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2016年は日銀にとって正念場に

 2016年から日銀とECBは金融政策を決める会合をそれぞれ年8回の開催としFRBと同じ回数となる。開催時期もFRBとほぼ同時期となり、1月、3月、4月、6月、7月、9月、10月~11月、12月となる。

 日銀は1月、3月、7月、10月~11月の会合では展望レポートの発表も予定されている。また、各決定会合の1週間後をメドに「主な意見」を公表する。ただし、12月17~18日の金融政策決定会合に関しては1月8日に「主な意見」が公表される。「主な意見」がどのような形式となるのかも興味深いながら、この決定会合では異次元緩和の補完措置が決定されており、各委員の意見の違いも確認したい。

 政策委員のメンバーのなかでは来年3月31日に白井さゆり審議委員が任期を迎える。再任の可能性もなくはないが、あらたに学者枠から後任が選出されるのではなかろうか。その場合、アベノミクスや異次元緩和に理解を示す人物が選出されるとみられる。

 6月29日には石田浩二審議委員が任期を迎える。こちらも再任とはならず、銀行出身の後任が選出されるのではないかと予想される。こちらの人事には若干の注意も必要となる。石田委員は12月18日の補完措置の決定において、資産の買入れの変更などに対し、佐藤委員や木内委員とともに反対票を投じている。後任が銀行出身者から選出されるとして、異次元緩和に異を唱える人物を首相官邸が選出するとは思えない。しかし、銀行枠で異次元緩和に理解を示す人物を選出することも難しい。結局、トヨタ出身の布野幸利審議委員のように比較的中立的な立場の人物が選出されるのではなかろうか。

 日銀ではないものの、この日銀の政策委員の人選等にも影響があると思われる首相官邸内での人事の行方も注意したい。政府は本田悦朗内閣官房参与を退任させ、欧州某国の大使として転出させる方針を固めたと報じられている。本田氏は安倍首相の経済政策のアドバイザーであり、ここに空席が生まれる。安倍政権にとっての経済政策は柱であり、ここに新たな人物を置く可能性もある。その人物次第では日銀の政策委員人事に微妙な影響を与えるかもしれない。

 肝心の2016年の日銀の金融政策そのものの行方を占うことは難しい。2016年末にかけて日銀の物価目標が達成できる確率は極めて低いと予想している。そのひとつの鍵を握る原油価格に関しては、いまのところ大きく戻る気配はなく、円安への期待も難しい。

 この環境下での追加緩和に関しても困難な状況にある。18日の補完措置により大規模な国債買入を継続させることを容易にした。しかし、異次元緩和のパート1、パート2のような大規模な追加緩和を新たに行う余地には乏しい。18日の変更もあくまで補完措置であると強調したように、戦力の逐次投入のようなかたちの金融緩和も想定しづらい。マイナス金利等についても黒田総裁は否定している。

 このため、2016年の日銀の金融政策は現在の異次元緩和を継続させることが重視されるのではないかとみられる。しかし、FRBの利上げをきっかけに市場のマインドは変化しつつある。また、世界的な資金の流れも変化しつつあるなか、何かしらの理由付けにより、物価目標の達成はさておいて、日銀が追加緩和よりも出口を見据えた政策に転じる可能性もないとは言えない。2016年が日銀の金融政策にとって大きな正念場となる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2015-12-31 10:47 | 日銀 | Comments(0)

2016年の金融市場では何が焦点となるのか

 2015年の金融市場は日米欧の金融政策の行方が金融市場にとっての大きな焦点となっていた。リスク要因として前半はギリシャ、後半は中国と原油価格の動向が注目された。それでは2016年の金融市場では何が焦点となるのであろうか。

 突発的なテールリスクに関しては予測が難しい面もあり、とりあえず予測が可能なものから見てみたい。まずFRBの金融政策に関しては年に2回から4回の利上げが行われる可能性が高い。

 FOMCの2016年の日程は1月26~27日、3月15~16日(議長会見有)、4月26日~27日、6月14~15日(会見有)、7月26~27日、9月20~21日(会見有)、11月1~2日、12月13~14日(会見有)となる。段階的に4回であれば議長会見のある3、6、9,12月。もし慎重に年2回であれば6月、12月か。テーパリングとは影響は異なると言ってもマーケットフレンドリーなペースで行うと予想され、市場への影響は限定的となろう。

 イングランド銀行も利上げのタイミングを計る年になるとみられる。ちなみに2016年のMPCは毎月開催となるが、英国議会で承認が得られれば、2016年9月以降は年8回ペースでの開催に変更される。その場合に10月のMPCは中止となる。

 ECBについては12月3日の追加緩和が予想された最低限のものであったことで、緩和余地を残しているため追加緩和の可能性はある。しかし、12月3日の市場の反応をみても中途半端な追加緩和はむしろ市場には逆効果と認識される可能性がある。追加緩和でユーロ安が期待できないとなれば、ドラギ総裁は新たな手段を講じてくる可能性もある。しかし、ドイツ出身者などとの対立をさらに深める懸念もある。ECBは2016年から政策理事会は年8回となる。

 日銀に関しては12月18日の異次元緩和の補完措置による適格担保の拡充と長期国債買入れの平均残存期間の長期化により、2016年の国債買入をより容易にさせることになる。しかし、すでに国債発行額の100%近くを買い入れることになり、さらなる大量の国債買入による追加緩和の可能性は薄い。かといって小出しの追加緩和では、ECBの追加緩和のように市場はネガティブな反応をする可能性が高い。日銀も2016年は金融政策決定会合の開催は年8回となる。

 12月の米国の利上げにより、金融市場は金融緩和に対する依存度が後退しつつあるように思われる。2016年の焦点のひとつが日米欧の中央銀行の金融政策であることは確かながら、その注目度は2015年と比較して低下してこよう。むしろ物価動向にかかわらず日銀の出口政策の行方が注視される可能性もある。

 現時点でのリスク要因となりそうなのが、原油価格の下落である。原油価格の下落傾向はまだ続くとみられる。その原因のひとつである中国などの新興国の景気拡大のピークアウト、さらに原油価格下落によるサウジアラビアなど中東の国々含めた資源国の景気への影響も危惧される。金融市場を取り巻く資金の流れがFRBの正常化と原油安により大きく変化してきており、それが一層顕著となるのが2016年となるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-30 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

物価の新コアコアもピークアウトする懸念

 日銀の黒田総裁は12月24日の日本経済団体連合会審議員会における講演で物価に関して次のように発言していた。

 「物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、1年を通じて概ねゼロ%程度で推移しました。もっとも、これは主としてエネルギー価格の下落によるものであり、物価の基調は着実に改善しています。生鮮食品に加えてエネルギーも除いた消費者物価をみると、2013年10月に前年比プラスに転じた後、25か月連続でプラスを続けており、直近ではプラス1.2%まで上昇しています。これほど持続的な物価上昇は、1990年代後半に日本経済がデフレに陥って以降、初めての経験です」(日銀サイトの講演要旨より)。

 25日に発表された11月の消費者物価指数は指標となっている生鮮食品を除く総合で前年同月比プラス0.1%と5か月ぶりのプラスとなった。日銀の物価目標となっている総合ではプラス0.3%、食料及びエネルギーを除く総合ではプラス0.9%、さらに日銀が算出している生鮮食品及びエネルギーを除く総合ではプラス1.2%となった。

 日銀が発表している「消費者物価の基調的な変動」のなかの生鮮食品及びエネルギーを除く総合の2000年以降のグラフをみると、確かに2013年10月に前年比プラスに転じた後に上昇を続けている。それではその上昇が継続されている理由は何であるのか。黒田総裁としては、2013年4月の日銀による量的・質的緩和の決定から半年程度の時間をおいて効果が浸透し、結果に結びついているという見方をしているのかもしれない。

 しかし、日銀の示すグラフをみるとすでにトレンドとしては2010年から上向きとなり、それがプラスに転じたのがたまたま2013年10月であったようにもみえる。今回のプラス浮上の前にプラスに転じた2007年末から2008年の状況を確認してみると、2007年2月に日銀は利上げを決定しており、仮に金融政策が物価に働きかけると仮定すると、金融引き締めにより物価がプラスに転じたように映る。

 2007年末から2008年にかけての物価上昇の最大の要因は原油高にあったはずである。2007年8月にはパリバショックも発生しており、金融市場はかなり不安定となっていたが、中国などの新興国経済の高成長を材料に原油価格が一本調子で上昇していた。これがエネルギー関連だけでなく、全体の物価を押し上げた格好となっていた。その原油価格が急落し、リーマン・ショックに代表される世界的な金融経済危機が相まって、物価が大きく落ち込むことになる。その後の欧州の信用不安もあったが、2010年頃に物価は底打ちした格好となったのである。

 物価が日銀の金融政策で動くわけではないのは上記の例からも明らかではなかろうか。日本の物価に関しては予想物価とかではなく、原油価格や為替による直接的な影響が大きいように上記グラフからも思える。そうなると原油価格はすでにWTIで30ドル台に下落しており、円安トレンドも変化しつつあるなか、黒田総裁の「消費者物価の基調的な変動」を示すという生鮮食品及びエネルギーを除く総合についても、そろそろピークアウトする可能性があるのではなかろうか。もしそうなると、異次元緩和で物価を動かそうとした試みが成功したわけではないことを改めて示すことになりはしまいか。

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by nihonkokusai | 2015-12-29 09:50 | 景気物価動向 | Comments(0)

2015年の金融市場を振り返る

 2015年の金融市場を振り返ってみたい。2015年の金融市場を巡る大きな注目材料となったのは日米欧の金融政策の方向性の違いではなかったろうか。ECBは1月22日の理事会で量的緩和の導入を決定した。このECBの追加緩和期待により1月20日に5年債利回りは一時マイナスとなり、10年債は0.195%まで低下した。

 その後、ギリシャの債務問題を巡る警戒感が強まり、一時ギリシャのデフォルト懸念が強まった。しかし、7月にギリシャ議会は金融支援の条件となる財政改革法案を賛成多数で可決したことなどから、デフォルトの懸念は次第に後退した。市場の視線はギリシャから今度は中国に向けられた。

 8月11日に中国人民銀行は人民元取引の目安となる基準値の算出方法を変更し、事実上の人民元の切り下げを行った。中国経済の減速が意識されて市場は再びリスクオフの動きを強めた。これは人民元ショックとも称された。中国経済の減速は原油需要の後退も意識され、原油価格の下落基調も強まった。

 そんななかにあって、もうひとつの市場の焦点がFRBの正常化、つまり利上げの時期となった。9月のFOMCでの利上げ観測があったものの、人民元ショックにより先送りされたとの見方も強かった。しかし、かなり時間を掛けることで、FRBは9月ではなく12月に標準を合わせていた可能性がある。

 10月にはECBのドラギ総裁が年内の追加緩和を示唆し、中国人民銀行が政策金利と預金準備率の引き下げを発表した。あらためて12月に向けて日米欧を中心とした金融政策に焦点が集まった。日銀に関しても4月や10月の決定会合などを中心に一部に追加緩和期待も出ていたが日銀に動きはなかった。

 FOMCの前にECBは追加の緩和策を決定し、預金金利をマイナス0.3%とし債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示した。ところが市場はこれを受けて期待外れとして株も債券も下落した。12月16日のFOMCでは予想通りに0.25%の利上げを決定したが、市場はほぼ織り込み済みとなり影響は限定的となった。さらに日銀は18日の決定会合で異次元緩和の補完措置を決定したが、これを受けて東京株式市場は乱高下した。  12月の日米欧の金融政策の変更もしくは微調整による市場の反応を見ると、追加緩和に期待するだけのような市場から変化が現れているようにも思えた。

 原油価格は下落基調を続け、WTI先物は12月に入り35ドルを割り込んだ。原油価格の下落とそれによる新興国経済への影響なども懸念材料となった

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by nihonkokusai | 2015-12-28 09:19 | 債券市場 | Comments(0)

来年度は長期国債発行額をほぼ日銀が買入れ

 12月24日に政府は来年度予算案を閣議決定した。2016年度予算案は一般会計の総額で96兆7218億円程度と、2015年度の当初予算を3799億円程度上回り、過去最大となる。このうち国債費は1614億円増加し23兆6121億円となる。想定された長期金利は今年度の1.8%から1.6%に引き下げられたが、国債残高の増加により国債費は増加した。歳入では税収今年度当初より3兆円程度増えて、57兆6040億円と1991年度以来の高い水準となった。

 新規国債の発行額は34兆4320億円となり、今年度当初から2兆4310億円の減額となった。これにより歳入全体に占める国債の割合は35.6%程度と今年度当初の38.3%から低下はするが高い水準にあることも確かである。

 借換債が今年度当初から7兆1841億円減額されるが、財投債が2兆5000億円増額されることなどから、来年度の国債総発行額は162兆2028億円となる。このうち入札等で発行されるカレンダーベースの国債発行額は147兆円ちょうどとなった。 今年度当初に比べると5兆6000億円の減額となる。ちなみに来年度の前倒債の発行限度額は48兆円(今年度の32兆円から大幅増額)となっており、前倒債はかなり積み上がっていることも確かである。

 カレンダーベースの年限別の国債発行額をみると、40年債が今年度当初の4000億円が5回から、来年度は4000億円が6回と増額される。30年債は8000億円が12回と変わらず。20年債は今年度の1.2兆円が12回から1.1兆円が12回に減額、10年債は2.4兆円が12回と変わらず、5年債は今年度の2.5兆円12回が2.4兆円12回に減額され、2年債は2.5兆円12回から2.3兆円12回に減額される。1年物短期国債も都合1.2兆円減額となる。10年物物価連動国債と流動性供給入札は変わらずとなる。これらはほぼ国債市場特別参加者会合などでの参加者からの意見を組み入れた格好となった。

 本来であればそれぞれの年限での消化に関して投資家の需要などを考慮して、その影響を考える必要があったが、日銀の異次元緩和による大量の国債買入で、考慮すべきはこの日銀の買入との兼ね合いになるという、何ともおかしな状況にいまはある。

 来年度に日銀が買い入れる国債の金額は、日銀が目指す年間保有額の増加ペースの80兆円と償還分の40兆円の都合約120兆円である。来年度のカレンダーベースの国債発行額は、短期国債の25兆円を除くと122兆円となる。つまり日銀はカレンダーベースでの長期国債発行額をほぼ買い入れるが、かろうじて100%は割り込む格好となる。もちろん追加緩和での国債買入増があると話は異なってくるのだが。

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by nihonkokusai | 2015-12-26 10:05 | 国債 | Comments(0)

日銀の異次元緩和補完措置の内容

 12月18日に決定した日銀の「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置についてあらためて確認してみたい。

 設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポートとして、新たなETF買入れ枠を設定した。この目的のひとつは、2016年4月より開始される日銀が金融機関から買入れた株式の市場売却の影響を緩和させるためとなる。ただし従来、2021年9月末としてきた売却完了期限は2026年3月末まで延長させることも加えられており、株式市場に優しい政策となっている。

 新たに年間約3000億円の枠を設け、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れる。当初はJPX日経400に連動するETFを買入対象とするとある。いまのところ「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFはないことで、その組成を待っている形になる。しかし、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の「株」を買うことで、設備投資や雇用の拡大にどのように繋がるものであるのか。日銀はさらに成長基盤強化支援資金供給の拡充として成長基盤強化支援資金供給における適格投融資として、現在の18項目に「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」を追加した。こちらは理解できる。だからこの政策決定は全員一致だが、前者のETFに関しては6対3と3名の反対者がいることからも、ETFの買入増額はやや無理矢理な理由付けのようにも思われる。

 そして「量的・質的金融緩和」のもとでの長期国債買入れに伴って、金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入する。

 これは日銀が大量に買い込むから、このような事態が発生してしまったはずである。さらにこの措置は、長期国債買入れの平均残存期間の長期化とともに、日銀による買入可能な国債の金額を増加させることになる。行適格担保の拡充は全員一致、平均残存期間の長期化は6対3となっている。

 適格担保の拡大により、日銀が買い入れる国債の金額の余地が拡がることになる(現在の日銀が受け入れている担保は約81兆円で、うち約44兆円が国債)。日銀は現在の資産買入れ方針のもとで、2016年中のグロスベースでの国債買入れ額は、保有国債の償還額の増加により、2015年中の約110兆円から約120兆円に増大する見込みとしているが、これは償還分の40兆円が年間保有額の増加ペースの80兆円に加わるためである。この措置はさらなる拡大(追加緩和?)に耐えうるようにしたというよりも、来年度は現状のままでも毎月10兆円ベースで買入を行わなければならず、そのための対応といえる。

 このように今回の量的・質的金融緩和の補完措置はあくまで技術的な対応のはずである。それにも関わらず、資産の買入れになどについて対しては3名の反対者が出ているのはなぜなのか。この措置を、このタイミングで出す必要があったのか。来年度の国債発行計画に合わせた面もあったのかもしれないが、FRBの利上げを睨んでECBが追加緩和を決定したように、日銀は市場がもしかすると追加緩和と受け取ってくれるような技術的な政策変更を行ったという可能性もないとは言えない。しかし、市場ではこれを追加緩和と思ったけど、よく見たらそうではないのか、といった反応を見せた。12月3日のECBの追加緩和とこの日銀の措置による金融市場の反応は、追加緩和に対する市場の反応度合いが微妙に変化していることが伺える。これはECBの踏み込みが足りなかったからといった理由からではない。仮にもっと踏み込めば、これ以上の追加緩和はさらに困難といった反応を見せた可能性もある。これは日銀についても同様であろう。それだけ、FRBの正常化には意味があったともいえる。

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by nihonkokusai | 2015-12-25 09:44 | 日銀 | Comments(0)

月別国債売買高が約10年ぶりの低水準に

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(日本証券業協会のサイトのデータより)

 12月20日に日本証券業協会(JSDA)は11月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

11月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 8377(-4283、1429、11559)
地方銀行 -3904(-1568、-1535、754)
信託銀行 1309(-697、-2151、4531)
農林系金融機関 -2417(-1722、-38、10)
第二地銀協加盟行 -1397(-75、-966、15)
信用金庫 -1732(-138、322、49)
その他金融機関 -1628(-388、-57、-259)
生保・損保 -2202(-2249、277、188)
投資信託 -886(-618、339、-127)
官公庁共済組合 -260(118、-171、-24)
事業法人 -1634(-32、-7、-1200)
その他法人 -36(-188、224、501)
外国人 -18004(4682、-5655、-16856)
個人 319(0、47、8)
その他 38683(6119、8905、26349)
債券ディーラー 522(110、24、366)

 都銀は3か月連続での売り越しとなった。金額は8377億円の売り越しと10月の1兆7094億円の売り越しからは売越額は減少。同時に公表された国債投資家別売買高でみると、都銀は超長期債を4283億円買い越していたが、長期債を1429億円売り越し、中期債を1兆1559億円売り越していた。2年もマイナス金利となっていた状態で中期債を大きく売り越して、利回りの比較的高い超長期債を買い越して、デュレーション(平均残存年数)を長期化したようである。

 11月も「その他」が3兆8683億円もの売り越しとなっていた。超長期債を6119億円、長期債を8905億円、中期債を2兆6349億円と万遍なく売り越しとなっていた。引き続き、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の動きであろうか。さらに信託銀行も1309億円の売り越しとなった。

 これらに対して外国人は、11月も1兆8004億円もの買い越しとなった。10月は3兆193億円の買い越し。外国人は17か月連続の買い越しとなる。ただし、超長期債は4682億円売り越していた。長期債は5655億円の買い越し、中期債は1兆6856億円の買い越し。

 超長期債だけでみると生保が2249億円買い越しており、都銀と生保の買い越しに対し、外国人とその他の売り越しとの構図となっていた。

 11月の債券市場も、債券先物は148円台半ば、10年債利回りは0.3%近辺での膠着相場が続いていた。国債投資家別売買高(一覧)をもとに、国債全体合計の売りと買いを合算して比較したところ、2015年11月の国債売買高は2004年4月以降の統計で、2005年12月以来の低い数字となっていた。今後はこの売買高についても注意する必要がある。

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by nihonkokusai | 2015-12-23 11:13 | 国債 | Comments(0)

金融政策を理解する上で大事なこと

 日銀は学生向けコンテスト「第11回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~」入賞論文と審査員の講評および佳作論文の要旨をサイトで公開いている。このなかで優秀賞・特別賞を受賞した成城大学社会イノベーション学部の「日銀ナビゲーター」というのが個人的に興味深いものであった。その内容は日銀サイトで読んでいただくとして、この論文にある(図表)のなかにあった「学生にとって銀講演でわかりにくい点」というのが面白い。

 対象講演は、2015年5月15日の「量的・質的金融緩和の2年」と題する読売国際経済懇話会における黒田総裁の講演であった。

 大学生にとって理解できない用語が含まれているとして、「消費者マインド」、「レジームシフト」、「量的・質的金融緩和」、「イールドカーブ」、「ETF」、「J-REIT」が例として挙げられていた。

 「イールドカーブ」、「ETF」、「J-REIT」などについては、金融市場での専門用語であり、ある程度の株や債券の基礎知識を得てから調べれば理解はできようが、大学生に限らず一般常識に含まれるものではないことは確かである。「消費者マインド」はさておき、「レジームシフト」や「量的・質的金融緩和」あたりになると日銀の認識と市場参加者のギャップも存在しており、何がレジームシフトとなり、量的・質的金融緩和の効果が生まれるシステムの理解は大学生だけでなく、金融市場の参加者も理解は深まっていないと言うか、日銀との温度差も伺える。

 金融・経済界では常識でも大学生には通じない金融メカニズムがあるとして、「名目値と実質値の関係」、「予想物価の役割」、「金融政策がイールドカーブに及ぼす影響」、「日本銀行の大量の国債買入れによって長期金利が低下するメカニズム」、が挙げられている。このなかでは特に「予想物価の役割」については、現在の日銀では常識でも物価には通じない金融メカニズムではないかという気もする。

 そして、数値に不慣れで評価がすんなり理解できないものの例として、「インフレのターゲットがなぜ2%なのか」、「原油安の消費者物価への影響はどの程度重要なのか」。「需給ギャップがどの程度大きいとデフレに影響するか」が挙げられていた。

 この論文そのものは、日銀の金融政策の理解を助けるため、大学生による「日銀ナビゲーター」という存在を作ってみてはどうかという提案である。日銀の金融政策ばかりではなく、金融全般の知識向上のため、つまり「金融リテラシー」の向上を図るためにも興味深い提案であると思う。

 ただし、このような存在にはひとつだけ注意も必要である。例えば金融政策に関して、ただ日銀の説明を理解するというのではなく、金融政策のあり方そのものを個々に考えることも大事であるという点である。私のように現在の日銀の金融政策に関して、かなり疑問を抱いている人間もいるということも知ってほしい。

 12月18日に日銀は「金融緩和の補完措置」というのを決定している。これは何のために行ったのか。もちろん日銀はその説明をしているが、このタイミングで何故行う必要があったのかを考えるとその説明には別の要因が存在する可能性もある。この決定には3名の反対者がいるが、技術的な変更のはずなのに何故、反対したのか。

 18日の東京株式市場は大きく乱高下したが、それは何故なのか。これは大学生に説明するにはかなり難しい面もあろうが、ただ数字だけを見て分析するのではなく、金融政策は政策と呼ばれるだけに何かしらの目的も当然存在する。その市場での反応に対してはどのように理解すべきなのか。このあたりを想像することも日銀やその金融政策を理解する上では重要になる。それにはある程度の生きた金融知識を身につけておく必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-12-22 09:25 | 日銀 | Comments(0)

日本のマイナス金利の源泉

 ユーロ圏におけるマイナス金利については、ドイツ国債などは安全資産として買い進まれた面もあるが、ECBの政策金利の下限であるところの預金ファシリティ金利がマイナスになっていることが大きな要因となっている。

 ユーロ圏で民間金融機関が資金の置き場として、ECBの翌日物預金となる預金ファシリティを利用している。ユーロ圏の金融機関にとって、所用準備額を超える資金については、付利がない超過準備として中央銀行の当座預金に預けておくより、利子が付く預金ファシリティを利用することになる。ところがこの預金ファシリティの金利がマイナスとなってしまったことで、資金が少しでも利子のつく長めの期間の国債や他の金融商品に向かうことになる。

 日銀は当座預金の超過準備にかかる利子についてはプラス0.1%に据え置いている。これは金融機関の資金を当座預金に寝かしてもらえないと、マネタリーベースの目標が達成できないためである。日銀がECBのようなマイナス金利政策を取ってないのはこのためである。さらに黒田総裁は中短期の円債の金利がマイナスになっていることに対し、そのように誘導しているわけではないと発言している。

 ユーロ圏の国債はECBが預金ファシリティの金利までマイナス金利で国債を購入しており、このためマイナス金利が維持されている面もある。これに対して国内の中短期の国債の金利がマイナスとなっているのは、実勢金利であれば日銀がマイナスでも国債を買い入れていることも要因である。業者はマイナス金利でも国債を入札するといったことも可能となっている。しかし、日銀が政策としてマイナス金利を発生させているわけではない。

 国内のマイナス金利の発生原因は、為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金で、マイナス金利の国債でも運用出来ている。つまり、ベーシススワップ取引によりつくプレミアム分が利子相当となり、ドルを円に買えてマイナス金利の国債を購入してもお釣りがくる勘定となる。このため、ある程度のマイナス金利でも収益はプラスとなる。これによりマイナスが発生している。

 この背景には旺盛な「国内」機関投資家のドル需要がある。低金利の国内債券から海外の債券に運用の一部に切り替えるなどしており、その需要があってスワップ等を使って円をドルに換える際に、相手側にいる外銀はその円資金をマイナスでも運用できる。つまり、日本のマイナス金利の源泉にあるのは国内投資家であるといえる。

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by nihonkokusai | 2015-12-21 10:04 | 債券市場 | Comments(0)

9月末の国債保有残高は日銀が首位に

 12月17日に日銀は2015年7~9月期の資金循環統計(速報)を発表した。これによると9月末の家計の金融資産は1683兆8135億円と6月末の1717億5387億円(確報)を下回った。前回を下回るのは1年半ぶりとなる。

 資金循環統計を基に2015年9月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、下記は国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。

 9月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は898兆4759億円となった。国庫短期証券を加えると9月末の国債の残高は約1040兆円となる。日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。

日本銀行 268兆2810億円、29.9% 民間預金取扱機関 245兆7416億円、27.4% 民間の保険・年金 232兆6832億円、25.9% 公的年金 52兆3086億円、5.8% 海外 45兆7410億円、5.1% 投信など金融仲介機関 26兆4096億円、2.9% 家計 14兆4707億円、1.6% 財政融資資金 17億円、0.0% その他 12兆8385億円、1.4%

 6月末に比べて、大きく残高が増加していたのは日銀である。6月末比で20兆円を超える増加となっている。上記の区分では初めて日銀の残高が首位になった。

 民間預金取扱機関のうち国内銀行(都銀・地銀)が4兆程度の減少、中小企業金融機関等が10兆円程度の減少となっていた。今回もゆうちょ銀行の減少分が大きかったのではないかとみられる。公的年金は小幅減少となった。

 海外投資家は4兆円程度の増加となった。海外投資家の長期国債のシェアは5.1%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.8%のシェアとなっている。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは30.3%となっており、国債全体の3割を越す保有となった。

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by nihonkokusai | 2015-12-20 11:35 | 国債 | Comments(0)
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