牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

<   2015年 03月 ( 26 )   > この月の画像一覧

円安はアベノミクスの成果なのか

 2012年11月の衆院解散による政権交代への期待と、あらたに政権を担うであろうとされた安倍自民党総裁によるリフレ的な発言により、アベノミクスは誕生した。その効果として示されたのが急激な円安と株高、さらには一時的な物価の上昇となる。さらに雇用も改善傾向にあり、このあたりもアベノミクスの成果とされている。はたしてここで本当にレジーム・チェンジは発生していたのであろうか。

 ドル円は2011年10月末に75円台まで下落していたが、ここが過去最安値となった(念のためドル円とするときはドルが円に対して上げた下げたとの表現になる)。その後、2012年11月あたりまで80円割れが続く。しかし、2012年11月のアベノミクスの登場のタイミングにより、急激な円安を迎えることになり、2015年3月には一時122円台まで回復した。122円台がいつ以来なのかといえば2007年7月以来となる。

 それでは2007年から2015年にかけて円高が進行した理由は何か。それは日銀の金融緩和の度合いが足りなかった、からではない。

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど、アメリカ住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月のパリバ・ショックであった。ダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。米債市場は安全資産の国債に買いが集中し、これを受けて債券は買い進まれた。そして円も安全資産として買い進まれたのである。

 このサブプライム・ローン問題が2008年9月のリーマン・ショックに繋がる。その後、さほど時を経ずしてギリシャの財政問題から欧州の信用危機が発生した。それにより円が買い進まれて、ドル円は2011年10月末に75円台まで下落したのである。その後、2012年11月あたりまでドル円は低迷し80円割れが続いたが、欧州の信用危機はECBを含めて欧州連合などを含めての賢明な努力なより次第に収束していった。世界的な危機は去りつつあったのである。

 そこにアベノミクスの登場のタイミングでドル円は急回復する。安倍自民党総裁のリフレ発言をきっかけとしたヘッジファンドなどによる大規模な売り仕掛けが入ったのだが、これは反転のきっかけ待ちにあったためとも言えよう。そして、そこからドル円は122円台、つまり百年に一度とされた危機が立て続けに起きる前の水準に戻ったのである。

 この推移をあらためて確認すると、この動きを日銀の異次元緩和の効果として説明することにむしろ無理はなかろうか。アベノミクスはたしかにきっかけとなり、異次元緩和はそれをしっかり実行したため、円安が進行し、第二次異次元緩和でさらに円安に拍車をかけた、とされても、大きな危機以前の元の水準に戻っただけである。歴史に「もし」はないが、仮にアベノミクスのようなリフレ政策を打ち出さずとも、円高調整が入った可能性はありうると思われる。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-31 09:29 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスを否定する人に債券市場関係者が多い理由

 アベノミクスや異次元緩和に対して否定する人は少なからず存在していると思われるが、いわゆるリフレ派と呼ばれる人たちは債券市場関係者と名指しをして、アベノミクスを否定している人が多いと指摘する。  

 アベノミクスや異次元緩和に漠然とした不安は抱いていても、それを具体的に説明することは難しい。そもそもアベノミクスの第一の矢が絡む中央銀行の金融政策や国債の売り買いをする債券市場についての一般の方による関心はきわめて薄いと思われる。このため具体的な批判を行っているのが、その金融政策や国債に対する知識も豊富な債券市場関係者となり、どうやらそれがリフレ派と呼ばれる人たちには気に入らないようである。

 リフレ派の人たちが、アベノミクスを否定する人に債券市場関係者が多い理由として挙げているものが、債券市場関係者はデフレが続いて国債の価格が上昇してもらわないと困るからという、やや穿った考え方に基づいているようである。私は長らく債券市場で売買を行ってきたが国債の売りと買い、どちらが好きだといえば「売り」であった。ディーラーとしては、そのスピードが早い国債急落時のほうが儲けやすかったためである。投資家にとっても金利がほとんど付かない状態では運用難に陥るため、少しでも利回りがついていた方が運用しやすい。また高値の状態が続くと、その後いつ下げてもおかしくはないとの不安も働いて運用も慎重となりうる。金利が下がり続ければ、保有する国債の評価益は増加するが、このまま金利が下がり続けることを望んでいる債券市場関係者は極めて少数であろう。

 債券市場は国債発行を担当する財務省の意向を強く意識しているため、財政再建重視との財務省の意向に逆らうような意見は言えないというリフレ派の見方もあった。それもまた認識に大きな誤りがある。たしかに財務省も債券市場参加者も財政健全化を重視していることは確かであるが、その理由はただひとつ、売買している国債の信認を維持したいためである。国債を安心して売買できる環境を維持したいためである。もちろん国債を売買していることで、その巨額の発行量に危惧を覚えていることもある。ただし、財務省の意向を気にしながらというよりも、現在はむしろ財務省の方が市場参加者の意向を気にしているという方が正しいのではなかろうか。

 金融関係の専門家・実務家であるはずの日本の市場関係者の人たち、これは当然債券市場関係者を示すとみられるが、なぜこれほどまで金融政策についての理解と関心が薄いのでしょうかとの意見もあった。しかし、金融政策の実務に詳しいのは、学者などよりも金利に関わる債券市場関係者ではなかろうか。現場で金利や国債の動向、それに関わる日銀の金融政策を常にウォッチして分析を重ねているのが債券市場関係者である。金利は研究室で動いているのではなく、現場で動いているのである。その現場の人間の多くが、アベノミクスや異次元緩和に否定的であるという事実こそ、むしろ注視すべきものなのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-30 09:39 | 債券市場 | Comments(0)

日本国債が動揺し始めた可能性も

 3月27日に発表された2月の全国消費者物価指数は総合で前年比プラス2.2%、生鮮食料品を除く総合、いわゆるコア指数で前年比プラス2.0%(日銀試算の消費増税の影響を除いて前年比ゼロ%)、食料及びエネルギーを除く総合、いわゆるコアコアで前年比プラス2.0%と発表された。

 2月のコア指数の予想は消費増税の影響を除いて前年比プラス0.1%となっていたが、それよりも前年比伸び率は縮小し、2013年5月、つまり日銀が量的・質的緩和を決めた翌月のCPIの水準に戻ってきた。

 今後のコアCPIは一時的にしろ前年比マイナスとなる可能性があり、日銀も3月17日の金融政策決定会合の公表文で、消費者物価の前年比について、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるとして、マイナスとなる可能性も想定しているようである。

 消費者物価指数は2015年4月分からは、2014年4月にスタートした消費増税による影響が剥落する。このため、コアCPIは前年比でゼロ%近辺の数字になると予想される。もし想定以上の便乗値上げ等がされていれば、その分も剥落する可能性がある。

 いずれにしても日銀による2年程度での2%の物価目標の達成は極めて困難となる。デフレ脱却とはどのようなことを示すのかとの認識は人それぞれかもしれないが、日銀が大胆な緩和で物価を上げるとの目標達成が困難となる以上、当然ながら日銀の政策が物価に影響を与えてデフレが改善したとの見立てには無理が出てくる。

 いわゆるリフレ派と呼ばれる人たちからは、「アベノミクスを否定する人に債券市場関係者が多い」との声が聞かれるが、そもそも異次元緩和がどのような経路で物価に影響を与えるのか、その肝心要となる国債を運用している人たちには理解不能であったためである。現実に結果としてもその効果が出ていなかったことが、このように示される格好となった。

 日銀はすでに後戻りできない状況に追い込まれてしまっている。26日に就任した原田泰審議委員(元早大教授)は就任会見で、追加緩和物価が上がらず人々のデフレマインドが強まるなら、追加緩和も必要と明言した。しかし、すでに異次元緩和第一弾、さらに第二弾まで実施しても、肝心の物価は上がってこない現実を見る限り、追加緩和に効果があるとは思えず、むしろさらに財政ファイナンスのリスクなどを高めてしまう危険がある。

 かといって市場の反応を考慮すれば、金融政策の目標をマネタリーベースから変更するなど、量的緩和を止めるわけにも行かないであろう。このまま大規模な国債買入を永遠と続けざるを得なくなる恐れもある。27日の債券相場は久しぶりに先物主導で一時大きく下落し、10年債利回りも0.4%台に乗せた。決算期末要因や、前日の米国債や英国債の急落の余波かもしれないが、日本国債が動揺し始めた可能性もありうるか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-29 10:04 | 債券市場 | Comments(0)

物価目標未達に対する日銀の説明責任

 日銀の岩田規久男副総裁は最近、朝日新聞と単独会見で、次のような発言をしていた。

 「日銀は「2年程度で物価上昇率2%」の目標を掲げ、2013年4月から大規模な金融緩和を始めた。この間、生鮮食品を除く消費者物価の前年比の上昇率は、13年3月のマイナス0.5%から、1年後にはプラス1.3%まで上がった。これらのことから、岩田氏は「総合的に見れば所期の効果を発揮している」と大規模緩和を評価した。」

 「大規模緩和の効果は、消費増税による消費の低迷や原油安の影響を除いてみるべきで、物価が「2%に向かって上昇し続ける基調には変化がない」と主張した。」 (以上、3月25日の朝日新聞の電子版より一部を引用)

 岩田副総裁は以前に、下記のような発言をしていた。

 「インフレターゲットは、一国の中央銀行が物価の安定に全責任を持ってコミットし、おおむね2年以内の目標達成を目指す政策です。それができなかった場合、中央銀行は厳しい説明責任を問われます。」(2013年3月1日のダイヤモンドオンラインの記事より引用)

 「名目成長率目標を達成するために必要なマネタリーベースの伸びを推計するマッカラム・ルールなどに基づけば、2%達成は「2015年4-6月期になる計算だ」と試算した。」(2013年6月24日のロイターとのインタビュー記事より)

 現在の日銀が掲げる物価目標に対しては、2月の消費者物価指数が前年比でゼロ%になっている。ここから急激に消費者物価が2%に向けて短期間に急上昇することはかなり困難であり、おおむね2年以内、つまり2015年4月~6月期の目標達成はきわめて困難となろう。それができなかった場合、日銀は厳しい説明責任を問われてもおかしくはない、と岩田副総裁は過去に主張していた。

 異次元緩和が開始されて、消費者物価指数(コア指数)は2013年4月の前年比マイナス0.4%がいきなり5月にゼロとなり、それ以降前年比プラスに転じ、2014年4月には前年比プラス1.5%となった。ここまでを見る限り、総合的に見れば所期の効果を発揮しているとの評価が数字上では可能となる。

 しかし、そもそも金融政策の効果が発揮されるには一定のタイムラグが存在していたはずであるが、そのラグなしでいきなり効果が発揮されたような格好となった。2012年11月の安倍自民党総裁のリフレ発言で、インフレ期待が高まりその効果が発揮されたとの見方も可能かもしれない。しかし、期待などよりも急激な円安や株高による現実的な影響が大きかったのではなかろうか。さらにここには原油価格の高止まりもあり、原油の輸入に頼る日本ではエネルギー価格の上昇による影響も大きかったはずである。

 ところが2014年4月のコアCPIの前年比プラス1.5%をピークに前年比は縮小する。本日発表された2015年2月のコアCPIは消費増税の影響を除いて前年比ゼロ%と、2013年5月の異次元緩和導入直後の水準に後戻りしてきた。これについてはどのような説明がなされるのであろうか。

 岩田副総裁は大規模緩和の効果は、消費増税による消費の低迷や原油安の影響を除いてみるべきと主張するが、そもそもそのような要因如何にかかわらず、計算上はすでに2.0%の目標はほぼ達成されるはずではなかったのか。さらに日銀は今後の物価目標達成の前提として原油価格の反発を指摘していることと矛盾しないか(原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提)。

 また、2015年2月の食料及びエネルギーを除くコアコア指数も消費増税の影響を除くと前年比ゼロ%となっていることはどのように説明がなされるのであろうか。このあたり、副総裁がご自分でも主張されていたように、しっかりとした説明を行う責任が日銀にあるのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-27 09:41 | 日銀 | Comments(0)

日米欧の量的緩和政策の違い

 日銀やFRB、イングランド銀行、ECBなどが行っている(行ってきた)QEと呼ばれる量的緩和政策はそれぞれ違いがある。そもそもQEとか量的緩和という用語も適切なのかとの問題もある。このあたり歴史を追ってみてみたい。

 QEとか量的緩和と呼ばれる金融政策は、通常の金利を操作する金融政策とは異なるものである。金融政策は政策金利と呼ばれる短期の期間で活発な取引が行われ、中央銀行が操作しやすい金利を操作目標にしている。日銀の政策金利は長らく公定歩合であったが、1995年3月の短期金利低め誘導以来、コールレートを操作目標にしている。コールレートのなかでも無担保コール翌日物はその取引量も多く、また日銀としてもオペレーションなどによってコントロールしやすいため、この無担保コール翌日物の金利が金融政策における操作目標とした。

 この政策金利が実質的にゼロとなってしまった際に、新たな金融緩和策として登場したのが量的緩和策である。スイスやスウェーデンなどのように政策金利をマイナスとする手段もあるが、たとえば預金金利のマイナス化などはあまり現実的ではない。ECBもマイナス金利を導入したとされるが、あくまで政策金利の下限の部分である。日銀はいままで政策金利をマイナスにしたケースはない。短期債の利回りがマイナスとなったのは、日銀の政策金利とは直接関係してはいない。

 日銀は2001年から2006年にかけて量的緩和政策を実施した。2001年3月に金融政策の目標を無担保コール翌日物金利から日銀当座預金残高という量に変更した。現在の日銀が行っている量的・質的緩和の目標はマネタリーベースとなっているが、これは市中に出回っているお金である流通現金と日銀当座預金残高を合計したものであり、違いは流通現金の部分だけとなる。あとの違いは国債の買入の量の思い切りの良さ、財政ファイナンスと認識されない施策も外して、長い期間の国債も買い入れるようにするなどとにかく大胆に国債を買い入れる点にあった。

 2008年11月25日に米国の中央銀行であるFRBは総額8千億ドルのあらたな金融対策を発表した。内容は住宅ローン担保証券や証券化商品を買い取ることが柱となる。買取の中心となるのは住宅ローン担保証券(MBS)で、これを最大5千億ドル買い取る。さらに2009年3月18日のFOMCにおいては、向こう半年間に最大3000億ドルの長期国債を購入することを決定した。加えて最大7500億ドルのモーゲージ担保証券(MBS)と最大1000億ドルの政府機関債を年内に買い取ることも決定した。これらはFRBにより量的緩和第一弾(QE1)と呼ばれている。

 2009年3月にイングランド銀行も量的緩和政策を決定したが、2009年の3月から11月の間に総枠2000億ポンドの資産(対象は主に英国債)を購入するといった形式を取っていた。つまり国債を買い入れる総額と期間を決めたのである。その後、3か月ごとに見直しがかけられ、同年5月7日に1250億ポンド、8月6日に1750億ポンド、11月5日に総枠の2000億ポンドといった総枠を拡大し。これが追加緩和のような格好となった。その期間中に予定額を買いいれればそれで終了となる。最終的には2012年7月に3750億ポンドに引き上げて、それ以降の引き上げは行っていない。

 2010年11月3日のFOMCでFRBは2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。2011年9月21日のFOMCでは残存期間6~30年の財務省証券4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の財務省証券を同額売却するという、いわゆるツイストオペを決定した。

 2012年9月13日のFOMCで住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した(QE3)。2012年12月のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。ツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れることになる。このようにFRBは最終的には毎月の米国債とMBSの購入額が目標となった。このため、正常化に向けてはまずこの毎月の購入額を徐々に引き下げるテーパリングという作業が必要になったのである。

 2010年5月に入り、ギリシャなど欧米諸国の財政不安にともなう市場の動揺に対し対応策が講じられた。5月9日に欧州中央銀行(ECB)は国債の流通市場に介入することを発表した。1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めてである。ECBによる国債の買入目的は、日銀のように市場への資金供給が目的ではなく、あくまで市場機能の正常化が目的であった。金融政策への影響を避けるために、国債買入で放出した資金を回収する手段を講じた。

 2012年9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を決定した。買い入れ規模に上限は設けない。つまり無制限の買入であったが、これは実施されることはなく、欧州の信用不安の後退により、これは結局、なかったことにされた。そして、2015年1月のECB理事会で、FRBやイングランド銀行、日銀と同様の国債買い入れ型の量的緩和策の実施を決定した。これは信用危機対応型というよりもデフレ警戒によるものであった。ECBの指揮によりユーロ圏の各国中銀が2015年3月から国債を含めて毎月600億ユーロの資産を買い入れ、それを2016年の9月まで続け、買い入れ総額は1兆ユーロを超す見通しとなった。

 ECBの毎月の買入額を決めて国債等を買い入れる形式はFRBと同様である。イングランド銀行は買い入れる全体の額をターゲットとしていた。それに対し、現在の日銀はマネタリーベースの規模そのものをターゲットとして、国債については日銀の保有残高や買い入れる国債の平均残存年数も示した。毎月の国債買入はそこから逆算し、償還分などを含めて決められる。日銀の場合には毎月の買入額がターゲットになっていない点により、テーパリングはFRBとは違ったかたちになる可能性がある。このあたりについては後日見てみたい。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-26 09:27 | 中央銀行 | Comments(0)

地球温暖化とデフレの意味とその対処

 例年と異なるような異常気象に対して「地球温暖化」との言葉を添えるだけで説明してしまっていることが多いように思う。地球温暖化が具体的にはどのように定義されているのかはわからないが、人為的なものに起因する気候の変動の意味で使われることが多いと思う。しかし、地球全体の気候が温暖になるサイクル的な自然現象である可能性もあるわけで、災害・被害をもたらす気象現象を地球温暖化という言葉で簡単に片付けてしまっていることが多い気もする。だから二酸化炭素を減らせとの議論になってしまうが、実際に温暖化の具体的な要因なのかどうかはさておき、原因と対策を地球温暖化に単純に絡めてしまって良いものなのであろうか。

 日本の金融や経済を語る上では、この「地球温暖化」という言葉のように「デフレ」という言葉が一人歩きしている。デフレとはデフレーションの意味で、インフレ、つまりインフレーションとは反対の意味の言葉である。日本はデフレだから景気は良くならず、円高となり株価も低迷し、賃金は上がらない。デフレは貨幣的な現象であるため、デフレやインフレは金融政策によって操作が可能となる。他の要因による影響を排除しても、日銀が国債を思い切って購入し、マネタリーベースを倍にしさえすれば、物価は簡単に上昇する。非常に短絡的な説明かもしれないが、いまの日銀が行っている金融政策はまさにこの短絡的な根拠によるものである。

 ところがいくらマネタリーベースを増やしても物価目標には、むしろ遠ざかりつつある。それは消費増税が悪い、原油価格の想定外の下落があったためとの説明されている。そうであったとしても、デフレが貨幣的現象であるなら、たとえばマネタリーベースの目標をいまから、さらに倍とクイズダービーのようなことをすればデフレは解消できるのであろうか。

 そもそもデフレの要因が金融政策に起因とすることに問題はなかったのか。異常気象を地球温暖化という言葉で簡単に説明してしまうように、デフレで何でも説明してしまい、そのデフレを貨幣的現象で片付けてしまおうとしている現在の日銀の姿勢は本当に正しいものなのであろうか。

 2013年4月の量的・質的緩和からまもなく2年が経過する。スタート直後から日銀が目標としていた物価は上がりだした。順調に前年比のプラスが1.5%あたりまで上昇したが、そのあと前年比は縮小してしまう。途中までの物価の上昇は、円安や原油価格の高止まりなどで説明は可能となる。しかし、その後の原油価格の下落等により、目標とする物価の前年比は縮小し、まもなくゼロからマイナスに落ち込むことが予想されている。それでも賃金は上がり、株価も上昇しているからアベノミクスの第一の矢は効いているとの説明がなされるが、その物価目標から遠ざかっているのに、何故、効果が出ていると言えるのであろうか。

 今後の原油価格の反発を背景にした物価上昇に日銀が期待している姿をみると、マネタリーベースを金融政策の目標値にした意味がさらにわからなくなる。異次元緩和から2年が経過することで、日銀としてはその結果に対しての説明責任を負うことになる。2年という期間を曖昧に引き延ばして時間稼ぎをすることについてもあまり意味はないのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-25 09:36 | 日銀 | Comments(0)

黒田日銀総裁の言うQEジアンの効果とは何か

 3月20日の日本外国特派員協会における日銀の黒田総裁の講演の邦訳が日銀のサイトにアップされた。ここで黒田総裁はこのような発言が冒頭にあった。

 「ECBが資産買入れ策を導入した結果、現在、FRBやイングランド銀行(BOE)を含め、世界の主要中央銀行の多くが量的緩和(QE)を採用しています。私の尊敬する友人である伊藤隆敏教授の言葉を借りれば、We are all QE-sians now と言えるでしょう」

 正確にはFRBは自らの国債やMBSの買入はQEとは言ってはいない。ECBは国債買入をQEと称したが、ベースマネーの増加を意識した政策ではなく国債を買うことに意義があるような政策であった。ただし、スウェーデンのリクスバンクも含めて皆、QEジアン化していることは確かなようである。

 その原因は「2008年のグローバル金融危機(global financial crisis)」にあるとしている。日本ではリーマン・ショックと呼ぶことが多いが、あくまでリーマンの破綻は危機のひとつの象徴にすぎない。サブプライムローン問題に端を発した大手金融機関の経営危機が、金融不安を招き、失業率の上昇などの世界的な景気悪化を招いた現象である。

 当初、欧米の中央銀行は伝統的な政策手段である短期金利の引き下げによって対応したものの、政策金利が実質ゼロとなってしまったことで、非伝統的な金融政策が次々と打ち出され、その最終形が大量の国債買入となったことで、みなQEジアンと化してしまったのである。このQE化現象について黒田総裁はその目的を次のようにコメントしている。

 「量的緩和は、中央銀行が国債などの債券を多額に買い入れることによって、なお引き下げ余地のある長期金利を低下させることで、景気を刺激することを主たる目的とするものです」

 長期金利の低下を促す策であったことで、日米欧の長期金利は確かに過去の歴史にもないところまで低下が進むことになった。ただし、日銀の量的・質的緩和には別の目的があったとしている。

 「量的・質的金融緩和の場合、長年続いたデフレのもとで定着してしまったデフレマインドを抜本的に転換するというもう一つの要素が加わっています」

 日本がデフレに陥った原因として黒田総裁は、資産バブル崩壊後の企業や金融機関のバランスシート調整、新興国からの安値輸入品の流入、過度な円高の進行などを指摘している。デフレに陥った原因はこのように明らかであるのに、それに対処するのが、何故、大量の国債買入になるのかがわからない。デフレマインドの定着が原因として、そのマインドを変化させることで、デフレの対処となるのであろうか。原因がはっきりしていることに対しての対処がマインドを変化させるというのは説得性に乏しくはないであろうか。

 総裁はインフレマインドの好転の事例とて、消費者物価が2013年6月から20か月連続で前年比上昇を続けていることや、名目賃金の上昇を指摘している。しかし、消費者物価が2013年6月から20か月連続で前年比で上昇を続けていることについては、円安や原油価格の上昇でかなりの部分が説明できる。賃上げも円安や株高による効果があったかもしれないが、政府による圧力がその要因となっており、ある意味人為的なものであった。これを日銀のQEによるインフレマインドの変化によるものと結論づけることには無理があるまいか。

 QEジアンはそれが何を今後もたらすのか。すでに物価目標からは遠ざかり、日銀は後戻りできない状況に追い込まれつつある。消費者物価はまもなく前年比マイナスとなる可能性が強まっている。そうなるとマインド変化はいったいどこに消えてしまったのかということになるのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-24 14:25 | 日銀 | Comments(0)

2月の投資家は全般に債券を買い越し

 日本証券業協会は3月20日に2月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

 2月は大きく売り越した投資家はいなかった。1月に1兆3173億円の売り越しとなっていた都銀は669億円の売り越しに止まった。長期債を売った分、利回りがプラスに戻った中期債を購入していた。

 1月20日に5年債カレントがマイナス利回りとなり、10年債利回りの0.195%と初めての0.2%割れが債券相場のピークとなり、その後債券相場は下落基調となった。2月も月初から債券相場は下落基調となっていたが、2月中旬あたりから買い戻され、月末は月初近くの水準にまで戻っていた。たとえば10年債利回りで、月初は0.3%近くにおり、2月半ばに0.4%台半ばまで利回りが上昇したが、2月末にかけて0.3%台前半となっていた。

 あらためて1月の投資家動向を確認しておくと、売り越しは他に、その他金融機関の171億円、信託銀行の21億円程度。信託銀行は超長期債と長期債を売り越していたが、中期債を買い越してその分をカバーしていた。公的年金の国債売却はひとまず落ち着いたようである。

 買い越しとしては外国人が1兆3589億円の買い越し。中期債主体に大幅買い越しとなっていた。利回りがプラスに転じたことで買いやすくなったものとみられる。農林系金融機関は8197億円の買い越し。超長期債主体の買い越しとなっていた。事業法人は4938億円の買い越し。こちらは中期債主体の買い越し。投資信託は4086億円の買い越し。こちらも中期債主体の買い越し。さすがにマイナス金利では購入できないことで、プラスに転じた中期債には押し目買いが入った格好となっていた。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-24 09:25 | 債券市場 | Comments(0)

日銀は国債をどこまで買えるか

 日銀の資金循環統計によると、2014年12月末時点で日銀の国債全体の残存額に占める保有割合が、25%ちょうどになっていた。短期債を含めた国債全体の四分の一を日銀が保有している計算となる。今後、このまま日銀が国債買入を継続するといずれ流通市場の国債が枯渇してしまうのではないかとの危惧がある。これについては具体的にいつどのような形で枯渇するということを判断するのかは、前提条件により算出がなかなか難しい。

 今後このまま日銀が国債を買い入れれば、との前提についても問題がある。もしかすると第三次異次元緩和があり、さらなる国債買入を日銀が決定してくる可能性も完全には否定はできない。しかし、国債市場の流動性のさらなる低下を招きかねないことは確かであるとともに、財政ファイナンスではないかとの認識を強めさせかねない。それ以前に日銀が国債を思い切って買い入れても、物価が上がらなかった説明がなされないと無駄に国債を買い入れて、リスクを増加させるだけになりかねない。

 投資家の保有する国債の割合についても状況次第で変化することが予想される。いまのところメガバンクやゆうちょ銀行が大きく国債残高を落として、その分は日銀の当座預金の残高を増加させている。これは結果として日銀の金融政策の目標であるところのマネタリーベースの増加を支援している格好となっている。

 ちなみに昨年末現在のメガバンクなどの銀行は105兆円弱、ゆうちょ銀行主体の中小企業金融機関等は143兆円程度の残高がある。日銀担保の分を除いてもまだ減額することは可能ではないかと思われる。

 公的年金は57兆円、企業年金は29兆円、共済保険は37兆円ある。公的年金などはまだ国債のシェアを引き下げていくことも予想され、その分も日銀の国債買入余力となりうる。また、海外勢が45兆円保有しており、こちらもいずれなにかしらのきっかけて保有割合を減少してくることもありうる。

 果たして日銀はこの日本国債の何割程度まで買い進めることが可能なのか。それを推測する上で、面白い事例が存在する。

 昔、日本の国債残高の約半分程度を占めていたことのある公的な投資家が存在していた。それは運用部ショックで有名な大蔵省の資金運用部である。ここは郵貯や簡保、公的年金の資金を預託されて運用していたところであり、国債の引き受け等もあり、年によっては国債残高の半分以上を保有していた。財投改革により資金運用部は廃止されることになるわけだが、1998年の資金運用部ショックの頃は約3割程度の保有シェアとなっていた。

 1998年の資金運用部ショックはこの資金運用部の国債買入を停止するとの報道がきっかけであった。それだけ資金運用部の国債市場の影響力が大きかったことを示すが、同様の事態が日銀の出口政策の際にも起こりうるかもしれない。そうなると運用部ショックの頃の資金運用部の国債残高に占める割合が3割程度というのが、実はひとつの参考数値になるのではないかと思われるのである。

 1998年当時はすでに国債市場では活発に売買されていた。そこに3割も保有する公的な存在があった。となれば状況は当時と現在とでは多少違っていたとはいえ、日銀も3割程度、つまり現在の国債残存額約1000兆円のうちの300兆円あたりまでならば残高を増加させることは可能との見方もできまいか。ただし、その後、運用部ショックのような相場変動が起きる可能性も否定できない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-21 12:34 | 国債 | Comments(2)

ドル高を抑制しながら利上げを目指すFRB

 3月18日のFOMCでは金融政策そのものは現状維持となった。注目の声明文では予想されていたように、忍耐強くなれる(can be patient)との文言は削除された。その上で、次回の4月28~29日のFOMCでの利上げの可能性は低いとし、最短で6月のFOMCでの利上げの可能性があることを示唆した格好となった。今後のFOMCの日程は4月28~29日、6月16~17日(議長会見有)、7月28~29日、9月16~17日(会見有)、10月27~28日、12月15~16日(会見有)となっている。

 フォワードガイダンスを修正したからといって、政策金利引き上げ開始の時期を決めたわけではないと釘を刺してはいるが、6月か9月の会合で利上げを決定する可能性はこれで高まったといえる。ただし、FRBは利上げによる市場へのインパクトを抑えようと工夫も行ってきた。米国経済について総括判断を下方修正し、それとともにFOMCが公表した投票メンバーによる政策金利予想のチャート、いわゆる、ドット・チャート(あるいはドット・プロット)も修正してきた。

 これによると今回、2015年末時点で1.0%以上が適切な水準だとした人数は昨年12月では9人いたのに対して、今回は4人にとどまった。2016年末についても2.0%以上が適切としていたメンバーが12月は13人いたのに対して今回は6人に止まっている。これはつまり、6月か9月に利上げが実施されたとしても、その後の再利上げについては、ある程度の間隔を設けるなり、利上げの幅も緩やかにするであろうとの意図が見える。

 いったん利上げを始めると定期的に上げていくとの見方もあったようだが、FRBにとってまずは正常化が最大の目的であると思われ、それを達成後は利上げのペースや、国債とMBSの償還分の買入の停止、さらにはポートフォリオの削減に向けてはかなり慎重に行ってくるであろうと予想される。

 注意すべきはイエレン議長の会見のなかで、何度も発せられたドル高への懸念である。これまで日銀の2013年4月の量的・質的緩和第一弾と2014年10月の第二弾、さらにはECBの量的緩和については見て見ぬふりをしていたが、さすがにFRBとの方向性の違いによるドル高への動きを牽制しようとし始めた。イエレン議長は会見で、ドル高は米経済の力強さを一部反映しているとしながらも、輸出の伸びの鈍化はドル高がその一因である可能性を示し、ドル高が一時的にインフレ率を押し下げていると指摘した。

 これを受けて外為市場ではドルがほぼ全面安の展開となり、ドル円は120円を割り込み、一時119円50銭も割り込んでいる。イエレン議長の発言により、外為市場では潮目が変わった可能性がある。米国は決してドル高は望んでいないことを示した。すでにFRBの利上げも相当織り込んでいたことも確かであり、最初の利上げはほぼ確実視されても、それ以降の利上げペースは市場の予想よりもきわめて緩やかなものになるとなれば、今後はドル高トレンドが修正される可能性もあろう。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-03-20 09:42 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー