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日銀はすでに国債全体の四分の一を保有

 3月18日に日銀は2014年10~12月期の資金循環統計を発表した。これによると家計の金融資産は1694兆3189億円となり、過去最高を更新した。

 資金循環統計を基に、2014年12月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

 12月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、885兆2014億円(9月末860兆6779億円)と前回の9月末から24兆5235億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると昨年末の国債の残高は約1023兆円となる。

 参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。以下、投資家別に残高の多いものから並べてみた
銀行など民間預金取扱機関 272兆0506億円(9月末282兆1407億円)、30.7%(同32.8%)
民間の保険・年金 234兆6877億円(同230兆4700億円)、26.5%(同26.8%)
日本銀行 207兆1462億円(同183兆4282億円)、23.4%(同21.3%)
公的年金 57兆2098億円(同62兆0554億円)、6.5%(同7.2%)
海外 45兆3604億円(同41兆0746億円)、5.1%(同4.8%)
投信など金融仲介機関 36兆6159億円(同28兆0745億円)、4.1%(同3.3%)
家計 18兆4400億円(同19兆3203億円)、2.1%(同2.2%)
財政融資資金 2291億円(同2882億円)、0.0%(同0.0%)
その他 13兆4617億円(同13兆8260億円)、1.5%(同1.6%)

 9月末に比べて、残高が最も増加していたのが今回もまた日銀である。9月末比で23兆7180億円の増加となっている。つまり9月末から12月末にかけての全体の増加分24兆5235億円のほとんどを日銀がカバーしていた計算となる。次に増加額が大きかったのは投信など金融仲介機関で8兆5414億円増、次いで海外で4兆2858億円増、次いで民間の保険・年金の4兆2177億円増と続く。

 反対に9月末から12月末にかけて残高を大きく落としていたのは、銀行など民間預金取扱機関で10兆0901億円減、次いで公的年金の4兆8456億円減。銀行の残高減少は内訳をみると中小企業金融機関等が4兆9060億円も減少させており、引き続きゆうちょ銀行が国債残高を大きく減少させていた可能性がある。公的年金はGPIFの運用見直しによる影響が続いている。

 海外投資家の長期国債のシェアは5.1%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.3%のシェアとなり9月末の8.9%から増加した。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは25.0%となっており、国債全体の四分の一を保有していることになる。

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by nihonkokusai | 2015-03-19 09:27 | 国債 | Comments(0)

国債急落の際に何が起きていたのか

  1929年10月24日にニューヨーク証券取引所で株価が大暴落した際や、1987年10月19日に起こった史上最大規模の世界的株価大暴落であるブラックマンデーの際に何が起きていたのか。いろいろと研究もなされており、その原因や急落に至る過程もある程度は明らかになっていると思われるが、それでも具体的なことについてどこまで明らかになっているのかは定かではないのではなかろうか。ただし、株式市場は他の市場に比べてオープンな面もあり、たとえば具体的な手口等も明らかになっていたとみられ、そのあたりから急落のきっかけもつかめていたかもしれない。

 これに対して債券市場は非常に閉鎖的である。この理由としては銀行の存在があった。株式を取引している取引所の会員、つまり取引を行っていたのは証券会社である。場立ちと呼ばれる証券会社の人間が、取引所の監視の下、実栄証券・仲立証券が間に立って株の取引をして値段をつけていた。このため、どの証券会社がどのくらいの注文を出していたのかは一目瞭然であった。いわゆる手口はオープンというより、手口が見えているのが当然であったのである。またその背景にいる顧客についてもある程度、大口の顧客であれば推測も可能となった。注文の出し方等に癖もあり、ベテランの場立ちはそれを見抜いていたと思われる。

 このように取引所の手口はオープンなものであったのだが、1985年に東証に国債先物が上場するにあたり、国債の大口保有者であり、売買も積極的にこの年からできるようになった銀行が取引所の準会員として入ってきた。この際に株のように手口を公開しないように求められた。銀行は自らの売買を見せたくはなかったためと思われる。このため、国債先物の手口はオープンにされず、他の取引についても場立ちからコンピュータを介した取引に移行したこともあり、手口情報は制限が加えられるようになってきた。

 取引所の手口もオープンではなくなってきたが、そもそも国債の現物取引については顧客と業者の間の取引には当然守秘義務がある。国債入札についても同様に公開されていない。ただし、個別にヒアリングをかけて集計したものがQUICKなどで明らかにされているが、ここには大手でも3社程度は実際の数字を明らかにしていないとされる。入札に関しては年間の上位10社は財務省が発表しているが、具体的な入札・落札額は明らかになっていない。また、日銀の国債買入についても具体的にどこから日銀がいくら購入したのかは明らかにされていない。

 ただし、月別であれば先物は取引所が、現物債は日本証券業協会が投資家別の売買高を明らかにしている。それでも具体的にどの証券会社や銀行、生保が売買したのかは明らかとはされていない。

 前置きが長くなってしまったが、このように債券市場では手口等は明らかになっておらず、1998年の資金運用部ショックや2003年のVARショックでは具体的にどこがどのような動きを見せ、それが収束するのはどのような動きがあったのかは明らかになっていない。その後解説された動きのほとんどは推測によるものである。しかし、今後もし国債相場が急落するようなことがあれば、このような国債急落時の状況把握はたいへん重要な参考資料となりうる。

 国債急落時にいったい何が起きていたのか。国債発行を担当している財務省、そして国債急落の際にも大きな影響を与えていた日銀、現在では主要保有者でもある。もちろん売買をしている業者や投資家、さらに債券先物を上場している取引所が主なプレーヤーと関係者となる。たぶん財務省や日銀、取引所には当時のデータは残っていると思われるが、業者や投資家にはそのデータは残っていないかもしれない。しかし、いまなら当時の売買担当者の記憶には残っているはずである。いつかはこの記録と記憶を突き合わせ、急落時の状況が再現できると良いのだがと、先日複数の市場関係者と話をした。しかし、結論から言えば、それぞれの守秘義務等があり、それは無理ではないかということになったのである。

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by nihonkokusai | 2015-03-18 09:37 | 債券市場 | Comments(0)

高橋是清邸で考えたこと

 3月15日に家の事情で立川方面に行ってきたのだが時間があったため、途中で「江戸東京たてもの園」に寄ってみた。この日まで「ジブリの立体建造物展」もやっていたので、それも目的であったが、一番の目的は高橋是清邸であった。ちなみに昼過ぎに着いたときは多少、入場券売り場に列はあったが、15時近くでは長蛇の列となっていた。「ジブリの立体建造物展」の最終日ということで多くの来場者がいたようである。

 ただし、ジブリではなく「江戸東京たてもの園」の通常の建物はゆっくり見ることができた。たてもの園のほぼ真ん中にあるのが高橋是清邸である。高橋邸は赤坂にあり、現在の赤坂の高橋是清翁記念公園となっている。その敷地は広く約2000坪の敷地で、現在のカナダ大使館も高橋邸の一部であったそうである。そこにあった高橋是清邸は戦前に多磨霊園に移されていたために戦災を免れ、その後、この江戸東京たてもの園に移築され公開されている。

 是清は二階を寝室と書斎に使っており、当時としては珍しかったガラス張りのその二階で、1936年の2月26日に襲撃され、高橋是清は殺害された。この部屋も入ることができる。

 高橋是清は殺害されたときにはすでに81歳になっており、本来であれば、悠々自適の隠居生活を送ってたはずの年齢である。しかし、時の経済・財政さらに金融をしっかりコントロールできるのは高橋是清翁しかいないと、現役の大蔵大臣にカムバックし、いわゆる高橋財政を行っていた。

 二・二六事件で殺害されたのはほとんどが軍部出身者であったが、唯一の例外が高橋是清であった。高橋是清の生い立ちは非常に面白い。詳しくご存じない方は幸田真音さんの小説 「天佑なり」か、私の著書「聞け!是清の警告」を読んでいただきたいと思うが、軍部には直接絡んではいない。しかし、是清なしに日露戦争はできなかった。戦争には莫大な資金が必要となる。日露戦争の資金調達に奔走し成功させたのが高橋是清であった。

 高橋是清は高橋財政により日銀の国債引き受けというリスクのある手段を講じてしまった。ただし、それは高橋是清であればそのリスクを封じることもできるという自負もあった。高橋是清は何度も蔵相を経験し、首相、日銀総裁も経験するという異色の人物であり、英語も堪能で海外の経済金融情勢にも詳しかった。高橋邸の障子ガラスが張り巡らされたこの二階の明るい部屋で英字新聞を読んだり、ラジオを聞いたりしていたそうである。

 その高橋是清も軍部を抑えることはできなかった。自ら考案した日銀の国債引き受けという打ち出の小槌は、しまい込むことはできなかった。国債依存の戦費調達を可能とさせ、その後軍備拡張は続き、太平洋戦争に突入する。財政悪化に加えて敗戦による物不足によりハイパーインフレが生じ、それとともに預金封鎖による強制的な国民財産の差し押さえにより巨額の日本の政府債務は返済されることになる。

 高橋是清が存命であっても、この流れを止めることはできなかったかもしれない。しかし、もしかすると是清が生きていれば、また違った世論が形成されていた可能性もある。そのような存在であったために、軍部にとって邪魔な存在になっていたのかもしれない。坂本龍馬が暗殺されていなかったら歴史は変わっていたのかと思うことがあるが、高橋是清も暗殺されなかったら、時代は少し変わったものになっていたのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-03-17 09:47 | 国債 | Comments(1)

転身ができない日銀

 アベノミクスと呼ばれたリフレ的な政策を安倍首相は打ち出し、その実行部隊が日銀となった。2012年11月のアベノミクスのスタートにより、急激な円高調整が入り、株式市場も急上昇した。そして、日銀が2年で前年比2%という目標を掲げた消費者物価指数は異次元緩和決定後、急速に上昇することになる。

 2013年3月が前年比マイナス0.5%、4月がマイナス0.4%、5月はゼロ%、6月はプラス0.4%、11月にはプラス1.1%と1%台を回復し、異次元緩和の1年後の2014年4月には前年比プラス1.5%と目標まであと0.5%に迫った。この勢いであれば、2年も掛からず2%の目標はあっさりクリアーできるとの楽観的な見方も強まった。

 日銀の異次元緩和により、レジーム・チェンジが起きてデフレからの脱却も間違いないと思われた。ところが消費者物価指数はここからじりじりと前年比のプラス幅が縮小していく。そもそも異次元緩和を行ってすぐに物価が上がること自体がおかしいことに気がつくべきであった。リフレ派ですら金融緩和の効果には時間が掛かるとしていたはずが、すぐに効果が現れた格好となった。これは事前にアベノミクスが始まっており、それでレジームチェンジが起きていたためとの説明もできるかもしれない。まさに期待に働きかけたと。しかし、このときの物価上昇はそもそも前年比でプラスへの回復はアベノミクスや異次元緩和がなくとも起きていた。しかし、その戻り方のピッチが速かったのには円安の影響が大きかったのである。

 円安の動きが鈍り、円安による日本経済の負の効果も意識された。中小企業にとって原材料費の高騰が直撃し、個人にとっても物価上昇に賃上げが追いつかなければ家計を圧迫することになる。円安が一服しただけでなく、今度は原油安という新たな物価抑制要因も出てきた。このため消費者物価指数の前年比は縮小し、2014年10月に0.9%と1%割れとなった。

 このタイミングで日銀は量的・質的緩和の拡大、つまり異次元緩和第二弾を打ち出した。ところがこれ以降、さらに物価の前年比は縮小する。2015年1月にはプラス0.2%に低下した。ここからさらにプラス幅は縮小すると予想され、4月にかけて前年比マイナスになる可能性も出ている。日銀は異次元緩和第二弾であらためて決戦を挑んだが、状況はむしろ悪化することになる。

 金融政策で物価をコントロールできるのか。英国や米国も量的緩和を打ち出したが、物価そのものは大きく上昇したわけではない。あくまで金融緩和は景気回復の側面支援でしかなった。米国では住宅ローン問題が危機のきっかけでもあったことで、MBSの買入がうまく機能し、その結果として雇用の回復があった。欧州の信用不安の後退が英国や米国の景気回復の手助けとなり、そこに緩和効果も多少なり影響したとみられる。

 日本でも世界的な金融経済危機が去ったことで必然的に景気も回復基調となり、円安がそれをいったんフォローした。しかし、異次元緩和は直接、景気や物価には影響は与えたとは思えない。円安や株高の材料となったかもしれないが、日銀がマネタリーベースを倍にしようが機械的に物価が上がるようなことぱなかったことが示された。

 日銀の異次元緩和は壮大な実験とも呼ばれた。その実験開始から約束の2年が経過し、2%どころかゼロかマイナスになろうとしている。賃金等が上昇しているから効果はあったとの見方もややピントがずれている。世界的な景気回復の波に乗っただけで、そもそも肝心の物価が上がらないで、良いとこ取りしようとしているようにしか見えない。

 日銀にとってここまできてしまったら、自らの考え方が誤りであったことは認めないであろう。それはつまり、日銀による思い切った国債買入はこのまま半永久的に続けられるか、さらにその買入を拡大させる可能性すらある。このままでは国債市場がこれを財政ファイナンスと認識して急落してしまってはじめて、間違いを認めることになってしまうのか。転身ができない日銀はそのリスクを徐々に高めていくことになる。

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by nihonkokusai | 2015-03-16 09:50 | 日銀 | Comments(2)

政府債務削減の歴史

 政府の債務残高がGDP比で200%を超えたのはそれほど例がない。終戦後の日本と現在の日本、そしてナポレオン戦争後と第二次大戦の後の英国にその例がみられる。

 巨額の政府債務を削減するには、穏やかな政策としては財政再建と景気回復、金利の抑制などをミックスさせた財政健全化、やや思い切った手段として半ば強制的に国民から税として吸い上げる手段、さらにデフォルト、そしてインフルによる債務削減等がある。

 英国はナポレオン戦争後の1821年に政府債務のGDP比は288%に達した。これを1914年までかけて29%まで低下させている。このときにはデフォルト等もなく、それほど極端なインフレも起きていない。このときの債務削減の主たる方法は経済成長とされる。金本位制のもとでの均衡財政政策、軍事費の削減とそれにともなう国債発行の減少、長期債への借換えなど各種の国債管理政策による金利負担減少、1875年に導入された減債基金法などが債務削減の背景にあったとされる(日銀金融研究所の金融研究、藤木裕氏の「財政赤字とインフレーション」より一部引用)。

 第二次大戦後の英国については、公的債務の利払い費抑制や長期債利回りを超低水準に誘導する国債価格支持政策が導入された。イングランド銀行による短期債の無制限購入も行っていたが、成果はあまり上がらなかったようである。それでも高いインフレ率に対して長期金利が人為的に抑制されていたこともあり(金融抑圧)、政府債務は徐々に削減されていた。名目GDPそのものが拡大したことで、政府債務のGDP比が低下した面も大きかった。

 第二次大戦後の日本は、対外債務は実質的なデフォルトとし、対内債務についてはハイパーインフレでかなり目減りしていたが、最終的には預金封鎖と新円切り替えで国民の財産を差し押さえ、財産税により徴収した資金でそれを返済した。戦時中に国民や国内企業に対して約束した補償債務については、戦時補償特別税の課税というかたちで相殺したのである。

 現在の日本は政府債務削減が主目的ではないものの、結果として日銀の異次元緩和による大量の国債買入により、長期金利が抑えられ、第二次大戦後の英国に近い政策が取られている。ただし、物価に関しては低迷が続いている。国債の新規発行額は抑えられつつあるが、それでもすでに政府債務残高は1000兆円を超えている。債務総額というよりも政府債務のGDP比をいかに抑えることができるのか。ハードクラッシュではない手段を選択する必要があるとすれば、少なくとも財政再建の手を緩めるべきではない。

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by nihonkokusai | 2015-03-15 09:28 | 国債 | Comments(0)

国債バブル崩壊とはどのようなことなのか

 国債バブルが崩壊するとはどのようなことなのか、との質問をいただいたので、ここで想定される国債バブル崩壊のパターンを予想してみたいと思う。

 現在の日本やドイツの国債相場がバブルの状態であるかどうかは、バブルが破裂してみるまではわからない。しかし歴史上、長期金利が0.2%という水準は極めて異例である。いずれこの反動が起きるであろう事も確かとみられるが、それが何をきっかけにどのような形で現れるのかについての予想は難しい。

 とりあえず想定できるのは、何かしらの悪材料を受けてというよりも価格調整の動きとなろう。日本の債券市場でいえば1987年の債券のバブル相場の崩壊、1998年末の資金運用部ショック、2003年のVARショックと呼ばれるものが事例としてあげられる。

 それぞれについてはこれまでも何度か指摘したが、1987年のタテホ・ショックの要因ともなった債券市場バブルの崩壊と2003年のVARショックと呼ばれる相場急落は、勢いに乗って相場上昇を仕掛けた反動となった。その意味では今回もいわゆる日銀トレードによって、5年債利回りのマイナス化や10年債利回りの0.2%割れという相場が演出されていたとなれば、その後の調整は1987年と2003年の事例に近い。しかし、いまのところその調整幅はショックと呼ばれるほどのものではない。

 1998年の運用部ショックの事例については、当時の最大の国債保有者であり、日銀のオペレーションのように市場から国債を定期的に買い入れていた資金運用部の買入がストップしたことで発生した(資金運用部とは郵貯・簡保の資金を運用していたところ)。これは日銀の現在の国債買入が縮小する際、いわゆる出口政策の際に、同様の事態というかリスクが発生する恐れがある。

 運用部ショック等の事例は大きな調整となったが、その後の債券相場は戻しており、短期的な調整とも言えるものであった。これが本格的に調整となればどうなるのか。それは債券市場ではなく1989年末にかけての東京株式市場の上昇とその後の急落が参考となる。これぞバブル崩壊である。

 ファンダメンタルズなどと乖離した相場が形成されるといずれその反動が来る。その価格調整のきっかけは意外と些細なものであったりする。しかし、その相場反転の要因がテールリスク、ブラックスワンと呼ばれるものであった際の方が恐いことも確かである。

 金融で最も重視されるのが信用・信認である。国債への信認が失墜したらどうなるのか。国債に絡んだ事例として2010年に発生したギリシャ・ショックがある。ギリシャと経済大国の日本は直接比較にならないとのご意見があるかもしれないが、国力等に関わらずその国の信認が低下した際には、どのような国であり同様の事態は起こりうる。

 日本国債が急落したら日銀が買えば問題ないとの意見については、そもそもその行為が財政法で禁じられた日銀の国債引き受けと認識され、財政ファイナンスと見なされる。国債と円の信認が失墜すれば、国債と円、さらに日本株のトリプル安が起こりうる。ただし、これについてはそう簡単に起きるものではないことも確かである。それだけ円や日本国債への信認は厚い。しかし、その信認は簡単に崩れるであろうことも歴史は示している。

 また、国債や円の下落を日銀の国債買入や財務省の介入で止められないことは、1990年代のイングランド銀行に良い事例がある。ヘッジファンドに天下のイングランド銀行が屈したのである。

 財政ファイナンスをきっかけとした物価の急騰については、第一次大戦後のドイツ、第二次大戦後の日本にその事例がある。日銀が物価目標を掲げても、物価を操作することができないのは、現在の日銀を見れば良くわかる。金融政策では、物価を上げることもできなければ下げることもできない。あくまで補助的な役割に過ぎない。特にハイパーインフレについては信用を取り戻すことが最重要となり、金利の急騰したギリシャも結局は信認を取り戻すことが必要となった。ハイパーインフレも金利の急騰も市場参加者ばかりでなく人々の不安が要因となる。ハイパーインフレを抑えるためにはその不安を取り除かなければならない。それは金融政策だけでは無理がある。

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by nihonkokusai | 2015-03-13 09:25 | 国債 | Comments(1)

ECBは何のために国債を買い入れているのか

 ECBはどうやら3月9日から国債の買い入れを始めたらしい。「らしい」と言うのは、日銀のようにオペレーションで買入額を提示して購入するのではなく、ユーロ圏のそれぞれの中央銀行が直接、金融機関から買い入れているらしく、実際にどのような国債をどれだけ購入したのかは明らかになっていない。

 念のため確認しておくと、ECBは3月9日から国債買い入れを開始した。その対象になるのは、国債と一部民間部門資産。既に実施しているカバードボンド、ABSの買入プログラムと合わせて月額600億ユーロ。国債買い入れは当面、2016年9月まで継続し(総額1兆1000億ユーロ)、必要なら延長も視野に入れる。買い入れる国債の利回りは、中銀預金金利のマイナス0.20%までとした。国別の国債買入額は各国中央銀行によるECBへの出資比率に応じ決められるそうである。

 ECBのクーレ専務理事によると、QEプログラム下で実施した国債買い入れの総額を毎週公表するとともに、各国の詳細について毎月公表するとした。つまりその発表があるまでは具体的にどの国債をどの程度購入したのかはわからない。

 ブルームバーグによると、ユーロ圏の中央銀行は(ECBではなくたとえばブンデスバンクなど)、ECBのプログラムの下でマイナス利回りのドイツ5年債を含む国債を購入したと、取引に詳しい関係者3人が匿名を条件に明らかにした。ベルギー債とイタリア債購入も実施されたとか。

 9日と10日のユーロ圏の国債の買い入れに関しては、高格付け国の中銀の方が周辺国の中銀よりも活発に買い入れを行ったとされる。ユーロ圏の国債残高はイタリア、ドイツ、フランスが圧倒的に多い。また、売り手の多くは非居住者の投資家という指摘もあった。

 たとえば為替介入については、日本では財務省が指示し、日銀が金融機関と取引するが、これについて完全な守秘義務があり、それを破ると日銀との取引ができなくなる恐れがある。株式市場にとって最大の注目材料ともなっているGPIF、いわゆる公的年金も守秘義務を徹底させている。日銀の国債買入も具体的にはどの金融機関がどの程度、国債を売却したのかは明らかではないが、ある程度の年限と総額はわかる。また、新発債が入っていたかなどの情報も出てくる。

 ECBの国債買入について、多少なり情報が流失しているところをみると、為替介入ほどの厳格な情報管理がされているわけではなさそうだが、それでも全体像が把握できていないことは確かである。むしろそのほうが市場への思惑も出やすくなり、効果はあるとの見方も可能か。現実に9日から10日にかけて、ドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランド、イタリア、スペイン、アイルランドなどの国債利回りは過去最低を記録している。しかし、この買入の効果がいつまでも持続することも考えづらい。

 今回のECBによる国債の買い入れの目的ははっきりしていない。すでにマイナスとなっている長期金利のさらなる低下を促すとしても、実体経済に与える影響は限られよう。日銀のようにマネタリーベースを増加させて期待を強めて物価を上げるというのが目的でもなさそうである。非居住者の投資家からの買入が多いとなれば、それもユーロ売りの要因となるが、今回のECBの国債買入の主目的はユーロ安を促すものとの見方もできる。しかし、ドラギ総裁の目的が国債買入をすることそのものであるように見えなくもない。

 イングランド銀行のカーニー総裁は3月10日の議会委員会において、原油安を背景とするインフレ低下への対応で、追加の金融刺激を行うことは「極めて愚か」との考えを示したそうである。総裁はその理由として「追加刺激の効果は、経済に原油安の影響が及んだかなり後になって表れるため、単に不要なボラティリティーを増大させるだけだ」と説明した(ロイター)。

 日銀もECBもデフレを懸念しての異次元緩和を実施しているとすれば、その物価への効果のほどはさておき、不要なボラティリティーを増大させるであろうことも確かであろうか。

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by nihonkokusai | 2015-03-12 09:57 | 中央銀行 | Comments(0)

債券市場の機能低下

 日銀は3月9日に債券市場サーベイ(2月調査)の結果を初めて公表した。債券市場サーベイとは、債券市場での取引動向や金利見通しについて、日銀の国債売買オペの対象先に聞いた調査である。

 国債市場の流動性に関して、例えば黒田日銀総裁は2月4日の衆院予算委員会で「これまでのところ国債買い入れなどについて特別に支障をきたすような状況は起こっていない。市場流動性なども様々な指標を見る限り低下していない」と答えている。日銀としては流動性は低下していない、債券市場の機能は低下していないという認識であった。

 黒田総裁などが国債市場の流動性が低下していない理由としては、現物市場や先物市場の出来高がある程度の水準を維持していたことも要因であり、投資家が国債を売却する際に、どの業者でも同じような水準で受けてくることなど、特に売買そのものやオペで支障がなかったことも要因かと思われる。ところが現場からは機能低下への懸念の声はむしろ強まりつつあり、今回のサーベイはそれを示した格好となった。

 日銀としても売買高等だけでは市場の機能が低下しているのかどうかの判別が難しいことは認識しているとみられ、単刀直入に債券市場の機能度をヒアリングし、ビッド・アスク・スプレッドの動向、板の厚みについて聞いている。これらはやや感覚的なものとなるものの、市場の流動性を読むにはこの感覚的なものが重要視される。

 債券市場の機能度については、高いと答えた割合が5%しかない。さほど高くないが65%、低いと答えた割合が30%となっている。3か月前と比べた変化においては、低下したと答えた割合が75%もあった。2月の債券相場は1月20日のピークから調整局面に入っていたことも影響していたと思うが、日銀の認識とは大きな隔たりがあった。

 ビッド・アスク・スプレッドについては、投資家にヒアリングをかけたほうが良いと思うものの、業者としても タイトであると答えたのは12.5%しかない。板の厚みについては「多い」と答えた人はゼロであった。これらについては中期、長期、超長期と年限別の回答も聞きたいところではある。特に超長期債については流動性がかなり低下しているであろうと思われる。

 それでも商いそのものについては、意図した価格やロットでの取引はそれなりに出来ているようである(ただし、出来ているとの回答は3割程度)。このため、いまのところ債券市場の流動性が懸念材料とまではなっていない。しかし、潜在的なリスク要因となりうることも確かである。何かしらの悪材料が出た場合には、異次元緩和以前でも一時的にせよ流動性は著しく低下した。過去にはリーマン・ショックの際、変動利付き国債や物価連動国債の売買がストップしてしまうような事態も発生している。今回のサーベイは異次元緩和後の市場の流動性を計る上で貴重なものといえる。

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by nihonkokusai | 2015-03-11 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

国債バブル終局の可能性

 日銀の木内審議委員は3月5日の講演後の会見において、量的・質的金融緩和の副作用に関して国債市場を通じた副作用を特に警戒しているとコメントしていた。

  「現時点では、国債市場で非常に大きな副作用が明確にみられているわけではありません。しかし、将来のどこかの時点で非常に大きな問題として表面化する可能性があり、表面化してしまってからでは手遅れであるといった類の副作用を個人的には一番心配しています」
(木内審議委員の記者会見要旨より引用)

 国債市場の金利水準が経済ファンダメンタルズからみた水準と乖離しているとなれば、金融不均衡、いわゆるバブルに繋がり得ると木内委員は指摘している。

 今年1月に日本で5年債の利回りがマイナスになったことに対する説明は難しい。ベーシス・スワップ、日銀担保等からの説明もされた。しかし、スワップ市場の規模はそれほど大きくはないし、どのような投資家がスワップを絡めて多少なりの利益を得ていたのかもはっきりしていない。

 ドイツやスイスの国債の利回りがマイナスとなっていたことで、日本の国債の利回りがマイナスになってもおかしくはない、との説明も可能ではあるが、それはそうやって相場を持ち上げて日銀トレードを可能にさせた、いわば市場参加者による期待によって生まれたマイナス金利ともいえる。それではドイツなどはどうかと言えば、こちらもバブル相場が形成されていると見ざるを得ない。いずれ大きな反動がくるであろうことも確かである。

 日銀による大量の国債買入とECBの量的緩和を背景に、日本の国債利回りも異常なまでに低下し、それが結果として国債の金利をマイナスにした。その反動が1月20日以降の日本の債券相場であるが、まだ本格的な調整とはいえない。

 ECBの国債買入は今週から開始される。日米欧の国債市場にとっては最後の大きな材料がまもなく消化されることになる。それに対して米国では利上げに向けた準備が整いつつある。6日の雇用統計も予想以上に良い数字となり、3月18日のFOMC後の公表文では、忍耐強く(patient)の文言を削除し、早ければ6月のFOMCにおいて利上げが決定さるとの見方が強まった。市場は6月か9月かといった利上げのタイミングよりも、むしろその後の利上げのペースの方を注目し始めている。

 日銀の追加緩和に期待する向きもいるかもしれないが、残念ながらバズーカは弾切れである。もちろん国債買入の額をさらに増加することは数字上では可能ながら、年間の国債の市中消化分を上回るような購入は債券市場の機能を低下させる懸念以上に財政ファイナンスとの認識をより強めさせる可能性がある。国債買入でなくても、ETFなどを思い切った量購入する手段もあるが、国債ほどの数字の上乗せには無理がある。そもそも市場参加者も現在の日銀の金融政策のターゲットであるところのマネタリーベースを増やしても、物価は上がってこないことを薄々感じているはずである。結果として株価対策のためのETFの買入となってしまいかねない。

 日銀の異次元緩和はその基本的な考え方に誤りがあったであろうことも、この2年近くの経験により、いずれ認めざるを得ない。欧州も念願の国債買入を開始するが、米国が金融政策では正常化に向けて動いているように、現在の世界の金融市場は異常な事態からはすでに脱してきている。

 大きなショックが何度もやってきたことで、警戒心が強いのは致し方ないものの、このままでは金融政策だけが異常な状態を続けることになる。その先頭を走っているのが日銀であることを考えれば、その副作用が大きくなるのが日本の可能性があり、それは木内委員も指摘するように日本の国債市場で起きうることも認識しておく必要があろう。

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by nihonkokusai | 2015-03-10 09:30 | 国債 | Comments(6)

日銀の轍を踏むのかECB

 ECBは3月5日の政策理事会において、主要政策金利であるリファイナンス金利は0.05%に、上限金利の限界貸出金利は0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%にそれぞれ据え置いた。

 理事会後の会見で、ドラギ総裁は3月9日から国債買い入れを開始することを明らかにした。対象になるのは月額600億ユーロの国債、および一部民間部門資産となる(総額1兆1000億ユーロ)。国債買い入れは当面、2016年9月まで継続し、必要なら延長も視野に入れる。買い入れる国債の利回りは、中銀預金金利のマイナス0.20%までとした。

 特に買入対象国債の利回りはマイナスも可能となったことが好感され、5日のユーロ圏の国債はドイツの2年債以外軒並み買われた。参考までにドイツの2年債利回りはすでにマイナス0.2%を下回っていた。ドイツの10年債利回りは0.35%に低下し、10年債利回りはフランスが0.64%、イタリアが1.30%、スペイン1.27%、ポルトガル1.77%、ギリシャは9.16%となった。

 5日の10年債利回りは英国が1.86%、米国が2.12%、日本は5日の引けは0.40%となっている。

 ドラギ総裁は、この会見の時点で同プログラムの勝利を宣言したそうである。ドイツなどの反対を押し切って、こつこつと各国の根回しも行い、やっとのことで念願の量的緩和政策の導入に踏み切れたことでの強気発言であったのであろうか。

 そういえば2013年4月5日の日銀金融政策決定会合後の記者会見では黒田総裁は次のように発言をしていた。

 「今回、必要な措置は全て採ったと言ってよいと思います。もちろん、経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇なく調整していきますが、2 年で 2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定したと考えています。」

 ドラギ総裁にとっても同様の思いに違いない。2月のユーロ圏のCPIは前年比マイナス0.3%となっており、今回公表されたECBのインフレ率の予想では、今年のインフレ率見通しは「0.0%」と12月予想の「0.7%」から引き下げられ、2016年はプラス「1.5%」と12月予想のプラス1.3%から引き上げ、2017年は「1.8%」としている。

 参考までに日銀の異次元緩和第一弾後の2013年4月26日の日銀の展望レポートによると、2013年度の物価見通しは前年比プラス「0.7%」、2014年度プラス「1.4%」(消費増税の影響を除く)、2015年度プラス「1.9%」(同)となっている。

 まるでECBの予想はこのときの日銀の展望レポートを参考にしたかのような数字である。ちなみに2015年1月のコアCPIは前年比プラス0.2%である。残念ながら異次元緩和時に予想したプラス1.9%には届いていない。

 ECBの国債買入が材料視されて、ユーロ圏の長期金利はポルトガルあたりまで英国や米国の長期金利を下回るという異常事態となっている。もちろんこれは需給への期待が背景にあるが、これは国債バブルとしか見えない。

 いずれこのバブルは崩壊することが予想される。しかし、同じくバブル相場といえる日本国債もさすがにマイナスの利回りは異常との認識となったようだが、簡単には大きな調整は入ってこない。その分、エネルギーが蓄積されている可能性もある。オオカミ少年といわれるかもしれないが、ユーロ圏の国債の動向には注意を払うべきであり、その動向次第では日本国債にも動揺を与える可能性もありうる。

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by nihonkokusai | 2015-03-08 11:24 | 中央銀行 | Comments(0)
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