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量か金利かの二択だった1月の日銀決定会合

 日銀は1月29日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。この会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入が決定したわけではあるが、何故、追加緩和が必要となったのかをこの議事要旨から見てみたい。

 「多くの委員は、このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっており、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているとの認識を示した」

 要するに年初からの中国経済の減速とそれも影響しての原油安による金融市場の不安定な動き、つまりリスク回避による株安と円高の対策のために、「デフレマインドの転換が遅延」との理由付けのもと、追加緩和を検討したということになる。ちなみに米国のダウ平均は17日に昨年末の水準に戻っているが、日経平均やドル円は戻り切れていない。日銀の追加緩和はどうやら市場には期待された効果は出ていないようである。

 「多くの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、追加的な政策対応を行うことが適当であるとの見解を示した。」

 物価上昇ペースが下振れるリスクというが、日銀の異次元緩和が有効ではなかったことはすでに現実のCPIの推移でも明らかだと思うが。そもそも予防をするという以前に、物価上昇ペースそのものが現実に下振れたのは、日銀の緩和がそれでも足りなかったとの判断なのであろうか。

 「こうした議論を受けて、議長は、執行部に対し、政策対応を行う場合に採り得るオプションの提示を求めた。執行部からは、「量的・質的金融緩和」の拡大(マネタリーベースの増加幅および資産買入れの拡大)、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、という2つのオプションが示された。」

 この部分にやや意外性があった。てっきり「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入だけを提案したのかと思っていたが、ここであらためて執行部が「量的・質的金融緩和」の拡大と「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」というふたつの選択肢を提示し、総裁の腹づもりは決まっていたとしても、あらためて決定会合でもこの選択について議論させていた。ただし、結局は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入についての議論とはなった。

 賛成派は「イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えることができるとの見解を示した。」、さらに「同じ量であれば付利を引き下げた方がポートフォリオ・リバランス効果を高め、より強い効果があるとの見解を示した」、「マイナス金利については、欧州諸国の経験から、効果や実務的な問題についても適切に運営するだけの知見は集積されており、問題を小さくしながらより効果を高めることができる」との見方が示された。

 マイナス金利導入後、金利全般により強い下押し圧力が加えられたのは事実であるが、ポートフォリオ・リバランス効果については欧州同様に、あまり動きは出ていない。さらに内外からのマイナス金利への批判も強まり、問題を小さくしながらより効果を高めることもできていない。3月の決定会合ではその批判を受けて、MRFをマイナス金利適用外にするなどの調整を余儀なくされた。

 「これらの委員は、マイナス金利の導入に当たっては、当座預金の付利金利を当初はマイナス0.1%とし、今後、必要な場合、さらに引き下げることが望ましいと述べた。」

 賛成派は総裁含めて、マイナス金利のさらなる引き下げを選択肢として置いているが、ECBはこちらも内外からの批判などもあって、マイナス金利政策は打ち止めにしている。

 そして反対派からは、「複数の委員は、「量的・質的金融緩和」の補完措置の導入直後のマイナス金利の導入が、かえって資産買入れの限界と受け止められる可能性を指摘した」との意見が出た。これは総裁は認めていないがその通りであろう。

 「このうち一人の委員は、複雑な仕組みが混乱・不安を招くこと、今後、一段のマイナス金利引き下げへの期待を煽る催促相場に陥ること、金融機関や預金者の混乱・不安を高めること、2%の「物価安定の目標」への理解が乏しいもとで政策意図に関する誤解を増幅させることなどへの懸念も示した。」

 日銀のマイナス金利導入後、不安感が強まりそれがマスコミなどで報じられることになる。

 「マイナス金利の導入とマネタリーベース増額目標の維持は整合性に欠けること、マイナス金利は市場機能や金融システムへの副作用が大きいこと、海外中銀とのマイナス金利競争に陥る可能性があること、日本銀行のみが最終的な国債の買い手となり、市場から財政ファイナンスと見做される惧れがあることへの懸念を示した。」

 この発言も的を射ている。短期金融市場ばかりでなく債券市場も機能不全に陥りつつある。流動性の意味合いからも債券市場はリスクが高まりつつある。また、イングランド銀行のカーニー総裁は各国中銀のマイナス金利導入は「近隣窮乏」環境生む恐れがあるとの見解を示すなど、米国などを含めての批判も強まっている。

 そして、最も注意すべきは国債市場が財務省と業者と日銀だけの右から左への動きだけとなりつつあり、業者も今後は日本の国債市場から徐々に手を引く懸念もある。そして、財政ファイナンスとの認識が今後より強まるリスクがあり、これはいずれ日本国債の信認にも関わってくる潜在的な問題となりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-03-19 10:24 | 債券市場 | Comments(0)

FRBの利上げペースは緩やかに

 3月16日のFOMCでは、政策金利であるところのフェデラルファンド金利の誘導目標を年0.25~0.50%で据え置くことを賛成多数で決定した。投票メンバー10人のうち9人が現状維持に賛成したが、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は反対し、0.25%の利上げを提案した。

 会合後に公表された声明文では、「世界経済と金融動向は引き続きリスクをもたらす」とし、イエレン議長は記者会見で「海外経済への不安感が金融市場の動揺につながっている」との懸念を示した。

 ただし、米国景気については「失業率が4.9%に下がるなどほぼ完全雇用の状態にあり、米経済は拡大を続けるとみている」とし、物価上昇率も「エネルギーと食品を除いたベースでみれば上昇した」と述べていた。

 昨日発表された2月の米消費者物価指数はエネルギー価格の低下から前月から0.2%低下した。しかし、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比では2.3%の上昇となった。この上昇率は2012年5月以来の高い水準となったようである。

 FRBによる米国の景気や物価に対する見通しには大きな変化はなかったものの、中国などの経済動向や金融市場での年初からのリスク回避の動きなどから、FOMCの年内利上げに関する見方にはやや変化が生じた。

 FOMCメンバーが示した四半期予測によると、2016年末時点のFF金利誘導目標は中央値で0.875%となっており、年内2回程度の利上げを示唆した。昨年12月時点の予測では4回程度の利上げが示唆されていた。

 この四半期予測通りに金融政策が実施されるわけではないものの、これによって金融市場での利上げ予想に近づいたとも言える。年初のリスク回避の動きもあったが、それ以前に年4回の利上げはさすがに無理ではないかとの認識も市場では強かった。私も2006年の日銀のゼロ金利解除後の利上げペースなどからみても、半年に1回できるかどうかとみていた。

 ただし、これにより年内利上げそのものが後退したわけではなく、あくまでも市場のコンセンサスに近い緩やかな利上げが実施されるであろうとの見方から、これを市場は好感した。

 FRBはこのようにペースはさておき、正常化への歩みは止めていない。世界経済は現在、決して危機的な状況にあるわけではない。それにも変わらず危機的な状況にあったときよりもさらに踏み込んだ金融緩和政策を行っている中央銀行が存在しているのはどうしてなのだろうか。

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by nihonkokusai | 2016-03-18 09:37 | 中央銀行 | Comments(0)

なぜMRFがマイナス金利適用外となったのか

 日銀は3月15日の金融政策決定会合で、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)と呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。MRFとは短期債券を中心に運用される公社債投資信託であり、マネーマネジメントファンド(MMF)と似た投資信託である。

 MMFとMRFは、短期債主体の公社債で運用し申し込み手数料や解約手数料はかからないなどの点はおなじである。しかし、そもそもMMFが単純に資金の運用先のひとつであるのに対し、MRFは個人が証券会社の証券口座において保有株式や投資信託を売却したり買い付けしたりするための資金の一時的な滞留先として利用されており、いわば銀行の普通預金のような存在となっているという点に大きな違いがある。MRFの残高は今年2月末の残高は10兆円を超えている。

 日銀が1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど債券の利回りが大きく低下した。これによりMMFやMRFの安定した資金運用が厳しくなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。

 これに対してMRFについては証券取引の決済機能を担っている関係で、証券業界からは日銀のマイナス金利の適用除外とするよう求めてきた。これはMRFの資金を受託している信託銀行が日銀に預ける当座預金にマイナス金利が適用される懸念があったためであり、これにより元本割れの可能性が高まったためである。これはどういうことであるのか。

 これは、MRFなどの運用資金を管理・保管している信託銀行はマイナス金利がつく短期金融商品を購入するのを避け、MRFの資金の一部を自行の「銀行勘定」に貸し出すかたちで移しており、銀行勘定に現金が急速に積み上がった結果、日銀当預のうちプラス金利が適用される基礎残高部分を超えてしまう状況となっていたためである(ロイター)。つまり預金のかたちでの運用でもマイナス金利が適用され元本割れのリスクが出ていたのである。

 これらの動きは日銀のマイナス金利政策により起こるべくして起きたことではあるが、証券業界などからの要望もあり、日銀は対応策を講ずることになった。

 「ゼロ%の金利を適用するマクロ加算残高の見直しを原則として3か月毎に行う、MRFの証券取引における決済機能に鑑み、MRFを受託する金融機関のマクロ加算残高に、受託残高に相当する額(昨年の受託残高を上限とする)を加える」

 要するに昨年の残高を上限として、MRFの分はマイナス金利が適用される政策金利残高ではなく、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高に適用させるとした。昨年の受託残高を上限としたのは逃げ道を塞ぐ目的もあるかもしれないが、株式市場動向などによってはMRFの残高が増減することが予想されるため、これはやや腑に落ちない部分ではある。ただし、残高そのものの算出方法の詳細は今後定めるとしている。

 これによってMRFの資金部分が日銀の当座預金上でのマイナス金利が適用される懸念は後退した。ただし国債ばかりでなく、企業が発行するCPも決済業務を担う証券保管振替機構が取引システムの改修を進めたことでマイナス利回りの発行が可能となるなど、信託銀行などの資金の運用そのものが厳しい状況にあることに変わりなく、いずれ信託銀行が運用会社など資金の出し手に手数料を求めるような可能性も出ているようである。参考までに16日に公表された日銀の業態別当座預金残高によると、信託銀行のマイナス金利適用残高は全体の約23兆円のうちの9兆9650億円となり、業態別では最も多くなっていた。

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by nihonkokusai | 2016-03-17 09:44 | 日銀 | Comments(0)

日銀のマイナス金利政策からの転換

 3月15日の日銀金融政策決定会合では金融政策の変更は行わず現状維持となることが予想される。これは1月29日のマイナス金利付き量的・質的緩和の効果というか影響を見定める必要があるためと思われる。

 今年に入ってからの世界的な株価の調整は東京市場も直撃し、原油安によるリスク回避の動きと相まって、円高株安が進行した。これに対処するために日銀は動き、マイナス金利付き量的・質的緩和政策を決定した。ところがこれに対しては国内外からの批判的な声が強まった。

 日銀が今回、マイナス金利を持ち出したのは12月の補完措置で量の増額を可能にしたものの、ここからの日銀による国債買入はできなくはないが、日銀の国債買入未達といった状況に陥る可能性を強めさせることになる。このため選択肢を増やす手段として欧州の中央銀行で取り入れていたマイナス金利政策を導入した。しかし、マネタリーベースという目標はそのままにしたため、多層式のマイナス金利という複雑な方式を採用した。

 このマイナス金利政策については住宅ローン金利を含めた貸出金利の低下を招くという利点はありながら、預貯金金利の低下やいずれ預貯金金利にもペナルティが付くのではとの懸念、そして銀行の利ざや縮小による影響、さらには資金の運用難などのほうが意識された。マイナス金利は人々の期待に働きかけると言うよりも、懸念に働きかける結果となっている。

 さらに海外、特に米国の次期大統領候補あたりからは通貨安競争への懸念も示され、サプライズを重視する日銀の追加緩和に対してもあまり良い感触は得られていないようである。つまり国内外から日銀のマイナス金利政策に対する懸念が強まったように思われる。

 このため追加緩和としてマイナス金利をECBのように深掘りすることはさらなる批判を招く恐れもあるため、なかなか難しい状況にある。ただし、マイナス金利政策を元に戻すようなことは、物価目標達成の目処がたってないことで、日銀の信認にも関わってくることになりかねない。

 ただし、ここでまったく手を拱いていることも考えづらい。日銀が緩和スタンスを維持していることを示す上でも、いずれ追加緩和の可能性があることを示すことも予想される。その際にはマイナス金利を0.1%程度引き下げる代わりに、三次元緩和のひとつでもある国債買入の若干の増額にETFやREITなどの買入増額を合わせたような以前の形式での追加緩和の検討が予想されるが、もしかするとまたひと捻りしてくるのかもしれない。その効果はさておいて。 。

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by nihonkokusai | 2016-03-16 09:36 | 日銀 | Comments(0)

ECBのマイナス金利政策からの転換

 3月10日のECB政策理事会で決定された包括的な金融緩和策は、2014年6月の理事会で決定した包括的な金融緩和策と類似したものではあったが、今後はマイナス金利政策とは距離を置くなどやや趣が異なっていた。

 政策金利は下限金利である中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%とし、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利も0.00%と従来の0.05%から引き下げ、政策金利の上限金利であるところの限界貸出金利も0.25%に引き下げた。

 これはマイナス金利政策の強化に見えたものの、ドラギ議長は理事会後の会見で、「今の状況ならこれ以上利下げする必要が無い」と発言した。これが当日の株式市場や外為市場では嫌気されたわけではあるが、この発言にはECBの緩和路線の変更が意味されていたとみられる。

 今回のECBの追加緩和の際には日銀の多段階のマイナス金利政策と同様の政策が検討されるのではとの観測があり、実際にそれは検討されたようである。ところが「ECBが望む限りマイナス金利政策を進めることができるとの(誤った)シグナルを市場に送ることを避けるために」採用を見送ったとドラギ総裁は述べている。

 このドラギ総裁の発言は、政策金利そのものをゼロにまでしたことで、これ以上の政策金利の引き下げは難しいことに加え、マイナス金利による欧州の銀行への収益悪化を意識したものであろう。当然ながら日本も同様にマイナス金利政策による金融機関への収益悪化が問題視されている。ただし、そうであるのならば何故、今回のECBの包括緩和にマイナス金利の深掘りも加えられていたのか。市場の緩和期待に応えるためラインナップを増やした面もあろうが、これでひとつの金利政策の打ち止め感も出したかったのかもしれない。

 今後のECBの追加緩和については、「金利政策からその他の非伝統的な金融政策に軸足を移す」とドラギ総裁は明言した。これはECBのマイナス金利政策からの転換を意味するものとなろうが、マネタリーベースの増加を目的とした日銀タイプの量的緩和政策とは一線を画するものとなろう。

 それではECBは非伝統的な金融政策としてはどのような手段を意識しているのであろうか。今回のECBの政策には資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロへの拡大が含まれていた。資産購入の対象には銀行以外のユーロ圏企業が発行した投資適格級の社債も加えられた。

 今後はこのような資産買入規模を膨らませる政策が意識されているとみられる。ただし、資産買い入れの期限は2017年3月までと変更してはいない。ECBはこの時間軸政策は今回は温存している。

 さらに新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)の6月からの開始も加えられた。これはある意味、ユーロ圏の銀行にとっては恩恵にもなることで、マイナス金利で疲労した銀行への救済策ともなる。

 ECBはマイナス金利政策からの転換を図っているが、いまのところその具体策は明確ではない。しかし、今回の包括緩和の内容を見る限り、資産買入の量と質、そして期限などの変更、さらには長期リファイナンスオペ(TLTRO)の活用などが想定されているのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-03-15 09:02 | 中央銀行 | Comments(0)

国債の急落リスク

 3月8日に10年債利回りはマイナス0.1%に低下した。この日の30年国債入札が好調な結果となったことをきっかけに、超長期国債が買い進まれ、それに影響された格好で10年債利回りのマイナス幅を深めた格好となった。

 8日に入札された30年国債の利率は0.8%と前回の1.4%から大きく引き下げられ、過去最低利率を記録した。超長期債の利回りは1.0%がひとつの節目とみられていたが、1月29日の日銀のマイナス金利付き量的・質的緩和政策の導入により、そのような心理的な節目も取り払われた格好である。投資家は保有している国債を手放すことができず、売り物が出るとそれが買われる状況となり、利回り水準とは関係なく、さながら昔のオイルショック時代のトイレットペーパーのように店頭に並ぶと買われてなくなるような状況に陥っていた。

 日銀によるマイナス金利政策は、銀行の収益悪化や運用難といった副作用が指摘されているが、それによる効果は物価へではなく、期待した円安株高をもたらすわけでもなく、日本国債が異常なまでに買われる事態となっている。

 もちろん長期金利がマイナス0.1%にまで低下するとなれば、住宅ローン金利なども引き下げられようが、ローン金利までもがマイナスになることは考えづらく、こちらは下限も存在する。このため長期金利低下による影響は国債には現れるものの、それを通じた実体経済への波及効果も限られよう。

 ポートフォリオリバランス効果にしても、異常な金利が形成されるなか、これが株高等にも影響を与えていないため、むしろリスク回避の動きを強めさせることも想定される。相場に公式はないものの、株価と国債価格は通常逆相関との認識が強いと思う。つまり国債が買われれば買われるほど、それは日本の実体経済の悪さやデフレを意識させることにもなりかねず、日銀の意図した効果を生まない懸念も存在する。

 そして、ここまで国債が買われてしまうと、その反動を危惧する見方も当然出てこよう。上がったものはいずれ下がる。地価も株価もずっと右肩上がりが続くとの認識が広まったなかでバブルが崩壊したように、オオカミ少年と揶揄された国債価格の急落リスクは、日銀により仕組まれた国債バブルの崩壊というかたちで起きる懸念は当然存在しよう。問題はどのようなタイミングでいつやってくるかであり、まだこの先10年も起きない可能性はあるものの、いまの債券市場の異常さを見る限り、オオカミたちはそっと近づいてきている可能性もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-03-14 09:32 | 国債 | Comments(0)

ECBの追加緩和に対する市場の反応

 3月10日のECB政策理事会では、包括的な追加緩和を決定した。前回1月の理事会後の会見でドラギ総裁は3月の理事会で追加緩和を検討することを示唆していたため、サプライズではない。しかし、内容はややサプライズな側面があった。

 政策金利の下限金利である中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%としたのは予想されていた。ところが、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利も0.00%と従来の0.05%から引き下げたのである。さらに政策金利の上限金利であるところの限界貸出金利も0.25%(従来0.3%)に引き下げた。

 特に主要政策金利を実質ゼロというより本当のゼロ%に引き下げたのがサプライズとなった。ドラギ総裁は今回の理事会後の会見で「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と発言し、これが市場のネガティブな反応の要因とされたが、主要政策金利のマイナス化はスウェーデンなどの例はあるものの、そこまで踏み込むことは考えづらく、こと利下げに関しては打ち止め感を出したかったのかもしれない。

 そして利下げだけでなく資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロに拡大した。資産買い入れの期限は2017年3月まで。資産購入の対象には銀行以外のユーロ圏企業が発行した投資適格級の社債を加える。新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)も6月に開始することも決定した。TLTROの金利は「中銀預金金利と同じくらい低くなり得る」とした。つまりマイナス金利での資金供給の可能性を示唆した。TLTROとは資金供給の目的を限定して、銀行に期間4年の資金を貸し出す長期資金供給オペレーションのことである。

 今回のECBの追加緩和では日銀のような多段階式のマイナス金利政策にするのではないかとも予想されたが、そうではなく政策金利のゼロ金利化に資産買入増額等を組み合わせた包括緩和政策とした。これは市場にとって良い意味でのサプライズになるとドラギ総裁は期待したのではなかろうか。

 しかしこの日のECBの包括緩和政策を好感した動き、つまりECBの期待したユーロ安、欧州市場の株高はわずか90分程度しか続かなかった。相場の反転はドラギ総裁が会見で追加緩和の可能性を否定する発言がきっかけであったが、そもそも市場が中央銀行の追加緩和の効果に懐疑的な見方も出ていたためではなかろうか。

 市場の地合の変化は昨年12月のECBの追加緩和や日銀の補完措置の決定後の市場の動向からも見て取れる。さらに1月末の日銀のマイナス金利付き量的・質的緩和の決定に際しても円安株高は一時的となり、すぐに秀吉ならぬ大返しが待っていた。

 ECBもこのような一連の動きは承知の上で、物価下落を食い止めようとの目的で予定していた追加緩和を行ったのかもしれない。しかし、通貨安などの市場を経由した波及効果についてはあまり期待できないどころか、むしろ逆効果となりうることも意識する必要があろう。

 さらに今回気をつけなければいけなかったのは国債の動きである。これまでの中央銀行の追加緩和では他市場はさておき比較的債券市場は好感していた。むしろ日銀のマイナス金利には日本の債券市場は過剰反応を示していたぐらいであった。ところが10日のECBの追加緩和を受けてドイツの国債は下落し、英国や米国の国債も下落した。ただし、翌日の11日にはあらためてECBの追加緩和策の効果が意識されてか、イタリアやスペインの国債主体にドイツ国債も含めて買い戻されていた。

 10日のECBの追加緩和による欧米市場のネガティブな動きは、8日から9日にかけて地合が悪化しつつあった日本の債券市場も直撃し、11日の日本の債券市場は先物主導で大きく下落し、8日にマイナス0.100%にまで低下していた10年債利回りは一時プラスに浮上した。大きく買われた相場の一時的な反動との見方もできるかもしれないが、最後の砦ともなっている岩盤ともいえた国債市場に多少なり動揺が走るとなれば新たなリスクが生じる可能性もある。このため今後の債券の動きにも十分な注意が必要になろう。

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by nihonkokusai | 2016-03-12 13:54 | 中央銀行 | Comments(0)

日本の国債市場への危機感

 8日から9日にかけての日本の債券市場での超長期債を中心とする乱高下は、日本の債券市場が機能不全に陥りつつあることを示している。日銀は年間に入札等で発行される国債のほとんどを買いオペで吸い上げている。この場合の新規で発行される国債には借換債も含まれることで、来年度でみると短期債を除く新規発行額の122兆円のうち日銀は120兆円(増額分80兆円プラス償還乗り換え分40兆円)を買い入れる計画となっている。

 日本の国債は国内投資家が95%を保有している。そのうち日銀が268兆2810億円で29.9%、 銀行など民間預金取扱機関が245兆7416億円で27.4% 民間の保険・年金が232兆6832億円で25.9%、公的年金が52兆3086億円で5.8%、海外が45兆7410億円で5.1%などとなっている(2015年9月末現在)。

 つまり新規国債は日銀が独占的に買い占めてしまうことになり、国内の金融機関保有の国債の償還を乗り換えようとしても買い入れる国債は計算上はない。さらに日銀はマイナス金利政策まで導入してしまった結果、一時残存12年あたりまでの国債までがマイナス金利となった上に、超長期債の利回りも急低下してしまったことで、運用利回りそのものが求められない状態となっている。

 9日に年金などのパッシブ運用のベンチマークとなっているBPIと呼ばれる指数がマイナス0.01%と初めてマイナスとなってしまった。ベンチマークに合わせて運用すると損失が発生する計算になる。このため、運用先として外債等の割合が大きくなるのかもしれないが、これはあらたに為替リスクなどを負うことにもなる。

 短期金融市場もマイナス金利政策によりかなりの動揺を受けているが、システム対応等は徐々に進むとしても、そもそもマイナス金利という状況下では市場参加者は極めて限られることになり、市場の流動性が後退してこよう。

 債券市場も同様であり、本来の中心プレーヤーであったはずのメガバンクや生保、年金などはマイナス利回りの国債は購入しづらい上、新発債中心に日銀に国債が吸い上げられたことで市場の流動性が枯渇していることで手が出せない状況にある。

 海外投資家に関しては、日本の機関投資家の外債需要にともなうドル需要を受けて調達した円の運用でマイナス金利での日本国債も購入できる外銀などはあっても、海外の年金運用などは日本国債の運用利回りの低下で保有額を減額させているところもある。

 そして今回の乱高下によって最も動揺を見せたのがプライマリーディーラーなどの業者であったかもしれない。3月は償還月ということで新たに入札された10年債や30年債の発行日がいつもよりも先になる。つまり国債を入札で仕入れて日銀の買入に向けて売却するという簡単なお仕事のはずが、保有期間が長くなることでその間の価格変動リスクに晒される。そのリスク回避の動きも今回の国債の相場の乱高下のひとつの要因となった可能性がある。

 このように今回の日本国債の乱高下は償還月といった特殊な要因に影響された可能性はあるものの、日本の債券市場の流動性がかなり後退し、きっかけ次第では価格変動リスクに晒される懸念も示された。

 すでに日本の債券市場を形成するプレーヤーは、発行する財務省と大量に買い入れる日銀、その間を繋ぐ業者だけという構図となっている。この業者がもし市場リスクを意識して売買を手控えるようなことになると債券市場そのものがさらに機能しなくなる懸念も存在しよう。日銀の追加緩和期待も一部にあるようだが、日銀がもしまた国債の買い入れを増額するなり、マイナス金利を深めるような追加緩和を実施するとなれば、債券市場がさらに危機的状況に陥る懸念が存在することを改めて認識すべきであろう。

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by nihonkokusai | 2016-03-11 09:54 | 債券市場 | Comments(0)

日本国債の利回りが乱高下した理由

 一昨日から昨日にかけての日本の債券市場の動きは、珍しく海外市場にも影響を与えたようである。

 8日に日本では30年国債の入札が実施されたが、これが好調な結果となったことを受け、これをきっかけに超長期債が急速に買い進まれた。30年国債入札に絡んでの業者のショートカバーが利回り低下を加速させたとの見方もあった。

 20年国債の利回りは前日比0.115%低下の0.485%、30年国債は0.200%低下の0.485%に低下し、それぞれ過去最低利回りを更新した。1日に0.2%も国債の利回りが動くのは極めてまれである。この超長期債への買いに刺激されて10年債利回りも低下し、ひとつの目処とされたマイナス0.100%まで低下した。マイナス0.1%は日銀のマイナス金利政策により、超過準備の一部に課せられるマイナス金利と同水準となる。

 すでに10年債の利回りはマイナスとなっているが、既発の20年債の気配値を確認すると残存12年を超える期間の国債の利回りまでマイナスとなっていた。マイナス利回りとなっている国債の期間はじりじりと延びることで、早めにプラス金利の国債を買っておこうと生保などの国内投資家の買いが超長期債に入った可能性もある。

 また3月が償還月となっていることも影響していた可能性がある。財務省のサイトにある国債の償還予定額によると3月は全体で24兆円程度の国債が償還される予定となっている(このうち中期債13兆円程度、長期債8兆円程度、20年債1兆円弱)。償還を迎えた国債を乗り換えようとしてもマイナス金利の国債は買いづらい。このため保有期間リスクは負ってもプラス金利である残存期間の長い国債が買われたものとみられる。

 投資家などが保有している長期国債は、売却するといったん大きな差益は出るものの、プラスの利回りで乗り換えられる国債は限られる。このため投資家は国債の売却をためらうことになり、そもそも売り物があまり出てこない。それでも少しは売りが出てくることもあり、売り物が出てくるとそれがレートに関係なく買い進まれて、0.2%も低下するような事態となった。まるで、オイルショックの際のトイレットペーパーのような状況となっていた。

 ところがである。9日の債券市場では今度は国債の利回りが急上昇した。きっかけは日銀の国債買入結果を受けてのものではあったが、仕掛け的な売り(ヘッジ売り?)が債券先物に入ったとみられる。後場の債券先物の寄り付き直後に入り先物が急落した結果、DCB(即時約定可能値幅制度)の発動で一時中断された。この動きも嫌気されてか、ややタイムラグがあって、今度は買い板がなくなってしまったところに、超長期債のポジションを抱えた業者の売りなどが入ったとみられ、超長期債主体に利回りは大きく上昇した。

 10年債利回りは8日のマイナス0.100%から、9日はマイナス0.015%に後退、8日に0.305%まで買われた20年債も0.485%に後退、そして8日に0.200%も利回りが低下した30年債は9日は今度は0.200%利回りが上昇した。つまり30年債利回りはあっさりと元に戻ってしまった格好である。板が薄いところに値段だけが大きく飛ぶような状況となっていた。

 日銀が大規模な国債買入を進め、マイナス金利政策まで導入した結果、日銀が期待した円安株高を招くことはなくても、異常な金利低下を招いている。しかし、国債などの債券に本来存在する価格変動リスクや流動性リスク、信用リスクなどが消滅しているわけではない。それを日銀が見えなくさせているに過ぎない。そのリスクを永遠に封じ込めることもできないし、8日から9日にかけての日本の債券相場の急変はそのリスクの存在をあらためて見せつけることとなった。これは余震にすぎないりかもしれない。いまが日銀が人為的に発生させた国債バブルの絶頂期にあることも認識しておく必要は当然あろう。

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by nihonkokusai | 2016-03-10 10:03 | 国債 | Comments(0)

日銀の追加緩和が相場を乱した可能性

 3月7日の原油先物市場では、WTIが先週末比1.98ドル高の1バレル37.90ドルで引けた。引け値として昨年末の水準を回復。ザラ場中に38.11ドルまで上げ、期近物として1月4日以来の高値を付ける場面があった。

 また、同日の米国株式市場ではS&P500種株価指数が1.77ポイント高の2001.76と節目の2000ポイント台を回復し、1月5日以来の高値で引けた。ダウ平均も17000ドル台と1月初めの水準に戻している。

 WTIとダウ平均の日足チャートを比べてみるとWTIは下落トレンドが継続するなか年初から下げピッチを早める格好となり、この原油安も影響しダウ平均は昨年末あたりから大きく下落した。ところが原油先物、ダウ平均ともに1月20日近辺と2月10日近辺でいわゆるダブルボトムを形成し、その後大きく切り返して両者ともに年初の水準まで回復した。

 これに対して欧州の代表的な株価指数であるストックス600指数は、やはり昨年末から下落傾向が顕著となり、ダブルボトムという形とはならなかったが、2月10日近辺で底打ちし、1月10日あたりの水準まで回復している。

 年初からの世界的なリスク回避の要因としては原油価格の下落が継続していたことに加え、中国経済への懸念が強まったことも挙げられる。その中国の株式市場の動向をみると、たとえば上海総合指数は年初から急速に下落ピッチを早め、1月27日と2月29日にダブルボトムを形成した格好ながら戻りきれておらず、3000割れの水準となっている。

 年初からのリスク回避の動きには東京市場も当然巻き込まれ、そのために日銀は1月29日にマイナス金利付き量的・質的緩和策の導入を決定した。黒田日銀総裁の言うところの「株高、円安の方向に力を持っている」はずの政策を打ち出した。その結果はどうなっていたのであろうか。

 昨年末には19000円近辺にあった日経平均株価は1月21日に16000円近辺まで低下していったん値を戻し、1月29日の日銀の追加緩和で18000円近くまで戻した。しかし、その後再び下落し、2月12日に15000円割れとなった。そこをボトムにやはり買い戻されるが、17000円近辺に止まっている。

 同様にリスク回避により売られたドル円についても見てみると、年初に120円を超えていたのが、1月20日に116円割れでいったんボトムを形成し、1月29日の異次元緩和で121円台を回復した、そのあと2月11日に111円割れとなりここでいったんボトムはつけたが、日経平均同様に戻りきれておらず、112円台にいる。

 原油価格が完全に底を打ったのかどうかはわからないが、年初からのリスク回避の動きはこれらの動きからみて1月20日頃と2月10日あたりでダブルボトムを形成し、地合はかなり改善してきた。原油が下げ止まったことで過度に悲観的な見方が後退するとともに、米国経済が底堅い状況となっていることも影響していよう。

 しかし、中国経済についてはいまだ楽観視できず中国株の上値は重いが、なぜ東京株式市場やドル円の戻りが鈍いのであろか。8日に発表された10~12月期GDP改定値は速報値から上方修正されたとはいえ年率1.1%のマイナスである。日本の景気悪化が株価を抑えているとの見方もできなくはない。

 もし日銀が1月に追加緩和をしなければもっと株は売られ、円高となっていたはずだと解釈するのは勝手だが、日銀が何もしなければもう少し素直に日経平均は戻り、円安となっていた可能性はあるまいか。もちろん相場には「もし」はない。しかし、日銀はことマーケットに関しては円安株高をもたらすどころか、実は余計なことをしてしまったという可能性はないとは言えないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-03-09 09:39 | 日銀 | Comments(0)
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