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協議決裂、今後のギリシャの行方

 欧州連合(EU)は27日開いたユーロ圏財務相会合で、ギリシャ側が求めた6月末の金融支援の期限延期の要求を退けた。ギリシャはIMFへの今月の返済分を月末一括とすることを要請しており、30日に15億ユーロ超の支払いをしなければ、ギリシャのデフォルトの懸念が出てくる。

 ECBは28日にギリシャ国内の銀行の資金繰りを支えてきた「緊急流動性支援(ELA)」の上限拡大を見送った。ELAとはユーロ圏各国の中央銀行を経由してECBが資金供給する仕組みであり、資金流出が続いているギリシャの金融機関の資金繰りはこの制度に支えられてきた。今回は前週と同じく約900億ユーロで据え置く方針を決めたことにより、約900億ユーロの枠内であれば資金供給をするが、それを超える分については供給しないことになる。資金供給は維持との見方もできるが、それで間に合うとは思えず、あらたな資金供給は停止との見方となろう。

 ECBがギリシャの銀行への追加的な資金繰り支援を見送ることを決めたことにより、チプラス首相は28日夜の国民向けテレビ演説で29日から銀行を休業させ、資本規制を導入すると発表した。これはギリシャ中銀が銀行を休業させ、預金の引き出しを制限するよう要請してきたことによるものである。この国内銀行の営業停止は7月6日まで、翌7日から再開の見通しとギリシャの主要紙が報じている。

 ECBは声明で、今後ギリシャが強力な資本規制を導入したり、欧州連合(EU)側の財政改革案に同意したりすれば「(据え置きの)決定を見直す用意がある」と付け加えている。資本規制は導入されたが、EU側の財政改革案への同意については5日の国民投票が決定されているため、その結果を確認した上でのギリシャの動向次第ということになろうか。ただし、もしECBが支援そのものを絶つことになれば、銀行が政府の借金に応じることもできなくなり、ギリシャ政府の資金繰りが早晩行き詰まることになる。ギリシャは7月20日にECBに対して約35億ユーロの返済も抱えている。

 いまのところはっきりしているのは、EUとギリシャの支援協議は決裂し、何かしらの奥の手でもない限りは30日までのIMFへの返済は不可能となる。チプラス首相はIMFへの債務の返済はできないという見方を自ら初めて明らかにしている。IMFは最終的に理事会で「デフォルト」を認定することになるため、猶予される余地もあるものの、早ければ7月1日にデフォルトが確定する可能性がある。

 ただし、7月5日のギリシャの国民投票を控え、その結果次第でも状況は変わる。5日のギリシャの構造改革案の是非を問う国民投票において、財政緊縮策を求めるEU側の再建策に反対となれば、政府の資金繰りに窮することになり、このままユーロ離脱という可能性も出てくる。

 これに対して財政緊縮策を求めるEU側の再建策に賛成となれば状況はまた変わる。ギリシャのバルファキス財務相はユーロ圏他国財務相に対して「国民投票で再建策が支持されれば履行する」と返答したそうであり、支援を受けられる可能性が出てくる。また、チプラス首相は緊縮策を国民が受け入れる結果が出れば、首相を辞任する可能性を示唆した。首相が辞任し総選挙となれば、その結果次第となるが、ユーロ残留となり、あらためて支援を要請するという可能性もある。

 いずれにせよギリシャのデフォルトの可能性は高まってきたが、それについては6月30日までのギリシャの動向と、7月1日以降のIMFの決定次第となる。また5日の国民投票の結果を確認する必要も出てくるか。その5日の国民投票の結果次第では状況も変わりうる。国民投票の結果次第で、今度はギリシャのユーロ離脱の可能性が意識されることになる。

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by nihonkokusai | 2015-06-30 09:32 | 国際情勢 | Comments(0)

消費者物価指数を上げる工夫より重要なこと

 6月26日に発表された5月の消費者物価指数は日銀が目標としている総合で前年比プラス0.5%の上昇、ベンチマークとなっている生鮮食品を除く総合、いわゆるコア指数は前年比プラス0.1%の上昇、食料及びエネルギーを除く総合、いわゆるコアコアは前年比プラス0.4%の上昇となった。

 今回からは前年の消費増税の影響がなくなることで、この数字を前回までの日銀が資産した消費増税の影響分を除いたものと比較することになる。コア指数については前回が前年比ゼロ%となっており、また予想もゼロ%となっていたことで、やや予想を上回った格好となった。

 生鮮食品を除く食料、宿泊料、外国パック旅行などがプラスに寄与した。しかし、原油安の影響により電気代、都市ガス代などのエネルギーが上昇幅を抑えた格好に。

 今後の消費者物価指数はコア指数でいずれ7~9月あたりに前年比マイナスに落ち込むとの予想が出ているが、マイナスは一時的か。ただし、いずれにしても日銀の物価目標2.0%には大きな隔たりがある。

 日銀の前田調査統計局長は、25日に内閣府で開かれた統計委員会で、日銀が公表している企業向けサービス価格指数の事務所賃貸と同程度の品質劣化が生じていると仮定すると、家賃は「消費者物価(CPI)全体を0.1ポイント以上、場合によっては0.2ポイント」押し上げるとの試算を示した。前田局長は統計委員会のメンバーで、個人的な意見と断った上で述べたそうである(ブルームバーグ)。来年8月に総務省は5年に1度のCPIの基準年改定を予定している。

 消費者物価では「帰属家賃」が民間家賃から推計されて加えられている。持家の帰属家賃とは、「実際には家賃の受払いを伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)についても、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般市場価格で評価した概念的なものである。しかし、家賃はコアCPIの2割を占め、全体に与える影響が大きい。帰属家賃はほぼ一貫して前年同月比0.3~0.4%程度の下落率となっており、CPI全体の伸びを押し下げる要因になっていた。

 日銀はこのあたりのことは重々承知の上で、2013年4月の量的・質的緩和政策を決定したはずである。2年程度の期間を念頭に置いて、2.0%の物価目標をできるだけ早期に実現するとした。この時点でも帰属家賃を加味して、原油価格の変動まで意識した上での2.0%のハードルは予想以上に高いものであったはずである。

 しかし、前年比での物価が回復基調となっていたなかでの円安の影響もあり、異次元緩和導入後のコアCPIは1年後に前年比プラス1.5%まで回復した。しかし、それから1年後には途中、量的・質的緩和の拡大があったものの、前年比ゼロ%近くまで低下している。CPIがプラス1.5%となったのも、そこからゼロ%になったのも、日銀の大量の国債買入がどのように影響を与えているのかとの説明はなされていない。

 日銀にとっては2年で2%で2倍といったような数字を前面に押し出したことが、かえって裏目に出たことになる。世界的なリスクの後退、米経済の回復とそれによる米国株式市場の上昇、そこに円安や公的年金当の買いも手伝って東京株式市場は上昇した。賃金等も政府の働きかけもあって回復している。

 日銀がもう少しフレキシブルな金融政策であったならば、物価の居所はさておき、金融緩和の影響は出ているとの主張もできなくはなかったはずである。しかし、厳格な物価目標を設定したばかりに、その目標が達成出来ない以上、成果があったと言うことには無理がある。

 日銀の前田調査統計局長の発言は、10年前の基準改定の際にも日銀が要望した「家賃の品質変化、特に建物の経年に伴う品質低下を指数に反映させることを検討してほしい」との意見の延長線上にあろう。しかし穿った見方から、CPIの基準の改定を利用して少しでも物価目標に近づけさせたいのかと取られてしまう可能性もある。

 消費者物価指数は、量や気合いやレジーム・チェンジとかでは動くものではないことは、多くの日銀関係者は良くわかっているはずのものである。目標達成やその時期に縛られるのではなく、もう少しフレキシブルな金融政策に戻すことを考える時期に来ているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-06-29 09:16 | 日銀 | Comments(0)

日銀は現実を見て量を減らすべき

 日銀はこれからどうするのか。足元の消費者物価指数は前年比ゼロ%近くにおり、いずれマイナスとなるとの予想となっている。しかし、その後は次第に前年比のプラス幅が上昇していくとの予想である。その前年比は果たしてどの程度まで上昇するのか。原油価格や為替の動向次第の面もあるが、2.0%の物価目標の達成は容易ではない。少なくとも異次元緩和から2年以上経過して、物価目標達成どころかマイナスに落ち込むこと自体、日銀のリフレ政策が誤りであったことを示している。

原油価格下落の影響はたしかにあった。あったというよりも物価は期待インフレとかによるものではなく、原油価格や為替の影響を受けやすいことを示した。日銀が大量の国債を買えば、物価を動かせるとの理屈は否定されたと言わざるを得ない。消費増税が物価の上昇を抑制したとの主張も、異次元緩和でレジームチェンジが起きなかったことの言い訳にすぎない。

仮に今後、物価目標が達成されたとして、果たしてそれを日銀の異次元緩和によるものと、どれだけの人が考えるであろうか。原油価格の上昇や通貨安、さらにはリスク後退による景気の持ち直しによる影響などからの説明の方がすんなりと納得できよう。金融経済は魔法やおとぎ話、フォースや気合いの世界ではない。

日銀だけでなくイングランド銀行、FRB、ECBも大量の国債を買うという手段を取らざるを得なかったことも事実である。しかし、その目的は景気であったり物価であったり雇用であったり、通貨安であったりと様々で、まさに量的緩和は魔法の杖のようにみえる。しかし、その実態は中央銀行が国債主体に金融資産を大量に買い上げて、市中の資金量を単純に増やしているだけである。

大量に資金が供給されても、巨大なプールに大量の水が蓄えられるようなもので、それが何かのインセンティブに繋がるのかは、お金の量とは別な次元で存在しているはずである。危機的状況時にはこのような見せ金も一定の効果はある。しかし、それはあくまで危機回避のためのものであり、量を見て雇用を促進したり、賃金を上げられるものでもない。

日銀の異次元緩和の物価への波及について、日銀のマネタリーベースの増加と目標とする物価の推移を比較して、ほとんど効果がないことが示された以上は、本来ならば政策そのものを見直すことが必要になる。発行される国債の9割も中央銀行が吸い上げるような事態を続けることは、国債市場の流動性低下ばかりでなく、市場の需給をも歪める。今後のあらたな危機への対応も困難になりうる。

ここは早期に国債の買い入れ額を調整し、金融政策の目標であるマネタリーベースの引き下げを行うべきではなかろうか。大量の国債買入に一定の効果はなかったと認めれば、その金額を削減しても影響が限定的であることを丁寧に説明すれば市場の動揺もある程度は抑えられる。もちろん効果がないと認めなくとも、税収の予想以上の伸びなどから、その波及経路はさておき、異次元緩和の効果は十分にあったとして金融政策の変更を行うことも可能であろう。

マネタリーベースを一定水準に削減させ、日銀としては史上初めてとなるテーパリングも成功させる必要がある。その上であらたな金融政策の目標を設定し直すことも必要となる。操作目標を再び金利に戻すことも一案か。なかなか難しい選択ではあるが、このようなことを実施しなければ、日銀は身動きが取れないばかりか、本当に通貨や国債の信認を低下させてしまうような事態が起こる懸念すらある。日銀には英断が求められよう。

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by nihonkokusai | 2015-06-28 10:22 | 日銀 | Comments(0)

円安で困るのは誰なのか

 日銀の黒田総裁は6月10日の衆院財務金融委員会で民主党の前原氏への答弁において、「実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と語った。実質実効為替レートは昨年、すでに1973年以来、42年ぶりの水準となっている。何を今更との発言であったものの、市場は「ここからさらに(実質実効為替レートが)円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と()の部分を無視して反応してしまったのか。黒田総裁は「米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げプロセスに入るから、今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しい」とも発言していた。

 この黒田総裁の発言をきっかけに10日のドル円相場は124円台半ばから122円台半ばに急落したとなれば、市場の早とちりとなろう。黒田総裁は16日の参院財政金融委員会において、10日の衆議院財務金融委員会での実質実効為替レートに関する発言について「名目為替レートへの評価や先行きについて申し上げたわけではない」との認識を示した。黒田総裁は、「あくまで(実質実効為替レートについての)質問があったので、それに沿って理論的な説明をした」と指摘した。

 円安になって誰が困るのか。まずは一部の政治家が困る。米議会で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の合意に欠かせない米大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議が重要な局面を迎えていたことで政治的な配慮があった可能性もある。

 それよりも6月17日のFOMC後の会見で、イエレン議長は「ドル相場の上昇にもかかわらず、年内にある程度の引き締めを行うことを正当化するほどに経済は良好に推移するとFOMCは見ている」と発言していたが、利上げを控えて思惑的なドル高については牽制したいところが本音であろう。特に昨年10月の日銀の異次元緩和パート2ではFRBのテーパリング終了にタイミングを合わせた格好となり、その後のドル円の110円割れから120円台の上昇を招いている。さらに今年1月のECBの量的緩和の狙いはユーロ安であった。

 日本の消費者物価指数は5月はコア指数プラス0.1%となっていたが、いずれマイナスになる可能性がある。年末に向けての回復を期待しているとしても、2%という物価目標にはほど遠い。その物価上昇には円安が直接的な影響を与えうる。それにも関わらず、FRBが金利引き上げプロセスに入るから今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しいと黒田総裁の発言には違和感を覚える。日銀の物価目標達成のためにはアナウンスメント効果を狙い、FRBの利上げに向けた動きと日銀の大胆な金融緩和は円安・ドル高要因にもなりうる、との発言があったとしてもおかしくはない。

 この背景には、今年1月に「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた米国のルー財務長官の存在に加え、イエレン議長あたりからも何かしらの円安への牽制の動きがあったみてもおかしくはないのではなかろうか。

 円安は輸入品の価格上昇により中小企業や我々の消費にも悪影響を与えるが、それ以上に米国政府やFRBにとってもこれ以上の円安は望ましくないとの認識ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-06-27 09:12 | 為替 | Comments(0)

どうなるギリシャの円建て外債

 ギリシャのチプラス首相と債権団との協議はいまだ決着が付かず、フランスのオランド大統領は合意の見込みはあるとの認識を示したものの、ドイツのメルケル首相は、協議は後退しつつあるようだと述べたそうである。ユーロ圏財務省会合(ユーログループ)は27日に再び会議を開く予定となっている。

 このギリシャの債務問題、意外なところで日本にも影響が出る恐れがある。ギリシャ政府が抱える債務返済案件のうち、民間向けで最も早く期限を迎えるのが、7月14日の円建て外債(サムライ債)であった(日経新聞)。

 国内で海外の発行者が発行する債券のうち、円建てで発行される債券が「円建て外債」であり「サムライ債」とも呼ばれる。1970年代から発行されており、2014年の円建て外債の発行額は2.5兆円を超えている。

 1995年にギリシャの20年国債が円建てで発行されていた(9回債)。発行額200億円で、表面利率は年5.8%。1995年6月入札の20年日本国債の利率は3.7%であり、5.8%の利率は魅力的であったとみられ、国内の投資家が積極的に購入したとされている。

 今回のギリシャの支援協議が合意できないと、この円建て外債もデフォルトとなる懸念が出てくる。金額が200億円ということで発行量はそれほど大きくないため、直接の影響は限定的とみられる。ただし、今後償還を迎えるギリシャのサムライ債もデフォルトとなる懸念が出てくる。ギリシャは1996年1月と8月にも20年物国債のサムライ債(12回、15回債)も合計700億円発行している。

 注意すべきは2010年に発生したギリシャ危機により、ギリシャのサムライ債の価格が大きく下落し、さらには計画的なデフォルトが2012年に発生していたことで、金融機関によってはすでに保有するギリシャのサムライ債は売却していたところも多いはずである。現在保有している投資家は、かなりのリスクがあっても保有できる国内外投資家とみられ、その意味でも影響は限定的かとの見方もできる。ただし、間接・直接に関わらず個人投資家の保有もあるとみられ、こちらの影響は気掛かり。

 サムライ債をめぐる過去のデフォルトは、たとえば2001年12月のアルゼンチン(1915億円)債がある。この際には元本が削減された上で、2005年に新債券と交換する手続きが実施された。ほかの事例としては、金融危機の影響に伴う2008年9月のリーマン・ブラザーズ債(1950億円)や2008年10月のアイスランドのカウプシング銀行債(780億円)がある。また、インドネシアの金融・不動産企業や中国のノンバンクの事例もある。

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by nihonkokusai | 2015-06-26 09:15 | 債券市場 | Comments(1)

GPIFの国債売りが止まるが、海外からの買いも止まる

 日本証券業協会(JSDA)は6月22日に5月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

 5月に都銀は5852億円の売り越しとなっていた。これで11か月連続での売り越しとなる。国債投資家別売買高でみると中期債を3637億円売り越し、超長期債を1854億円売り越している。

 売り越しが最も大きかったのは「その他」の1兆2669億円の売り越し。こちらは長期債を1兆21億円、超長期債を4039億円、中期債を3793億円売り越している。「その他」のなかで具体的にどの金融機関が売り越していたのかはわかからない。参考までにゆうちょ銀行は「その他」に入っている。

 買い越し額が最も大きかったのは、信用金庫の7609億円で、超長期債を2043億円、長期債を2331億円の買い越し。次に大きかったのは地銀の5701億円、長期債を4755億円、中期再を1287億円の買い越し。次が「その他金融機関」で5026億円の買い越し。

 4月に1兆8365億円の買い越しとなっていた外国人は680億円の買い越しにとどまった。11か月連続の買い越しとはなったが、買越額は大きく減少している。5月に外国人は中期債を5007億円買い越していたものの、長期債を2256億円売り越し、超長期債を1989億円売り越していた。日銀とともに国債を買い支えていた海外勢の買いの勢いが後退したことは要注意となる。

 そして、今回は信託銀行が3346億円の買い越しとなった。これは8か月ぶりの買い越しとなる。中期ゾーンを売り越して長期債を買い越した格好。どうやら年金による国債ポジションの圧縮は一服してきた模様である。

 農林系金融機関は4356億円の買い越し。生損保は2893億円の買い越しにとどまったが、引き続き超長期債主体の買い越しとなっていた。

 5月の債券相場を振り返ってみると、日本の大型連休中にスピードを増してドイツを主体に国債が大きく下落した。これを受けて日本の債券市場も調整を余儀なくされた。5月12日に10年債利回りは0.470%まで上昇した。その後は中短期債主体に押し目買いが入り、5月27日に10年債は0.4%割れとなった。

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by nihonkokusai | 2015-06-25 09:22 | 債券市場 | Comments(0)

ギリシャの一発逆転劇

 6月22日にギリシャのチプラス首相は、土壇場で新たな財政改革案を提出し、早期退職に伴う年金受給を制限することや付加価値税率の引き上げなどを盛り込んだ財政再建の最終案を持ち込んだ。首脳会議に先立って開いた財務相会合では、週内合意を目指す方針を確認し、首脳会議では合意に至るまでにはさらに協議が必要として結論をいったん先送りとした。ただし、ユーロ圏首脳らはギリシャ政府が新たに提出した財政再建策を、数日中の合意に向けた土台になると評価しており、順調に行けば、24日中に財務相レベルで最終合意を目指し、25日の首脳会議で正式決定となる。交渉の行方はなお予断を許さないものの、24日夜までに6月末に迫った金融支援の期限延長などで合意できる模様である。

 ここにきて欧米の市場動向をみると、ある程度このシナリオを想定していたものとみられる。やや楽観的かともみられたが、少なくともチプラス首相だけでなくギリシャ国民にとっても、ユーロ離脱という選択肢は考えづらい。もしデフォルトという事態になってしまうと、そのユーロ離脱の可能性が高まることになる。ギリシャのチプラス首相としてもユーロ離脱という最悪の事態は回避したいはずであり、22日にブリュッセルの欧州連合本部で「ユーロ圏の中で成長を取り戻す」とチプラス首相は記者団に語りかけたそうである。

 そこで考えられるのは、最後の最後にある程度、債権団の納得がいく案を提出することになる。時間切れ寸前まで粘ることによって反緊縮にも配慮した格好ともなる。まさに土壇場での逆転劇となるが、その案が提出されるまで、しかもその案の内容が合意に至るような内容なのかを確認できるまでは、安心出来る状況ではなかった。

 また、このタイミングでのチプラス首相の訪露はドイツなどの態度を硬化させた可能性がある。22日の緊急のユーロ圏首脳会議の舞台裏で何が起こっていたのかは想像するほかはないが、ドイツなどがギリシャに対して最後通牒を突きつけてきた可能性もある。また、ギリシャ中銀のストゥルナラス総裁が国内銀行に対し、22日のユーロ圏緊急首脳会議でギリシャ政府が債権団と合意できない場合、23日の「困難の日」に備えるよう警告していたように、ギリシャ国内からも政権への突き上げがあり、改革案を提出せざるを得ない状況にチプラス政権が追い込まれていた可能性もありうる。与党・急進左派連合(SYRIZA)にとっても年金支給が止まることによる年金受給者への影響も避けたかったはずである。

 いずれにせよ6月末が期限のギリシャのデフォルトリスクは後退した。しかし、これで問題がすべて解決できたわけではない。ユーロ残留のためにも十分な支援を望むのであれば、チプラス首相は妙な外交手腕などは使わず、しっかり国民と向き合って、ある程度の緊縮策を呑まざるを得ないことを丁寧に説明し、同意を得ることが必要になろう。

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by nihonkokusai | 2015-06-24 09:09 | 国際情勢 | Comments(0)

日銀の決定会合の回数を減らす理由

 6月18日の日銀の金融政策決定会合後に「金融政策決定会合の運営の見直しについて」が発表された。金融政策に関する審議と情報発信を一層充実する観点から、金融政策決定会合の運営を見直すことを決定したそうである(全員一致)。

 このような金融政策の制度の変更はそれなりに大きなニュースとなりうる。黒田総裁就任以前の日銀であれば、このような発表には事前に何らかの報道があってもおかしくはなかった。このため、この発表そのものが異次元緩和同様にサプライズであった。どのような過程を経て発表に至ったのかは不明ながら、今回も関係者には厳重な箝口令が敷かれていた可能性があるとともに、極めて少人数で話しが進められていた可能性もある。

 もうひとつ興味深かったのは発表のタイミングであった。特に急いで変更すべきものでもないが、どうせ変更するのであれば早いほうか良い。6月というタイミングは実施が2016年1月からということで準備期間として半年程度置いたとの見方もできる。もしくは別な事情があった可能性もある(ちなみに今回の変更で日銀法の改正等は必要なし)。また、来年分の会合日程発表が近いためではないかとのご指摘もいただきました。

 肝心の内容は、まず「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の公表を年4回とすること。これまで展望レポートは、4月末と10月末に2回公表されていた。1月と7月には展望レポートの中間レビューを行っていたことで、こちらが正式の展望レポートに格上げされて、都合年4回とするようである。

 次に、展望レポートで発表していた展望レポートにおける政策委員の経済・物価見通しについて、従来の政策委員の大勢見通しに加えて、全ての政策委員について各委員の見通しとリスク評価を公表するとした。どちらが見やすいかはさておき、FOMCのドット・チャートを意識したものといえよう。

 三番目に、決定会合における「主な意見」を作成し、決定会合終了後1週間を目途に公表するとした。決定会合の「議事要旨」は、従来と同様、次回決定会合で政策委員会の承認を受けた後に公表するそうである。つまり、決定会合の内容は決定会合直後の公表文や当日の総裁会見である程度は明らかになるが、もう少し委員間の議論の中身を知りたくても、議事要旨は次回の会合後の公表となる。それでは次回の会合の動向を予想するには議事要旨はタイミングからは役立たない。それを補完する役目のものとなるのであろうか。

 四番目の金融政策決定会合の開催頻度の見直しが今回の最大の見所となった。展望レポートを議論・公表する会合を年4回開催し、その間に経済・物価情勢の変化などを議論する会合を開催することで、金融政策決定会合を年8回開催する(従来は年14回程度)とした。

 展望レポートうんぬんの理由付けはさておき、この変更の最大の理由は欧米に合わせるということに尽きよう。注釈でも「米国連邦準備制度、欧州中央銀行においても、決定会合の開催頻度は年8回となっている。また、イングランド銀行も、年8回に変更する方針を明らかにしている。」と指摘している。

 日銀の決定会合は当初、年20回あったものが14回に変更された。この14回とは毎月12回の会合に4月と10月の末に展望レポートを発表するタイミングでの開催を加えることで14回となった。ちなみに4月末と10月末は意外に金融政策変更のケースは多かった。それはさておき、その14回をFOMC並みの8回にするのは、グローバルスタンダードというものを意識した変更と言えよう。

 たしかに14回は多いかなとの声は以前からあった。念のため、これで日銀の政策委員の仕事が減るわけではなく、日銀の他の業務に関わる仕事量には変わりない。日銀の政策委員は金融政策だけを決定するために存在しているのではなく日銀の役員である。

 ただし、業務負担という面では、今回の変更に合わせて、金融経済月報の作成・公表は取り止め、年4回公表される展望レポートに集約されることで、こちらは事務方にとってはかなりの負担減となりそうである。この削減もそれほど市場に影響を与えることはないであろう。

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by nihonkokusai | 2015-06-23 09:34 | 日銀 | Comments(0)

万事休すのギリシャ、一発逆転あるのか

 6月18日のユーロ圏財務相会合では、ギリシャの債務問題を巡って協議したが進展はなかった。財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は会合後の記者会見で「ほとんど進展がなかった」と説明。「ギリシャはユーロ離脱の方向に向いている」とも発言したようである。フィンランドのリンネ財務相からは「最後には何らかの合意に至るとみていたが、袋小路の終わりにほぼ到達したようだ」との発言もあった。

 欧州連合(EU)のトゥスク大統領は22日午後7時(日本時間23日午前2時)から、ブリュッセルでユーロ圏首脳会議を臨時開催すると発表した。その上で、ギリシャ側に交渉打開につながる財政改革案を提示するよう求めた。ギリシャ側から提案があれば、首脳会議前に財務相会合を開く可能性もあると言及した。また、会議にはドラギECB総裁、ラガルドIMF専務理事、欧州委員会のユンケル委員長、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のデイセルブルム議長もあとで参加するようである(ブルームバーグ)

 EU首脳会談は25~26日に予定されているが、そこまで待つことができなくなっていると思われる。また、25日からのEU首脳会談では英国のEU離脱問題など重要案件もあり、時間が取れないとの見方もある。

 いずれにしてもギリシャ側に最後の引導を渡した格好ではあるが、ギリシャが頑なな態度を覆すかどうかは依然として不透明である。ギリシャのチプラス首相は18日から20日にロシアを訪問し、19日にサンクトペテルブルクでプーチン大統領と会談した。ロシアのプーチン大統領はウクライナ情勢を巡って対立する欧州連合にいろいろと揺さぶりをかけている。仮にギリシャがユーロ、さらにはEUを離脱するとなればロシアに接近する可能性もあり、NATOの安全保障が脅かされる危険がある。これを最も恐れているのがドイツのメルケル首相とされる。これを意識したこの時期のチプラス首相の訪露とも言える。

 18日にはギリシャ債権団がIMF抜きで現行の支援プログラムを年末まで延長することを提案するとの独紙の報道があった。それは即座に否定されたが、独紙というところが気に掛かる。火のないところに煙は立たないのではなかろうか。

 いずれにしてもギリシャにとっても最後の切り札となりそうなのがドイツのメルケル首相で、それでも何ら譲歩なしに支援を受けることも考えにくい。ロシアを持ち出してブラフをかけてもむしろメルケル首相の態度を硬化させるだけとなりうる。

 ギリシャの銀行からは15~17日の間に約20億ユーロの預金が引き出されていたようである。ECBからは18日のユーロ圏財務相会合で、ギリシャの銀行が22日に営業できるかどうか確かではないとの見解が示されていた。またギリシャ中銀のストゥルナラス総裁は、国内銀行に対し、22日のユーロ圏緊急首脳会議でギリシャ政府が債権団と合意できない場合、23日の「困難の日」に備えるよう警告したそうである(ロイター)。

 2013年3月にキプロスでは、ギリシャの財政不安の影響により財政破綻の危機に直面し、小切手の換金禁止や1日当たりの現金引き出しを制限するなどの資本規制が実施されたことがある。ギリシャでも来週にも同様の事態が起きる可能性もありうる。

 すでにIMFなどはギリシャを見放す態度を取っている。ギリシャのタイムリミットも6月5日から18日に延ばされ、今度は22日となるが、さすがに限界に近いことも確かであり、何らかの結論が出されることが予想される。その結論を導き出す主役がギリシャのチプラス首相とドイツのメルケル首相となろう。その結論はいまのところまったくもって見えないが、ギリシャの一発逆転はあるのか。それでもギリシャが折れない場合はデフォルトも想定しておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2015-06-22 09:36 | 国際情勢 | Comments(0)

FRBの注目点は利上げ時期と量的緩和の後始末

 6月16日から17日に開かれたFOMCでは、事実上のゼロ金利政策の維持を決めた。すでにデーパリング(量的緩和の縮小)は終了しており、現在のFRBは政策の柱を金利に戻している。ただし、非伝統的な金融政策から伝統的な金融政策への変更、正常化は利上げによって完成されることになる。それはゼロ金利解除となるが、市場の注目はこの利上げのタイミングとその後の利上げのペースに集まっている。

 昨日、イエレンFRB議長はFOMC後の会見で次のような発言をしている。参考までに議長の会見が行われるのは3月、6月、9月、12月のFOMCに限定されている。

 「時に利上げ開始時期に過度の重きが置かれていると強調したい。市場参加者にとり重要なのは、予想される政策軌道の全体図だ」

 今回、FRBは中期経済見通しで2015年の実質GDP伸び率を下方修正、16、17年の成長率は上向きに微修正した。さらにメンバーによる政策金利見通し(ドット・チャート)では、利上げペースが緩やかなものになるであろうことが示された。

 予想される政策軌道の全体図に関しては、「政策は指標次第だが、経済動向はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しないような状況になると現時点で見込まれている」(イエレン議長)という環境が継続されると、政策の切り替えポイントとして次のことが予想される。

 まずは正常化、つまり最初の「利上げ」のタイミングとなる。イエレン議長らはすべて会合ごとに利上げがあり得るとの立場を示してはいるが、年内しかも「年後半」がひとつのキーとなる。議長会見があるFOMCでの可能性も高く、そうなれば9月か12月のFOMCとなる。イエレン議長も「9月、12月、あるいは来年の3月にいずれの時点で開始しようが問題ではない」とも発言していた(なぜか候補はすべて会見があるFOMC)。個人的には9月を通り越して、バーナンキ議長のテーパリング決定に習っての12月という線が強いかなと思っている。

 テーパリングの終了(量的緩和解除)そして利上げ(ゼロ金利解除)が行われたあとの追加利上げは急ぐことはないと思われる。現在のFRBにとり、正常化に戻すことが主眼であり、インフレ退治とか景気の過熱感を冷やすようなことが今回の利上げの主目的ではないためである。むしろ、利上げのペースを占うより、完全には終わっていない量的緩和の後始末をどうするのかに注目したい。

 2006年の日銀の量的緩和の解除は、当座預金の積み上げの反対側にあったのが短期のものであったことで、簡単に短期間のうちに量を落とすことが可能であった。しかし、FRBや現在の日銀が買っていたのは長めの期間の債券である。

 FRBや日銀保有の国債などの残高を落とす手段としては売りオペがある。しかし、これを行うと債券市場に大きな動揺を与えうる。現実には長期金利の急騰を避けるためにも売りオペは避けると予想される。このため償還を迎えた国債などを乗り換えずに、自然に保有債券の残高を落とすほかはない。この残高調整をどのようなタイミングで決定するのかが注目点となる。

 このあたり日銀の出口政策にもおおいに参考になろうが、日銀の出口に関してはひとつ別な懸念材料がある。FRBは見事に債券市場に動揺を与えずにテーパリングを成功させた。果たして日銀はこのテーパリングそのものができるのかという問題がある。日銀は過去、国債の買い入れを増やしたことはあっても減らした経験はない。福井元総裁は量的緩和政策の際にも国債買入の増額は行っていなかったのは買入の減額の困難さがわかっていたからとも言えるのではなかろうか。日銀にとって出口政策の最大の関門はテーパリングとなろう。

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by nihonkokusai | 2015-06-19 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)
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