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GDP600兆円には物価目標達成が前提

 麻生財務相は25日の閣議後の会見で、安倍首相が新たに打ち出した3本の矢のうち1本目の「強い経済」に、大胆な金融政策や機動的な財政政策、成長戦略という従来の柱は集約されていると述べ、アベノミクス第2ステージでも物価目標2%達成の必要性は変わらないとの認識を示した(ロイター)。

 「強い経済」には金融政策も含まれ、2%の物価目標達成についても旗を降ろしたわけではない。当然と言えば当然の発言ながら、安倍首相の携帯料金の見直しを求める発言や、政府は円安による個人消費などへの負の影響への懸念など、リフレ政策から政府はやや距離を置こうとしているかに思える。このため金融政策という言葉が消えたことで、政府は政策の方向性を微調整しているのではとの思惑が出ても不思議ではない。

 黒田総裁は28日の会見において、安倍政権が打ち出した新3本の矢は2%の物価上昇を前提に600兆円のGDP達成を掲げているとの見解を表明した。これは大胆な金融緩和という表現は消えたものの、物価目標達成を前提にアベノミクス第2ステージが成立するとの考え方を示し、政府と日銀の連携は維持されていることを強調したかにみえる。

 ところが、この600兆円という数字は内閣府が7月に公表した試算(中長期の経済財政に関する試算)に基づいたものである点にも注意が必要となる。実質2%、名目3%以上の経済成長が続けば、2014年度に490.6兆円の名目GDPが、2020年度には594.7兆円に達するとしたものであるが(経済再生ケース)、この試算には政府・日銀の掲げる物価目標が達成されていることも前提条件としてある。つまり、消費者物価指数2%が名目GDP600兆円の前提条件になっていたので、黒田総裁の発言はこれを再確認したものに過ぎない。

 しかし、名目GDP600兆円が一人歩きしてしまうと、これも日銀の金融政策を縛ることになりかねない。実質2%、名目3%以上の経済成長が続くという、かなりハードルの高い条件に加え、現状0.2%でしかない消費者物価指数を2%に引き上げることは容易ではないというか、引き上げる手段そのものがない。もちろん円の信用を失墜させた上での物価上昇は引き起こせるかもしれないが、これこそ現実的ではない。

 現在の政府・日銀にとって、大胆な金融緩和で物価上昇を起こせるとの前提条件を否定することはできないであろう。そうなると追加緩和はさておき、このまま異次元緩和を続けざるを得なくなる事態もありうる。そうなったときには、今度は時間の経過とともに日銀の国債買入がいずれスムーズにいかなくなる懸念が強まる。すでに日銀は国債の年間発行額の9割も買い占めており、ここにきて10年債や30年債のカレントが出合わない日も出てきている。いずれ日銀の国債買入で未達が頻発するようなことになれば、実質的なテーパリングをせざるをえなくなる。現在の異次元緩和を永遠に続けることも無理がある。日銀はいずれ大きな方針転換をする必要も出てこよう。それまでに残された時間はそれほど長くはないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-30 09:27 | アベノミクス | Comments(0)

消えた金融政策という矢の意味

 9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新たな三本の矢は、「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」となり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするそうである。

 アベノミクスの第一弾は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であった。麻生財務相は9月25日に旧3本は「新たな3本の矢の1本目」に集約されているとした。

 「強い経済」というかなり曖昧な表現のなかには、経済を支えるための金融政策、財政政策、成長戦略が組み込まれていると考えるのは自然かと思うが、「金融政策」との表現を消したことについてはそれなりの軌道修正を図ったとみてしかるべきかと思われる。

 アベノミクスはのちに三本の矢とかを出して体裁を整えた格好ながら、その柱はリフレ政策にあった。これによりデフレから脱却することが目的となり、その目標は政府と日銀が共同宣言で打ち出した消費者物価指数の2%となっていた。

 2013年4月の量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和により日銀は2年で2%の物価目標を達成するとした。それから2年以上の月日が経過し、2015年8月の消費者物価指数は総合で前年比プラス0.2%、ベンチマークといえるコア指数ではマイナス0.1%と、まさに異次元緩和を決めた時点と同様のマイナスに陥った。

 この結果をみればアベノミクスの柱といえる大胆な金融緩和が、結果としての物価の上昇を起こさなかったことは明らかである。なぜ物価目標は達成されなかったのか、いずれこの検証は必要となろう。しかし、数値目標は達成されなくても、日銀は基調はしっかりしていると判断し、政府はデフレから脱却しつつあるとの認識を示している。

 25日の昼に安倍首相と黒田日銀総裁は首相官邸で会談した。定例ともいえる会談ではあるが、タイミングが興味深い。安倍首相がアベノミクスの新たな三本の矢を打ち出したあとで、8月の消費者物価指数も確認したあとである。市場では当然ながら追加緩和期待が出ていたようだが、そう期待してしまうのも無理はない。

 異次元緩和が物価目標達成に直接結びついていないことは誰の目にも明らかとなっている。安倍首相はここにきて携帯料金の引き下げを検討するよう指示を出した。新三本の矢やこの携帯料金引き下げなどは来年の参院選を見据えた動きではあろうが、少なくとも携帯料金の引き下げは物価の下落圧力となる。それでなくとも目標達成どころか元の木阿弥に戻ってしまっている物価に対して、首相は関心を失いつつあるように思われる。

 政府と日銀が打ち立てた物価目標とはいったい何であったのか。それが達成できなかった理由を明確に示さぬ限りは、日銀による追加緩和は難しい。物価はさておき、緩和をすれば株価は上がるとの発想ありきでは、中央銀行の金融政策は株価対策でしかないことになる。

 結果が出なかった限りは金融政策のあり方そのものを再考する必要がある。金融政策は万病に効く特効薬などではない。あくまで一時的な痛み止めに過ぎないことを認識する必要があるはずである。しかし、それを表明すると市場の期待が大きく剥がれかねないほどに、市場が金融政策に過度に依存してしまっていることもまた事実であり、これも金融政策のあり方をより困難にさせてしまっている。

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by nihonkokusai | 2015-09-29 09:15 | アベノミクス | Comments(0)

プラザ合意と短期金利の高め誘導

 1985年9月22日、密かに先進5か国の蔵相・中央銀行総裁がニューヨークのプラザホテルに集結し、米国の財政赤字と貿易赤字という双子の赤字を解消するため、為替をドル安方向に誘導させるとの合意を行った。これがいわゆるプラザ合意である。

 5か国が為替相場に協調介入して、基軸通貨であるドルに対して、参加各国の通貨を一律10~12%幅で切り上げる。介入期間は6週間程度、介入規模は180億ドル相等。日本、アメリカ、ヨーロッパが3:3:4の割合で受け持つといわれた。各国は、自国だけでなく、24時間どの国の相場にも介入してもよいといったものであった。

 発表前の円相場は1ドル242円であった。最初に開いた23日のニュージーランドでは1ドル234円程度まで円高が進行したが、さらに介入は続けられた。大蔵省と日銀は必死の努力でドルを売り、口先介入なども行ったものの、なかなかドル安は進まない。

 そこで日銀が動いた。1985年10月25日に日銀は第二の公定歩合といわれた短期金利の高め誘導を行い、これを受けてスタート直後の債券先物は暴落に近い下げを蒙ったのである。私は債券ディーラーになる前ではあったものの、債券先物に非常に強い関心を持っていただけに、かなりのショックを受けた記憶がある。しかも、それが日銀の「勝手な解釈」であったとされている。

 大場智満元財務官は以前にインタビューで、プラザ合意に金融政策は入っていたのか、という質問に対して大場氏はこう答えていた。

 「フレキシビリティー・オブ・マネタリーポリシー(弾力的金融政策)と書き、他の蔵相代理にはこれは金利下げだと説明した。ところがプラザ合意後に日銀国内派が勝手に解釈して市場金利の高め誘導をした。びっくりして私は澄田智日銀総裁に電話したよ」

 日銀は当時、国内派が非常に強い力を持っていたとも言われ、大場元財務官も、あえて「日銀国内派」という表現を使った。これが本当に思い違いによるものなのか、それとも別途意図があったものかはわからない。しかし、現実に10月25日に日銀は第二の公定歩合といわれた短期金利の高め誘導を実施した。手形レート2か月物は0.5625%上昇して7.125%となり、コールレートも上昇した。

 これを受けて10月19日に東証に上場したばかりの債券先物は急落し、大量の売り注文により2日間値がつかないという大混乱となった。先物はストップ安売り気配で値段が付かなかったが、現物債は値がついており、10月25日に10年国債の68回債は単価で4円14銭も下落したのである。

 日銀の高め誘導に対しては、「金利を上げない約束違反だ」とのアメリカから抗議がきたようだが、これは大場元財務官の発言を見ればなるほどと思われる。日銀の短期金利の高め誘導をきっかけとしてに円高は一気に進み1ドル200円近辺をつけてきた。そして12月18日には短期金利の高め誘導はあっさりと解除された。

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by nihonkokusai | 2015-09-28 09:45 | 日銀 | Comments(0)

8月も海外投資家の日本国債の大量買い越し続く

 日本証券業協会(JSDA)は9月24日に8月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

8月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスは買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -8384(-1926、-9679、3213)
地方銀行 4838(-448、4202、1527)
信託銀行 3120(-1755、1117、2787)
農林系金融機関 139(-257、577、10)
第二地銀協加盟行 -244(-147、311、76)
信用金庫 1912(178、1985、66)
その他金融機関 5682(147、168、5499)
生保・損保 -5542(-3283、217、-1714)
投資信託 -516(-169、838、-1037)
官公庁共済組合 83(10、213、150)
事業法人 -739(-10、-33、-560)
その他法人 -488(31、90、-67)
外国人 -24121(-3161。-10672、-10219)
個人 349(14、33、10)
その他 12672(11486、6406、-1842)
債券ディーラー 88(12、54、17)

 8月に都銀は8384億円の買い越しとなった。7月は8374億円の売り越しとなっていたが、2か月ぶりの買い越しに。同時に公表された国債投資家別売買高でみると、都銀は超長期債を1926億円、長期債を9679億円買い越し、中期債を3213億円売り越していた。

 引き続き注目すべきは外国人で、8月は2兆4121億円の買い越しと7月の2兆4888億円の買い越しと同様に大きく買い越した。外国人は14か月連続の買い越しとなる。超長期債を3161億円、長期債を1兆672億円、中期債を1兆219億円、それぞれ買い越していた。

 生損保が5542億円と超長期主体に買い越していたのを除くと、ほかの投資家は売り越しが目立った。

 地銀は4838億円と長期主体の売り越し。信託銀行も3120億円と中期債主体の売り越し。そして、今回も「その他」が1兆2672億円売り越していた。7月は2兆1429億円の売り越しとなっていたため、売り越しの金額そのものは減少していた。超長期債を1兆1486億円、長期債を6406億円売り越し、ただし中期債は1842億円買い越していた。7月も超長期債を大量に売り越していたが、かんぽ生命による売りであろうか。いずれにしてもある主体が日本国債を売却し、その分、米国債などを購入していた可能性がある。

 8月の債券市場は、中国だけでなく世界経済の先行き不透明感が強まり、10年債利回りは0.4%割れ、債券先物は4月30日以来となる148円台を回復した。日経平均株価は8月19日あたりから急落し、18000円割れてからは乱高下するなど波乱含みの展開に。リスク回避の動きから米債は買われ、円債もジリ高となるものの、10年債の0.3%前半では高値警戒も強まった。

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by nihonkokusai | 2015-09-26 10:39 | 国債 | Comments(0)

無理があるGDP600兆円の目標

 安倍首相は24日夕方の会見で、昨年度、名目で490兆円だったGDPを600兆円にすることを目標に、強い経済、子育て支援、社会保障をアベノミクスの新たな「三本の矢」と位置づけ、今後3年間の総裁任期中も、引き続き経済最優先で政権運営に当たる決意を示した。

 アベノミクスの最初の三本の矢とは、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生を目的とした「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であった。ここには日銀が2%の物価安定目標を実現するというもの以外に具体的な数値目標は掲げられていなかったが、今回は名目GDPの600兆円という数値が掲げられた。

 すでに高度成長時代ではない日本にとって、具体的な期限は設けてはいないものの、名目GDPを600兆円に引き上げることは容易ではない。名目GDPは1980年が約250兆円であったのが、1995年に500兆円台に乗せたが、それ以降は500兆円近辺での推移が続いている。内閣府が7月に公表した試算によると実質2%、名目3%以上の経済成長が続けば、2014年度に490.6兆円の名目GDPが、2020年度には594.7兆円に達するとした。しかし、この試算の数値そのものが楽観的過ぎるものとなっている。

 ここで名目GDPの600兆円台達成を目標に掲げたということは、日銀の大胆な金融政策により、すでにデフレから脱却しており、失われた20年からも脱しているということなのであろうか。それを前提にしているのか。

 デフレ脱却の意味が結果としての物価上昇というのであれば、消費者物価指数が前年比でゼロ%近くで推移している現状をどう見ているのか。8月の全国CPIはコア指数で前年比マイナス0.1%となっている。日銀の物価目標となっている総合も前年比プラス0.2%と低迷が続いている。株価もここにきて低迷し、円安については弊害も意識されている。ここで「強い経済」という新たな第一の矢を持ってきても、具体的な政府による経済運営は見えてこない。当初のアベノミクスの第一の矢は、日銀によるリフレ政策であった。それによる円安株高もあり効果があったかに見えたが、その円安株高の本当の要因となっていた世界的なリスク後退の動き、さらには米国経済の回復などの外部環境の好転によるものなどによる影響が大きかった。

 それにも関わらず外部要因ではなく内部要因による「強い経済」とはいったいどのような政策を打ち出すつもりなのであろうか。今回は金融政策には触れておらず、つまり日銀の金融政策は十分に当初の目的は果たしたので、お役御免ということであろうか。肝心の物価目標は達成されていないのだが。

 それ以上に「子育て支援」、「社会保障」という二本の矢は、前回の残り二本の矢よりも具体的のように見えるが、アベノミクスという経済拡大政策のためのものというより、それが可能となった際に、その果実を回すべき物としている。つまり名目GDP600兆円が前提となっているが、その前提となる具体策が「強い経済」では、あまりに曖昧なものとなる。

 高度成長期ならばともかく、低成長期というか成熟期に入っている日本経済を20%増しにするには、少なくとも当初の政策にあった成長戦略を積極的に進めることが必要になろう。しかし、その成長戦略についてはほとんど成果が上がっていない。アベノミクスは第一の矢と、それによる円安株高だけが目立った政策であり、そこから名目GDP600兆円の目標を達成しようにも、基盤すらない状況とも言える。このままでは目標の数字だけが一人歩きする結果ともなりかねない。

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by nihonkokusai | 2015-09-25 09:21 | アベノミクス | Comments(0)

米利上げは12月の可能性が高まる

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日から17日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げは見送り、実質的なゼロ金利政策を継続することを9対1で決定した。反対したのはリッチモンド地区連銀のラッカー総裁で、利上げを主張して反対票を投じた。

 声明では、米国景気は緩やかに拡大していると指摘したものの、中国経済の減速をきっかけにした世界的な株価の急落などを踏まえ、最近の世界経済と金融市場の動向が景気をいくぶん下押しする可能性があり、短期的にインフレに一層の下向き圧力をかける可能性が高いと指摘した。

 利上げに向けての前傾姿勢というよりも、ここにきての株価の下落などの影響も指摘するあたりは、やや意外感もあった。これはあくまで今回利上げをしなかった理由説明のためと思われる。目先の市場動向に振り回されてしまうと、先々を睨んだ金融政策運営が出来なくなるリスクがある。表現は悪いが、今回利上げしなかった言い訳のひとつとみておいた方が良いのではなかろうか。

 イエレン議長は会見で、10月のFOMCでは記者会見は予定されていないが、利上げ実施の可能性のある会合の1つと位置づけていいのかとの質問に対して、「すべてのFOMCで金融政策の変更ができる。仮に10月に利上げに踏み切る場合には、記者会見を開催するだろう」と答えている(日経新聞電子版)。

 これも教科書的な答弁となる。ただし、ここから探れるのはFRBには現状維持と利上げのふたつの選択肢しか考えていないことである。今回発表された金利見通しからは、17人中13人が年内に1度以上の利上げを見込んでいる。あとは利上げのタイミングということになる。

 イエレン議長は政策変更について経済データ次第との表現をしているが、そのデータが極端に変わるような出来事がない限り、とみておいた方が良いかと思う。物価に関するデータは利上げを急ぐ必要性を示していないが、雇用に関するデータについてはクリアしていると思われる。それよりも世界的な経済金融リスクそのものが後退している以上、正常化に向けて舵を取ることは当然であり、それはつまり利上げということになる。

 しかし、金融市場があまりに中央銀行の異常な緩和策に慣らされてしまったこともあり、そこから抜け出すには慎重に事を運ぶしかない。現在のFRBはそのために念入りに講じられたスケジュールに沿って正常化に向けて歩みを進めていると個人的には見ている。そこから出てくる結論としては2013年のテーパリングの事例にならって、利上げは12月のFOMCとみておく必要があるのではなかろうか。

 9月21日にセントルイス連銀のブラード総裁は、米国の労働市場が回復し、物価が低水準であるものの安定して推移していることを踏まえると、「非常事態」に対応するための政策を引き揚げる時期が来たとし、FRBが10月に利上げに踏み切る根拠は十分にあるとの考えを示した(ロイター)。

 同日、アトランタ連銀のロックハート総裁は、ジョージア州で講演後、10月のFOMCでも利上げの是非を検討するものの、金融市場の変動などの影響をあと1か月余りで見極めるのは難しいかもしれないと述べ、利上げが見送られる可能性を示唆した。ただし、講演では年内の利上げに自信があるとも述べており、12月会合での利上げの可能性を示唆した格好に(時事)。

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by nihonkokusai | 2015-09-22 07:42 | 中央銀行 | Comments(0)

3~6月はほぼ日銀のみが国債買い越し

 9月17日に日銀は2015年4~6月期の資金循環統計(速報)を発表した。これによると6月末の家計の金融資産は1717兆645億円と3月末の1700億1116億円(確報)を上回り、過去最高を更新した。

 資金循環統計を基に2015年6月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。また、3月末との比較においては3月末の確報値を用いている。

 6月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、8853兆1175億円と前回の3月末から2兆432億円増加した。国庫短期証券を加えると6月末の国債の残高は約1037兆円となる。日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。

民間預金取扱機関 259兆9031億円(3月末比-11兆6641億円)、29.4%(3月末30.7%)
民間の保険・年金 232兆0262億円(同-1兆2285億円)、26.2%(同26.4%)
日本銀行 245兆3304億円(+20兆3821億円)、27.7%(同25.5%)
公的年金 52兆7834億円(-1兆3600億円)、6.0%(同6.1%)
海外 41兆5808億円(-1兆7926億円)、4.7%(同4.9%)
投信など金融仲介機関 25兆5238億円(-7525億円)、2.9%(同3.0%)
家計 15兆4078億円(-1兆4777億円)、1.7%(同1.9%)
財政融資資金 74億円(-492億円)、0.0%(同0.0%)
その他 12兆7546億円(-143億円)、1.4%(同1.4%)

 3月末に比べて、残高が増加していたのは上記の区分によると日銀だけである。3月末比で20兆円を超える増加となっている。銀行などが売却した分をすべて日銀が吸い上げ、さらに全体の増加分も日銀がカバーした構図になっている。

 もう少し細かい区分でみてみると、民間預金取扱機関のうち国内銀行(都銀・地銀)が5兆792億円の減少、中小企業金融機関等が6兆3881億円の減少となっていた。今回もゆうちょ銀行の減少分が大きかったのではないかとみられる。

 公的年金は1兆3600億円の減少となった、GPIFの運用見直しによる売却はある程度一巡したとみられるものの、まだ国債の売却を進めているようである。

 海外投資家は1兆7926億円の減少となった。海外投資家の長期国債のシェアは4.7%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.2%のシェアとなり3月末の9.4%から減少した。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは28.5%となっており、国債全体の三分の一近くを保有していることになる。

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by nihonkokusai | 2015-09-18 10:06 | 国債 | Comments(0)

携帯料金引き下げでデフレ解消になるのか

 安倍首相は9月11日の経済財政諮問会議で、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、高市総務相に携帯電話料金の引き下げ方策を検討するよう指示した(読売新聞)。

 家族分の携帯料金をほぼ負担している私としては、携帯電話料金の引き下げはぜひ進めていただきたいと思うが、個人的な事情はさておき、これがデフレ圧力を強めるとの見方と、デフレ解消に効果的と極端に見方が分かれている。

 もちろん携帯電話料金が消費者物価指数などに影響を与える割合は小さくはない。つまりこれは素直に物価低下圧力に繋がると思われる。しかし、安倍首相は家計負担を軽減して消費を拡大するには携帯料金の値下げが欠かせないとしている。消費が伸びればいずれは物価上昇圧力に繋がるという理屈である。また、これは三本の柱のひとつ成長戦略に絡んだ規制緩和の一環との見方もある。それはさておき、ここには個別物価と一般物価は違いという問題も含んでいるように思われる。

 個別価格は消費者の需要と供給量の関係だけでなく、景気物価動向、為替の動向等をみながら供給者が決定するものと思われるが、一般物価は日銀の金融政策により決まるというのが、岩田日銀副総裁などリフレ派と呼ばれる人たちの主張となっている。

 個別物価に関係なく、日銀がしっかり金融緩和を行えば物価は上がるという発想である。だから日銀は異次元緩和を二度も行ったが、物価はいっこうに上がっていない。そもそも2014年10月の二度目の異次元緩和の理由は「原油価格の下落」に伴う影響、つまり個別物価に関わる影響を受けてのものであったはずである。

 一般物価と呼ばれているような物価は存在せず、あくまでそれは個別物価の集合体ではなかろうか。そもそも日銀の物価目標は消費者物価指数であり、それは個別の価格の変化によって構成される。つまり、もし携帯料金等が引き下げられれば素直に消費者物価指数にはマイナスの影響を与える。私の場合も携帯料金が仮に引き下げられることで、少し家計には助かった程度になるのではないかと思う。それが消費を拡大するためのインパクトになることも考えづらい。ただし、もしそれが規制緩和に繋がるものであれば、あらたな商機を拡げる可能性はある。しかし、単純に携帯料金の引き下げだけを要請するのであれば、その目的は支持率アップなのか、それともそれでデフレ解消になると考えてのことなのか。

 携帯料金引き下げでデフレ解消になるとの発想と一般物価との発想は通じるものがある。それは期待インフレなどにも通じるものなのかもしれない。しかし、少なくとも金融政策で物価が動かせるということは、今回の日銀の壮大な実験で結果は出ていると思われる。金融政策で一般物価が上がらなかった。それは原油価格の下落によるものであれば、それは個別物価のことではなかろうか。消費増税が影響したのだとすれば、金融政策だけで物価は動かせないことをむしろ示した格好にもなる。財政健全化などをさておいて、物価を上げる支障を取り除くため消費増を元に戻したとしても、それで物価が上がる保証もない。

 金融政策で物価が自由にコントロールできないとなれば、当然インフレ時にもインフレターゲットを採用しているから金融政策で物価上昇は抑えられるという主張もかなり疑問となる。

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by nihonkokusai | 2015-09-17 09:20 | アベノミクス | Comments(0)

米利上げは12月と予想する理由

 16日、17日のFOMCの結果に注目が集まっている。言うまでもなく利上げの有無が焦点となっている。個人的には9月17日のFRBの利上げはないとみているが、その根拠は経済データや市場動向などによるものではない。FRBはテーパリングから利上げに向けてかなり周到な準備を進めてきたと思われるためである。つまり余程の金融ショックなど予想外の事態の発生がなく、雇用等の数字に明らかな黄色信号が点滅でもしない限り、事前のロードマップに描いたスケジュールに沿って出口戦略を行っていると思われるためである。

 今回の利上げに向けたFRBの動きをみるにあたって参考にすべきは、2013年のFRBがテーパリング決定にいたる過程である。当時はバーナンキ議長、イエレン副議長という布陣であり、この二人を中心にテーパリングの準備を進めていたと思われる。

 2013年5月にバーナンキ議長はテーパリングを示唆した。これを受けてバーナンキ・ショックと呼ばれる市場の動揺が起きた。しかし、ある程度の動揺は想定していたとみられる。ただし、時期に関しては慎重に選択していた節も伺える。バーナンキ議長は2015年7月のG20を欠席した。財務相と中央銀行のトップが集う会議に主役のひとりともいえるFRB議長が欠席するのは異例といえる。さらに異例は続く。

 2010年8月27日にバーナンキ議長(当時)はQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは市場がかなり注目している場であることがここからも伺える。ここではある程度マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあるとみられている。これには著名学者などとともに各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。

 そのジャクソンホールの2013年のシンポジウムに主催者ともいえる(形式上はカンザスシティ連銀主催)バーナンキ議長が欠席していた。市場では2013年9月のFOMCでテーパリングを決定するとの見方も強かったこともあり、その裏を取らせないようにしていたのかもしれない。しかし、実際にテーパリングを決定したのは2013年12月である。なぜ9月ではなく12月にしたのかは、今は憶測するほかないが、市場の動揺を見てではなく、当初から12月に標準を合わせていた可能性もある。そのあたりを探られるのを避けての欠席とも言えるのではなかろうか。そしてテーパリングそのものは市場の動揺を与えることなく成功裏に終わった。

 今年8月27日から29日にかけて開催されたジャクソンホールのシンポジウムにイエレン議長は欠席した。さらに9月4日から5日にかけてトルコで開催されたG20にもイエレン議長は欠席している。これも極めて異例と言えよう。果たして2013年のバーナンキ議長、2015年のイエレン議長の両イベントの欠席は偶然であろうか。

 2013年のテーパリング開始決定にむけての周到な準備とその結果を見る限り、そのときの主要メンバーでもあったイエレン議長を中心にこの時と同じようなスケジュールを出口に向けて組んでいたとしてもおかしくはない。これほど重要な決定をその場の勢いで決めるとは考えられず、周到な準備が進められていたと見る方が自然ではなかろうか。2013年の市場の動きなども十分に分析をしていたはずである。

 2013年に市場が動揺したのは5月から9月にかけてであり、特に米債の下落が大きかった。今年は8月以降に株式市場を中心に動揺が起きている。このあたりに違いはあれど、今回も9月ではなく少し余裕を持たせての12月、というよりイエレン議長の行動からも当初から12月をターゲットにしていたのではないかと個人的には考えている。

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by nihonkokusai | 2015-09-16 09:40 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の追加緩和を阻む壁

 9月14日から15日にかけて日銀の金融政策決定会合が開かれている。今回の会合では前回までと同様に賛成多数による現状維持が決定されると予想されている。それよりも利上げが決定される可能性がある16日から17日のFOMCの方が市場からの注目度は高い。しかし、自民党の山本幸三衆院議員が10月30日の金融政策決定会合で追加の金融緩和に踏み切るべきだとの認識を示したように、日銀の追加緩和期待も一部に出ているようである。

 10月30日の展望レポートでは経済や物価に関する見通しが下方修正される可能性がある。中国経済の減速を懸念した株式市場や外為市場での乱高下も起きるなど、市場安定のための日銀の追加緩和期待もあるだろう。FRBが利上げを決定するタイミングで、日銀が追加緩和となれば、2014年10月の異次元緩和第二弾のときのような円安を起こすことも可能との見方もあるかもしれない。

 しかし、日銀の追加緩和についてはいくつかの見えない障壁が存在する。そもそも黒田総裁となってからの日銀はそれ以前の金融政策を否定することからスタートしている。それは安倍自民党総裁の輪転機発言や日銀副総裁にリフレ派筆頭の岩田規久男教授を起用したことからも明らかである。

 黒田日銀が白川日銀以前の政策で否定したものは何か。それは過去の金融緩和における金融緩和の規模の小ささ、曖昧なインフレターゲット、戦力の逐次投入などとなるのであろうか。それをアベノミクスの金融政策は、日銀法を改正してまで政府の意向と言うか、リフレ的な政策にあらためさせるというものであった。

 このため黒田日銀は大胆な国債買入をサプライズ的に打ち出し、明確な期限を区切ったインフレターゲットを設定し、政策目標はマネタリーベースに変更した。さらに戦力は逐次投入しないことも言い切っていた。これにより、レジームチェンジが起き、マネタリーベースの急増でインフレ期待が高まり、実質金利の低下などによって雇用の回復による賃金上昇、物価の上昇に働きかけるというのがアベノミクスの最初の柱である金融緩和の目的であったかと思われる。

 つまり黒田日銀が過去二回の異次元緩和のスタイルを貫くとなれば、その効果の検証など以外に、第三弾にはいくつかの壁が生じることになる。ひとつは規模での勝負が難しくなっていることが挙げられる。山本幸三議員は、長期国債などの資産買い入れを最低10兆円規模で拡大することが必要と述べていた。また、本田悦朗内閣官房参与は追加緩和について、ETF購入枠の拡大や日銀当座預金の超過準備の付利の引き下げ、財投債や地方債の購入などが考えられるとしている。

 これらの発言はこれ以上の大胆な国債の買い入れが困難であることを意味している。ETFは当然ながら社債や財投債の市場規模は国債と比較にならない。超過準備の付利の引き下げはそもそも調整目標がマネタリーベースである限り、無理がある。付利があるからこそ日銀の当座預金に資金が積み上がり、マネタリーベースを増加させているのがいまの日銀の政策スタイルであるためである。

 山本氏も本田氏もとりあえず追加緩和ありきの発言であり、これは黒田日銀のスタイルとは異なったものになる。もし日銀が今後追加緩和を行うのであれば、大胆さ、調整目標のマネタリーベース、逐次投入せずといった現在のスタイルからの変更が必要になる。それはつまりリフレ派が否定した黒田日銀以前のフレキシブルなスタイルに戻すことになる。そのスタイルの変更があるとするのであれば、日銀にはその説明責任も求められることになる。このように現在の日銀が追加緩和を行うには見えない壁が存在しているのである。

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by nihonkokusai | 2015-09-15 09:02 | 日銀 | Comments(0)
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