牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2016年 08月 ( 29 )   > この月の画像一覧

日銀の総括的な検証のヒント

 日銀は9月20、21日の金融政策決定会合で「総括的な検証」を公表する。市場ではこの総括的な検証の内容と、検証した結果として今後追加緩和を決定するにあたってどのような手段を取りうるのかについて注目している。

 企画を中心とした執行部による「総括的な検証」は現在進められているところとみられる。まだまとまっているとは思われないものの、その内容のヒントが27日のジャクソンホールにおける黒田総裁の講演内容から垣間見られるかもしれない。

 27日の黒田総裁の講演のタイトルは「「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」による予想物価上昇率のリアンカリング」である。つまり、米国では長期的なインフレ予想が2%近傍にしっかりとアンカーされているのに対し、日本ではなお十分にアンカーされていないのはどうしてなのかといったところが主題となっている。これぞまさに「総括的な検証」の中心課題でもある。なぜ日銀の物価目標が達成できないのかという理由についての分析こそが検証のポイントとなる。

 これについての説明は下記の一文である。

 「日本では、実際のインフレ率に対する原油価格の下落の影響が予想インフレ率の弱めの動きを通じて増幅されてしまったと考えられます。」

 これはあまりに分析不足であろう。こんなことはWTIの価格変化とCPIのグラフを重ねれば一目瞭然で誰でもわかることである。それでも大胆な緩和を行えば、原油価格の呪縛からも物価が逃れられるとして行ったのが異次元緩和ではなかったのか。もちろん「総括的な検証」ではこのような解答で済ませることは止めてほしい。

 「名目の国債金利については、マイナス金利政策の導入までは、さほど大きく低下はしなかったという見方もできます。」

 たぶんマイナス金利政策の効果としてはこの点が強調されると考えられる。国債利回りのマイナス化については、市場参加者としてはいくつかの期間の壁が存在していた。ひとつは債券先物のチーペストに該当する期間7年の利回り、そして日本の長期金利のベンチマークとなっている期間10年の利回り、さらにVARショックで注目された期間20年の利回りである。ここまでのマイナス化については需給バランスというよりも市場参加者の心理面の壁が大きかったが、それを今年1月に決定したマイナス金利政策で取り外されたことは確かである。ただし、そのマイナス化は20年がワンタッチしたところで止まって反転した。

 この長期金利のマイナス化が果たしてどのような効果をもたらすのか。黒田総裁の指摘は社債発行等に限っており、経済全般にポジティブな効果があったとの分析にはなっておらず、金融機関の収益へのマイナスの影響等に関してはあまり説明がなされていない。

 ただし、注意すべきは今回のジャクソンホールのテーマが「将来のための強靱な金融政策の枠組みの設計」となっており、欧州の一部の中銀と日銀意外にはあまり評判の良くなかったマイナス金利についての効果を強調する必要があった面もあったとみられる。このためこれが一概に総括に直接関係するかどうかもわからない。しかし、検証においては当然、効果を強調してくることが予想され、そこには長期金利の低下による恩恵といったものが強調される可能性もある。

 いずれにしても「総括的な検証」の概要がはっきりするまでにはまだ時間も掛かるものとみられる。9月5日には、きさらぎ会での黒田総裁の講演も予定されている。この内容あたりからもう少し概要が見えてくるかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-31 10:01 | 日銀 | Comments(0)

日銀の総括的な検証のヒント

 日銀は9月20、21日の金融政策決定会合で「総括的な検証」を公表する。市場ではこの総括的な検証の内容と、検証した結果として今後追加緩和を決定するにあたってどのような手段を取りうるのかについて注目している。

 企画を中心とした執行部による「総括的な検証」は現在進められているところとみられる。まだまとまっているとは思われないものの、その内容のヒントが27日のジャクソンホールにおける黒田総裁の講演内容から垣間見られるかもしれない。

 27日の黒田総裁の講演のタイトルは「「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」による予想物価上昇率のリアンカリング」である。つまり、米国では長期的なインフレ予想が2%近傍にしっかりとアンカーされているのに対し、日本ではなお十分にアンカーされていないのはどうしてなのかといったところが主題となっている。これぞまさに「総括的な検証」の中心課題でもある。なぜ日銀の物価目標が達成できないのかという理由についての分析こそが検証のポイントとなる。

 これについての説明は下記の一文である。

 「日本では、実際のインフレ率に対する原油価格の下落の影響が予想インフレ率の弱めの動きを通じて増幅されてしまったと考えられます。」

 これはあまりに分析不足であろう。こんなことはWTIの価格変化とCPIのグラフを重ねれば一目瞭然で誰でもわかることである。それでも大胆な緩和を行えば、原油価格の呪縛からも物価が逃れられるとして行ったのが異次元緩和ではなかったのか。もちろん「総括的な検証」ではこのような解答で済ませることは止めてほしい。

 「名目の国債金利については、マイナス金利政策の導入までは、さほど大きく低下はしなかったという見方もできます。」

 たぶんマイナス金利政策の効果としてはこの点が強調されると考えられる。国債利回りのマイナス化については、市場参加者としてはいくつかの期間の壁が存在していた。ひとつは債券先物のチーペストに該当する期間7年の利回り、そして日本の長期金利のベンチマークとなっている期間10年の利回り、さらにVARショックで注目された期間20年の利回りである。ここまでのマイナス化については需給バランスというよりも市場参加者の心理面の壁が大きかったが、それを今年1月に決定したマイナス金利政策で取り外されたことは確かである。ただし、そのマイナス化は20年がワンタッチしたところで止まって反転した。

 この長期金利のマイナス化が果たしてどのような効果をもたらすのか。黒田総裁の指摘は社債発行等に限っており、経済全般にポジティブな効果があったとの分析にはなっておらず、金融機関の収益へのマイナスの影響等に関してはあまり説明がなされていない。

 ただし、注意すべきは今回のジャクソンホールのテーマが「将来のための強靱な金融政策の枠組みの設計」となっており、欧州の一部の中銀と日銀意外にはあまり評判の良くなかったマイナス金利についての効果を強調する必要があった面もあったとみられる。このためこれが一概に総括に直接関係するかどうかもわからない。しかし、検証においては当然、効果を強調してくることが予想され、そこには長期金利の低下による恩恵といったものが強調される可能性もある。

 いずれにしても「総括的な検証」の概要がはっきりするまでにはまだ時間も掛かるものとみられる。9月5日には、きさらぎ会での黒田総裁の講演も予定されている。この内容あたりからもう少し概要が見えてくるかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-31 10:01 | 日銀 | Comments(0)

FRBの9月利上げに向けた布石

 26日のイエレンFRB議長の講演内容が注目されていたが、市場はイエレン議長よりもむしろフィッシャー副議長のコメントに反応していたように思われる。 

 イエレン議長は「引き続き堅調な雇用市場の情勢や経済活動とインフレに関するわれわれの見通しを踏まえ、フェデラルファンド(FF)金利引き上げの論拠はここ数か月で補強されたと思う」と述べた。「われわれの判断は常に、今後入手されるデータが引き続き(FRBの)見通しをどの程度裏付けるかにかかっている」ともコメントした(WSJ)。 

 つまり9月2日に発表される8月の米雇用統計が予想以上の悪化を見せることがない限りは、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性を意識させるものとなる。ただし、イエレン議長からは利上げの具体的な時期への言及はなかった。このためこの発言で市場参加者が9月に利上げかとの認識をそれほど強めさせるものとはならなかった。 

 これに対してもう少し具体的な時期のコメントをしたのが、誰あろうフッシャー副議長であった。 

 イエレン議長の講演後、フィッシャー副議長はインタビューに答える格好で、9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予期すべきかとの質問に対し、「イエレン議長がこの日の講演で述べたことは、この2つの質問に対し「イエス」と答えることと整合性が取れている」と語ったそうである。ただ、こうしたことは経済指標次第となるとの見方も示した(ロイター)。 

 つまりフィッシャー副議長が市場に向けて、9月の利上げに向けた準備をすべきとの示唆であるようにも受け取れる。 

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は8月16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した。 

 FRBのフィッシャー副議長は8月21日、コロラド州のアスペン研究所での講演において、米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示した。これは少なくとも年内1回の利上げの可能性を示唆したものと受け止められた。ただし、ここではむしろ具体的な時期の言及は手控えていた。そのフィッシャー副議長が今度は具体的な時期について言及してきたのである。 

 過去にはFRB高官が市場の金融政策の変更についての観測を過度に強めさせないようにと、ハト派に対してタカ派的なコメントをするなど役割分担をしていた。しかし、今回は市場が追加利上げはハードルが高いと認識してしまっているため、それぞれのコメントで補完しあいながら、少しでもそのハードルを低くさせよう意図が見え隠れしているように思われる。 

 正常化路線を維持している限り、6月、7月には追加利上げが見送られるなど、多少スケジュールの狂いはあっても、次の一手はやはり年内の利上げであろう。そうなるとFRBの利上げのタイミングとしては大統領選後の12月や議長会見のない11月とかではなく、9月に置いていると予想せざるを得ない。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-30 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

ラーメンが通貨になる理由

 BBCによると米国の刑務所では今やたばこよりもラーメンが、最も兌換性の高い主要通貨になりつつあるという研究が米アリゾナ大学博士課程の研究生によって発表されたそうである。

 「ラーメンは安いしおいしいし高カロリーなので、どんどん価値が上がっている。あまりに貴重なため、他の物との交換に使われている」と発表したギブソン・ライト氏が語ったそうである。

 ラーメンは安く、日持ちする食品でもあり、他の食品や衣類、衛生用品といった物との交換に使われるそうである。刑務所内でたばこ製品が禁止されたこともひとつのきっかけとされている。

 通貨とは元々は貴重な貝殻や石であった。貨幣という漢字に貝が使われているのはその名残である。それが時を経て金などの貴金属に変わり、更に文明の発達や信用などが築かれることによって価値が書かれた紙、つまり紙幣が使われるようになった。

 しかし、閉ざされた空間のなかでは、このように物がいまでも通貨の役割を担うことがある。江戸時代は金貨、銀貨、銭の三貨制度が有名ながらも、ある意味「米」が通貨の役割を担っていた側面もあった。

 江戸時代といえば将軍綱吉の時代の勘定吟味役の荻原重秀という人物が「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以てこれに代えるといえども、まさに行うべし」と述べたとも伝えられている。貨幣の発行には信用の裏づけがあればたとえ瓦でも石でも良いとする、現在の管理通貨制度の本質を当時すでに見抜いていた人物でもあったとされる。

 日銀は異次元緩和によって大量の資金供給を行ってデフレ脱却を図ろうとした。つまり刑務所内でのラーメンの価値を引き下げようとしたことになる。ところがなかなかラーメンの価値は下がらない。ラーメンを何かに交換しようとしても、それと交換するものにあまり価値が見いだせないため、ラーメンをむしろ保管している方が安全だとの認識が強いためだと思われる。ラーメンを交換しても価値が見いだせるものがここには必要となる。つまりそのためにはラーメン、いやお金を使わせるインセンティブが必要となる。しかし、それは日銀の金融政策で何とかできるものでもないであろう。

 日銀の金融政策の目的は物価の安定を図ること、つまりはこの通貨価値の安定にある。中央銀行の金融政策とは通貨価値が不安定となっているときにその価値、信用を立て直すことが本来の目的のはずである。その通貨価値を不安定にさせることで、デフレからの脱却を図るというのも本末転倒となる。このあたりもデフレからの脱却に対して、なかなか金融政策では有効な手段を見いだせない要因になっているのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-29 09:39 | 日銀 | Comments(0)

相場は予測できるのか

 コンピューターにAIと呼ばれる人工知能技術を使うことにより、相場すらも的確に予測できる未来が来ると言うことが果たしてありうるのか。これについては絶対にありえないと言えよう。もし仮にそのようなシステムが存在し、それが公開されるとなれば、マーケットが成り立たなくなる。金融市場は売りと買いがぶつかりあって存在していることで、そこに何らかの法則性を求めることは不可能ということになる。


 天気予報と相場はあたらないみたいなことが昔、言われていたが、天気予報の方はスーパーコンピューターなどの力を借りて精度が上がり、かなりあたるようになってきた。しかし、相場に関してはいくらスーパーコンピューターの手を借りようが、それを的確に予測することはできない。相場にはその参加者のそれぞれの思惑とともにポジションの偏りもあり、たとえすべての手口を把握できるシステムがあっても、売買を判断する個々人の相場観までは予測できないためである。


 集合体といったかたちでの予測も困難である。相場は簡単な方程式で解けるものではなく、市場を取り巻く環境の変化とそれに対する市場参加者の心理の変化を見抜く必要がある。


 たとえば英国EU離脱の際の相場についてみてみると、あまり材料視されていなかったものが世論調査の動向により相場を動かす大きな要素として膨れあがってきた。この際には原油価格の動向とか中国の動向とかよりも、市場参加者は英国のEU離脱の行方に比重を置くようになった。そもそも英国のEU離脱がいわばテールリスクであったはずであり、これほど相場を形成する要因の比重が高まることは事前に予測はできていなかったはずである。


 もし相場の行方を的確に占えるシステムが出来るとすれば、可能性の問題とかではなく、英国のEU離脱は確実なため相場はそれをいずれ意識して動き、しかし現実には経済などへの影響は軽微で、市場は次第にその比重を相場の要因から低下させるであろうとの予測を事前に行う必要がある。それがいかに現実性のないものかは言うまでもない。


 過去の延長線上として未来を予測しようとしても、それは決して的確な予測とはならない。たとえばここ3年間のドル円の動きから、移動平均等を使って確実に儲けられるシステム売買を構築することはたやすい。しかし、それを使って現実に儲けることはできない。これはあくまで数字のマジックに過ぎない。


 天気予報の際にはテールリスクはあまり存在しないのではなかろうか。あくまで気圧配置や雲、海流などの動きをこれまでのデータから予測することになり、これはまさに科学の世界である。しかし、相場はある意味、心理学の世界であるとともに、突然出てくる出来事、社会現象による左右されるというテールリスクも存在する。これらを的確に予測することは困難である。


 ただし、相場にはその値動きのクセを読み、市場心理を利用した儲け方が存在するのも確かである。これは経験とともに天性の勘に近いものとなる。もしこれをAIで可能にできたとしても、それが流通するようなことはないであろう。相場には売りと買いが必要であり、市場で儲けるというのは裏側に多数の人の損失があることになる。市場参加者が皆、儲かるシステムというは存在しえない。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ *** 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。ヤフー版(サイトでお読み頂けます)まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-27 09:20 | 日銀 | Comments(0)

ジャクソンホールが注目される理由

 8月25日から27日にかけて米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは市場参加者にとり大きな注目材料となっている。


 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。


 これには著名学者などとともに、日銀の黒田総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。


 なぜこのようなシンポジウムが、ワイオミング州ジャクソンホールという小さな街で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。


 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったとされている。


 1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(当時、のちのFRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。


 さらに2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。このシンポジウムに出席していた白川日銀総裁(当時)は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定している。


 ジャクソンホールでの発言が今後の金融政策の方向性を示唆することがあるのに対し、ここでの発言があまりに注目されるためもあって、本来なら出席してしかるべき人が今後の金融政策の方向性の言質を取られないようにするためなのか出席しないケースも多くみられた。


 今年のジャクソンホールには、昨年は欠席したイエレン議長は出席し、講演も予定されている。日銀の黒田総裁も出席するようである。


 今回のイエレン議長の講演では、先日のフィッシャー副議長のように米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示すものと予想される。ニューヨーク連銀のダドリー総裁のように9月20、21日のFOMCで利上げを決定する可能性はありうると指摘するようなことはないとみられるが、9月の可能性も否定はしないとみられる(ただし質疑応答は予定されていない模様)。


 黒田総裁からはどのようなかたちでコメントが伝わるのかはわからない。総括的な検証が公表されるのが9月20、21日の金融政策決定会合においてとみられるが、いまのところ総括の内容はまったくわからない状態となっている。その進展について黒田総裁に連絡は伝わっているとしても、まだまとめている最中ではないかとみられる。日程からみて総裁・副総裁あたりには来月に入ってから叩き台が示されて、それを修正後、今度は政策委員にも示されここでも協議が進められるのではなかろうか。これもあくまで推測ではあるが、そうとなればいま黒田総裁が総括の内容を持ってジャクソンホールに向かうことは考えられない。このため追加緩和を含めて、黒田総裁から発せられるコメントはこれまでの延長線上にあるものと予想される。



[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-26 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

異次元緩和の効果の検証

日銀のよる大胆な国債買入を中心とした異次元緩和は果たしてデフレからの脱却を可能にしたのか。9月の日銀の金融政策決定会合で示される総括的な検証では、このあたりについても具体的に検証されるであろうと期待したい。

量的・質的緩和を決定してから数日経っての2013年4月12日の講演で黒田日銀総裁は次のように発言していた。

「買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長しました。これまでのような短めの金利だけでなく、イールドカーブ全体の金利低下を促すことにより、経済・物価への働きかけを強めていくためです。」

この際に異次元緩和のトランスミッション・メカニズム(波及経路)として黒田総裁は3つの経路を指摘した。国債の金利全体やプレミアムに対する働きかけること、ポートフォリオ・リバランシングの効果、さらには期待を通じた効果となる。

最初に指摘した働きかけは確かに効果があった。国債の利回りは低下し、今年1月に決定したマイナス金利政策も加わって、今年7月には20年債利回りもマイナスとなる場面があった。

しかし、問題はここから先となる。金利は素直に低下した。しかし、それによって貸し出しなどが目に見えて増加してはいない。金利低下が結果として物価上昇に働きかけることもなく、物価は低迷している。ここにはそもそも金利から物価へと繋がるはずのトランスミッション・メカニズムが働いていなかったことになるのか。そうであれば、いくら金利を深掘りしようともあまり意味がないということになる。

「これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていくことが期待されます。これは、教科書的にはポートフォリオ・リバランス効果と言われるものです。長期国債の買入れの平均残存期間を思い切って延長したのは、この効果を意識したものです。」

ポートフォリオ・リバランシングの効果については、GPIFも巻き込んで国を挙げて実施した格好となった。年金運用で株式投資の比率を高め、日銀もETFなどを積極的に購入した。国債が日銀に買い占められ、さらにその利回りがマイナスとなったことから、機関投資家は外債などに資金をシフトせざるを得なくなった。

ところが米国の株価指数が過去最高値を更新しているにもかかわらず、日経平均は戻り切れていない。ドル円もここにきて一時100円を割り込むような状況となっている。はたしてポートフォリオ・リバランシングにどのような効果があったのか。それがどのようにして物価に波及するはずであったのか。このあたりの検証結果も確認したいところである。

そして最後の期待を通じた効果というものが一番良くわからない。これは期待を図る道具がないため検証しようにもできないためである。当初、日銀は物価連動国債から算出されるブレーク・イーブン・インフレ率を使おうとしていたが、それはあまり意味のないものであることがわかったようで、最近はあまり使っていない。アンケート調査にしても、それをもし自分が答えるときに何をもって1年後の物価が予想しうるかを考えると適格な予想が出せる自信はまったくもってない。

学問上での期待は存在するかもしれないが、日銀が操作しうる期待がどこに存在しているのかかがわからない。少なくとも日銀が国債を大量に購入したら、その期待が動くという理屈がわからない。このあたりについても日銀の検証で具体的な説明がほしいところである。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-25 10:01 | 日銀 | Comments(0)

7月の国債売買はさほど盛り上がらず

 8月22日に日本証券業協会は7月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

7月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -975(-865、748、-482)
地方銀行 -5351(-2377、-2446、161)
信託銀行 1237(-559、2950、464)
農林系金融機関 -2048(-1598、76、155)
第二地銀協加盟行 -1678(-800、-520、-20)
信用金庫 -3089(-2382、381、520)
その他金融機関 1842(-388、984、1335)
生保・損保 -3402(-2875、439、382)
投資信託 682(541、218、510)
官公庁共済組合 -175(-47、-3、3)
事業法人 -264(12、-22、2)
その他法人 -73(-37、289、130)
外国人 -16693(1860、-4453、-13200)
個人 432(2、33、6)
その他 11357(10690、3833、731)
債券ディーラー -304(53、487、-763)

 都銀はそれほど金額は大きくはないが買い越しに転じた。6月に大きく売り越していた地銀は買い越しとなっていた。長期ゾーンを買い戻した格好に。海外投資家は中期ゾーンを主体に引き続き大幅買い越しとなった。買い越しは25か月連続となっている。

 国債の投資家別売買高(一覧)での合計の国債売買高でみてみると2016年5月分の国債売買高は162兆1940億円となり、統計のある2004年4月以降最低となっていた。しかし、6月は201兆7760億円とかなり回復していた。6月は英国のEU離脱によりリスク回避の動きを強め、日本国債も買い進まれていたことで売買高が膨れた面もあった可能性もある。そして7月の数字をみると183兆9885億円と6月から減少していた。

 7月に入り米10年債利回りは一時1.3%台をつけ過去最低を更新し、30年国債の利回りも過去最低を更新した。ドイツの10年債利回りもマイナス0.2%台をつけ、スイスの50年債利回りが初のマイナスとなった。この世界的な金利低下の動きもあり、日本の債券市場も連日のように国債は過去最低利回りを更新した。バーナンキ前FRB議長が日銀総裁や安倍首相と会談したことでいわゆるヘリコプターマネー政策への期待も出ていた。日銀の追加緩和期待なども出たことで債券先物は過去最高値を更新するなど買い進まれた。

 しかし、7月29日の日銀金融政策決定会合では「金融政策の強化」としてETFの買入を現行の3.3兆円から6兆円とすることなどを決定。一部期待のあったマイナス金利の深掘りや国債買入の増加などは見送られた。これをきっかけに債券相場は調整局面入りすることとなった。

 7月は債券先物が高値を更新するなどしていたが、全体の現物出来高はそれほど多くはない。相場が調整局面を迎えた8月に特に海外投資家がどのような動きを示し、売買高にどのような影響があったのか。債券の流動性が低下しつつあるのかどうかは、8月の数字を確認する必要もありそうである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-24 10:14 | 債券市場 | Comments(0)

FRBの9月利上げへの地均しか

 FRBのフィッシャー副議長は21日、コロラド州のアスペン研究所での講演において、米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示した。これは少なくとも年内1回の利上げの可能性を示唆したものと受け止められた。


 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した。フィッシャー副議長はここまで具体的なコメントはしなかったが、追加利上げに向けて引き続き前向きの姿勢であることを示した格好となった。


 26日にイエレン議長の講演を控えているにも関わらず、相次いでFRBの執行部から利上げに前向きとも取れる発言が相次いだのは何故であろうか。これは6月と7月のFOMCで利上げが見送られた上に、イングランド銀行が包括緩和策を決定するなどしたこともあり、市場ではFRBによる年内利上げ観測が急速に後退した。しかし、FRBのスタンスには大きな変化はないことをあらためて示す必要性を感じたためとの見方もできるのではなかろうか。


 本来であれば、次の政策変更を予定していたとしても市場に対しては過度な先入観を与えないようにするため、イエレン議長やフィッシャー副議長、ダドリー総裁などはバランスを保つことをこれまで重視していた。誰かが利上げに前向きな姿勢を示すと、別の人物がそれにブレーキを掛けるなどして調整を図っていた。ところが今回は市場が利上げの可能性を後退させてしまい、特に9月の利上げの可能性を指摘する向きは少数派となっている。市場との対話の上でこの予測を多少なりとも引き寄せることが、このタイミングでのダドリー総裁やフィッシャー副議長の発言の意図となっていたのではなかろうかとも推測されるのである。


 そうなると26日のジャクソンホールで予定されているイエレン議長は、バランスを取るというよりも、フィッシャー副議長と同様に英国のEU離脱というショックや一時的な米雇用統計の数字の悪化があったにも関わらず、FRBのスタンスには大きな変化はないことを示す可能性が高いと思われる。その上で9月のFOMCで利上げを決定する可能性がありうることを示唆してくるのではなかろうか。


 米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、市場参加者にとり大きな注目材料となっている。過去の歴史を見ても、このシンポジウムでは主に金融政策に関わる興味深い出来事が多かった。


 2013年5月22日にバーナンキ議長(当時)の会見でテーパリングの意向が明らかとなったことで、9月のFOMCでテーパリング開始が決定されるのではないかとの観測が強まっていたが、この年のジャクソンホールにバーナンキ議長は異例とも言える欠席をした。


 2015年には年内利上げをすでに示唆しているイエレン議長も本来であれば主催者ともいえる立場でありながら(形式上はカンザスシティ連銀主催)、ジャクソンホールは欠席していた。


 今年も仮に9月に利上げを模索するのであれば上記の伝統?に従えば、欠席してもおかしくはない。しかし、FRBの利上げのターゲットは9月の前に予定していたとすれば、今回特に欠席する必要性はなかった。


 ただし状況は変わり今回のジャクソンホールでのイエレン議長の講演があらためて注目されるようになった。ここをむしろ利用して市場との対話を図る可能性がある。その前座となった格好のダドリー総裁やフィッシャー副議長の発言内容がその内容を示唆していると思われる。やはり9月のFOMCでの利上げ決定の可能性は市場が意識しているものより、高いのではなかろうか。



[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-23 10:03 | 日銀 | Comments(0)

日銀による国債買入の歴史

昭和39年の東京オリンピックに向けたインフラ整備などの反動から昭和40年不況が起き、戦後初めてとなる国債発行が準備された。1966年1月に、戦後初めての国債が、期間7年、利率6.75%で2千億円発行された。次いで1966年当初予算から本格的に国債が導入され、3月からは大蔵省資金運用部による国債の引受も開始された。

昭和40年代に発行された国債は国債引受シンジケート団と大蔵省資金運用部によって引き受けられていた。シ団引受の一部は市中消化されたが、ほとんどはシ団メンバーの金融機関が保有した。金融機関が引き受けた国債の市場売却は事実上自粛され、国債の利率も低く抑えられていた。

ただし、1967年1月より日銀は買入債券の対象に発行後1年経過の国債を追加したことで、金融機関の保有する国債はほぼ全額このオペによって吸収されたのである。これが日銀の国債買入の始まりである。

1977年に金融機関の取得した国債の流動化がスタートした。日銀オペで吸収される国債の比率が低下し、都銀等の預金増加額に占める国債引受の割合が急増していたため、借換債の発行をしていなかった特例国債の市場売却については各金融機関の自主的な判断に委ねられた。ただし、引き受け後一年間は引き続き売却を自粛することとされた。また建設国債に対しても借換方式を見直すことを前提に流動化が開始された。

1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。10月には東京証券取引所に日本ではじめての金融先物市場が誕生した。国債は流動性が向上することとなり、債券市場は急速に拡大した。

1993年1月に大蔵省資金運用部が初めての国債買い入れを実施した、1998年にその運用部の国債買入停止観測などをきっかけに運用部ショックが発生。結局、運用部の買入は継続されたが、2001年4月から財投債の発行が開始されたことで資金運用部の国債買い入れは停止された。

日銀は2001年3月19日の金融政策決定会合において量的緩和策を決定し、国債買い入れの額をそれまでの4千億円から増額した。ただし、国債買入れについて日銀券の発行残高というキャップをつけた。

2002年1月に日銀は国債買い入れオペ対象を発行年限別の直近発行2銘柄を除くに拡大した。1967年1月に日銀は発行された国債が1年経過した国債を買い入れオペに加えることを決定したが、日銀はこの1年ルールも変更することにしたのである。この量的緩和時代も日銀は数度にわたり国債買入の額を増額させた(除く福井総裁時代)。

2010年10月の包括緩和政策では、これまでの国債買入れとは別枠で国債を買入れる方針を示した。日銀券ルールに縛られない実質的な国債買入の増額となった。ただし、買入対象は中期債に限定していた。

これらのルールを完全に覆したのが2013年4月の量的・質的緩和である。長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行うこととし、長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数を現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長した。

2014年10月の量的・質的緩和の拡大で長期国債については保有残高が年間80兆円に相当するベースで増加するよう買入れを行うこととし。買入れの平均残存期間を7~10年程度に延長したのである。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-22 09:43 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー