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右肩上がりの相場シナリオの危険性

 いまさらながら1980年代の日本のバブルは何が原因であったであろうか。その発生は1986年末あたりからとされ、1985年のプラザ合意による円高や、それに対処するための日銀の金融緩和策が、日本の実態経済以上に株や不動産の資産価格を上昇させた。すでに高度成長は止まって低成長時代を迎えていたが、日経平均や地価は右肩上がりの状態が1989年末あたりまで続いたのである。

 その上昇トレンドが崩れたことでバブルが崩壊した。銀行の経営などは株も土地も上昇し、急落はしない前提で行われていたことで、不良債権問題が発生し、金融不安が吹き荒れ、日本経済はデフレへと突入することになった。このあたりの分析についてはいろいろな見方もあろうが、少なくとも株と土地が右肩上がりのトレンドとなっていることが当然のこととして認識されていた事がバブル崩壊の最大の原因になっていたと思われる。

 現在の日本の状況をみると地価はさておき、株式市場は右肩上がり、長期金利は右肩下がり、もしくは超低位安定が前提となって物事が動いているように思われる。

 公的年金などの資産運用については、株式や海外資産などのリスク資産の比重を大きく高めてきている。ゆうちょ銀行などもその方向にあるようだが、これは株式市場などが右肩上がり、もしくは大きく下落しないことが条件となっている。

 仮に1990年以降のバブル崩壊のような株式市場の下落が起きるとすべての前提が狂うことになる。ある程度のヘッジができたとしても、我々の年金資金の運用で大きなマイナスが発生する懸念がある。国債であれば途中で売却すれば損失が発生するが、少なくとも償還まで保有すれば元本は戻ってくる。

 その国債についても、すでに短期債含めて1000兆円という残高となっていることで、長期金利は超低位で推移することがシナリオの前提となってしまっている。予算編成などでは長期金利の2%あたりまでの上昇も考慮しているかもしれないが、現実にそのようなことは簡単には起こらないはずであるというのが市場参加者も含めた素直な見方となっているのではなかろうか。

 その背景にあるのが日銀の異次元緩和による大規模な国債買入であるが、今度はその日銀による大規模な国債買入が債券市場では当然のことのようになりつつある。つまりは、日銀の大規模な国債買入や右肩下がりの長期金利のトレンドが前提となっている。この前提条件が崩れるシナリオは本格的には準備はされておらず、あくまでひとつのリスクシナリオでしかない。

 このような一方方向のトレンドの前提の上でのシナリオが崩壊した際にはどうなるのか。その際に大きな反動が来ることは、バブル崩壊時に痛いほどわかったはずであるが、どうもその反省はあまり生かされていない。現在の状況がバブルであるかどうかの判断は崩壊するまではわからない。しかし、一方向に賭けた運用には危険が伴うことも確かであろう。

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by nihonkokusai | 2015-04-16 09:37 | アベノミクス | Comments(0)

物価目標は重要ではないと浜田参与

 浜田宏一内閣官房参与は4月13日に日本経済新聞の取材に応じ、日銀の物価目標に対して次のように答えた。

 「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日銀も我々も2~3年前に石油価格が半分以下になるとは思っていなかった。その責任を日銀がとる必要はないから(エネルギー価格の影響などを含んだ)消費者物価指数を目標とするのは合理的ではない。(デフレの主因である)需給ギャップが狭まっていることは間違いない。2%というのはどちらかといえばインフレの上限とみるべきだ」(日経電子版の記事より引用)

 日銀は現在、「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」としている(4月13日の日銀支店長会議における黒田総裁の挨拶より)。

 この2%の物価目標達成のため行ったのが2013年4月の量的・質的緩和(通称、異次元緩和)と2014年10月の量的・質的緩和の拡大(異次元緩和第二弾)であった。これはアベノミクスと呼ばれた経済政策の柱であり、そのアベノミクスを先導した人物の一人が浜田宏一内閣官房参与である。その浜田参与は、あれだけ必死に行っている日銀の物価目標達成は重要ではないと発言した。さらに物価目標が達成できなかったのは、予想していなかった原油価格の下落であるとし、需給ギャップが狭まっているであろうから、問題ないとの認識である。

 浜田参与は13日夜のBSフジの番組でも発言しており、日銀の2%の物価目標について、「こだわる必要はない。無理に2%に持っていく必要はない」とした上で、変動しやすいエネルギーの影響を除くためコアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価)を目標にすべきだとし、目安として1%程度を挙げたそうである。

 参考までに2月の消費者物価指数では消費増税の影響を除いて、日銀の物価目標である総合が前年比プラス0.2%、最も重視され日銀の物価予測の基準となっているコア指数(生鮮食品を除く総合)が前年比ゼロ%、そして浜田参与が目標にすべきとしたコアコア指数(食料及びエネルギーを除く総合)も前年比ゼロ%となっている。ここにきての物価下落は原油価格下落の影響も大きいが、それを除いてもほとんど変わらないことが伺える。

 コアコアCPIであれ、前年比でプラス1.0%程度であれば、黒田総裁以前の日銀のスタンスとあまり変わらない。それではいったい債券市場の流動性を低下させた上に、財政ファイナンスのリスクを増加させた異次元緩和とその第二弾の意味はいったい何であったのであろうか。

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by nihonkokusai | 2015-04-15 09:17 | 日銀 | Comments(0)

物価目標達成は他力本願?

 日銀は3月16、17日に開催した金融政策決定会合の議事要旨を公表した。この議事要旨のなかから、物価に関する委員の議論をピックアップしてみたい。

 「物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+0%台前半となっており、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移する可能性が高いとの見方で一致した」

 「複数の委員は、エネルギー価格などの動向によっては、小幅のマイナスになる可能性があると指摘した。」

 この会合後の3月27日に公表された2月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみてゼロ%となっていた。

 エネルギー価格に関して、WTIのチャートをみてみると、1月に40ドル台まで下落したあといったん反発したが、再び下落し3月に40ドル前半をつけたところでボトムアウトした。チャートからはダブルボトムをつけた格好ながら、現在は50ドル近辺での推移が続いている。

 日銀が4月13日に発表した3月の企業物価指数速報によると、国内企業物価指数は前年比でプラス0.7%上昇となった。消費税率引き上げの影響を除くと前年比2.1%の下落と5か月連続のマイナスとなった。しかし、原油価格の反発や円安などから前月比では8カ月ぶりにプラスとなっていた。

 原油価格の下落による物価へのマイナスの影響は、WTIのチャートをみても今後は次第に収まることも予想される。日銀は今回の議事要旨にもあるように「原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価は伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い」との見方をしているが、少なくとも原油価格下落の影響が剥落するとの見方は、希望的観測というわけではなさそうである。むろん、前年比なのでいずれその影響が剥落することも確かではあるが。

 それでも2.0%の物価目標に到達させるのは並大抵のことではない。一部の委員からは「改定頻度が少ないサービス価格が4月に引き上げられるか注目している」との意見があったが、このあたりも消費者物価指数を見る上では大きなポイントになりうる。しかし、一人の委員からは次のような意見が出ていた。

 「消費者物価前年比が0%程度で推移するとみられる中で、物価の基調的な動きを丁寧に対外説明していく必要があるが、その際には予想物価上昇率の動向が鍵になると述べた。」

 別の委員が次のように発言している。

 「ある委員は、ブレーク・イーブン・インフレ率などの市場指標は原油価格の影響を受けやすいため、各種のサーベイ調査、企業の価格設定行動など、幅広い情報を丁寧に点検していく必要があるとの認識を示した」

 どうやら前者が黒田総裁、後者は2月の講演でBEIには「欠陥はある」と発言していた岩田副総裁ではないかと思われる。

 「別のある委員は、企業の価格設定面では、デフレ的な意識から着実に脱してきており、先行き消費が持ち直していけば、値上げ予備軍からの値上げ圧力が再び顕現化してくる可能性が高い一方で、賃金面では、ベースアップに躊躇する企業がみられるなど、デフレ的な意識が根強いとの見方を示した。」

 「もう一人の委員は、企業の価格設定スタンスについて、従来の低価格戦略から付加価値を高めて販売価格を引き上げる方向に変化する動きがみられていると指摘したうえで、賃金交渉でも物価動向に配慮する姿勢がみられており、こうした動きは予想物価上昇率が高まっている表れであるとの認識を示した。」

 昨年10月31日の金融政策決定会合では5対4の僅差で追加緩和を決定した。執行部(総裁と二人の副総裁)と学者出身の2人の委員がこのとき賛成に回っており、今回の予想物価上昇率の発言はこのときの賛成派から出ているのではないかと思われる。総括としてはこの賛成派を中心に2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとの認識を共有したようだが、下記のような意見が出ていた。

 「一方、ある委員は、消費者物価(除く食料・エネルギー)のプラス幅は拡大してきておらず、先行きの物価上昇率はなかなか高まらないとの見方を示した。」

 どちらかといえばこの見方がむしろ素直であろうが、異次元緩和により物価は上がるとしている日銀にとっては建前上、目標達成は可能とせざるをえない。しかし、これについては他力本願となりつつあることも確かなようである。

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by nihonkokusai | 2015-04-14 09:08 | 日銀 | Comments(0)

日米英と独の長期金利の動きの違い

 4月8日のスイスの10年債入札で、落札利回りはマイナス0.055%になり、欧州ではこれまで5年債での落札利回りのマイナスはあったが、10年債入札では初のケースとなった。つまりこれは歴史上でも初めてのことになる。ただし、入札の落札利回りではなく、流通市場では1月16日にスイスの10年債利回りが初めてゼロを下回りマイナスとなっていた。

 スイスの長期金利の低下は、1月15日にスイスの中央銀行であるスイス国立銀行が、スイスフランの上昇を食い止めるために設定した対ユーロの為替レートの上限を撤廃すると発表し、同時に超過準備に適用する金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%とし、政策金利のLIBOR誘導目標レンジもマイナス1.25%~マイナス0.25%に引き下げた。つまり利下げを実施したことも影響している。

 4月9日にドイツの10年債利回りは、0.139%を付け過去債低利回りを更新した。フランスの10年債利回りも0.419%と過去債低を記録している。これらドイツやフランスの10年債利回りの低下は、ECBの量的緩和による国債の買い入れが要因となっている。

 ドイツの10年債利回り(以下、長期金利)は、いまだに右肩下がりのトレンドを継続しているが、これに対して米国や英国の長期金利は今年1月末あたりが底となり、右肩下がりのトレンドはいったん終了した。米国は年内の利上げ観測が出ており、米債に連動しやすい英国債も同様の動きとなっていることは、ある程度理解できるが、日本の長期金利も米英と同様に底打ちしていたのである。

 1月20日に日本の10年債利回りは0.195%をつけ、5年債の利回りがマイナスをつけたところで、日本の長期金利はボトムアウトした。量的緩和を決定した1月22日のECB理事会を控えての動きであり、その前のスイス・ショックも背景とした欧米の長期金利低下の影響を日本の長期金利も受けていた。しかし、5年債利回りのマイナスはさすがに行き過ぎであったのである。

 このときには日銀が追加緩和として、超過準備の付利の引き下げや撤廃をするのでは、との観測もあった。それは日銀の金融政策の操作目標(マネタリーベース)を変えない限りは無理な話であり、実際に付利の変更はなかった。付利が存在する限り、短期債はさておき2年債以上の国債利回りがマイナスとなるのはかなり無理がある。つまり弾みでつけてしまった感もあり、日本の長期金利は底打ちしたとの見方もできるのではなかろうか。

 ユーロ圏の長期金利の低下が異常なのか。日米英の長期金利の底打ちのような状況がおかしいのか。それともそれぞれの事情で動いているので致し方ないのか。日本もファンダメンタル等からみて長期金利は再度低下するとの見方もあるが、むしろドイツやスイスの長期金利の低下が行き過ぎているとの見方もできるのではなかろうか。日米英と独の長期金利の動きの違いは何らかのかたちで修正される可能性があり、それがどのようなかたちで修正されるのかも注目しておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2015-04-13 09:36 | 債券市場 | Comments(0)

日銀が追加緩和で利下げができない理由

 日銀による2年での物価目標が困難となったことで、追加緩和を求める声が一部から出ている。自民党の山本幸三衆院議員が、ロイターのインタビューに応じ、物価がマイナスに転じる可能性も展望し、日銀による追加緩和が必要との認識を示したことも影響していたのかもしれない。しかし、金融政策は山本議員が決めるものでもない。

 日銀が追加緩和をするのであれば、それなりの理由も必要であるが、現時点では物価目標達成困難ということ以外での無理に追加緩和をする要因は見当たらない。その物価について、黒田日銀総裁は基調はしっかりしており、いずれ原油価格の反発とともに上昇するとのシナリオを描いている。そうであれば今、追加緩和をする必要はない。

 追加緩和の有無はさておき、その追加緩和の手段としては、これまでのような巨額の国債は買い入れをさらに増やすことはそろそろ無理があるとの認識も強まっている。このためETFなどの購入を増やすのではとの見通しもあるが、そもそも金融政策は株価対策ではないはずであり、しかも国債のように大量に買い入れることも市場規模からは無理がある。日銀にとって金融政策の操作目標が「マネタリーベースの大きさ」となっている以上、その効果を発揮できるとするには、この規模を目標通りに大きく増やす必要があり、多少の積み上げではインパクトはないため、ETFの買い増しなどの追加緩和も考えにくい。

 また、ECBのように政策金利の下限をマイナスにするなどの利下げを日銀に求める声もあるようだが、これも日銀の金融政策の操作目標がマネタリーベースである以上、無理である。ECBはQEと言いながら、マネタリーベースなどの拡大による物価上昇を目指しているわけではない。国債買入という非伝統的手段に踏み込むことでの通貨の相対的な引き下げが目的となっている。

 これに対して日銀は純粋な貨幣数量説に基づいてのマネタリーベースそのものの大きさを目標としている以上、利下げはできない。つまり日銀の準備預金の超過準備の利子、いわゆる付利の0.1%の撤廃なり、引き下げは、日銀の現在の金融政策においては無理なのである。

 この付利の0.1%がアンカーになって、日銀の準備預金は膨れあがり、目的通りにマネタリーベース(通貨プラス準備預金)の残高目標を達成できた。ここで付利を引き下げたり、撤廃することは、結果としてマネタリーベースの減少を意味することになり、政策目的とその手段が矛盾する。付利も政策金利の一部であり、付利をそのままで政策金利を引き下げるなどということもできない。もしここから利下げをしたいのであれば、政策目標を再び金利に戻すなりしてから行う必要がある。しかし、それを行うとなれば異次元緩和の効果そのものの全否定にもなりかねないことになる。

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by nihonkokusai | 2015-04-11 13:57 | 日銀 | Comments(0)

FRBの利上げ時期はいつなのか

 4月8日に公表された3月17~18日開催のFOMC議事要旨において、正常化の時期に関する議論において下記の既述があった。

 Several participants judged that the economic data and outlook were likely to warrant beginning normalization at the June meeting. However, others anticipated that the effects of energy price declines and the dollar's appreciation would continue to weigh on inflation in the near term, suggesting that conditions likely would not be appropriate to begin raising rates until later in the year, and a couple of participants suggested that the economic outlook likely would not call for liftoff until 2016.

 何人か(2~3人か)の会合参加者は、経済データや見通しからみて、6月の会合で正常化(つまり利上げ)を開始することが妥当であろうと指摘していた。しかしながら、他の参加者は、原油価格の下落による影響やドル高による物価低迷が長引く状況を考慮すれば、今年の後半になるまで金利の引き上げは待つべき、との意見のようである。さらに2人の委員は利上げが適切となる経済情勢は2016年まで訪れない公算が大きいとの認識のようであった。

 イエレン議長は3月27日の講演で、経済成長の継続を前提に、今年後半に利上げが妥当になるだろうと表明していた。現在のFOMCの多数派は、金融政策の正常化、つまり利上げに関しては今年後半との認識を強めているようである。

 3日に発表された3月の米雇用統計では非農業雇用者数が予想を大きく下回ったが、これについてニューヨーク連銀のダドリー総裁は、この数字を含めて経済に現在みられる弱さは主に一時的な状況によるものだと指摘していた。初回利上げのタイミングについては、データ次第であり、将来の経済動向が完全には予想できないため、依然見極めにくいとの発言もあった。ロイターのインタビューに対し、ダドリー総裁は大方の見方よりも早めに利上げに踏み切り、その後は慎重に対応する可能性があるとの発言もあった反面、利上げは早過ぎるよりも遅過ぎる方がよいと考える理由はなお存在しているとも述べていた。

 フィッシャー副議長は少し前ではあるが2月27日に、経済情勢によっては別の時期が妥当かもしれないと断った上で、利上げは6月か9月になる可能性が最も高いと述べた。

 パウエル理事は早ければ6月の利上げ開始も選択肢として残しておくべきだと述べている。

 今年のFOMCで議決権を持っているリッチモンド連銀のラッカー総裁は、政策金利を6月に引き上げるべきだとの認識を示していた。

 アトランタ連銀のロックハート総裁は6月ではなく、7月か9月に傾くだろうと語っている。

 シカゴ連銀のエバンス総裁は2016年まで利上げ待つべきとの考えを示している。

 サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、利上げを開始する時期が近づいているとの認識を示し、FRBが後手に回るリスクを警告している。

 6月の会合での利上げの可能性を指摘したのは、このラッカー総裁とウィリアムズ総裁あたりではないかと予想される。パウエル理事の可能性もあるが、イエレン議長を中心の多数派にとりあえず入っている可能性が高いと思われる。

 これに対して2016年まで待つ必要性を唱えたのはエバンス総裁と、もしかするとダドリー総裁あたりなのか。

 果たして9月が年後半に含まれるのか。later in the yearとなると、10月か12月のFOMCを意識しているかにも思える。このFOMCの議事要旨を見る限り、6月の会合での正常化の可能性はやや後退した感がある。

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by nihonkokusai | 2015-04-10 09:26 | 中央銀行 | Comments(0)

30日の日銀決定会合での追加緩和の可能性

 4月8日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策は賛成多数で現状維持が決定れた。4月にはもう一回、4月30日に決定会合が開催される。4月と10月は展望レポートが公表されることなどにより、その月だけ1回ではなく2回開催される。その4月30日の決定会合での追加緩和観測が一部に出ているそうである。そういえば前回の追加緩和も昨年10月末のその月としては2回目の金融政策決定会合で決定していた。

 昨年10月末の量的・質的緩和の拡大の要因は何であったのか。このあたりから振り返ってみたい。その本当の理由は想像するしかないが、報道などによると執行部(総裁・副総裁)は1か月前あたりから準備を進めていたとされている。

 市場では事前に一部で追加緩和観測は出ていた。これは短期金融市場でのマイナス金利の発生により、国債の買入れ額の調整や、買い入れる期間の延長が必要とみられていたためである。これは技術的なことであり、そうであれば中途半端な追加緩和のような格好となることで、私はこの理由での追加緩和はないと見ていた。

 ところが日銀はかなり無理をして、二度目のバズーカを撃ってきた。無理をしてというのはこの際に反対票が4票も入ったことでもわかる。それではどうして黒田総裁はこのタイミングで追加緩和を実行したかったのであろうか。

 ひとつの要因として、このときの会合の公表文にあったように「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」ためと思われる。

 このとき公表された展望レポートでは、消費者物価の見通しについて、消費増税の影響を除いたベースで今年度は1.2%、来年度は1.7%と、前回の見通しから下方修正していた。日銀の物価目標達成は困難という見方が広がる恐れもあった。この日の朝には2014年9月の全国消費者物価指数が発表されており、日銀が試算する消費増税による影響分の2.0%を差し引くと1.0%となっていた。

 それよりも政府への支援策が意識されていた可能性もある。GPIFの運用比率の変更の正式アナウンスが31日の夕方に出ていたが、これにタイミングを合わせることで株価を押し上げることができる。日銀はETFとREITの買入れ増額も発表していた。

 さらに10月29日のFOMCではFRBはテーパリングを終了させていた。このタイミングで日銀が追加緩和を実施すれば、FRBと日銀の金融政策の方向性がより顕著となり、それはつまり円安ドル高を加速させる要因となる。この円安を促す影響も考慮に入れていた可能性がある。

 円安株高が意識されての追加緩和だとすれば、消費増税に向けての景気対策の下地作りとの見方もあろう。ただし、消費増税を意識するのであれば、そのタイミングはあまりに早すぎた。ただし、現実には政府はこのタイミングで消費増税の先送りを検討しており、その政府の動向を意識しての決定であった可能性もある。

 このように昨年10月末の追加緩和は、サプライズを含めて、いろいろな要因が想定された。それを踏まえて、はたして今月30日に追加緩和の可能性はあるであろうか。

 昨年10月末の決定会合では政府関係者が一時会合の中断を求めるという珍しい事態が発生していたが、これは政府と日銀の意思疎通がしっかり行われていなかった可能性を示す。これは消費増税を巡ってのものとの見方もできようが、今の段階では特に政府にこのときのような動きはなさそうである。

 国債買入の技術的な問題による買入枠の増額の可能性も現状は考えづらい。

 FRBの利上げは今年の6月から9月との見方がいまだに強いとみられ、このタイミングで日銀が先に動いてしまうと為替市場へのインパクトは薄れてしまう。米利上げとタイミングを合わせた方が良いはずである。

 展望レポートの物価予想等の修正に合わせてとの可能性もないとは言えないが、日銀のシナリオ、つまり原油価格の反発もあっての物価の上昇シナリオに沿うかたちで数字が出されれば、追加緩和の必要性はなくなるのではなかろうか。

 2年で2%の目標が達成できなかったからという理由であれば、それは30日ではなく8日の会合で決めるべきものではなかろうか。

 このように今月末での追加緩和については、その要因となるものが前回の昨年10月末ほどはないように思われる。政府が注視する日経平均も2万円近くまで上昇しており、株式市場への日銀によるてこ入れが必要な状況にはない。個人的には30日の決定会合でも現状維持と予想するが、別な要因により、あらたなサプライズがあるのだろうか。

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by nihonkokusai | 2015-04-09 09:22 | 日銀 | Comments(0)

戦後初の国債発行と日銀の国債買入の開始

 過去の金融の歴史を紐解く資料でネットに公開されているものは、ありそうであまりない。その貴重な資料のひとつに日銀の百年史がある。ここには戦後初の国債発行の方式を巡ってのやりとりが記載されていた。

 前回の東京オリンピックが開催されたのが昭和39年であったが、翌年の昭和40年に不況が起きる(40年不況)。オリンピック景気の反動といったものであったが、この対策として財政面からの公共事業が促進されることになり、戦後初めてとなる国債発行が準備されたのである。戦後しばらくは国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入で賄われていたが、その状態は長くは続かなかった。そこで問題はその国債をどのように発行するかとなる。

 百年史によると、日銀は市中消化が望ましく、日銀の直接引き受けには反対であるとしていた。しかし、大蔵省や市中銀行などはそうではなかったようである。もちろんすでに日銀の国債引き受けを禁じている財政法は施行されていた。それでは何故、日銀は国債引き受けに反対したのか。それについては百年史には下記のようにある。

 「昭和7年以降本行引き受けによって国債が発行されるようになったことが、金融政策の適切な運営を困難ならしめて通貨価値の安定を妨げ、やがては激しいインフレーションをもたらし、本行からセントラル・バンキングの機能を奪うに至ったことは既述のとおりであり、この点は本行の100年にわたる長い歴史のなかでも、とくに痛恨極まりない、苦渋に満ちた経験であった」(日銀、百年史より引用)

 ところが戦後初の国債発行について、当時の大蔵省は当面市中消化は無理であり、また全額を資金運用部で引き受ける余裕もないから、結局一部資金運用部引き受け、残額を日本銀行引け受けという方式をとらざるをえないとの考え方が強かった。金融債などを主体に売買する債券市場は存在していたものの、円滑に国債を消化できるシステムは当時、構築されていなかった。このため市中銀行も市中公募による国債発行には消極的であった。新聞の社説などでも、昭和40年度の国債は日銀引き受けで発行すべきとの意見もあったようである。

 このため日銀は大蔵省だけでなく関係各方面に市中消化原則の考え方について理解を求める努力をした。当時の佐々木副総裁は日銀の国債引き受けの場合には、売りオペがセットになるが(高橋財政時の方式を意識か)、当時のオーバー・ローンのもとでは日銀の意図するだけの規模で実行しうるか保証はない。これに対して市中消化の場合には、日銀の国債買入が問題となり、これについては日銀が物価・国際収支の動向等を考慮して、適当と認められる額の買入れを主導的に実行できる、としたのである。すでにこの時点で日銀の国債買入は国債発行とセットで意識されていたことが伺える。

 こうして1966年1月に、戦後初めての国債が、期間7年、利率6.75%で2千億円発行されたが、その前に金融機関による国債引き受けシンジケート団が形成されていた。昭和40年度に発行された国債は、この国債引受シンジケート団と大蔵省資金運用部によって引き受けられた。シ団引受の一部は市中消化されたが、ほとんどはシ団メンバーの金融機関が保有した。

 金融機関が引き受けた国債の市場売却は、事実上自粛されていたが。1967年1月より日銀は買入債券の対象に発行後1年経過の国債を追加した、これにより金融機関の保有する国債はほぼ全額このオペによって吸収されたのである。これが日銀の国債買入の始まりとなった。

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by nihonkokusai | 2015-04-08 09:33 | 国債 | Comments(0)

日銀の物価目標がもし達成できたなら

 日銀の物価目標の達成は可能なのか。可能であれば、その時期はいつ頃となるのか。そもそも金融政策で物価が動かせるのかという疑問があり、現在の日銀の金融政策を巡る争点ともなっているが、マネタリーベースを2倍にしても物価は予想通り上がらなかった事実からもその結果は明らかではなかろうか。

 そうではなく、ここから日本の経済が回復し、2020年の東京オリンピックに向けて景気の拡大、雇用の増加と賃金の上昇、エネルギー価格の上昇などを想定すれば、その可能性はないわけではない。ただし、それはマネタリーベースや日銀の巨額の国債買入とは直接関係ないかたちで2%の物価目標が達成されることになると思われる。あくまで良いかたちの物価上昇の仮定である。

 この結果、仮に消費者物価指数が安定的に2%以上となったとする。これには成長率の上昇も伴う仮定となり、日銀がテーパリングを意識するタイミングで長期金利の上昇が始まり、2%を超えてくるであろうことが予想される。株価や地価の上昇なども伴い、そこに久しぶりにインフレが意識されることになる。ゆうちょや生保、年金などにとり、必要な利回りが確保されるため、一定の国債需要は見込めるとともに、日銀の当座預金などに移していた資金も国債に再び戻ってくると予想される。そこで日銀のテーパリングが開始されるとなれば、それほど大きなショックは起きない可能性もある。

 しかし、長期金利の2%という水準に対しては未体験ゾーンとなる市場参加者も多いとみられる上に、過去買入額を減少させたことのない日銀が国債買入額を多少なりとも削減するとなれば、例え外部環境が良くてもかなりのショックを債券市場に与える可能性のほうが高いのではなかろうか。しかも、過去の長期金利2%以上の時代と現在では国債残存額が倍以上になっており、国債保有が日銀からスムーズに民間金融機関に移行が可能なのであろうか。

 このあたりは、かなり慎重に行う必要がある。長期金利2%となれば債券相場のボラティリティも上昇し揺れ幅も大きくなる。市場参加者の厚みを増す可能性はあるが、運用側としてはあまり大きな相場変動は困ることになろう。市場にも日銀にも良い条件で2%の物価目標が達成できたとしても、債券市場にはいくつもの不安定要因が出てくるであろうことは容易に想像できる。

 それでは日銀にも市場にも良くない条件での物価や長期金利の上昇が起きた際にはどのようなシナリオが描けるのか。日銀の巨額の国債買入が財政ファイナンスと認識されたり、ギリシャのように何かしらの事情で、政府や日銀の信認が低下し、それにより円や日本国債の信用が低下し、国債が下落し物価も上昇してしまうケースもないとは言えない。

 そのような物価上昇に対しては、日銀はインフレターゲットを設定しているため、日銀の金融政策でその物価上昇も抑制できるとの見方がある。そもそもインフレターゲットや物価目標を設定しても、物価を上げることができなかった日銀が、反対に物価上昇を金融政策で抑制できることは考えづらい。過去の世界の歴史の上でも何度もインフレに見舞われたことがあるが、その沈静化に対しての金融政策による直接的な効果よりも、人々の不安を政府や中央銀行の政策で沈静化させた面が大きかったのではなかろうか。金融政策だけで物価上昇や長期金利を自在にコントロールすることは困難である。このあたりは過去の歴史を再度確認しておく必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-04-07 09:14 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和の目的とその結果

 2013年4月4日に日銀は量的・質的緩和政策を決定した。消費者物価指数の2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベース(現金通貨と日銀の当座預金残高)および長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行った。あれから約束の2年が経過した。

 消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという明確なコミットメントを行った上で、それを裏打ちする「量的・質的金融緩和」という、新しい金融緩和政策を行った。こうした日銀による強い意志と大胆な行動が、企業や家計の期待を抜本的に転換することになると考えていると、2013年5月の講演で中曽副総裁は述べていた。

 さらに岩田副総裁も2013年10月の講演で、「2%の物価安定目標を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すること」について、日銀は「明確に約束している」というコミットメントがひとつの柱となり、もうひとつの柱は第一の柱であるコミットメントを「具体的な行動で示す」ため、マネタリーベースを大量に供給し、2012年末の138兆円から2014年末の270兆円へと、2年間で2倍に拡大することを目指すとしている。

 量的・質的緩和から約束の2年が経過した時点で、マネタリーベースは295兆円に膨れあがっており、2014年10月の量的・質的緩和の拡大もあり、当初の想定以上に「マネタリーベース」は拡大し目標は達成されている。岩田副総裁はこの量的・質的緩和が物価上昇にどのように働きかけるかについて以下のように説明していた。

・長期国債を中心とした各種資産の買入れにより、民間にお金を大量に供給することは、名目金利を引き下げる

・マネタリーベースの量を大幅に増やし続ければ、将来、銀行の貸出等が増え始め、その結果、世の中に多くの貨幣が出回るようになる、と市場参加者が予想する。将来、貨幣が増えれば、その貨幣の一部が物やサービスの購入に向けられるため、インフレ率は上昇するだろう、と予想

・名目金利の低下圧力と予想インフレ率の上昇圧力はいずれも、実体経済に重要な影響を及ぼす予想実質金利を引き下げる

・インフレを予想した市場参加者は、運用する資金を、現金や預金、あるいは国債などの債券から、インフレに強い株式(株式投資信託を含む)や土地・住宅(J-REITなどの不動産投資信託を含む)、あるいは円よりも金利の高い外貨建て資産に移そうとし、その結果、株価は上昇し、円安・外貨高になる。

・株高と外貨高により、株式や外貨建て資産を持っている家計の資産価値は増加し、外貨高の効果として輸出の増加も。

・家計の消費が増えれば、企業は消費の増加に応じて生産の増強を図る必要が出てくるため、設備投資に積極的になる。株高や外貨高によって、他社株や外貨を保有する企業(主として輸出企業)の純資産価値が増大し、企業が設備投資を増やす要因となる。これには成長戦略が採用されるのであれば有効ながら、成長戦略がなければ2%の物価安定目標を達成できない、ということを意味するものではない。日本銀行は2%の物価安定目標を達成するための強力な手段を持っている。
(2013年10月18日の岩田規久男日銀副総裁の講演要旨より一部引用)

 日銀の2度に渡る異次元緩和により、マネタリーベースは当初の想定以上に拡大した。しかし、肝心の目標とする物価は2%どころかゼロ%からマイナスになろうとしている。

 上記の岩田副総裁の異次元緩和の経路の説明のなかの円安・株高については結果としてそうなっている。これが日銀の異次元緩和の成果として良いかどうかは疑問の余地はあるが、そうであったとしても物価には働きかけきれていないことになる。

 名目金利も確かに低下し、日本の長期金利は0.2%も一時割り込み、5年債利回りもマイナスとなった。これがすべて日銀の異次元緩和の効果であるとも言えず、欧州の国債利回りの低下にもかなり影響を受けていたが、日銀の大量の国債買入が背景にあることは否定できない。

 それでは何を日銀は読み間違えたのか。岩田総裁の講演内容から、円安・株高・名目金利の低下の部分を排除するとその答えが出てくるのではなかろうか。そこに残されているのは肝心の「予想インフレ率の上昇」となる。

 つまり日銀の異次元緩和で最も重視されていたはずのものが、ほとんど作用していなかったということになる。これについて消費増税や原油安が大きく影響したというのは岩田副総裁の説明からは矛盾することになる。日銀は2%の物価安定目標を達成するための強力な手段を持っているのではなかったのか。日銀は目標達成の期間を少し延長したようだが、いつまでも目標が達せられないとなれば、残るのは財政ファイナンスを連想されかねない国債主体の巨額の日銀のバランスシートと流動性を失いつつある世界有数の国債市場ということになる。

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by nihonkokusai | 2015-04-06 09:53 | 日銀 | Comments(0)
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