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祝、債券先物上場30周年

 10月19日は日本初の金融先物取引である長期国債先物取引が東京証券取引所に上場されて、ちょうど30年目となる。現在、長期国債先物(債券先物)は大証と東証デリバティブ市場統合に伴い大阪取引所にて取引されている。

 10月16日には30周年記念レセプションが東証にて開催された。私も参加させていただいたが、100名以上の市場関係者が集い盛況な会となった。最初に日本取引所グループの清田瞭CEOのご挨拶があった。清田氏は債券先物の上場の際は大和証券債券部の課長だったそうであり、まさに直接関係者であった。そして、そのあとゲストスピーカーとして財務省の理財局審議官である市川健太氏のスピーチが続いた。

 清田氏と市川氏からは債券先物の上場に関わる話が出ていた。30年前になぜ東証に債券先物が上場したのか、との理由は私も以前に書かせていただいたが、それがなぜ世界的にも有数な金融先物取引のひとつとなったのか、その理由を簡単に探ってみたい。

 債券先物が誕生した1985年はいろいろなタイミングが重なった。財務省の市川氏が指摘されていたが、赤字国債の償還という問題も絡んでいた。1975年度に石油ショック後の影響により巨額の税収不足が予測され、1975年に初めて発行された10年特例国債(赤字国債)が1985年に償還を迎えることになった。しかし、厳しい財政事情のもとで現金償還するとなれば極端な歳出カットが求められることになるため、特例国債についても借換債の発行を行わざるを得なくなった。建設国債だけでなく赤字国債も60年償還ルールが適用され、借換債が発行されたことも、国債市場の厚みを増すことになった。

 債券のディーリング業務とは既発債を売買する業務であり、それまでは証券会社にしか認められていなかった。国債を大量に保有している都銀などが、国債の発行量の増加もあり、ディーリング業務の認可を銀行が求めていたのである。1985年6月に金融機関の債券のフルディーリングが開始された。銀行が国債市場に本格的に登場することで公社債の売買高は急増し、1985年6月の売買高は約35兆円となり、5月の13兆6千億円に比べて、3倍近くに膨れ上がった。このあたりも見越して、国債のヘッジ商品となる国債先物の上場にむけた準備が進められており、1985年10月19日に長期国債先物が上場したのである。

 1985年のプラザ合意やそれにともなう日銀の金融政策なども絡んで、外為市場、株式市場とともに債券市場もディーリング時代を迎え、債券市場では債券先物と10年の指標銘柄を中心に売買高が急速に拡大することになる。流動性が非常に高い債券先物であったが、日計りを含むディーリングを中心に使われることとなり、中心限月に売買が集中するという、ある意味独特の慣習もこうして出来てきた。一時は世界の金融先物のなかでトップクラスの流動性を誇っていたのである。

 債券のディーリング相場は1989年あたりで終了する。1988年からは債券先物でシステム売買が開始され、それまでの人の手を介した市場からコンピュータで取引を行うようになった。これがどれだけ影響したかはわからないが、やはり相場は人の手を介したほうがやりやすかった面もあったのではないかと個人的には思っている。

 今回、30周年を記念して「国債先物・オプション取引市場の歩み」が公開されており、こちらもたいへん重要な参考資料となるため、ご興味ある方は下記の日本取引所グループのサイトで確認していただきたいと思う。

国債先物取引市場開設30周年記念ウェブサイト

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by nihonkokusai | 2015-10-20 10:01 | 債券市場 | Comments(0)

新日銀ネットが稼働する意味

 経済の取引には常にお金の受払いや、証券などの受渡しなどが絡んでくる。これは「決済」と呼ばれ、決済の際に受け払いされる現金や預金などは「決済手段」と呼ばれる。日銀はこの決済システムでも大きな役割を担っている。

 決済手段には、通常、現金や金融機関の預金などが使われる。このため日銀にある金融機関の当座預金口座が決済手段として利用されている。日銀は国債取引に伴う受渡しを帳簿上の口座振替などによって処理するといったように国債の決済業務も行っている。

 金融機関同士が行う資金取引の決済や国債など証券取引の代金の決済や、民間決済システムの最終的な決済に日銀の当座預金での振替が利用されている。日銀が金融機関との間で行っているオペレーションや貸出し、国庫金の受払い、国債の発行・償還に伴う資金の受払いなどについても、日銀の当座預金を介して決済が行われている。

 日銀はこうした資金や国債の決済が安全かつ効率的に行われるようにするために、コンピュータ・ネットワークシステムを構築している。これが「日銀ネット」とも呼ばれる「日本銀行金融ネットワークシステム」である。

 日銀の本支店と参加金融機関は、日銀電算センターと通信回線で接続されており、全銀システム(全国銀行データ通信システム)や、手形交換制度、外国為替円決済制度などで決済処理された最終的な決済を行っている。証券決済システムとして国債の決済などもこれを通じて行っている。国債の入札なども日銀ネットの端末が使われている。

 日銀ネットは、日銀と金融機関との間の資金決済をオンラインで処理するネットワークシステムで、日本の金融取引における重要なライフラインとなっている。このため、大阪に電算センターのバックアップ機能を備えるなどかなり高度なセキュリティ対策も講じられている。

 日銀は1988年に稼働した日銀ネットの老朽化に伴い新日銀ネットの構築に向けて、対応を進めていた。最新の情報処理技術の採用や変化に対する高い柔軟性、高いアクセス利便性を基本コンセプトとして、新日銀ネットを構築したのである。新日銀ネットは第一段階として金融調節(オペ)と国債の入札関連業務および国債系オペ等の受渡関連業務が2014年1月から稼働しており、第1段階対象業務以外の業務は2015年10月13日から稼働したのである。

 現行の日銀ネットは当座預金取引を対象にしたシステム(当預系)と、国債の決済を対象にしたシステム(国債系)があり、稼働時間は当預系が午前9時から午後7時、国債系が午前9時から午後4時半となっている。13日からは当預系、国債系ともに午前8時半から午後7時までに稼働時間が拡大される。さらに、来年2月には午後9時まで延長される見通しとなっている。これにより日本企業の海外進出に伴う国際的な資金決済や、邦銀の日本国債を担保とした外貨調達などの利便性向上に加え、海外投資家による日本国債保有を通じた円の国際化も促したいそうである(ロイターの記事より一部引用)。

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by nihonkokusai | 2015-10-18 10:32 | 日銀 | Comments(0)

朝ドラに取り上げられた先物発祥の地

 NHKの朝の連続ドラマ「あさが来た」の10月15日の放映のなかで、大阪堂島の米の先物取引が紹介されていたそうである。このドラマは見ているのだが、その肝心の場面の時間にバタバタしていて見逃してしまっていた。そこであらためて、大阪堂島の米の先物取引についてご紹介したい。

 この堂島の米の先物取引は現在の金融デリバティブの原型となっているものである。日本での最初の金融先物はいまから30年前の1985年10月19日に東証に上場された長期国債先物であるが、それはシカゴの金融先物がモデルとなっていた。そのシカゴの先物の原型が堂島の米の先物取引なのである。

 大坂には諸藩が設けた蔵屋敷に年貢米が送られる。米の売却は蔵屋敷での競争入札で行う。落札した業者は代金の一分を支払い、蔵屋敷発行の米切手(米手形)を受け取り、一定期日以内に米切手と残銀を持参して蔵屋敷から米を受け取る仕組みとなっていた。この取引が時代とともに少しずつ変わり、米切手が転売されていくようになり、米切手そのものが米現物の需給に関係なく売買の対象となっていった。

 大坂の北浜に、淀屋の米市と呼ばれる米市場があった。のちに淀屋市が堂島に移る。この堂島の米市場で売買されていたのは落札された米切手であった。米の売買に際し、現物の代わりに1枚10石単位の米切手という倉荷証券が授受された。米切手は米の保管証明書から一定量の米に対する請求権を表した商品切手に変わり有価証券化して行く。つまり堂島の米市場は有価証券取引が行われた証券市場でもあったのである。

 堂島米市場では着地取引として米の廻着を待たずに米切手が先売りされるようになった。米切手の保有している商人は米の価格変動リスクにさらされることとなり、この米価の価格変動リスクのヘッジを目的として「売買つなぎ商い」という先物取引が考案されたのである。この「つなぎ商い」が1730年に徳川幕府により公認され、堂島米会所が成立した。

 堂島米会所では、米切手を売買するいわゆる現物取引の「正米商い」に加えて、米の先物取引である「帳合米商い」が行われた。帳合米商いとは1年を春夏冬の三期にわけてそれぞれ4月28日、10月9日、12月24日を精算日とし、各期に筑前・広島・中国・加賀米などのうちから1つを建物(標準米)として売買し、反対売買による差金決済を原則とする取引である。 正米商いと帳合米商いともに消合場と呼ばれた株仲間組織によるしっかりとした清算機関(クリアリングハウス)が存在していた。不正を行った株仲間を取引停止にするといった処置も講じられ、市場秩序が維持されていたのである。こうして帳合米商いは、現在の先物取引と同様にヘッジ目的だけでなく投機目的でも積極的に商人が参加し、世界に先駆けた先物市場が発展していったのである。

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by nihonkokusai | 2015-10-17 08:49 | 債券市場 | Comments(0)

FRB理事による利上げ慎重発言の真意

 FOMCの投票権のあるメンバーは理事会から7名の理事全員と、地区連銀から5名の地区連邦銀行総裁の合計12名によって構成される。現在のFRB理事の布陣は、ジャネット・イエレン議長、スタンレー・フィッシャー副議長、ダニエル・タルーロ理事、ジェローム・パウエル理事、ラエル・ブレイナード理事の5名である。FRBの理事会は本来、7人の理事で構成されるが現在空席が2つある。

 地区連銀の投票権のあるメンバーについては、ニューヨーク連銀だけが理事と同様に常に投票権を有するが、ほかの連銀は年ごとに交代制となる。2015年の連銀メンバーは、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、ラッカー・リッチモンド連銀総裁、ロックハート・アトランタ連銀総裁、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁となる。

 ブレイナード理事は10月12日に、世界経済の減速や中国での混乱など国際リスクが米経済の足かせとならないことが明確になるまでFRBは利上げを見送るべきとの考えを示した。また、タルーロ理事は10月13日にCNBCとのインタビューで、年内利上げの可能性について問われ、「米経済の先行きに関する私の予想を踏まえると、利上げが適切になるとは考えていない」と答えた。

 イエレン議長は9月24日の講演において、2015年中のいずれかの時点での利上げが適切になるとの見解を示し、FOMCメンバーの中で年内利上げを支持するグループの中には「私自身を含む」と明言していた。

 フィッシャー副議長は10月11日、米経済が年内の利上げ実施に値する十分な力強さを備えている可能性があるとの認識を示した。ただし、利上げの正確なタイミングを決定する上で当局は国内の雇用の伸び鈍化や国際情勢を注視しているとも述べている。

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は、世界経済の成長鈍化によってインフレ見通しが損なわれない限り、米金融当局は年内に利上げを実施するとの見通しを示した。さらに15日にはFRBの市場との対話は十分ではなかったとの認識を示しながらも、FRB当局者の間で意見が割れているとの見方を否定。FRB内に意見の対立があるとの見方は「誇張されている」とし、「われわれは皆、まったく同じ認識を持っている」と述べていた(ロイター)。

 FOMCの金融政策を決めるのは当然、多数決ではあるが、政策変更時にはいわゆる執行部がその方向性を決めているとも言える。ただし、イングランド銀行では議長が少数派に回ることもある。しかし、FOMCやECB理事会、そして日銀の金融政策決定会合では議長を中心とした執行部の意向により方向性が決められていると言ってもおかしくはない。

 つまりFOMCで利上げという大きな政策変更を決定する際には、イエレン議長とフィッシャー副議長、ダドリー総裁あたりが中心となり、そこに他の理事も含めて、通常であれば一枚岩となって政策が決定される。これで数の上では、他の連銀総裁が全員反対しても賛成多数は維持される。つまり通常は理事もイエレン議長の意向をかなり意識しているはずであるが、年内利上げという観点からは、少し意見に食い違いが生じているように見える。このため、ダドリー総裁はあらためて一枚岩であることを強調せざるを得なかったようにも思われる。

 これは年内利上げの可能性は維持しているものの、海外動向にも配慮して、かなり慎重に行うであろうことを示唆しているのか。それとも年内利上げに理事からの反対者が出る可能性を示しているのか。少なくとも10月のFOMCでの利上げ決定の可能性はないとみられるが、本命とされる12月のFOMCでの利上げの可能性そのものが本当に後退したのか。個人的には当初描いたと見られるスケジュールに沿って淡々と利上げを進めるとの見方に変化はない。その際にはブレイナード理事とタルーロ理事も利上げへの賛成票を投じると思われる。それでも今回の二人の理事の発言はかなり慎重に捉えておく必要もあろう。

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by nihonkokusai | 2015-10-16 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)

ヘッドラインリスクの変化

 ヘッドラインリスクとは、いわゆるフラッシュニュースで相場が大きく動くリスクである。そのフラッシュニュースとは何か。これは金融機関のディーリングルームにいるとわかることではあるが、いわゆるベンダーと呼ばれるニュースの配信会社から出される速報記事のことである。

 金融機関で株や債券、外為などを売買している人たちや、いわゆる個人のデイトレーダーなどは、それぞれ売買をしている金融商品の値動きを追うとともに、関連するニュースをディスプレーを通じてチェックしている。QUICKやロイター、ブルームバーグなどを中心として、随時、金融を中心としたニュースが配信され、特に重要とみられる速報は色を変えて、フラッシュニュースとして報じられており、それを見て相場が大きく動くことも多い。

 このフラッシュニュースには、米国の雇用統計の数値など、市場が注目している経済指標などに加え、日銀の金融政策決定会合の結果なども含まれる。経済指標など発表時間が決まっているものもあれば、特に時間が決まっていないものもある。日銀の金融政策決定会合は特に終了時間が決まっていないため、記事が出る時間によっては思惑的な動きが起きることもある。

 突然出てくる大きな記事もある。大きな事故や事件であったり、自然災害などのニュース速報も含まれる。市場には直接関係なさそうなものもあれば、普通ならば注目もされないものがフラッシュニュースとして出てくることもある。たとえばギリシャの総選挙の結果など、過去にははニュースになるかならないかのものであったものが、今年の総選挙は全世界から注目され、その結果はまさにフラッシュニュースとなって世界を駆け巡っていた。

 このヘッドラインリスクも時代とともに変化してきているようである。特にコロケーションと呼ばれるサービスを利用した高速取引の比率が東京証券取引所で全体の半分を占めるようになり、いわゆるコンピュータがヘッドラインの内容を瞬時に判断するようなシステムも出来ている。もちろん相場の注目材料は刻々変化することで、そのあたりをどう加味されているのかは興味深いが、少なくとも金融政策の決定内容や、雇用統計の数字については、事前の予想と結果の乖離を診断してトレードをするようなシステムがあってもおかしくはない。

 ただし、当然ながら日本のニュースは日本語の方が早い。さらにそのニュースの解釈は、海外投資家と国内投資家では受け取り方に違いがあることもある。特に日本の債券市場では、債券村と表現されることもあり、村の掟みたいなものも存在する。たとえばいまだに国債の取引が単利で行われているように。そんななか、ヘッドラインを分析して債券先物などを仕掛けることはなかなか難しいようである。そもそも債券先物はほとんど値動きもないことも要因であろう。債券はさておき、HFTのシェアが高まることで、株式市場などでは、このヘッドラインリスクにも変化が生じていることは確かではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-15 09:41 | 債券市場 | Comments(0)

ゴルゴ13の日銀会合の描写に違和感

 日本の債券市場関係者も注目していたとされるゴルゴ13の後編がビッグコミックの最新刊に掲載された。日本国債の暴落場面は、残念ながらほんのわずかであった。取材時の状況からみると本来はもう少し具体的なマーケットの様子があってもおかしくはなかったはずだが、ストーリーの流れからはその部分は省略されてしまったようである。

 標的は予想したとおりに元スナイパーであり、大手債券ファンドの女性ファンドマネージャーであった。しかし、麻生さんに似た財務大臣は依頼はするが断られている。このあたりの状況について気になる方はぜひゴルゴ13を読んでいただきたいが、別なところで気になる描写があった。

 ゴルゴ13の後編が収められたビッグコミックの発売日は10月10日であり、その数日前に日銀の金融政策決定会合が開催されていた。ゴルゴ13において、やはり金融政策決定会合が開催されている場面があり、日銀総裁が「追加の緩和策を議論したい」と発言していたのである。10月7日の本物の金融政策決定会合では一部に追加緩和期待があったことで、さすがゴルゴ13である。しかもゴルゴ13に描かれていたように結果としては現状維持であった。

 このシーンで気になったのは、ゴルゴ13上では日銀総裁の提案について否定され、その提案を引っ込める格好となっていたことである。しかも、これは議事録に残さないとしていた点である。

 もしかするとゴルゴ13での「議事録」というのは「議事要旨」の間違いであった可能性がある。「先ほどの議論を公表すれば、大きな混乱を招く恐れがあるため」との日銀総裁のセリフもあり、これは約1か月後に公表される議事要旨であったのかもしれない。日銀の金融政策決定会合の議事録の公表は10年後であり、10年後に混乱を招くことは考えづらい。

 さらに現在の黒田総裁の決定会合でのスタイルは多少、過去と変わった可能性はあるものの、日銀の金融政策決定会合では、いきなり議長である総裁が金融政策の変更のための議論をしたいと申し出ることはないはずである。

 もちろん政策変更時にはそれなりの事前準備もしているはずであり、多数決で決めるため、その票読みも重要となる。ただし、イングランド銀行などと異なり、日銀では議長提案が否決されることは考えづらい。日銀では、先に議長以外の全員の意見が出されて、ある程度の票が読めた段階で、取りまとめというかたちで議長提案がなされるためである。政策変更時にはこのあたりで阿吽の呼吸が働くようである。つまり、議長提案の前に副総裁などを中心として。ある程度の流れが形成される。もし賛成多数で可決されるとの読みがないと議長提案はなされないかたちになっている。それでも過去には4対4、5対4と、最終的には議長の一票でかろうじて決定されてケースもあったことは確かではあるが。

 本来であれば、ゴルゴ13の国債暴落の状況を解説するつもりが、そのシーンがほとんどなかったため、今回は日銀の金融政策決定会合のシーン描写で「重箱の隅をつつく」格好となってしまった。結果としては、10月7日の日銀金融政策決定会合でも、賛成多数で現状維持となったが、ゴルゴ13に描かれていたように議事要旨に残さないかたちで、追加緩和が議論されたことは考えづらい。もちろんまったくなかったと断じるわけにはいかないが、そのあたりは10月13日に公表された9月の会合の議事要旨あたりからも行間を探ってみる必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2015-10-14 09:41 | 日銀 | Comments(0)

日本初の金融先物(債券先物)が誕生した理由

 2015年10月19日で長期国債先物(通称、債券先物)は30周年を迎える。今回は30周年を記念して、1985年10月19日に日本初となる金融先物の債券先物が東京証券取引所に上場することになったのか。その経緯を振り返ってみたい。

 1985年6月に銀行に対して国債の「フルディーリング」が認められた。銀行が大量に保有する国債を市場で自由に売り買いできるようになったのである。

 この背景には国債の大量発行があった(現在とはまったく規模は異なるが)。ところが、当時はまだレポ取引といった債券の貸借取引が整備されておらず、国債の価格変動リスクをヘッジする手段がなかった。金融市場の国際化や自由化の進展もあり、そこで米国市場などで活発に利用されていた先物取引を、まずは債券市場で導入しようとの機運が高まったのである。

 1984年の証券取引審議会公社債特別部会で、市場創設に向けての具体的な検討が行われ、「債券先物市場の創設について」と題する報告書が大蔵大臣に提出された。先物の仕組みとして対象を長期国債とすること、標準物方式が望ましいこと、証券取引所において行うこと、そしてディーリング認可金融機関(つまり銀行)を直接参加させること、当面は機関投資家中心の市場とすること、証拠金・値洗い・制限値幅等の投資家保護ための制度を設けることなどが提言された(東証『債券先物取引市場10年間のあゆみ』より)。

 こうして、債券先物の参加者としては、東証会員の証券会社だけではなく、国債を大量に保有している銀行の参入が、特別会員という資格で認められた。国債の自己売買が認められている金融機関であるディーリング認可行と、非会員証券会社のなかで一定の資格条件を満たしたものについては「特別会員」として債券先物の取引所取引ができるようになったのである。

 先物の対象(標準物)となる債券には、発行主体の支払能力が高く、債務不履行リスクが低く、発行量や残存が多く、現物の取引が活発に行われ、現物市場で価格情報が広く継続的に提供されているなどの性質が求められた。これに合致するのは国債、なかでも当時最も発行量や残存が多かった10年の長期国債であった。

 こうして1985年10月19日に誕生した債券先物であったが、上場直後に相場は急落した。その要因は、前月9月22日にニューヨークのプラザホテルで秘密裏に開かれた会議にあった。G5と呼ばれた国(日本、米国、イギリス、フランス、西ドイツ)の蔵相・中央銀行総裁が集まり、米国の貿易赤字と財政赤字の問題(双子の赤字)を是正するため、ドルの引き下げに合意したのだ。いわゆる「プラザ合意」である。これを受けて日銀が短期金利の高め誘導を行ったことで、上場したばかりの債券先物は急落したのである。

 1985年にプラザ合意があり、債券先物が東証に上場したのは単なる偶然であったのであろうか。この1985年から債券は本格的なディーリング時代を迎え、外為市場では円高が進行し、株式市場もバブルに向けて突っ走ることになる。日本の金融市場が活況を呈するようになったのは、この1985年がひとつのきっかけとなっている。その意味でプラザ合意とともに債券先物の上場は、日本の金融市場にとって象徴的な出来事であったといえる。それから30年が経過し、果たして日本の金融市場はどれだけ進歩してきたといえるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-13 10:15 | 債券市場 | Comments(0)

日銀総裁が付利引き下げを否定した理由

 日銀の黒田総裁は8日の金融政策決定会合後の会見において、付利の引き下げに関する記者からの質問に対して、次のような回答をした。

 「付利の引き下げについては検討しておりませんし、おっしゃるように近い将来考えが変わる可能性もないと思っています」(日銀の総裁会見要旨より引用)

 この付利というのは、日銀の当座預金の超過準備に付けられた利子のことである。この総裁の発言が意味するところについて、あらためて考えてみたい。

 日銀は銀行としての預金業務を行っており、金融機関、国、そして海外の中央銀行、国際機関などからの当座預金を受入れている。日銀の当座預金は決済手段として、現金通貨の支払準備として、さらに準備預金制度における準備預金として機能している。

 金融機関に対して受け入れている預金等の一定比率(預金準備率、法定準備率、準備率)以上の金額を無利子で日銀に預け入れることを義務づけている準備預金制度でも日銀の当座預金が使われている。

 金融機関は預金者保護の立場から常に一定の余裕金を保有し、顧客からの預金引出しに備える必要がある。こうした余裕金のことを「準備預金」と呼んでいる。この金融機関が日銀に預け入れなければいけない最低金額を法定準備預金額あるいは所要準備額と呼ぶ。2008年11月からは当座預金のうち、準備預金制度に基づく所要準備を超える金額(超過準備)に利子(付利)をつけるようになった(補完当座預金制度)。

 昔の教科書には日銀の金融政策の手段として、公定歩合政策、公開市場操作、支払準備率操作(預金準備率操作)という3つがあると書かれていた。準備預金制度は1957年に施行された「準備預金制度に関する法律」により、金融政策の手段として導入された。この準備率を政策的に変動させることによって、金融機関の支払準備を直接的に増減させ、金融機関の資金の運用などにも変化を与えることで、間接的ながら景気や物価にも影響を与えようとする手段である。しかし、日本においては預金準備率の変更に関しては、過去にはほとんど金融政策の手段として用いられることはなかった。

 現在の日銀の金融政策は、公定歩合から無担保コール翌日物の金利を政策金利として、公開市場操作(オペレーション)を使って上げ下げする政策へと移った。そして、政策金利が実質ゼロとなると、量的緩和政策や量的・質的緩和政策が打ち出され、金融政策の誘導目標が政策金利から当座預金やマネタリーベースという量に変更されたのである。

 しかし、その量についても限界が見えつつあるなか、金融政策手段として預金準備率ではなく、超過準備の付利を操作する手段が指摘されていたのである。

 日銀の政策金利は無担保コール翌日物の金利ではあるが、厳密には政策金利は3つ存在している。基準貸し出し金利(ロンバート・レート)、政策金利である無担保コール翌日物の金利の誘導目標値、さらに超過準備に付利される金利である。つまり主要政策金利があって、その上限と下限を設定しているのである。現在の日米欧の中央銀行では、このようなコリドー(corridor:回廊とか通路)と呼ばれる政策金利の上限と下限を設けている。つまり政策金利には上限と本来の政策金利と下限の3つが存在している。

 ECBは2014年6月5日のECB政策理事会における追加緩和策の決定において、政策金利であるリファイナンス金利を0.1%引き下げ、0.25%から0.15%に。上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%し、マイナス金利となった。

 このECBの例にもあるように、日銀の当座預金の超過準備の付利もゼロやマイナスにするという追加緩和手段が存在するのではないかというのが、付利引き下げを主張する人たちの考え方となる。

 ところがECBが下限金利をマイナスにできたのは、政策目標を金利のまま維持させていたためである。たしかにECBは今年1月に量的緩和による国債買入を決定した。しかし、誘導目標はあくまで金利であり、量的緩和と言ってはいるが、日銀のように量を直接の金融政策の調節ターゲットとしてはいない。

 日銀がもし付利を引き下げるのであれば、マネタリーベースを増やせば物価が上がる、という前提条件を変える必要がある。マネタリーベースを目標まで引き上げることができるのは、銀行などが付利のある超過準備に資金を置いておくためである。もし付利がなくなれば当然、超過準備分は減少し、マネタリーベースの目標を達成することは困難となってしまう。このため日銀総裁は付利の引き下げについては、検討していないと否定せざるを得ないのである。

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by nihonkokusai | 2015-10-10 10:48 | 日銀 | Comments(2)

GDP600兆円政策と日銀の金融政策

 安倍首相は7日に内閣改造を行い、皇居での認証式を経て第三次安倍改造内閣が発足した。安倍首相は新設した一億総活躍担当大臣に起用した加藤前官房副長官に対し、GDP600兆円などの目標達成に向けて、緊急対策を年内に実施するため「国民会議」を速やかに立ち上げるとともに、今後実行する具体策を盛り込んだ工程表を作成するよう指示した。これに関連して加藤大臣は記者会見で、国民会議について「各大臣のほか、若い方や高齢者、男女、障害のある方、難病の方の意見をきちんと反映できるような方に入ってもらわなければならない」と述たそうである(NHKニュースより一部引用)。

 9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新三本の矢は「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」であり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするとした。当初の三本の矢は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であったが、これは新三本の矢の「強い経済」に集約されているそうであるが、少なくとも「金融政策」という表現が消えていることは確かである。

 国民会議の具体的なメンバーの人選はこれからであろうが、ここに日銀総裁が含まれているのかどうかもわからない。少なくとも今回の加藤大臣の発言のなかには日銀総裁は含まれておらず、名目GDPを600兆円に向けた緊急対策に日銀の金融政策がどの程度関わるのかは不透明である。

 10月7日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が賛成多数が決定された。経済動向の見方も前回から大きな変化はなく、会合後の会見において黒田総裁は景気や物価の基調は改善しているとの認識を示していた。

 とにかく日銀の追加緩和そのものが容易でない。黒田体制になってからの日銀にとり、これまでの延長戦上で量を増やす手段には限界がある。リフレ的な政策から変化させる、つまりターゲットを量から金利にするなり、大胆ではなく小出しにして逐次投入スタイルに変化するなりの必要がある。

 黒田総裁は7日の会見で、日銀の当座預金の超過準備の付利について、引き下げや撤廃については完全否定しており、量から金利、小出しの政策変更は考えづらい。

 仮に追加緩和を行うとして、その効果というか結果に対しても過去のようには受け入れがたい面が出てきている。どのような手段を講ずるにせよ、結果として物価高、というよりも円安の動きが強まることが予想され、これは政府としてはむしろ受け入れがたいのではなかろうか。安倍首相は昨年10月の異次元緩和第二弾決定前に国会等で「家計や中小企業にデメリットが出てきている」と発言していた、ただし、株高ともなったことで、その点については評価していたかもしれないが、その株高効果も一時的となり、外部要因で打ち消された格好となっている。

 日銀の武器庫にはすでに戦える道具はほとんどなくなっているものの、それでもなんとかかき集めて新兵器を構築するかもしれない。しかし、それを使うとしてもタイミングが重視される。景気の先行き警戒はあれど、現在がそのタイミングとは思えない。

 政府と日銀の間に為替政策など含めた亀裂が入っている可能性もあるが、安倍首相がGDP600兆円などの目標達成に向けての政策をいずれ打ち出すのであれば、そこに追加緩和が組み込まれる可能性はありうる。その意味でも10月30日に動かない方が、武器に限度がある日銀にとっても得策となるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-09 09:38 | アベノミクス | Comments(1)

TPP効果と相反する追加緩和

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意した。TPPとはアジア太平洋地域において高い自由化を目標とし,非関税分野や新しい貿易課題を含む包括的な協定である。シンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイの4か国からスタートし、その後アメリカ合衆国、オーストラリア、ペルー、ベトナムも加えた8か国で交渉が開始された。さらにマレーシア、メキシコ、カナダ及び日本が交渉に参加し、12か国で協定にむけた交渉が行われ、かなり難航したものの、10月5日に大筋合意したと発表された。

 TPPの大筋合意を受けて参加12か国は、今後、協定案の内容が法的に矛盾していないか、詳細にチェックして最終案を取りまとめる作業を行う。TPPの協定が発効するためには、各国政府が協定に署名し、その後、各国の議会で批准される必要がある。

 TPPが発効された際の影響については、海外産品の輸入増などによる国内農業への影響も懸念されるが、消費者にとっては恩恵を被ることが多そうである。たとえば米国産の牛肉やコメ、オーストラリアのワインなどが今より安く手に入ったり、海外の渡航先で通話料金が安くなる利点も期待されている(日経新聞)。

 TPPのメリットについて安倍首相は「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれる。世界のバラエティーあふれる商品を安く手にできるだけでなく偽物の商品を買わされて後悔することはなくなっていく」と説明。「海外に旅行したときの電話代も安くなるかもしれない。サイバーの世界を飛び交う個人情報もしっかりと守られるようになる」と強調した(産経新聞)。

 つまりTPPが発行されれば、輸入物価は下がることが予想され、それを安倍首相はメリットとして強調している。政府は物価の上昇のために日銀法改正までちらつかせて、日銀とともに物価目標を掲げた。その上に日銀は異次元緩和まで行ったにもかかわらず、肝心の物価は上がらなかった。それにもかかわらず、安倍首相はここにきてむしろ物価の下落による恩恵をアピールしている。

 政権内の物価や円安に関する認識は、ここにきてアベノミクス登場時から、かなり変化していることは確かであろう。ロイターによると「政府関係者の1人は、政府・与党を取り巻く環境は、追加緩和による円安の進行を嫌う声に包まれている」との観測もある。

 アベノミクスの登場のタイミングで急激な円安と株高が生じたが、その円安も行き過ぎると米国などからの反発とともに、輸入材料価格の高騰などによる中小企業への悪影響や、食品価格の上昇などによる個人消費への影響も意識されている。日銀の黒田総裁は 6月10日に「(実効為替レートで)ここからさらに円安はありそうにない」という発言があり、これはドル円では125円以上の円安は望んでいないことを示唆したのではとの認識が市場で拡がった。

 昨年10月の異次元緩和第二弾の本当の意図はわからないが、円安も意識したであろうことは想像できる。しかし、現在の日銀はさらなる円安要因となりかねない追加緩和には、むしろ慎重とならざるを得ないのではなかろうか。政府としても国民にTPPの恩恵をアピールしたタイミングで、日銀の追加緩和による円安はあまり歓迎しないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-08 09:35 | アベノミクス | Comments(0)
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