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ユーロ圏に残りたいギリシャが選んだ道

 ギリシャ議会は7月16日未明に、欧州連合(EU)から金融支援の条件として要求されていた財政改革法案を賛成多数で可決した。賛成229、反対64、白票6、1人欠席と圧倒的多数で可決した。チプラス首相率いる急進左派連合(SYRIZA)の議員149人のうち39人が造反した。一方、76議席を持つ最大野党の新民主主義党(ND)などEU寄りの野党が賛成に回ったように野党議員の多くの支持を得て、財政改革法案が可決した(日経新聞)。

 チプラス首相はどのような戦略でギリシャへの支援交渉に臨んだのかはわからない。しかし、どれだけ高圧的に協議に臨んでも、それはむしろドイツなどの反発を強める格好となっていった。奇策ともいうべく国民投票は最後の掛けになったが、その結果を受けてチプラス政権の基盤を強める格好となった。チプラス首相とすればユーロ離脱を避けることが優先され、与党内の緊縮反対派の勢力を抑え、EU寄りの野党の協力も得られる。強硬派でもあったバルファキス財務相を辞任させ、フランスのオランド大統領に助けを請うことで仕切り直しをした。

 その結果、EUは13日のユーロ圏首脳会議で、ギリシャが財政改革を法制化すれば3年で820億ユーロ超の金融支援に向けた手続きに着手することで合意が可能となった。

 今後はドイツやフィンランドなどEU各国がギリシャ支援のための議会承認の手続きに入る。最短で7月末にも欧州安定メカニズム(ESM)が発動し、ギリシャへの金融支援が始まる(日経新聞)。

 ギリシャ議会が財政改革法案を可決したことを受け、ECBは16日、ギリシャの銀行向けの緊急流動性支援(ELA)枠を9億ユーロ引き上げた。ただ、ギリシャの銀行は営業を再開する20日の取り付け騒ぎを避けるため、資本規制は継続するようである。さらにEU加盟国の財務相らはギリシャが次回支援交渉に入るまで70億ユーロのつなぎ融資に欧州金融安定メカニズム(EFSM)を活用することで一致した。これにより、20日が期限のECBが保有するギリシャ国債の償還が可能になり、遅れているIMFへの返済もまかなわれる(ロイター)。

 ドイツのショイブレ財務相はラジオで、ギリシャとの金融支援交渉開始を承認するよう議会に要請するとしながらも、ギリシャが一時的にユーロ圏を離脱する方が適切との考えを示したようである。

 ギリシャのブーチス内務相は、「状況次第で」総選挙を9月か10月に実施する可能性があるとの考えを示していた。

 ギリシャのリスクは完全に払拭されたわけではない。協議の過程でのドイツなどとの対立姿勢は今後も影響が残り、チプラス首相の最後の手段は与党内の強硬派の造反を生む結果となった。しかし、緊縮反対を掲げたチプラス政権がギリシャのユーロ離脱を避けるためには、このような手段を用いるほかなかったと思われる。

 むろんチプラス政権を選んだ国民はこれ以上の緊縮策への受け入れは容認しがたい面もあろう。しかし、自らの資産が大きく目減りし、経済をさらに衰退させかねないユーロ離脱との選択肢は取りづらかったはずである。

 日本は戦後の混乱期に新円切り換え・預金封鎖が行われ、効率の財産税が掛けられた。これにより国民の財産が大きく目減りし、その分で国の債務を削減できた。これは強制的に行われたものであるが、同様の事態を平時にもかかわらずギリシャ国民が受け入れることはできないはずである。

 ユーロに残るかユーロ離脱かとの究極の選択肢をつきつけられたとき、「ユーロ圏に残りたい」とオランド大統領に電話で頼み込んだチプラス首相のこの言葉は本心であったのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-07-19 11:05 | ギリシャ | Comments(0)

国債発行額に制限はあるのか

 国債の発行については国によって形式が異なっており、その残高に関しては日本を含めて具体的な制限がない国も多い。

 日本の国債のなかで、新規国債と呼ばれる建設国債と赤字国債の発行額は歳出と歳入が決定されれば自動的に算出される。借換債は60年償還ルールにより発行されるものであり、その金額も自動的に算出される。また、財投債については財投計画に応じて発行額が決定される。つまり国の予算編成に応じてそれぞれの発行額が決定され、建設国債は財政法といったようにそれぞれに発行根拠法が存在する。発行額や残存額については特に制限は設けられてはいない。

 米国債の発行根拠法は、合衆国憲法(第1条第8項)に基づいて連邦議会が定めた第二自由公債法である。同法において、国債残高に制限額を課して、その範囲内であれば自由に国債を発行し資金調達できる。米国での国債は、日本のように単年度の予算における歳入・歳出の差額を埋めるという単年度主義の観点からではなく、その時々における国庫の資金繰り上の必要性から発行される。したがって、年度の国債発行予定総額や年限別の発行予定額が事前に法令若しくは予算上定められていることはなく、各時点における国庫の資金繰り状況に応じて、市場動向も勘案しつつ、弾力的に国債発行を行っている。(財務省「国債市場特別参加者制度」資料より)。

 英国債の発行根拠法は1968年に制定された国家貸付法である。この法では「国内の金融調節のために必要と判断される額」、「国家貸付金からの支出が同資金の収入額を超過する額を補填するのに必要な額」、「国家貸付資金の収支のバランスを図るために必要となる額」を借り入れることができるとされている。日本の一般会計にほぼ相当する統合国庫資金は歳出のみ議決対象となり、収支尻が赤字の場合は「国家貸付資金」からの繰入により賄われる。黒字の場合には国家貸付資金に振込まれる。議会に対する関係で発行限度額や残高についての制限はない。また、年度途中の発行計画変更についても、何ら法令上・予算上の制約はない。

 ドイツにおける国債の発行根拠法は、連邦基本法及び予算基本法である。連邦予算における信用調達(国債、借入金)については連邦法で限度額の授権が必要となり、信用調達の額は、連邦予算の投資的支出の額を超えてはならないこと、が定められている。連邦政府は、上記限度額の範囲内で、国債の種類・年限等を自由に選択することができる。

 国債の発行残高に関しては、日本や米国、英国では特に制限があるわけではない。しかし、ユーロ圏に関しては1993年に発効したマーストリヒト条約により、ユーロ圏への参加要件として、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする基準(マーストリヒト基準)が示されている。

 むろん制限がないからといっていくらでも国債を発行してもかまわないというわけではないし、無制限に借金が可能というわけではない。財政規律が守られてこそ巨額の国債残高を維持させることが可能となる。

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by nihonkokusai | 2015-07-17 09:26 | 国債 | Comments(0)

米英の利上げ観測、日銀は動けず

 イングランド銀行のカーニー総裁は7月14日、議会の財務委員会に対し、トレンドを上回る着実な成長が見られ、国内のコストが上昇しつつあり、輸入によるディスインフレを一部打消していると指摘し「経済の状況を踏まえると利上げを開始する時期が近づいている」と言明した(ロイター)。

 イングランド銀行の金融政策委員会のマイルズ委員も、利上げ開始は「明らかにやって来る」とし、「悪いことではない」と語ったそうである。ちなみにマイルズ委員はハト派として知られ、来月退任の予定だとか。

 ようやくギリシャの問題が解決に向かい、今度はあらためて異常な金融政策から脱却する「正常化」が焦点になる可能性が出てきた。

 米国の正常化よりも前に英国が正常化に向かうとの観測が強かったものの、今年初めには原油安を背景に消費者物価指数が前年比で50年超ぶりの低水準となったことで、利上げ観測は後退した。しかし、ここにきて労働市場が活性化をみせ、賃金も上昇してきている。少し前の報道ではあるが、6月に金融政策委員会のウィール委員は、8月のMPCで利上げに賛成票を投じる可能性を示唆していた。

 7月14日にはイランでのイラン核協議は最終的な合意を得られた。ギリシャ問題に続き、世界的な懸念材料が続けて払拭された格好だが、これはいずれ原油価格の下落要因ともなりうる。

 イランは現在、原油の輸出を制限されているが、これが解除されると日本の消費量の五分の一以上にあたる日量100万バレルの原油がいずれ国際市場に供給されることになる(日経新聞)。

 今後の原油価格が日銀の想定したような上昇をみせず、上値が抑えられて、物価が抑制される可能性もある。それでも英国は再び正常化の時期を模索しているようで、年内の早い時期での利上げの可能性が出てきた。ただし、その後の利上げは緩やかなペースになるであろうことも確かである。

 9月もしくは12月のFOMCで、FRBも正常化を決定してくると予想される。15日のイエレン議長の議会証言でも、年内利上げの可能性を示唆していた。

 このように今後はFRBとイングランド銀行の金融政策の正常化が市場の焦点のひとつとなってくることが予想される。利上げというかたちになる以上は、これによる米国と英国の長期金利のある程度の上昇は避けられないとみられ、米国の長期金利は3%、英国の長期金利は2.5%をいずれ視野に入れてくるのではなかろうか。

 日本相互証券によると1~6月の10年国債の業者間取引が17.2兆円と前年同期より9割増しとなり、半期として2000年以降で最大になったそうである(日経新聞)。日銀が市場から国債を吸い上げているなかで、これだけの売買高があった。この時期は欧米の長期金利が上昇基調となり、ギリシャ問題も加わって振れも大きくなった。日本国債もそれだけ海外金利の動きに敏感になってきていると思われる。

 日銀は自ら設定してしまった物価目標のために動けない。政策目標をもう少し柔軟なものに変更すべきと思うが、それも容易ではなさそうである。イングランド銀行やFRBが正常化にむけて動ける環境下に、異常な金融政策を続ける日銀という構図は続く。市場はその矛盾に対してどのような反応をしてくるのか。マグマが次第に蓄積されるような環境に日本の債券市場が置かれることも十分考えられる。

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by nihonkokusai | 2015-07-16 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

長引いたユーロ首脳会議の背景

 7月12日のユーロ圏財務相会議が長時間に及び、EU全体での首脳会議はキャンセルされ、ユーロ圏19か国による緊急首脳会議だけとなった。あくまで内容の詰めは財務相会議で行い、首脳会議はそれを確認してサインをする場となると思われたが、財務相会議での結論は持ち越され、本当の論戦はこの首脳会議で行われた。

 12日の午後に始まったユーロ圏首脳会議は約17時間に及ぶ徹夜の会議となった。国のトップ同士がこのような長時間に及ぶ会議を行うこと自体、極めて異例のように思える。その結果は欧州連合(EU)のトゥスク大統領が説明したように「全会一致で合意」した格好ではある。しかし、この時間の長さが示すように、かなりぎりぎりの攻防戦が繰り広げられていたようである。

 この攻防戦の主役はドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領、そして当事国のギリシャのチプラス首相となる。

 チプラス首相はこれまでの協議において、どのような戦略を持っていたのかは定かではない。少なくとも国民投票までは支援策を巡ってドイツとの対立姿勢を強めた。このためドイツ側はチプラス首相に対して不信感を強め、安易な妥協は許さじとの姿勢となっていた。ドイツからギリシャの一時的なユーロ離脱を提案するほどになっていたぐらいである。このドイツの姿勢にフィンランドやオランダも同調。北部欧州や東欧諸国などはドイツ側に付いていたようである。

 これに対し、フランスのオランド大統領はギリシャに対して穏健な態度をとっていた。チプラス首相は、オランド大統領を頼みの綱としたようである。こちらにはイタリアなどの大きな債務を抱える南欧諸国も同調していたとみられる。財務相会議ではドイツのショイブレ財務相がドラギECB総裁を激しく非難し会議が一時中断したとの報道もあった。

 ギリシャへの支援策を巡ってドイツとフランスを代表とする攻防戦が続き、このままではギリシャのユーロ離脱という最悪の事態を引き起こしかねない事態となった。このため、ルクセンブルグなどが妥協案を示し、ギリシャをユーロ圏に止める代わりに、国有財産の監視や構造改革案の即時法制化などを認める妥協案が成立した(読売新聞)。

 チプラス首相は経済の破綻を意味しかねないユーロ離脱との選択肢はとれなかったはずである。それでも債務減免などを引き出したいところではあったが、ドイツなどの強硬的な態度の前に屈せざるを得なかったとみられる。ただし、債務減免はなくても返済期限の延長といった軽減策は検討されるようである。

 ユーロ首脳会議ではギリシャに対して条件付きながら支援策を合意した。ただし、これにはギリシャが15日までに増税や年金改革などの主要な財政法案を議会で可決させることが条件となる。さらに、ギリシャは500億ユーロ相当の国有財産を売却し、債務返済などに充当させることも求められる。そういった条件がクリアーされて初めて、最大860億ユーロがESMを通じて融資される手続きがはじまる。

 本当にギリシャは増税や国有財産の売却などを受け入れるのか、今回の会議でユーロ内の亀裂が生じたのではないのか、さらには今回も結局、ギリシャの債務問題そのものは先送りされただけといった問題は残る。しかし、ギリシャのユーロ離脱という最悪の事態はどうやら避けられそうである。

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by nihonkokusai | 2015-07-15 09:49 | ギリシャ | Comments(0)

ギリシャのサムライ債は無事償還

 14日の日経新聞電子版によると、ギリシャは1995年に日本の債券市場で発行した20年物円建て債(サムライ債)を14日、期日通りに償還した。日本で同債券を管理するみずほ銀行が同日、明らかにしたそうである。

国内で海外の発行者が発行する債券のうち、円建てで発行される債券が「円建て外債」であり「サムライ債」とも呼ばれる。1970年代から発行されており、2014年の円建て外債の発行額は2.5兆円を超えている。

1995年にギリシャの20年物国債が円建てで発行されていた(9回債)。発行額200億円で、表面利率は年5.8%。1995年6月入札の20年日本国債の利率は3.7%であり、5.8%の利率は魅力的であったとみられ、個人を含め国内の投資家が積極的に購入したとされている。

しかし、過去の債務再編により民間向け債務には約50%の元本削減が実施され、14日に償還される額面は約116億円分となっていた。ギリシャ危機によるギリシャの格下げもあって、国内の民間金融機関はリスク回避のため、保有しているギリシャのサムライ債のほとんどを売却したとみられ、それを海外ファンドなどリスクの取れる投資家が購入した。償還される約116億円のサムライ債は主に国内外の一部金融機関やへッジファンド、個人投資家などが保有しているとされる。

ギリシャ全体の債務からみて約116億円と小さかったこともあり、ここでのデフォルトはギリシャとしても回避したかったとみられ、なんとか資金繰りをしたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-07-14 11:28 | ギリシャ | Comments(0)

ギリシャに助け船を出したフランス

 12日のユーロ首脳会議に先立ち開催されたユーロ圏財務相会議では、支援交渉を開始するためには、ギリシャが税制や年金制度の改革などの措置を15日夜までに法制化する必要があるとし、ギリシャが経済改革法を成立させることを条件とした。財務相会合は長時間に及びEU首脳会議はキャンセルとなった。その後、長時間に及ぶユーロ首脳会議が開始された。

 財務相会合ではドイツやフィンランドなどから、ギリシャへの改革案に対し不十分だとする声が上がったほか、改革を本当に実現するのか、疑問視する声が相次いだそうである。

 そもそもなぜ国民投票の結果にも関わらず、ギリシャは歩み寄りを見せたのか。これについては12日付けの日経新聞が、興味深いことを報じていた。ギリシャで国民投票があった5日の夜にチプラス首相がフランスのオランド大統領に「ユーロ圏に残りたい」と電話で頼み込んだそうである。

 国民投票では6割がEU側の求めた緊縮策に反対し、これがチプラス政権の基盤固めとなった。国民を裏切る格好とはなってしまうが、ユーロ残留のための財政緊縮策に対して、ギリシャ国会で承認を受けることができることになる。ただし、それまでの債権団との交渉過程ではギリシャが強気姿勢で望んでいたことで、亀裂が生じていた。その修復のためにフランスのオランド大統領に仲介役を頼んだものと思われる。また、強硬派のバルファキス財務相を辞任させたのもこれが理由であろう。

 ギリシャが出した財政再建策については、フランスが新しい提案の調整を手伝ったとの観測もあった。ギリシャ財務相の助言役に10人の財務官僚を派遣したとの報道もあり、フランスが手を貸したであろうことは確かである。

 そもそもフランスはギリシャに対してはこれまでも穏健な態度をとっていた。しかし、ドイツのメルケル首相の影に隠れ、あまりその存在が意識されることはなかった。ここでチプラス首相に助け船を出すことは、オランド大統領の存在感を強めさせることも可能となる。

 オランド大統領はチプラス政権が出した財政改革案に対して「真剣で信頼できる」と評価していたが、これはある意味当然であった。そして、ドイツもこの動きを黙認していたことで、これで交渉は成立かと思われた。しかし、フィンランドなどが合意文書に同意しなかったことで成立とはならなかった。さらに、支援の条件をもし満たせなかった場合には一時的にユーロ圏から事実上離脱させるというドイツ案も出ていたとか。

 会合の席上、ドイツのショイブレ財務相がドラギECB総裁を激しく非難し会議が一時中断したとの報道もあった。ゲルマン民族とラテン民族の対立が会合内でも起きているようである。

 ドイツとしても地政学的にギリシャのユーロ離脱は望んではいないとみられるが、これまでの交渉過程でギリシャに対する不信感を強めている。しかし、そこに大国フランスが仲裁役として出てきた。フランスに仲裁を頼んだチプラス首相も自国経済を混乱に陥れるユーロ離脱は避けたいところであろう。そのためには、改革の意思をはっきり示すため経済改革法を成立させる必要がある。

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by nihonkokusai | 2015-07-14 11:01 | ギリシャ | Comments(0)

FRBが決定するのは米国の金融政策

 7月8日に公表された6月16から17日に開催のFOMC議事要旨によると、原油安とドル高の一服で物価の下押し圧力が後退し、低インフレ状態から脱却する公算が大きいと指摘した。何人かのメンバーはすでに利上げ可能な状況、もしくは、近く環境が整うと主張したが、成長力と雇用が強まり、インフレ率が上昇へ動き出したデータを待つ必要があるとの慎重論が議論の主流を占めたようである。

 国外情勢について、複数のメンバーは当面の不確実性として「ギリシャ支援協議が合意に達するか否か、中国と他の新興国の成長率低下に言及していた。参加者からは、(ギリシャと債権団が)見解の相違を解消できない場合、ユーロ圏の金融市場が混乱したり、その影響が米国に飛び火したりする恐れがあるとの強い懸念も示されていた。

 それではもしギリシャがデフォルトし、ユーロ圏を離脱するような事態となった場合、FRBの年内利上げは見送られるであろうか。また、中国株の下落もあったが、中国経済の減速がFRBの利上げに影響を与えるであろうか。

 ギリシャに関しては、仮にグレグジットとなったとしても、その金融経済への影響はギリシャ国内にほぼ止まると予想される。すでにギリシャは計画的にデフォルトを経験しており、民間金融機関に与える影響は軽微なものとなろう。むしろ、問題は地政学上の問題、つまりは政治の問題となる。もしこれでユーロのシステムが大きく揺らぐとかになれば、欧州経済に影響が出て、それが米国経済に何かしらの影響を与えるかもしれないが、その可能性も小さいと思われる。

 中国については株価の調整はやむを得ない面もあり、実態経済の減速も避けられないのではなかろうか。それでも世界経済を中国が支えているような過去の図式とは、だいぶ変化も生じており、こちらも米国経済に直接どれだけ悪影響を与えるかといえば、限定的なものに止まるのではなかろうか。

 ただし、ギリシャや中国情勢が原油価格の下落要因となれば、物価上昇を抑制することも予想される。日銀は70ドルあたりまでの戻りを期待しているようだが、そこまで戻らず再び下落することも可能性としてはないとは言えない。

 いずれにしてもFRBが決定するのは米国の金融政策であり、自国の経済に直接マイナスの影響が及ばないものであれば、それが利上げの妨げになることはない。イエレン議長は早ければ9月にも利上げを行うことを示しているが、あくまで年内というスタンスでもある。バーナンキ議長がテーパリングをやはり市場が予想した9月ではなく12月に決定したように、イエレン議長も12月まで様子をみて決定するのではないかと個人的には予想している。

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ギリシャのユーロ残留の可能性が高まる

 ギリシャは9日夜に、金融支援再開の前提となる財政再建策をEU側に提出した。これを受けてまずトロイカと呼ばれる欧州委員会とIMF、ECBが内容が十分かどうか精査し、この3機関は精査の結果を11日に開かれるユーロ圏財務相会合に報告する。12日にユーロ圏19か国と加盟全28か国による首脳会議を開き、財務相会合の判断を踏まえ、支援再開の可否を最終決定する(日経新聞)。

チプラス政権の提出した財政再建策の案は、債権団が先月提示した案に近い内容となった模様である。ESMを利用した3年間の新たな救済策の前提となるギリシャ案には債権者側がかねてから求めてきた付加価値税(VAT)引き上げと年金削減が盛り込まれた。さらに債務再編と350億ユーロの成長パッケージも含むようである(ブルームバーグ)。

支援再開の可否については、最終的には12日の首脳会議で決定されるが、支援合意にこぎ着ける可能性が出てきた。もし支援合意ができれば、ギリシャのユーロ離脱の懸念は後退する。ただし、その前にひとつ大きな関門があった。同案がギリシャ議会で承認される必要があったのである。

チプラス首相は何故、債権団の財政再建策をのむ形になったにも関わらず、ギリシャで国民投票を行ったのか。しかも国民投票の結果ではEUが提案した財政緊縮策にノーという結論を出していたにも関わらずである。財政が困窮しているなか、巨額の費用が掛かる国民投票をなぜ実施したのか。その後、バルファキス財務相を辞任させて、結局は国民が反対した案を提出するという、まさに茶番劇のようなことをやったのか。

どうやら今回の茶番劇のような事態は、このギリシャ議会を睨んだものであったようである。国民投票を経て、チプラス政権の意向に国民がイエスと評価し、それによりチプラス政権の求心力が増した。与党内の反チプラス派の勢力を弱めるととともに、最大野党の党首を党首辞任に追い込むなど、議会の勢力バランスに国民投票結果が大きな影響を与えた。ユーロ残留に対するチプラス政権の意思も示されたことで、与党内の強硬派議員はさておき、主要野党の支持も得たようである。これにより与党の一部が財政緊縮策に反対票を投じても、主要野党が賛成票を投じれば、ギリシャ国会で承認を受けることができることになる。

現実に10日、ギリシャ議会はチプラス政権が新たな財政改革案に基づき債権団と交渉することを圧倒的多数で承認した。

ギリシャ議会が新たな財政改革案を承認したことで債権団との交渉への大きな関門が突破された。チプラス政権が出した財政改革案に対しては、フランスのオランド大統領は「真剣で信頼できる」と評価するなど、合意に至る可能性が出てきている。債権団との交渉をスムーズにさせるためには、強硬派でもあったバルファキス財務相の辞任させることもいたしかたなかったものであろう。このあたりも想定してのチプラス首相の行動であったとすれば、チプラス首相はかなりの策士であったように思われる。

ギリシャへの支援が再開され、ギリシャはユーロに残留できる可能性が高まった。しかし、ユーロ残留となっても、今回のギリシャのゴタゴタは今後のユーロの行く末に大きな影響を与えうる。ギリシャへの支援そのものに、ドイツ議会などがどのような反応を示すのかも懸念材料ではある。それでもギリシャのユーロ残留が確かなものとなれば、大きな不安材料が後退することも確かである。

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by nihonkokusai | 2015-07-11 12:05 | 国際情勢 | Comments(0)

複合要因により金融市場が動揺

 7月8日の東京株式市場で日経平均は下げが止まらず、2万円割れとなり、638円安となった。9日もさらに売り込まれ、一時前日同様に600円を超す下げとなった。円高も進み、ドル円は120円台に。しかし、下落していた上海株がマイナスからプラスに転じ、これを受けて日経平均も急回復し、日経平均は117円高で引けるなどかなり波乱含みの展開となった。10日は多少落ち着きを取り戻し、日経平均は75円安で引けている。

今回の日経平均の急落要因としては、中国株の下落が大きかった。12日に大きく決断が下されるギリシャの動向も気掛かり材料ではある。しかし、仮にギリシャがデフォルトとなり、ユーロを離脱するようなことになろうとも、金融市場への影響は限定的とみられる。

8日の欧州の株式市場はなぜかしっかり。イタリアとポルトガルの株価指数が急伸。欧州の債券市場でもイタリアとスペインの国債が前日に続き買われ、これに対してドイツの国債は売られていた。前日の東京や中国の株式市場が急落しても落ち着いていた。欧州ではギリシャ問題が最大の懸念材料となろうが、その結果はどうであれ不安感は後退しているように思われる。9日の欧州市場も続伸。イタリアやスペインの国債も買われたが、ドイツの国債は売られるなど、いわゆるリスクオフの反動が起きていた。

これに対して米国の株式市場は動揺を見せており、8日のダウ平均は261ドル安となっていた。ただし、この日はニューヨーク証券取引所のシステム障害による影響も大きかったとみられる。システム障害が始まってから、他の取引所を通じた株式への売りが優勢になりダウ平均は下げ幅を広げた面も指摘された。9日のダウ平均は33ドル高と戻りはしたが、戻りも鈍かった。

欧州はギリシャを注視しているが、米国は中国の動向も大きな懸念材料となっていた可能性はある。このような材料への感応度の違いもあったのではなかろうか。6月開催のFOMC議事要旨において、海外の危機的状況が米国経済の重しになり得るとの当局者の認識が示されたことも影響した可能性はある。

これに対して東京市場は物理的に中国に近く影響を受けやすい面や、中国株が売れないため日本株を売ったとの見方もあった。中国経済への懸念、これで日本の商品への爆買いがなくなるのではとの不安もあったかもしれない。しかし、中国株の下落は買われすぎた反動や、中国当局の対応のまずさ、さらには企業側の申し出により売買停止ができてしまうことによるテクニカルな影響も大きかったとみられる。9日の上海株の反発は中国警察当局が悪質な空売りを調査との報道が原因ともされるが、これをきっかけにいわゆるショートカバーが一気に入ったか。

ただし、ここまで東京市場が上海市場に連動することも説明は難しい。日本の投資家が中国株の下落で直接影響を受けることは考えづらい。それではなぜここまで東京株式市場の下げがきつくなったのか。日経平均の日足チャートをみると、9日はいきなりトレンドを下抜けてきたことがわかる。チャートによるテクニカルな売り、さらに追い証などにともなう売りなどが急落の要因とみられ、そのきっかけがギリシャ不安や中国株の下落になっていた。いずれにしてもテクニカルなものを含めた複合的な要因が重なり合ってのここにきての株価の変動か。

円高については日経平均の下落とセットになっての動きであった可能性がある。アベノミクスの登場で円安・日本株高がセットになり、海外投資家は為替と日本株を合わせてポジションを取るケースも多いとみられる。つまり、円売り株買いの反対のポジションが入り、そこに資源国通貨の下落によるリスク回避の動きをともなっての円高か。

このように市場それぞれがギリシャ、中国への懸念にテクニカルな要因も組み合わさって動いたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-07-10 17:55 | 金融 | Comments(0)

グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)はあるのか

 7日のブリュッセルでの緊急のユーロ圏首脳会議では、ギリシャの金融支援交渉の再開を巡って協議し、12日までの新たな金融支援策での最終合意を目指して交渉を加速することで一致した。ギリシャ政府は9日に支援の前提となる、税制改革や年金制度の見直しを盛り込んだ構造改革案を提出する見通し

 ギリシャ政府は8日に、ESMから期間3年の融資を受けるプログラムを要請した。ESMとは財政状況が厳しいユーロ圏の国に対し融資や銀行支援を行う基金である。

 ギリシャの一部の現金自動預け払い機(ATM)では8日までに現金が底を付く恐れがあるとされていたが、ギリシャ政府は銀行の休業と預金の引き出し制限などの資本規制を13日まで続けるようである。

 ギリシャでの金融破綻を回避するために短期のつなぎ融資も議論されているようだが、こちらもユーロ圏の財務相の間では意見が分かれている。つなぎ融資を実行する必要性にオーストリアとルクセンブルクの財務相が理解を示す発言をしたが、ドイツのショイブレ財務相は、経済的な困窮から抜け出す道筋を描くのはギリシャの責任だと強調したそうである。今週中のギリシャ内の資金繰りについては結論が下されるまでの一時的な対応が取られる可能性はあるが、今後の動向はギリシャ側の具体的な財政改革案の内容如何となる。

 提出されるギリシャの構造改革案が受け入れられるかが焦点となる。欧州の首脳らは、ギリシャが救済条件を受け入れる期限を12日に設定した。12日にはEU全28か国による首脳会議が開催されることで、ここで大きな決断が下されよう。ギリシャの債権団は、ギリシャのユーロ圏離脱を想定した周到なシナリオを準備しているとの報道もあった。欧州連合(EU)欧州委員会のユンケル委員長は、欧州はグレグジットの詳細なシナリオを準備していると言明。グレグジット(Grexit)とは、Greeceとexitを併せてつくられた「ギリシャのユーロ圏離脱」を意味する造語である。ぎりぎりのところで妥協できるのか。もし今回妥協できなければ、ギリシャのユーロ離脱の可能性が高まることになる。

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by nihonkokusai | 2015-07-09 11:05 | ギリシャ | Comments(0)
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