に説明がなされるではなかろうか。その上で何かしらの手を加えるものがあるとすれば何か。

 ここにひとつの可能性が浮かび上がる。今回の総括の目的のひとつが期待インフレ率の上昇にあり、それは足元の物価指数に影響を受けるのであれば目標とする物価指数そのものを変えてしまうという手である(かなり無茶であるのは承知)。目標を全国消費者物価指数ではなく、日銀が公表しているコアコア指数とすれば、6月も前年比マイナス0.4%ではなくプラス0.8%となる。さらに目標達成時期については2年といった期間は削除するものと思われる。

 そしてもうひとつの問題は、マイナス金利による金融機関や金融市場への影響である。少なくとも効果があったとしているマイナス金利政策を解除するという手段は取らないとなれば、特に金融機関への影響を少なくするための工夫が求められよう。今年1月に決定した多段階方式のマイナス金利に対して、もう少し柔軟な適応も検討されるのではなかろうか。とにかくも付利の一部にマイナスが残ればマイナス金利政策は継続されることになる。

 この段階ですでに5分以上経過しているような気がするが、このような総括の上で、それではどのような追加緩和策が検討されるのか。国債の量とマイナス金利は維持することを前提に考えると、追加緩和手段としては質の面、つまり7月のETFといったような国債以外の買入資産の買入増額等がある。ETFやREIT、社債などに加えて新たに買い入れる資産を模索する可能性もある。為替については財務省の管轄であり、米国債の買入についてはいろいろと難しい面もあるが、国内金融機関が保有している米国債を買い入れるなどの手段が検討される可能性はあるかもしれない(これもハードルは高いが)。

 さらに量の面では、公表文にも書かれている「金融市場の状況に応じて柔軟に運営する」という点から、よりフレキシブルなものとする一方で、買入国債の年限をさらに長期化するなどの手段も考えられる(これも一応、緩和強化にできる)。銀行保有の国債を手放せるように昨年12月の補完措置のような適格担保の拡大等が図られる可能性もあるか。日銀の国債買入がどの程度まで可能か(数字上はまだ日銀は国債発行残高の3割しか買っていないが)、そのあたりを見計らった上で現在の大胆な緩和策を2020年まで継続する、といった時間軸を設けることで、長い金利にも引き続き低下圧力を加えようとするかもしれない。政府とのアコードの再強化という方法もあるが、どうも財務省と日銀と官邸の距離感がおかしくなっているようにもみえるので、これはなかなか難しいかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-08-09 09:54 | 日銀 | Comments(0)

5分では読めない総括緩和

 まずは今回のコラムのタイトルの解説をしたい。日銀は「5分で読めるマイナス金利」という文章をサイト内で公表している。そのタイトルの一部をお借りして、総括緩和という新たな造語を加えてみた。これは9月の決定会合の総括とともに追加緩和を模索するであろうということを予想して、その総括の内容と追加緩和の手段を5分程度で考えて(先を読んで)みようとの無謀な試みである(以下の推測はあくまで個人の見解である)。

 最初に総括の内容を予測するにあたり、その条件となるものをいくつか整理してみたい。この総括という言葉は7月29日の金融政策決定会合の公表文に下記のような形で出ていた。

 「なお、本日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した通り、海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。」

 この総括に関して黒田総裁は会合後の会見で、「2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために何が必要かという観点から、「総括的な検証」を行うということです。」とコメントしている。更に会見では下記のような発言もあった。

 「政策の逐次投入が望ましくないと言った意味は、その時々で必要にして十分なことを行わずに、情勢の悪化に引っ張られて次々に逐次的にやっていくやり方は適切ではないということです。その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行うということが、逐次投入を避け、金融政策の効果を最大限発揮させることになると思っています。」

 「端的にいえば、金融緩和の効果が経済全体としては相当効果が出ているとはいえ物価については道半ば、という状況等をよく総括して分析・検証するということが、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという観点から非常に重要だと思いますので、そういったことを行う、これは政策委員会の総意です。」

 発言の内容の矛盾点等についての指摘は今回は止めておく。あくまで総括の予測をする上でこれらの発言内容を吟味したい。ポイントは日銀は物価目標達成に向けての姿勢は維持しており、後退するような内容とはならないこと。逐次投入については「その時々で必要にして十分な政策をきっちりと行う」のであればこれを容認する。その結果としてなのか、7月の決定会合の公表文のタイトルが白川総裁時代の逐次投入時につけられていたタイトル「金融緩和の強化について」になっている。

 さらに岩田副総裁が8月4日の講演で総括に関わるコメントをしていたのが下記となる。

 「世界に例をみない大規模な金融緩和にもかかわらず、残念ながら2%の「物価安定の目標」は未だ達成できていません。こうした認識に基づいて、政策効果の波及メカニズムやそれを阻害した諸要因などについて、検証したいと思います。また、1月に導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」は、マイナス金利と国債買入の組み合わせによって、金利引き下げにきわめて大きな効果を発揮しています。同時に、金融機関や金融市場にも様々な影響を与えています。こうした政策のメカニズムや、実体経済・金融面に対する効果や影響についても点検したいと考えています。」

 ここにいくつかヒントが隠されているように思われる。この講演の内容にはいわゆる企画関係の執行部も目を通しているというか、このあたりの文面に大きく関わっていることが予想されるため、これは総括を指示された側の人達が文章に関わっている可能性が高い。

 つまり総括のひとつのテーマは大胆な緩和で経済・物価は日銀の想定どおりの回復を見せているが、物価目標は達成されていない。総括ではその理由をピックアップすることとなる。この答えは上記の黒田総裁や岩田副総裁の発言でも触れられており、総括ではそれを数字を含めてもう少し具体的に説明がなされるではなかろうか。その上で何かしらの手を加えるものがあるとすれば何か。

 ここにひとつの可能性が浮かび上がる。今回の総括の目的のひとつが期待インフレ率の上昇にあり、それは足元の物価指数に影響を受けるのであれば目標とする物価指数そのものを変えてしまうという手である(かなり無茶であるのは承知)。目標を全国消費者物価指数ではなく、日銀が公表しているコアコア指数とすれば、6月も前年比マイナス0.4%ではなくプラス0.8%となる。さらに目標達成時期については2年といった期間は削除するものと思われる。

 そしてもうひとつの問題は、マイナス金利による金融機関や金融市場への影響である。少なくとも効果があったとしているマイナス金利政策を解除するという手段は取らないとなれば、特に金融機関への影響を少なくするための工夫が求められよう。今年1月に決定した多段階方式のマイナス金利に対して、もう少し柔軟な適応も検討されるのではなかろうか。とにかくも付利の一部にマイナスが残ればマイナス金利政策は継続されることになる。

 この段階ですでに5分以上経過しているような気がするが、このような総括の上で、それではどのような追加緩和策が検討されるのか。国債の量とマイナス金利は維持することを前提に考えると、追加緩和手段としては質の面、つまり7月のETFといったような国債以外の買入資産の買入増額等がある。ETFやREIT、社債などに加えて新たに買い入れる資産を模索する可能性もある。為替については財務省の管轄であり、米国債の買入についてはいろいろと難しい面もあるが、国内金融機関が保有している米国債を買い入れるなどの手段が検討される可能性はあるかもしれない(これもハードルは高いが)。

 さらに量の面では、公表文にも書かれている「金融市場の状況に応じて柔軟に運営する」という点から、よりフレキシブルなものとする一方で、買入国債の年限をさらに長期化するなどの手段も考えられる(これも一応、緩和強化にできる)。銀行保有の国債を手放せるように昨年12月の補完措置のような適格担保の拡大等が図られる可能性もあるか。日銀の国債買入がどの程度まで可能か(数字上はまだ日銀は国債発行残高の3割しか買っていないが)、そのあたりを見計らった上で現在の大胆な緩和策を2020年まで継続する、といった時間軸を設けることで、長い金利にも引き続き低下圧力を加えようとするかもしれない。政府とのアコードの再強化という方法もあるが、どうも財務省と日銀と官邸の距離感がおかしくなっているようにもみえるので、これはなかなか難しいかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-08-09 09:54 | 日銀 | Comments(0)

債券相場の地合の変化

 7月29日の日銀金融政策決定会合を境に債券相場の地合が変わった。すでに超長期債については7月6日に20年債利回りがマイナスとなったところでボトムアウトしており、10年債も7月8日にマイナス0.3%台に乗せたところでボトムアウトしていた。ところが中期ゾーンはその後も低下基調となり、結局7月27日に2年債利回りと5年債利回りがそれぞれマイナス0.370%、5年債がマイナス0.380%をつけてボトムアウトした。

 債券先物も前後場では7月27日の154円ちょうどが高値となった。その日のナイトセッションで154円01銭を付けており、これが過去最高値となった。債券先物はここでピークアウトした。

 7月29日に債券先物は決定会合結果を受けて152円44銭まで急落し、1円20銭安の152円60銭で引けたのである。さらに8月2日の10年国債入札が低調な結果となったことを受けて、債券先物は150円66銭まで下落した。

 これら一連の動きをみると誰が仕掛けていたのかはおおよその見当が付きそうである。日本のいわゆる投資家は20年債の利回りがマイナスとなったことでいったん見切りをつけていたとみられ、そこから超長期債が下落しても積極的な買いは見当たらなかった。

 しかし、日銀の追加緩和への過剰な期待が中期ゾーンと債券先物を押し上げ、それぞれ過去最低利回りと過去最高値を更新することになる。これはつまりこのゾーンを買える投資家、海外投資家による仕掛け的な動きであろう。それともうひとつマイナス金利でも購入できる業者も絡んでいた可能性はある。

 ところが7月29日の日銀の追加緩和は量の拡大やマイナス金利の深掘りはなかった。ましてやヘリコプターマネーは気配すら見せなかった。その上、いままでの緩和策を総括することまで加えたことで海外投資家は日銀の金融政策の先行きが読めなくなったとみられる。いったんポジションを外す動きに出たとみられ、それが中長期債主体の急落に繋がる。価格変動リスクの高まりにより、10年国債入札も絡んで業者も先物や10年債そのものでヘッジを掛けざるを得なくなったのではなかろうか。

 日銀は9月に金融政策のフレームワークを変更するのではとの思惑も出ている。黒田総裁は強気の姿勢は崩しておらず、マイナス金利政策の解除やテーパリングをすぐに行ってくることは考えづらい。しかし、金融政策決定会合の追加緩和時の声明文のタイトルを「金融緩和の強化について」と白川時代のものに戻したことはなぜなのか。日銀はリフレ策から昔のスタイルに戻ろうとしている、そんな思惑も今回の債券相場の下落の背景にあったのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-08-08 09:37 | 債券市場 | Comments(0)

日本国債の価格変動リスクが意識」

 9月の日銀金融政策決定会合に向けて日本国債の価格変動リスクが意識されつつある。7月29日の日銀金融政策決定会合では追加緩和が決定されたが、その内容は声明文のタイトルが示すように「金融緩和の強化について」となった。このタイトルは白川総裁以前の日銀が使っていたものであった。これは黒田総裁になってからの大胆なサプライズな金融政策から、元の逐次投入型の金融政策に戻すことを意味しているとの見方もできよう。

 これにより、ここからさらに大胆な国債買入増額やマイナス金利の深掘りの可能性が後退したと言える。今回の金融緩和の強化では日銀の政策目標となっているマネタリーベースの増額は据え置かれた。それにも関わらず追加緩和という言葉を使う以上は、フレームワークそのものの変化も意味しよう。

 しかし、それでも黒田総裁は強気の姿勢は崩しておらず、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。

 この総括とはどのようなものになるのか。この解釈を巡っては、さらに大胆な緩和を可能にさせる環境作りとの見方も一部にある一方、現実に量や金利での勝負は諦め、以前の日銀のフレキシブルな緩和方式に改めるのではとの見方もある。

 いずれにしても市場が期待したようなヘリコプターマネーという究極のリフレ策の実験場に日本がなる可能性は後退した。特に海外投資家によるヘリマネへの期待は強かったが、それがなくなったことにより、7月29日以降の日本国債の急落へと繋がることになる。

 今回の日本の債券市場の急激な調整は、2003年6月のVARショックと呼ばれる債券相場の急落と似ている。VARショックでは日銀の量的緩和を背景にメガバンク主体に買い仕掛けが入ってその反動が起きた。今回買いを仕掛けたのはヘリマネ期待の海外投資家と国債をより高く日銀に売却しようとした業者が主力であったとみられる。だからこそ8月2日の10年国債の入札結果がさらなる急落の引き金ともなったといえる。

 ヘリマネが決定されて国債の信認が毀損されるとの認識で日本国債が急落するのであればともかく、ヘリマネがなかったことで嫌気されて急落というパターンであり、これはあくまで相場が過熱しすぎた反動といったことになろう。

 それでもこの日本国債の急落をきっかけにこれまでの上昇相場を支えてきたパターンが崩れる可能性が出てきた。もしここからボラタイルな相場が継続するようなことになれば、海外投資家が日本国債のポジションを減らす可能性もありうる。また、業者にとっては日銀トレードがやりにくくなり、日本国債の参加者がさらに減少してくる懸念もある。

 もちろん国債の利回りが上昇すれば、これまで買い控えていた国内投資家も出てこよう。それもある程度相場が落ち着かないと難しい。

 いずれにしても9月の金融政策決定会合向けては今後もいろいろな憶測が飛び交うとみられ、それに国債が一喜一憂してくることも予想される。日銀も表面上は強気の姿勢を示しても、国債市場の動揺をみていずれ出口戦略も必要であることを認識してくるのではなかろうか。その意味ではある程度の日本国債の水準訂正はむしろ必要であるとも考えられる。

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by nihonkokusai | 2016-08-06 13:13 | 国債 | Comments(0)

これまでの日本国債急落の場面

 今回の日本国債の急落が世界の市場を揺るがすなど、久しぶりに日本国債への注目度が高まっている。ここで過去に日本国債が急落したケースをいくつか振り返ってみたい。

ロクイチ国債の暴落

 国債の流動化があまり進んでいなかったころに、国債は一度大きな暴落を経験している。それが、ロクイチ国債と呼ばれた国債の暴落である。1978年は当時とすれば低金利局面であり、4月にそれまで発行された10年国債の最低利率である利率6.1%(通称、ロクイチ国債)の国債が発行された。

 1979年4月以降、本格的な金利上昇局面となり、国債価格は大きく下落。景気拡大や原油価格の上昇により、6月にロクイチ国債の利回りは9%を超えてきた。この国債の下落を受けて、12月には金融機関の保有国債の評価法が、従来の低価法から原価法または低価法の選択性となった。

 1980年に入り、日銀は2月、3月と立て続けに公定歩合を引き上げ、長期金利も大きく上昇し、ロクイチ国債は暴落した。4月にロクイチ国債の利回りが12%台にまで上昇し、金融機関がパニック状況に陥ったのである。その後、米国金利の急激な低下などにより債券市況は急回復したが、ロクイチ国債の暴落は大蔵省(現、財務省)の国債管理政策にも大きな影響を与えたとされる。

プラザ合意に伴う債券先物の急落

 1985年10月に日本初の金融先物である債券先物取引が東証に上場された。この上場直後に債券相場は急落した。その要因は1985年9月22日にニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開かれた会議にあった。ドルを引き下げる方向で合意した。プラザ合意である。プラザ合意が発表される前のドル円相場は1ドル242円であった。そして、合意発表後に開いた23日のニュージーランド市場では1ドル234円程度まで円高ドル安が進行したものの、大蔵省と日銀が必死の努力でドルを売り、口先介入などを行っても、そこからなかなか進まなかった。そこで日銀は、10月25日に短期金融市場を操作して第二の公定歩合といわれた短期金利の高め誘導を実施した。短期金利を高くすることで、ドル売り・円買いの動きを誘ったのである。日銀のオペで2か月物の手形レートは0.5625%上昇して7.125%となり、コールレートも上昇した。

 債券先物にとってこれは最悪のタイミングであった。短期金利を無理やり上げたことで、長期金利にも上昇圧力が加わり、債券が売られる展開となったのである。債券先物市場に大量の売り注文が殺到した。そうでなくても債券はスタートしたばかりであり、ご祝儀による大量の買いポジションを抱える証券会社が多かった。売りが売りを呼ぶ展開となり2日間値がつかないという大混乱となったのである。

 1985年10月24日の債券先物は101円63銭で引けていた。25日、26日は値が付かず、ストップ安で張り付いたままとなった。28日にようやく96円63銭で寄り付いたものの、その後も下げて、11月14日に安値89円82銭を付けて、ようやく底入れしたのである。実に12円近い下落であった。

債券バブル崩壊とタテホショック

 5月14日、89回債は10年債でありながら、当時の代表的な短期金利であった公定歩合の2.5%に接近する。日本相互証券の端末には、89回債の売りが、2.555%に約3000億円、2.550%には約2000億円もまとまって並んでいた。ところが、それが一気に買い上げられたのである。これを全部買ったのが「公定歩合が高すぎる」というコメントをした大手証券会社のチーフディーラーともいわれている。

 結局、ここで債券バブルは終焉する。この2.550%が当時の10年債の最低利回りとして記録されることになった。ちなみに債券先物は前日13日につけた119円24銭が当時の高値となる。

 債券バブルの崩壊で金融機関のみならず、事業法人でも大きな損失が発生した。1987年9月2日、タテホ化学工業が債券先物で286億円もの損失を出したことが明らかになった。このニュースで債券相場は暴落(長期金利は急上昇)した。

 いわゆるタテホショックである。9月3日から5日までの3日間で、89回債は1%あまりも上昇した。債券先物市場では、9月2日の終値が104円10銭だった87年12月限が、5日終値が100円30銭になった。

資金運用部ショック

 1998年4月1日に日本銀行法の全文改正を内容とする日本銀行法(新日銀法)が施行された。すでに1月から金融政策決定会合が開始されていた。日銀の金融政策の決め方がこれにより大きく変わったのである。日銀は世界的な金融システム不安の台頭を受けて、1998年9月の金融政策決定会合において3年ぶりとなる金融緩和を決定した。これを受けて長期金利は低下し、初めて1%を割り込んだ。

 1998年7月の小渕政権成立後、次々に経済政策が打ち出され、1998年11月16日に発表された緊急経済対策の財源として12兆円を上回る国債が第三次補正予算にて手当てされた。翌日に米国格付け会社ムーディーズが、初めて「日本国債の格下げ」を発表した。公的部門の債務膨張も格下げの大きな理由とされていた。

 そして1998年の年末に翌年度の国債発行計画が発表された際、旧大蔵省資金運用部の国債引受額が減少し、国債の市中消化額が急増することが明らかにされた。大蔵省資金運用部による国債買い切りオペの中止も発表された。債券市場にとり9月に大きく買われた反動もあるなか、需給悪化につながる複数の悪材料が重なったことで、債券相場は急落した(長期金利は急騰)。

 12月22日に債券先物は1988年8月以来、10年ぶりにストップ安をつけた。1999年度の運用部の国債引き受けシェアーもやはり大きく低下し、それでなくても過去最大規模の国債発行額だけに市中消化は60兆円を超えるものとなった。しかも投資家も0.9%で発行された国債などほとんど食指をみせず、ある程度の利回りが必要との見方も働いたのであろうか。追随的に正式に来年1月からの資金運用部の債券買い切りオペが中止されることが発表され、加えて日銀では50兆円にも及ぶ国債保有は異常との見方を総裁が示したことで、微かな期待の「輪番オペ増額」も否定されるにいたり、先物はついにストップ安をつけた。高値からすでに10円近く下落していた。9月に0.7%を割り込んでいた長期金利は12月30日には2%台に乗せてきた。 これはのちに「運用部ショック」と呼ばれたのである。

VARショック

 2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めた。

 6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

 この相場上昇過程において、目立ったのが都市銀行の一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。日銀の量的緩和政策に加え、株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。

 しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。 17日から19日の3日間で先物は、144円76銭から141円80銭に急落した。10年債利回りも0.730%、20年利回りも1.075%にまで利回りが上昇したのである。この暴落はVARショックと呼ばれた。

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by nihonkokusai | 2016-08-05 09:44 | 債券市場 | Comments(0)

異例の財務相・日銀総裁会談の目的は期待のつなぎ止め

 2日に帝国ホテルにて麻生財務相と日銀の黒田総裁が会談した。G7やG20と呼ばれる財務相・中央銀行総裁会議にはいつも一緒に出席しており、財務相と日銀総裁が意見交換するのは珍しくなさそうに見えるが、実は極めて異例であった。

 日経新聞によると、財務相と総裁が公式に会談するのは最近では2013年1月に麻生氏と当時の甘利明経済財政・再生相、白川方明日銀総裁が2%の物価上昇率目標を導入する際に3者で会談した例があるぐらいだとか。

 今回は政府と日銀の「結束」で市場の期待をつなぎ留めたい財務相側がセッティングしたようである。日銀総裁を財務省に呼びつけるようなかたちを取らないようにと場所も中間地点の帝国ホテルにするなどの気配りもあった。

 麻生財務相はここで40年債の増発についても触れたとみられる。日経新聞によると2016年度に2.4兆円の発行を予定している40年債で数千億円上積みを検討するそうである。

 この席で何故、わざわざ40年債の増発を示唆する必要があったのか。見方によれば市場ではヘリコプターマネーへの期待から円安株高債券高が進行していたが、決定会合では量もマイナス金利の深掘りはなかったことでそれによる失望感から国債やドル円が大きく下落した。今回、財務相が40年債増発について触れたのは、少しでもヘリマネの思惑をつなぎ止めたいからなのであろうか。それはそれでかなり、リスキーなものとも思えるのだが。

 黒田総裁はこの会談後の会見で、緩和検証への思惑から「市場では緩和が縮小に向かうとの見方から金利が上昇したが」との質問に対して「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。そのようなことにはならない」と緩和縮小を否定した(ロイター)。

 このあたりは29日の総裁会見をみても明らかではあった。2%という目標は下ろさず、前向きの姿勢に変化はない。ただし、なぜか決定会合の声明文は「金融緩和の強化について」という黒田総裁以前の昔のスタイルに戻している。

 日銀の黒田総裁はヘリコプターマネーについては完全に否定している。財務省にとっても国債の信認を低下させかねないこのような策を講じることは考えづらい。政府の経済対策に日銀の金融政策が歩調を合わせることでの相乗効果を期待するという考え方もわからないではない。財務相と日銀総裁が会って話しをするとなれば、あらためて財政政策と金融政策のコラボレーションへの期待も市場に広がって、との期待もあったかもしれない。

 しかし、この会談を受けても市場の反応は鈍かった。それだけ7月29日の日銀の決定会合については妙な期待感が強まり過ぎていたともいえる。市場は政府・日銀にヘリマネを採用し一線を越えるように期待したが、そこまでの壮大な実験はさすがに出来なかった。そんな現実が浮き彫りになってきたことで、期待が剥落し円高株安と債券安を招いた。

 そろそろ市場参加者も現実を見据える必要もあるのではなかろうか。どうしてヘリマネが必要なのか、ヘリマネで何ができるのか、ヘリマネで何が起きるのか。そもそもそんなリスクある政策を必要とするほど日本経済は危機的状況にあるのか。

 市場の期待に応え、一時的な円安株高を招くためだけに、そんな危険に策を講じる必要はない。もし今回の財務相・日銀総裁がその期待をつなぎ止めるものであったとするならば、やや疑問を投げかけざるを得ない面もある。

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by nihonkokusai | 2016-08-04 09:47 | 日銀 | Comments(0)

日本国債が急落した背景

 7月29日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて、債券市場の流れに変化が生じた。日銀の金融緩和に対する異常な期待感で買われていたものが、結果は追加緩和はあったものの予想されていたものより小粒(ETFの6兆円は決して小さな金額ではないが)であったことで、利益確定売りに押された。その後も売りは止まらず、日本国債は久しぶりの急落局面を迎えることとなった。

 これは決定会合に向けて国債が買い進まれていた反動とも言えた。今回の債券相場の上昇において買われていたのが債券先物と中期債が主体となっていた。

 超長期債については英国のEU離脱による余波により、すでに7月6日に20年債利回りがマイナスとなったところでボトムアウトしていた。国内投資家のニーズが引いたのである。

 また10年債利回りがボトムアウトしたのは7月8日にマイナス0.3%台に乗せたところとなった。ただし、その後の10年債の下落基調は比較的緩やかなものとなっていた。

 そして少し遅れて7月27日に2年債利回りと5年債利回りがそれぞれマイナス0.370%、5年債がマイナス0.380%をつけてボトムアウトした。29日の日銀金融政策決定会合への過剰な期待感が背景にあったものとみられる。

 債券先物に関しては前後場だけでは7月27日の154円ちょうどが高値となった。その日のナイトセッションで154円01銭を付けており、これがいまのところの過去最高値ということになる。債券先物もここでピークアウトした。

 7月28日に債券先物9月限は153円65銭まで下落し、20銭安の153円80銭で引けた。高値警戒もあったが日銀の政策変更への思惑による調整売りともいえよう。

 そして日銀の金融政策決定会合二日目の29日の会合結果を受け、過剰な期待感を抱いていたむきの梯子が外された格好となり、債券先物は152円44銭まで急落し、1円20銭安の152円60銭で引けた。10年債利回りもこの日、マイナス0.170%に上昇(マイナス幅を縮小)していた。

 この一連の流れからみて誰が仕掛けていたのは明白ではなかろうか。少なくとも日本の本来の投資家は20年債がマイナス金利をつけた段階で誰も手を出さなくなっていたように思う。それでも中期債や債券先物が買い進まれていたのは、マイナス金利でも中期債が購入可能な海外投資家と業者ということになろう。特に海外投資家がヘリコプターマネーを期待し、日銀の大胆な追加緩和を予想して買い仕掛けていた可能性が高い。だからこそ29日の先物や10年債、5年債、2年債の下げが厳しかったと言えよう。

 これにより債券市場の地合いが変化した。8月1日の債券先物は寄り付きこそしっかりとなったが、2日の10年国債の入札も控えていることもあり、152円12銭まで下落し、36銭安の152円24銭で引けた。そして2日には10年国債入札が低調な結果となったことも手伝い、債券先物は一時150円66銭まで急落したのである。10年債利回りはマイナス0.025%とゼロ%に接近した。現物債はこの長期債と中期債が大きく下落した。

 債券先物の152円割れは英国EU離脱をきめる国民投票のあった日以来、また151円割れは3月16日以来となった。英国のEU離脱によるリスクオフに日銀の追加緩和期待も乗っかっての上昇相場に転機が訪れ、元の水準以下にまで戻った格好となった。

 この日本国債の急落は2日の欧米の国債売りを招くなどの影響も与えることとなった。日本国債の動きが海外市場にも影響を与えるのは最近では珍しい。

 今後日銀がどう動いてくるのか。特に国債については、量も金利面でも日銀はその深掘りには躊躇しつつあるように思われる。フレームワークの変更があるとすれば、国債をこのまま買い進めることができる環境とは異なってくることも予想される。海外投資家がこのあたりをどのように判断してくるのか。今後の動きは要注目と思われる。

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by nihonkokusai | 2016-08-03 09:56 | 国債 | Comments(0)

日銀の金融政策は昔のスタイルに戻るのか

 あらためて7月29日の日銀金融政策決定会合の公表文の内容を確認してみたいが、意外に注目すべきはタイトルにあった。今回のタイトルはタイトル「金融緩和の強化について」となっていたのである。日銀が過去に政策変更か、それに準ずるものを行ったときのタイトルは以下となっている。

2012年12月 金融緩和の強化について
2013年1月 「物価安定の目標」と「期限を定めない資産買入れ方式」の導入について
2013年4月 「量的・質的金融緩和」の導入について
2014年10月「量的・質的金融緩和」の拡大
2015年12月 当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入)
2016年1月 「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入
2016年7月 金融緩和の強化について

 そして黒田総裁以前の追加緩和について例えば、2012年12月は「金融緩和の強化について」となっていた。これ以前の政策変更の際はほとんどが「金融緩和の強化について」となっていたのである。これはつまり今回の日銀の追加緩和は昔のスタイルに戻してきたということになるのではなかろうか。

 今回の声明文の最初はいきなりこのような文面で始まっている。

 「英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。」

 米国のダウ平均やS&P500は先週過去最高値を更新している。米国株の動きは国際金融市場の動向をみる上でひとつの大きな指標となると思われるが、これをどのように解釈したら良いのであろうか。27日のFOMCの会合後に発表された声明文では、労働市場が力強さを増し、経済活動が緩やかな速度で拡大していることを示していると指摘した。

 どうやら日銀とは解釈が異なるようにみえる。しかも今回の政策変更は質・量・金利の三次元でみるとETFの買入拡大という質の変更だけに止まっている(企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置もあったが)。これについては、下記のようなコメントも出ている。

 「政府は、大規模な「経済対策」を策定する方針にあるなど、財政政策・構造政策面の取り組みを進めている。日本銀行としては、今回の措置も含め「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を推進し、きわめて緩和的な金融環境を整えていくことは、こうした政府の取り組みと相乗的な効果を発揮するものと考えている。」

 つまり政府の経済政策とコラボするために、しぶしぶながらも追加緩和に踏み切ったということにも見えなくはない。それも結果として黒田総裁がかつて否定していた逐次投入型となりあってかタイトルを昔の名前に戻していた。さらに今回は最後に下記のような文も加えられていた。

 「海外経済・国際金融市場を巡る不透明感などを背景に、物価見通しに関する不確実性が高まっている。こうした状況を踏まえ、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。」

 この総括的な検証とはいかなるものなのか。総裁会見を見る限り黒田総裁のスタンスに変化はない。しかし、どのように説明しても量や金利に限界が近づいていることは確かであろう。そのためフレームワークを変えて、追加緩和が可能となる施策を考えてくるのではないかと予想される。

 むろん総括なので、なぜ物価目標が達成できなかったのか、その理由説明も行われるものとみられ、その上での政策スタイルの変更が想定される。これは例えばヘリコプターマネーの推進とかは考えられない。ヘリマネは政府が決めるものであり、日銀が政府に対してこうしろああしろと言うことはできない。

 それではそのフレームワークとはどのようなものとなるのか。それは今回のタイトルが示しているのではなかろうか。「金融緩和の強化について」というスタイルに戻すこと、それはつまりフレキシブルな対応、戦力の逐次投入型に変えてくるのではないかと思われるのである。

 買入未達を引き寄せかねない国債買入の量の増額や、評判の良くないマイナス金利の深掘りは避ける格好で、買い入れる資産の社債なり、ETFなり、REITなり、もしくは他のものを含め(米国債は為替の問題があり除く)、今後の追加緩和については、日銀の言うところの「質」の強化を図るかたちでの逐次買入増額といったスタイルに変わってくるのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-08-02 09:36 | 日銀 | Comments(0)

ヘリコプターマネーの教訓

 ヘリコプターマネーの事例としては1932年12月に高橋是清によって開始された日銀の国債引受がある。これは金輸出禁止により財政拡大が容易になるとともに、主に満州事変による軍事費拡大に対応したものといえた。シンジケート団による引受が国債価格の下落等で困難になっていたこともあり、国債発行にはいったん日銀が引き受けるという手段を講ずるほかなかった面もあった。日銀が保有した国債は銀行等に売りオペでその多くを売却したことで、高橋財政時においては、少なくともインフレそのものは抑えられていた。

 中央銀行が、いったん国債の引受などにより政府への直接の資金供与を始めてしまうと、その国の政府の財政規律を失わせ、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来において悪性のインフレを招く恐れが高まる。先進主要国が中央銀行による政府への信用供与を厳しく制限しているのは、こうした考え方に基づく。

 中央銀行による国債引受が禁じられているのは日本だけではない。米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 欧州では1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなっている。ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。

 高橋是清氏が日銀による国債引受を行った際には、そのリスクも当然把握していたと思われる。しかし、いったん甘い汁を吸ってしまった政府というよりも特に軍事費の拡大を望んでいた軍部は、この打ち出の小槌を離そうとしなかった。それが結果として、二・二六事件で高橋是清蔵相が暗殺され、その後の日本のハイパーインフレーションの原因となる。それで戦後に財政法で日銀による国債引受は禁じられた。

 政府と日銀が財政ファイナンスではないと言っていれば問題はないのかもしれない。現在、日本政府は国債が発行しづらいような状況にはない。それにも関わらずヘリコプターマネーまでもが議論されるというのは、危険性が伴うことにはなるまいか。それでなくても国債の毎月の発行額のほとんどを日銀が買うことで、日銀の存在感が強まっている中、日本政府の債務残高はすでに1000兆円を超えている。このまま日銀が大量に国債を買い続けるとなれば、いずれ財政ファイナンスに近いものとの認識が出てくる懸念もあろう。

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by nihonkokusai | 2016-08-01 10:10 | 日銀 | Comments(0)
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