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GDP改定値は甘利担当相の予想も上回る

 12月8日の朝方に発表された7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増となった。11月16日に公表した速報値の前期比0.2%減、年率0.8%減から上方修正された。1日に発表された法人企業統計で企業の設備投資が大幅増になり、これがかなり影響したとみられる。その設備投資は速報の1.3%減から0.6%増と上方修正された。

甘利明経済再生担当相は12月6日のNHKの番組で、7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値が前期比年率で0.8%減だった速報値から上方修正されるとの認識を示した。「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」と述べていた。その甘利担当相の発言した数値をも上回った格好になった。

経済統計を所管する閣僚が公表前に具体的な内容を示唆するのは極めて異例である。内閣府はGDP統計について所管する閣僚にも発表当日の朝まで伝えないと説明してきたはずであった。これに関して甘利担当相は7日の経済財政諮問会議後の会見で「民間調査機関の見通しでは、改定値がゼロくらいになると発表されている」とし、NHKでの発言はあくまで民間の調査結果を踏まえた発言だと強調していた。

GDPの結果を見る限り、どうやら甘利担当相は数字を知らされていたわけではなく、たしかに民間予測の中央値であったところの前期比横ばいとの数字を示したものと思われる。知っていればプラスとの認識を示していたであろう。それでも「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」との発言は漏洩の可能性を想像させることで、もう少し発言は慎重にすべきであったと思われる。

GDP同様に市場動向に影響を与える日銀短観なども日銀総裁が内容を知るのは発表当日の朝とされている。これがいまは常識となっていて、担当大臣がその数値を知るはずもないとの前提での発言であったのかもしれない。しかし、担当大臣が自信を持ってゼロになると発言すると、もしや知っていたのかと疑われてもおかしくはない。

現在、このように市場に影響を与えうる経済指標の管理が徹底されているのは、過去に日銀短観の漏洩問題があったためである。日銀短観の漏洩問題は大蔵省や日銀の不祥事が相次いだタイミングでもあっただけに問題視され、それを機会に経済統計などの数字に関する情報管理が徹底された。

安倍政権にとってはアベノミクスと呼ばれた経済政策が高い支持率を維持する源となっており、三本の矢から今度は名目GDP600兆円という目標を打ち出した。その矢先に7~9月期の実質GDPが2期連続のマイナスとなってしまい、欧米ではリセッションとも捉えかねない状況下、かなり神経質になっていたことも確かであろう。首相官邸もGDP改定値の数字に対してかなり関心を抱いていたとも考えられ、それが今回の甘利担当相のテレビでの発言の背景になっていた可能性がある。

以前には日銀の金融政策決定会合の内容が事前に漏れたこともあった。いまの日銀はその点に関しては情報漏洩を防ぐことに徹底しているようだが、これが本来の情報管理のように思われる。これを機会にいまの経済指標などの情報管理がどのように徹底されているのかを明らかにすることも必要ではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-12-08 09:50 | 景気物価動向 | Comments(0)

関心が薄れた国債発行計画

 12月に入りかつての債券市場であれば、市場関係者は来年度の国債発行計画が気になるところではあるが、アベノミクスの登場以来、国債発行計画への市場関係者の関心度はやや薄れてきている

 債券市場にとって需給要因に大きく関わる国債発行計画ではあるが、アベノミクス以前は投資家ニーズとの兼ね合いを見ながら、国債市場特別参加者会合や国債投資家懇談会などでの討論を経て決定されていた。もちろん今回もそういった会合での討論を元にして作成されるが、根本的に異なる点が存在する。それは国債発行額の9割近くを買い入れている日銀の存在である。日銀がいる限り、投資家ニーズなど細かく把握して年限別の発行額を作成する必要がなくなってしまっている。

 アベノミクス効果がどこまであったのかについては疑問の余地は残すものの、税収も回復してきており、2015年度の国の一般会計税収は56兆円台に乗せる見通しとなっている。この増収分は補正予算に使われるであろうが、ここにきての税収増を受けて来年度の新規国債の発行額も抑制される。

 来年度の新規国債は今年度計画から1.2兆円減となり、借換債は約3.5兆円減となる予想となっている。復興債や財投債の規模次第ではあるものの、この時点で今年度から5兆円程度の国債発行額の減額が想定される。つまり国債については増額せざるを得ない状況どころか、減額が可能となっている。このため、どこを増やすかというよりも、どころを減らすかという議論となっている。

 税収増が見込まれるときに国債発行額を抑制し、プライマリーバランスを均衡させた上で、国債発行総額も減少させることは必要であり、いまは財政健全化にむけたチャンスとも言える。ところが、国債の需給がタイトになっているのは、異次元緩和と呼ばれる日銀による積極的な国債買入がベースになっている点に注意すべきである。いまのところ日銀の物価目標達成は見えてこない。しかし、いずれ物価目標が何かの弾みで達成されたり、日銀の国債買入で困難になる懸念がある。このような規模の国債買入を永遠に続けることもできるはずはない。

 異次元緩和以前であれば、ここは素直に国債発行額を減少させるべきと主張したと思うが、いまはむしろ日銀の出口政策による市場への影響をなるべく軽減させられるように、そのリスクに備えたことを優先すべきと思われる。

 来年との国債発行総額は減額されても、前倒し発行や出納整理期間内発行等でカレンダーベースの年間発行額は調整が可能である。このため今年度並みの発行額を維持させて、前倒し発行額を増加させ、将来のリスクに向けてのバッファーを作るべきではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-12-07 09:25 | 国債 | Comments(0)

銀行の誕生とその発達

 銀行というシステムの誕生とその後の発達が、経済社会システムの近代化に果たした役割は大きかったと言われます。中世ヨーロッパの経済は、封建社会であり土地所有が基礎となっていました。このため、銀行業の発達によって、富の源泉を土地所有以外の財やサービスの供給に求めることを可能としたのです。つまり、銀行業の発達は近代市民社会を築く礎にもなったといえます。

 さらに、貿易の拡大によって富が蓄積され、そのお金が再度運用されるなど、金融の仕組みが徐々に整ってきました。ヨーロッパの歴史における銀行業の発達は、膨大な国家の債務管理と産業革命によってさらに促されることとなります。

 ヨーロッパでは17~18世紀の相次ぐ戦乱によって、いずれの国も財政赤字が慢性化していました。それまでの国家財政の赤字は、保有している土地の売却や、没収、さらに商人たちへの債務不履行といった手段で補っていました。しかし、国債の発行やそれを引受ける中央銀行が設立された英国のように、戦費の調達や送金を迅速に行うための国家による新たな資金調達手段が生み出されました。

 国家の信用に重きが置かれ、さらに現在の国債管理政策のような国家債務の管理などの必要性が高まってきたのです。商工業の近代化によって、貨幣や信用制度を国家規模で整備する必要性も出てきました。

 18~19世紀にはイギリスの産業革命などによって、既存勢力であった地主や貴族に加えて、商人や金融業者がその存在感を強めてきました。力をつけた市民層に対して、増大する財やサービスの取引に見合った金融サービスが提供されるようになってきたのです。こうした状況下、個人銀行家ではなく、公的な性格を持つ銀行が設立されるようになりました。預金の受入れや為替手形の引受け、銀行口座間での資金や債権の振替を行う近代的な銀行の必要性が高まったためです。

 そのひとつが、17世紀初頭のオランダに設立されたアムステルダム振替銀行です。個人の金貸しといった高利の金融を追放することで、貨幣の混乱を抑え、さらに商業発展のために資金を必要とする人々への資金供給を目的とし、結果として資金決済の安定に寄与することとなりました。信用に裏付けられた支払い手段が構築されることで、商業や流通を拡大させる基盤ともなったのです。

 また、国家債務の管理によって業容を拡大した銀行は株式会社組織へ形態を変化させ、支店制度の発展によって業容を拡大しました。不特定多数の投資家のお金を集めて投資するマーチャント・バンクと呼ばれる銀行形態も誕生し、イギリスの産業革命に伴う大規模な鉄道等のインフラの整備などにも携わるようになったのです。こういった銀行の発達とともに、銀行の銀行たる中央銀行というシステムも確立されたのです。

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by nihonkokusai | 2015-12-06 11:10 | 金融の歴史 | Comments(0)

ドラギショックで緩和依存度後退も

 ECBは3日の政策理事会で追加の緩和策を決定した。主要政策金利であるところのリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 このECBの追加緩和の決定を受けて市場は踏み込み不足との認識を示した。3日の欧米の株式市場は大きく下落し、3日のダウ平均は一時300ドルを超す下げとなった。ユーロ圏の国債とともに米国債や英国債も大きく下落した。米10年債利回りは2.3%台に上昇した。また外為市場ではユーロが買い戻され、ユーロ円は134円近辺に上昇した。まさにドラギショックといった展開となった。

 ECBの追加緩和を受けての欧米市場の反応は、単純にECBの追加緩和への期待外れとか、すでに追加緩和を織り込んでいたことで「噂で買って事実で売る」といった動きだけではないように思われる。もちろん、3日にはイエレンFRB議長が議会証言で追加緩和の可能性を強く示唆したように、米国の利上げが次に控えているためとの見方もできるかもしれない。しかし、それよりも過度に金融緩和に頼る時代ではなくなってきたことの表れとの見方も可能ではなかろうか。

 サブプライムローン問題からリーマンの破綻が起き、金融危機が発生した。いったん収まったころに今度はギリシャ発の欧州の信用危機が発生した。ただし、財政政策には限界があり、「市場の動揺を抑えるために」日米欧の中央銀行の大胆な金融政策が実施された。危機は去ったものの、市場は金融緩和というカンフル剤を常に欲するようになってしまった。大胆な金融緩和への期待を背景に日本ではアベノミクスが登場し、円安・株高に働きかけたが、これも背景には金融緩和への過度な依存があったといえる。政府・日銀も市場への影響を強く意識していたように思われる。

 しかし、米国では金融政策を非常時から平時の政策に戻そうとの動きをはじめ、市場の過度な動揺を抑えるために時間を掛けて、テーパリングと呼ばれる量的緩和の縮小を成功させ、今度は利上げを行うことで金融政策を正常化させようとしている。これはFRBの市場との対話をうまくこなした面もあるが、雇用情勢の好転などで、正常化に向き合える環境になったことも背景にある。

 ところがECBと日銀は正常化どころか、異次元というよりも平時にとっては異常ともいえる過度な金融緩和政策を継続させている。今回のECBの追加緩和の踏み込み不足の要因としては、ドイツやオランダ、ラトビア、リトアニアなどの反対派に配慮したとの見方もあるが、その反対派はそもそも追加緩和をする理由が見当たらないとしていた。

 今回のECBの追加緩和に対する市場の反応は、過度な金融緩和への依存、つまりマジックや魔法の世界から脱却する必要性を感じさせる。中央銀行の金融緩和は直接、物価や景気に影響を与える物ではないことは、異次元緩和から2年以上経過した日銀が証明したような格好となっている。これに市場も薄々気がついているはずである。今回のECBの政策に対する反応、さらには米国の金融政策の正常化により、市場の金融政策に対する見方に変化が生じる可能性がある。その意味では期待されても動かなかった(動けなかった)日銀はある意味正解であったのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-12-05 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)

期待外れのECBの追加緩和策

 ECBは3日の政策理事会で、追加の緩和策を決定した。主要政策金利であるところのリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。

 昨年9月4日のECB理事会では、主要政策金利に関してはリファイナンス金利を過去最低の0.05%に引き下げ、上限金利の限界貸出金利を0.30%に、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%に引き下げていた。しかし、今回は中銀預金金利だけを引き下げた。

 昨年9月4日の会見でドラギ総裁は「テクニカルな調整がこれ以上は不可能な下限に到達した」とし、利下げは打ち止めとの考えを示していた。主要政策金利のリファイナンス金利のマイナス化は技術的にも難しいと思われ、中銀預金金利のみの引き下げになったとみられる。

 ECBは購入対象国債の利回りについて、中銀預金金利を下回らないという条件を表明しており、中銀預金金利の引き下げで購入対象は広がることになる。しかし、すでに追加緩和を見越して市場は動いていた。ドイツの2年債利回りは一時マイナス0.4%台に低下していた。このため、引き下げが実施されても現状追認型ということにしかならない。ただし、もし引き下げがないとなれば、市場は先読みしていた分、動揺しかねない。

 そして今回ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。また、買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 今回のECB理事会では、預金金利の引き下げと同時に買入期間の期限延長や、買入資産の範囲拡大と複数の政策をまとめて行うという包括緩和となった。しかし、市場では予想された緩和の必要最低限に止まったとの認識により、今回の追加緩和は期待外れとみなされた。

 今回、ドラギ総裁にとってFRBの利上げにタイミングを合わせる必要がどうしてもあったのかもしれない。ドラギマジックにとってのラストチャンスとの認識が働いたのかもしれない。しかし、マジックを起こせなかったのはドイツやオランダなどの追加緩和反対派に配慮せざるを得なかった面もあったのかもしれないが、市場があまりに過剰な期待をしてしまったことも要因ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-04 09:19 | 中央銀行 | Comments(0)

日本初の鉄道と国債、あさの炭鉱との関わり

 江戸時代には江戸や大阪の商人から半ば強制的に御用金と呼ばれるものを徴収していていました。御用金とは幕府が慢性的な財源不足や臨時の支出を補填するために発令したもので、江戸や大阪の商人などから半ば強制的に金銀を徴収していたものです。利子付きであり、元金返済を前提としているので強制的な「公債」という性格を持っていました。その利子も年利2~3%という超低利であり、現在の国債と同様のものとなっていたのです。

 この御用金は1761年大坂の商人205名に対し170万両を命じたのが最初と言われます。当初は大坂や江戸の豪商に対して課せられたものでしたが、その後は堺、兵庫、西宮などの富裕町人、さらには一般町人や農村の富裕層にも命じられるようになりました。幕末に近づくほど頻繁に発令されたのです。特に1866年第2次幕長戦争の際には、大坂・兵庫・西宮の商人に700万両の御用金が指定されました。ただし、利子がしっかり支払われたのは最初の数年間のみで、幕末になるにつれ、利子はもちろん元金もほとんど償還されなくなっていったのです。あさの嫁ぎ先など、当時の大阪の両替商が苦労したのはこのようなことも要因にありました。

 明治政府も当初、財政確保のためしばしば御用金を課したのですが1869年に廃止され、国債制度に切り替えられていったのです。その国債が日本ではじめて発行されたのが1870年です。

 日本で最初に発行された国債は、鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債をロンドンにおいてポンド建てで発行されたものです。

 岩倉具視、大隈重信、伊藤博文などの明治政府の関係者は鉄道建設の必要性を提唱し、「日本人によって鉄道建設が可能である」としたイギリス駐日大使パークスの意見もあり、鉄道建設に向けての企画が進められました。

 しかし、国内で資金調達をしようとしても、明治政府は財政的基盤が固まっていなかったのです。金銀貨による幣制の統一を目指していたものの、貨幣素材の不足や造幣能力の不十分さもあって、金銀貨の鋳造すらなかなか進まなかったぐらいです。明治政府は資金の調達のために金銀貨に代わる支払手段として、政府紙幣や国立銀行券といった不換紙幣の発行に依存せざるを得ない状態となっていました。

 商人への借入といった手段も考えられたのですが、あさの家の状況を見てもおわかりのように、当時の商人たちにも余裕はありませんでした。そこでパークスの紹介もあり、来日していた英国人資産家ハラチオ・ネルソン・レイを通じた私的な借入の契約を結ぶことにしたのです。しかし、レイによる資金調達が困難となったことから、ヘンリー・シュローダー商会を通じた「公募債」として調達されることになりました。

 公債収入金の取り扱いについての日本政府の代理店としてオリエンタル銀行という銀行が指定され、ロンドン証券取引所で公募されることとなり、1870年4月23日に九分利付きで外債100万ポンドの日本国債が発行されました。これが日本初の国債発行であり、最初は外貨建てで発行されたのです。現在では日本国債の発行はすべて円貨建てとなっており、外貨建ての国債発行はされておりません。

 この国債発行で得た資金を元に、必要な技術に加え、機関車や客車、線路、枕木、燃料の石炭などをイギリスから輸入し、1872年9月に新橋と横浜の間に日本初の鉄道が開通しました。1874年5月には日本で2番目の鉄道である神戸と大阪間が開通しています。

 広岡浅子が石炭事業で頑張っていたのがこの時代となるのです。まさに時代の流れを読んでいたものといえるでしょう。また、鉱山王とも呼ばれた五代友厚は炭鉱ではなく金山や銀山の開発をしていました。こちらは明治政府が新貨幣の発行のために大量の金、銀を必要とすることを見越してのものと言えるでしょう。

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by nihonkokusai | 2015-12-03 10:09 | Comments(0)

異次元緩和で物価は上がったのか

 11月30日の黒田日銀総裁の講演において、以下のような説明があった。

 「生鮮食品とエネルギーを除くベースでみた消費者物価の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入以前はマイナスで推移していましたが、13年10月にプラスに転じました。その後は25か月連続でプラスを継続しており、今年10月には+1.2%まで上昇しています。このように物価上昇が持続するのは、90年代後半に日本経済がデフレに陥って以来、初めてのことです」

 日銀の質的・量的緩和政策、いわゆる異次元緩和を決定したのが、2013年4月であり、それから半年程度のタイムスパンを置いて、効果が発揮されたかのような説明である。ただし、日銀の物価目標はそもそも生鮮食品とエネルギーを除くベースではない。その目標であるところの総合指数は今年10月で前年比プラス0.3%に過ぎない。

 日銀は目標とする物価が上がるどころかゼロ%近辺にいるため、物価の基調はしっかりしていることを示そうと、消費者物価の発表に合わせるかたちで11月27日から除く生鮮食品・エネルギーなどの試算結果をホームページ上で公表した。よろしければ、日銀サイトの以下のページで確認していただきたい。

「消費者物価の基調的な変動」 http://www.boj.or.jp/research/research_data/muipre.pdf

 日銀が発表した10月総合(除く生鮮食品・エネルギー)は前年比プラス1.2%となった。異次元緩和の効果を示そうとしたものであろうが、このグラフをみても、果たして異次元緩和によって物価に影響を与えたのかどうかは甚だ疑問である。

 日銀の総合(除く生鮮食品・エネルギー)のグラフをみると、異次元緩和の少し前からゼロ%に向けての上昇が始まっており、2013年度中に前年比でプラスに転じた。しかし、大きなトレンドでみると今回の物価の回復は2010年あたりをボトム(底)に起きていることがわかる。日銀が示すグラフは2001年以降のものであるが、特に「上昇・下落品目比率」のグラフでみると良くわかるが、2002年をボトムとして2008年まで上昇を続けたあと、いったん大きく落ち込み2010年をボトムに回復している構図となっている。

 これを日銀の金融政策と無理矢理結びつけると、2001年から2006年にかけての量的緩和が功を奏して物価が上昇するが、その後2006年から2007年にかけて利上げを行ったことで物価の上昇にブレーキが掛かった。しかし、2010年に自然にボトムをつけて日銀の異次元緩和で物価上昇に弾みをつけたとの見方をすれば良いというのであろうか。

 このように日銀の金融政策と物価のトレンドを結びつけて説明する方が実は無理がある。2002年以降の物価の回復は、日本の不良債権問題の後退などが影響していた。その象徴的な出来事に2003年5月の「りそな銀行」に対する資本注入がある。大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めた。その結果としての物価上昇との見方が素直ではなかろうか。

 さらに2008年からの物価の急激な下落は、サブプライム問題を発端としたリーマン・ショックなどの金融経済ショックによる影響とともに、中国などの新興国経済バブルが意識された原油価格の急騰とその反動による急落が、日本の物価下落の要因となっていた。ちなみに原油価格の上げ下げは総合(除く生鮮食品・エネルギー)では排除されているかに思えるが、実際には原油価格は多種にわたる製品等に影響を与えるため、完全には排除でない。2008年から2009年にかけての物価の変動は原油価格の影響を全般に大きく受けていることはグラフからも確認できる。この際の物価の動きの説明については日銀の金融政策が影響していたとの解釈の方が無理がある。

 そうなれば2010年以降の物価の基調回復は、欧州の信用不安は起きたものの、原油価格の底打ちとともに、日欧米の積極的な金融緩和も手伝っての「リスク回避」の動きも収まり、その結果、景気とともに物価の基調も好転した。たしかに金融緩和が回復の土壌を作ったことは確かかもしれないが、金融政策はあくまでリスクを抑えたに過ぎず、しかもこのときの日銀は異次元緩和はしていない。

 日銀は2013年4月の異次元緩和後の物価の動きについて都合良く解釈したいようだが、その都合の良さそうな時期だけのグラフをみても、現実には異次元緩和の効果は認められない、というよりそもそも金融政策で物価が動いているという解釈は難しい。

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by nihonkokusai | 2015-12-02 09:54 | 日銀 | Comments(1)

国債の市中発行額は減らすべきか

 11月26日に財務省で開催された国債市場特別参加者会合の議事要旨が27日に公表された。国債市場特別参加者とは、米国で言うところのプライマリーディーラーであり、国債を入札で落とす主力メンバーである。国内外の大手証券や大手銀行で形成されている。

 26日の会合のテーマは「平成28年度国債発行計画について」である。冒頭に財務省から来年度の国債発行に関して以下のような説明があった。

 「平成28年度は今後の予算編成の動向次第となるが、内閣府中長期試算では、マイナス1.2兆円減少の35.7兆円と推計している。復興債については、今後の予算編成過程で決定される予定であり、財投債については、財投計画全体の規模を踏まえて今後決定することとなっている。借換債は、平成28年度概算要求ベース(112.8兆円)では、平成27年度計画額(116.3兆円)より約マイナス3.5兆円低い水準である」

 新規国債は今年度計画から1.2兆円減となり、借換債は約3.5兆円減となる。復興債や財投債の規模次第ではあるものの、この時点で今年度から5兆円程度の国債発行額の減額が想定される。

 財務省はこの会合を含め市場関係者の意見も踏まえつつ、予算編成過程と並行してカレンダーベース市中発行額の年限構成や規模を決定するとしている。

 国債の年間発行総額は新規国債、復興債、財投債、借換債、個人向け国債の発行額、さらに日銀乗換などが決定すれば自動的に決まる。ところが1年間を入札等で発行する額、つまりカレンダーベースの市中発行額とは金額が異なるものとなる。これは国債発行には前倒し発行、出納整理期間発行が存在しているため、カレンダーベースの発行額についてはかなり調整が可能になっている。

 すでに前年度に前倒しで発行する前倒し債の発行ベースは今年度で30兆円を超えており、新規国債の発行額規模となっている。つまり、来年度は新規国債分を発行しなくても、計算上は発行総額はカバーできる。

 このように調整が可能な分、日本の国債市場を取り巻く環境等も配慮して、カレンダーベースの市中発行額を決める必要がある。現在の日本国債は特に信用リスク等が高まっているわけではない。むしろ超がつくほどの低金利の状況下、日銀による大量の国債買入が継続されており、需給がタイトとなっている反面、市場の流動性がかなり低下しつつあり、ここも配慮する必要がある。

 本来であれば財政規律を守る姿勢を示すため、発行総額に応じたカレンダーベースの減額をすべきところではある。ただし、カレンダーベースで巨額の国債発行額が維持されようと、発行総額が減額されていることで財政規律を守る姿勢は示せる。

 そして、国債需給が異次元の好環境になっていることを背景に将来のリスクに備えた政策も必要ではなかろうか。つまりバッファーとなる前倒し債の発行額をさらに増加させ、なるべくカレンダーベースの発行額を維持することが望ましいのではなかろうか。

 それでなくても需給逼迫により流動性が低下していることで、多少なりとも流動性を維持させる必要があるとともに、2017年度は借換債の発行増も予想されていることでその備えともなる。そして何よりも異次元緩和からの出口という難解な作業が将来に控えている以上、それに向けて備える必要があるのではないかと個人的には考えている。

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by nihonkokusai | 2015-12-01 09:19 | 国債 | Comments(0)
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