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日銀の次の一手は利下げか

 5月29日に発表された4月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合(コア指数)が前年同月比0.3%の上昇となった。昨年4月から消費増税が実施されたが、電気代など公共料金については旧税率を適用する経過措置が続いたことで消費増税の影響が一部残っており、その影響分は0.3%程度とされ、この要因を除くと前年同月比ゼロ%となる。異次元緩和から2年が経過してもコアCPIについてはゼロ近辺に戻ってしまったといえる。
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 ここにきて日経平均は2万円台を回復し、ドル円が一時124円台をつけるなどの円安もあり、株価を重視しているとされる安倍政権にとっては願ったり叶ったりであろう。株価がしっかりしている間は、政府から日銀に追加緩和圧力が掛かることは考えづらい。

 しかし株価の上昇の背景には欧米の株価指数が過去最高値を更新していることも影響している。今後は何かのきっかけでその反動が起きる懸念もありうる。早ければ9月のFOMCでの利上げも予想されている。欧州ではドイツなどの長期金利の低下が行き過ぎとなり、その反動も起きている。今後は米国の長期金利を中心に上昇圧力が強まることも予想される。

 国内景気についても完全な回復基調とは言えないなか、ここで株価の下落や長期金利の思わぬ上昇が起きた際には、物価目標の達成どころではなく、達成期間の引き延ばしをせざるを得なかった日銀に対して追加緩和圧力があらためて強まることが予想される。

 それでは日銀の次の一手はあるのか。あるとすれば何をするのか。そもそも2年でマネタリーベースを倍にしても物価は2%どころかゼロ%である。量を意識したリフレ政策は結果を出していないにもかかわらず、同じように量を意識した追加緩和に物価を浮揚させる効果があるとは思えない。そもそも量を意識したとして、これ以上の国債買入増額は無理がある。現在の国債買入ペースでもいずれ札割れが発生する可能性がある。ETFなどの増額では量に限度がある事に加え、物価ではなく株価対策に取られかねず、これも考えづらい。

 そこで予想されるものがリフレ政策を止めることである。むろんこれは異次元緩和政策の根底をなすところを否定する結果となるが、日銀はそのための布石を打ち始めている。それが『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』という企画局のレポート(日銀レビュー)で「マネタリーベース」との言葉を封印し、さらには先日の岩田副総裁の講演でも「マネタリーベース」との言葉を使わなかったことからも見受けられる。岩田副総裁への記者会見では「マネタリーベース」についての質問が出たが、岩田副総裁は量ではなく質であることを殊更強調していた。リフレ派筆頭であったはずの岩田副総裁としては、おかしな発言と見ざるを得ない。

 日銀は調整目標の「マネタリーベース」をそっと外したいのではなかろうか。その変わりに、ECBのように量ではなく金利をターゲットにおいて、政策金利そのものか、その一部の金利のマイナス化を容認し、さらなる長期金利の低下を促す政策に変更したいのではなかろうか。もし「マネタリーベース」という旗印を下ろせば、政策金利の一部でもある当座預金の超過準備の付利の引き下げや撤廃、もしくはマイナス化もありうる。

 ただしこれは量を打つことでレジームチェンジを意識させてインフレ期待を強めさせるリフレ政策とは異なる政策となる。黒田総裁はリフレ派ではないとの日銀内部からの発言もあったようであるが、日銀はリフレ政策からの離脱を計りつつあるのではなかろうか。日銀が政策目標を金利に変えるのであれば、リフレ政策とは一線を画して、金融政策のレジームチェンジを行うことになる。ECBはドラギ総裁が量的緩和をやりたかったにもかかわらずドイツなどの反対もあり目標は量にできず金利にしたが、日銀は量的緩和の限界をみてECBのような量より金利をターゲットにした政策に転じるつもりなのかもしれない。ただし、そのような政策変更を行うのであれば、それ相当の説明責任が求められる。日銀の金融政策に対する信認が揺らぐ可能性もある。ただし、個人的には日銀にはなるべく早くリフレの旗印を下ろしてもらい、気合や期待を重視し、フリーランチがありえるかのような政策から、より現実味のある政策に戻してくれたほうがうれしい。

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by nihonkokusai | 2015-05-30 10:51 | 日銀 | Comments(0)

岩田副総裁もマネタリーベースを封印か

 日銀がサイトにアップした5月27日の札幌市での講演要旨によると、岩田日銀副総裁は、日銀は2013年1月に所謂「インフレーション・ターゲティング(インフレ目標政策)」を導入し、この物価安定目標の実現に向けて2013年4月以降、「量的・質的金融緩和」と呼ばれる強力な金融緩和を進め、2014年10月には、これをさらに拡大する措置も講じた。こうした大胆な政策には、金融政策運営の基本的な考え方(レジーム)が転換したことを国民にはっきりと示し、そのことを前提に各自の経済行動を変えて頂きたいという意図が込められ、いわば、「ゲームのルールが変わりました」という宣言の意味があったと述べた。

 岩田教授の持論であったインタゲやリフレ政策を日銀がついに取り上げたとの宣言だが、ゲームのルールを変えて、それでゲームをクリアーできたのであろうか。むしろ、ゲームのクリアーをさらに困難にさせてしまったというべきものではなかったろうか。

 「私としては、「金融政策によってデフレは克服できる」という政策当局としての信念と、その実現に向けたコミットメントが十分でなかった、言い換えると、金融政策のレジーム転換が不十分だったために、家計・企業・金融機関など民間経済主体のマインドの転換が進まなかったことが大きな要因だと考えています。」

 足りなかったのはコミットメントとそれを阻むマインドだそうだが、そのような見えないもので具体的な物価の操作が可能なのか。まさにゲームの世界での魔法のようなものに思える。

 「「2年程度」という具体的な期間まで踏み込んで提示することで、物価安定目標の早期実現に向けたコミットメントを、これまでにない強い形で示したわけです。」

 その2年が経過して肝心の物価は前年比2%どころか2年前と同水準にいるのはどうしてなのだろうか。

 「「量的・質的金融緩和」の導入直前にマイナス0.5%のボトムをつけた後、消費税率引き上げの直接的な影響を除くベースで、昨年4月のプラス1.5%までは順調な上昇傾向を辿りました。」

 金融政策の効果にはタイムラグがあるとの一般認識があると思うが、日銀の異次元緩和には即効性があったらしい。これはむしろそのタイミングをみると、異次元緩和はなくても物価の前年比が回復することが予想されていたなか、急激な円安による効果と原油が高止まりしていたことがその大きな要因として指摘できるのではなかろうか。

 「2%の物価安定目標は、現時点ではまだ達成できていません。コアインフレ率は昨年4 月をピークとして徐々に低下傾向を辿り、足許では0%程度となっています」

 その要因として、岩田副総裁は消費増税による需要の下押しと原油価格の下落を上げている。消費増税は突然発生したものではない。そして、原油価格の消費者物価指数への影響は大きいが、そもそもマインドコントロールが重要とし、それを操作するためにインタゲや財政ファイナンスに近い政策をとったにも関わらず、予定されていた消費増税や原油価格の下落で簡単に物価の前年比が縮小しまったというのは説明としてはおかしくはなかろうか。

 「物価の基調的な動きは今後も着実に高まるとみられ、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、インフレ率は目標の2%に向けて上昇していくものと思われます。」

 その物価の基調的なものを異次元緩和のレジームチェンジで引き上げられなかったことで、原油価格に左右され、当初宣言した2年で2%の物価目標の達成ができなかったということになるのではなかろうか。これはリフレ政策の根本的なところに重大なミスがあったとはならないのか。今回の岩田日銀副総裁の講演のなかでも「マネタリーベース」という言葉が一度も使われていなかったことも、それを示しているのではなかろうか。講演後の会見では「マネタリーベース」についての質問が出たが、なぜか副総裁は異次元緩和のメカニズムにおいて、殊更に「量」ではなく「質」を強調していた。

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by nihonkokusai | 2015-05-29 09:47 | 日銀 | Comments(1)

ドル円が124円台を付けた要因とその影響

 5月26日の引け後、外為市場ではドル円が年初来高値であり、テクニカル上でも大きなポイントとなっていた今年の高値122円04銭を抜けてきた。さらにショートカバーを誘うような仕掛け的なドル買い円売りが入り、ストップロス等も巻き込み、この日の9時半頃には123円台を回復した。27日のニューヨーク市場では2007年6月以来の124円台を一時付けた。
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 前回、124円台をつけていた2007年にはいったい何が起きていたのか。2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど、アメリカ住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催した。さらに同日、仏銀最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。

 アメリカのダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。

 つまり世界を揺るがした最初の危機の発生が2007年に起きていた。日本では「リーマン・ショック」と呼称されているが、米国初の世界的な金融経済危機の発端は2007年に入り顕在化したサブプライム・ローン問題であった。

 米国のダウ平均は2007年10月につけた過去最高値はすでに抜いているが、ドル円も本当の意味での危機以前の水準に戻ったとは言えまいか。日米欧の金融政策の正常化は、米国で始まろうとしているところだが、ドル円は先に危機前の水準に戻ったと言える。

 今回のドル円の動きの背景は過去のチャートも意識した上で、テクニカルなドルの買い戻しも誘った動きとみている。ただし、その理由付けとして、あらためてFRBと日銀の金融政策の方向性の違いも意識された可能性はある。FRBは早ければ9月にも利上げというかたちでの正常化の道を探る。参考までにイエレン議長は8月27~29日に開かれるジャクソンホール会合を欠席するそうである。

 ただし、FRBの年内利上げはかなり織り込まれており、日銀の出口が見いだせない状況も市場は理解しているはずで、これを材料にして、さらなる円売りドル買いは仕掛けづらいのではなかろうか。ドル円は120円台前半あたりが居心地が良く、当面は値動きは荒いものの方向感の乏しい動きを予想する。

 今回の123円台に乗せた円安による影響については、輸出企業は恩恵を被ることになろうが、海外への生産移転も進み以前ほどは景気に与える影響は大きくない。むしろ、燃料などの輸入品の値上がりにより、国内の中小企業や家計に与えるマイナスの影響も考慮する必要がある。

 日銀にとっては原油先物が60ドル近辺に上昇した上での円安となれば、これによる物価の上昇も期待したいところではなかろうか。しかし、2012年11月のアベノミクス登場時の円安に比べるとインパクトは小さく、その効果も限定的と思われる。

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by nihonkokusai | 2015-05-28 09:18 | 為替 | Comments(0)

旧量的緩和と異次元緩和の違いは何か

 その昔、2001年3月19日に日銀は金融政策決定会合で、金融市場調節に当たり、主たる操作目標を無担保コールレート(オーバーナイト物)から、日本銀行当座預金残高に変更する、とした。世界の金融政策の歴史上初めて量的緩和政策を決定した。

 政策金利がゼロ近くとなるとマイナス金利との選択肢もなくはないが、日銀はこの際に操作目標を金利から量に変更した。その目標となったのが日銀の当座預金残高である。このときの量的緩和政策は2006年3月まで続くことになる。

 日銀の当座預金残高は2001年3月の量的緩和決定時に4兆円から5兆円に積み増した。それが解除される2006年3月までに当座預金残高目標は30~35兆円程度に積み上がっていた。その間に幾度も当座預金残高の目標値が引き上げられていたのである。

 そして、今度は2013年4月に日銀は金融政策決定会合で、量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更し、金融市場調節方針をマネタリーベースが、年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行うとした。これが量的・質的緩和(新量的緩和)である。

 2001年3月の旧量的緩和の際には、「新しい金融市場調節方式は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続することとする」とした。

 これに対して2013年4月の新量的緩和の際には、「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」とした。

 旧量的緩和政策の際には、量的緩和が物価上昇をどれだけ促した野かとの分析はさておき、目標の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで5年掛かったこととなる。

 これに対して新量的緩和の方は、消費者物価指数(総合)の前年比上昇率2%の達成まで期間を2年と定めたが、2年後の消費者物価指数はほぼ前年比ゼロ近辺となっている(29日発表の4月の全国コアCPIは消費増税の影響を除いて前年比マイナス0.1%の予想、2年前の2013年4月は前年比マイナス0.4%)。

 新旧の操作目標である日本銀行当座預金残高とマネタリーベースの違いは何か。マネタリーベースとは、流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と「日銀当座預金」の合計額であり、つまり流通現金の差でしかない、この流通現金は日々の資金調整で操作できるものではなく、結局は日銀の当座預金残高で操作する他なく、何のことはない、新旧の量的緩和の操作対象は同じ物である。

 それでは新旧の量的緩和では何が違ったのか。新量的緩和では異次元緩和とも呼ばれたが、買い入れる資産の額を一気に増加させ、特に国債を長い期間のものを含めて大量に購入するとした。この際、日銀券ルールなども撤廃している。

 これは見方によれば、ECBやFRBのように長めの金利を低下させることも目的のようにみえる。しかし、本来はいわゆるリフレ派の主張でもあった日銀が国債を引き受けるかたちにすることが主眼と見えた。むろん日銀の国債引き受けを禁じた財政法があるため、国債引き受けではなく買入という形式となったが、財政ファイナンスのような格好として物価を無理矢理にでも上げ、上げすぎたら金融政策でブレーキを掛ける(掛けられるかとの疑問はいったん置いておく)というのが、インフレターゲットとされる。

 新旧の量的緩和を比較すると、やり方は同じように見えるが、出口については大きな違いが生じる。旧量的緩和は日銀の当座預金の積み上げに短期の資金が使われた。このため、量的緩和解除は非常に容易であった。これに対して新量的緩和は長い期間の国債も大量に購入しており、これを短期間に減少させることは無理である。これはFRBなども同様の問題を抱えることになり、膨らみすぎた中央銀行のバランスシートを減額させるにはかなりの時間を要することになる。

 最大の問題は旧量的緩和も物価目標達成に5年の期間を要したことである。しかも目標値はコアCPIの2%ではなくゼロ%であった。そもそも旧量的緩和の際もそうだが、量を増やしてそれがどのように物価上昇に働きかけるのかは定かではない。

 これに関しては新量的緩和政策のときの説明よりも、まだ旧量的緩和の決定の際の議論のほうが説得力があるように思われる。すでに旧量的緩和政策の決定から10年以上経過しており、日銀のサイトにはそのときの議論の様子が記名入りで書かれた議事録がアップされている。このなかではマネタリーベースをどんと増やせば自動的に物価が上がるような議論はされていない。

2001年3月19日 金融政策決定会合議事録
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2001/gjrk010319a.pdf

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by nihonkokusai | 2015-05-27 09:41 | 日銀 | Comments(0)

マイナス金利の限界

 中央銀行の金融政策の基本は短期金利の誘導となる。非常に短期で資金の貸し借りを行う短期金融市場は銀行間取引が大きな割合を占めるが、それは主に中央銀行の当座預金等を使って行われる。その資金の過不足は中央銀行がオペレーションと呼ばれる金融調節で調整される。オペレーションの際に必要額以上の資金を市場に流出すると(正確には貸す資金だが)短期金利は低下する。短期金融市場では日銀の働きが非常に重視され、その動向によって金利が上げ下げする。短期の金利を日銀が操作できるのはこのためであり、通常の金融政策はこの短期の金利を目標にする。

 これに対して比較的期間の長い金利は主に債券市場における国債主体の取引にて動く日銀の金融政策やそれによる金融調節の影響も受けるが、長期金利となっている10年物の国債などは、国内の物価や経済の動向、海外の経済情勢やそれにも影響される海外の長期金利の動向、為替や株の動向等、いわゆる市場を動かす要因によって動いている。10年国債が買われると長期金利は下がり、10国債が売られると長期金利は上がる。長期金利は日銀の金融調節ではなく市場によって決定される。

 中央銀行の政策金利がほぼゼロとなってしまったときにどうするのか。日銀は2001年に量的緩和策として当座預金残高をターゲットにして金利から量に政策目標を変えた。その後、ゼロ金利政策と量的緩和政策はいったん解除されたが、今度は目標を当座預金残高からマネタリーベースに代えて量的・質的緩和策を導入した。イングランド銀行は一定の国債買入額を目標にした。FRBは結果として国債とMBSの毎月の購入額を目標とした。ECBも結果として国債の買い入れ額を目標とした。ただし、ECBは政策金利の下限をマイナスとした。デンマーク中銀は政策金利をマイナスにし、スイス中銀も結果としてマイナス金利政策となった。スウェーデン中央銀行も国債買入とともに政策金利をマイナスとしている。

 このマイナス金利ではあるが、それには当然ながら限界がある。デンマークやECBの下限金利のマイナス金利政策でも、あくまで民間の銀行が中央銀行の預金に預け入れる際の金利がマイナスとなっているだけである。民間金融機関でも一部大口預金者に手数料というかたちでマイナス預金を実施しようとしたところもあったが、民間での預貯金金利でマイナスが生じているわけではない。

 ただし、足元金利がゼロもしくはマイナスとなるなか、短期の国債などへの需要が高まると状況に応じてはマイナス金利でも購入せざるを得ない場面もある。さらなるマイナス金利で資金が手当てできれば、多少のマイナス金利でも運用できるところも出てくる。このため市場でマイナス金利が発生することも生じている。

 しかし、民間銀行の個人の預貯金金利や住宅ローン金利、さらには企業への貸し出し金利等がマイナスとなることには無理がある。国債の発行においても利率がマイナスとなることは想定されていない。ただし、市場でのマイナス金利の発生により、単価が上がり、利率ではなく利回りがマイナスとなる事態は発生している。

 政策金利をマイナスにすることにより、通貨安や長期金利の低下を促せる。それにより景気や物価を刺激することが目的ではあるが、マイナス金利政策にしたことで、景気や物価が上向くというものでもない。だからこそいまだに非伝統的手段から脱せない状況が続いている。これもマイナス金利の限界というか金融政策そのものに限界があるということを示しているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-05-26 09:16 | 債券市場 | Comments(0)

中央銀行の情報流出(リーク)

 ECBのクーレ専務理事は5月18日に、招待客のみを対象とした非公開の会合で、市場に影響を与える内容の発言を行ったとされている(ロイター)。クーレ理事はECBが5、6月の購入を月間目標の600億ユーロよりも多くすると発言し、これをきっかけに外為市場ではユーロが急落したのである。

 クーレ専務理事によると、債券相場の動きには季節的なパターンがあり、大抵7月半ばから8月にかけて流動性が低いことをECBが認識している。「(ECBとユーロ圏18カ国の中銀で構成する)ユーロシステムはこれを念頭に、対象を拡大した資産買い入れ策の実施において5月と6月の購入額を多めにした」という(WST)。

 あくまで技術的なことながら、市場はまるで追加緩和かのような反応をしていた。それだけECBの今後の国債買入に敏感になっていたこともあろうが、クーレ理事に直接話しを聞いていた参加者が、そのタイミングはさておき仕掛けていた可能性も否定はできないかもしれない。

 そういえば、FRBも2012年のFOMC政策決定の情報をメドレーに漏えいした疑惑で司法省の調査を受けているとの観測もある。

 日本でも昔、同様の事態が発生していたことがあった。1998年3月11日に大手銀行からの高額の接待の見返りに、金融動向に絡む日銀の機密情報を公表前に流したり、新しい資金取引への入札参加を認めたりするなどの便宜を図っていた疑いで、当時の営業局証券課長が逮捕された(接待汚職事件)。

 この事件に伴い、当日の松下康雄総裁と、福井俊彦副総裁が辞任し、日商岩井相談役の速水優が総裁となり、時事通信社の藤原作弥と日銀理事の山口泰が副総裁に就任した。

 この情報漏洩は長年に渡って組織的に行われたものとされていたが、それは市場参加者にとっては当時、公然の秘密のようなものとなっていた。私も実際に日銀短観が発表日よりかなり前に出回っていたものを見た記憶がある。むろん、それをみたところで債券市場で行動を起こして儲かるようなものではなかった。手口情報を含めて本来出てはこないはずの情報が、ここだけの話として市場に一気に広まっていたような時代でもあった。

 接待汚職事件もあって現在の日銀は情報管理は徹底しているとされる。日銀短観も総裁がそれを知るのは当日とされている。それを事前に知らされるのはごく限られたメンバーとなり、市場に出回るようなことはない。

 ただし、決定会合の内容や政策変更については汚職事件以降も、なぜかテレビ局などを含めて大手マスコミが事前にリークすることもあった。金融政策決定会合が開かれている会議室はかなり厳重に情報管制が引かれていたようだが、どうも一部に逃げ道というか、日銀だけでは守り切れない逃げ道もあったようである。

 しかし、そのようなリークもここにきてなくなっている。特に大きな政策変更となった2013年4月の異次元緩和と2014年10月の異次元緩和第二弾は、市場にとって完全なサプライズとなっていた。これは情報管理が徹底されていた面もあるかもしれないが、その決定過程ではごく少人数しか関わっていなかったことも要因ではないかとみられている。どうであれ情報が漏れないことは重要であるが、時に金融政策は市場のサプライズを抑えるために事前にその可能性を指摘することもある。イエレンFRB議長が年内の正常化(利上げ)の可能性を事前にアナウンスしているのも、市場に悪材料は事前に織り込ませて影響を抑えることが目的となる。金融政策では緩和はサプライズ、引き締めは市場に事前に織り込ませることが原則であり、これはリークとは言えない。

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by nihonkokusai | 2015-05-25 09:02 | 中央銀行 | Comments(0)

米国債保有、中国が再びトップに

 米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)を確認してみたところ、2月は2008年8月以来、6年半ぶりに日本がトップに返り咲いていたが、3月は再び中国がトップに返り咲いていた。

2015年3月の米国債国別保有残高の上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)

1.中国(China, Mainland) 1261.0
2.日本(Japan) 1226.9
3.石油輸出国(Oil Exporters) 297.3
4.カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs) 293.0
5.ブラジル(Brazil) 261.5
6.ベルギー(Belgium) 252.8
7.アイルランド(Ireland) 214.3
8.スイス(Switzerland) 211.8
9.英国(United Kingdom) 200.6
10.香港(Hong Kong) 180.7

 中国はもしや、意地でもトップは日本に譲り渡さないとばかりに、米国債の残高を無理矢理に増やしたのかどうかはわからないが、中国と日本の二強は変わらないことは確かである。他の顔ぶれをみるとなかなか面白いこともわかる。

 ロシアや中国が保有している米国債の保有高の一部を表に出さないための調整場として、ベルギーに本社を置く清算機関ユーロクリアが関係しているのではとの観測もあった。そのベルギーは2月から3月にかけて残高を大きく落としている。ロシアは2月から3月にかけてほぼ現状維持なので、もしかすると中国の保有増はここが絡んでいたのかもしれない。

 ここにきてアイルランドが再び上位に食い込んでいる。アイルランド危機とも呼ばれた信用危機は収まりつつあることも、この数字が示しているのかもしれない。

 そしてランキングは低いものの、インドの米国債の保有残高が2月から1000億ドルの大台に乗って3月はさらに増加させている。順位は香港、台湾、シンガポールなどよりも低いが、まさに伸び盛りといった格好となっている。

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by nihonkokusai | 2015-05-23 12:25 | 国債 | Comments(0)

リフレ政策からの脱却を狙う日銀

 5月21日の日経電子版の清水功哉編集委員が書いた「「エッ!」と驚いた黒田総裁 量的目標を続ける真意」との記事が興味深い。これによると『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』という企画局のレポート(日銀レビュー)を公表したあと、市場が操作目標を「量」から「金利」に戻すことを視野に入れ始めたのではないかとの報告を受けて、黒田総裁が 「エッ! 市場参加者のあいだでそんな解釈が広がったのですか」と発言したらしいのである。

 もちろんこれが本当に驚いての黒田総裁のコメントであったのか、やはりその解釈が拡がったかと思ったにも関わらず驚いたふりをしたのかは定かではない。しかし、日銀の軸足がすでに量ではなく金利に移ってきているであろうことは確かではなかろうか。

 それではなぜ日銀は黒田総裁に変わってから、マネタリーベースというリフレ派が重視すべきといる目標を設定したのであろうか。この際にはアベノミクスの基にもなっている浜田宏一参与、本田悦朗参与、山本幸三衆議院議員などの意向が強く反映されたとみて良いのではなかろうか。なによりそのリフレ派を代表していた岩田規久男教授が副総裁に就任したぐらいである。

 しかし、この岩田規久男副総裁は2013年4月の量的・質的緩和や2014年10月の追加緩和の決定にあたっては、ほとんど関与していなかったとの観測がある。そもそも就任後の一定期間、表に姿を見せることもなかった。現在は国会を含めて発言の機会が多くなってはいるが、現在、頑なにリフレ的な政策を日銀から発言し続けているのは岩田副総裁ぐらいに見える。

 そもそも現在の日銀の異次元緩和はリフレ派が安倍政権に取り入れさせた政策を実現化したものである。しかしそれは黒田総裁以前の日銀のスタンスとは相容れないものであった。ところが以前の量的緩和政策に大きく関与していた雨宮理事を戻して、その雨宮理事を中心に黒田総裁が就任してわずかな期間に異次元緩和政策を具体化したとされる。しかし、あまりに短期間での作業であったこともあろうが、市場との対話は無視されてしまっていたこともあり、その後の長期金利の乱高下を招くことになった。

 昨年10月の異次元緩和パート2もごくごく一部で秘密裏に進められていたとされるが、この際はタイミングが重視されていたとみられ、その結果として出てきたのは結局、量であった。これを見る限り、最近の量、つまりマネタリーベースを無視して実質金利を殊更に重視する姿勢とは相容れないようにも見える、しかし、もともと黒田総裁にとっては、単純にマネタリーベースを増やすことよりも、国債の買い入れを増やして名目金利を少しでも押し下げることが主眼であったのかもしれない。

 現在の欧米の中央銀行の金融政策も量ではなく金利が意識されている。英国や米国、さらにECBまでも大量の国債を買い入れて、それをQE(量的緩和)と呼んでいるのではないかと言われるかもしれないが、それは違う。

 黒田総裁が今年3月20日の「量的・質的金融緩和」の理論と実践」と題する講演でも指摘していたように、イングランド銀行もFRBも目的は中央銀行のバランスシートを膨らませることではなく、長期金利の低下を促すことであった。FRBは自らはQEとすら呼ぶことはせず、大規模資産購入(Large-Scale Asset Purchases LSAP)プログラムであるとしている。FRBは国債だけでなくMBSも買い入れたが、これはMBSが国債同様に大きな市場であったことに加え、住宅ローン金利の押し下げも狙ったものである。ECBの量的緩和も政策金利の下限をマイナスにするなど、バランスシートの拡大ではなく、長期金利の低下を促すことを目的としている。

 しかし、日銀はリフレ派の主張も意識してマネタリーベースを目標にしてしまった。物価が目標に向けて上昇してくれば、それで良しとしたのかもしれないが、現実には物価に働きかけることはなかった。

 物価目標達成よりも日銀がすべきことは金融政策や日銀券の信認を維持し、金融システムを維持した上で、日本の景気回復に側面から支援することである。その意味では直接物価上昇に働きかけるような政策はこれに矛盾する。物価を無理矢理金融政策で上げるには日銀券の価値というか信認を低下させることが必要となるためである。

 そうではなく景気の側面支援となれば長期金利、この場合はより長い金利を含めたイールドカーブ全体の押し下げを狙ったほうが景気に作用するという意味ではより現実的となる。どうやら日銀もFRBやECBの足並みを揃えて、ある意味オーソドックスな金融政策に戻ろうとしているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-05-22 09:18 | 日銀 | Comments(0)

都銀は4月に3兆円近くの債券売り越し

 日本証券業協会(JSDA)は5月20日に4月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。
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 4月に都銀は2兆9829億円の売り越しとなっていた。これで10か月連続での売り越しとなる。金額も大きくいわゆる期初の売りであろうか。国債投資家別売買高でみると、長期債を1兆2677億円売り越し、中期債を1兆5322億円売り越している。

 売り越しが大きかったのは次いで「その他金融機関」の1兆311億円の売り越し。こちらは長期債を4809億円、中期債を5231億円売り越している。その他金融機関のなかで具体的にどの金融機関が売り越していたのかはわかからない。参考までにゆうちょ銀行は「その他金融機関」ではなく、ここでは「その他」に入っている。その「その他」も8429億円の売り越し。続いて信託銀行の5763億円の売り越し。年金などの国債ポジションの圧縮は続いているようである。農林系金融機関は3813億円の売り越し。

 買い越しとしては、今回も外国人が1兆8365億円の買い越しとなっていた。3月は1兆7069億円の買い越しとなっており、4月で10か月連続での買い越しとなる。長期国債を9059億円、中期国債を6535億円、超長期債を2463億円買い越していた。

 投資信託は6254億円の買い越し。中期債主体の買い越し。生損保は2081億円の買い越し。超長期債主体の買い越しとなっていた。

 4月の債券相場を振り返ってみると、ドイツを主体とした欧米の長期金利の低下が進み、4月16日にはドイツの長期金利は0.1%を割り込み、17日に0.049%まで低下した。しかし、ここから急反発することとなる。その基調変化が米国や日本の長期金利に影響を与えたのは4月末以降であり、特に日本では4月30日での金融政策決定会合での追加緩和期待が一部にあり長期金利が24日に0.28%まで低下するなど相場そのものが4月末近くまでしっかりしており、都銀などが期初の益出しをする絶好の機会ともなっていた。

 日本の大型連休中にスピードを増してドイツを主体に国債が大きく下落した。これを受けて日本の債券市場も調整を余儀なくされた。しかし、5月半ばあたりから中短期債は妙な動きをしていたこともあり、海外投資家の動向も気になるところである。

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by nihonkokusai | 2015-05-21 10:36 | 債券市場 | Comments(0)

基調的な物価上昇圧力とは何か

 日銀の黒田総裁は2014年6月23日の講演で次のような発言をしていた(日銀のサイトの講演要旨より引用)

 「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、昨年(2013年)12月から4か月連続で+1.3%となった後、4月は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて+1.5%と、プラス幅を幾分拡大しました。その中身をみると、エネルギー関連の押し上げ幅が頭打ちとなる一方で、緩やかな景気回復が続くもとで、幅広い品目で改善の動きがみられています。先行きについては、需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力が強まっていく一方、エネルギーを中心とした輸入物価の押し上げ効果が減衰していくことから、暫くの間、1%台前半で推移すると予想しています。」

 2014年4月以降の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比はこのときの黒田総裁の発言通りに暫くの間、前年比を縮小させ1%台前半で推移することになる。しかし、その前年比の縮小は止まることなく2014年10月には前年比1.0%を割り込み、2015年2月に前年比ゼロ%まで縮小した。

 これに対する黒田総裁の説明は「消費税率引き上げ後の需要面の弱めの動きや、昨年夏場以降、原油価格が大幅に下落したことを背景に、消費者物価の伸び率が鈍化しました」とある(2015年5月15日の講演より)。

 昨年6月の説明をみると「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力が強まって」前年比プラス1.5%まで持ってきたが、その基調に変化はないはずだが、事前には想定していたはずの消費増税の影響と予想外の原油価格の下落によって物価の前年比が縮小したとしている。

 「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」が果たしていかほどのものがあったのかを数値化することは難しい。しかし、その部分を除いてこの間の物価の動きをみると説明は意外と楽である。2012年11月のアベノミクスの登場による急激な円安と原油価格の高止まりが、前年比での物価の回復予想されていたなか、物価の前年比を予想以上に押し上げた。そのタイミングをみると日銀が異次元緩和を決定した2013年4月が前年比マイナス0.4%から5月にゼロ%、6月にはプラス0.4%に回復している。

 まるで異次元緩和に即効性があったような動きとなっていたが、当然ながら株式市場などとは異なり、大胆な金融緩和で物価の数値がいきなり跳ね上がることはありえない。このタイミングでの物価の回復は異次元緩和そのものによる効果と考えることには無理があろう。

 ただし、多少のタイムラグ(そのラグの期間は不明)があって異次元緩和の効果が出て1年後の2014年4月にプラス1.5%にまで上昇したとしよう。その後、1年弱で前年比ゼロ%まで縮小したのが仮に原油価格下落と消費増税の影響だとしても、「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」分までそぎ落としてしまったと言うことになるのであろうか。

 そもそもそのようなものは存在せずプラス1.5%までの上昇要因が、原油価格の下落でそげ落ちたと見る方が自然ではなかろうか。ここから物価の前年比がプラス幅を拡大したとしても、それは「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」というより、原油価格の下げ止まりによる影響が現れたとみて良いのではなかろうか。

 「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」というものを完全に否定するわけではない。現在の日銀の政策スタンスはこれが基になっていることを考えれば、日銀としてもこの部分を考慮しないわけにはいかないであろう。しかし、現実の物価動向の説明は「需給ギャップの改善など基調的な物価上昇圧力」なるものを除いて説明したほうがすっきりはしまいか。
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by nihonkokusai | 2015-05-20 09:31 | 景気物価動向 | Comments(0)
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