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英中銀は議事要旨を会合後に即時公表

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は8月6日の金融政策委員会(MPC)のあとに、決定した金融政策と採決の内訳、政策委員会の議事要旨、最新の経済予測を全て同時に発表するとしている。8月5日に採決し、決定等を6日正午に発表。カーニー総裁はその45分後に記者会見を始めるそうである。議事要旨はこれまで会合の2週間後に公表されていた。日米欧の中央銀行は金融政策の決定に関して、その透明性の向上に努めているが、今回のイングランド銀行の情報公開はかなり思い切ったものとなる。イングランド銀行ではMPCの議事を録音、それを活用して議事要旨を作成したものの、数週間後の議事要旨公表とともに録音テープを破棄していた。つまり議事の様子を一語一句記した記録は保存されていなかったが、その公表に向けての作業も進められているようである。

 日銀の例でみてみると、金融政策の決定の内容は決定会合の終了後、それほど時を置かずに公表文というかたちで公表される。決定会合後は裏地が黒く染められ内容を透かして見ることができない紙の文章をマスコミ等に配り、その内容が情報端末から報じられるが、いまでは同時に日銀のサイトでも公開されている。公表文では決定会合での金融政策の決定内容、採決の内訳(反対者等の氏名含む)、足元の景気やその見通しの簡単なまとめが報じられる。ただし、議事要旨については次回の決定会合で承認の上、その3日後に発表されている。来年からは決定会合の一週間後に「主な意見」というものが公表される予定となっている。また、会合の発言等をすべて網羅した議事録は10年後に公表される。

 米国のFOMCでは会合終了後に声明文が公表される。この声明文には基本的な見解、政策決定内容、それに関する各FOMCメンバーの政策決定にかかる賛否(反対者等の氏名含む)が公開される。FOMCの議事要旨(Minutes)は会合の約3週間後に、議事録(Transcript)は5年後に公表される。8回の会合のうち2日開催される3月、6月、9月、12月のFOMC後には議長会見が予定されている。

 ECBでは政策理事会後に声明が発表され、決定した政策内容が明らかになる。ECB政策理事会の会合終了後に、ECBの総裁と副総裁が記者会見を行う。総裁は記者会見の冒頭において、ステートメントに基き政策決定内容とその基礎となった分析などを説明し、その後、記者との間での質疑応答が行われる。今年1月の政策理事会の分からは議事要旨が作成され、2月19日に初めて公表された。ただし、具体的な反対者の氏名等は明らかにはされていない。これは国を跨いだ中央銀行という特殊性も意識されたものとされている。議事録は作成・保存されており、30年後に発表されるそうである。

 イングランド銀行のように会合終了後、即時に議事要旨を公表するのは極めて異例である。特にイングランド銀行は近いうちの利上げの可能性があり、それに向けたやり取りもすぐに明らかとなる。これを受けて市場がどのような反応を示すのかも注目したい。

 念のため、日銀は発言者の氏名等は明らかにせず、決定会合の内容をまとめたものを「議事要旨」としている。10年後には発言者の氏名とともに、すべての発言を記したものを「議事録」としている。今回のイングランド銀行が即日公表するものや、FOMCの三週間後に公表するもの、そしてECBが今年から公表しているものは、すべて日銀の「議事要旨」に該当するものであり、用語の使い方としては「議事要旨」としたほうがわかりやすい。これに対して、日銀が10年後に公表し、FRBが5年後、ECBは30年後、イングランド銀行が現在準備中とされるものは「議事録」としたほうがわかりやすいと思う。

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by nihonkokusai | 2015-07-31 09:31 | 中央銀行 | Comments(0)

日銀の異次元緩和策の波及経路

 日銀が進めている「量的・質的金融緩和」のメカニズムについて、2015年7月の中曽日銀副総裁の講演要旨を参考に確認してみたい。

 2014年4月に決定した「量的・質的金融緩和」では、物価上昇率を勘案した実質金利の低下を主な波及チャネルとして想定している。つまり2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントと、これを裏打ちする大規模な金融緩和によって「予想物価上昇率」を引き上げるとともに、巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることによって、実質金利を引き下げることが政策効果の起点となる。

 ここで注意すべきは「予想物価上昇率」とは何であるかということになる。物価連動国債の利回りから算出する予想インフレ率「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」を使って岩田副総裁などが説明をするケースもあった。しかし、日本の物価連動国債の市場規模が小さいことや、予想インフレ率が安定しているはずの欧米でもBEIが低下していることを理由に、岩田副総裁自らBEI指標としての信頼性に疑問を呈した。予想物価上昇率は具体的に数値で示すことは、要するに私たちの物価観でもあり、かなり困難である。そのとらえどころのないものを引き上げようとすることは果たして可能なのか。

 日銀による巨額の国債買入により、国債のイールドカーブには下押し圧力が掛かった。しかし、それでも超長期と呼ばれる長い期間の国債利回りの低下は限られている。

 予想物価がとらえることが難しいため「実質金利」も具体的には示すことが困難となる。実質金利低下により民間需要が刺激されることで景気が好転し、需給ギャップが改善するとの日銀の見方にも疑問が残る。

 単純に金利の低下だけで民間需要が盛り上がるものなのであろうか。企業の投資活動などは金利だけを見ているものではないはず。いろいろな要因が重なり合って需要が盛り上がり、その際に金利が低ければその需要を刺激することは可能であろう。しかし、名目だろうと実質だろうと低金利自体そのものが需要を生むわけではない。

 需給ギャップの改善は実際の物価上昇率を押し上げ、実際の物価上昇率が上昇すれば、人々の予想物価上昇率がさらに押し上げられるとの中曽副総裁の説明についても疑問が残る。結果として需給ギャップが改善すれば実際の物価上昇率を押し上げるかもしれないが、異次元緩和から2年が経過しても物価が前年比ゼロ近傍にいること自体、需給ギャップがそれほど改善されていないことを示すことにはならないのか。物価が上がらなかったのは原油価格の下落や消費増税の影響との説明ではあるが、そもそも日銀が大量の国債を買ってマネタリーベースを一気に倍加させると我々の物価上昇期待が強まり、物価も上がるという前提そのものに問題はなかったのか。波及経路に問題があるというより、この前提も検証すべきものではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-07-30 11:02 | 日銀 | Comments(0)

原油価格と物価との関係

 7月27日の熊本での講演のなかで、中曽日銀副総裁は原油価格と物価との関係について以下のような説明をしていた。

 「原油価格は、昨年半ばまでは1バレルあたり100ドルを超えていましたが、その後大幅に下落し、一時は40ドル程度まで低下しました。割合にして、6割以上の価格下落になります。こうした原油価格の下落は、ある程度の時間差を伴いつつ、ガソリン価格や電気代など各種のエネルギー価格の下押しに寄与します。」(中曽副総裁の講演要旨より)

 ここで注意すべき点は、原油価格が100ドル台から40ドル台に下落したことで、コアCPIが2014年4月に前年比プラス1.5%からゼロ近傍に低下したことだけではない。2013年4月の異次元緩和導入時のマイナス0.4%から1年後にプラス1.5%に上昇したことも注目すべきで、物価の下押しは原油価格下落の影響を受けたが、マイナスからプラス1.5%に上昇したも原油価格の高止まりと円安の影響との説明を加えるべきものではなかろうか。

 「その影響は、今年の夏場が最も大きく、消費者物価を前年比で1%程度押し下げると考えられます。逆にいえば、もし原油価格が下落していなかったとすれば、この夏の消費者物価の前年比は、実際よりも1%程度高くなるという計算になります。」(中曽副総裁の講演要旨より)

 実際よりも1%程度高くなったとしても、現在のゼロ近傍からプラス1.0%つまり、前年比1%程度の物価上昇にしかならないことになる(物価目標は2%)。原油価格の下落で日銀の物価目標が達成できなかったとの説明もあったが、それでもまだ足りない1%の説明はどうなるのか。当然ながらその物価を上げる要因であったはずの、岩田副総裁などが指摘していた、マネタリーベースは順調に2倍以上に積み上がっている。

 「また、原油価格が下落し続けるのでない限り、前年比でみたマイナスの影響はいずれなくなります。原油価格の先行きを予想するのは困難ですが、現状程度の水準からごく緩やかに上昇していくと仮定すれば──先物価格などをみると、そのように予想している関係者が多いようですが──、消費者物価の前年比に与えるマイナスの影響は、今年度後半から次第に縮小し、来年度前半には、ほぼゼロになります。すなわち、エネルギー価格のマイナス寄与が剥落するだけでも、この夏と比べて、来年度前半には、物価上昇率は1%程度高まることになるのです。」(中曽副総裁の講演要旨より)

 原油先物はここにきてむしろ下落基調を強めている。中国経済が減速するなか、これまでの原油価格の上昇を期待するより、原油価格は上がりづらくなっている可能性がある。上記のグラフを見てもわかるように、コアCPIとWTIのグラフを重ね合わせるとほぼ連動していることがわかる。つまり前年比でプラス1.0%に原油価格だけの要因で上昇させるならば、原油価格は上昇基調にならないと難しい。日銀の予想した70ドルあたりまでの上昇は可能性がないわけではないが、むしろ今後は下落基調となってしまう可能性もある。そうなればコアCPIは低迷したままとなる。むろん生鮮を除いた食料品の値上げや賃金の上昇による影響も出てこようが、それで2.0%まで物価を押し上げることはかなり困難ではなかろうか。

 だから追加緩和が必要なのかといえばそれも違う。異次元緩和でマネタリーベースを倍にしても原油価格の動向等で前年比ゼロになってしまうのであれば、そのマネタリーベースをさらに倍にしても物価が上がる保証はない。

 それでも期待を引き寄せるためとしてマネタリーベースをさら倍増させるとしても、それを増加させる手段が残っているのかも疑問である。すでに国債発行額の9割も購入している以上、これ以上の国債買入はいずれ買入時に未達を招くことが予想される。未達が続けば年限によっては国債の買い入れそのものを減額する必要もでてくる。恒常的に大量の国債買入が困難になることも予想される。また、ETFやREITをさらに大量に購入するにしても量には限界があり、それで資産価格を上昇させたとしても物価は上がる保証はない。このあたりは過去のバブル時代に経験したことでもある。

 つまり日銀はマネタリーベースを調整目標にしてそれで物価を上げるという理論を止めない限り、その理論の延長線上での追加緩和手段はほとんど有していない。緩和効果を引き出すためには、フレキシブルな政策に転換し、調整目標も金利に戻すなどする必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-07-29 10:03 | 日銀 | Comments(0)

金や原油の先物が下落した理由

 ここにきて商品市況の下げが注目材料となりつつある。金先物は7月23日夜の時間外取引で約5年5か月ぶりの安値を付けた。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物は一時1オンス1072.30ドルと、中心限月としては2010年2月以来の安値をつけた。金先物のチャートをみると下げがきつくなっており、なっている。2009年以来の1オンス1000ドル割れとなる可能性も出てきた。

金の先物よりも早く銅の先物も下落基調となっていたが、銅先物の下落は中国の経済成長にブレーキが掛かっていたことが要因とされる。日本でも一時、電線やマンホールの蓋が盗まれるといった事件が発生していたが、それだけ工業用の金属には需要があった。しかし、その需要がかなり後退しつつあることが銅の先物から伺える。

これに対して金は工業向けの需要とともに、装飾品としての需要があり、中東やインド、そして中国からのいわゆる爆買いが、一時のブームを作っていた。しかし、中国を中心とした新興国の景気減速で、そのような買いも鈍ってきたものと思われる。ただし、金については一般的な価格表示はドル建てあることにも注意が必要となる。つまり、FRBの利上げ観測等により、ドルが上昇して金価格を下支えしていたが、それ以上に価格そのものの下落圧力が強まっているということにもなる。

ここにきて原油先物の下げもきつくなっている。代表的なWTI先物は40ドル台前半から一時60ドル台に回復していたが、再び下落し50ドル割れとなっている。原油価格の下落も中国などの経済減速が影響している。原油先物の上昇を日銀は見込んでいたが、このままでいくと見込み違いとなる可能性も。そのためエネルギーを除く新コアコア指数を持ってきたのかもしれないが、原油価格の下落は物価の上昇抑制要因となる。

貴金属や原油価格の下落は、BRICsと呼ばれる新興国の経済にも深刻な影響を与えかねない。外為市場ではブラジル・レアルとカナダ・ドルは約10年ぶり安値を付け、豪・ドルも6年ぶりの安値をつけるなど資源国通貨が売られている。

7月15日にはカナダ中央銀項が今年二度目の利下げを実施した。これは原油安などによる国内経済や物価への影響を意識したものと思われる。オーストラリアもすでに今年は2度の利下げを実施したが、追加利下げが引き続き検討課題だとスティーブンス総裁はコメントした。

原油価格の下落は中東と、シェールの米国の体力勝負ともなりつつあり、日本などの原油輸入国にとっては恩恵となるが、産油国の経済には当然ながら悪影響となる。

中国を中心とした新興国経済の落ち込みが顕著になりつつある。ギリシャ問題がとりあえず後退し、次の材料を模索している最中にあり、FRBやイングランド銀行の利上げの前に、この商品市況の下落に象徴される新興国経済動向があらためて材料視される可能性が出てきた。

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by nihonkokusai | 2015-07-28 09:41 | 国際情勢 | Comments(0)

金融政策決定会合の回数を削減する理由

 日銀は来年から金融政策決定会合の回数を削減する。具体的には展望レポートを議論・公表する会合を年4回開催し、その間に経済・物価情勢の変化などを議論する会合を開催することで、金融政策決定会合を年8回開催する(従来は年14回程度)とした。

 「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の公表を年4回とする。これまで展望レポートは、4月末と10月末に2回公表されていたが、1月と7月には展望レポートの中間レビューを行っていたことで、こちらが正式の展望レポートに格上げされて、都合年4回とする。

 また、展望レポートで発表していた展望レポートにおける政策委員の経済・物価見通しについて、従来の政策委員の大勢見通しに加えて、全ての政策委員について各委員の見通しとリスク評価を公表するとした。

 そして、決定会合における「主な意見」を作成し、決定会合終了後1週間を目途に公表するとした。決定会合の「議事要旨」は、従来と同様、次回決定会合で政策委員会の承認を受けた後に公表する。つまり、決定会合の内容は決定会合直後の公表文や当日の総裁会見である程度は明らかになるが、もう少し委員間の議論の中身を知りたくても、議事要旨は次回の会合後の公表となる。それでは次回の会合の動向を予想するには議事要旨はタイミングからは役立たない。それを補完する役目のものとなるのであろうか。

 7月21日に発表された6月18、19日開催分の金融政策決定会合議事要旨における、金融政策決定会合の運営の見直しについて検討によると、「金融経済情勢が急激に変化した場合には、これまでと同様に、臨時の金融政策決定会合を開催して機動的に対応するとの認識を共有した」とある。これは政府などにも配慮したものではなかろうか。

 日銀にとっては決定会合の回数がFOMCなどに比べて多く、ECBまでFOMCの回数に揃えてきたことで、日銀もそれに揃えたいとの思いは強かったと思われる。政府の反対などは特になかったのは、日銀プロパーではない黒田総裁であったためとの見方もある一方、イングランド銀行やECBまで年8回に揃えるとなると、日銀も揃えたほうが何かと都合が良いことが多いためと思われる。

 『一人の委員は、情報発信はスピードと内容のバランスが重要と指摘したうえで、「主な意見」を会合後1週間程度という早期に、議事の概要を記した「議事要旨」を次回会合後にそれぞれ公表するのは、良い組み合わせであるとの見方を示した』

 これについては「主な意見」と「議事要旨」の何が違うのかも確認したい。議事要旨の公表を早めた方が良いように思うが、それは物理的に無理があるのだろうか。

 来年の決定会合の日程はまだ明らかにはされていないが、FOMCの日程に合わせてくることが予想される。念のため、2016年のFOMCの日程は、1月26~27日、3月15~16日、4月26~27日、6月14~15日、7月26~27日、9月20~21日、11月1~2日、12月13~14日となっている。

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by nihonkokusai | 2015-07-27 09:42 | 日銀 | Comments(0)

ギリシャの次に気になるイベント

 ギリシャのデフォルトやユーロ離脱の懸念は後退し、市場はあらたな材料を模索しつつある。なかでもFRBの利上げのタイミングなどが次の焦点となりそうだが、ほかにも今後注意すべきイベントがいくつかある。

 FRBの正常化(利上げ)のタイミングについては7月28、29日のFOMCの動向も確認したいが、可能性とすれば議長会見の予定されている9月か12月のFOMCでの決定が予想される。9月か12月かについては市場参加者の見方も分かれている。個人的には前任のバーナンキ議長のテーパリング決定の事例にならい12月のFOMCでの決定の可能性が高いとみている。その後の利上げのペースはそれほど急がないであろう。ここにきて再び原油価格が下落するなど、物価の上昇圧力が抑制されていることもあり、半年の一度程度の利上げペースとなるのではなかろうか。もちろん経済情勢次第の面はあるが。

 FRBと時を合わせて、イングランド銀行も正常化に向けた動きを再び始めている。イングランド銀行のカーニー総裁は7月14日に経済の状況を踏まえると利上げを開始する時期が近づいていると言明した。16日には利上げ時期の決定が早ければ年末ごろになると示唆している。金融政策委員会のマイルズ委員も利上げの時期は近いと語っている。MPCは来年から年8回の開催となる予定だが、今年は毎月開催されている。年末までに利上げを決定してくる可能性は高そうである。

 年内のFOMC、MPCでの利上げの可能性は高く、その後もペースは緩やかながら利上げが継続されるとみている。これに対してECBは2016年の9月まで量的緩和を継続するとしている。日銀も出口すら議論できない状況にあり、IMFからは追加緩和の準備を要請されているぐらいである。ただし、ギリシャへの懸念が後退すればECBが国債を大きく買い入れる必要性も薄れてくる。日本も異常な金融緩和を続けなければいけない状況にあるとも思えず、今後はこの矛盾とともに、FRBとBOE・日銀とECBの方向性の違いが外為市場や債券市場を通じて市場を錯乱する要因ともなりうる。

 そして、ここにきて再び下落基調になりつつある原油価格の動向にも注意が必要になる。米国の生産は減らず、OPECは原油を増産し、中国の需要への不安などが要因となって、WTIは50ドルを再び割り込み、低下圧力を強めつつある。これは物価の上昇の抑制要因となるが、日銀にとっては物価目標達成を難しくさせかねない。日銀は政策目標なり、物価目標なりを修正させる必要も出てくるのではなかろうか。

 原油価格下落の要因ともなっている中国経済の減速も要注意となる。中国ばかりでなく、ブラジルやロシアなど新興国の景気の低迷が、あらたな不安要因となる懸念もある。

 安倍政権の行方についても懸念材料となってきた。安保法案を巡って内閣支持率が低下してきており、株高だけでは支持率を支えられなくなっている。今年9月には自民党総裁選を控え、さらに2016年7月の参院選の動向も注目される。国内では政局の行方も波乱要因となる可能性が出てきている。

 政局と絡み、2017年4月の消費増税の行方も気掛かり。そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、国内景気への影響とともに、財政への影響も懸念される可能性がある。戦後、日本で初めて国債を発行せざるを得なくなったのは1964年の東京オリンピック開催が大きな要因となっていた。

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by nihonkokusai | 2015-07-26 11:04 | 投資 | Comments(0)

2%の物価目標が達成できない理由

 7月16日にブルームバーグは「西村東大教授:「2年あり得ない」、無理に2%目指すとゆがみ」との記事において、前日銀副総裁の西村清彦東大教授による興味深い発言を伝えていた。

 2013年3月19日に西村氏は日銀の副総裁を退任した。同時に白川総裁も退任し、3月20日からは黒田総裁を中心に新体制がスタートした。それから時を置かずに、4月の金融政策決定会合で日銀は、2%の物価目標を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するとして「量的・質的緩和策」を決定した。

 この「量的・質的緩和策」について西村氏は下記のように評した。

 「退任後、『2年』で達成するという公約を聞いたときはさすがに驚いた。CPIの構造的な問題を考えれば、2年というのがいかにあり得ないか、ということが分かる。これは恐ろしく大胆なことをやるなと思った。しかし、出てきた政策は新しいものは何もなく、ただ単にたくさんやるというだけだったので、大丈夫なのかなと思った」(ブルームバーグ)

 なかなか味わい深い発言である。この発言にはいくつか確認すべき点がある。そのひとつが「CPIの構造的な問題を考えれば、2年というのがいかにあり得ないか」という点である。これは期待や気合いでどうなるものではない。

 「消費者物価では持ち家に住むことも家計消費とみなし、実際に支払うことのない帰属家賃が民間家賃から推計されて加えられている。家賃はコアCPIの2割を占め、全体に与える影響が大きいが、一貫してマイナスで推移しており、5月は0.3%低下した」(ブルームバーグ)

 つまり2%の物価上昇を達成するためには、帰属家賃に制度的な下方バイアスがあるため、このマイナス分を他のものでカバーする必要がある。しかもそれは他のものが前年比2%を大きく超えるものとならなければ、全体としての前年比2%達成は困難となる。

 西村氏は「原油価格にもよるが、1~1.5%は比較的早く可能だと思う。しかし、帰属家賃の存在は大きいので、それ以上にふかす必要が本当にあるのか、もう一度考え直す必要がある」とも発言した(ブルームバーグ)。

 2013年4月の異次元緩和後の消費者物価は時を置かずに上昇した。通常、金融政策にはタイムラグがあるが、これは期待発生というよりも、2012年11月の安倍自民党総裁の輪転機ぐるぐる発言をきっかけとした急激な円高調整、つまり円安による効果と、原油価格が高止まりしていたことが背景にあった。コアCPIは2014年4月に前年比プラス1.5%まで上昇した。このように原油価格次第では前年比プラス1.5%あたりまでの上昇は可能のようである。

 「CPIの構造的な問題を考えれば、2年というのがいかにあり得ないか」というのはこのような理由による。そのあとの「出てきた政策は新しいものは何もなく、ただ単にたくさんやるというだけだったので、大丈夫なのかなと思った」との発言は、2倍、2倍と殊更大きさを主張していたが、異次元緩和と称したものの次元は変わらず、ただ量を増やしたものであり、無理に物価を上げさせるような政策は含まれていなかったということであろうか。「ただし、大丈夫なのかな」とはそのような意味であろうが、その量をつくるために国債を大量に買い入れてしまったことで、出口政策を困難にさせる。

 「西村教授は黒田総裁が量的・質的金融緩和の出口を議論するのは時期尚早と言い続けていることにも懸念を示す。「皆、量的・質的金融緩和には本当に出口があるのか心配している。金融政策決定会合で出口について議論し、それを公にしないといけない」と語る。」(ブルームバーグ)

 債券市場から眺める限り、日本は米国のように簡単にテーパリングができる保証はない。過去に日銀は一度も国債買入を減額したことがない。それはそれによる債券市場への影響を恐れたためである。どのようなタイミングで出口政策を実施するのかではなく、そもそも出口政策は可能なのかという疑問が残る。

 「「昔であれば『民は由らしむべし、知らしむべからず』で良かったかもしれないが、今は市場があるので知らせなければ混乱が生じる。市場と対話することが大事だ。何度か失敗するかもしれないが、お互いにそこで学習していくわけで、対話もせず、お互い学習もしないと、混乱が起こった時に対応しようがない」と西村氏はコメントしている。

 まさにその通りで、2%の物価目標に自信があるというのであれば、出口政策はどのように実施するのかをマーケットに事前に知らしむことが重要である。それは市場が不安要素で不安定になっているときより、安定しているときが望ましい。まさにいまがそのようなタイミングではなかろうかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-07-24 09:40 | 日銀 | Comments(0)

日銀は食料品の値上がりに期待か

 日銀は消費者物価指数の基調を把握するため、新しい指標に着目し始めたようである。これは金融政策の目標に置く生鮮食品を除いた指数から、昨夏以降の原油安の影響が残るエネルギーも除いたものとなり、加工食品やサービスの値上げなど足元の物価動向を確認する狙いがあるようで、新指標は7月から日銀の金融経済月報に掲載を始めた(7月18日の日経新聞電子版の記事より一部引用)。

 7月の金融経済月報における「消費者物価の基調的な変動」のグラフには、6月までなかった「除く生鮮食料・エネルギー」のグラフがそれとなく差し込まれている。原油価格の下落により、消費者物価指数(除く生鮮)の前年比は縮小した。しかし、エネルギー関連を除くとその落ち込みは緩やかなものとなる。さらに、生鮮ではない食料品の値上げが続いていることで、ここにきては緩やかに上昇しつつある。日銀総裁は会見で何度も繰り返しているように、物価の基調はしっかりしていることを示すにはちょうど良い指標となり、今回から月報にも取り上げたものとみられる。

 日銀の黒田東彦総裁は21日のバンコクでの講演後の質疑応答で、国内のインフレ率について、労働市場の引き締まりを背景に、向こう数か月で相当加速するとの見通しを示した(ロイター)。

 黒田総裁の物価見通しの強気の背景には、生鮮食料品とエネルギーは除いた指数での上昇が強く意識されているのではないか。原油価格とコア消費者物価指数の連動性は高く、原油価格の動向に影響を受けやすい。ここにきてのコア指数の前年比がゼロ近辺となっているのは、エネルギーの影響が大きい。7月から9月にかけてコアCPIは一時的に前年比でマイナスになる可能性も指摘されている。しかし、エネルギーを除くと原材料価格の高騰や円安、人件費上昇の転嫁を受けた生鮮ではない食料品の価格上昇の影響などが受けやすくなる。

 異次元緩和というかアベノミクスは、円安を加速させたことは確かである。その円安により輸入価格が上昇し、7月からはチョコレートやパン、ソースなどの値上げも相次いだ。食品関連の値上げが一段と広がりをみせ、それが外食などにも影響を見せ始めている。アルバイト代の上昇などから昼の弁当も値上げが起きているとか。

 この流れは当面続くものとみられ、円安基調に変化が見られなければ、黒田総裁の発言のように、年末に向けて消費者物価指数(除く生鮮食料・エネルギー)は前年比が上昇してくることも予想される。

 アベノミクスというか異次元緩和は円安という経路を通じて、物価を上げることになるかもしれない。ところが、安倍晋三首相はアベノミクス推進に伴う円安進行について、円を安くすることが政策の目的ではないとし、日銀による物価安定目標の実現をめざした大規模な金融緩和の結果だと今年3月の予算委員会で発言していた。

 黒田日銀総裁は同じ委員会で「金融緩和の目的はあくまで物価安定目標の達成であり、為替レートをターゲットにしたものではない。金融政策で為替レートを動かそうとか、特定のレンジに持っていこうというものではない」と強調した。

 アベノミクスも異次元緩和も円安が目的ではないとして、結果としては円安となり、それが物価上昇要因となったことも確かである。労働市場の引き締まりも、その影響は徐々に現れてくると思われる。それにより2%までの物価目標の達成も可能となるのか。いずれにしても大胆な緩和からすでに2年以上経過しており、物価については日銀の想定通りにはなっていないものの、食料品などの値上がり次第では物価は再び上昇基調となる期待もあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-07-23 09:22 | 日銀 | Comments(0)

都銀は1年ぶりに債券を買い越しに

 日本証券業協会(JSDA)は7月21日に6月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

 6月に都銀は131億円の買い越しとなった。都銀の買い越しは2014年6月以来、1年ぶりとなる。国債投資家別売買高でみると超長期債を1464億円、長期債を796億円買い越し、中期債を1891億円売り越している。

 信託銀行も5月に続いて6月も買い越しとなった。7661億円の買い越しで、国債投資家別売買高でみると超長期債を3382億円、長期債を2597億円、中期債を251億円それぞれ買い越しとなった。年金による国債ポジションの圧縮は一服し、むしろ買い戻しているような動きとなっていた。

 農林系金融機関は4844億円の買い越し。こちらも超長期債、長期債主体に万遍なく買い越しとなった。信金は2503億円の買い越し。その他金融機関も2460億円の買い越し。生損保は超長期債主体に4241億円の買い越し。

 外国人は4385億円の買い越し。こちらは12か月連続の買い越しとなった。中期債を7251億円買い越した。ギリシャへの懸念の強まりにより、逃避的な日本国債への海外投資家からの買いが中短期主体に入っていたものと思われる。

 これに対して地銀が4757億円の売り越しとなった。長期債を3607億円、超長期債を1378億円売り越していた。また、「その他」も5605億円の売り越しに。中期債を5217億円、超長期債を3891億円、長期債を1107億円それぞれ売り越し。「その他」のなかで具体的にどの金融機関が売り越していたのかはわからない。参考までにゆうちょ銀行などは「その他」に入っている。

 6月の債券相場を振り返ってみると、当初は米国やドイツの長期金利の上昇を背景に日本国債も売られ、10年債利回りは0.5%台に乗せた。FRBの年内利上げ観測や、5月のユーロ圏CPIが前年比プラスとなったことなども影響か。ドイツの10年債利回りは一時1%台に。18日のユーロ圏財務相会合ではギリシャ支援をめぐる合意は得られず、22日に臨時のユーロ圏首脳会議を開くことを決めたが、ギリシャへの懸念が再び強まってきた。債券先物は再び147円台を回復。ギリシャへの支援協議が暗礁に乗りかけ、債券先物は147円近辺での動きとなった。

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by nihonkokusai | 2015-07-22 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

国債のロールオーバーはどこまで可能か

 2015年3月末現在の日本国債の残高は約1000兆円存在する。国債残高の数字のとらえ方はいろいろあるが、3月末の国債及び借入金並びに政府保証債務現在高で、内国債と政府短期証券を合わせた金額が約1000兆円となる。このうち償還が主として税財源により賄われる債務は普通国債と呼ばれる部分で、この金額は約774兆円となる。

 普通国債のほとんどを占める建設国債と赤字国債には、60年償還ルールが存在している。これはたとえばその年度の建設国債を補う分として、たとえば10年国債を発行したとする。それは10年後には六分の一だけ償還され、残りの六分の五は借換債が発行される。最終的にはすべての建設国債と赤字国債は60年かけて償還される仕組みとなっている。2015年度の国債発行額の約170兆円のうち約116兆円は借換債である。

 この60年償還ルールで国債が発行されたのは1968年5月からであり、それからまだ60年が経過しておらず、このとき発行された国債もいまだにすべて償還されているわけではない。

 このように日本では60年償還ルールがあるため、巨額の国債がそのルールの下でロールオーバーされる仕組みとなっている。

 しかし、投資家にすれば60年償還ルールとかは関係ない。保有している国債は2年債ならば2年後に償還される。そのときに再び償還金額に見合う国債を購入すれば、国債の残高は維持される。1000兆円という国債が積み上がっていても、それだけの国債を保有できる投資家が存在していれば、国債残高は維持される。ただし、新規で発行される国債についてはあらたな買い手を探す必要がある。これについては日銀の異次元緩和以前でも、それを手当できる投資家が確かに存在していた。

 ところが、日銀の異次元緩和による大量の国債買入により、すでに国債の残高全体の四分の一もの国債を日銀単体が保有する事態となり、国債を保有する民間投資家の分が減少してしまっている。国債の保有額を落とした投資家としてメガバンクがある。日銀の国債買入に対応したといった見方もあるかもしれないが、日銀の超過準備に0.1%の付利もついており、リスクフリーで0.1%でも利子があれば、こちらに置いておくという選択もありうる。また、今後のBIS規制を睨んだ動きともいえるかもしれない。BIS規制を意識するとなれば、メガバンク以外の金融機関もいずれ国債が保しづらくなる懸念もある。

 これまで大口の国債保有者であった投資家に異変も起きている。公的年金は運用そのものが見直され、GPIFの運用は国債運用主体から株式などの運用にシフトしている。この流れは、ゆうちょ銀行などにも及ぶことが予想される。ゆうちょ銀行については貯金の残存額の減少もあって、すでに国債の残高は年々減少している。

 生保や損保についても、国債の残高を大きく増やせるような状況ではなくなっている。つまりは国内の投資家に関しては、国債保有額のキャパシティが停滞もしくは減少している。そのなかにあって、それを日銀が異次元緩和という名目でカバーしているのが現状である。世界的なリスクが立て続けに起きたことで、海外投資家が日本国債の保有額を短期債主体に大きく増加させてきた。しかし、ギリシャ問題も後退しつつあり、FRBやイングランド銀行は正常化に向けて動きつつある。海外投資家もここからさらに日本国債を買い増す必要性はなくなってくるのではなかろうか。

 今後どれだけ日本国債を投資家に保有してもらえるのか、具体的な数字は海外投資家も加えると不確定で具体的な数字は出せないが、仮に日銀が大量の国債買入を減額するようなことになると、その分をどの投資家がカバーできるのかは、日銀の異次元緩和以前よりは、かなり不透明になっている。投資家の日本国債の保有余力はかなり減少していると予想される。これはつまり、日銀の出口政策をさらに難しくさせる要因ともなりうるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-07-21 09:49 | 国債 | Comments(0)
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