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年間の国債売買高が減少

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 1月20日に日本証券業協会(JSDA)は12月の公社債投資家別売買高を公表した。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。それが下記となる。

12月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 1485(-70、1822、-352)
地方銀行 3117(-403、3993、745)
信託銀行 -1234(-979、-600、869)
農林系金融機関 -2422(-2273、526、-139)
第二地銀協加盟行 -545(-199、-420、57)
信用金庫 -904(-56、295、85)
その他金融機関 -1429(-584、152、-643)
生保・損保 -2707(-2316、912、-633)
投資信託 -1890(-97、268、-995)
官公庁共済組合 -47(-129、111、0)
事業法人 -800(39、-236、-287)
その他法人 -717(73、-361、-59)
外国人 -12155(1401、-3625、-9895)
個人 476(-7、58、9)
その他 16598(4319、3216、12242)
債券ディーラー -206(203、-1194、815)

 都銀は4か月連続での売り越しとなったが、1485億円の売り越しと11月の8377億円の売り越しからは売越額は大きく減少した。地銀が長期債主体に3117億円の売り越し、信託銀行や農林系金融機関などは超長期債主体の買い越しとなった。そして12月も「その他」が1兆6598億円の売り越しとなっていた。

 これらに対して外国人は、12月も1兆2155億円の買い越しとなった。11月は1兆8004億円の買い越しとなっていた。外国人は18か月連続の買い越しとなる。外国人は超長期債を1401億円売り越していたが、長期債は3625億円の買い越し、そして中期債は9895億円の買い越しとなった。

 国債投資家別売買高(一覧)をもとに国債の合計(超長期と長期と中期のみ)の売りと買いを合算してみたところ、2015年11月の国債売買高は2004年4月以降の統計で2005年12月以来の低い数字となっていた。ただし、12月は11月からやや回復していた。

 今回は1月から12月までの年間の国債売買高の合計(超長期債・長期債・中期債)を手元で算出したところ下記のような結果となった。日銀の量的・質的緩和を導入した2013年以降は売買高は少しずつ落ち込み、2015年はこの10年のなかで最低となった。大きく落ち込んでいるわけではないとは言え、国債の残存額そのものは年々膨らんでいることを考慮すると確実に流動性は低下しつつあると言えるのではなかろうか。

 1月29日の日銀のマイナス金利の導入により、国債利回りは大きく低下し残存7年半あたりまでの国債利回りがマイナスとなった。国内機関投資家はマイナス金利での運用は難しいことで、今後さらに債券市場の流動性が後退する懸念が強まるものと思われる。

年国債売買高(億円)
200518949931
200621009723
200721834443
200821327591
200919345330
201022105342
201123339194
201223806957
201318377996
201420851281
201517619226

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by nihonkokusai | 2016-01-31 11:18 | 債券市場 | Comments(0)

原油安で何故、株が売られたのか

 1月28日の日経新聞には「原油安、業績下支え」と題する記事が掲載されていた。原油安の恩恵が2015年4~12月期の企業業績にも表れ始めているそうである。また、レギュラーガソリンの店頭価格が1リットル100円を割り込む地域が広がっているとの記事もあった。これは個人にも当然ながら恩恵である。都心ではあまりクルマを利用する機会はないかもしれないが、地方では重要な足となっている。

 原油安は石油関連業者の業績にはマイナスの影響が出ても、日本など原油の輸入に依存している国にとり、企業にとっても個人にとっても恩恵を被ることの方が多いはずである。ところがここにきての市場の動きを見てみると、原油価格の下落が日本を含めて株式市場の下落要因とされている。これはいったい何故なのであろうか。

 これは原油価格下落のそもそもの要因が影響している。昨年12月の人民元の切り下げにみられるように中国の景気が悪化しており、チャイナバブルの崩壊が鮮明になりつつある。昨年7月あたりからの原油先物の下落については当初、米国のシェールガスなどの影響による供給面が強調されていたが、実は新興国経済の悪化などによる需要面での後退による影響も重なっていた。

 少し遡ってみてみると、2002年あたりからの原油価格の大幅な上昇の背景に、中国などBRICsと呼ばれた新興国の経済成長があった。WTIは2002年当初に20ドル前後であったが、2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した。ここまで上昇したのは新興国バブルを意識した動きが入っていた。

 それがリーマン・ショックなどにより、2009年12月19日に32.40ドルまで下落した。ここから再び原油先物は上昇基調となり、2011年には100ドル台を回復した。この原油先物の再上昇の背景にあったのが、リーマン・ショックや欧州の信用不安と称された世界的な金融経済危機に対する日米欧の中央銀行な過剰ともいえる金融緩和にあったとみられる。世界の資金は引き続き新興国などにも流れ、中国などの景気を下支えした。

 しかし、2014年7月あたりから原油価格が下落基調となった。これは原油の供給面による影響とともに、中国の成長などが減速しつつあったことが要因となった。さらにFRBがテーパリングを2014年10月に終了し利上げ、つまりは正常化の動きを模索したことで、資金の流れに変調が生じたことも要因となったのではなかろうか。

 中国など新興国ブームに加え、日米欧の中央銀行の金融緩和による過剰流動性相場により、新興国の通貨や株が買われるなどリスク資産に資金がシフトしていた。そのなかには2012年のアベノミクスの登場による日本株買いと円売りをセットにした動きも生じていた。

 原油価格の下落はこのような資金の流れに変化が生じたことを示している。さらに原油安は産油国経済も直撃することになる。ロシアやブラジルなどの新興国だけでなく、サウジアラビアなど中東の国々の経済や財政にも影響を与えることになり、これはオイルマネーの動きも変化させた可能性もある。

 原油安は中国やサウジアラビアなどの経済への懸念を強めさせることになり、さらに米利上げにより過剰流動性相場の終焉も意識されたことで、リスク回避の動きを強めさせ、それらが欧米の株式市場の売り要因となっていった。

 原油安とセットとなった欧米の株式市場の下落は東京市場を直撃し、アベノミクスをきっかけとした海外投資家などによる円売り株買いのポジションなどもリスク回避の動きで巻き戻されたのではなかろうか。その結果として東京株式市場は調整を余儀なくされたとの見方もできる。

 原油価格の下落はまもなく落ち着くものと予想しているが、新興国経済の悪化による影響は今後も残るとみられ。市場の動揺は当面続くものとみられる。これに対してECBや日銀が金融政策で対応できる部分はあまり大きくはないし手段も限られる。このため追加緩和に対する過剰な期待も禁物ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-01-29 09:37 | 国際情勢 | Comments(0)

中央銀行の物価目標の意味

 ECBのドラギ総裁は21日の理事会後の会見において、「インフレ率がしばらくの間低水準にあり、それが原油主導だとしても長引く低インフレがインフレ期待を動揺させ持続する恐れがある」と指摘した(ブルームバーグ)。

 さらに「エネルギーと食品を除くコアインフレも低いという事実によってそのリスクは高まっている。コアインフレ率はわれわれの目標ではないが、総合インフレ率を中期的に導く傾向がある」と付け加えたそうである(ブルームバーグ)。

 ECBはユーロ圏の消費者物価調和指数(HICP)で年%を下回る上昇率を物価の目標値としている。

 FRBも2012年1月のFOMCで、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 日銀は2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより実質的なインフレ目標策を導入したが、それを2013年1月に2%の物価目標にバージョンアップした。

 英国では財務省が「物価の安定」の内容を決定しており、2004年1月以降は消費者物価指数(CPI)で2%とされている。

 この2%に何らかの意味があるのか。日銀からはグローバルスタンダードであるためとの説明がなされていた。

 FRBの政策目標はデュアル・マンデートとも呼ばれるように物価安定と雇用最大化を促す目標となっている。2015年12月にFRBが利上げを決定したのは、物価目標(ゴール)は達成していなかったものの、雇用が回復していたことが理由となっている。

 たしかに物価という面からはここにきての原油安もあり、日米欧の中央銀行は目標に届かないどころか、非常に低い水準にいる。しかし、雇用という面からみると米国だけではなく欧州も日本も回復基調にある。

 それが賃金上昇に結びついていないことで、日銀総裁が新年の連合の会合で「物価の上昇に見合った賃金の上昇がなければ経済は持続しない」と述べるなどしていた。日銀は目標を物価ではなく賃金にするべきという異論まで出ている。

 日銀がどのように金融政策で賃金に働きかけるのかはさておき、金融政策でそもそも物価に働きかけられるのかというのは大きな課題である。その壮大な実験を行ったのがアベノミクスの一役を担った黒田日銀であり、二度にわたる異次元緩和であった。しかし、その結果は2年で2%どころかゼロ%近辺となった。

 そもそも日銀はマネタリーベースを膨らませることでインフレ予想に働きかけようとしたが、ECBはマイナス金利政策をとってむしろマネタリーベースを抑制するかのような政策をとるなど、目標は同じでも手段が真逆になっている。

 バーナンキ元FRB議長は金融政策の98%は市場との対話だった、行動は2%に過ぎなかったと述懐しているそうである。要するに金融政策は対話を通じて金融市場そのもの、つまり長期金利や株価、通貨価値に働きかけることで効果を出すということであろうか。そうであれば目標達成のためにはいったん市場を経由させる必要があるということになる。

 その市場が果たして中央銀行の金融政策の在り方をどう認識しているのか。その意味では12月のECBの追加緩和と日銀の補完措置に対する市場の反応は興味深い。市場も中央銀行の物価目標達成に向けたそれぞれのロジックに対して疑問を抱きつつあるように思われる。その意味ではいち早く正常化に向けて動きを示したFRBは正解だったのではなかろうか。今後もしECBや日銀が物価目標を意識して追加緩和を模索するのであれば、この市場との対話が大きな焦点になるように思われる。

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by nihonkokusai | 2016-01-28 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の追加緩和の可能性を探る

 年初からのリスク回避の動きは原油先物や日米の株価の反発でいったん底打ちしたかに見えるが、まだまだ予断の許せない状況にある。

 今回のリスク回避の動きの背景には、中国など新興国の景気減速と原油価格の下落などにあるが、米国の金融政策の正常化などによる資金の流れの変化等も大きく影響している。中国を代表とする新興国バブルの崩壊、日米欧の中央銀行の大胆な金融緩和策による過剰流動性相場の巻き返し、さらには原油安によるオイルマネーの流れの変化等が、今回の相場変調の要因になっていると思われる。

 東京株式市場も年初から急落し、それとともに円高が進行したこと、さらには原油安による物価への影響等を受けて、日銀に対して追加緩和期待が強まっている。一足先にECBのドラギ総裁は次回会合での金融政策の見直しの可能性に言及、つまり追加緩和の検討を示唆した。

 それでは1月28、29日の今年はじめてとなる日銀の金融政策決定会合で日銀は動きを見せるのであろうか。

 黒田総裁となってからの日銀の金融政策はサプライズも意識していることから非常に読みづらい。ドラギ総裁のような事前通告を行うよりも、機密保持のため少人数で金融政策の方向性を決めているといった観測もある。

 いまの日銀がフレキシブルな金融政策を行っていたのであれば、1月の会合での追加緩和の可能性はある。しかし、12月の決定会合での調整は、あくまで補完措置としたように、バズーカ以外は金融政策ではなく、戦力の小出しのような政策はとらないことをあらためて示した。

 2013年4月の異次元緩和はその規模もさりながら、スピード感が市場予想を超えていた。外部からきた黒田新総裁が挨拶回りだけでもたいへんなのに短期間で大規模な緩和策はまとめられるのか、ということが私も疑問であったが、このあたり凄腕の参謀というか軍師の存在もあったように思われる。

 2014年10月の異次元緩和パート2は、タイミングが重視されていたように思われる。FRBのテーパリング終了、原油価格の下落、消費増税の行方、株安円高の進行、GPIFの動き等々からみて、なかなか効果的なタイミングを狙ったように思われる。

 それでは1月の決定会合はどうであるのか。円高株安の進行、原油安による物価目標達成時期の先送りが予想されることなどから、追加緩和を検討してもおかしくはない。しかし、ここで残り少ないカードを切るべきかどうとなると、タイミングとしてはあまり条件は揃っていないように思う。金融政策は円安株高のために行うのではないというのが表向きの説明となる上に、原油価格の下落に対しては日銀の金融政策は有効手段ではない。むろん原油の大量の買入を日銀が行うというのであれば話は違うが。

 今年は参院選も控えている。安倍政権も株価は重視はしているものの、外部要因による株の下落であるのであれば安倍政権の経済運営に責任があるわけではないという理由付けも可能か。

 さらに、ここで株価に対し追加緩和で下支えしようとしても、素直にマーケットが反応するという保証もない。反応したとしても一時的、むしろネガティブに反応する懸念すらある。

 日銀としては追加緩和の可能性はあり、その手段は有していることをアピールした上で、残り少ないカードの有効利用を図るのではないかと予想する。そうであれば1月28、29日の追加緩和は見送りという結論となる。さらに今年から決定会合が年8回となったことで、次回会合(3月14、15日)までのスペースが空くことも、むしろ日銀には時間が稼げるため好都合ではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-01-27 10:02 | 日銀 | Comments(0)

世界的な金融市場の混乱の原因と今後

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       日経新聞と米エネルギー省のデータをもとに祝日等を調整して作成

 2016年に入ってから世界の金融市場は急速にリスク回避の動きを強めた。東京株式市場で日経平均は昨年末の19000円台から1月21日に一時16000円近くまで下落した。1月4日の大発会から25日までの15営業日のうち日経平均が前日比プラスとなったのは13日、19日、22日25日の4日だけとなった。

 この間に円高も進んでおり、ドル円は年初の120円台から116円近辺に下落した。外為市場では人民元とともに資源国を中心に新興国の通貨が下落した。新興国通貨のチャートをみると2015年7月あたりを目先のピークにしてダウントレンドを形成していたものが多い。これはWTIの下落がスタートした時期とも重なり、原油価格の下落に影響された面があるとともに、市場を取り巻く資金の流れが変化して原油とともに新興国通貨が下落したとも言える。

 ただし、日経平均やダウ平均のチャートをみるとこれらのダウントレンドは前述のように今年に入ってから形成されている。ドル円については昨年11月から12月にかけて目先の天井が形成され、12月10日あたりからダウントレンドが形成されている。

 チャートをみると原油価格とともに新興国通貨の下落は、昨年7月あたりからスタートしていた。原油価格の下落については供給面の方に焦点があたっていたが、それよりも新興国経済の減速にともなう需要面の後退が影響していたと言えるのではなかろうか。

 もちろんここで忘れていけないのが米国の利上げである。FRBのテーパリングは2014年10月に終了した。その後FRBは時間を掛けて利上げのタイミングを探り、2015年12月に利上げを決定した。ECBや日銀は大量の国債買入を継続してはいるが、FRBの正常化に向けた動きは過剰流動性に依存しすぎていたともいえる世界の金融市場の流れを変化させ、それがリスク回避の動きとなり、新興国の通貨を下落させ、原油価格を下落させたと言える。

 これには中国の景気減速などが顕著となったことも大きく影響し、8月11日の人民元の切り下げ以降、リスク回避の動きに拍車を掛けた。ここに米利上げも重なり、2016年に入っての日米欧の株式指数の急落に繋がったと言える。

 年初からの急速な日米欧の株式指数などの下落は21日あたりでいった止まった格好になった。そのきっかけのひとつが原油先物の反発で、中心限月移行のタイミングで21日に新たに期近となった3月限が30ドル台を回復し、ここからリスク回避の動きの反動が起きた。また、21日にはECB理事会が開催され、ドラギ総裁は会見で次回会合での金融政策の見直しの可能性に言及したことも反動のきっかけとなった。ここに日銀の追加緩和期待も加わって日経平均は21日の16000円近辺から25日に17000円台を回復した。果たしてここで目先の底を打ったと言えるのであろうか。

 たしかに原油先物はWTIが30ドルを割り込んできたことで目先の達成感は出ている。東京株式市場の動きをみても今回の反発はヘッジファンドなどのショートカバーが原動力と思われる。その意味ではひと相場終わった感はある。しかし、テクニカル的な買い戻しであった可能性も高い。25日には原油先物は大きく下落し、WTIは新しい限月で30ドルを割り込んできた。今度は日米欧の中央銀行の金融政策の動向を見て、あらためてトレンドが形成されるのではいかと思われる。

 FRBの年内利上げについては4回は難しいとの見方も出ており、念1回か2回ではないかと予想されている。少なくとも1月のFOMCでの利上げはないと思われる。イエレン議長の議会証言などを確認し、今後のFRBの利上げに対する認識が変化しているのかが注目されよう。利上げに対して慎重な見方となれば、これはリスクオンの動きを強める可能性がある。ただし、注意すべきは日銀とECBである。追加緩和への期待感は強まろうがその手段は限られており、仮に追加緩和を決定したとしてもそれを市場ではネガティブに捉える懸念がある。リスク回避の動きを強めさせることもありうるため注意したい。

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by nihonkokusai | 2016-01-26 09:54 | 国際情勢 | Comments(0)

インフレ予想と金融政策の関係

 日銀は1月14日に「インフレ予想と金融政策」というワーキングペーパーを公表している。ただし、これは2015年11月26日に開かれた東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第6回共催コンファレンス「物価変動とその中での経済主体の行動変化」で報告された論文を改訂したものだそうで、日銀の関係者が書いたものではなく横浜市立大学の中園善行氏が書かれたものである。

 元は英文のものであるが日銀のサイトではその要旨が日本語でアップされている。それによると、日本のインフレ予想に関するサーベイデータを用いて、インフレ予想が経済主体間でばらつく現象とその背景について分析した上で、インフレ予想のばらつきが金融政策に与える含意を考察し、以下の三点を明らかにしたとある。

 「第一にインフレ予想の横断面(クロス・セクション)のばらつきは、情報の硬直性によって説明可能であった。第二に、長期のインフレ予想は中央銀行と民間経済主体の間で不一致が生じていた。2013年1月に2%の物価安定の目標が設定されて以降、家計による短中期のインフレ予想は2%に向けて徐々に近づく一方、長期のインフレ予想は2%に収れんしておらず、むしろ予想のばらつきの程度は拡大していた。第三に、経済主体の金融政策に対する見方は、2013年4月に導入された質的・量的金融緩和の前後で劇的には変化していなかった。」

 特に注目すべきは三番目のポイントとなり、中園氏は「この結果は、政策レジームの変化の度合いが、日本経済を慢性的なデフレーションから脱却させるほどには大きくなかった可能性を示唆している」とまとめている。

 2013年4月の量的・質的緩和は異次元緩和とかバズーカとか称されたものの、その模範ともいえた高橋是清の高橋財政のようなレジームチェンジは、インフレ予想という側面からは起きてはいなかったとの見立てとなる。

 もちろんこれは現在の日銀の見方とは異なるものとなろう。異次元緩和は人々のインフレ予想に影響を与え、その結果として物価の基調は改善しデフレから脱却しつつあると黒田総裁などは認識しているようである。

 しかし、黒田総裁の認識よりも中園善行氏の結論の方が素直な見方とも言えるのではなかろうか。異次元緩和は日銀が想定したほどインフレ予想を劇的に変化させることなく、このため物価そのものに対しての効果は限定的であった。日銀は原油価格の下落もあり、物価目標の達成時期を先送りしているのもこのためと言えるのではなかろうか。もしそうであるとするならば、いまの金融政策の在り方も再考する必要があるのではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2016-01-25 10:04 | 日銀 | Comments(0)

ドラギマジックに種は残っているのか

 1月21日に開催されたECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に維持し、中銀預金金利と限界貸出金利もマイナス0.3%とプラス0.3%でそれぞれ据え置くことを決定した。

 ドラギ総裁は会見で、新興市場国の成長見通しをめぐる不透明性の強まりや金融・商品市場の変動、地政学的リスクに伴い、下振れリスクが年初以降、再び増大したとし、3月の次回会合で金融政策スタンスを見直し、恐らく再検討する必要があるだろうと述べた。つまり、「追加緩和」の可能性を示唆した。これを市場は好感し、中国リスクや原油安などによるリスク回避の動きが反転するきっかけとなった。

 ECBは昨年12月3日の政策理事会で追加の緩和策を決定した。主要政策金利のリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 この決定に対して市場は「踏み込み不足」との認識を示した。12月3日の欧米の株式市場は大きく下落し、ダウ平均は一時300ドルを超す下げとなった。ユーロ圏の国債とともに米国債や英国債も大きく下落した。米10年債利回りは2.3%台に上昇。また外為市場ではユーロが買い戻され、ユーロ円は134円近辺に上昇した。まさに「ドラギショック」といった展開となったのである。

 12月3日に決定された内容は、継ぎ接ぎではあったものの、償還金の再投資を実施するなど政策としてはそれなりに踏み込んでいたと思われる。しかし、大規模な金融緩和に慣れてしまい、この程度では期待外れとの認識が市場で示されてしまった可能性がある。

 12月18日の日銀の金融政策決定会合では量的・質的緩和を補完するためとして、いくつかの措置を発表した。7~10年であった買い入れ国債の平均残存を7~12年程度に変更するとした。量的・質的金融緩和のもとでの長期国債買入れに伴って、金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入した。ETFは3兆円の買い入れ枠に加え、新たに年間約3000億円の枠を設け「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れる。同時に金融機関から買い入れる株式の売却完了期限の10年間の延長も決めた。

 日銀としてはこの措置はあくまで追加緩和でなく異次元緩和の補完とした。仮に追加緩和のような効果を狙ったとしても、このような手段を講じるしかないことを市場に見透かされてしまった格好となった。12月18日に日経平均先物は一時19900円近くまで上昇したが、その後大きく売られ19000円割れとなるなど値動きの激しい相場となった。追加緩和だと思ったが違ったので株は乱高下したとの見方もできるかもしれないが、市場のセンチメントが変化している点にも注意すべきであった。追加緩和、もしくはそれに準ずるものに市場が素直に反応するような地合ではなくなってきている。

 それではドラギ総裁には追加緩和としてどのような手段が残されているのであろうか。下限金利の中銀預金金利の再引き下げ、債券購入の期間のさらなる延長、そして前回手をつけていなかった資産買入規模拡大などが想定される。主要政策金利そのもののマイナス化は弊害も大きいとみられ難しい。資産買入規模拡大についてもドイツなどの反対があると予想され、大規模な拡大は現実的にも難しい。

 ドラギ総裁は、われわれは周知の通り数多くの手段を持っていると主張するが、日銀同様に規模に関しては国債買入に依存するほかなく、金利にも限界がある。手段はいくつもあったとしても市場を納得させるほどのマジックの種は存在していない。それでも何もしないよりも緩和したほうが良いという発想であるのであれば、それはそれで市場との対話をより難しくさせる可能性もある。

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by nihonkokusai | 2016-01-23 11:09 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀は追加緩和をすべきなのか

 21日のWSJ電子版によると、安倍首相の側近は、世界的な市場の混乱が「アベノミクス」の支障となる恐れがあるため、日本銀行は来週の金融政策決定会合で追加緩和すべきとの見方を示したそうである。

 この側近と為れる方は株価の急落、円高、低迷する経済成長、インフレ期待の後退などの追加緩和の条件を満たしているとも述べたとか。何故、安倍首相の側近とされる人が匿名でコメントしたのであろうか。もしかするとスイス大使に転じる本田悦朗氏かもしれないが、そのような詮索はさておき、政府側からもプレッシャーが掛かってきた日銀はそれに応えることができるのであろうか。

 今年に入って顕著になった世界的な株式市場の調整とそれと同時にリスク回避の動きとしての円高に関しては、何度も繰り返すようだが国内要因に基づくものではない。このひとつの背景に原油安があるが、その原油安の大きな要因が中国経済バブルの崩壊による需要の後退にある。それは人民元の下落が示しており、そのバブル崩壊による資金の流れの変化を加速させたのがFRBの正常化に向けた動きと言える。

 それではこの株価の急落、円高、低迷する経済成長、インフレ期待の後退に対して、日銀の追加緩和策が果たして良い効果を与えうるのか。そもそも金融政策は株価対策のためにあるものではない。それはさておき、どのような追加緩和手段があるのかも不透明ながらも、いろいろと継ぎ接ぎしながらの追加緩和策を講じる可能性はある。それが株価の下落や円高の動きにブレーキを掛ける可能性もないとは言えない。しかし、その効果も一時的なものとなるか、むしろ円買い株売りを仕掛ける絶好のタイミングとみなされる懸念もありうる。

 1月のロイター企業調査によると、日銀による今年の追加緩和について、必要との見方と不要との見方が拮抗しているそうである。また、将来の弊害を不安視する声も増えているとか。

 今回の円高や株安を招いた要因が中国経済や原油価格の下落であったとすれば、日銀の金融緩和がそれに直接働きかけるわけではない。原因となるものを改善することは難しく、せいぜい結果として出た日本株の下落や円高のスピードを緩和する程度となるのではなかろうか。ここにきての原油安や株安、円高の勢いが強すぎた分、何かしらのきっかけで反転することも相場であるためありうる。ただ、その手段として日銀の追加緩和を使うのは問題も大きい。

 日銀は過去二度のバズーカのような大規模な作戦を取るのが難しくなっている。それでも大規模な国債買入増額を行うとするのであれば、国債買入の札割れ等が起きる確率が高まることになる。反対に継ぎ接ぎの政策となれば、12月のECBの追加緩和や日銀の補完措置の決定後の市場の動きと同じように緩和の限界を示すことで、むしろ円高株安に働きかけてしまうリスクも伴う。

 日銀の物価目標の達成に向けて、かなりの向かい風になっていることも確かではあるが、市場の期待はさておいて動かないという選択肢もありうるのではなかろうか。それもまた市場では失望売りを誘うのかもしれない。しかし、日銀はまだ戦艦大和のような最終手段は温存しているとの姿勢を示し続け、市場の変動にはタイミングを見計らっての為替市場でのレートチェックといった手段を講じたほうがまだ円高株安に対しては効果的ではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2016-01-22 09:45 | 日銀 | Comments(2)

日銀の物価目標達成を前提とするリスク

 日経新聞によると、財務省は2016年度予算案をもとに国の中期の財政見通しをまとめた。これによると基礎収支は2020年度に5.8兆円の赤字となり、2016年度に比べほぼ半減する見込みとなっている。ただし、これは名目3%の高成長が前提となっている。

 その名目3%の成長のさらなる前提条件となっているのが、日銀が2%の物価目標の達成である。その肝心要の2%の物価目標達成がかなり怪しくなっている。

 そもそも2013年4月に決定した量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和によってレジーム・チェンジが起き、人々のインフレ期待を強めさせて、物価目標は達成すると日銀はしていた。この決定のタイミングでたしかに消費者物価は前年比プラスを回復し一時プラス1.5%にまで上昇した。

 これほどタイミング良く物価が上がる方がむしろおかしい。この際の物価上昇は原油価格が高止まりしていた事に加え、急激な円安による輸入物価などの上昇が要因であった。もし仮にレジーム・チェンジが発生し、マネタリーベースの増加とともに物価が上がるという岩田副総裁の主張していた理論が正しければ、外部要因等に関係なく物価は目標に向けて上がり続けていたはずである。ところが原油価格の下落などから消費者物価指数は前年比ゼロ近辺に低下してしまった。

 2014年10月には原油価格下落などにより、人々のインフレ期待の後退を阻止するとして量的・質的緩和の拡大を決定した。しかし、これも結果として円安株高には多少働きかけたものの、目標とする物価に働きかけることはなかった。

 日銀はいろいろと指標を工夫して物価の基調は改善していると主張するが、日銀の掲げた物価目標はあくまで消費者物価指数の総合であり、それは前年比プラス0.3%に過ぎない(2015年11月)。異次元緩和開始から2年9か月過ぎたが目標を達する気配はなく、消費者物価に直接影響を与えている原油価格は下がり続けている。

 黒田総裁が期待した賃上げについても、春闘が期待外れの結果に終わる公算が大きいとされている。そもそも異次元緩和が賃金上昇に影響を与える波及経路が良くわからない。日銀が思い切って国債を買えば、どうして物価や賃金が上がるのか。

 日銀が追加緩和をすればなんとなく景気も良くなり、物価も上がり、株価も上昇すると思っている人も多いかも知れないが、そうではないということを日銀の異次元緩和以降、明確にしてしまったとも言える。

 つまりピーターパンは幻想にすぎない。空を飛べる魔法の粉を日銀が持っているわけではない。日銀は空を飛べるような環境整備をしているにすぎず、飛ぶための努力をすべきは企業等であり、つまり我々である。日銀が何かをすれば何かが大きく変わる、などということは幻想にすぎないことをそろそろ気がつくべきである。

 このため、日銀による物価目標達成を前提とした名目3%の高成長といったものにも無理がある。むろん海外要因によってもそれは左右されうるが、日銀の金融政策は成長の土台にはなりえても、エンジンとなるわけではない。計算できないものを前提に目標を立てることにも問題はあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-01-21 09:41 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入の限界

 日銀は2013年4月の量的・質的緩和政策により、長期国債の保有残高が年間50兆円に相当するペースで増加するよう買入を行うことを決定した。長期国債の買入対象を40年債を含む全ゾーンとし、買入の平均残存年数をそれまでの年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長した。この結果、国債発行額の7割を買い入れることになった。

 2014年10月の量的・質的緩和政策の拡大では、資産買入れを拡大し、長期国債買入れの平均残存年数を7~10年程度に長期化した。長期国債については保有残高が年間80兆円(約30兆円追加)に相当するベースで増加するよう買入れを行うこととなり、年間国債発行額の9割を買い入れることになった。

 そして、2016年12月の金融緩和の補完措置により、7~10年であった買い入れ国債の平均残存を7~12年程度に変更するとした。さらに金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入した。この措置は、長期国債買入れの平均残存期間の長期化とともに、日銀による買入可能な国債の金額を増加させることになる。

 2016年度の日銀による国債の買い入れは40兆円の償還の乗り換えも含めると120兆円程度になる。来年度のカレンダーベースの国債発行額は、短期国債の25兆円を除くと122兆円となる。つまり日銀はカレンダーベースでの長期国債発行額をほぼ買い入れるが、かろうじて100%は割り込む格好となる。

 それではここからさらに日銀が国債買入枠を拡大することは可能であるのか。技術的にはたしかに可能ではある。日銀が保有している国債は増えたもののまだ全体の3割程度である。さらに適格担保の拡大により、日銀が買い入れる国債の金額の余地は拡がった(現在の日銀が受け入れている担保は約81兆円で、うち約44兆円が国債)。民間金融機関が保有する国債を引きはがす格好での国債購入拡大余地はまだある。

 日銀が量的・質的緩和政策のさらなる拡大をするのであれば、国債買入拡大枠は10兆円程度ではないかとの観測がある。ただし、技術的には可能ではあっても、それは日銀の異次元緩和の出口をさらに遠くにさせることになる。さらに、市場は必ずしも日銀の国債買入増額等でポジティブな反応を示すとも限らない。長期金利が0.2%を割り込んで過去最低を記録するなか、ここからの長期金利の低下に果たしてどのような意味、効果があるというのか。国債買入額の限界というよりも、国債を買い入れることによる効果に対する限界のほうが意識されることも予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2016-01-20 10:02 | 日銀 | Comments(0)
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